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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科学 )AnthonySOrlaIlanO     学 位 論 文 題 名

Reproduction,growth and feeding of the Japanese whelk, Buccinum isaotakii (Kira,1959) (Neogastropoda:Buccinidae)     in Funka Bay,Hokaido,Japan

(北海道噴火湾に生息するシライトマキバイの生殖と     成 長 , 摂 餌 に 関 す る 生 態 学 的 研 究 )

学位論文内容の要旨

  北 海 道 噴 火 湾 に 生 息 す る シ ラ イ ト マ キ バ イBuccinum isaotakii (Kira, 19591は 産 業 上 有 用 な 巻 貝 ( ツ ブ 類 ) の 一 種 で あ る が , そ の 生 活 史 に 関 す る 研 究 例 は な ぃ 。 本 研 究 は シ ラ イ ト マ キ バ イ の 繁殖 生 態, 年 令と 成 長, 摂 餌 生 態 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に 行 わ れ た 。1999年5月 か ら :2000年10 月 ま で の 間 , 毎 月 採 集 を 行 い , 本 種 の 生 殖 周 期 と性 成 熟を 調 べた 。 雌雄 の 性 成 熟 過 程 は 生 殖 巣 の 大 き さ と 組 織 学 的 観 察 か ら判 断 した 。 卵巣 サ イズ と 輸 卵 管 サ イ ズ に は 同 調 的 な 年 周 期 が み ら れ , 消 化器 官 サイ ズ はそ れ らと 逆 の 周 期 で 変 化 し た 。 一 方 , 精 巣 サ イ ズ と 貯 精 嚢 サイ ズ は互 い に逆 の 周期 で 変 化 し , 貯 精 嚢 サ イ ズ は 卵 巣 サ イ ズ お よ び 輸 卵 管サ イ ズと 同 時期 に 最大 に な っ て い た 。 雄 の 消 化 器 官 サ イ ズ に は 明 確 な 年 周 期 は 見 ら れ な か っ た 。   雄 は 1999年 の 5月 か ら10月 ,2000年 4月 か ら10月 に か け て 成 熟 し , 精 子 を 放 出 し 終 え た 貯 精 嚢 ( 放 出 期 貯 精 嚢 ) を も つ 個 体 は1999年9月 か ら2000年6月 ま で 観 察 さ れ た 。 貯 精 嚢 内 の 精 子 量 と 上 皮 組 織 の 観 察 か ら , 本 種 の 交 尾 期 間 は2000年5月 か ら8月 ま で 続 く と 考 え ら れ た 。 卵 巣 成 熟 と 卵 形 成 は1999年10月 か ら 始 ま り ,2000年 1月 に ピ ー ク を 示 し た 。 産 卵 は5月 か ら9月 に か け て 行 わ れ た 。 精 巣 か ら 貯 精 嚢 へ の 精 子 輸 送 と 卵 巣     ―1440―

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成熟は低水温期に,精子形成と産卵は高水温期に観察された。

  室内飼育によってシライトマキバイの交尾・産卵行動,および受精卵発 達を観察した。交尾は水槽内の全個体が集合した後,昼夜に関係なく行わ れた。1匹の雌が交尾する雄の数(1‑5匹)にはバラツキがみられ,1 あたりの交尾は120ー375分間続いた。産卵は交尾の約1カ月後から始まり,

集合産卵(80例)と個別産卵(15例)の両方が観察された。ふ化は直達 発生で,産卵の6‑7カ月後に起こった。稚貝は黒色の色素が散在した体 表に乳白色の殻を有しており,卵嚢開口部から放出された。母親の体サイ ズによる稚貝の大きさと数への影響を回帰分析で調べた。その結果,雌の 殻長に応じて卵塊あたりの卵嚢数,卵塊湿重量,卵嚢の幅,長さ,高さ,

湿重量は有意に増加し(それぞれPくO.OOl),卵嚢の幅と高さの間には有 意な関係はなかった。また,卵の数,卵嚢当たりのヴェリジャー幼生数,

ベディヴェリジャー幼生数,ふ化前幼生数,稚貝数は卵嚢の幅に応じて増 加した(それぞれPくO.OOl)が,卵嚢の幅はそれらの大きさには関係し ていなかった。卵のふ化率は1.1‐2.0%だった。

  シライトマキバイの足付着部の蓋に形成される輪紋間の距離から縁辺 成長率を計算し,年令を推定した。ひとつの輪紋が年にひとつ形成されて いたことから,この輪紋は年令形質と考えることができた。殻長(L,mm) と体重(W g)の関係は,雌雄ともに殻長増加が体重増加を上回っており,

