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生産物賠償責任保険約款の課題

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Academic year: 2021

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(1)

■アブストラクト

日本の賠償責任保険は米国の約款・料率を範として1957年に導入されたが,

当時の日本にとっては全くの新商品であったことから,営業経験を積みまた 各方面からの批判を得て改良していくべきことが意識されていた。本家の米 国 ISO 約款は,1966年,1973年,1986年に大幅な改訂がなされたが,日本 の賠償責任保険の補償内容に大きな改訂がなされたのは,保険法対応のため の約款改訂の一度のみである。本稿では,賠償責任保険のうち生産物賠償責 任保険を取り上げ,その約款につき,商品発売以降,どのような改善指摘が あり,いかに実務対応されたのかを整理したうえで,米国の ISO 約款と比 較することによって現在の生産物賠償責任保険になお残る課題を明らかにす る。結論として,①財物の使用不能損害についての補償拡大,②法令違反免 責の削除とビジネスリスク免責の見直し,③賠償請求ベースで引き受けられ る契約におけるロングテールカバーの必要性を指摘する。

■キーワード

生産物賠償責任保険,約款改訂,ISO 約款

⚑.はじめに

日本の賠償責任保険は,東京海上社が1957年に事業認可を得たことに始ま り,その後国内他社も約款に若干の違いを持たせたうえで認可取得し,事業

生産物賠償責任保険約款の課題

鴻 上 喜 芳

*平成28年⚒月20日の日本保険学会九州部会報告による。

/ 平成28年11月30日原稿受領。

(2)

を開始している1)。立案者である竹田氏は,本保険の立案にあたって,約 款・料率とも米国の賠償責任保険を範としたこと2),ならびに賠償問題を法 律的,事務的に解決していく基盤ができていない日本の現状に配慮したこ 3)を解説した上で,開発したばかりの本保険は,⽛なお検討すべき幾多の 問題を残しており,今後の営業経験と各方面からの批判を得て逐次完全なも のに整備してゆきたい⽜4)と述べている。本稿では,生産物賠償責任保険約 款について,主に保険関連学界で指摘された問題点とその実務対応の状況を 整理し,米国の ISO5)約款と比較しながら,なお残る生産物賠償責任保険約 款の課題を明らかにする。

⚒.生産物賠償責任保険約款

生産物賠償責任保険は,賠償責任保険普通保険約款に生産物特別約款を組 み合わせて引受けられるものであるが,生産物特別約款は,1957年に事業認 可された⚘つの特別約款のうちの一つである6)。保険約款は2010年⚔月⚑日 施行の保険法に対応するため大きな改訂がなされたが,それに至るまでは生 産物賠償責任保険約款(賠償責任保険普通保険約款と生産物特別約款)は,

文言の平易化など小規模な改訂はあったものの開発当初の約款がほぼそのま ま使用されてきたといえる。以下は,保険法対応約款改訂前の長らく使用さ れてきた生産物特別約款である7)が,わずか⚓条で構成されている。

1) 本間(1972)p. 117。

2) 竹田(1958)p. 53。

3) 竹田(1958)p. 52。

4) 竹田(1958)p. 42。

5) Insurance Service Office。米国の保険会社に対して,標準約款や統計データ の提供サービスを行っている。

6) 竹田(1958)p. 52。なお,他の特別約款は,施設所有(管理)者,昇降機,

請負業者,個人,スポーツ,自動車管理者,受託者の⚗つである。

7) 東京海上社の約款(小林(1998)を参照)。内容は開発当初の約款と同一で あるが,改訂により文言の平易化がなされている。

(3)

⚓.保険関連学界で指摘された問題点

開発当初の生産物特別約款はその不完全さが認識されつつも長らく改善さ れることなく使用されてきたが,本家である米国の約款は数次の改訂を経て おり8),また日本における製造物責任を取り巻く環境も変化してきたことか ら,生産物賠償責任保険のあり方について様々な指摘がなされてきた。ここ では,日本における製造物責任をとり巻く環境に応じ,1957年の生産物賠償 責任保険発売から製造物責任法要綱試案9)が公表された1975年までの約20年

生産物特別約款

(当会社のてん補責任)

第⚑条 当会社がてん補すべき賠償責任保険普通保険約款第⚑条(責任の範囲)

