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地質学雑誌第 116 巻補遺, ページ,2010 年 9 月 Jour. Geol. Soc. Japan, Vol. 116, Supplement, p , September 糸魚川ジオパークの地質巡り * Geological excursion

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© The Geological Society of Japan 2010

糸魚川ジオパークの地質巡り

Geological excursion in Itoigawa Geopark

竹内 誠

1

 竹之内耕

2

中澤 努

3

Makoto Takeuchi

1

,

Ko Takenouchi

2

and Tsutomu Nakazawa

3

受付:2010年 3 月 8 日 受理:2010年 6 月30日

* 日本地質学会第117年学術大会(2010年・富山)見 学旅行(H班)案内書

1 .名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻 Department of Earth and Planetary Sciences,

Nagoya University, Chikusa, Nagoya 464-8601, Japan

2 .フォッサマグナミュージアム

Fossa Magna Museum, Miyama-koen, Itoigawa, Niigata 941-0056, Japan

3 .独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合 センター

Geological Survey of Japan, AIST, 1-1-1 Higashi, Tsukuba 305-8576, Japan

Corresponding author: M. Takeuchi E-mail: [email protected] 概 要  新潟県糸魚川市及びその周辺には日本有数のヒスイ産地があり,また代表 的な構造線である糸魚川⊖静岡構造線が分布する.糸魚川市はこれらの多種 多様な地質をもとに一般市民への普及活動とジオパークの整備を行ってき た.2009年8月には北海道洞爺湖有珠山,九州島原半島と並んで日本で初めて 世界ジオパークに認定された.一方,2010年春には独立行政法人産業技術研 究所より 5 万分の 1 地質図幅「小滝」(長森ほか,2010)が発行され,糸魚川 ジオパーク内の地質に関する多くの新知見が明らかになってきた.本コース ではその中から,糸魚川⊖静岡構造線の西側に分布する基盤岩類である,青海 ヒスイ産地,約300 Ma 蓮華変成岩,秋吉帯に属する石炭系~ペルム系青海石 灰岩,舞鶴帯に属するペルム系虫川層と琴沢火成岩類及び倉谷変成岩類,舞 鶴帯と秋吉帯の境界断層,そして糸魚川⊖静岡構造線露頭,さらに東側のリフ ティングに伴う火成活動で形成された中新世枕状溶岩を観察する. Key Words 蓮華帯,秋吉帯,舞鶴帯,高圧型変成岩,ヒスイ輝石,フォッサマグナ, ペルム紀付加体,青海石灰岩,剪断帯,糸魚川⊖静岡構造線

Renge Belt, Akiyoshi Belt, Maizuru Belt, High pressure-type metamorphic rocks, jadeitite, Fossa Magna, Permian accretionary complex, Omi Limestone, shear zone, Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line

地形図 1:25,000  「小滝」「糸魚川」 見学コース [ 1 日目]9:00糸魚川駅発(バス)→フォッサマグナミュージアム→フォッサマグナパーク→琴沢採石場→虫川→不動滝→ 不動滝北方採石場→根知(ホテルホワイトクリフ泊) [ 2 日目]8:30ホワイトクリフ発→青海川金山谷出会→橋立ヒスイ峡→デンカ東山切羽→16:00糸魚川駅解散 見学地点 Stop 1 (37°1′32″N,137°52′13″E)  フォッサマグナミュージアム Stop 2 (36°58′11″N,137°52′20″E)   フォッサマグナパーク (舞鶴帯琴沢火成岩類斑れい岩,糸魚川⊖静岡構造線,中新統山本層枕状溶岩) Stop 3 (36°59′35″N,137°50′25″E)  琴沢採石場(舞鶴帯ペルム系虫川層角礫岩,琴沢火成岩類ドレライト) Stop 4 (36°58′43″N,137°50′58″E)  虫川(舞鶴帯と秋吉帯の境界断層) Stop 5 (36°58′28″N,137°50′4″E)  不動滝北方の採石場(姫川コンプレックス珪質岩) Stop 6a (36°58′43″N,137°50′58″E)  青海川(蓮華変成岩) Stop 6b (36°57′47″N,137°45′32″E)  青海川(蓮華変成岩) Stop 7 (36°58′24″N,137°45′55″E)  橋立ヒスイ峡 Stop 8 (36°59′43″N,137°47′6″E)  青海鉱山東山切羽(青海石灰岩の堆積相と石灰石鉱業) Stop 9 (36°59′48″N,137°47′27″E)  青海鉱山東山切羽(古第三系石坂層基底礫岩)

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はじめに  糸いと魚い川がわジオパーク(http://geo-itoigawa.com/)は2009年に 日本で初めて世界ジオパーク(http://www.globalgeopark.org/ publish/portal1/tab59/)に認定された.世界ジオパーク(Geopark) は,ユネスコ(UNESCO)が支援・推進する新しい構想で, 大地(Geo)の公園(Park)のことである.大地(地形や地 質)の重要性だけでなく,大地と生態系や歴史・文化との関 わりを本物から学ぶ大地の学習フィールドとなるべき公園で ある.ジオパークはそれらの自然・文化遺産を保護すること, それらを教育研究に活用すること,及びジオツーリズムとい われる新しいスタイルの見学旅行によって地域振興を図るこ とを目的としている.これら自然・文化遺産の学術的価値と 運営活動を高く評価されているジオパークが世界ジオパーク である.  糸魚川ジオパークの特徴は,糸魚川⊖静岡構造線が南北に 通り,分布する岩石の成因に多様性があること,先カンブリ ア紀から新生代まで時代的にも多様性があること,生物の多 様性を生む原因となった日本海から山岳地帯まで約2800 m におよぶ標高差などあげられる.さらに世界最古のヒスイ文 化や断層にそってつくられた塩の道など,人間と大地の関わ りが深いことも大きな特徴である.糸魚川ジオパークは,特 色ある各エリアをジオサイトと呼び,24の個性あるジオサイ トで成り立っている(http://geo-itoigawa.com/pages/geo_site. html).  糸魚川市は,糸魚川の大地がこのような多彩かつ重要な地 質の分布域であることを認識し,1987年には「フォッサマグ ナと地域開発構想」をまとめ,自然資源(特に地質資源)を地 域振興に活かす大方針を決めた.これに基づき,フォッサマ グナパークやフォッサマグナミュージアム(http://www.city. itoigawa.niigata.jp/fmm/)が整備され,1991年には世界に先駆 けて市内の地質見学場所を「ジオパーク」と呼んだ.以降, フォッサマグナミュージアムと市民が協力して調査活動が行 われ,地学情報が市民や学会に発信されてきた.また,野外 解説板や見学リーフレットも整備されてきた.このように糸 魚川のジオパークは,ユネスコが支援するジオパークとは独 立して整備されてきた歴史をもつ.  本見学旅行では,糸魚川ジオパークを学術的に支える多数 の地質学的に重要な露頭の中から,日本列島の歴史を考える 上で重要な露頭を精選し,見学する. 地 形  日本海から北アルプス小こ蓮れん華げ山(2766 m)までの大きな標 高差がある.高山地域には,日本で最初に確認された氷河地 形があり,非対称山稜が発達している.北アルプスの山脈は 日本海の親不知海岸に続き,断崖をなしている.山岳地帯を 流れる姫川は V 字谷を形成し,日本海に注ぐ下流域では扇状 地を形成している.海岸には小規模な砂丘列がある.また, 青お う み海石灰岩にはカルスト地形が発達しており,とくに石灰岩 地帯の大隆起に起因する深さ日本第 1 位~第 4 位までの竪型 洞窟が存在する.蛇紋岩地帯や東部の新第三系⊖第四系地帯 には,脆弱な地質のため地すべり地形が多く分布する.東部 の焼やけ山やまはフォッサマグナ最北端の活火山であり,溶岩流や火 砕流台地などの火山地形をもつ. 地 質 1 .地質概略  西南日本内帯には,主に中国地方でナップ構造が発達し, 大江山オフィオライト,300 Ma 高 P/T 型変成岩類からなる蓮 華帯,ペルム紀付加体からなる秋吉帯,ペルム紀島弧⊖背弧海 盆系の舞鶴帯とそれに伴うペルム紀付加体の超丹波帯,ジュ ラ紀付加体からなる丹波⊖美濃⊖足尾帯が分布する.中部地方 では,ペルム紀末から三畳紀の変成岩と三畳紀からジュラ紀 花崗岩からなる飛驒帯がこれらのナップ構造を切って,アジ ア大陸側から張り出しており,飛驒帯と美濃帯との間には, 超苦鉄質岩,蓮華帯・秋吉帯・舞鶴帯・超丹波帯の岩石に加 えて,古生代から中生代の正常層が比較的狭い地域に集約さ れて分布する(Fig. 1).  長野県北西部から新潟県西部,富山県東部にかけては,飛 驒山脈の隆起地帯に含まれ,前期白亜紀以降の火山岩類は大 部分削剥されて,それ以前の中・古生界が分布し,露頭の露 出状況も好く,中・古生界研究では重要な地域となっている. しかしながら,青海石灰岩とヒスイについては比較的早くか ら注目されていたが,その他の地質については冬の豪雪と急 峻な地形のために研究例は限られたものとなっていた.1980 年代前半の文部省科学研究費総合研究「飛驒外縁帯の地質学 的岩石学的研究」(代表茅原一也)と「上越帯・足尾帯の構造 地質学的・岩石学的研究」(代表茅原一也)の一連の研究に よって,この地域の中・古生界の全貌が次第に明らかになっ た.また近年, 5 万分の 1 地質図幅「白しろ馬うま岳だけ」(中野ほか,

Fig. 1 Index map of excursion area.

