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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) ン ー ナ ・ リ オ ・ デ デ レ ス

    学位 論文 題名

    IN/Iicrodial Demetallization of Crude Oli:     Nickel Protoporphyrin Disodium

    asaR/Iodel Organo‑rvIetallic Substrate

(微 生物 によ る原 油か らの金 属除 去― ニッ ケル ・プ ロト ポルフイリン・

    ナ ト リ ウ ム を 有 機 金 属 の モ デ ル 化 合 物 と し て ー )

学位論文内容の要旨

  二ッケルとパナジウムは原油中に最も多く含まれる重金属で、ポルフィリン及びその類 縁の有機物と結合した形で存在する。これらの重金属は石油の起源や石油形成過程のパイ オマーカーとして使われたり、油井探索時の重要なマーカーとして使われたりもしている。

  メ夕口ポルフィリンに対する注目が集まってきたのは、最近石油精製産業においてより 重い、二ッケルとパナジウムを高い濃度で含有した原油を取り扱わねばならなくなったか らである。これらの重金属は原油中に少量存在しても、精製過程っまり水素化工程などに おいて触媒ヒに不可逆的に吸着し、活性部位への接触を妨害することにより触媒の寿命を 短くする。それ故に原油からのこれらの重金属の除去は経済的、環境的理由からも重要な 精製過程のーっと言えよう。

  現在、環境中の重金属や他の有機汚染物質を処理するのに微生物を利用することが様々 の領域で重要な処理法のーっとして認知されるようになってきた。微生物は広範囲の有機 汚染物質を分解することのできる数々の代謝経路をもっており、それらの代謝経路に関す る生物化学的・分子生物学的要素が複雑に絡んでいて未だに解明されていないものが多い。

それに加えて現在、微生物と重金属間の相互作用の研究も広く行われている。環境的にも 経済的にも重要な焦点となる重金属を効率的に除去する能カをもつ微生物の探索及びその 利用に関する研究は、実用面からも重要な課題である。

  石油中に検出できるメタロポルフィリンを特定し、石油の精製過程における影響を検 討することは重要な課題である。しかしながらこれらのメ夕口ポルフィリンには骨格の違 いや側鎖の違いにより多数の誘導体が存在していることが知られており、それらを相互に 分離することは容易ではない。そこで本研究では容易に市販のプ口トポルフィリンとニッ ケルから合成できるニッケルプ口トポルフィリンニナトリウム(NiPPDS)をモデル化合物 として、これを分解可能な微生物の取得とその分解機構の解析を目的として研究を行った。

1‑ NiPPDS分解微生物のスクリーニングとその分解特性

  北海道の石油備蓄基地周辺の土壌から、NiPPDSを単一炭素源として生育できる約100 菌 株 を 得 た 。NiPPDSの 特 徴 的 な 紫 外部 吸収(398 nm)の減 少を 指標 に、 最も 優れ た

(2)

NiPPDS分 解 能 を 持 っ 株YA‑1を 選 択 し た 。YA‑1株 は 、 グ ラ ム 陰 性 、 好気 性、 桿菌 で、16S rRNA塩 基 配 列 解 析 の 結 果 に 基 づ きPseudomonas azelaica YAー1と 名 付 け た 。YA‑1株 は 唯 一 の 炭 素 源 、 窒 素 源 と し てNiPPDSを 利 用 で き 、 最 大 で77% のNiPPDSを 分 解 す る こ と が で き た 。HPLC分 析 の 結 果 、YAー1は 、NiPPDSを 紫 外 吸 収 ピ ー ク の 異 な る 少 な く と も5つ の 化 合 物 に 分 解 す る こ と が 示 さ れ た 。 さ ら にYA‑1は パ ナ ジ ウム オク 夕工 チル ポ ル フ ィ リ ン に 関 し て は79% の 分 解 が 可 能で ある が、 一方 で パナ ジウ ムテ トラ エチ ルポ ル フ ィ リ ン に 対 し て は 全 く 分 解 能 を 示 さ な か っ た 。

2‑ NiPPDS分解酵素の精襲

  YAh‑l株 の 細 胞 そ の ま ま を 用 い たNiPPDSの 分 解 条 件 の 検 討 を 種 々 行 っ た が 分 解 率 を 80% 以 上 に す る 条 件 は 見 っ か ら な か っ た。 そこ で分 解 酵素 の精 製を 試み た。 その 結果 、 硫 安 沈 殿 分 画 、DEAE Toyopear650M、CMT0yopear1650M、BiogelP‐60ク ロ マ ト グ ラ フイ ーに よっ て、 単一 夕ン パク 質に まで 精 製で きた 。本 酵素 には 新規 の特性があり、こ れ を プ ロ ト ポ ル フ ィ リ ナ ー ゼQrotoporpb血la8e) と 命 名 し た 。 本 酵素 は1本 のポ リベ プ チ ド 鎖 か ら な り 、 そ の 分 子 量 はSDS‐PAGEで は 、39,oooDaで あ り 、 ゲ ル ろ 過 法 で は 34,oooDaで あ っ た 。 酵 素 の 精 製 収 率 はn.3%で あり 、発 酵上 清か ら498倍の 精製 率の 向 上 が 見 ら れ た 。 精 製 し た 酵 素 (19U伍d冫 を 用 い た 場 合 、NやPDSを1時 間 以 内 に95% 以上分解することがで きた。