の損害は,次に掲げる損害に限ります。

⑴ 被保険者の占有を離れた保険証券記載の財物(以下⽛生産物⽜といいま す。)に起因して保険期間中に生じた損害

⑵ 被保険者が行った保険証券記載の仕事(以下⽛仕事⽜といいます。)の結 果に起因して,仕事の終了(仕事の目的物の引渡を要するときは引渡)ま たは放棄の後保険期間中に生じた損害

(免責)

第⚒条 当会社は,被保険者が次の賠償責任を負担することによって被る損害を てん補しません。

⑴ 生産物または仕事のかしに起因する当該生産物または仕事の目的物の損壊 自体(生産物または仕事の目的物の一部のかしによる当該生産物または仕 事の目的物の他の部分の損壊を含みます。)の賠償責任

⑵ 被保険者が故意または重大な過失により法令に違反して生産,販売もしく は引き渡した生産物または行った仕事の結果に起因する賠償責任

⑶ 被保険者が仕事の行われた場所に放置または遺棄した機械,装置もしくは 資材に起因する賠償責任

(普通保険約款との関係)

第⚓条 この特別約款に規定しない事項については,この特別約款に反しない限 り,賠償責任保険普通保険約款の規定を適用します。

8) 大きな改訂としては,1966年,1973年および1986年の改訂がある。

9) 製造物責任法要綱試案は,1975年に学者グループの製造物責任研究会が発表

(4)

間を黎明期,製造物責任法が施行された1995年までの20年間を成長期,製造 物責任法施行後を成熟期として,それぞれの期間に日本の保険関連学界で指 摘された生産物賠償責任保険約款に関する問題点を見ていきたい。

⑴ 黎明期

損害保険各社をメンバーとする日本損害保険協会賠償責任保険専門委員会 は,1971年⚗月⚙日に生産物特別約款の問題点を議題の⚑つとして取り上げ,

⽛生産物特別約款の問題点⽜と題した文書を会員各社に公表した10)。この文 書は,当時の生産物特別約款に関し,次の⚘つの問題点を指摘している。

し同年の私法学会で検討され,わが国における製造物責任立法化(製造物責任 制度の導入)の動きの原点となった(小林(1998)p. 13)。

10) 日本損害保険協会(1971)。

①生産物の損

壊自体の免責 生産物(仕事)の一部のかし(瑕疵)に基づく生産物(仕事の 目的物)の他の部分の損壊については,これを担保しないこと で各社とも一致しているが,約款表現上,若干疑義を招くおそ れのあるものがある。生産物自体の損壊により生じた当該生産 物自体の使用不能損害については担保しない趣旨であると思わ れるが,約款上明文の規定を欠いており,トラブルの生ずるお それがある。

②回収費用の

不担保 生産物に起因する身体障害または財物損壊が発生した場合,そ の後に予想される同種の事故を防止するため,被保険者が一連 の生産物の回収・検査・修理・交換を行うに要した費用および それら一連の生産物の使用不能に関して被保険者の負担する損 害賠償金が現行約款上担保されうるものか否かは必ずしも明確 ではない。

③被保険者の

範囲 わが国の賠償責任保険においては,一般的には記名被保険者,

追加被保険者という捉え方をせず,単に①製造業者または販売 業者を被保険者とする,②これらの両者を共に被保険者とする,

ことによって引受けられているのが通常である。

しかし,被保険者の範囲を拡大し製造業者とともにその下請業 者を被保険者とする場合,または販売元業者とともに卸店・小 売店などの取次販売店をも被保険者とする場合においては,こ れら追加した被保険者に関して担保する業務範囲(当該業務以 外の一般業務まで含めるおそれがある。)およびこれら被保険 者の相互の責任関係(被保険者間の問題として不担保となるお それがある。)について問題点がある。

(5)

本間(1972)は,賠償責任保険専門委員会指摘事項を踏まえつつ,1966年 に改訂された米国 ISO 約款との比較による問題点を指摘している。賠償責 任保険専門委員会指摘事項以外の生産物特別約款関連の指摘は次のとおりで ある。

④一回の事故

の定義 約款に規定がないので,次の三つの解釈の成立つ余地がある。

①原因でとらえるもの,②現象でとらえるもの,③一請求を一 回の事故とみるもの。

生産物賠償責任保険においては,一般に同一の原因から生じた 一連の事故は,発生時間または発生場所が異なる場合であって も一事故と解釈するのが通例であり,米国の証券でもこれと同 旨の定義が設けられている。ただ,わが国の約款では,その点 不明確なので,場合によっては何らかの定義をすることが望ま しいと思われる。