ISTL: Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line, MTL: Median Tectonic Line, TTL: Tanakura Tectonic Line

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2002)と「小滝」(長森ほか,2010)によって,より詳細な地 質が明らかになってきた.  さらに糸魚川地域は糸魚川⊖静岡構造線がとおり,北部 フォッサマグナの西縁に位置し,新潟⊖神戸構造帯(Sagiya et al.,2000)にも含まれるため,中新世のフォッサマグナ形成 に関する研究や,鮮新世以降のテクトニクスに関する研究に おいても重要な地域となっている.  本地域は従来飛驒外縁帯に属するとされてきた.飛驒外縁 帯の定義は地質構造を重視したもの(例えば,野沢・磯見, 1956)と構成岩種を重視したもの(例えば,山北・大藤,1987) があるが,広く一致した定義はまだない.後者では,西南日 本内帯の三郡-蓮華帯,秋吉帯,舞鶴帯に対比される地質は 飛驒外縁帯に含めず,弱~非変成古生界を主体とする地層群 に対して飛驒外縁帯と呼ぶ定義が多くなってきた(例えば, 山北・大藤,1987;栗原,2003;束田ほか,2004).本論でも これに従う.一方,飛驒外縁帯の地質構造の実態は不明な点 が多かったが,Otoh et al.(2003),Tsukada(2003),大藤ほ か(2004)などにより,飛驒外縁帯中に前期ジュラ紀~前期 白亜紀に形成された右横ずれ剪断帯,白亜紀に形成された左 横ずれ剪断帯が存在することが明らかになった.飛驒外縁帯 を含む飛驒帯と美濃帯の間に分布する狭長な構造帯の形成は, このような横ずれ剪断帯が関係していることは確かである.  糸魚川地域の地質は,横川断層(長森ほか,2010)の東側 と西側で大きく異なる(Fig. 2).横川断層は,ほぼ南北に流 れる姫川に沿って分布し,糸魚川⊖静岡構造線に相当する. 糸魚川⊖静岡構造線はフォッサマグナの西側を画する断層で, その西側には先中新統基盤岩類が分布する.  新潟県西部から長野県北西部に位置する白馬岳⊖青海地域 の古生界は,飛驒外縁帯のペルム紀珪長質火砕岩を主とする 正常層白馬岳層とペルム紀小滝層,超苦鉄質岩,蓮華帯の 300 Ma 高 P/T 型変成岩類(蓮華変成岩類)と角閃岩,秋吉帯 のペルム紀付加体姫川コンプレックスと石炭系⊖ペルム系青 海石灰岩を主体とする青海コンプレックス,舞鶴帯のペルム 系虫川層と琴沢火成岩類,倉谷変成岩類からなる(長森ほか, 2010)(Fig. 3).下部ジュラ系来くる馬ま層群は礫岩,砂岩,泥岩な どからなり,蓮華変成岩類や超苦鉄質岩を不整合に覆う.ま た白亜系と考えられる礫岩,砂岩,凝灰岩からなる赤あか禿はげ山やま層 が舞鶴帯を除く地質体を不整合に覆う.赤禿山層の凝灰岩を 不整合に覆って,上部白亜系の一本松山層(石橋,1986)の 安山岩類が分布し,流紋岩質溶結凝灰岩などからなる古第三 系石坂層(富沢・北原,1967;石井,1976;石橋,1986)が 一本松山層・赤禿山層・秋吉帯構成岩類を不整合に覆う.  糸魚川地域の新第三系は,下位より戸倉山層,山本層,今 井層,仙せん翁のう沢ざわ層,根ね知ち層,ニゴリ川層,海川層,谷たん根ね層及び 跡 あと 杉 すぎ 山 やま 層に区分される(長森ほか,2010)(Fig. 3).これら のうち,横川断層に沿って分布する戸倉山層,山本層,今井 層及び跡杉山層などの火山岩類は,横川断層の西側にも分布 し,先新第三系を不整合で覆う.

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 ここで使用した“コンプレックス”という用語は,岩相・ 時代・構造的特徴で定義される構造層序区分による基本単元 である(中江,2000).付加体では従来の層群や層といった岩 相層序区分の概念に適さない点が多いため,前述の構造層序 区分が用いられている. 2 .蓮華帯  青海川上流域と大おおどころ所川がわ上流域には約300 Ma の冷却年代を 示す高 P/T 型結晶片岩(蓮華変成岩類),300 Ma より古い年 代を示す角閃岩(変斑れい岩),ヒスイ輝石岩,曹長石岩,ロ ジン岩等の岩塊などが,蛇紋岩化した超苦鉄質岩中に産する. 松本(1980)はこのような産状を蛇紋岩メランジュとした.  青海川地域の結晶片岩について,Banno(1958)は Omi schistと呼び,泥質片岩の鉱物組み合わせから,緑泥石帯と黒 雲母帯に変成分帯した.また辻森ほか(2000)は糸魚川市西 部の湯ノ谷からエクロジャイト質藍閃石片岩を見いだした. 結晶片岩は冷却年代約300 Ma を示し(Shibata and Nozawa, 1968;辻森ほか,2001a;椚座ほか,2004),西南日本の中国 地方の300 Ma 変成岩に対比されている(Nishimura,1990). 竹之内(2000)及び辻森ほか(2001b)は青海川沿いの結晶 片岩の変形相解析を行い(Stop 6),その運動像について考察 している.  ヒスイ輝石は,小滝地域では河野(1939)によって初めて報 告され,青海地域では茅原(1958)により報告された.それ ぞれ,1956年と1957年に国の重要文化財に指定されている. ヒスイ輝石岩はその内部構造によって3つのタイプに区分さ れている(茅原,1989).ヒスイ輝石岩は蛇紋岩に伴って産す るとされているが(茅原,1989),蛇紋岩中に取り込まれて産 する露頭は少ない.小滝川硬玉産地(通称,小滝ヒスイ峡) や青海川橋立の硬玉産地(通称,橋立ヒスイ峡)(Stop 7)に ヒスイ輝石岩の巨岩転石がある.明星山西側の崖錐帯の中に も岩塊として含まれる(茅原,1989).  ヒスイ輝石岩からは519±17 Ma,512.3±6.9 Ma(二次イ オン質量分析装置によるジルコンの局所 U-Pb 年代測定法) の年代が得られており,沈み込み帯深部での超苦鉄質岩とア ルカリ度の高い流体との交代作用の時期を示していると考え られている(茅原,1987;椚座ほか,2002;Tsujimori et al., 2005).ヒスイ輝石岩や角閃岩は,形成年代が蓮華変成岩と異 なり,蓮華帯に含めることは不適当である.しかしながら, それらの帰属は未詳であるため,本稿では,この点について は今後の議論にゆだね,これらを一括して蓮華帯に含まれる ものとしておく. 3 .秋吉帯  本地域の秋吉帯構成岩類は石炭⊖ペルム系青海石灰岩及び 玄武岩類からなる青海コンプレックスと,チャート⊖砕屑岩 の海洋プレート層序をもつ姫川コンプレックスからなる(長 森ほか,2010)(Fig. 4).青海コンプレックスは,虫川支流の 源流部で姫川コンプレックスと衝上断層で接し,構造的上位 に位置するが,田と海うみ川がわ上流部では高角度断層で接する.  青海石灰岩を題材とした研究は,わが国における後期古生 代石灰岩の先駆的な研究でもある早坂(1918)以降極めて多 く,内容も多岐にわたる.青海石灰岩の層序あるいは一般的 な地質について扱ったもの(たとえば,長谷川ほか,1969, 1982など)や多岐にわたる分類群の古生物学的研究が行われ ている.一方,堆積学的研究が行われるようになったのは 比較的最近になってからであり,狩野・吉田(1994),中澤 (1997,1998,1999,2001),Nakazawa(2001), 早 川 ほ か (2008)による詳細な微岩相解析により礁の発達過程などが明 らかにされてきた.  青海石灰岩周辺の堆積岩類については,田沢ほか(1984) が泥質岩や珪質頁岩より放散虫化石を報告し,石灰岩以外で 中部ペルム系が存在することをはじめて明らかにした.その 後,宇次原(1985)は岩相に基づき,青海地域の堆積岩類を 西側から小滝オリストストローム層,石灰岩体及び東側のオ リストストローム層,姫川層群,虫川層に区分した.河合 ・ 竹内(2001)は宇次原(1985)の姫川層群中・上部の数地点 から中期ペルム紀放散虫化石を報告し,姫川層群中・上部 をペルム系のチャート⊖砕屑岩シーケンスが繰り返すものと 考え,姫川層群中⊖上部を姫川コンプレックスと呼んだ.一 方,姫川層群下部は珪質岩層や泥質岩優勢層を欠き,主に砂 岩からなり中⊖上部と岩相に相違があることから菅すが沼ぬまコンプ レックスと呼んで中⊖上部層と区別した.しかし Takeuchi et

Fig. 3 Summary of geology in the Itoigawa area (modified from Nagamori et al., 2010).

