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部材加工が耐候性鋼材のさび生成に与える影響に関する研究

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Academic year: 2022

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(1)

表-1 実験条件(素地調整供試体)

供 試 体 記 号 M w B - S B - G G r

処 理 方 法 機 械 加 工 シ ョ ッ ト ブ ラ ス ト グ リ ッ ド ブ ラ ス ト グ ラ イ ン ダ ー 処 理

表 面 粗 さ ( μ m ) 0 .9 3 5 .2 6 3 .4 1 1 .3

表-2 実験条件(角部加工供試体)

供試体名 T-2R 2R 2C 0.5C NT

形状

(mm)

部材加工が耐候性鋼材のさび生成に与える影響に関する研究

三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 正会員○島原慎司 三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 正会員 阿部浩志 山口大学大学院 正会員 麻生稔彦

1. はじめに

耐候性鋼材は保護性を有する緻密なさびが形成されるまでは防食性能がほとんど期待できないため,早期 に安定して保護性さびを生成させることは耐候性鋼材を用いる上で重要なことである.本研究では保護性さ びを早期に生成する方法及び保護性さびが生成される環境の改善方法として,鋼材の表面粗さおよび鋼材の 角部形状に着目した.表面粗さおよび角部の形状を変えた供試体に対し塩水噴霧を伴う曝露試験を行ない,

さびの発生状況を観察した結果について報告する.

2. 実験概要

本研究では供試体加工によって保 護性さびを早期生成させる方法とし て,供試体の表面粗さおよび角部の 形状に着目する.

まず,表面粗さの大きい供試体で は,塩分などの腐食因子となる物質 が付着しやすくなりさびの進展が早 くなると予想した.そこで,鋼材の

表面粗さの差異によるさび生成への影響を把握する.この実験に用いた供試体概要および供試体記号を表-1 に示す.グリッドブラスト(B-G),ショットブラスト(B-S),グラインダー処理(Gr),機械加工(Mw)の 順で表面粗さが大きい供試体である.一方,鋼材の排水性を向上させることで過剰な水分を排水するために 供試体角部に加工を行い,角部の形状によるさび生成への影響を定量的に評価するため実験を行う.この実 験に用いた供試体角部の形状および供試体名を表-2に示す.各実験の供試体は自然大気中および,気温・湿 度とも高く維持できる密封箱内のそれぞれで曝露する.さび生成を促進させるため塩水噴霧を行い,1日に1

度0.01%塩水を霧吹きで10回噴霧する.比較のため,大気曝露では噴霧を行わず放置する供試体,密封箱内

曝露では塩水と同じ要領で純水を噴霧する供試体もそれぞれ設置した.また,供試体の曝露方向によるさび 生成の差異を検討するため表面粗さを変えた供試体は水平

および鉛直方向にそれぞれ設置する.

3. 表面粗さの違いによるさび生成

さび厚は電磁膜厚計を用いて鋼材上の9点を測定し,得 られたさび厚から大小2つずつの値を除いた5点の平均を 供試体の平均さび厚とする.表面粗さとさび厚の経時変化 の関係を,例として塩水噴霧の供試体から,最も表面粗さ の大きい供試体B-Gと表面粗さの小さい供試体Mwの平均 さび厚の関係の経時変化を図-1に示す.

キーワード 耐鋼性鋼材,さび,表面粗さ,角部形状

連絡先 〒730-8642 広島市中区江波沖町5-1 三菱重工鉄構エンジニアリング㈱ 技術統括部 Tel.082-292-3146 図-1 さび厚経時変化

20  40  60  80  100 

0 50 100 150 200 250 300 350 400

さび厚μm

曝露日数(日)

機械加工 グリッド

土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)

‑303‑

Ⅰ‑152

(2)

図より,供試体B-Gのさび厚が供試体Mwに比べて大き い.曝露実験初期からこの傾向はみられ,曝露日数359日 目で約17μmの差が見られた.これは,鋼材表面が粗い供 試体は表面の凹凸に塩分などの腐食を促進させる物質が多 く付着するためと予想される.

