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博士(工学)桜井修次 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)桜井修次 学位論文題名

建築物設 計用雪 荷重の評 価に関する基礎的研究 学位論文内容の要旨

  建築物設計用の雪荷重は、建築基準法施行令第86条の規定によって、積雪の単位重量に建設 地の垂直最深積雪量を乗じて計算することになっており、積雪の単位重量と垂直最深積雪量は 特定行政庁が定めている。積雪の単位重量は、多雪地域では一律に3kgf7nf/cmの値が規定さ れているが、この根拠は必ずしも明らかではない。垂直最深積雪量については、統計資料との 関連が暖味な数値を、各特定行政庁がそれぞれ不統一のまま設定している。また、多雪地域に おける長期雪荷重を最大積雪深の70%に低滅することの意味も極めて不明解である。昭和38 年1月下旬ならびに昭和55年12月下旬から翌年1月下旬にかけて発生した豪雪被害では多くの 建物が倒壊したが、その主たる原因は設計値を大幅に上回った雪荷重によるものとして、現行 法規定の不合理性が強く指摘されてきた。

  荷重評価は、構造設計体系の枠組みの中で位置づけられるものである。今日、信頼性理論に よる構造解析法が実用に供することのできる段階に達し、設計規範として限界状態設計法の導 入が国際的な趨勢となっている。我国では、日本建築学会により1986年の「鋼構造荷重・耐力 係数設計法試案」を経て、1990年に「鋼構造限界状態設計規準(案)」が公表され、従来の許 容応力度設計法に対して限界状態設計法が提示された。さらに1993年には、同学会の「建築物 荷重指針」が改訂され、信頼性理論を背景にした共通の理念の基に各種荷重の統計資料の整備 が行なわれ、設計荷重体系の合理化が図られた。

  本論文は、建築物設計用の雪荷重を評価する上で現在必要とされる基本的事項、すなわち上 述の柵造設計体系における雪荷重の考え方、地上積雪重量の合理的な算定法および屋根上積雪 深の効率的な測定法の開発についてとりまとめたものであり、全6章から構成されている。そ の内容は以下に示すとおりである。

  第1章は緒諭であり、我国が指向している限界状態設計法の基本的概念と国内外の設計規 準・指針における雪荷重評価の現況を概説した。また、既往の研究を概観してその問題点を指 摘した後、本諭文の目的と研究の範囲を1リ]らかにした。

  第2章では、全国362地点(ただし四国と九州を除く)の年最大地上積雪深の統計資料を基     一

に、限界状態設計法において用いられるべき雪荷重の極値分布形の選定を行った。極値I型分 布、極値n型分布、極値m型分布、正規分布および対数正規分布の合計5穏の確率分布形につ いて、観測記録への適合度をFillibenの方法によって検定し、極値I型分布あるいは極値m型分

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布 がよく適合する地点 が多いことを明らかにした。 全国単一の確率分布形を用 いる場合には、

確 率分布形のパラメー タの算定あるいは他の荷重と の組み合わせにおける雪荷 重係数の算定に つ い て の 数 値 計 算 上 の 便 宜 さ を 考 慮し てく 極値I型 分布 を採 用 する こと を提 案 して いる 。   限界状態設計法では 、荷重の大きさを表わす指標 として再現期待値が用いら れることから、

そ の 適切 な評 価が 必 要で ある。本章では、極値I型 分布を用いて全国各地の年 最大積雪深の再 現 期 待 値 を10t 100年 の 再 現 期 間 の 範 囲 で 求 め 、 そ れ ら の 推 定 誤 差 を 併 せ て 示 し た 。

