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へき地における小学生の学習動機

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

へき地における小学生の学習動機

著者 杉村 健

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 9

ページ 91‑98

発行年 1973‑03‑10

その他のタイトル Children's Motives for Learning in Remote Mountain Villages

URL http://hdl.handle.net/10105/6281

(2)

へき地における小学生の学習動機

杉 村   健

(心理学教室)

本研究の目的は,奈良県下のへぎ地における小学生の学習動機が,発達的にいかに変化するか,そ れが男子と女子ではどう違うかを調べ,さらに.大阪と奈良の都市部における結果(杉札1968)

および沖縄県那覇市の小学生の結果(杉村・栗山1972)と比較検討することである。

方      法

被験者  被験者は.奈良県吉野郡十津川村の上野地小学校.二村小学校,西川第一小学校.およ び吉野郡下北山村の寺垣内小学校,池原小学校.桑原小学校に在籍する2年生,4年生,6年生で.

合計291名である。6校をこみにした学年ごとの性別人数は表1に示したとおりである。

表1 被験者の内訳

2年生 4年生 6年生 合計 男子  47  48  45 140 女子  56  59  36 151 合計 103 107  81 291

なお,比較される都市部の資料は.大阪府牧岡市枚岡西小学校,奈良県高田市高田小学校,および奈 良市大柳生小学校の2年生416名,4年生348名,6年生370名合計1134名からえられた ものであり(杉村,1968).また沖縄県の資料は.那覇市松川小学校と天妃小学校の2年生34 4名,4年生314名,6年生315名合計973名からえられたものである(杉村・栗山197

2)。

諷査項目  表2は調査項目を示したものである。これらの項目は.予備調査の結果と従来の研究 を参考にして作成したものであり(杉村,1967),因子分析の結果からは,おおよそ次のように まとめられる。(1)親や教師の称賛・叱責に関するもの(項目番号1,4,7,10,13,),

(2)いわゆる内的動機づけに関するもの(項目番号 2,3,6,8,11),および(3)成績に 謁するもの(項目番号_5,9,12,14)。

* Childrenls Motives for Learningin Remote Mountain Villages

** Takeshi Sugimura(Department of Psycholgy,Nara University of

Education.Nara)

−91−

(3)

表2 調 査 項 目

番 号     項   目   内   容 番 号

1 .  親 に ほ め ら れ た い か ら勉 強 す る 8 .  大 人 2 .  え らい 人 に な りた い か ら勉 強 す る 9 .  宿 題 3 .  新 しい こ と を 知 りた い か ら勉 強 す る 10 . 先 生 4 .  先 生 に 叱 ら れ る か ら勉 強 す る 1 1 . 両 自 5 .  友 だ ち に 負 け た く な い か ら勉 強 す る 1 2 .  テ ス 6 .  好 き だ か ら勉 強 す る 13 . 親 に 7 .  親 に い わ れ る か ら勉 強 す る 1 4 . 成 績

項  目  内  容 になって役に立っから勉強する があるから勉強する

にはめられたいから勉強する一 くて楽しいから勉強する

トがあるから勉強する 叱られるから勉強する をよくするために勉強する

手続き 調査は1972年10月16日.17日一18日の3日にわたって,それぞれの小学校 の教室で実施された。児童に回答用紙を配布し,調査項目を実験者が読み上げて回答させた。回答用 紙には,学校,学年.軋 性別を記入するところと,その下に1から14までの番号が書いてある。

回答用紙を配布してから,次のような教示が与えられた。

これからすることはテストではありません。また一 学校の成績にも関係がありませんから,気 軽にやってください。これから,皆さんがどんな気持ちで勉強しているかを調べたいと思います。

やり方は非常に簡単です。私が文章を読みますから, はい と思うときは番号を○で囲んでく ださい。また,、、いいえい と思うときには番号に×をつけてください。(ここで,はい−○,

いいえ−×と黒板に書く)正直に思ったとおりに答えてください。それでは今から,1番から 順に読んでいきます。私が文章を読み終ったら,すぐに○か×をつけてください。

教示に続いて.番号と項目内容を読みあげた。全員が回答したことを確かめてから.次の質問に移 り,順次14番まで回答を求めた。

結 果 と 考 察

へき地における学年差と性差  表3は,各学年の男女別に項目ごとの承認率( はい、、のパーセ ソト)を示したものであり,表4は,項目ごとに角変換による3×2の分散分析を行なった結果であ る。