⑤適用地域 現行賠償責任保険普通保険約款および各特別約款には Policy Territory に関する規定はない。

特に,生産物特別約款に係る契約の場合,Policy Territory を 限定する条項を定めることにより,予期せぬ損害に対する措置 を講じておき,必要に応じこの条項を Delete することを得る とすべきではなかろうか。

⑥ビジネスリ

スク 現行生産物特別約款においては,規定されていないものである が,米国の CGL Coverage Part には Exclusion ⒦として規定さ れている。その要旨は,被保険者の生産物または完成作業がそ の意図されたとおりの機能を発揮せず,もしくは効果をあげ得 なかったことによる損害を免責とするものである。

これについては,いわば当然のこととして規定する必要はない と考えるが,薬品・化粧品など特殊な生産物について,念のた めの規定として,前記米国のような規定をおくこともよいので はないかと思われる。

⑦保険期間の

適用 現行の普通保険約款および生産物特別約款においては,いかな る事実が保険期間内に生じたことをもって保険担保の条件とし ているかは必ずしも明らかではない。このことは賠償責任保険 における保険事故の定義の問題と関連があり,約款全体の問題 として取り上げる性質のものであるが,特に生産物賠償責任保 険については,その事実として①生産物の製造,工事の完成,

②販売・引渡,③使用,摂取,④身体障害,財物損壊の発生,

⑤賠償請求,⑥責任負担など幾通りも考えられるため,問題が さらに複雑化している。

⑧被害者の属 する団体の損

企業等団体の代表者または被用者の受傷・罹病を理由とする当 該団体の逸失利益損害(いわゆる企業損害)について,もし加 害者(被保険者)に責任がありと認められた場合,これを賠償 責任保険で担保するかどうか,またもし担保するとした場合身 体障害と財物損壊のいずれによるか問題がある。

(出典:日本損害保険協会(1971)をもとに作成)

(6)

⑵ 成長期

1980年の日本保険学会年次大会においては,生産物賠償責任保険が共通論 題として取り上げられた11)。また,松島(1981)は,生産物賠償責任保険制 度を,⑴加入方式,⑵担保危険および⑶免責危険に着目し,フランスの制度 と比較している12)。さらに製造物責任法立法が現実味を帯びる中,同法施行 後の製造物責任への補償のあり方が検討された13)。この期間になされた生産 物賠償責任保険約款関連の指摘は次のとおりである。

⑨保証違反担

保証(Representation or Warranty)違反担保の規定がない。

⑩⽛生産物危 険⽜⽛完成作 業危険⽜の定

米国約款は,⽛生産物危険⽜⽛完成作業危険⽜について定義を行 い明確にしているが,日本約款は定義を置かず明確さを欠いて いる。特に完成作業危険の完成時期で問題が生じないか不安。

11) 座長の亀井は,次の⚖点を問題提起した。1. 拡大損害の被害者救済につき,

賠償責任保険での対応が適切か。2. 迅速な被害者救済のため,保険の運営や 事故処理体制はどうあるべきか。3. 付保率の向上,加入の強制をどう考える か。4. 企業防衛・被害者救済の観点から,てん補限度額をどうすべきか。

5. 開発途上の生産物,販売停止生産物,輸出用商品は対象外となっているが 対象とすべきではないか。6. 瑕疵担保,回収措置費用等は対象外となってい るが少なくとも回収措置費用の一部は対象とすべきではないか(亀井(1980))。

12) ⑶免責危険につき,被保険者の故意または重過失による法令違反は免責だが,

フランスでは被保険者の故意のみが免責であるとし,また,回収費用は日本で は免責だが,フランスでは一種の損害防止費用として担保される場合があると している。

13) 落合(1993)は,次の⚓つの課題を指摘した。1. 加入率を大きく向上させ ること。2. 保険の内容において被害者保護をより強化すること,すなわち,

重過失による法令違反担保,直接請求権導入および純粋経済損害担保。3. 保 険監督行政は,PL 保険料の水準適正化および保険会社の経営健全性の確保に 注力することが重要。