  本 酵 素 の 至 適pHはpH7.O、 至 適 温 度 は30℃ で あ っ た 。 ま たpH2.0―n、50℃ ま で は 安 定 に 活 性 を 維 持 し て い た 。 酵 素 活 性 は 、FeC13、K3Fe(CM6、ZロCk、CdC12の 添 加によって失われた。

  本 酵 素 の ア ミ ノ 末 端 の ア ミ ノ 酸 配 列 は 、DIN( }GGA皿PQI矼 』YQTSGW´TAGFA斛YIGG で、エぬひ珈U£6rめdesUり屯r£c0恥のぺりプラズム酵素の(Fe)hydrogenaseと75%の類似性 が あっ た。 なお この 酵素 はさ まざ まの 重金 属 汚染 土壌 の浄 化に 重要 な役 割を果たしている と 言 わ れ て い る 。 ま た3種 の 内 部 ア ミ ノ 酸 配 列 DDKu.Hゾ 州SDYIAPD′IVDKnKEE GGKV,I電 鮎 偲ERAEIR己ESTDFAAI.SQLrI:ADL工G,AyQTEFPYFTDMGMSYIVYXD HMMvvWHTSを決定した。

3‑プ ロト 奄ル フィ リナ ーゼ 遺伝 子ク ロー ニン グ の試 み

  ア ミ ノ 酸 の 配 列 を も と に 、 本 酵 素 の 遺 伝 子 の ク ロ ー ニ ング を試 みた 。N末 端配 列、 ま た 内 部 ア ミ ノ 酸 配 列 か ら オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド を 合 成 し 、PCR法 によ る本 酵素 の遺 伝子 の 増幅 を試 みた が、 目的 のサ イズ の増 幅は 見ら れ なか った 。こ れら のオリゴヌクレオチドを プ 口 ー プ と し た ゲ ノ ミ ッ ク サ ザ ン 解 析 で は 、 明 確 な シ グ ナ ル が 見 ら れ た 。

  本 研 究 で は 、 土 壌 よ り 単 離 さ れ た 細 菌YA‑1株 が、 二 ッケ ルプ 口ト ポル フィ リン ニナ ト リ ウ ム(NiPPDS)を 効 率 よ く 分 解 す る こ と を は じ め て 見 い だ し た 。 こ れ ま で にHPLCに よ るポ ルフ ィリ ン の分 離検 出に 関す る多 くの 報告 があ るが 、原 油中 のニ ッケルとバナジウ ム とポ ルフ ィリ ン 複合 体に 関し ては 全く 調べ られ てい ない 。ま た重 金属 廃棄物の微生物処 理 に関 する 報告 も 散見 され るが 、二 ッケ ルプ ロト ポル フィ リン の微 生物 学的分解に関する 研 究は 未だ に報 告 され てい ない 。そ うい った 意味 で、 本研 究に おい てプ ロトポルフィリナ ー ゼの 精製 を行 っ たこ とは 、今 後の 微生 物分 解に 関す る詳 細な 研究 を行 っていく上で重要

(3)

な知見をもたらしたといえる。本研究ではその遺伝子の単離までには至らなかったが、本 遺伝子が取得できれば、原菌株での酵素の生産量の向上に加え、原油中でも全く生育阻害 を受けない微生物への導入による更に効率のよい脱重金属のプ口セスの構築に応用できる ものと期待される。

(4)

学位論文審査の要旨 主査    教授    冨 田房男 副査    教授    横 田   篤 副査   助教授   浅野行蔵

     学位論文題名

    IVIicrodial Demetallization of Crude Oli :     Nickel Protoporphyrin Disodium

    asarvIodel Organo‑Metallic Substrate

(微生物による原油からの金属除去―ニッケル・プロトポルフィリン・

     ナ ト リ ウ ム を 有 機 金 属 の モ デ ル 化 合 物 と し て − )

   本論文は、4 章からなり、図25 、表 16 、文献71 を含む総頁数140 の英語論文である。

ほかに参考論文3 編が付されている。

   ニッケルとバナジウムは原油中に最も多く含まれる重金属で、ポルフィリン及びその類 縁の有機物と結合した形で存在する。これらの重金属は石油の起源や石油形成過程のバイ オマーカーとして使われたり、油井探索時の重要なマーカーとして使われたりもしてい る。近年、石油精製産業においてニッケルやバナジウムなどの重金属の存在による原油精 製過程っまり水素化工程などにおける触媒上への重金属の沈着とその結果生じる触媒の寿 命低下が問題となっている。一方現在、環境中の重金属や他の有機汚染物質を処理するの に微生物を利用することが様々の領域で重要な処理法のーつとして認知されるようになっ てきた。環境的にも経済的にも重要な課題となる重金属を効率的に利用可能な資源から除 去する能カをもつ微生物の探索と研究解明は、実用面からも重要な研究課題である。

