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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博士(地球環境科学)   プウムッサブビーラヌッチ

     学位論文題名

Studies on cyclodextrin ― linked alginate for removal and biodegradation of nonylphenol      (ノニルフェ ノールの除去と 生分解を目的とした      シクロデキストリン結合アルギン酸に関する研究)

学位論文内容の要旨

  ノニルフェノール(NP)は現在広く使われている界面活性剤等が分解されたときに生じ る化学物質で、河川水や底質土壌に存在する汚染物質でもある。たとえば奇形や発がん性 あるいはオスの生殖器異常など、内分泌撹乱作用のため魚類等の水生生物への悪影響が報 告されている。人体への影響はまだ明らかにされていないが、精子減少の一因であるとも 言われている。このような状況下、NPをはじめとする内分泌撹乱物質対策が早急に講じ られるべきであると考える。現在、このような環境汚染物質の除去や拡散防止を目的とし て、新たな吸着剤や微生物による分解法などの研究が活発に行われている。しかしながら、

NPは水に難溶性のため除去は困難であり、より効率的な方法の開発が強く望まれている。

  アルギン酸はコンブなどの海藻類から抽出される酸性多糖で、生物に対して無害である ことから食品工業などで広く使われている。また、カルシウムなどの2価の金属イオンに よルヒドロゲルを形成することから、マイクロカプセル、薬剤徐放性担体あるいは微生物 の固定化などへの応用も注目されている。さらに環境修復の分野でも、アルギン酸ゲルを 用いた汚染物質の微生物分解や吸着剤の開発が試みられている。本研究では、このアルギ ン酸に包摂作用を有する環状オリゴ糖、シクロデキストリン(CD)を結合させた新たな糖鎖 材料を合成し、ゲル形成能、NPの吸着作用およびNP分解微生物の固定化機能などを有す ることを明らかにした。

  本論文は5章から構成されている。

  第1章は序論として、CDの包摂作用、NPの影響と除去方法の現状、本研究の特徴など にっいて解説した。

  第2章では、a ‑CDとアルギン酸の結合による新規吸着材料の合成とその物理化学的性 質について述べた。アルギン酸のカルボキシル基はゲル形成に必須であるため、まず、ア ルギン酸の水酸基を臭化シアンと反応させた。ついで、この活性基に対して6‐アミノ‑a

‑CDを反応させて目的とするCD結合アルギン酸を調製できた。両出発物の量比を変える ことでCDの置換度0.05〜1.58の生成物が得られることが判明した。さらに、p_ニトロフ ェノールをゲスト化合物として、この材料の包摂作用を紫外‐可視、円二色性、核磁気共鳴

‑ 1580

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分光法により確認した。また、CD結合アルギン酸の水溶液を飽和塩化カルシウム水溶液 中に滴下すると球状のゲルビーズが形成できることがわかった。すなわち、CDの持つ包 摂性とアルギン酸のゲル形成能を併せ持つ新規な高分子材料が調製できることが示され た。

  第3章ではCD結合アルギン酸を用いた内分泌撹乱化学物質NPの除去について検討し た結果について述べた。NPは水に対する溶解度が非常に低い(6mg/I」)ため、CDとの包 摂複合体の物性についてほとんど知られていない。NP‑CD包摂体の重水中での1H‑NMR で はCDのH‑3とH‑5のシグナルがわずかに低磁場シフトすることから、CD環内へのゲ ストの取り込みが示唆された。一方、NP由来のシグナルがほとんど観測されないことか ら、NPは会合状態にあることが考えられる。そこで、水溶性の高いNP誘導体でポリエチ レングリコール基を有するノニルフェニル系界面活性剤のCD包摂体を同様の手法で調べ ると、ノニル基由来のメチレン部分の水素が変化しており、NPのアルキル基がCDに包摂 されていると推定できた。このことは、円二色性スペクトルで、通常のフェノ‐ル誘導体 は芳香環部分で包摂され正の吸収を示すのに対し、NPーCD包摂体は弱い負の吸収を示す ことからも支持された。CD結合アルギン酸(DS 0.16)を用いた実験でも同様の結果が得 られ、CD単独の場合と類似した包摂複合体を形成していると推定できた。さらに、CD‑

結合アルギン酸ビーズをカラムに充填してNP水溶液を通ずると、NPがビーズに吸着され、

メタノールで回収できることが確かめられた。  .