⑪使用不能損

害賠償金 保険の内容において被害者保護をより強化するために,純粋経 済損害すなわち財物が滅失・き損・汚損していない場合の財物 の使用不能損害の担保を検討すべき(落合)

(7)

⑶ 成熟期

製造物責任法が施行された後は,製造物責任および生産物賠償責任保険に 関する研究は極端に少なくなった。この期間になされた生産物賠償責任保険 約款関連の指摘は,次のとおりである。

⑫回収費用担

瑕疵担保,回収措置費用等は対象外となっているが少なくとも 回収措置費用の一部は対象とすべきではないか(亀井)

⑬法令違反免

責の見直し 被保険者の故意または重過失による法令違反は免責だが,フラ ンスでは被保険者の故意のみが免責である(松島)

保険の内容において被害者保護をより強化するため(落合)

⑭直接請求権

導入 保険の内容において被害者保護をより強化するため(落合)

⑬法令違反免

責の見直し 免責事由など法律と約款の不整合のある部分14)(大羽)

⑮リコール保 険の定型的契 約方式

今後リコールが増加すると思われるため,保険会社はリコール 保険の定型的契約方式を策定すべき15)(大羽)

⑯テールカバ

ーの必要性 日本の損害賠償請求ベースの約款は無期限のテールカバー16) 提供すべき17)(鴻上)

14) 大羽(2001)は,次の指摘をしている。生産物賠償責任保険は,賠償履行確 保手段として最も優れているが,課題として 1. 保険普及率の増加,2. 料率見 直し,3. 保険約款修正が挙げられる。このうち約款関連は 3. の指摘であるが,

⑬法令違反免責の見直しと同趣旨であろう。

15) 大羽(2008)は,次の指摘をしている。賠償責任保険では,保険法によって 被保険者に破産等がある場合は,被害者は保険金から優先的に被害回復される こととなった。今後リコールが増加すると思われるため,保険会社はリコール 保険の定型的契約方式を策定すべき。

16) 賠償請求ベースの保険が解約または非更改の場合に,保険期間中に発生して いた事故について保険期間終了後になされた損害賠償請求による損害を補償す るもの。

17) 鴻上(2012)は,次の指摘をしている。日本の損害賠償請求ベースの約款は,

無期限のテールカバーを提供していないため,①損害賠償請求ベースから事故 発生ベースに切替えた場合接続上の問題が生じる,②非更改とした場合,保険 期間中に発生していた事故に対する補償がなくなることがある。

(8)

⚔.指摘事項への実務対応

賠償責任保険専門委員会は,指摘事項を会員各社に通知した後,自らも対 応方針について検討している。すなわち,賠償責任保険専門委員会の下に賠 償責任保険特別委員会を設置し,損害保険各社で文言が異なる賠償責任保険 全体の約款整理および統一を目的に,1976年から1980年にかけて論議を行っ ている18)。この論議の中で,生産物特別約款の指摘事項に関する検討もなさ れているが,最終的に賠償責任保険の約款統一にまでは至らず,賠償責任保 険全体の統一的再整理による生産物特別約款指摘事項の改善はならなかった。

この結果,損害保険各社は,業界でなされた議論を参考にして,賠償責任保 険専門委員会指摘事項の一部について,生産物特別約款に追加特約条項を自 動付帯することで対応した。

追加特約条項は,第⚑条(適用範囲)で,日本国内で発生した事故に限定 しかつ日本国外の裁判所に提起された場合を除外するとともに,保険期間中 に発生した身体障害・財物損壊を対象とする旨を規定,第⚒条(⚑請求の定 義)で,同一の原因から保険期間中に発生した一連の事故は,発生の時・場 所,被害者の数を問わず一事故とみなす旨を規定,第⚓条(事故の発生防 止)で,事故の発生またはそのおそれを知ったときには,被保険者に回収等 の適切な措置を講ずる義務を規定,第⚔条(回収費用等の不担保)で,回収 等の措置に要した費用の免責を規定している。

指摘事項の②回収費用の不担保は追加特約⚓条,⚔条で対応,④一回の事 故の定義は追加特約⚒条で対応,⑤適用地域および⑦保険期間の適用は追加 特約⚑条で対応したこととなる。なお,追加特約条項の規定は,保険法対応 約款改訂で,生産物特別約款本体に組み込まれた。

