ショウブ根,セキショウ根に関する生薬学的研究(第 2報): アジア市場品Acorus属根茎に対する組織形態 学的および化学的考察
著者 杉本 直樹, 大坪 弘実, 御影 雅幸, 木内 文之, 劉
宏民, 津田 喜典
雑誌名 生薬学雑誌 = The Japanese journal of pharmacognosy
巻 51
号 4
ページ 316‑324
発行年 1997‑08‑20
URL http://hdl.handle.net/2297/36623
Natural Medicines 51（4）， 316－324 （1997）
ショウブ根，セキショウ根に関する生薬学的研究（第2報）1）
アジア市場品Acorus属根茎に対する 組織形態学的および化学的考察
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Pharmacognostical lnvestigation of Acori Rhizomes （2）i）
Histological and Chemical Studies of Acori Rhizomes in Asian Markets
NAOKI SUGIMOTO，a HIROMI OHTSUBO，a MASAYuKI MIKAGE，a FuMiyuKi KiucHi，a HoNG－MiN Liub and YosHisuKE TsuDA“・ a
a Faczalty of Pharmaceutical Sciences， Kanazawa University，13－1 Takara－machi， Kanazawa 920， laPan b DOPartment（）f Chemisめ㌧Zheng：zhouひnivezsity，
Zhengzhou 450052， R．P． China
（Received October 8， 1996）
Anatomical and chemical （essential oils） investigations of Acori rhizomes from various Asian markets showed that rhizomes commercially obtained from south－east Asia under the name
“shyobu－kon” or corresponding names were of Acorus calamus of chemotype A， and that some samples in Chinese markets were A． calamus mixed with rhizomes of A． graminezts． Rhizomes called“shi chang pu（石菖蒲）”in Chongqing market（China）were those of、A． calamtcs． A． graminezcs samples in Chinese markets were classified into three chemotypes， A－1， A－2， and A－3， whose maj or essential oil constituents were asarone （Zand／or E）， elemicine， and methylisoeugenol （Z and／or E），
respectively． The histological characteristics of samples of chemotype A－3 were quite different from those of chemotypes A－1 and A－2， suggesting that A． graminezas of chemotype A－3 might be a variant or sub－species of A． graminezas．
Keywords
gramznezes
Acori rhizome； essential oil； chemotype； histotype； Acones calamzts； Acoms
現在，日本市場に流通しているショウブ根，セキショウ 根は，ほとんどが中国および東南アジアからの輸入品で，
根茎部のみを10cm位に切って乾燥したものや，フレーク 状のものであり，一見して両者の区別はつき難い．
我々は，前報1）において日本産のショウブ・4coms calamzas およびセキショウA． graminezcsについて，根茎の内部形態
と精油成分組成の両面から考察し，比較組織学的には，皮 層中の繊維束の最大直径と細胞間隙を形成する最大柔細胞 数の比を取ると両者が明瞭に区別できることを明らかとし
た．また，精油成分については，A． gramineusはすべてZ－
asaroneを主成分とするが， A． calamZtSにはフェニルプロ
パノイドの2：asaroneを主成分とするタイプAと，セスキ テルペン類を主成分とするタイプBの二つのchemotype があり，多くはこの二つの混合型（M）であるが，タイプAのものでも常にepishyobunone， shyobunone， preisocala－