表3 学年ごとの性別承認率(珍)

学 性 牢

項      目      番      号

1   2   3   4   5   6   7   8   9   1 0  1 1  1 2  1 3  1 4 男

2 女

6 8  8 1  7 9  4 0  7 4  4 3  5 7  8 7  5 7  6 2  5 7  4 7  5 5  8 5 7 0  8 6  9 1  5 2  8 2  5 4  6 1  8 6  5 9  7 3  4 3  6 4  5 5  8 8 男

4 女

4 0  5 0  8 8  2 5  6 9  4 4  3 5  7 7  4 4  2 8  5 2  3 8  2 1  6 5 4 1  4 4  8 6  1 7  7 1  5 4  2 0  9 2  4 1  3 1  5 6  4 4  1 9  6 4 男

6 女

1 6  3 8  8 2  1 6  3 1  2 9  1 3  9 3  1 6  1 1  3 1  2 0  1 1  5 1 2 2  2 5  9 4  1 7  5 3  1 9  1 9  9 7  4 7  3 3  3 3  1 9  1 9  5 3

一一192 −

(4)

表4 項目ごとの承認率の分散分析

変 動 因

項      目      番      号

l ・ 2  3  4  5  6  7  8  9  10  1 1 1 2  1 3  1 4

1  学  年 **   **       ●*   **   **   **   *   **   **   **   **   **   +*

2   性 *        *

3  1 × 2 *       *

● 5珍水準   紳19も水準

まず,表3における値が男女ともに509も以上の場合について調べてみると,次のことがいえる。

(1)3番.8番.14番は3学年ともに509もを越えている。すなわち,新しいことを知りたいから,

大人になって役に立っから,および成績をよくするために勉強するというのが,支配的な学習動機で ある。(2)4年生では,上の3つに加えて5番の友だちに負けたくないと.11番の面白くて楽しい からの2つがあげられる。(3)2年生では4項目を除く10項目において承認率が高く,親にはめら れたい(1番).親にいわれる(7番),親に叱られる(13番),および先生にはめられたい(10 番)など,親や教師の称賛・叱責に関するものが目立ち.さらに,えらい人になりたい(2番)と 宿勉がある(9番)があげられる。

次に.表4の結果にもとづいて,学年による変化と性差を検討してみよう。(1)学年差は3番以外 はすべて有意である。その中で,8番の大人になって役に立つは上昇する傾向があり,その他はすべ て下降している。承認率が減少する11項目のうちで.親や教師の称賛・叱責に関するもの(4.7.

10.13番)は,2年生から4年生にかけて急激に減少し,4年生と6年生ではあまり差がない。

他方,友だちに負けたくない(5番),好き(6番).面白い(11番)の3項目では,2年生と4 年生の差が小さく,4年生から6年生にかけて急激に減少している。(2)性の主効果は,新しいこと を知りたい(3番)と先生にはめられたい(10番)において有意であり.ともに男子よりも女子の 方が高く,とくに6年女子で先生にはめられたいという気拝がみられる。(3)学年と性の交互作用は 5番と9番で有意であった。これは,友だちに負けたくないという気持と,宿題があるから勉強する というのが.6年において女子が男子よりも多いことを示す。

へき地と都市・沖縄の比較 表5は,男女をこみにして.へき地,都屯 および沖縄についての 承認率を示したものであり,これを図示したものが図1である。また,表6は角変換による項目ごと の3×3の分散分析を示したものである。

表5 学年ごとの地域別承認率(形)

地域 人数 項 目 番 号

1 2  3  4  5  6  7  8  9 10 1112 13 へき地103 69 83 85 47 79 49 59 86 58 68 50 56 55

2 都 市 416 37 89 80 23 70 57 36 87 49 48 42 61 沖 縄 344 55 92 93 47 82 82 45 79 63 65 78 67

