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雑誌名 砥粒加工学会誌 = Journal of the Japan Society of Grinding Engineers

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(1)

レーザ歯科治療に用いる光ファイバ先端の加工 第 2報:ファイバ先端の加工材評価

著者 古本 達明, 上田 隆司, 青木 慎太郎, 葛西 惇士

雑誌名 砥粒加工学会誌 = Journal of the Japan Society of Grinding Engineers

巻 52

号 10

ページ 595‑600

発行年 2008‑10‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/12036

(2)

論 文

レーザ歯科治療に用いる光ファイバ先端の加工 第 2 報:各種粉末によるファイバ先端加工性の評価

古本達明*1,上田隆司*1,青木慎太郎*2,葛西惇士*3

Tip processing of quartz optical fiber for dental therapy 2

nd

Report: Evaluation of processing characteristics with various powders

Tatsuaki FURUMOTO, Takashi UEDA, Shintaro AOKI and Atsushi KASAI

Nd:YAG レーザを用いた歯科治療では,出射したレーザ光は石英光ファイバを用いて口腔内部に伝送され,レ ーザ光をレンズで集光させることなく患部に照射して治療が行われる.これまで,治療部位に対してレーザ光の吸 収を効果的に行う手法として,伝送用光ファイバの先端を酸化チタン乳液から製作したペレットで加工する手法を 提案し,加工ファイバ先端におけるエネルギ分配割合を求めてきた.本研究では,酸化チタン粉末に加えて,ジル コニア粉末,二酸化ケイ素粉末,二酸化マンガン粉末を用いて伝送用光ファイバ先端の加工実験を行い,加工ファ イバ先端から出射される直進レーザ光の割合を求め,各粉末が石英ファイバ先端の加工特性に与える影響につい て調べた.その結果,ファイバ先端の加工性は,ペレットに含有された粉末濃度が高いほど,また,加工するレーザ エネルギが大きいほど優れていることが明らかとなった.また,ファイバ先端の加工条件を同一とした場合,二酸化 チタン粉末含有ペレットが最も加工性に優れ,ジルコニア粉末,二酸化マンガン粉末の順に加工性が悪くなり,二 酸化ケイ素粉末ではファイバ先端がほとんど加工されないことがわかった.

Key words: Nd:YAG laser beam, dental therapy, quartz optical fiber, titanium oxide powder, zirconium dioxide powder, manganese dioxide powder, silicon dioxide powder, attenuation

1.緒 言

1964 年に,レーザ光を歯科治療に適用することを目的とし て基礎研究が開始されて以来1),Nd:YAGレーザや炭酸ガス レーザをはじめ,工業分野で用いるほとんどすべてのレーザ 光が歯科分野でも適用されている.これらのレーザ光は,出 射後に各種光ファイバを用いて口腔内に伝送され,ファイバ 先端を口腔内の狭い局所に挿入し,先端から出射されるレー ザ光を患部に照射して治療が行われる.最近では,歯科の二 大疾病であるう蝕や歯周病の治療のみならず2) 3),歯質の耐 酸性付与4),殺菌作用の発現5),鈍麻6)などレーザ光による新 しい効果も確認されている.

Nd:YAGレーザは波長が 1064nmであり,歯質や歯肉の主 成分である水に対する吸収が小さい7).また,歯質は半透過 性の材料であることから,治療のとき効果的にレーザ光を吸 収させるためには,表面に墨などの吸収剤を塗布する必要が あった.しかしながら,実際の治療部位は歯質と歯肉の狭い 局所など,吸収剤の塗布が困難な場所がほとんどであった.

そのため,吸収剤の塗布に代わる新しいレーザ光の吸収方 法が求められていた.

そこで我々は,これらの課題を解決する方法として,臨床 医が一般的に洗口液として使用する乳液に含まれる酸化チ タン粉末を用いて,レーザ光の伝送用ファイバ先端を加工す る方法を提案してきた.そして,出射レーザ光を直進レーザ 光,側面レーザ光,熱エネルギに大別し,ファイバ先端の加 工条件と各エネルギ分配割合との関係について調べてきた8). また,ファイバ先端の加工条件を検討することで,出射レーザ 光のエネルギ分配割合を任意に決めることができることを示し てきた.