mendiolなどセスキテルペンi類が検出される点でこれらを
全く含まないセキショウと区別できることを示した1）．
上記の知見を基に中国および東南アジア諸国の両生薬市 場品を鑑定した結果，中国市場品には日本栽培品とは異な る内部形態的特徴や精油成分パターンを示すものがかなり 認められ，Aconts属植物はFig．7に示す化学的系統に分類 されることが明らかとなった．本報ではそれらについて報
告する．
実験材料および方法
TABLE I～Iv， Fig．2，3に今回検討した試料についての
各種情報，精油成分および内部形態の観察結果を示す．切 断生薬の多くは同一ロットより数個の試料をとり，同一試 料の一部について精油成分を分析し，残りについて内部形 態を観察した．フレーク状の試料については，同一ロット 内の根茎断片数個を別々に抽出，分析したが，内部形態の 観察が不能の試料もあった．すべてのロットは金沢大学薬（316）
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Fig． 1． Major Constituents in Acori Rhizomes
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Fig． 2． Relationship between Histological Characteristics and Maj or Constituents of Commercial “Shyobu－kon”
O： asarone， e： asarone十sesquiterpenoid， A：
elemicine， V： methylisoeugenol （see also Materials and Methods） ．
1二＝3：Distribution area of A． ca la〃zus in Japan，
a ： distribution area of A． gramineus in Japan，
C ）：distribution area of A． calamus in Asian markets．
学部生薬学教室および薬用植物園資料室［KANP］に保管 されている．［］内の番号はロット番号（標本番号）を示
す．
1．精油成分の分析
分析試料の調製試料を粉砕し，その0．5～1．Ogを
hexaneで加熱還流抽出（2時間×2回）．抽出液を合して溶媒を留去．残渣を一30℃で冷凍保存．これを用時1．Omg／
mlになるようにacetoneに溶解し，1μ1を分析試料とし
た．
分析機器および条件 GC：Hewlett Packard 589011，
column： HP－5 （crosslinked 50／o PH ME Silicone）， 30
m×O．32 mmip， column temp．： 90℃一220℃， 5℃／min， inj．
temp．： 250℃， sep． temp．： 2300C， carrier gas： He 1．2 ml／
min， MS ： JMS－AX5．
ピークの同定と各成分の定量 前報1）に準じてGC／MS 分析を行い，キャピラリーGCにおける保持時間とマスス ペクトルにより同定．ピーク面積百分率よりFig．1の9種
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Fig． 3． Relationship between Histological Characteristics and Major Constituents of Commercial “Sekishyo－
kon”
O ： asarone， e： asarone十sesquiterpenoid， A：
elemicine， v： methylisoeugenol， V： methyli－
soeugenol十sesquiterpenoid （see also Materials and Methods） ．
1：：：：： Distribution area of A． calamus in Japan，
a ： distribution area of A． gramineus in Japan，
O： distribution area of A． calamzts in Asian mar－
kets， O：distribution area of A． graminezes in Chinese markets， ：’1”””： ： distribution area of A．
gramineus var． ？ in Chinese markets．
のフェニルプロパノイドおよびセスキテルペンについて相
対含量を算出した．
2．組織形態学的観察
前報1）に準じ，根茎部横切面における繊維束の最大直径
（横軸），および細胞間隙形成する最大柔細胞数（縦軸）の
比を測定（TABLE I， II）し，グラフ上にプロットした（Fig．2，3）．その際，精油成分との関係として， asarone（Z and／or E）を主成分とするものを○， elemecineを主成 分とするものを△，methylisoeugeno1（Z and／or E）を
主成分とするものを▽で示し，うち，epishyobunone