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al.(2008)は姫川層群中部層と下部層はチャート⊖砕屑岩シー ケンスの上部の砕屑岩部分が向斜構造をなし,中部層と下部 層それぞれ両翼をなすものとし,下部層を姫川コンプレック スに含めた.田沢ほか(2002)は菅沼コンプレックスを姫川 コンプレックスに含めている. ⑴ 青海コンプレックス(青海石灰岩)  本地域の石灰岩に対しては早坂(1921)が青海石灰岩との 名称を与え,長谷川ほか(1969)などは,この地域の石灰岩 体を下位の玄武岩類と併せて青海石灰岩層群と命名したが, 層群を構成する層が定義されていないこと,そして岩相名 + 層群との表記が地層命名規約(日本地質学会,2000)に反す ることから,長森ほか(2010)は石灰岩体に対してのみ青海 石灰岩との名称を与え,青海石灰岩下部の玄武岩類を含めて 青海コンプレックスとした.  石灰岩体は周囲の岩相と断層で接した孤立した岩体である が,下位に相当する玄武岩類とは一部漸移関係にある.石 灰岩は層厚約1,000 m(長谷川・小松,1988)で,Endothyra

帯,Eostaffella-Millerella 帯,Profusulinella 帯,Fusulinella 帯,Triticites 帯,Pseudoschwagerina 帯,Pseudofusulina 帯,Parafusulina 帯,Neoschwagerina-Gifuella

帯,Yabeina-Lepidolina帯の10化石帯に分帯され(長谷川・後藤,1990), 堆積年代は前期石炭紀(ミシシッピー亜紀)ビゼアン期 (Visean)から中期ペルム紀(グアダルピアン世)ミディア ン期(Midian)である.青海石灰岩は海洋島の礁複合体とし て形成されたものであり,礁斜面の重力流堆積物,礁中核部 の堆積物,背礁の砂浜~礁湖の堆積物などからなる(中澤, 1997;Nakazawa,2001)(Stop 8). ⑵ 姫川コンプレックス  姫川コンプレックスは層序と地質構造から,東部,中部, 西部の3つのユニットに区分された(長森ほか,2010)(Fig. 2).西部ユニットの層序は,下位より暗赤褐色泥岩,赤色 チャート(Stop 5),赤色チャート緑色珪長質凝灰岩互層,緑 色⊖黒色珪質泥岩互層,白色珪長質凝灰岩黒色泥岩互層,泥岩 凝灰質シルト岩互層,砂岩を主体とする砕屑岩層の順に重な る(Fig. 4).層厚は600 m 以上である.東部ユニットと中部 ユニットは,下位より緑色珪長質凝灰岩黒色泥岩互層,白色 珪長質凝灰岩黒色泥岩互層,黒色泥岩,薄層理砂岩,厚層理 砂岩と重なり,西部ユニットの赤色チャート以下を欠く.層 厚は600 m 以上である.  姫川コンプレックスの砂岩は長石質アレナイトと石質アレ ナイトの 2 種類の砂岩からなる(Takeuchi et al.,2008).西部 ユニットの砂岩は下部から上部まで長石質であるが,東部ユ ニットの砂岩は,下部は石質であり,上部は長石質に変化す る.長石質砂岩には砕屑性 Ca ざくろ石を伴うものが多いが, 石質砂岩は Ca ざくろ石を伴わない(Takeuchi et al.,2008).  西部ユニットのチャート⊖砕屑岩シーケンス中の赤色チャー トや黒色珪質泥岩,マンガン炭酸塩スフェリュールより中期 ペルム紀前期~後期を示す Pseudoalbaillella longtanensis 群集 帯⊖Follicucullus monacanthus 群集帯(Ishiga,1990)の放散虫 化石が報告されている(田沢ほか,1984;宇次原,1985;河 合・竹内,2001).中部・東部ユニットのチャート及び一部の 珪質泥岩は放散虫化石を含むが,年代を限定できる化石は発 見されていない. 4 .舞鶴帯  宇次原(1985)は,姫川コンプレックスの北東に分布する 地質体を虫川層と姫川変成岩に区分し,虫川層から初めて中 期ペルム紀放散虫を報告した.宇次原(1985)は,虫川層は 頁岩中に変苦鉄質岩⊖片麻岩複合体のブロックを含み,稀に チャート,砂岩,石灰岩ブレッチャのブロックなどを伴って いるオリストストローム層とした(虫川層は小松ほか(1985) にて虫川オリストストロームと呼ばれた).宇次原(1985) はブロックとして含まれる変成岩類が西南日本内帯舞鶴帯 の河こう守もり変成岩(加納ほか,1959)に酷似することなどから, 虫川層は舞鶴帯に属する地層としている.一方,河合 ・ 竹 内(2001)は虫川層の数地点から中期ペルム紀放散虫化石 (Ishiga(1990)の Ps. longtanensis 群集帯⊖Ps. globosa 群集帯)

Fig. 4 Lithologic columnar sections of the Himekawa Complex (Nagamori et al., 2010).

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を報告し,虫川層の層序が不明なことと変成岩などの岩塊を 含むことから虫川コンプレックスと呼んだ.さらに虫川コン プレックスの堆積岩を,泥岩を主体とし玄武岩を伴うという 岩相の類似性と産出する放散虫化石から舞鶴層群下部層から 中部層下部に対比した.  長森ほか(2010)では,従来オリストストロームと考えら れていた虫川コンプレックスの一部に整然層を見出し,層序 の復元を行った.そして堆積性角礫岩と堆積後の変形による カタクレーサイトや断層角礫岩の存在を認めた.長森ほか (2010)は,堆積岩類の層序が明らかになったこと,変成岩や 火成岩岩塊は断層に沿って構造的に挟み込まれたものである ことから,堆積岩類を正常堆積層の虫川層として再定義し, 宇次原(1985)で姫川変成岩類と一括されていた変成岩や火 成岩を倉くら谷たに変成岩類及び琴こと沢ざわ火成岩類と命名した. ⑴ 琴沢火成岩類・倉谷変成岩類  琴沢火成岩類は,斑れい岩,ドレライト,玄武岩からな り(Stop 3),倉谷変成岩類は,塩基性片岩を主とし,泥質片 岩,斑れい岩,トーナル岩及び石英閃緑岩を伴う(長森ほか, 2010).これらの火成岩や変成岩岩塊は虫川層中に断層で挟 み込まれ,長径数 m から数 km のレンズ状岩体として産する.  琴沢火成岩類は,緑色片岩相の変成作用を被っており,ア クチノ閃石,緑れん石,緑泥石,チタン石,パンペリー石が 形成されている.  倉谷変成岩類はマイロナイト化を受けている部分が認めら れ,塩基性片岩と区別が難しい.また,幅数 mm ~数十 cm の優白質黒雲母トーナル岩がこれらの岩石中に網目状に貫入 している.以上の岩石全体が,カタクレーサイト化を被り, 破断面にはしばしばぶどう石脈が形成され,黒雲母石英閃緑 岩が貫入している  長森ほか(2010)は,塩基性片岩中の角閃石から274± 14 Ma,斑れい岩中の角閃石から165±8 Ma の K-Ar 年代を報 告し,それらは Gradstein et al.(2004)によると,それぞれ 前期ペルム紀と中期ジュラ紀の年代を示す.斑れい岩は K2O 含有量が0.10 wt.% と極少量のため,その年代値の信頼度に注 意しなければならないとしている. ⑵ 虫川層  虫川層(長森ほか,2010)は,宇次原(1985)の虫川層とほ ぼ一致し,石質砂岩を挟む泥岩からなる下部と,苦鉄質岩の 礫を主とする角礫岩や砂岩からなる上部に区分された(Figs. 5 and 6).  下部は黒色泥岩を主とし,しばしば石質砂岩を挟む.石質 砂岩は細粒⊖中粒で白色⊖灰色を呈し,単層厚 1~10 cm で黒 色泥岩と互層する.石質砂岩には級化構造が認められる場合 がある.  上部の角礫岩は泥岩基質がほとんどないものから,角礫 が泥岩中にまばらに含まれる含礫泥岩まで認められる(Stop 3).また礫種構成からは,玄武岩やドレライト礫が優勢なも の,泥岩礫が優勢なもの,その中間的性質のもの,チャー ト,珪長質火山岩,結晶片岩を含むもの等がある.泥岩礫に は放散虫化石が確認されるが,保存の良いものは得られてい ない.   虫 川 層 の 泥 岩 か ら は, 放 散 虫 化 石 と し て,Albaillella