本研究では,ファイバ先端の加工に対する検討をさらに進 めるため,酸化チタン粉末に加えてジルコニア粉末,二酸化 マンガン粉末,二酸化ケイ素粉末を用いてファイバ先端の加 工実験を行い,各粉末を用いたときの加工性や加工ファイバ からのレーザ出射特性を調べたので,以下に報告する.

2.ファイバ先端の加工

*1 金沢大学理工研究域:〒920-1192 石川県金沢市角間町 Institute of Science and Engineering, Kanazawa University

*2 金沢大学大学院:〒920-1192 石川県金沢市角間町

Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa University

*3 金沢大学工学部:〒920-1192 石川県金沢市角間町 Faculty of Engineering, Kanazawa University

〈学会受付日:2008年 7月14日〉

2.1 加工用粉末

ファイバ先端の加工に用いる各粉末の物性値を表 1 に,各 粉末をSEM(日本電子(株)製:VSM-6290LVU)で観察した結果 を図 1 に示す9)10).実験に用いるのは,酸化チタン粉末((株) 高純度化学研究所製:TIO12PB),二酸化ケイ素粉末(同社 製:SIO07PB),二酸化マンガン粉末(同社製:MNO02PB),ジ

(3)

表 1 ファイバ先端の加工粉末の性質

ルコニア粉末(同社製:ZRO02PB)の合計 4 種類である.チタ ンおよびジルコニアはいずれも元素周期表の 4A族,ケイ素は 4B族,マンガンは 7A族に属しており,いずれも原子価が+4 の 酸化物系の粉末である.これらの粉末はすべて,常温で安定 しているため取り扱いが容易である.また,酸化チタン粉末は ルチル型のものを用いているため,光触媒として利用されるア ナターゼ型の酸化チタン粉末と異なり,光触媒の効果はほと んど発現しないことが知られている.各粉末の平均粒径は,

1

μ

m~2.8

μ

mのものを用いた.

2.2 加工方法

石英ファイバ先端の加工方法を図 2 に示す.まず初めに,

図 2(a)に示すように各粉末を含有させた加工用ペレットを作 成 す る . 各 粉 末 に つ い て , 精 密 天 秤 ( 島 津 製 作 所 製 : AUX220)を用いて 0.8g 秤量し,別途秤量した 1.2g の蒸留水 に粉末を混ぜて懸濁液を作成する.そして,懸濁液を薄用紙 に染み込ませながら容器に押し込み,水分を蒸発させて固形

の加工用ペレットを作成する.いずれのペレットにおいても,

薄用紙の内部で粉末がほぼ均等に分布していることを確認し ている.このようにして作成した加工用ペレットの外観を図 3 に示す.ペレットは,この他にも含有粉末の濃度による影響を 調べるため,蒸留水 1.9g に対して粉末を 0.1g 含有させ,粉末 の比率を変えたものも作成した.

次に,図 2(b)に示すように石英ファイバの先端を加工用ペレ ットに押し当てながらレーザ光を出射すると,ファイバから出 射されたレーザ光がペレット内部の粉末に吸収され,そのとき 生じた熱によってファイバの被覆材が消失してクラッドが露出 する.さらにレーザ光の出射を継続すると,クラッドやコアの表 面も同様に加熱,溶融され,それらが再凝固することによって 表面が荒らされることとなる.このようにしてレーザ出射を数秒 間継続すると,ファイバ端面から出射されるレーザ光に加え,

荒らされた表面から側面方向にもレーザ光が出射されるよう になる.また,出射レーザ光の一部は,ファイバ先端表面の 再凝固層に吸収されて熱エネルギに変換される.

図 4 は,石英ファイバの先端を酸化チタン粉末で作成した ペレットで加工し,その表面を SEM 観察した結果である.ファ イバ先端は,ペレットに含まれる酸化チタン粉末によって加工 され,ファイバの側面全体に再凝固層が形成されていること がわかる.この領域からレーザ光が出射されるため,ファイバ TiO2 SiO2 MnO2 ZrO2

79.90 46.00 86.94 123.22 密度 kg/m3 4240 2651 5026 5560 融点 ℃ 1870 1610 847 2900 沸点 ℃ 2927 2950 - 4300 熱伝導率 W/m・K 6.53 1.55 - 1.95 熱容量 J/mol・K 55.06 44.46 54.05 56.23