（EPI）， shyobunone （SHY）， preisocalamendiol （PRE）
の3種のセスキテルペンのうちいずれかが検出されるも のをclosed symbo1で，それらが検出されないものを
open symbo1で示した．
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実 験 結 果
1． ショウブ根および水菖蒲と称する市場品
TABLE IIIにショウブ根市二品各試料の精油成分組成を
示す．比較のため，A． calamZtSとして代表的な日本栽培品
の二つのchemotype（A， B）および四川省重慶中薬研究 所栽培品（試料84）の精油成分組成を示した．重慶中薬研 究所栽培品は，Z－asaroneを主成分とし，繊維束の最大直 径が76μm，細胞間隙を形成する最大柔細胞数が11個で，日本産ショウブのそれに一致するがZ－asarone含量は 21％にすぎず，おそらくテルペン類と思われる未同定成分
を66％近く含み，タイプBに近いA，Bの混合型（M）と
考えられる．
今回試料とした東南アジア市場品（試料1～22）は，す べてZ－asaroneを主成分としており，成分パターンは日本 産のタイプAによく一致し（Fig．4a），また内部形態も細 胞間隙を形成する最大柔細胞数が10個のものがいくつか
見られたが，日本産A．calamZtSとほぼ一致した（Fig．2）．
試料53，54，59，60以外の中国市場品（水菖蒲）は，
内部形態が日本栽培品の範囲とほぼ一致し，全体として，
繊維束の最大直径55～111μm，細胞間隙を形成する最大 柔細胞数11～17個の範囲に分布した．これらは成分的にも Z－asaroneを主成分とすると同時にEPI， SHY， PREのい ずれかのセスキテルペンを伴っているのでタイプAのA．
cala ZZtSであると判断してよいと思う．すなわち，一般の
市場品を論ずる場合には，中国産のものを考慮して日本栽 培品に対するよりもその形態学的範囲をやや拡大し，繊維 束の最大直径55～111μm，細胞間隙を形成する最大柔細 胞数10～18個をショウブの範囲に当てるべきであろう（Histotype 1， see Fig． 2， Fig． 6）．
吉林省市場品（試料55，56）には，同一ロット内にZ－
asaroneを主成分とするタイプAのもの（55）とともに，
組織形態的にはA．calamZtSであるにもかかわらず，セスキ テルペン類を含まずZ：methylisoeugenolを主成分とする もの（56）が混在しており，本市場品が異なった起源のシ
ョウブを混じていることを示唆していた．
広西省市場品（試料57，58）のうち1試料（58）は，組 織形態的には典型的A．calamusであり，Z－asaroneを主成 分とするタイプAのショウブとみられるがセスキテルペン
類を全く含んでいなかった．
これらに対し，湖北省市場品（試料53，54）と河南省市 場品の一部（試料59，60）は，組織形態的にも成分の面か らもA．calamzasではなく，A． gramineusと考えた方がよ いと思われた．湖北省市場品（試料53，54）は繊維束の最 大直径130～140μm，細胞間隙を形成する最大柔細胞数
7～8個の範囲にあり，またその精油成分はZ：asaroneで はなく，同じくフェニルプロパノイドのelemicineを主成
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Fig． 4． Typical Gas Chromatograms of Hexane Extracts
of A． calamus
a） Nepal （8），b） Osaka （Hunan） （34），c） Sichuan （83） （shi chang pu）．
ASE ： Easarone， ASZ ： Z－asarone， ELE ： elemicine，
MIE ： E－methylisoeugenol， MIZ ： Z－methylisoeugenol，
PRE ： preisocalamendiol， SHY ： shyobunone， EPI ：
epishyobunone．
分とし，上記セスキテルペン類を全く含んでいなかった．
河南省豆州市場品の試料59，60も，繊維束の最大直径 140～150μm，細胞間隙を形成する最大柔細胞数8～9個 で，Z－asaroneを主成分とはしているがelemicineを含み
（13～14％），上記のセスキテルペン類を含まず，その精油
成分パターンは湖北市場品と比較的よく似ている．これらはいずれも，内部形態からは日本栽培品のA．gramineusの 範囲に入り，特に，試料59，60は，内部形態，精油成分の 両面とも典型的なA．graminezesであると考えられる．
スイス市場品（試料23），湖南省市場品（試料52），広西
省市場品（試料57）は，いずれもおそらくテルペン類と思 われる未同定成分をかなりの量（56～85％）含んでおり，A．calamzasのタイプA， Bの混合型（M）と見ることがで
きよう．
今回我々が入手した東京市場品（試料28），大阪市場品