  第4章では、NPの微生物分解におけるCD結合アルギン酸ビーズの効果について検討し た結果について述べている。NP分解菌であるSphingomonas cloacaeはアルギン酸ビーズに 固定して培養するとより効果的であることが報告されている。そこで、本研究で得られた CD‑結合 アル ギン 酸ビーズを用いてNPの微生物分解を行った(培養条件:25土20C、 600mg凡のNPを含むyeastnmogenbase(YNB;Difco)broth中、広ロ培養器(4x13cm)で振 盪)。培養後の、走査電子顕微鏡ではCD結合アルギン酸ビーズの断面に多孔質のネットワ ーク構造が見られ、多数の菌体が付着していることが観察された。また、従来のアルギン 酸ビーズと比較すると、菌体数が7倍増加していることが判明した。HPLC分析による培 養液とビーズ中の全NP残存量は、12%であり、効率の良い微生物分解が達成できたこと が示された。

  第5章は総括で、本研究で得られた知見をまとめた。

  以上、本論文では、包摂作用を有する環状オリゴ糖、シクロデキストリンを結合させた 新規多糖誘導体を合成し、内分泌かく乱性環境汚染物質であるノニルフェノールの吸着お よび微生物分解への応用を検討した結果について述べている。CDを導入するにより、汚 染物質の捕捉能カが向上し、さらに固定された微生物の生育が促進されることから、より 効 率の 良い 環境汚 染物 質の 生分 解シ ステ ムの 構築 に寄 与す るこ とが 期待で きる。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Studies on cyclodextrin −linked alginate for removal and biodegradation of nonylphenol

  ( ノ ニ ル フ ェ ノ ー ル の 除 去 と 生 分 解 を 目 的 と し た シ ク ロ デ キ ス ト リ ン 結 合 ア ル ギ ン 酸 に 関 す る 研 究 )

  ノニルフェノール(NP)は現在広く使われている界面活性剤等が分解されたときに生じる 化学物質で、河川水や底質土壌に存在する汚染物質でもある。たとえば奇形や発がん性あ るいはオスの生殖器異常など、内分泌撹乱作用のため魚類等の水生生物への悪影響が報告 されている。人体への影響はまだ明らかにされていないが、精子減少の一因であるとも言 われている。このような状況下、NPをはじめとする内分泌撹乱物質対策が早急に講じられ るべきであると考える。現在、このような環境汚染物質の除去や拡散防止を目的として、

新たな吸着剤や微生物による分解法などの研究が活発に行われている。しかしながら、NP は水に難 溶性の ため除去 は困難 であり、 より効 率的な方法の開発が強く望まれている。

  アルギン酸はコンブなどの海藻類から抽出される酸性多糖で、生物に対して無害であるこ とから食 品工業 などで広 く使われている。また、カルシウムなどの2価の金属イオンによ ルヒドロゲルを形成することから、マイクロカプセル、薬剤徐放性担体あるいは微生物の 固定化などへの応用も注目されている。さらに環境修復の分野でも、アルギン酸ゲルを用 いた汚染物質の微生物分解や吸着剤の開発が試みられている。本研究では、このアルギン 酸ビーズのさらなる高機能化を目指して、アルギン酸に包摂作用を有する環状オリゴ糖、

シクロデキストリン(CD)を結合させた新たな糖鎖材料を合成する方法を検討し、得られた 新規多糖のゲル形成能、NPの吸着作用およびNP分解微生物の固定化機能などについて調べ た。

本研究で はまず 、QーCDとアルギン酸の結合による新規吸着材料の合成とその物理化学的 性質について調べた。アルギン酸のカルボキシル基はゲル形成に必須であるため、まず、