相対成長が観察された。得られた数値をvon Bertalanffy成長式に当てはめ

た 結 果 , 年 令 あ た り の 殻 長 成 長 式 は , 雌 がLよ ニ ニ ニ150.52{1e‑01117(t一2118)) , 雄 が Lエ ニ ニ129.99 l‑e‑0132(t‑2.25)1で 表 さ れ た 。 ま た , 年 令 当 た り の 体 重 成 長 式 は 雌 がWt 101.03(1‐e‐0.117(t‑2.18) }2.5292,雄がLt二ニ71.12( l‑e‑0,132(t‑2.25)}2.6512で表され た。さらに,飼育個体を用いて異なるサイズクラスごとの成長を調べた。

約12カ月間の飼育の結果,殻長は50mm,60mm,70mm(尸くO.OOl),80     ―1441

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mm (Pく0.01) ク ラ ス で 有 意 に 増 加 し て い た が ,90mmと100mmク ラ ス で は 増 加 し て い な かっ た 。 ま た , 体 重 は100mmクラ ス を 除 く ,50‑80mm ク ラ ス(Pく0.001),90mm(Pく0.01) クラス では 有意に 増加 してい た。

こ の 結果 は , 小 型 ・ 未 成 熟(50‑70 mm)の巻 貝は大 型・ 成熟(80‑100 mm) 個体に比べて高い成長率を示すことを意味している。

  シ ライト マキ バイの 餌を 探索す る能 カと餌 の選 好性を 室内 観察で 確か めた 。この 観察 では,8種類 の餌 (イワ シ,多毛類,ホタテガイ,カキ,

アサ リ,イ ガイ,エビ,イカの死肉)を与えた。本種は餌由来の化学刺激 を介 して餌 を認識しており,接触認識型(contact chemoreception)ではな く,むしろ距離認識型(distance chemoreception)の餌探索を行うと考えら れた 。また ,加熱した肉よりも新鮮な肉に対して敏感に反応し,これらの 餌を3.8士0.83分から23.1士3.12分の短時間で発見した。特に魚,多毛類,

貝 類 を好み ,こ れらの 摂餌 に掛け る時 間は10分以 上だっ たの に対し ,エ ビ で は2分 ,イカ では1分ほ どしか 摂餌 しなか った 。さら に, 餌ごと の消 費 量 と同 化 効 率 も 調 べ た 。日 内 消 費 量 の最 高値は イワ シ(41.79g士0.81 SD)で 記 録 さ れ ,次 い で ホ タ テ ガ イ(33.35g士0.59 SD),多毛 類(29.48g 士0.54 SD), カ キ(28.19g士0.78 SD)の 順 だ っ た 。 殻 長(mm)と そ れ ぞ れ の 餌の 消 費 量(mg乾 燥 重 量 ) の 間に は 正の 相関 が見ら れ, 回帰係 数は イワシ(r2=0.51),ホタテガイ(r2= 0.50),多毛類(r2: 0.47),カキ(r2= 0.46)で比較的高く,アサリ,イガイ,エビ,イカ(r2=0.003‑0.176)で低か った 。この 結果は前者の餌がシライトマキバイの好む餌であることを示唆 している。同化効率もまたイワシ(36.2―71.6%),ホタテ(38.4‑64.1%),

多 毛 類(36.2‑62.9% ) , カ キ(29.8‑67.3% ) で 相 対 的 に 高 か っ た 。   繁 殖生態 ,年 令と成 長に 関する 結果 は,シ ライ 卜マキ バイ の生活 史が

(1) 卵嚢 内発達 期( 受精卵 から ふ化前 の幼 生期) と(2)底 生期( ふ化     ー1442−

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後から卵塊を産むまでの成体期)の2 期に区分できることを示している。

  

摂餌行動と餌消費量を調べた結果からは,本種は機会的な死肉食・腐肉 食者と考えられるが,室内実験の結果だけからでは,本種が生体を襲う捕 食者である可能性を否定することはできない。本研究で得られた知見は,

将来本種の養殖を行う場合の給餌方法を含めた養殖技術の発展や本種の

資源管理手法の確立に大いに役立っと考える。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   中尾   繁 副査   教授   池田   勉

副査   教授   藤永克昭(道都大学)