  第3章 では 、 年最 大積 雪深 を年最大積雪重量へ変 換するための等価単位積雪重 量を得ること を 目的として、これら両 者の関連について検討して いる。積雪重量に関する観測 資料は極めて 少 ないが、幸い北海道か ら新潟県までの広範な多雪 地域12地点において、積雪重 量と積雪深の 継 続的な同時観測記録が 得られている。設計に用い る荷重の大きさとして再現期 待値を用いる こ とが合理的であること から、年最大地上積雪深と 年最大地上積雪重量の両者の 再現期待値に つ いて、同一再現期間に おける相互関係を検討した 。その結果、12の観測地点が 異なる気象条 件 を有する広範な地域に 分布しているにもかかわら ず、等価単位積雪重量は地域 にかかわりな い 係数 とし て得 られ 、 再現 期間10〜100年の 範囲 に おいては、極値I型分布を用 いて算定した 年 最大 積雪 深の 再現 期 待値H(cm)に 、等 価単 位積 雪 重量p(p= 0.073、厨十237(kgfim2an))

を 乗ずることによって、 年最大積雪重量の再現期待 値を評価することができるこ とを確かめて いる。前章にお いて、極値I型分布を設定し て各地の年最大積雪深の再現 期待値を示したので、

こ れ と 併 せ て 多 雪 地 域 の 地 上 積 雪 重 量 の 合 理 的 な 評 価 が 可 能 で あ る 。

  第4章で は、 雪荷 重十 固 定荷重の組み合わせ における雪荷重係数の地域 分布特性について検 討 した。限界状態 設計法においては、荷重に関 する観測資料の統計的性質 を荷重係数の形で反 映 させ るこ と がで きる 。本 章で は 、第2章 で用 いた 全国362地点の年最大 地上積雪深の統計資 料 を基に各地の雪 荷重係数値を算出し、その地 域分布をコンターマップお よび国土数値情報に おける第一 次地域区画ごとの代表値に よって表わし、荷重係数値の地域的差異の程度を示した。

得 られた結果は、 設計用の雪荷重を建物建設地 の地域特性に応じて、固定 荷重との組み合わせ に用いるこ とを可能にした。

  第5章で は、 建物 規模 ・ 屋根形状・周辺環境 など屋根上積雪荷重に彫響を 与える各椏要囚お よび地上積 雪重鼠との|刈係を観測資料 に基づいて統計的に評価するためには、柑度が商く効率 のよい屋根 上積雪深の測定法のf淵発が 必要であることから、空巾写 真測盈技術を応用した方法 を提案して いる。航空機あるいはカイト気球をJi亅いて撮影した建物屋根の無当期と積雪J川の空 ltlステレオ 写真から、同一地点の標高 をそれぞれ測定して、その高 差を積当深の測定値とみな し、屋根上 での矼接観測値との比牧・検 証を行った。その結果、いずれの撮影方法においても、

実 用的に有効な柑度 で、効率よく大皿に屋根上 積雪深の測定資料を得ること が可能であること を確かめた 。また、航空機を用いて、札幌市内の一定の地域に建つ建築群への応用可f例を示し、

屋根上積雪 の分布形状について考察した 。

第6章では、本論文の結 諭を述べるとともに、残され た課題について言及している。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   城   攻

副査   教授   石山祐二 副査   教授   藤田睦博

副査   教授   秋田谷英次(地球環境科学研究科)

学 位 論 文 題 名

建 築 物 設 計 用 雪 荷 重 の 評 価 に 関 す る 基 礎 的 研 究

  建築物 設計用の雪荷重は、建築基準 法施行令第86条の規定によ って、積雪の単位重量に建設 地 の垂直 最深積雪量を乗じて計算する ことになっており、積雪の 単位重量と垂直最深積雪畳は 特 定行政 庁が定めている。しかし、い ずれも観測資料との関連が 暖味で根拠の不明な数値が設 定 されて おり、見直しが必要であるこ とが強く指摘されてきた。 今日、荷重や耐カのばらっき を考慮し て確率・統計論的に構造物 の設計を行う限界状態設計法が国際的に導入されつっある。

  本論文 は、限界状態設計法の枠組み の中で雪荷重の合理的な算 定法を示すとともに屋根上積 雪の効率 的な測定法を提案したもの であり、次の7章よりなる。

  第1章で は、 我国 が 指向 している限 界状態設計法の基本的概念 と国内外の設計規準・指針に お ける雪 荷重評価の現況を概説した。 また、既往の研究を概観し てその問題点を指摘した後、

