博士(工学)謝 永桂 学位論文題名
インジウムリン系化合物半導体と絶縁体の界面の制御と 超高周波トランジスタへの応用
学位論文内容の要旨
次世 代情報技術を支える超高速・大容量通信システムの構築には、超高速でかつ、
大 電力 駆動 、低 消 費電 力、 高信頼性を兼ね備えた電 子デバイスが必要不可欠である。
イ ンジウムリン(InP)系化合物半導体を用いた電界効 果トランジスタは、優れた電子輸 送特性を 有し、100GHz以上の超高速動作が可能な電子デバイスとして期待されている。
しかしな がら、化合物半導体においては、良好な絶縁体/半導体界面を形成することが 困 難な ため 、高 速 、か つ、 大電力駆動、低消費電力 動作を可能にする絶縁ゲート形電 界効果ト ランジスタの実現が阻まれている。
一 般に 、絶 縁 体と イン ジウムリン系化合物半導 体接合の界面には高密度の界面準 位 が存 在し 、フ ェ ルミ 準位 のピンニング現象を引き 起こす。これが、デバイスのキャ リ ア密 度制 御を 阻 害し ゲー ト制御特性を劣化させ、 かつ、デバイス特性の不安定性を も たら す。 従っ て 、絶 縁ゲ ート形電界効果トランジ スタの実現には、界面準位を排除 する絶縁 体/半導体界面制御技術と、これに基づぃたデバイス作製技術が求められる。
こ のよ うな 背 景の もと に、本論文は、絶縁体と インジウムリン系半導体界面を、
超薄膜シ リコン界面制御層(Si InterfaceControlLayer;SiICL)によって制御する技術 を確立し 、これを絶縁ゲート形の電界効果トランジス夕(MISFET)および高電子移動度 ト ランジス夕(HEMT)ヘ 応用し、その優れた動作を実証したものである。本論文 は6章 から構成 されている。以下に各章の要旨を示す。
第1章は 序論 で あり 、本 研究 の歴 史的 背景 と目的を述ぺると共に、各章の概要を 記し てい る。
第2章 では、まず、絶縁体/化合物半導体界面に存在しフェル ミ準位のピンニング 現象 を起 こす 界面 準位 につ いて、理論モデルを取り上げその性質 と成因をまとめてい る。次に、これに基づき絶縁体/半導体界面制御方 法として導入した超薄膜シリコン界 面制御層(Si ICL)による界面制御手法を説明してい る。さらに、擬似格子整合にともな うシ リコ ン層 歪み によ る狭 バンドギャップ効果、バンドラインナ ップの変化や量子状 態をも考慮した絶縁体/Si ICL/InP系半導体界面構造の理論解析と設計を行ない、Si ICL の最適膜厚(‑0.5 nm)を 理論的に導き出した。
第3章 では 、Si ICLによ る絶 縁体/InP系化 合 物半導体界面制御について、 実験的 検 討 を 行 な い 、 最 適 化 した 結果 につ いて 述べ てい る。 まず 、本 研究 で 用い たMBE、 ECR‑PCVD、XPSを 含 む 超高 真空 一貫 シス テ ムな どの 界面 形成 と評 価に 用い た各 装置 とそ の原 理に つい て 説明 している。次に、Si ICLを適用した絶縁体/InP系化合 物半導 体構 造の 形成 プロ セ スに つい て、XPS、フ ォト ル ミネセンスなどのその場観察 手法に
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査 副査
教授 教授 教授 教授 助教授
長谷川 雨宮 酒井 福井 橋詰
学 位 論 文 題 名
英機 好仁 洋輔 孝志 保
インジウムリン系化合物半導体と絶縁体の界面の制御と 超高周波トランジスタヘの応用
次世 代の 情報 通 信技 術に おいては、光通信やヮイヤレス通信技術の一層の高 度化が 要 求さ れる 。こ の ため 、超 高周波、大電力、低消費電力、低雑音、高信頼性等 の性能 を 極限 まで 追及 し た電 子デ バイ スが シス テム の基 幹部 品の1っとなると考えら れてい る 。イ ンジ ウム リ ン系 化合 物半導体は、ガリウムヒソ系よりも優れた電子輸送 特性を も ち、 それ を用 い た電 界効 果トランジスタは、現在最も高速動作可能な電子デ バイス と して 知ら れ、 次 世代 デバ イスの有カな候補である。しかしながら、現状では 、ショ ッ トキ ゲー ト構 造 が用 いら れ、しかも、そのショットキ障壁高はガリウムヒソ 系より 一般に低 い。
そこで 、この材料系に良好な絶縁体′半導体界面を形成することができれぱ、低消費 電カで大 電力駆動が可能な絶縁ゲート形電界効果トランジスタが実現できる筈である。
しかし、 これは従来技術では難しい。なぜならば、絶縁体/インジウムリン系化合物半 導 体界 面に は高 密 度の 界面 準位が禁制帯中に発生し、いわゆるフェルミ準位ピ ンニン グ 現象 を引 き起 こ して 、ゲ ←ト制御性を劣化させるとともに、準位の充放電に より、