また,さびの状態を判断する指標としてイオン透過抵抗 値とさび厚を用いる.この際,さび厚200μm以下,イオン 透過抵抗値1000Ω以上で保護性を有するさびが生成してい ると判断する1).例としてさび厚の経時変化と同様に大気 曝露における塩水噴霧を行った供試体B-GおよびMwのさ びの性状の経時変化を図-2に示す.なお,凡例の数字は曝 露日数を表す.図より,曝露日数324日目において供試体 B-Gのイオン透過抵抗値が1104Ωに到達しさび厚は200µm

以下であることから,供試体B-Gには保護性さびが生成したと判断した.一方,表面粗さの小さい供試体 Mwはさび厚は200µm以下であるものの,イオン透過抵抗値は762Ωであり未成長さびであると判断した.

供試体B-GとMwを比較するとどちらの供試体も日数の経過に伴いイオン透過抵抗値が増加しているが表面 粗さの大きい供試体B-Gのほうがイオン透過抵抗値の増加量が大きい.これらより,同じ曝露期間であって も表面粗さが大きい供試体ほど早く保護性さびに近づくと考えられる.

4. 角部加工の違いによるさび生成

角部加工供試体では,鋼材表面でさびが一様には生成され ず場所により違いがみられた.そのため,図-3に大気中で塩 水噴霧を行なった角部加工供試体のさび厚の分布を示す.な お,測定日は曝露日数359日目である.ここでのさび厚測定 は供試体表面に測定点を20点とり,各点において2回測定し てその平均値を求めた.青色部分は供試体角部の処理部分を 示し,枠内の数字は平均さび厚を示している.図より,差異 は小さいものの供試体 2R は他の供試体と比較してさび厚が 小さいことが見て取れる.特に供試体角部の処理部分近傍の さび厚が小さくなっており,無処理の供試体NTと比較する と局所的ではあるが約20μm 以上の差が確認できた.したが

って,局所的であるが,供試体角部の形状により濡れ時間が短くなり,さびの進展が抑制され,さび生成環 境が改善されたと考えられる.

5. まとめ

本研究より,鋼材表面をグリッドブラストで処理し表面粗さを大きくすることで,さび生成が促進された.

このさびは,さび厚およびイオン透過抵抗値から,保護性さびが早期生成されたと判断した.また,供試体 角部の形状によりさび厚が小さくなっており,角部加工により排水が促された結果,鋼材の濡れ時間が短縮 されて,さびの進展が抑制され,さび生成環境が改善されたと考えられる.ただし,本研究において,イオ ン透過抵抗値1000Ωに到達するまでに曝露日数300日以上の期間を要した.今後,保護性さび生成に必要な 期間をより短くする方法の検討および今回の供試体の追跡調査が必要であろう.

参考文献

1) 社団法人日本鋼構造協会,JSSCテクニカルレポートNO.86 耐侯性鋼橋梁の適用性評価と防食予防保全,2009.

0.1 1 10 100 1000 10000

0 50 100 150 200

過抵抗値Ω

さび厚(μm)

43 106 187 216 263 324

I‐5 I‐5

0.1 1 10 100 1000 10000

0 50 100 150 200

透過抵抗値(Ω

さび厚(μm)

43 106 187 216 263 324

I‐5 I‐5 I‐5

(a)Mw (b)B-G

図-2 イオン透過抵抗値とさび厚の関係の経時変化

さび厚(μm) 50 60 70 80 90

71.9 72.8 78.7 81.7 81.5

77.3 82.1 70.5 70.7 78.6

67.2 74.9 66.3 74.0 75.5

70.6 69.4 75.7 75.7 75.3

56.5 71.9 76.8 81.6 69.5

67.0 72.7 71.4 83.8 70.3 66.7 68.4 68.1 70.8 79.3

58.7 62.9 58.2 55.0 53.7

(a)NT (b)2R 図-3 さび厚分布 土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)

‑304‑

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参照

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