アルギン酸の水酸基を臭化シアンと反応させた。ついで、この活性基に対して6―アミノ−

a―CDを 反応さ せて目的 とするCD結合アルギン酸を調製できた。両出発物の量比を変える     ‑ 1582―

夫 章

逸 志

信 正

俊 文

坂 森

田 古

(4)

ことでCDの置換度0.05一1.58の生成物が得られることが判明した。さらに、〆ニトロフェ ノールをゲスト化合物として、この材料の包摂作用を紫外一可視、円二色性、核磁気共鳴分 光 法により確認した。また、CD結合アルギン酸の水溶液を飽和塩化カルシウム水溶液中に 滴 下すると球状のゲルビーズが形成できることがわかった。すなわち、CDの持つ包摂性と ア ル ギ ン酸 の ゲ ル形 成 能を併 せ持つ 新規な高 分子材 料が調製 できる ことが示 された。

  つ いで、CD結合アルギン酸を用いた内分泌撹乱化学物質NPの包接複合体形成について、

主 として分光学的な手法を用いて検討した。NPは水に対する溶解度が非常に低い(6mg/L) た め、CDとの包摂複合体の物性についてほとんど知られていない。NP−CD包摂体の重水中 で のIH−NMRではCDのH―3とHー5のシグナルがわずかに低磁場シフトすることから、CD環 内/丶丶のゲストの取り込みが示唆された。一方、NP由来のシグナルがほとんど観測されなぃ こ とから、NPは会合状態にあることが考えられる。そこで、水溶性の高いNP誘導体でポリ エ チレングリコール基を有するノニルフェニル系界面活性剤のCD包摂体を同様の手法で調 べ ると、ノニル基由来のメチレン部分の水素が変化しており、NPのアルキル基がCDに包摂 さ れていると推定できた。このことは、円二色性スペク卜ルで、通常のフェノール誘導体 は 芳香環部分で包摂され正の吸収を示すのに対し、NP―CD包摂体は弱い負の吸収を示すこ とからも支持された。CD結合アルギン酸(DS0.16)を用いた実験でも同様の結果が得られ、

CD単独の場合と類似した包摂複合体を形成していると推定できた。さらに、CD一結合アルギ ン 酸ビーズをカラムに充填してNP水溶液を通ずると、NPがビーズに吸着され、メタノール で回収できることが確かめられた。

  さ らに、NPの微生物分解におけるCD結合アルギン酸ビーズの効果について検討した。NP の 分解菌として報告されているSphingomonas cloacaeを合成したCD一結合アルギン酸ビー ズ に固定し てNPの分 解を検討 した。 培養後の 、走査 電子顕微鏡ではCD結合アルギン酸ビ ー ズの断面に多孔質のネットワーク構造は培養前とほとんど変化せず、さらに多数の菌体 が 付着していることが観察され、このビーズによる微生物固定化が可能であることが確か め られた。 また、 培養後の 菌体数 の増加率 やHPLC分析 による培養液とビーズ中の全NP残 存 量 の 測 定 か ら 、 効 率 の 良 い 微 生 物 分 解 が 達 成 で き た こ と が 示 さ れ た 。   以 上の研究によって、包摂作用を有する環状オリゴ糖、シクロデキストリンを結合させ た 新規多糖誘導体が合成可能で、内分泌かく乱性環境汚染物質であるノニルフェノールの 吸 着および微生物分解への応用できることが明らかになり、さらに培養条件の検討などに よ り 、 効 率 の 良 い 環 境 汚 染 物 質 の 生 分 解 シ ス テ ム の 構 築 が 期 待 で き る 。   審 査員一同は、これらの結果を高く評価しまた研究者として誠実かっ熱心であり、大学 院 課程における研鑽や取得単位なども併せ、申請者が博士(地球環境科学)の学位を受け るのに十分な資格を有するものと判断する。

‑ 1583

参照

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