2.65 1.46 2.16 2.19 平均粒子径

μm

1 2.2 2.8 1

5-6.5 7.0 6.0 6.5 モース硬度

屈折率 分子量

粉末

2

μm

2

μm

2

μm

2

μm

(a) 酸化チタン粉末 (b) 酸化ケイ素粉末

2

μm

2

μm

2

μm

2

μm

(c) 二酸化マンガン粉末 (d) ジルコニア粉末 図 1 各粉末の SEM 画像

圧縮

・乾燥

薄用紙 粉末

加工用 ペレット 圧縮

・乾燥

薄用紙 粉末

加工用 ペレット

(a) 加工用ペレットの製作

レーザ照射 ファイバ

先端

先端加工 ファイバ

加工用ペレット

レーザ照射 ファイバ

先端

先端加工 ファイバ

加工用ペレット

(b) ファイバ先端の加工 図 2 ファイバ先端の加工方法

20 mm 20 mm

図 3 加工用ペレット(粉末:ジルコニア)

(4)

表 2 レーザ歯科治療器の仕様

入射レーザ

側面レーザ 石英ファイバ

加工ファイバ先端

熱エネルギ

直進レーザ 反射

レーザ

入射レーザ

側面レーザ 石英ファイバ

加工ファイバ先端

熱エネルギ

直進レーザ 反射

レーザ

 レーザ Nd:YAG

 波長

λ

1064 nm

 ピークパワー P 1 - 4 kW  照射エネルギ E 50 - 990 mJ/pulse  パルス幅

τ

50, 100, 200, 400 μs

 周波数 f 1 - 99 Hz

 ファイバ 石英

 コア径

φ

c 400 μm

 開口数 NA 0.37

 拡がり角

ξ

21.7°

図 5 加工ファイバ先端におけるレーザ出射模式図

ファイバホルダ 石英ファイバ

フォトダイオード

変換回路 ファイバホルダ

石英ファイバ

フォトダイオード

変換回路

端面からは減衰したレーザ光が出射されることになる.

3.実験方法 3.1 実験用レーザ

実験に使用するレーザ歯科治療器((株)アルテック製:

STREAK-Ⅰ)の仕様を表 2 に示す.レーザは,波長が

λ

=1064 nmのパルス発振型Nd:YAGレーザである.発振されたレーザ 光は,コア径

φ

c=400

μ

mの石英ファイバで受光・伝送して照射 部に導かれる.ファイバの開口数は

NA

=0.37 と一般的な石英 ファイバと比較して大きく,ファイバ先端から出射されるレーザ 光の拡がり角は

ξ

=21.7°である12).また,一般的なレーザ治 療器と異なり,レーザパルス幅,ピーク出力,繰り返し周波数 等を任意に設定できる.ファイバ先端の加工と歯科治療に用 いるレーザ光が同一であるため,先端加工用として別途レー ザ光を必要としない.

3.2 出射レーザ光の減衰性評価

図 5 は,先端加工したファイバ先端からレーザ光が出射さ れるとき,その出射形態について模式的に示したものである.

出射されるレーザ光は,これまでの研究で,ファイバ先端の加 工によってファイバ端面から出射される直進レーザ光,先端 加工に起因して形成されたファイバ先端付近の側面から出射 される側面レーザ光,再凝固層にレーザ光が吸収されて生じ

る熱エネルギなどに大別できることがわかっている8).そこで,

各粉末におけるファイバ先端の加工性について検討するた め,先端加工前後にファイバ端面から出射される直進レーザ 光の出力を測定して,レーザ出射条件や加工時間がファイバ 先端の加工性に与える影響を調べることとした.

200 μm ファイバ端面 ペレットによる加工面

未加工クラッド ファイバ被覆材

200 μm ファイバ端面 ペレットによる加工面

未加工クラッド ファイバ被覆材

図 4 加工したファイバ先端の SEM 像 (加工:酸化チタンペレット)

図 6 レーザ出力測定装置

測定装置の外観を図 6 に示す.まずフォトダイオードの受 光面とファイバが同軸となり,かつファイバ先端とフォトダイオ ードの受光面との距離が 5mmで一定となるように固定する.そ して,ファイバ先端からレーザ光を出射して,加工前における 出力をフォトダイオードで検出し,電圧信号に変換して得られ る出力

V

pを測定する.次に,加工用ペレットを用いて条件を 変えながらファイバ先端の加工を行い,加工ファイバ先端から 出射された直進レーザ光の出力

V

aを測定する.直進レーザ 光の減衰率を

A

rとすると,減衰率はファイバ先端の加工前後 における出力比から以下の式で求められる.

