博 士 ( 農 学 ) 石 塚 敏 学 位論文 題名
Studies on the effect of dietary fibers on morphological ●
changes at an early carcinogeneslSOfCOloreCtun1
(大腸発ガン初期の形態変化に及ぼす食物繊維摂取の効果に関する研究)
学位論文内容の要旨
犬JJ場 ツJン は 主 要 な 死 囚 の ー つ で あ り 、 そ の 発 生 率 は 増 加 し 統 け て い る 。)ン の 発 生 に はi蛍 伝 的 な 要 因 だ け で は な く 環 境 要 因 が 大 き く 関 与 す る 事 が 知 ら れ て い る 。 特 に 消 化 器 系 ガ ン の 場 合 、 食 餌 成 分 は 常 に そ の 上 皮 細 胞 と 接 し て い る の で 、 主 要 な 環 境 因 子 と い え る 。 食 事 成 分 の 中 で も 脂 質 の 過 剰 摂 取 は 大 腸 ガ ン の 発 生 率 を 高 め る 一 方 、 食 物 繊 維 は 大 腸 ガ ン を 抑 え る 可 能 性 が あ る 成 分 と 考 え ら れ て い る 。 大 腸 発 ガ ン 研 究 で は 臓 瘍 の 数 や そ の 発 生 頻 度 を 指 標 と し て い る も の が 多 い 。 し か し 、 大 腸 ガ ン の 予 防 と い う 観 点 か ら 考 え る と 、 発 ガ ン に 至 るa8兆 を よ り 早J朋 に 評 価 す る こ と が 必 要 に な る 。 発 ガ ン 剤 や 放gす 綜 照 射 な ど の イ ニ シ エ ー シ ョ ン 処L! を す る と 、 数 時 間 後 か ら 人 腸 ク リ プ ト 下 部 に 上 皮 翁 ‖ 胞 の ア ポ ト ー シ ス が 見 ら れ る 。人Jl易 ク リ プト 下 音Bに は 幹 ネ1‖ 胞 が 存 在 す るこ と か ら 、 大 腸 ガ ン が 上ifflll胞 の 兆 常 ↓ 曽 殖 と 考 え る と 、 この ア ポ ト ー シ ス は‑l‑1Q%III胞 のJtlwiと 死の バ ラ ン ス に 少 な か ら ず 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 臓 瘍 が で き る よ り 前 に 観 察 さ れ る 形 態 変 化と して 、クル プトff‖分の.‑w%lll)uのユ16っお増wiであるal)(!rl.a川,ci'Yl)t. rocl (A(:Iりがあるぃこれ は 臓 瘍 を 発 生 さ せ る 場 合 よ り 、 比 較 的 低 い 発 ツJン 斉rJ投 与 量 、 短JUJ問 で 観 察 さ れ る だ け で な く 、 人 腸 ガ ン を 忠 う ヒ ト の 結 腸Viiilkに も 見 ら れ る こ と か ら 、 大 腸 ガ ン の 前 ッJン 病 変 と 考 え ら れ て い る 。 本 研 究 で は 組 織 化 学 的 手 法 を 用 い 、 ラ ッ ト に 発 プJン 剤(1,2ーcllmethylhyclrazlne,DMI‑I)投 与 後 比 較 的 早 期 に 見 ら れ る こ れ ら の 指 標 に 対 し て 、 食 物 繊 ネf£ の 摂 取 が 与 え る 影 響 に つ ぃ ゝ て 影 響 を 検 討 し た。
1. 食 事 摂 取 状 態 及 び 免 疫 訓 節 が 大 腸 発 ガ ン 初j川 の 指 標 に 与 え る 影 響 絶食 または投食l1寺の速他ネ占J湯及びi虹腸上皮細胞におけるDMH処理後のアポトーシスの頻度 を沺| 定した。投与6時間後、DMI‑Iにより誘導されたアポトーシスの頻度は、摂食時に比べ絶食 ―197―