（試料34）は，それぞれベトナム，湖南省より輸入された ものであり，両者ともに輸入先市場品（試料22，52）の精 油成分組成をよく反映していた（TABLE III， Fig．4b）．
2．セキショウ根および石菖蒲と称する市場品 セキショウ根の市場品はいずれも中国産のものである．
（322）
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RT（min＞ 5 10 15 20 25
Fig． 5． Typical Gas Chromatograms of Hexane Extracts of A． graminez（s
a） Henan－7 （79），b） Henan－5 （71），c） Henan－4 （67）．
ASE ： E－asarone， ASZ ： Z－asarone， ELE ： elemicine，
MIE ： Emethylisoeugenol， MIZ ： Z－methylisoeugenol．
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（1） 一Acalamus
A． gramineus
A． gramineus var． ？
（11）1 A－1
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A－3
（lll）50 100 150 200 250 300
Maximum diameter of a fiber bundle （pm）
Fig． 6． Relationship between Histological Characteristics
and Chemotypes in Acori Rhizome
I， II， III： Histotypes． A， B： Chemotypes of A．
calamus． A－1， A－2， A－3 ： Chemotypes of A． graminezcs
TABLE IVに四川省重慶中薬研究所栽培および日本栽培品 のA．gramineusおよびセキショウの名称で売られている 市場品の精油成分組成を示す．四川省重慶中薬研究所栽培 品（試料85）は日本栽培品と同様2：asaroneを主成分と
し，セスキテルペン類を含まないが，未同定成分を7％含
む．
これに対して市場品にはかなり異なった組成のものが見
られた．貴州省市場品（試料64），広西省市場品（試料65，
66），河南省鄭州市場品（試料78，79，80，82）は日本栽 培品と同様asarone（ZおよびE）を主成分とし，組織形 態からもA．graminezcsと一致する（Histotype II， see
Fig．3， Fig．6）が，日本栽培品に比べ同じトリメトキシフ
ェニルプロパノイドのelemicineの含量が多い（Chemo－type A－1， see TABLE IV， Fig．5a）．また，河南省三州市場
品（試料69～72，77，81）はasaroneとほぼ同量か，もし くはそれ以上の量のelemicineを含み（Chemotype A－2，
see Fig． 5b），これらは最大柔細胞数がやや少なく7～8個
であるが，それ以外はほぼ同じ形態学的範囲に分布した（Histotype II， see Fig． 3， Fig． 6）．
河南省市場品の一部（試料67，68）と東京市場品（湖 南出産）中の同一ロット3検体中の2検体（試料40，41）
は日本産A．gramineZtsと異なり，ジメトキシフェニルプロ パノイドのZ：methylisoeugeno1を主成分とするものであ った（Chemotype A－3， see TABLE IV， Fig．5c）．これら市
場品（試料40～51，67，68）の内部形態は，細胞間隙を形 成する最大柔細胞数が日本産のA．gramineusとほぼ同じ 範囲（7～9個）であるのに対し，皮層中の繊維束の最大 直径が非常に大きく（160～255μm），日本産A．gramineus
とは明らかに異なった範囲に分布した（Histotype III，
see Fig． 3， Fig． 6）．
また，貴州省市場品，河南省市場品のうちには試料63，
試料68のように形態学的にはA．graminezes（Histotype
II）であるが，セスキテルペンのpreisocalamendiol
（PRE）をかなりの量（10～14％）含んでいるものも見ら
れた．
四川省重慶市場品（試料83）は，他の市場品と全く異な ったパターンを示し，フェニルプロパノイドよりもPRE，
SHY， EPIなどのセスキテルペンを主成分としA．
calamusのタイプBあるいはMに近い（see Fig． 4c）．内部
形態学的にも先に拡大したA．calamusの範囲（Histotype I）に入り，これらのことかちA．calamusと判定するのが 適当であろうと考えた．本試料はまた多量（56％）の未同定成分を含んでいた．
考察および結論
以上から明らかなように，中国生薬市場においては「水
菖蒲」，「石菖蒲」の名で成分的にも形態的にもかなり異な
ったものが混同して流通していることが窺える．特に，今 回の調査試料中以下のものは次のごとく帰属さるべきものと考える．