副査   助教授   五嶋聖治

    学位論文題名

  Reproductiongrowth and fedingoftheJapaneSeWhelkB勿CC励銘 兜ぬロ〇あぬf;卩くira,1959)(NeogaStropoda:BuCCinidae)     inFunkaBay,HOkaidO,Japan

( 北海 道噴 火湾 に生 息す るシ ライ トマ キバイの生殖と     成 長 , 摂 餌 に 関 す る 生 態 学 的 研 究 )

  北海道 噴火 湾に 生息 する シラ イトマキバイは産業上有用な巻貝であるが,そ の 生活史 に関 する 研究 はな い。 本研究は本種の繁殖生態,年齢と成長,摂食生 態 を 明 ら か に す る 目 的 で 行 わ れた 。19995月か ら2000年10月 まで の間 ,毎 月 採集を 行い ,生 殖巣 の大 きさ と組織学的観察から本種の性成熟過程と生殖周 期 を調べ た。

  卵巣サ イズ と輸 卵管 サイ ズに は同調的な年周期が見られ,消化器官サイズは そ れと逆 の周 期を 示し た。 一方 ,精巣サイズと貯精嚢サイズは互いに逆の周期 で 変化し ,貯 精嚢 サイ ズは 卵巣 サイズおよび輸卵管サイズと同時期に最大とな る 。 雄 の 消 化 器 官 サ イ ズ に は 明確 な 年 周 期 は 見ら れな い。 雄は5月 頃か ら10 月 に か け て 成 熟 し,精 子放 出を 終え た貯 精嚢 をも つ個 体は9月か ら6月ま で観 察 さ れ た 。 雌 の 卵 巣 成 熟 と 卵 形成 は10月 か ら 始ま り, 翌年 の1月に ピー クが あ った。 精巣 から 貯精 嚢へ の精 子輸送と卵巣成熟は低水温期に起こり,精子形 成 と 産 卵 は 高 水 温期に 観察 され た。 交尾 期間 は5月 から8月 まで 続く と考 えら れ る。

  本種の 交尾 ・産 卵行 動, およ び受精卵発達は室内飼育の観察から明らかにし た 。

  交尾は 昼夜 に関 係な く, また1匹の 雌が 交尾 する 雄の かず にはパラツキがあ

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  り,1回あたりの交尾時間 は120375分であ った。ふ化は直達 発生で,産卵の 6―7ケ月後に起こ った。雌の殻長に 応じて卵塊あたりの 卵嚢数,卵塊湿重 量,

  卵嚢の幅,長さ ,高さ,湿重量は 増加する。卵嚢の幅 はそれらの大きさ には関   係しない。

    蓋に形成され る輪紋が年にーつ であることから,こ の輪紋は年齢形質 と見な   され,殻長と体 重の関係を調べた 結果,雌雄とも殻長 増加が体重増加を 上回っ   ており,相対成 長が観察された。 年齢あたりの殻長成 長式は,雌がLr150.52

   l̲e‑0"o‑l8) ) , 雄 がk129991eIo132t225) ) , ま た 年 齢 あ た り の 体 重   成長式は,雌がWt゜101.03(1・e101117(t12.18))2.529j雄がWt 71.12(1‐e.0.132(t.2.25))216512 でそれぞれ表され た。12ケ月間の飼 育の結果,小型・未 成熟(殻長50−70mm

  の個体は大型・ 成熟(80−100mm)個体に比 ぺて高い成長率を 示した。

    餌探索能カと 餌の選好性を,8種類の餌を 用いて室内観察で 確かめた。

    本種は加熱し たものより,新鮮 な生餌に敏感に反応 し,これらの餌を3.8   分から23.1分の短時間で 発見した。特に, 魚,多毛類,貝類 を好み,エピや   イカはあまり好 まない。日内消費 量の最高値はイワシ の41.8gで,次い でホ   タテガイ,多毛 類,カキの順であ った。同化効率もこ れらの餌で高かっ た。本   種は餌由来の化 学刺激を介して餌 を認識しており,距 離認識型の餌探索 を行う   と考えられる。

    シライトマキ バイの生活史は卵 嚢内発達期と底生期 の2期に 区分でき,それ   ぞれの期で得ら れた本研究の結果 は,本種の生態学的 新知見であり,か つ今後   本種の資源管理 手法の確立や増養 殖技術の開発にも極 めて重要な知見を 提供す   るものである。

    よって,本論 文は博士(水産科 学)の学位を授与さ れる資格のあるも のと判   定した。

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