時 で 有 意 に 高 い 値 と な り 、 そ の 頻 度 は 直 腸 よ り 遠 位 結 腸 で 多 い 傾 向 を 示 し た 。 こ の事 か ら、DMH 誘 発 ア ポ ト ー シ ス は 食 亊 の 摂 取 如 何 に よ り 影 響 を 受 け る こ と が明 らか に なっ た。 ま た、 抗ア シ ア ロGM1を 投 与 す る 事 に よ り 、 ナ チ ュ ラ ル キ ラ 一 活 性 が 一 時 的 に 減 少 し 、lnvlvoで の 腫 瘍 増 殖 が 亢 進 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 そ こ でACF形 成 に 対 す る 免 疫 系 の 関 与 を 調 べ る た め に 、DMH に よ り 誘 発 さ れ るACF形 成 に 対 レ て 抗 ア シ ア 口GM1投 与 が 影 響 を 与 え る か ど う か を 検 討 し た 。 Dlk4Hを 投 与 す る 前 に 予 め 抗 ア シ ア ロGM1ウ サ ギ 血 清 ま た は 正 常 ウ サ ギ 血 清 ( 対 照 群 ) を2回 に わ た ル ラ ッ ト に 投 与 し た 。 そ の 後 、DMI‑I (20 mg/kg)を 一 回 投 与 し4週 間 後 に ラ ッ ト 結 腸 直 腸 のACF発 生 頻 度 を 記 録 し た 。 そ の 結 果 、 対 照 群 に 比 べ 抗 ア シ ア 口G1¥41投 与 群 に お い て 遠 位 結 腸 、 直 腸 、 結 腸 直 腸 全 体 に お け るACF数 は 有 意 に 多 く な っ た 。 こ の 結 果 か ら 、 イ ニ シ ェ ー シ ヨ ン の 時j明 に お け る 抗 ア シ ア ロGM1の 投 与 に よ り 、 遠 位 結 腸 、 直 腸 、 結 腸 全 体 に お け るACF と 異 常 ク リ プ ト 総 数 の 有 意 な 増 加 を 引 き 起 こ す こ と が 明 ら か にな った 。 即ち 、発 ガ ン初 期に お け るDI¥fH誘 発ACF形 成 に 免 疫 監 視 機 構 が 影 響 を 与 え る こ と が 初 め て 明 ら か に な っ た 。
2. 食物繊ネ化の摂取 が大腸発ガン初j叨の指標に 与える影響
食 物 繊 維 は 大 腸)jン の 発 生 を 抑 制 す る 可 能 性 の あ る 食 事 成 分 で あ る 。 本 研 究 では 、小 麦 ふす ま
(Wt) ) とWbよ り 優 れ た 抗)YTiluゼI! を 持 つ 食 物 繊維 に 矧f菜 食物 繊維(SBF)を 食物 繊維 源 とし て 用いた。
1)1¥41I綉ジ芭AClr形J戊に対1.る食物 繊荊8摂lixの影響を|灸討した。遠位rliJJ場におけるACF数は!ほ 繊 維 食 ‖Iに 比 べWb食 群 に お い て 有 意 に 低 下 し た 。Wb添 加 量 が 増 え る に っ れ て 、ACF数 と 全 異 常 ク リ プ ト 数 は と も に 減 少 し た 。 盲 腸 内 の 酪 酸 濃 度 が 高 い ラ ッ ト で は 遠 位 結 腸 に お け るACF数 が 減 少 し た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、Wb食 摂 取 はACF形 成 を 遅 延 ま た は 抑 制 さ せ る こ と 、 及 び そ の抑制効果に 酪酸が関与するこ とが示唆された。
ProllferaLlng cell nuclear antlgen (PCNA)はDNA合 成 だ け で な く そ の 修 復 に も 関 与 す る と い わ れ る 。DMH投 与 後 の 結 腸 、 直 腸 上 皮 細 胞 の 中 でPCNAを 発 現 し て い る 細 胞 と ア ポ ト ー シ ス を 起 こ し て い る 細1胞 の 経 時 的 変 化 を 免 疫 組 織 化 学 的 に 解 析 し た 。 そ の 結 果 、DMI‑I投与 後 のPCNA 発 現 細 胞 数 は 無 繊 維 食 群 に 比 ベWb摂 取 群 で 早 く 回 復 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。本 研究 に より 、 DMFI投 与 に よ ル イ ニ シ エ ー ト さ れ た ラ ッ ト 結 腸 直 腸 に お け るPCNA発 現 上 皮 細 胞 の 数 がWb摂 取 に よ り 影 響 さ れ る こ と 、Wbの 摂 取 はDMH投 与 数 時 間 後 か ら 一 週 間 の 間 の 細 胞 数 の 回 復 を 早 め る こ と が 明 ら か に な っ た 。 一 方 、Wb摂 取 群 で は 、 遠 位 結 腸 に お け る ア ポ ト ー シ ス 数 はDMH ー198−