   以上の背景から、本研究では原油中からの重金属の微生物除去としてニッケルプロトポ ル フ ィリ ンニナ トリ ウム (NiPPDS) を 有機 金属 化合物 のモ デル 化合 物とし て用 い、

NiPPDS 分解菌の探索とその実用化を目指した研究を行った。

   北海道の石油備蓄基地周辺の土壌を微生物源としたスク1 」ーニングの結果、NiPPDS を

分解する細菌YA 一 1 株を単離した。本菌は、NiPPDS をすくなくとも5 つの化合物に分解

(5)

し た 。 こ れ ら の 化 合 物 は 、NiPPDSの 特 徴 的 な 紫 外 部 吸 収(398 nm)を 示 さ ず 、 NiPPDSの 分解産物 と推定さ れた。ま た、この 分解反応の 過程に於いてNi ゛がそれらの分 解 に 従 い徐 々 に水 に 移 行さ れ 、YA‑1に よって分解 されて行 くことが 示された 。っまり 、 水層のNi ゛の量は増加し、逆に有機層のNi ゛の量は減少したことを示していた。しかしな が ら 、未 分 解NiPPDSと その り ガ ンド で あるPPDSは 非 極性 物 質で あ り 、有 機 層に 残 存 し て いた。これより金属複合体から解離されたNi ゛の量は酵素反応前後の間では明らかに違 い が あ っ た 。 な お 有 機 層 中 の 未 分 解 NiPPDSの 量 は398nmで 検 出 で き た 。   YAー1株 は グ ラ ム 陰 性 、 好 気 性 、 桿 菌 で 、16S rRNA塩 基 配 列 解 析 の 結 果 に 基 づ き Pseudomonas azelaicaと 同 定さ れ、そ れに従し ゝこの菌 株をPseudomonas azelaica YA‑

1と名 付 け た。 加 えて 本 菌 は唯 一 の炭 素 源 、窒 素 源 とし てNiPPDSを利 用できる ことも見 いだした。

  YA‑1株 の 細 胞 を そ の ま ま 用 い るNiPPDSの 分 解条 件 の検 討 を 種々 行 っ たが 分 解率 を8 0%以上 にする条 件は見つ からなか った。そこ で分解率 の向上を 目指し本 酵素の精 製を試 み た。その 結果、一 連の操作 により単 一夕ンバク 質にまで 精製できた。本酵素は、これま で に 見 っか っ てい な い 特性 を 有す る新規酵素 であり、 本酵素をprotoporphrinaseと命名 し た 。 本 酵 素 の 分 子 量 は 、SDS‑I:AGEで は39,OOODa、 ゲ ルろ 過 法 では34,OOODaで あ り 、 単 量体 夕 ンパ ク で ある と 考 えら れ た。 酵 素 の精 製 収率 は11.3%であ り、培養 上清 か ら498倍 の 精 製 率 の 向 上 が 見 ら れ た 。 精 製 し た 酵 素 (19 U/ml)を 用 い た 場 合 、 NiPPDSを1時 間 以 内 に95% 以 上 分 解 する こ と がで き た。 本 酵 素の 最 適 活性pH 7.0、 最 適 温 度は30℃で あ り、pH 2.0―11の間 と50℃ ま で は安 定 に活 性 を 維持 し てい た 。 酵素 活 性は 、FeClヨ`K3Fe(CN)。 `ZnCl2、CdCl:の 添加によ って失われ た。本酵 素のアミ ノ 末 端 の ア ミ ノ 酸 配 列 は 、 Desuロ ・ ・ 〇Wb灯 〇desu伽 打cansの ペ リ ズ マ 酵 素 の

(Fe)hydrogenaseと75%の類似性があった。

  現 在アミノ 酸の配列 をもとに した、本 酵素の遺伝 子のク口 ーニングを試みており、遺伝 子 が取得で きれば少 なくとも 原菌株で の酵素の生 産量の向 上が期待できる。また原油中で も 全く生育 阻害を受 けない微 生物にこ の遺伝子を 導入でき れば、更に効率のよい脱重金属 の プ口セス を構築で きる。い ずれの場 合において も備蓄原 油夕ンク内での処理が可能であ り、本プロセスは十分に実用可能なものと考えられる。

  以 上 の 申 請 者 の 研 究 に よ る 、Pseudomonas azelaica YA一1株に よ るNiPPDSの 分解 は 、NiPPDSの 微生 物 分解 に 関 する 初 めて の 報 告で あ り、YA‑1株 由 来のNiPPDS分 解 酵 素 ととも に学術的 に意義あ る成果で ある。また 、原油中 の重金属除去への実用的、応用的な 寄与も 大きく価 値ある研 究である といえる。

(6)

   よって、審査員一同は、ジーナリオデデレス(Gina Rio Dedeles) が博士(農

学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

参照

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