asymmetrica,Pseudoalbaillella aff. longicornis,Ps. fusiformis,

Ps. longtanensis,Ps. sp. A が報告されている(宇次原,1985; 河合・竹内,2001).これらの放散虫化石は Ishiga(1990)の Ps. longtanensis群集帯⊖Ps. globosa 群集帯に相当し,中期ペル ム紀の前期を示している. 5 .白亜系-古第三系  横川断層(糸魚川⊖静岡構造線)より西側の先白亜系を覆っ て,白亜系赤禿山層,上部白亜系一本松山層,古第三系石坂 層が分布する.  赤禿山層(Chihara et al.,1979)は,角礫岩,礫岩,砂岩 よりなる下部,砂岩,礫岩,赤色苦鉄質凝灰岩からなる中部, 白色珪長質凝灰岩と赤色苦鉄質凝灰岩からなる上部に区分さ れる(長森ほか,2010).礫岩の礫や砂岩中の岩石片は,花崗 岩,グラノファイアー,石英斑岩,流紋岩,安山岩,チャー ト,オーソコーツァイトなどである.Chihara et al.(1979)は 赤禿山層から材化石 Xenoxylon latipolosum(後に白石(1992) は X. sp. と再鑑定した)を発見し,白亜系手て取とり層群に対比し た.石橋(1986)は穴あな見み山やま西方の赤禿山層(砂質安山岩質凝灰 岩)中のジルコンのフィッショントラック年代94.2±5.9 Ma を報告した.この年代は白亜紀後期を示し,手取層群の堆積 年代(ジュラ紀中期⊖白亜紀前期)とは矛盾する.長森ほか (2010)は,本層が上部白亜系で,福井県に分布する足あす羽わ層群 に対比される可能性があるとしている.  一本松山層(白石,1992)は,下部の安山岩質凝灰角礫岩層 と上部の石英安山岩(以後デイサイトと呼ぶ)質凝灰角礫岩 層に区分される(石橋,1986).石橋(1986)は穴見山東方の 本層中のジルコンのフィッショントラック年代66.4±2.4 Ma を報告し,一本松山層を本地域西方に分布する親おや不し ら ず知火山岩 層(吉村・足立,1976)に対比している.親不知火山岩層か らは89.7±4.5 Ma,96.6±4.8 Ma の安山岩の全岩 K-Ar 年代 が報告されており(山田ほか,2001),年代値では若干相違が

Fig. 5 Geological map of the Maizuru Belt in the Itoigawa area and distribution of shear zone (Nagamori et al., 2010).

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ある.しかしながら,それぞれの地域の隣接する地質関係か ら,親不知火山岩層と一本松山層は対比され,これらは上部 白亜系である.  石坂層については,富沢・北原(1967)によって新第三 系中土層群の最下部の石坂流紋岩質溶岩と命名され,石井 (1976)によって石坂流紋岩層と再定義されたものを,長森ほ か(2010)が層名(累層名)として扱い,石坂層とした.石 坂層は一本松山層,古生界の超苦鉄質岩,青海コンプレック ス及び姫川コンプレックスと下部ジュラ系来馬層群とを不整 合に覆う.本層は流紋岩溶結火山礫凝灰岩を主体として,流 紋岩溶岩及び基底礫岩をともなう(Stop 9).石橋(1986)は 模式地の「白馬岳」図幅地域内の石坂と本地域内のアザキリ 沢の本層中のジルコンより,それぞれ54.7±1.9 Ma,74.8± 2.9 Ma のフィッショントラック年代を報告した.前者と同一 地点の試料より,60.9±6.9 Ma のジルコンのフィッショント ラック年代(玉生ほか,1981),58 Ma の黒雲母 K-Ar 年代 (斉藤ほか,1972)が報告されている.石橋(1986)は74.8± 2.9 Ma の年代を古い砕屑性ジルコンのアニーリングが十分 に行われなかったためとして信頼度は低いとしている.原山 (2006)は石橋(1986)の測定値54.7±1.9 Ma について,広く 用いられている238 Uの壊変定数7.03×10-17 yr-1(Roberts et al., 1968)を用いて再計算し,56.1±1.9 Ma とした.従って,石 坂層の噴出年代は約58⊖56 Ma 頃,古第三紀暁新世から始新世 初頭と考えられる. 6 .新第三系  本地域の新第三系は,下位より戸倉山層,山本層,今井層, 仙翁沢層,根知層,ニゴリ川層,海川層,谷根層及び跡杉山 層に区分される(長森ほか,2010)(Fig. 3).ニゴリ川層,谷 根層及び跡杉山層の詳細は省略する.  戸倉山層(長森ほか,2010再定義)は流紋岩溶結火山礫凝 灰岩及び流紋岩溶岩からなり,基底に淘汰の悪い凝灰質円礫 岩及び凝灰質砂岩を伴い,石坂層を不整合に覆う.斎藤ほか (1972),石井(1976)及び石橋(1986)などにより,従来は古 第三系石坂層とみなされていたが,長森ほか(2010)は戸倉 山南面に露出する流紋岩溶結火山礫凝灰岩から18.5±0.6Ma のフィッショントラック年代を報告し,戸倉山層が前期中新 世後半の乾陸上域での珪長質火山活動によるものであること を示した.  山本層(吉村・石橋,1979命名,長森ほか,2010再定義) は,安山岩溶岩及び火山砕屑岩と玄武岩溶岩及び火山砕屑岩 からなり,少量の堆積岩を挟有する.古生界や戸倉山層を不 整合に覆う(長森ほか,2010).安山岩溶岩及び火山砕屑岩 は,無斑晶質安山岩相,輝石安山岩相,斜長石安山岩相及び 角閃石輝石安山岩相に区分される(長森ほか,2010).玄武岩 溶岩は枕状溶岩を含み,枕状溶岩のローブは最大径12 m に達 する(竹之内・宮島,1996)(Stop 2).姫川下流左岸におけ る無斑晶質安山岩相の K-Ar 年代は16.0⊖15.8 Ma,単斜輝石 安山岩は15.6⊖15.5 Ma である(小安ほか,2007:測定偏差は 非表記).フォッサマグナパーク内の横川断層東側の玄武岩 質安山岩は16.49±0.78 Ma,16.60±0.74 Ma,玄武岩枕状溶 岩は14.36±0.40 Ma,14.34±0.41 Ma の石基 K-Ar 年代を持 つ(竹之内・宮島,2001).  今井層(吉村・石橋,1979命名,長森ほか,2010再定義) は,斜長石斑晶をわずかに含む流紋岩質の塊状溶岩,火山礫 凝灰岩,凝灰岩を主体とする.山本層及び古生界を不整合に 覆う(長森ほか,2010).明確に年代を示すデータは報告され ていないが,周辺の地層との関係より中新世の堆積物とされ ている(吉村・石橋,1979;長森ほか,2010).  仙翁沢層(宮下,1968命名,長森ほか,2010再定義)は,泥 岩相と砂岩相からなる.泥岩相は主に暗灰色の塊状砂質泥岩 からなり,砂岩相は主として不明瞭な層理を伴う明灰色から 暗灰色の細⊖中粒厚層砂岩からなり,塊状の暗灰色砂質泥岩⊖ 泥質砂岩を伴う.山本層及び石坂層を不整合に覆う.長森ほ か(2010)は,正谷・市村(1970)及び米谷ほか(1986)の 有孔虫化石年代や古見ほか(2004)の軟体動物化石の年代か ら,本層を中期中新世の堆積物とした.  根知層(鈴木ほか,1985命名,長森ほか,2010再定義)は, 泥岩相と砂岩相からなり,仙翁沢層を整合に覆う.泥岩相は 灰色の無層理の塊状砂質泥岩及び泥質砂岩からなり,砂岩相 は主として明灰色⊖灰色の細⊖中粒砂岩からなり,砂質泥岩な

Fig. 6 Lithologic columnar sections of the Mushikawa Formation (Nagamori et al., 2010).