投与6時間後では無繊維食群に比較して有意に少ないが7日後では逆に有意に増加することが 明らかになった。この事は食物繊維による発ガン剤の希釈や排泄だけでなく他の機構によって抗 腫瘍性が発揮される可能性があることを示唆している。Wb食群では結腸内容物中の酪酸濃度は DMH投与後12時間で一時的に減少するが、無繊維食群に比べると常に高い価を維持しており、
DMFI投与12時間後でも無繊維食群に比べて4倍以上、最大9倍程度の値を示していた。さら に、DMI‑I投与24週後の腫瘍発生数はWb食群で有意に抑制された。これらの事から、Wbの摂 取は大腸上皮細胞のturnoverに影響し、DMH誘発臓瘍に対して抑制的に作用することが示唆 された。
SBFはWbより 強カ にDMH誘発ACFの発生 を抑制す る。こ のSBFのACF抑制 効果が 抗アシ ア口Gh41の投与によるNK活性抑制の影響を受けるかどうかを検討した。抗アシアロGM1を 予め投与した場合には、無繊維食群ではDMFI誘発ACFの有意な増加が起こったのに対し、SBF 摂取群ではその増加が抑えられることが明らかになった。これらの結果から、SBF摂取による ACF抑制 効果は 、抗アシ アロGM1投与に よるACF増加効果を凌駕することが示唆された。
以上のことから、食物繊維の抗腫瘍性を説明する機構として、上皮細胞のアポトーシスを増加 させること、あるいは腫瘍免疫を維持あるいは亢進することでガンになりうる細胞をあらかじめ 除去するという意義が考えられる。魎瘍が出来る前のきわめて早い時期に、細胞増殖の制御に関 わる上皮細胞のturnoverやアポトーシス、異常細胞の除去に関与する免疫監視機構に対して食 物繊維の摂取が影響を及ばすことが明らかになった。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨
学位論文題名
Studies on the effect of dietary fibers on morphological ●
changes at an early carcinogeneslSOfC010reCtum
(大腸発ガン初期の形態変化に及ぼす食物繊維摂取の効果に関する研究)
本 論 文 は 総 頁 数82ペ ー ジ の 英 文 論 文 で 、 表13、 図9、写 真6、 引 用文 献86を合 み 、6章 で 構成されてい る。別に参考論文7編が添え られている。
大腸ガンは 主要な死因のーつであり、そ の発生率は増加し続けている。ガンの発生には遺伝的 な要因だけで はなく環境要因が大きく関与 する事が知られている。特に消化器系ガンの場合、食 餌成分は常に その上皮細胞と接しているの で、主要な環境因子といえる。食事成分の中でも脂質 の過剰摂取は 大腸ガンの発生率を高める一 方、食物繊維は大腸ガンを抑える可能性がある成分と 考えられてい る。大腸発ガン研究では腫瘍 の数やその発生頻度を指標としているものが多い。し かし、大腸ガ ンの予防という観点から考え ると、発ガンに至る前兆をより早期に評価することが 必要になる。 発ガン剤や放射線照射などの イニシエーション処理をすると、数時間後から大腸ク リプト下部に 上皮細胞のアポトーシスが見 られる。大腸クリプト下部には幹細胞が存在すること から、大腸ガ ンが上皮細胞の異常増殖と考 えると、このアポトーシスは上皮細胞の増殖と死のバ ランスに少な からず影響を与えると考えら れる。また、腫瘍ができるより前に観察される形態変 化として、ク リプト部分の上皮細胞の異常 増殖であるaberrant crypt focl (ACF)がある。これ は腫瘍を発生 させる場合より、比較的低い 発ガン剤投与量、短期間で観察されるだけでなく、大 腸ガンを患う ヒトの結腸粘膜にも見られる ことから、大腸ガンの前ガン病変と考えられている。
本研究では組 織化学的手法を用い、ラット に発ガン剤(1,2―dimethylhydrazine,DMH)投与後比 較 的早 期に 見ら れ るこれらの指標に対して、食 物繊維の摂取が与える影響 について検討した。
1. 食 事 摂 取 状 態 及 び 免 疫 調 節 が 大 腸 発 ガ ン 初 期 の 指 標 に 与 え る 影 響 ‑ 200 ‑