デ バ イ ス 特 性 に 不 安 定 性 を も た ら し 、 信 頼 性 を 損 な う か ら で あ る 。 こ のよ うな 背 景の もと に、本論文は、著者らの研究室が独自に開発した「 シリコ ン 界面 制御 層(Si ICL)によ る界 面制 御技 術」 をイ ンジ ウム リン 系化 合物 半 導体 に適 用し、良 好な特性をもつ絶縁体′界面を実現する技術を確立するとともに、これを応用 し た絶 縁グ ート 電 界効 果ト ランジスタ(MISFET)および絶縁ゲート高電子移動度 トラン ジ ス タOGHEMDを 試 作 し 、 そ の優 れた 動作 を実 証し たも ので ある 。本 論 文は6章 から 構成され ている。以下に各章の要旨を示す。
第1章 は序 論で あ り、 本研 究の 歴史 的背 景と 目的を述べている。さらに各章の概 要 が紹 介さ れて いる 。
第2章 では、まず、絶縁体′化合物半導体界面に発生する界面 準位の成因に関する モデルについて議論し、それに基づき 超薄膜シリコン界面制御層(Si ICL)により絶縁体
・半導体界面を制御する方法を導入し ている。さらに、この方法をインジウムリン系半 導体 に導 入し た場 合 について、Si ICLの歪みや表 面量子井戸内の量子状態を考慮した 理 論 計 算 に も と づ く 界 面 設 計 を 行 な い 、SiICLの 最 適 膜 厚 を 見 出 し て い る 。
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第3章 では、Si ICLを挿入し た絶縁 体/イン ジウムリン系半導体界面の物性を実験 的 に 検 討 し た 結 果 が 述 べら れ て いる 。 ま ず、MBE、ECR‑PCVD、XPSを 含 む 超高 真 空 一 貫シス テムなど 、本研 究で界面 形成と評 価に用 いた各装 置の原 理と概要 が紹介され て いる。 次に、Si ICLをもつ絶 縁体ー化 合物半 導体構造 の形成 法につい て、Si ICLの MBE成長 やその後 の表面 窒化プロ セスなど を含む 各プロセ スステ ップにお ける、XPS、 フ ォトル ミネセン スなど のその場 観察手法 による 評価を行 い、界 面形成プ ロセスを最 適 化 し た結 果 が 述 べられて いる。最 後に、 最適プロ セスに より実現 したMIS容量素 子 の 電気的 評価を行 い、Si ICLによる絶縁体/半導体界面制御が極めて有効であることを 示 してい る。
第4章で は 、 最適 界 面 形成 プ ロ セス を イ ンジ ウ ム ガリ ウ ム ヒ ソ表面 に適用し 、 MISFETを試 作 し 、デ バ イ スの 電 気 的特 性を 評価し た結果が 述べら れている 。実用的 観 点か ら 、 一 度大 気 に 曝し た 半 導体 表 面に、Si ICLを形成 して、MISFETを作製す る プ ロセ ス が 詳 細に 検 討 され た 。 その 結 果 、Si ICLのMBE成 長 直前 に 、ふっ酸 による 半導 体表面処 理を行う ことが 有望であ ること が見出さ れてい る。この プロセスを適用 し 作 製 さ れ たMISFETの 動 作 特 性を 測 定 し、 従 来 のMISFETと 比較 し て 、ゲ ー ト 制 御 特性 が大幅に 改善され るとと もに、良 好なチ ャネルピ ンチオ フ特性が 得られ、かつ、
ド レ イ ン 電 流 の ド リ フ ト が 、 非 常 に 少 な い こ と を 確 認 し て い る 。 第5章 では 、 歪 み入 りInP系 高 移動 度 トラ ンジスタ (P一HEMD構造に 、SiICLを用 い た絶縁ゲ ートを適 用した 新しいデ バイス について 、その 試作と静 特性・高周波動作 特 性 を 評価 し た結 果につい て述べ ている。 最適化 されたプ ロセスを 用いSiICLを形成 し 挿入した 絶縁ゲー ト構造 をもつInP系高 移動度ト ランジ スタ(P一HEMDでは、ゲート 耐 圧が大幅 に増大し 、ゲー ト漏れ電 流が大 幅に低減した。ゲート長1.6卩mにて、相互 コ ンダクタ ンスの最 大値gm 177mS/mmを得て いる。さ らに、 電流利得 遮断周波数ffヨ GHz、最大 発振周波 数・,m‥=38GHzと いう、実用に耐えうる優れた高周波特性が実現 さ れている 。
第6章では、本論文の結論が述べられている。
これ を 要 する に 、 本論 文 は 、シ リ コ ン界面 制御層(Si ICL)による界 面制御 技術 をインジ ウムリン 系化合 物半導体 に適用 する場合 の界面 構造の最 適設計とプロセスの 最適化を 行うとと もに、 これを適 用した インジウ ムリン 系超高周 波絶縁ゲート電界効 果トラン ジスタを 試作し 、優れた 静特性 と高周波 特性を 実証した ものである。これま で困難で あった化 合物半 導体絶縁 ゲート 電界効果 トラン ジスタ実 用化の可能性を明示 するとと もに、い くっか の有益な 知見を 得ており 、半導 体工学の 進歩に寄与するとこ ろ大であ る。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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