「菖蒲根」あるいは「水菖蒲」と称するもののうち，河南 省武州市場品（試料59，60）はA．gramineus（タイプ
A・1），湖北省市場品（試料53，54）は・4．graminetcs（タ
イプA・2）である．また，「石菖根」と称するもののうち四
Genus Constituent Chemo電ype H18量otypo Sp●購b8 ココロ ロロ ロロロロコロコロロ ロロ の コココロコ
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Fig．7． C】assification of Chemo－and Histo－types of Acori Plant
川省重慶市場品（試料83）はA．calamzasである（TABLE
I，II， Judgement参照）．
以上の結果に基づいて，改めて次のように考察する．
アジア各地のショウブ根市販品はすべてZ：asaroneを主 成分とするタイプAあるいはタイプA，Bの混合型（M）
のもので，日本産A．calamusで見られたEPI， SHY， PRE のセスキテルペン類を主成分とするタイプBのものはなか った．東南アジア産のものはZ：asarone含量が非常に高く 典型的なタイプAであるが，中国市場品にはタイプAとと
もに混合型（M）のものも見られる．しかしいずれも総じ てEPI， SHY， PREの含量が低く，多数の未同定ピークを
含む複雑な混合物であった．EPI， SHY， PREが全く検出さ
れなかった広西省市場品の1試料（試料58）も未同定ピークを5。3％含んでいた．これら市場品では保存中に上記の
セスキテルペンが酸化を受けて未同定ピークに変化したと も考えられる．しかし，新鮮試料の重慶中薬研究所栽培品（試料84）においても65．7％の未同定ピークが見られるの で，むしろ中国産ショウブの特徴と考えた方がよいであろ
う．
吉林省市場品品の，セスキテルペン類を含まずZ：
methylisoeugenolを主成分とする試料56は，組織形態的に はA．calamZtSであるが，本誌の位置付けについては今後の 課題である．
一方，セキショウ根は，日本産のものと大きく異なり，
主成分とするフェニルプロパノイドの種類によって次の三
つのchemotypeがあった（Fig．6）．
タイプA・1：日本産A．gramineusと同tw Z一またはE－
asaroneを主成分とするもので，貴州省市場品（試料64）
をはじめ多くのものがこれに属する．なかにはZ－asarone と同程度にEasaroneを含む試料（65，66）があった．
タイプA－2：同じくトりメトキシ体のelemicineを主成 分とするもので，柔細胞数7～8個，皮層中の維管束の最 大直径110～140μmと組織形態的にタイプA－1と重なる．
河南省鄭州市場品に多い．
タイプA・3：ジメトキシフェニルプロパノイドのZ－
methylisoeugeno1を主成分とするもので，湖南省産東京市 場品（試料40，41），河南省市場品の一部（試料67，68）
に見られる．
タイプA・1とタイプA－2は，内部形態もほぼ一致し
（Histotype II），ともにトリメトキシフェニルプロパノイ
ドのasaroneもしくはelemicineを主成分とする点でA．gramineusと考えてよいであろう．これに対してタイプA－
3のものは形態学的にも皮層中の維管束の最大直径が
160～255μmと非常に大きく，タイプA－1，タイプA－2とは ほとんどが異なった範囲に入り（Histotype III）， A．gramineZdSの変種もしくは亜種である可能性が高い．最近 中国では，「石菖蒲」の原植物をA．鰯如ηo纏SCHOTT（A．
gramineus SoLAND）（石菖蒲）とA． gramineus SoLAND var． Pzessillzes LEVL．（金銭蒲）に分ける説があり2），その記
載かち推定するとタイプA－1のものがA．tatarinowii，タ
イプA－3のものがA．graminezcs var． PZt ssillZtSではな
いかとも考えられる．しかし，現在のところそれらの標準 品が入手できないので，これ以上の検討はできなかった．これらセキショウ根の多くはセスキテルペンを含まない が，タイプA－1，A－3のいくつかにはPREを含むもの（試 料63，68）があり，セスキテルペンの有無が必ずしもショ ウブ根との化学的判別の厳密な指標とはなり得ないことが 判明した．
フェニルプロパノイドとセスキテルペンは生合成経路が
全く異なるので，それを考慮すればAconts属植物の
chemotypeはFig．7のような系統になるであろう．これらAcones属植物の各種chemotype間の遺伝的関
係については今後の課題である．
謝 辞 本研究に当たり，実験材料を提供していただいた福 田龍株式会社，ウチダ和漢薬株式会社，栃本天海堂株式会社に深
謝する．
引 用 文 献
1）第1報：杉本直樹，御影雅幸，大坪弘実，木内文之，津田喜
典，1＞at． Med．，51，259（1997）．2）郭 家山，楊 元禄，宋 良科，余 明志，“菖蒲類専題研 究”，徐国鉤，徐二品主編，“常用中薬材品種整理和質量
研究”，第一冊，福建省科学技術出版社，1994，pp．558－586．（324）
