代数学2 No.2 2006.10.4
1.2 連立方程式と行列
担当:市原連立方程式の行列表示
! "
連立方程式
a11x1+a12x2+· · ·+a1mxm=b1
...
an1x1+an2x2+· · ·+anmxm=bn
に対し,
A=
a11 a12 · · · a1m
a21 a22 · · · a2m
... ... ... ...
an1 an2 · · · anm
, B=
a11 a12 · · · a1m b1
a21 a22 · · · a2m b2
... ... ... ... ...
an1 an2 · · · anm bn
をそれぞれ係数行列,拡大係数行列と呼ぶ.
ここで,X=
x1
x2
...
xm
とおけば,連立方程式はAX=Bと行列の積で表される.
これを連立方程式の行列表示という.
# $
例題3連立方程式
+x−y+ 7z= 5
−4x+y−4z=−1 の係数行列,拡大係数行列をかきなさい.
行列の基本変形
! "
与えられた行列に対し,次の三種類の操作を行基本変形という.
(1)ある行に0でない定数を掛ける (2)ある行に他の行の定数倍を加える (3)二つの行を入れ替える
# $
定理2 (連立方程式と行基本変形) 連立方程式の拡大係数行列Bに,行基本変形を繰り返して得
られた行列をB#とする.このとき,B#に対応する連立方程式の解ともとの連立方程式の解は一致 する.
2
! 掃出法 "
与えられたn行m列の行列Bに対し,次に述べるような,行基本変形を繰り返し行う手続き(アル ゴリズム)を掃出法という.
! "
Step 1.Bの第1列をみる. (1,1)成分から(n,1)成分が全て0ならば,そのまま次のステッ プへ進む.そうでない場合, (1,1)成分から(n,1)成分のうち,絶対値の最大のものが第1行に くるように行の入れ替えを行う.次に,第1行に(1,1)成分の逆数を掛けて(1,1)成分を1に する.こうして得られた第1行に適当な数を掛けて第2行に加え, (n,1)成分を0にする.同 様に第(n−1)行から第2行にも,第1行に適当な数を掛けて加え, (n−1,1)成分,. . ., (2,1) 成分を0にする.
...
Stepk.Bの第k列をみる. (k, k)成分から(n, k)成分が全て0ならば,そのまま次のステッ プへ進む.そうでない場合, (k, k)成分から(n, k)成分のうち,絶対値の最大のものが第k行 にくるように行の入れ替えを行う.次に,第k行に(k, k)成分の逆数を掛けて(k, k)成分を1 にする.こうして得られた第k行に適当な数を掛けて第n行に加え, (k+ 1, k)成分を0にす る.同様に第k行以外の行に第k行に適当な数を掛けて加え, (j, k)成分(ただしj"=k)を0
#にする. $
拡大係数行列を掃出法により変形する事によって,決められた手続き(アルゴリズム)で連立一次 方程式を解くことができる.
# $
例
連立一次方程式
x−y= 3 y−z=−1 z+x= 2
拡大係数行列は
1 −1 0 3
0 1 −1 −1
1 0 1 2
基本変形で変形する.
1 −1 0 3
0 1 −1 −1
1 0 1 2
−−−−−→#3−#1
1 −1 0 3
0 1 −1 −1
0 1 1 −1
−−−−−→#3−#2
1 −1 0 3
0 1 −1 −1
0 0 2 0
#1+#2
−−−−−→
1 0 −1 2 0 1 −1 −1
0 0 2 0
#3×12
−−−−→
1 0 −1 2 0 1 −1 −1
0 0 1 0
#2+#3
−−−−−→
1 0 −1 2 0 1 0 −1
0 0 1 0
#1+#3
−−−−−→
1 0 0 2
0 1 0 −1
0 0 1 0
対応する連立方程式を考えて,よって解は,
x= 2 y=−1 z= 0
注意 掃出法は,コンピュータでの数値計算と理解しやすさのことを考え,なるべく機械的に計 算できるようにしている.そのために, 必ずしも効率的な手続きにはなっていない.実際に問題 を解く場合は,基本変形を行う順序など,やりやすいように工夫した方が良い.
3
代数学2 No.2 2006.10.4
1.2 連立方程式と行列
担当:市原問題3 次の連立方程式の拡大係数行列をかき,行基本変形(掃出法)で解を求めなさい.
(1)
+x−2y= 9
−3x+ 8y=−1
(2)
x−y+z= 5 3y+ 2z= 7
−z+ 4x=−9
(3)
x−2y−3z=−6 2x−y+ 3z= 3
−3x+ 2y−3z=−2