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いし泥質砂岩を伴う.遠藤ほか(2005)は, 5 万分の 1 糸魚 川図幅地域内に分布する名立層(本報告の根知層に相当する と推定される)を珪藻化石層序の NPD7Bb 帯(5.5⊖3.5 Ma) に対比した.また長森ほか(2010)は本層の最上部に挟まれ る軽石質凝灰岩中のジルコンのフィッショントラック年代と して5.2±0.3 Ma の値を報告し,堆積年代は後期中新世から 前期鮮新世初期とした.  海川層(島津ほか,1976が海川火山岩類と命名,長森ほか, 2010が再定義)は,安山岩⊖玄武岩溶岩及び火山砕屑岩を主体 として,流紋岩⊖デイサイト溶岩及び軽石質火山砕屑岩と少 量の堆積岩を伴う.海川層の玄武岩火山砕屑岩の岩塊は放射 状節理やジグソー接合を示し,水底堆積の岩相を示すことが 多い(長森ほか,2010).下位層を南部では不整合,北部では 整合ないし軽微な削り込みで覆う(長森ほか,2010).本層か ら3.16 Ma から3.92 Ma の K-Ar 年代が報告され(山本ほか, 1998;早津・河内,1997),本層は鮮新世の水底に噴出した安 山岩の卓越する火山活動によるものとされている. 7 .地質構造 ⑴ 秋吉帯,舞鶴帯及び蓮華帯の境界断層  姫川地域の超苦鉄質岩は秋吉帯姫川コンプレックスの東部 ユニットの構造的上位に水平に近い低角の衝上断層で重なる (宇次原,1985)が,超苦鉄質岩類が秋吉帯青海コンプレッ クスと衝上断層で重なる部分は認められていない.秋吉帯姫 川コンプレックス東部ユニットとそれに衝上断層で重なる超 苦鉄質岩には,ほぼ東西から西北西⊖東南東方向の褶曲軸を もつ褶曲が発達する.同褶曲は姫川流域では正立褶曲である が,虫川付近では南傾斜の褶曲軸面をもつ転倒褶曲である (長森ほか,2010)(Fig. 2).  一方,青海コンプレックス西側の蓮華帯との境界にはほぼ 垂直の断崖がみられ,その断崖をなす石灰岩には水平方向の 大規模なスリッケンラインが観察される.この断崖は両者の 境界断層面であり,両者間の境界は横ずれ断層と推定されて いる(長森ほか,2010).この横ずれ断層は秋吉帯姫川コン プレックス上に超苦鉄質岩が衝上断層でかさなる地質構造を 切っているので,この衝上断層運動の後の横ずれ運動による ものとされている.  秋吉帯姫川コンプレックスと舞鶴帯構成岩類間では,衝上 断層は認められず,両地帯は高角度断層で接する.両地帯境 界付近及び舞鶴帯内ではカタクレーサイト化した部分が多い (Fig. 5).両地帯境界断層は左横ずれ構造を示す(Stop 4).カ タクレーサイト化は琴沢火成岩類及び倉谷変成岩類の岩体中 にも及んでいる.倉谷ではカタクレーサイト化した倉谷変成 岩類の変成岩中に中新世~更新世の活動と推定される安山岩 が貫入している.またこのカタクレーサイト化は中新統山本 層には及んでいない.従って,カタクレーサイト化は中新世 以前の地殻変動によると推定される. ⑵ 糸魚川-静岡構造線  糸魚川⊖静岡構造線はフォッサマグナ西縁を画する断層で, 西側には西南日本の基盤岩類,東側には新第三系が分布す る.フォッサマグナ形成当初は全域に東側沈降の運動であっ たが,その後の東北日本弧の日本海側での広域圧縮テクトニ クスおよび南部フォッサマグナでの伊豆弧衝突に伴う影響な どによって初期の糸魚川⊖静岡構造線は大きく改変され,地 域ごとに異なった性格を持っている(狩野,2006).糸魚川地 域の糸魚川⊖静岡構造線は,姫川沿いの長野県小お谷たり村中なか土つち付 近から北東に延びる中土断層(赤羽,1981)(本地域南方の範 囲外に分布)より北側では横川断層(斉藤ほか,1972)と呼 ばれ,東落ち正断層である(長森ほか,2010).一方中土断層 より南側では,姫川断層(姫川団体研究グループ,1958)(本 地域南方の範囲外に分布)と呼ばれ,当初は東落ち正断層と して活動したが,後に逆断層として活動し(Kato,1992),横 川断層とは性格を異にする断層である.糸魚川⊖静岡構造線 の一部は現在活断層として活動しており,糸魚川⊖静岡構造 線活断層系と呼ばれている(下川ほか,1995)が,糸魚川地 域の横川断層は新第三系仙翁沢層及び根知層に覆われている ため後期中新世には活動が終了していた可能性が指摘されて いる(長森ほか,2010). ⑶ 中新世以降の東南東-西北西方向の断層  本地域では,最も新期の断層として新第三系及び横川断層 (糸魚川-静岡構造線)を切る東南東⊖西北西方向の断層が数 本存在する(長森ほか,2010)(Fig. 2).全般的に北落ちの正 断層で,左横ずれや右横ずれ成分も若干みられる.横川断層 の西部地域の先中新統地域では,これらの断層はカタクレー サイトを切っており,ガウジや断層角礫などの断層岩を伴っ ている.これらの断層は新第三系の山本層,今井層,仙翁沢 層及び根知層を切っており,その上位の海川層を切る証拠は 確認されていない.長森ほか(2010)は,根知層最上部より 5.2±0.3 Ma のフィッショントラック年代を報告し,この断 層に貫入する安山岩から1.1±0.1 Ma のフィッショントラッ ク年代を得たことから,この断層はこの期間に活動したとし ている. 見学地説明 Stop 1 フォッサマグナミュージアム [地形図] 1:25,000「糸魚川」 [位 置] 37°1′32″N,137°52′13″E [説 明] フォッサマグナミュージアムは,1994年 4 月に開 館した糸魚川市立の地質系博物館である.開館以来,約16年 間で約88万人の入館者があった(2010年 1 月31日現在).2009 年 8 月に世界ジオパーク(ユネスコ支援)に認定された糸魚 川ジオパークの情報センターの役割も果たしている. 5 つの 常設展示室があり,第 3 展示室には糸魚川地域の地史(古生 代~新生代),第 4 展示室にはヒスイ,第 5 展示室にはエドム ント ナウマンの生涯と業績がそれぞれ展示されている.第 1 展示室,第 2 展示室には,隕石をふくめ,おもに海外から の鉱物化石標本が展示されている.フォッサマグナホールに は,観測中のウィーヘルト型地震計やサヌカイトの自動演奏 装置がある.中庭では,フォッサマグナが示された石張りの 日本列島の上にヒスイの日時計が象徴的に展示されている.

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Stop 2  フォッサマグナパーク(舞鶴帯琴沢火成岩類斑れい 岩,糸魚川-静岡構造線断層露頭,中新統枕状溶岩) [地形図] 1:25,000「小滝」 [位 置] 36°58′11″N,137°52′20″E [説 明] フォッサマグナパークで観察される糸魚川⊖静岡構 造線の断層露頭は,1990年,糸魚川市が見学のために人工的 に露出させたものである(茅原ほか,1991).遊歩道沿いに野 外解説板が整備され,フォッサマグナや糸魚川⊖静岡構造線 について学習できるようになっている.遊歩道に沿い西から 東へ,舞鶴帯の構成岩石,断層,中新統の火山岩類が観察さ れる(Fig. 7).  断層の西側は,舞鶴帯に属する琴沢火成岩類である変斑れ い岩と虫川層の泥岩・砂岩からなる.泥岩の西方延長の姫川 左岸地域からは,中期ペルム紀の放散虫が産する(宇次原, 1985;河合・竹内,2001).断層の東側は,中新統山本層の 安山岩(小安ほか,2007),中新統戸土層の根知玄武岩(竹 之内・宮島,1996,2006;小安ほか,2007),砂岩・泥岩か らなる.山本層の安山岩は16.49±0.78 Ma と16.60±0.74 Ma, 戸土層の玄武岩は14.36±0.40 Ma と14.34±0.41 Ma の K-Ar 年代(石基)をそれぞれ示す(竹之内・宮島,1996,2006). 根知玄武岩はかつて山本層に含められたが(竹之内・宮島, 2006),広域的な層序の検討により,山本層上位の戸土層に含 められている(小安ほか,2007).長森ほか(2010)は根知玄 武岩を山本層に含めている.  断層露頭では,変斑れい岩と安山岩が,幅約1.5 m の断層 岩類を介して接している.断層露頭の記載は,竹之内・宮島 (2001)によると以下のようである.なお,断層岩類の分類 は,高木・小林(1996)に従う.断層は,東北東⊖西南西走向 で,垂直ないし南南東へ急傾斜する.この断層岩類は,未固結 な破砕物質からなり,一部葉片状の断層ガウジと断層角礫で ある.断層の破砕物質は色や構成物質,相互の切断関係から 4 つに区分されている.変斑れい岩から安山岩の方へ向かっ て,1)赤褐色・暗緑色ガウジ~断層角礫(幅約85 cm),基 質は赤褐色・暗緑色で,変斑れい岩の角礫を多く含む,2)白 色,灰色縞状ガウジ~断層角礫(幅約45 cm),基質は白色・ 灰色で白色化した角礫,チャート・頁岩・変斑れい岩角礫な どを含む,3)茶褐色ガウジ~断層角礫(幅約15 cm),白色化 した角礫,変斑れい岩角礫を含み,肉眼で複合面構造が観察 される,4)暗緑灰色ガウジ(幅約2 cm)に分けられる.  断層ガウジ~断層角礫の定方位試料の線構造(スリッケン サイドについたスリッケンライン,カタクラスティック線構 造,ガウジの伸長線構造)の観察によると,4回の断層運動は いずれも,変斑れい岩が上方へ,安山岩が下方へ移動したこ とを示す正断層である.さらに,垂直成分の移動のほかに水 平成分の移動もあり,多くの断層岩には右横ずれ成分が含ま れているが,2)白色・灰色縞状ガウジ~断層角礫には左横ず れ成分が含まれている.  断層露頭より東へ約400 m の露頭で,枕状溶岩やハイアロ クラスタイトからなる根知玄武岩(竹之内・宮島,1996,2006) が観察できる.枕状溶岩は露頭面の方向により横断面や縦断 面が観察でき,ピローローブの伸びの方向と形態から,北西 から南東へ流下したものであることがわかる.岩石は,新鮮 な部分では黒色で,肉眼では斑晶が小さく認めにくいが,鏡 下では普通輝石,斜長石の斑晶が認められる.岩石はよく発泡 し,気孔には,玉髄,方解石,沸石類,鉄サポナイトが充填 している.全岩の SiO2量は約50%で玄武岩組成である.また, ピロー間空隙には,淡黄色~灰緑色の碧玉が充填している.  また,ここでは,直径12 m ほどのピローローブがある(竹 之内・宮島,1996,2006).幅約40 cm の柱状節理が放射状に 発達し,車軸構造を呈している.巨大ピローローブは外形状, 上下方向につぶれて扁平である.中心部ではほとんど気孔が なく緻密であるが,外側に向かうにしたがい,枕状溶岩の外

Fig. 7 Route map of the Fossa Magna Park. Artificially excavated outcrop of the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line (ISTL) is between metagabbro (Paleozoic) and andesite (Miocene).