則
孝
治
隆
頼
敬
西
山
藤
葛
青
近
授
授
授
教
教
教
査
査
査
主
副
副
絶 食 また は 摂 食 時の 遠 位 結 腸及 び 直 腸上 皮細胞に おけるDMH処理 後のアポ トーシ スの頻 度 を測定し た。こ の結果 、DMH誘発 アポト ーシス は食事 の摂取 状態に より影 響を受 けることが明 らかにな った。 また、 抗アシ ア口GM1を 投与す る事に より、 ナチュ ラルキ ラ一活 性が一時的に 減少し、ln vivoでの 腫瘍増 殖が亢 進する ことが 知られ ている。そこでACF形成に対する免疫系 の関 与 を 調 べる た め に 、DMHに よ り 誘発 さ れ るACF形 成 に 対 して 抗 ア シ アロGM1投 与 が影 響 を与える かどう かを検 討した 。その 結果、 対照群 に比ベ 抗アシア 口GM1投 与群に おいて遠位結 腸、 直 腸 、 結腸 全 体 に おけ るACF数 は有 意 に 多 くな っ た 。 この 結 果 か ら、DMH誘 発ACF形 成 に免疫監 視機構 が関与 するこ とが初 めて明 らかに なった 。
2. 食物繊維の摂取が大腸発ガン初期の指標に与える影響
DMH誘発ACF形 成 に対 す る 食 物繊 維 摂 取 の影 響 を 検 討し た 。 遠 位結 腸 に お けるACF数 は 無 繊 維 食 群に 比 べ 小 麦ふ すま(Wb)食 群にお いて有 意に低 下した。Wb添加 量が増え るにっ れて、
ACF数 と全異 常クリ プト数 はとも に減少し た。盲 腸内の 酪酸濃 度が高 いラッ トでは 遠位結腸に お け るACF数 が 減 少 した 。 こ れ らの 結 果 か ら、Wb食 摂取 はACF形 成を 遅 延また は抑制 させる こと、及びその抑制効果に酪酸が関与することが示唆された。Prollferating cell nuclear antigen (PCNA)はDNA合 成 だ け で な く そ の 修 復 にも 関 与 す ると い わ れ る。 本 研 究 によ り 、DMH投与 に よ ル イニ シ 工 一 卜さ れ た ラ ット 結 腸 直 腸に お け るPCNA発 現細 胞 の 数がWb摂 取によ り影響 さ れ る こと 、Wbの摂 取 はDMH投与 数 時 間 後か ら 一週間 の間の細 胞数、 アポト ーシス 数に対 し て も 影 響す る こ と が明 らかにな った。 さらに 、投与24週後の 腫瘍発 生数はWb食群で 有意に 抑 制 さ れ た。 こ れ ら の事 か ら 、Wbの 摂 取 は大 腸 上皮細 胞のturnoverに影響 し、DMH誘 発腫瘍 に 対 して抑 制的に作 用する ことが 示唆さ れた。Wbより優 れた抗 腫瘍性を持つ食物繊維に甜菜食物 繊 維(SBF)が あ る 。SBFはWbよ り 強 カ にDMH誘 発ACFの 発 生 を 抑 制 す る 。 こ のSBFのACF 抑 制 効 果が 抗 ア シ アロGM1の 投 与に よ るNK活 性 抑制の 影響を受 けるか どうか を検討 した。 抗 ア シ ア 口GM1を 投 与 した 場 合 に は、 無 繊 維 食群 で はDMH誘発ACFの 有 意 な増 加 が 起 こっ た の に 対し、SBF摂取群 ではそ の増加 が抑えら れるこ とが明 らかに なった。これらの結果から、SBF 摂 取 に よるACF抑 制 効果 は 、 抗 アシ ア 口GM1投与 に よ るACF増加 効 果 を 凌駕 す る こ とが 示 唆 された。
以上のことから、腫瘍が出来る前のきわめて早い時期に、細胞増殖の制御に関わる上皮細胞の
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turnoverやアポトーシス、異常細胞の除去に関与する免疫監視機構に対して食物繊維の摂取が 影響することを明らかにしたことは高く評価される。よって、審査員一同は石塚敏が博士(農 学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた。
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