へき地107 40 47 87 2170 50 27 85 42

4 都 市 348 12 75 85 8 63 4418 92 26 沖 縄 314 19 63 9014 57 53 20 9128

へき地 8119 32 8816 412516 95 6 都 市 370  5 63

沖 縄 315  9 28

2 0

3 4

6

n

U

9

8

0

0

8

(5)

表6 項目ごとの地域と学年の分散分析

変 動 因

項       目       番       号

1  2  3  4  5  6  7  8  9  1 0  1 1 1 2  13  1 4 1 学 一  年 **     **           **    **    **     **    **    **     **    **    **    **    **

2  地   域 **    **    **    **             **     **             **     **    **    ●*    **    **

3  1 × 2 * *     *       ♯     ■*    **     *             **     *                       *     **

*5節水準  榊1%水準

図1学年ごとの地域別承認率

1(知

60

40

20

0

2     4     6

親にはめられたい

●_−・l車● へき地

●__●都 市

−■一 沖 縄

:一一一_こ二1

2     4     6

先生に叱られる

2     4     6

えらい人になりたい

慧当琵LL

2     4     6

新しいことを知りたい

2    4     6    2     4

友だちに負けたくない

ー94 一

好  き

(6)

一g8−

9ヰ〉T尋着恕

9     P Z

即車用旺喘

9     P g

受智頭 ビ4

9     P Z

受領硝粒

9     ,     g

、41遊〉目卸

9     P Z

し苗つ蕾裾ユC等コ1Y¥

9     P g

け射射=拍㌍樗尊

9     ,     g 里 蝶 ◆一一一●

J

解毒− 一一一 と 9叫叫し八つ1番

9     P g

(7)

まず,表5および図1から,3番.8番.および14番がどの地域においても高い承認率を示して いる亡とがわかる。すなわち,新しいことを知りたい,大人になって役に立つ,および成績をよくす るというのが,小学生全体に共通している学習動機であるということができる。また.学年の主効果 は3番以外はすべて有意であって.地域をこみにしたときに,大人になって役に立つ(8番)が全体 として学年とともに増加し.他の12項目ではすべて減少している。

本研究における最大の関心は.地域差であった。そこで,表6における有意な地域の主効果と交互 作用について,へき地と都市の比較に重点をおいて検討してみよう。地域の主効果は.5番と8番を 除いた12項目において有意であり,表5と図1から次のことがわかる。(1)親にはめられたい(1 番),先生に叱られる(4番),親にいわれる(7番),先生にはめられたい(10番),親に叱ら れる(13番)というような,親や教師の外的動機づけに関するものと,宿題があるから(9番)の 6項目において,へき地の方が都市よりも有意に高く,両者の中間に沖縄が位置づけられる。(2)こ れらに対して,えらい人になりたい(2番)と成績をよくする(14番)の2項目では.都市の方が へき地よりも高くなっている。(3)新しいことを知りたい(3番),好き(6番),および面白くて楽

しい(11番)のような内的動幾づけをあらわす項目では,沖鮎が最も高くて都市が最も低い。(4)

えらい人になりたい.テストがある.成績をよくするの3項目では,へき地が最も低い。

学年と地域の交互作用は.1番,8番,11番,12番を除く10項目において有意であった。こ れらの項目では,地域差が学年によって異なっているわけだが,図1を見ながら目立っものについて 説明する。(1)先生に叱られる(4番),親にいわれる(7番),宿題がある(9番),および親に 叱られる(13番)の4項目については,へぎ地と都市の差が学年とともに減少する。(2)これに対 して.えらい人になりたい(2番)と成績をよくする(14番)の2項目では.へき地と都市の差が 学年とともに増加している。すなわち,これら2項目の承認率は.へ草地では2年生から6年生にか けて著しく減少するが,都市では6年でも63箆(2番)と78珍(14番)という高率である。

(3)友だちに負けたくない(5番)は,2年生と4年生ではへき地が高いが6年生では逆に都市が高 くなり,テストがある(12番)では6年生でへき地が都市に比べて低くなっている。

へき地の特徴と若干の考察  以上のように,学習動機の中には地域,学年を通じて比較的高い承 認率を示すもの(3番,8番,14番)があり,また学年による変化には,2つの項目(3く番と8番)