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形に調和的につぶれた気孔が多くなる.  根知川の河床へ下りると,ピローローブの伸長方向に大き く斜交する露頭面において,径1 m 程度の枕状溶岩が観察で きる.枕のたれさがりから地層が逆転していないことがわか る.また,枕と枕の隙間には灰緑色の碧玉が充填している. Stop 3  琴沢採石場(舞鶴帯ペルム系虫川層角礫岩,琴沢火 成岩類) [地形図] 1:25,000「小滝」 [位 置] 36°59′35″N,137°50′25″E [説 明] 舞鶴帯に属する琴沢火成岩類と虫川層泥岩の露頭 (Stop 3a)と虫川層上部の堆積性角礫岩の露頭(Stop 3b)を 見学する(Fig. 8).採石場の東側の大谷内集落から採石場に 入るが,必ず採石場手前の事務所に見学の許可をとること.  Stop 3a の露頭では,琴沢火成岩類の珪長質角礫岩とドレラ イト-斑れい岩からなる岩体が虫川層の泥岩と断層で接して 産する.泥岩は剪断変形を受け,角礫状になっている.斑れ い岩は普通角閃石斑れい岩で,細粒部はドレライトである. これらはカタクレーサイト化を受けて変形しているため,斑 れい岩とドレライトの関係は不明である.  上記の火成岩岩体内では,珪長質凝灰角礫岩が塊状のドレ ライトを不整合に覆っているのが確認される(Fig. 9).珪長 質凝灰角礫岩は部分的に細粒になり,チャート様の珪長質凝 灰岩を挟む.珪長質凝灰角礫岩は肉眼では淡灰緑色を呈す る.基質は珪長質凝灰岩で,礫として珪長質火山岩を多く含 み,多結晶石英や珪長質凝灰岩,花崗岩質岩も多少認められ る.礫は角礫で,礫径は2~3 cm である.近年,この露頭の前 面に水がたまりはじめ,不整合部分に近づけない場合がある.  Stop 3b の露頭には,虫川層上部の苦鉄質角礫岩が分布す る.角礫岩は堆積性で,細礫から中礫礫岩である.  礫は角礫からなり,淘汰はよく,基質が少ない礫支持礫岩 である.一部には淘汰がやや悪い部分もある.礫は玄武岩と 泥岩を主とし,ドレライト,斑れい岩,チャート,花崗岩類, 珪長質火山岩類,結晶片岩,マイロナイトなどを伴う.玄武 岩礫は,ガラス質玄武岩からなる.花崗岩類礫はアプライト,

Fig. 8 Route map showing occurrence of the Mushikawa Forma-tion and the Kotozawa Igneous Rocks.

Fig. 9 Occurrence of the Kotozawa Igneous Rocks at the Kotozawa Quarry (Nagamori et al., 2010).

A: Dolerite block in mudstone of the Permian Mushikawa Formation. The dolerite is overlain by felsic tuff breccia unconformably.

B: Close-up of the unconformity at A. C: Close-up of the unconformity at B. D: Felsic tuff breccia.

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トーナル岩,圧砕花崗岩からなり,珪長質火山岩礫は,石英 斑岩,グラノファイアー,凝灰岩などからなる.チャート礫 は海綿骨針を多く含む.結晶片岩礫は黒雲母白雲母片岩から なる.

 Stop 3a の南方約100 m の沢の泥岩から Albaillella asymmetrica,

Pseudoalbaillella aff. longicornis(河合・竹内,2001),やや東方よ

り Albaillella asymmetrica(宇次原,1985),南東方約 1 km の虫川 沿いより Albaillella asymmetrica,Pseudoalbaillella aff. longicornis,

Ps. fusiformis,Ps. longtanensis,Ps. sp. A(河合・竹内,2001)な

どの放散虫化石が報告されており,これらの放散虫化石群集は 中期ペルム紀の前期を示す Ps. longtanensis 群集帯⊖Ps. globosa 群 集帯(Ishiga,1990)に対比される.本層は舞鶴層群下部層から 中部層下部に対比されている(河合・竹内,2001).  舞鶴帯の夜や久く野の岩類と舞鶴層群の境界付近には,従来夜久 野岩類と類似した角閃岩,はんれい岩,花崗岩礫などからな る角礫岩が存在する.この角礫岩については破砕作用に伴っ て形成されたものとする見解(宍戸ほか,1975;石渡,1999; 竹村,1999)と表層堆積物とする見解(Tokuoka et al.,1987; 徳岡ほか,1988)がある.本地域の虫川層上部に産する角礫 岩は非変形で破断面は認められず,明らかに堆積性角礫岩で ある.一方,姫川コンプレックスと倉谷変成岩類や虫川層の 境界付近や虫川層中の断層沿いでは,著しい破砕作用が認め られ,これらの構成岩類には破断面を伴ったカタクレーサイ トや断層角礫岩が分布する.従って,角礫岩には堆積性と構 造性の両方が存在するといえる. Stop 4 虫川(舞鶴帯と秋吉帯の境界断層) [地形図] 1:25,000「小滝」 [位 置] 36°58′43″N,137°50′58″E [説 明] 秋吉帯と舞鶴帯の境界断層を見学する.本露頭は, 虫川と並行する道路から数 m 東側に降りた虫川沿いに露出 している(Fig. 10).本露頭の下流側には,倉谷変成岩類の 塩基性片岩が主として分布し,局所的にトーナル岩が分布す る.この地域で両者の関係がわかる露頭はみられないが,姫 川本流左岸の露頭などでは,倉谷変成岩類にトーナル岩が貫 入しているのが,観察される(長森ほか,2010).本露頭の上 流側や西側の支流では,姫川コンプレックスの砂岩が分布す る.これらの砂岩には多数の断層が発達している(Fig. 10).  境界断層露頭では,舞鶴帯倉谷変成岩類の塩基性片岩と秋 吉帯姫川コンプレックスの砂岩が断層で接する(Fig. 11).断 層面は走向 N60°W 傾斜65°N である.境界では幅約40 cm で ウルトラカタクレーサイトになっており,変成岩起源の緑色 部と砂岩・泥岩起源の黒色部からなる.これらは脆性破壊さ れ固結した細粒物質となっており,わずかに 1 cm 程度の角

Fig. 10 Route map showing occurrence of the fault between the Maizuru Belt and the Akiyoshi Belt.

Fig. 11 Sketch of outcrop of the fault between the Maizuru Belt and the Akiyoshi Belt.

Fig. 12 Composite planar fabric caused by left-lateral shearing along fault between the Maizuru Belt and the Akiyoshi Belt.

(12)