本論文の 目的と研究の範囲を明らか にした。

  第2章で は、 全国362地点 ( ただ し四 国と 九州 を 除く)の年最 大地上積雪深の統計資料を基 に 、限 界状 態 設計 法に おい て用いら れるべき雪荷重の極値分布形 の選定を行い、極値I型分布 あるいは 極値m型分布がよく適合する地点が多いことを1リjらかにした。全国!江一の確率分布形 を用4ヽ る場合には、確率分布形のパ ラメータの算定あるいは他 の荷重との組み合わせにおける 雪 荷重 係数 の 算定 にっ いて の数値計 算上の便宜さを考慮して、極 値I型分布を採用することを 提 案し てい る 。ま た、 極値I型分布を 用いて全国各地の年最大積 雪深の再現期待値を10‑‑ 100 年の再現 期間の範囲で求め、それら の推定誤差を併せて示した。

  第3章 では、年最大積雪深を年最大 積雪重盈ヘ変換するための等価!1!位積雪重盈を得ること を 目的と して、これら両者の関迎につ いて検討している。積雪重 盈に関する観測資料は極めて 少なし、 が、幸い北海道から新潟県 までの広範な多雪地域12地点において、積雪重盈と積雪深の 継 続的な 同時観測記録が得られている 。設計に用いる荷重の大き さとして再現期待値をJHいる ことが合 理的であるこIとから、年最 大地上積雪深と年最大地上 積雪重量の両者の再現期待値に つL、て 、同一再現期間における相互 関係を検討した。その結果 、12の観測地点が異なる気象条 件 を有す る広範な地域に分布している にもかかわらず、等価単位 積雪重量は地域にかかわりな い 係数 とし て 得ら れ、 再現 期 間10〜100年 の範 囲に おいては、極 値I型分布を用いて算定した 年 最大 積雪 深 の再 現期 待値H(cm)に 、等 価 単位 積雪 重量p(p= 0.073、W+237 (kgfim2an))

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を乗ずることによって、年最大積雪重量の再現期待値を評価することができることを確かめて いる。前章において、極値I型分布を設定して各地の年最大積雪深の再現期待値を示したので、

こ れ と 併 せ て 多 雪 地 域 の 地 上 積 雪 重 量 の 合 理 的 な 評 価 が 可 能 で あ る 。     第4章では、固定荷重との組み合わせにおいて、雪荷重のばらっきに応じて決まる荷重の 割り増し係数を全国362地点について算出し、その値の地域的差異の程度を示した。得られた 結果は、設計用の雪荷重を建物建設地の地域特性に応じて、固定荷重との組み合わせに用いる ことを可能にした。

  第5章では、建物規模・屋根形状・周辺環境など屋根上積雪荷重に影響を与える各種要因お よび地上積雪重量との関係を観測資料に基づいて統計的に評価するためには、精度が高く効率 のよい屋根上積雪深の測定法の開発が必要であることから、空中写真測量技術を応用した方法 を提案している。航空機あるいはカイト気球を用いて撮影した建物屋根の無雪期と積雪期の空 中ステレオ写真から、同一地点の標高をそれぞれ測定して、その高差を積雪深の測定値とみな し、屋根上での直接観測値との比較・検証を行った。その結果、いずれの撮影方法においても、

実用的に有効な精度で、効率よく大量に屋根上積雪深の測定資料を得ることが可能であること を確かめた。また、航空機を用いて、札幌市内の一定の地域に建つ建築群への応用事例を示し、

屋根上積雪の分布形状について考察した。

  第6章で は、本論 文の結 諭を述べ るとともに、残された課題について言及している。

  これを要するに、著者は、建築物設計用雪荷重の合理的な評価方法について検討を行い、構 造設計上有益な新知見を得ており、建築構造学の進歩に貢献するところ大なるものがある。

  よ って著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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