を除いてはすべて承認率が減少するという,どの地域にも共通する傾向が認められる。しかしながら,

表5と図1からもわかるように,承認率の絶対量および学年による変化の程度には,かなりの地域差 がみられたのである。この点に注目して.へき地における小学生の学習動厳の特徴をまとめ一 考察し てみよう。

(1)親や教師の称賛・叱責に関する項目の承認率が高いこと。動機づけの教育的観点からすれば.そ のような外からの動機づけよりも.新しいことを知りたい,好き,面白くて楽しいなどの内からの動機 づけの方が望ましノいものであるとされ.そして.年令が増すにつれて.外から内へと動機づけが内面 化することが期待されているのである。へき地は都市に比べて外的動機に関する承認率が著しく高く,

6年生においても全体として約20多という高率を示している。この点だけを取り上げてみるならば,

へき地の小学生は学習動機の発達が遅れており,望ましくない状態にあるといえる。

−96−

(8)

しかしながら,新しいことを知りたい.好き.および面白くて楽しいの3項目の承認率をみると,へ き地は都市と同じか,むしろへき地の方が高くなっているので,上述の解釈はあてはまらないといえ よう。そこで.次のような解釈が可能であろう。①へき地の方が都市に比べて,親や教師の権威が保 たれており.また子どもが従順であって.親や教師の言うことを受け入れやすいのであろう。②学習 指導にさいして,へき地の親や教師は称賛・叱責という手段をより多く用いているのではなかろうか。

(2)えらい人になりたいと成績をよくするの2項目の承認率が低く.特に高学年ほどへき地と都市 の差が著しいこと。この2項目ではへき地と沖縄が類似していて.都市だけが極端に高いところから.

このような学習動椴は都市的なものといえよう。たとえば.えらい人になりたいの承認率は,へき地 では2年生(83節)から6年生(32珍)にかけて著しく減少しているのに対して,郡市では6年 生でもへき地の約2倍(63%)という高率を示している。このような結果について,①へき地では 沖縄とともに.高学年になるにつれていわゆる、、ぇらい人 になりたいという気拝がうすれていくこ と.②えらい人になることと勉強をすることとは無関係であると思われていること,および③へき地 の教師や勤ま,えらい人 成風 テストなどを都市の教師や親ほどには重視していないことなどが考

えられる。

要    約

奈良県下のへき地の小学生291名の学習動機を調査して統計的分析を行ない.さらに大阪・奈良 の都市部の小学生1134名,および沖縄県那覇市の小学生973名の結果と比較検討した。その主

な結果は次のとおりである。

(1)新しいことを知りたい.大人になって役に立つ.成績をよくするの3項目が,へき地の小学生 に共通する学習動機である。

(2)友だちに負けたくない.面白くて楽しいの2項目は.2年生と4年生では多いが6年生になる と減少する。

(3)親や教師の称賛・叱責に関する項目と.えらい人になりたい.宿題があるの2項目は,2年生 では多いが4年生.6年生と順に減少する。

(4)新しいことを知りたい.好き.面白くて楽しいの3項目では.沖縄がへき地,都市に比べて高

い0

(5)へき地は都市に比べて.親や教師の称賛・叱責に関する項目で高い承認率を示している。

(6)へき地は都市に比べて.えらい人になりたい,成績をよくするの2項目で低い承認率を示し.

高学年になるほど地域差が大きくなる。この偵向は.テストがあるについても認められる。

引 用 文 献

杉村 健 1967  小学校4年生と6年生の学習動機  奈良教育大学教育研究所紀要.

第3号.45−52.

杉村 健 1968  小学生の学習動機  奈良教育大学教育研究所紀要,第4号,29−34.

杉村 健・栗山広治 1972  沖縄における小学生の学習動機  奈良教育大学教育研究所

−97−

(9)

紀要.第8号一 81−86.

(附記)本研究の資料の蒐集にさいしては,奈良県吉野郡十津川村の上野地小学校,二村小学校,

西川第一小学校,および下北山村の寺垣内小学校,池原小学校,桑原小学校の協力をえました。

校長先生はじめ諸先生に厚く感謝します。また,資料の処理に協力された心理学専攻生に感謝

します。      」

ー198 −

参照

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