100

p a p

r= ×

V V - V

A (1)

測定に用いるフォトダイオード(浜松ホトニクス製:S5821)は,

表 3 に示すように本実験で用いるNd:YAGレーザ光に対して 適切な感度を有しており,本実験で用いるレーザパルス幅に 対して十分な応答性を有している 11)

ファイバ先端の加工条件は,表4に示すようにファイバへの 入射レーザやレーザパルス幅を変化させ,加工条件の違い

(5)

10μm 10μm

10μm 10μm

表 3 フォトダイオードの仕様

   遮断周波数   25MHz    受光面積   1.2 mm2    感度波長範囲   320-1100 nm    最大感度波長   960 nm

表 4 ファイバ先端の加工条件

 レーザ Nd:YAG

 波長 λ 1064 nm

 ピークパワー P 1 - 4 kW

 照射エネルギ E 100 - 800 mJ/pulse  パルス幅 τ 50, 100, 200, 400 μs  周波数 f 1 - 99 Hz

(a) 濃度:5wt% (

A

r=9%) (b) 濃度:40wt%(

A

r=14%) 図 8 粉末濃度の違いによるファイバ先端の比較

(

τ

=100

μ

s,

E

=300 mJ/pulse)

による直進レーザ光の減衰率の変化について調べた.なお,

レーザ光の出力を測定するとき,ファイバに対する入射レー ザ条件は

E

=600 mJ/pulse,

τ

=400

μ

s,

f

=1Hzで一定とした.

4.実験結果および考察

4.1 粉末含有率が加工性に与える影響

図7は,ペレット内における酸化チタン粉末の重量比率を 5wt%と 40wt%で変化させ,各ペレットを用いてファイバ先端

における減衰特性を調べた結果である.図 7(a)は,先端の加 工条件を

τ

=100

μ

s,

E

=200mJ/pulse で一定としたときの加工 時間と減衰率の関係,図 7(b)は,ファイバ先端の加工時間を 1 秒で一定としたときの加工エネルギと減衰率の関係を示して いる.図 7(a)からわかるように,いずれの粉末重量比率におい ても,ファイバ先端の加工時間の増加と共にレーザ光の減衰 が大きくなっている.これは,加工時間が増えるにつれてファ イバ先端に形成される再凝固領域が大きくなり,ファイバ先端 で熱に変換されるエネルギや側面に照射されるレーザ光が 増えたためと考えられる.

一方,粉末の重量比率について比較すると,各条件にお いて重量比率が大きい方が減衰性に優れていることがわかる.

そこで,各条件で加工したファイバ先端の SEM 画像を比較し た.図 8 は,先端の加工条件が

τ

=100

μ

s,

E

=300mJ/pulse の とき,各粉末濃度のペレットで加工して,その表面を SEM 観 察した結果,図 9 は加工条件が

τ

=200

μ

s,

E

=600mJ/pulse の ときの結果である.図からわかるように,いずれの加工条件に おいても,粉末濃度が大きい方がファイバ表面は荒らされて いる.また,図 8(b)および図 9(a)からわかるように,直進レーザ 光の減衰率がほぼ同じであれば,加工ファイバ先端表面の様 子に大きな違いがみられない.これは,加工したファイバ先端 から出射されるレーザ光の減衰が,先端の加工状態に依存し ているためと考えられる.したがって,加工ファイバ先端から 出射される直進レーザ光の減衰特性を調べることで,ファイバ 先端の様子が把握でき,ファイバ先端の加工状態を知ること

10μm 10μm

1 2 3 4 5 6 7

0 10 20 30 40

先端加工条件 τ =100 μs E =200 mJ/pulse f =10 Hz

直進レーザ光の減衰率 Ar %

先端の加工時間 s 粉末: TiO2

粉末濃度 5 wt%

40 wt%

(a) 先端加工時間による影響

10μm 10μm

(a) 濃度:5wt% (

A

r=13%) (b) 濃度:40wt%(

A

r=17%) 図 9 粉末濃度の違いによるファイバ先端の比較

(

τ

=200

μ

s,

E

=600 mJ/pulse)

0 200 400 600 800 1000 0

10 20 30 40

先端加工条件 τ =50 - 400 μs E =50 - 990 mJ/pulse f =10 Hz

直進レーザ光の減衰率 Ar %

先端の加工エネルギ mJ/pulse 粉末: TiO2

粉末濃度 5 wt%

40 wt%

(b) パルスあたりのレーザエネルギによる影響 図 7 粉末含有率がレーザ光の減衰性に与える影響

(6)

ができると考えられる.