礫を含む.本露頭のウルトラカタクレーサイトの複合面構造 から(Fig. 12),この断層は左横ずれであることがわかる.ウ ルトラカタクレーサイトの上流側には砂岩起源のカタクレー サイト,下流側には角閃石片岩起源のカタクレーサイトが分 布する.これらのカタクレーサイトには方解石脈が多数発 達している.また主断層とほぼ平行及び走向 N55°E 傾斜90⊖ 60°N の断層面をもつ断層がカタクレーサイトを切って発達 している.この断層は幅10 cm 程度のガウジを伴い,またカ タクレーサイト中の方解石脈を変位させている.このような 未固結の断層ガウジや断層角礫などを伴った剪断帯は,秋吉 帯姫川コンプレックス内,舞鶴帯の琴沢火成岩類や倉谷変成 岩類と虫川層の境界付近に分布する(Fig. 5).この剪断帯は カタクレーサイト化より新期の変形作用によるものである.  秋吉帯と舞鶴帯の並置関係については,舞鶴帯内の花崗岩 類の年代と東アジアの地質の対比から,三畳紀⊖ジュラ紀の 右横ずれ運動によって現在のような位置関係になったとされ ている(Fujii et al.,2008). また Takeuchi et al.(2008)は, 本地域の秋吉帯姫川コンプレックスの砂岩組成を検討し,西 南日本のペルム紀の復元を行った結果,ペルム紀以降に右横 ずれを考慮した復元をしている.これらに対して,本露頭の 境界断層は左横ずれを示し,その解釈については今後検討す る必要がある. Stop 5 姫川コンプレックス珪質岩 [地形図] 1:25,000「小滝」 [位 置] 36°58′28″N,137°50′4″E [説 明] 明星セメント株式会社糸魚川工場田海鉱業所の今 井切羽の珪質岩を見学する.珪質岩はセメント製造の副原料 として使用されている.  本露頭では,秋吉帯姫川コンプレックス西部ユニットの下 部の珪質岩が露出している.切羽上部の作業用道路の西側で は,黒色珪質頁岩が約200 m にわたって分布する.中間付近 に幅約2 m の破砕帯がみられる.道路の東側端,尾根の東端 付近では赤色泥岩と赤色チャートの互層が分布する.このよ うな黒色珪質頁岩は北西延長部の田海川沿い付近にも分布す る.しかし虫川沿いには黒色珪質頁岩がほとんど分布せず, 層序の相違がある.虫川沿いの層序との関係は明らかでない が,本露頭及び虫川沿いともに Pseudoalbaillella globosa 群集 帯⊖Follicucullus monacanthus 群集帯(Ishiga,1990)の放散虫 化石が報告されており(河合・竹内,2001),堆積時期は中期 ペルム紀の前期から中期と差異は認められない. Stop 6 蓮華変成岩(黒雲母帯の岩相と変形小構造) [地形図] 1:25,000「小滝」 [位 置] Stop 6a 36°58′43″N,137°50′58″E Stop 6b 36°57′47″N,137°45′32″E [説 明] 青海川流域の変成岩類は,いずれも蛇紋岩メラン ジュ中の大小さまざまなブロックとして包有される(松本, 1980,Fig. 13).蛇紋岩に含まれるブロックには,結晶片岩, 変斑れい岩,ヒスイ輝石岩,アルビタイト,ロジン岩,アク チノ閃石岩,ザクロ石角閃岩,緑色岩類(塊状溶岩,枕状溶 岩,ハイアロクラスタイト,岩脈)などがある(松本,1980).  青海川本流(橋立ヒスイ峡から上流側の金山谷合流点まで) に沿う結晶片岩は,狭長な蛇紋岩を挟んで上流側のブロック と下流側のブロックに分けられる.変成度は,上流側のブ ロックは黒雲母帯(Stop 6a)に,下流側のブロックは緑泥石 帯(Stop 6b)にそれぞれ相当する(Banno,1958).  上流側ブロックは,塩基性片岩と砂質泥質片岩の互層,塩 基性片岩(濃緑色で縞状構造が明瞭でない.一部に珪質層を 含む),泥質⊖珪質片岩(泥質層と珪質層の細互層,一部,凝 灰質層と珪質層の細互層を含む)からなり,下流側ブロック は泥質⊖珪質片岩(泥質層と珪質層の細互層,一部,凝灰質層 と珪質層の細互層を含む),塩基性片岩(淡緑色凝灰質層と 珪質層の細互層)からなる.塩基性片岩と砂質泥質片岩の互 層および塩基性片岩(濃緑色)を除く岩相は,層厚ミリオー ダーの珪質層をよく含んでいる.層面片理は,N⊖S~NNW⊖ SSE走向であり,上流側ブロックは西傾斜,下流側ブロック は東傾斜である.しかし,下流側ブロックの下流側と上流側 の蛇紋岩との境界付近では西傾斜となる.  これら二つの結晶片岩ブロックには,変形小構造がよく発 達している(Uemura et al.,1985).これらの変形小構造の発 達は岩体を通じて一様ではなく,Ⅰ帯からⅣ帯までの変形分 帯が可能である(竹之内,2004,Figs. 14 and 15).すなわち, Ⅰ帯はイントラフォリアル褶曲・クレニュレーション劈開 (二つのタイプ)・キンクバンド・カタクレーサイトバンド・ 小断層,Ⅱ帯はイントラフォリアル褶曲・キンクバンド・カ タクレーサイトバンド・小断層,Ⅲ帯はイントラフォリアル 褶曲・クレニュレーション劈開(四つのタイプ)・キンクバン ド・カタクレーサイトバンド・小断層,Ⅳ帯はイントラフォ

Fig. 13 Geological maps of the Renge Metamorphic Rocks in the Omigawa River area after Matsumoto (1980). Dashed-and-dotted line shows boundary between the eclogite unit and non-eclogite unit of the Renge Metamorphic Rocks (Tsujimori et al., 2000).

(13)

リアル褶曲(二つのタイプ)・クレニュレーション劈開・ひき ずり褶曲・キンクバンド・カタクレーサイトバンド・小断層, の変形小構造でそれぞれ特徴づけられる.また,相互の切断 関係によって明らかにされた変形小構造の形成順序は,延性 度の高い条件から低い条件に向かって形成された時間変形系 列を示している.  これらの変形小構造を,平均延性度と延性度較差の二軸で とらえた変形相の考え(Uemura,1981)を適用して考察する と以下のようになる.Fig. 15に示されるように,変形小構造 のうち,高平均延性度相と低平均延性度相はⅠ帯~Ⅳ帯すべ て共通に,一部の高平均延性度相と中平均延性度相は各帯で 特徴的に出現する.これらの結晶片岩ブロックは,層平行剪 断で形成された高平均延性度相からなる前期変形時相(Early Phase),各変形帯特有な発達を示す高~中平均延性度相から なる中期変形時相(Middle Phase),低平均延性度相からなる 後期変形時相(Late Phase)に区分され,これら3回の変形時 相をへて上昇したと考えられる.これらはそれぞれ,⑴ 沈み 込み帯深所,⑵ ブロックの内部で変形様式が異なった蛇紋岩 メランジュの上昇過程,⑶ 地殻浅所の変形をそれぞれ反映し ていると解釈された(竹之内,2004;Fig. 16).  Stop 6a は,淡緑色塩基性片岩を主体とし,泥質片岩,塩基 性片岩・泥質片岩の互層からなる.変形分帯のⅠ帯とⅡ帯が, カタクレーサイトバンドで接する産状を観察する.イントラ フォリアル褶曲の褶曲軸のプランジ角は,Ⅰ帯では高角,Ⅱ 帯では低角である.対称クレニュレーション劈開(不連続型) は,Ⅰ帯では岩体全体に発達するが,Ⅱ帯では発達しない. カタクレーサイトバンド,キンクバンド,小断層は両帯とも

Fig. 14 Map showing deformation zoning of the Renge Metamor-phic Rocks (Takenouchi, 2004). Spatial development of deformed minor structures shows four deformation zones defined by assem-blage of the structures listed in Fig. 15. Simbols of the structures are referred to Fig. 15.

Fig. 15 (a) Temporal deformation sequence and deformation zoning based on the mutual cut-relations of deformed minor structures and their spatial development in the study area (Takenouchi, 2004). (1) – (9) : Formation order of deformed minor structures in each deformation zone. (b) Deformation phases induced from the temporal deformation sequence and deformation zoning (Takenouchi, 2004).

(14)

発達している.  Stop 6b では,塩基性片岩と泥質片岩の互層からなり,Stop 6a の岩相より再結晶が進んで粗粒である.ザクロ石角閃岩の 小ブロックを包有する.変形分帯のⅣ帯に相当し,Ⅰ帯~Ⅲ 帯には出現しないイントラフォリアル褶曲の軸部に発達する 不連続型の非対称クレニュレーション劈開,シェブロン型の タイト褶曲,ひきずり褶曲を観察する. Stop 7 橋立ヒスイ峡 [地形図] 1:25,000「小滝」 [位 置] 36°58′24″N,137°45′55″E [説 明] ヒスイ文化は縄文時代中期(約5500年前)に,糸魚 川市の長者ケ原遺跡や寺地遺跡においてヒスイ製大珠がつく られたことに始まる(木島,1995).このヒスイを使用した世 界最古の「ヒスイ文化」(茅原,1987)は,大珠の製作から縄 文晩期に勾玉の製作に移行し,弥生時代・古墳時代の勾玉を へて,奈良時代のはじめまで継続した(木島,1995).しか し,それ以降,1938年の小滝川中流におけるヒスイの再発見 (小滝ヒスイ峡)(河野,1939)まで,日本人はヒスイの存在 を忘れ去っていた.橋立ヒスイ峡のヒスイは,1955年に旧青 海町教育委員会の調査によって確認されて1957年に天然記念 物(国指定)となり,その後,科学的な報告がなされた(茅 原,1958).1954年には,東京大学地質学教室による地質調査 が行われ,ヒスイが青海川支流金山谷から発見されたが,学 会や論文では報告されなかった(堀越ほか,2001).  ヒスイは,ヒスイ輝石とオンファス輝石からなる岩石であ るが,以下,ヒスイ輝石岩と呼ぶことにする.  ヒスイ輝石岩は蛇紋岩中のブロックとして産する.蛇紋岩 中に含まれるブロックの種類によって蛇紋岩メランジュが区 分されている(茅原,1989).青海川流域のヒスイ輝石岩は結 晶片岩とともに蛇紋岩中のブロックとして産することを特徴 とする.しかし,産状が露頭として観察できるところはほと んどなく,ヒスイ輝石岩は河床礫として観察される.蛇紋岩 から河床へ直接崩落したと考えられる河床礫の大きさから, ヒスイ輝石岩は最大径数メートルのブロックとして蛇紋岩中 に含まれていると考えられる.また,ヒスイ輝石岩は,来馬 層群形成後に貫入した比較的小規模で狭長な分布を示す蛇紋 岩体にも含まれる(茅原,1989).  橋立ヒスイ峡最大のヒスイ輝石岩(Fig. 17)の記載は,茅 原(1987,1989)によると以下のようである.  明瞭な縞状構造を呈し,大部分が白色の緻密なヒスイ輝石 岩中に,厚さ5~10 cm の淡緑ヒスイ輝石岩が層状に挟まれ る.一部に紫色ヒスイ輝石岩が厚さ12 cm・長さ30 cm 程度の レンズを呈し,両端は白色ヒスイ輝石岩に漸移している.ヒ スイ輝石岩中には,角閃石集合体(化学組成は不明)の薄層 を挟む.顕微鏡下では,ヒスイ輝石を主体とし、少量の方沸 石・曹長石・白雲母を伴う.ヒスイ輝石結晶は粒状,長柱状 であるが,方沸石と曹長石を伴う場合には強い自形を示す.  糸魚川⊖青海地域に産するヒスイの色は,白色系,灰色系, 緑色系,紫色系,青色系,灰黒系などの色がある(茅原,1987, 1989).ヒスイの緑色部分はオンファス輝石(宮島,1996), 青色部分はチタンに富むオンファス輝石(宮島ほか,1997), 紫色部分はチタンに富むヒスイ輝石(Oba et al.,1992)であ ることが明らかにされ,黒色ヒスイには石墨が含まれる(宮 島,2005).  ヒスイ輝石岩の形成年代は519±17 Ma,512.3±6.9 Ma(二 次イオン質量分析装置によるジルコンの局所 U-Pb 年代測定 法)であるが(椚座ほか,2002),その成因については以下 のような考えがある.茅原(1987)は,変斑れい岩や玄武岩 などの原岩が沈み込み帯深所において,アルカリ度の高い溶

Fig. 16 Exhumation process of the Renge Metamorphic Rocks through three deformation phases elucidated by the temporal and spatial deformation sequences added to the fabric analysis ( Takenouchi, 2004).