4.2 粉末種類が加工性に与える影響

ペレットの粉末重量比率を 40wt%で同一条件としたとき,

酸化チタン粉末,ジルコニア粉末,二酸化マンガン粉末で加 工したときのレーザエネルギと減衰率との関係を示した結果 を図 10 に,加工条件が

τ

=100

μ

s,

E

=400mJ/pulse のとき,各 粉末で加工したファイバ先端を SEM 観察した結果を図 11 に 示す.図 10 からわかるように,加工ファイバ先端からの直進レ ーザ光の減衰は,いずれの粉末においても加工エネルギの 増加と共に大きくなっている.また,粉末の違いにおける減衰 率を比較すると,加工エネルギが同一条件のとき二酸化マン ガン粉末,ジルコニア粉末,酸化チタン粉末の順に加工性が 良くなっている.この結果は,図 11 に示す SEM 画像からも顕 著に確認できる.二酸化チタン粉末による加工では,図 11(a) に示すようにファイバコアの表面が溶融・再凝固しているのに 対して, ジルコニア粉末や二酸化マンガン粉末では,図

11(b),図 11(c)に示すように石英が露出しているものの,石英 表面に粉末が多く付着しており,石英表面の加工が進んでい ないことがわかる.

0 200 400 600 800 1000

0 10 20 30 40

直進レーザ光の減衰率 %

先端の加工エネルギ mJ/pulse 粉末濃度:40wt%

粉末種類:

TiO2 ZrO2 MnO2

図 10 粉末種類がレーザ光の減衰性に与える影響

このような各粉末における加工状態の違いは,粉末とファイ バの主成分である酸化ケイ素の溶融,凝固形態に違いがある ためと考えられる.二酸化チタン粉末による加工では,ファイ バ先端からレーザ光が出射されると,ファイバ主成分である酸 化ケイ素と二酸化チタン粉末が共に溶融状態となり,これらが 凝固するとき酸化ケイ素内に共晶混合物などの不純物を形 成すると考えられる13).このとき,形成された共晶混合物に対 するレーザ光の吸収率が大きくなり,この混合物にレーザ光 が吸収されることでファイバ先端の加工性が良くなったものと 考えられる.これに対して,ジルコニア粉末は,表 1 に示すよう に融点が 2900℃であり,二酸化チタン粉末と比較して融点が 約 1000℃高い.そのため,同一条件でレーザ光を出射した 場合,ジルコニア粉末ではレーザ光による粉末の溶融が十分 になされず,これに伴ってファイバ先端の加工性が悪くなった ものと考えられる.また,二酸化マンガン粉末は 553℃以上に 加熱すると分解して酸素が生じることがわかっている.本実験 においても,レーザ出射条件を大きくするとペレット内部の二 酸化マンガン粉末が分解して酸素が発生し,レーザ出射後に ペレットの主成分である薄用紙が燃焼する現象が生じた.し たがって,二酸化マンガンペレットを用いてファイバ先端の加 工を継続しても,ファイバ先端の酸化ケイ素が溶融するまでの 十分な加熱がなされず,ファイバ先端の加工性が悪くなった ものと考えられる.

10μm 10μm (a) TiO2粉末 (

A

r=14%)

10

μ

m 10

μ

m 10

μ

m 10

μ

m

図 12 は,ペレット内の粉末重量比率を 5wt%で同一条件と したとき,酸化チタン粉末と酸化ケイ素粉末における加工エネ ルギと減衰率との関係を,図 13 は,ファイバ先端の加工条件 が

τ

=100

μ

s,

E

=400mJ/pulse のとき,各粉末で加工した先端 を SEM 観察した結果である.これまでの結果と同様,先端の 加工エネルギの増加につれて減衰率が大きくなる傾向が確 認できる.また,各条件において,酸化ケイ素粉末のペレット で加工したファイバ先端からの減衰率が著しく小さい.これは,

図 13(b)に示すように酸化ケイ素粉末ではファイバ先端がほと んど加工されないことを意味している.すなわち,ファイバの 主成分と粉末の成分が同一であり,レーザ光がほとんど粉末 内部に吸収されないためと考えられる.先端の加工エネルギ が大きくなるにつれて減衰率が大きくなっているが,これはペ レット内部の酸化ケイ素粉末よりもむしろ薄用紙にレーザ光が 吸収されたことによって,ファイバ先端が荒らされたものと考え られる.