Fig. 17 A jadeitite boulder in the Hashidate Jade Gorge (Photo: Toshiyuki Yoshikawa).

(15)

液による交代変成作用を受けてヒスイ輝石岩が形成したと考 えた.一方,ヒスイ輝石岩中に含まれるソーダ沸石に包有さ れたヒスイ輝石の自形結晶(Miyajima et al.,1999)を手がか りに,椚座ほか(2000)は,熱水環境から熱水の組成に応じ て,ヒスイ輝石+曹長石,ヒスイ輝石+ソーダ沸石が晶出す ると考えた.Morishita et al.(2007)は,ヒスイ輝石とオン ファス輝石の微量元素組成の検討から,ヒスイ輝石岩が沈み 込み帯で発生した流体からの直接的な結晶化か,もしくは強 度の交代作用を受けて形成されたものと考えた.  ヒスイ輝石岩の成因をさぐる手掛かりとして,蛇紋岩中の 変成岩ブロックからの新鉱物や稀産鉱物の産出がある.苦土 リーベック閃石曹長岩から青海石(Komatsu et al.,1973)・ ストロンチオ斜方ジョアキン石(奴奈川石)(Chihara et al., 1974)が,ヒスイ輝石岩から糸魚川石(Miyajima et al.,1999)・

蓮 華 石(Miyajima et al.,2001)・ 松 原 石(Miyajima et al., 2002)が,ぶどう石岩から新潟石(Miyajima et al.,2003)が それぞれ発見されており,いずれもストロンチウムに富むこ とを特徴とする.また,稀産鉱物として,リューコスフェン 石,ベニト石,トロンチウム燐灰石,コスモクロア,タウソ ン石,輝葉石と斜方輝葉石,ストロナルス石などが報告され ている(宮島,2004;辻森ほか,2001b).このような鉱物学 的情報は,沈み込み帯深部の解明に役立っていくものと期待 される. Stop 8  青海鉱山東山切羽(青海石灰岩の堆積相と石灰石鉱業) [地形図] 1:25,000「小滝」 [位 置] 36°59′43.0″N,137°47′6.0″E 周辺 [説 明] 電気化学工業株式会社青海鉱山の東山切羽におい て,パンサラッサ海洋島起源の青海石灰岩の堆積相を観察す るとともに,糸魚川地区の石灰石鉱業について解説する.  青海鉱山東山切羽には,後期石炭紀(ペンシルバニア亜 紀)の Bashkirian から Moscovian に相当するフズリナ化石帯 (Millerella sp. 帯~Beedeina sp. 帯:長谷川・後藤(1990)の Eostaffella-Millerella帯上部~Fusulinella 帯に相当)が分布し ている.ここでは断層が数多く存在し,これらの断層に挟ま れたそれぞれの石灰岩ブロックの層序学的上位方向はさまざ まな方向を向いているものの,なかでも Fusulinella biconica 帯(中部 Moscovian;長谷川・後藤(1990)の Fusulinella 帯 下部に相当)の層厚は大きく,東山切羽で最も広い分布を示 している(Fig. 18).

 Stop 8a(Fig. 19)では,Fusulinella biconica 帯の礁中核部 (reef core)の石灰岩(Nakazawa,2001)を観察する.礁中 核部の石灰岩は,主に rudstone と boundstone で構成される.

Rudstoneは主に粗粒な粒子からなる石灰岩で,ここでみられ

る rudstone の構成粒子はウミユリ,コケムシ,腕足類,四射 サンゴ類などの生物遺骸片や intraclast からなる.円磨度及び

Fig. 18 Distribution of the fusulinid zones on the Higashiyama quarry wall of the Omi Mine.

(16)

淘汰度は低いものが多い(Fig. 20A).粒子間隙は細粒のペロ イドやミクライト基質を含むこともあるが,顕著に発達する 繊維状セメント(特に radiaxial fibrous cement)に埋められて いることが多い.東山切羽ではこの rudstone に伴ってパッチ 状に,四射サンゴ類,ケーテーテス類,石灰藻類,被覆性微 生物など,多様な原地性造礁生物からなる boundstone がみう けられる(Fig. 20B).Nakazawa(2001)によれば,東山切羽 のMoscovianにはbryozoan-coral boundstone, coral-bryozoan-microbial boundstone, coral-bryozoan-microbial boundstone, stromatolitic boundstone, coral-chaetetid boundstone, chaetetid boundstone,

solenoporacean algal boundstone, phylloid algal boundstoneが

認められる.

 Stop 8b(Fig. 19)では,Millerella sp. 帯(下部 Bashkirian; 長谷川・後藤(1990)の Eostafflella-Millerella 帯上部に相当) の礁斜面(fore-reef slope)の石灰岩(Nakazawa,2001)を観 察する.ここで観察される礁斜面の石灰岩は,主に生物遺骸 片やウーイドなどからなる淘汰のよい grainstone からなり, 多くの場合,粒子間隙が確認できないほどパッキングが密に なっている(Fig. 20D).生物遺骸片はウミユリやコケムシが 多いのが特徴である.石灰岩は,海綿骨針を含むやや石灰質 な珪質岩としばしば互層する(Fig. 20C).また石灰岩自体も 後述のように他の環境で堆積したものに比べやや珪質である ことが多い.石灰岩には,陸上露出の際に有機物で着色した とされる黒色石灰岩の岩片(黒色礫:black pebble)が含まれる ことがある.黒色礫は,青海石灰岩全体をみても,Bashkirian の礁斜面石灰岩に特に多く含まれるという特徴がある.  東山切羽の石灰石の品位については中澤・島内(2006)が 概要を報告している(Table 1).それによると青海鉱山の石 灰石は平均で CaO が54.9%,SiO2が0.9%と極めて高品位であ るが,礁中核部の石灰岩(主に rudstone;B 区および C 区の 石灰石)は,背礁の石灰岩(主に packstone や grainstone; A区西山切羽の石灰石)と比べ,CaO 及び SiO2の含有量は大 きな違いはないが,P2O5が0.03%以上とやや高い傾向がある. P2O5含有量が高い石灰石は化学工業向けとしては問題となる ことがあるため,鉱山では自社基準を設け選別採掘を行なっ ている.一方,礁斜面の石灰岩は石灰質分が強い部分(石灰 質部)と珪質分が強い部分(珪質部)があるが(D 区),珪 質部は SiO2がおおむね40% 以上で,しばしば60% に達するこ ともある.前述のように珪質部(珪質岩)には海綿骨針が多 く見られることから,SiO2の起源は主に海綿骨針と考えられ

Fig. 20 Photographs of the Omi Limestone in the Higashiyama Quarry of the Omi Mine. See Fig. 19 for locations.

A. Thin section of intraclastic bioclastic rudstone (reef-core facies). Grains comprise intraclasts (In) and bioclasts including crinoids (Cr), bryozo-ans (Br), and brachiopods (Bc). Intergranular spaces are occupied mainly with radiaxial fibrous cements. Fusulinella biconica Zone (Moscovian), Loc. HES43, around Stop 8a.

B. Etched slab of coral chaetetid boundstone (reef-core facies). Rugose corals (Taisyakuphyllum: Rc) are encrusted by laminated chaetetids (Ch).

Fusulinella biconica Zone (Moscovian), Loc. HAS, around Stop 8a.

C. Outcrop of alternating beds of limestone (L) and siliceous rock (C), representing slope facies. Millerella sp. Zone (Bashkirian), Loc. HGS, around Stop 8b.

D. Thin section of bioclastic grainstone (slope facies). Grains are densely packed and composed exclusively of crinoids (Cr) and bryozoans (Br).

Fig. 1  Index map of excursion area.
Fig. 2  Geological map of the Itoigawa area.
Fig. 3  Summary of geology in the Itoigawa area (modified from  Nagamori et al., 2010).
Fig. 4  Lithologic columnar sections of the Himekawa Complex  (Nagamori et al., 2010).
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参照

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