(b) ZrO2粉末 (

A

r=11%) (c) MnO2粉末 (

A

r=7%) 図 11 各粉末で加工したファイバ先端の SEM 画像

(

τ

=100

μ

s,

E

=400 mJ/pulse)

以上の結果から,ファイバの先端加工に用いる粉末種類,

粉末濃度,先端の加工条件を変えながらファイバ先端の加工 性について調べたところ,酸化チタン粉末による加工性が最 も優れていることが明らかとなった.また,近年はジルコニア 粉末を原料としたセラミックス材料が差し歯などの歯科治療材 として使用されており,本実験においてもある程度の加工性 が得られることがわかった.したがって,治療の用途によって はジルコニア粉末についてもファイバ先端の加工材として使 用できる可能性があると考えられる.

(7)

5.結 言

本研究では,歯科治療に用いられる伝送用光ファイバ先端 の加工性について調べるため,酸化チタン粉末,ジルコニア 粉末,二酸化マンガン粉末,酸化ケイ素粉末を用いた加工用 ペレットを製作し,粉末濃度やレーザ光の出射条件と加工フ ァイバ先端からの直進レーザ光の減衰率との関係を調べて評 価した.以下に,得られた結果を要約する.

(1) 加工ファイバ先端から出射される直進レーザ光の減衰特 性を調べることで,ファイバ先端の様子が把握でき,ファ イバ先端の加工状態を知ることができる.

(2) ペレットによるファイバ先端の加工性は,ペレットに含有 された粉末濃度が高いほど,また,加工するレーザエネ

ルギが大きいほど良くなる.

0 200 400 600 800 1000

0 10 20 30 40

直進レーザ光の減衰率 %

先端の加工エネルギ mJ/pulse 粉末濃度:5wt%

粉末種類:

TiO2 SiO2

図 12 粉末種類がレーザ光の減衰性に与える影響

(3) ファイバ先端の加工条件を同一とした場合,ファイバ先 端の加工性は二酸化チタン粉末含有ペレットが最も優 れ,次いでジルコニア粉末,二酸化マンガン粉末の順に 加工性が減少する.また,二酸化ケイ素粉末を含有した ペレットではファイバ先端がほとんど加工されない.

(4) ファイバの先端加工に用いる粉末種類,濃度,出射条件 を検討することで,加工ファイバ先端における直進光の 割合を任意に決めることができる.

謝 辞

本研究の遂行にあたり,多くの御協力と御助力を頂きました 株式会社アルテックの関係諸氏に深く感謝致します.また,

本研究の一部は科学研究費 若手研究(B) 「レーザ歯科治 療における酸化チタン粉末の殺菌とその作用メカニズムに関 する研究」(課題番号:19791395)による助成を受けて遂行され ました.謹んで感謝の意を表します.

10μm

10μm 10μm

10μm

6.参考文献

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(a) TiO2粉末 (

A

r=6%) (b) SiO2粉末 (

A

r=1%) 図 13 各粉末で加工したファイバ先端の SEM 画像

(

τ

=100

μ

s,

E

=400 mJ/pulse) 3) J.M. White, H.E. Goodis and C.M. Rose: The Use of the Pulsed YAG Laser for Intraoral Soft Tissue Surgery, Lasers Surg Med, 11 (1991) 455.

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11) Data sheet of Si PIN photo diode, Hamamatsu Photonics K. K., (2007).

12) 末松安晴,伊賀健一:光ファイバ通信入門,(株)オーム社,(1980) 20.

13) S. Umezu and F. Kakiuchi: Investigation on the Iron Blast Furnace Slag Containing Titanium, Journal of Mining and Metallurgical Institute of Japan, 46, 546 (1930) 867 (in Japanese).

参照

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