指摘事項の①生産物の損壊自体の免責については,保険法対応約款改訂で 明確化が図られた。たとえば東京海上日動社は,新特別約款第⚓条第⚒項で,

18) 日本損害保険協会賠償責任保険特別委員会議事録。

(9)

itself(生産物自体または仕事の目的物自体)の使用不能損害も免責である ことを明らかにした19)

指摘事項の⑥ビジネスリスクについては,保険法対応約款改訂で各社が異 なる対応をした。東京海上日動社は,⽛効能・性能に関する不当表示・虚偽 表示⽜を免責とし,三井住友社および損保ジャパン日本興亜社は,さらに広 く効能不発揮を免責としている20)

指摘事項の⑫回収費用担保は,1990年に生産物回収費用保険(リコール費 用保険)が発売され,実務対応された。

指摘事項の⑮リコール保険の定型的契約方式については,製造物責任法立 法と同時に制度が発足した商工⚓団体の中小企業 PL 保険制度において2007 年にリコール特約が導入され21),中小企業にも広く利用されている22)

現在まで実務対応されていない指摘事項ならびに実務対応されていてもそ れが不十分と思われるものは,③被保険者の範囲,⑥ビジネスリスク,⑧被 害者の属する団体の損害,⑨保証違反担保,⑩⽛生産物危険⽜⽛完成作業危 険⽜の定義,⑪使用不能損害賠償金,⑬法令違反免責の見直し,⑭直接請求 権導入,および⑯テールカバーの必要性の⚙点である。

⚕.米国での対応

16の指摘事項のうち,⚙つが実務未対応または対応不十分であった。これ らにつき,米国約款がどう対応しているかを,米国 ISOCGL(Commercial General Liability:総合賠償責任)保険約款(以下⽛米国約款⽜)の最新版 2013フォーム23)で確認する。

19) 約款は,吉澤(2014)を参照した。

20) 詳細は,鴻上(2016 b)を参照されたい。

21) 日本経済新聞,2007年⚕月⚕日。

22) 商工⚓団体の⽛中小企業 PL 保険制度⽜パンフレット2015年度版によれば,

制度発足⚘年間で13,000件の加入実績がある。

23) Malecki(2013)pp. 527-560, IRMI online. テールカバーに関する部分を除き,

CG 00 01 04 13(事故発生ベース約款)を引用。

(10)

⑴ 被保険者の範囲

米国約款は,例えば販売業者を追加被保険者とする場合,Additional In- sured-Vendors Endorsement を用意している。この Endorsement の Sched- ule 欄に,Vendor の名前と “Your Products” を記載することとなっており,

当該 Vendor は,販売業者としての通常の過程で流通・販売した “Your Products” に起因する身体障害および財物損害に関する限り,追加被保険者 になると規定している。

⑵ ビジネスリスク

米国約款における現在のビジネスリスク免責は,生産物賠償責任保険に関 するものとしては,① itself 免責24),②減損財物(Impaired Property)25) 責および③リコール免責の⚓つがある26)。指摘事項の⑥ビジネスリスクは,

1966ポリシーの効能不発揮免責を意識しているが,当該免責の最新形は減損 財物免責として規定されている27)。減損財物免責の趣旨は,欠陥,不備,不 適合または危険な状態にある製造物または仕事が組み込まれたこと等が原因 で,修理,交換,調整,除去等が必要となった財物の使用不能損害は,ビジ ネスリスクすなわち保険転嫁することが適当でないビジネス上のリスクとし て,免責とするというものである。

⑶ 被害者の属する団体の損害

米国約款は,Section Ⅰ Coverage A 1. Insuring Agreement の e. に⽛⽛身 体障害⽜による損害には,⽛身体障害⽜に起因する介助,サービス不能また

24) 製造物や仕事の目的物自体に生じた財物損害を免責とするもの。

25) 従来,impaired property を⽛損傷財物⽜,property not physically injured を

⽛非損傷財物⽜と訳す例があったが,これは明らかに混乱を招く。Impaired は,

injured よりも狭い概念であるため,⽛減損⽜と訳すのが望ましいと考える。

26) Baldwin(2008)p. 55.

27) この内容に改訂されたのは1986フォームにおいてであり,これ以降のフォー ムにも受け継がれている。

(11)

は死亡に関し,いかなる人または組織によって請求された損害を含む。⽜と 規定している。

⑷ 保証違反担保

米国約款は,Section Ⅴ-Definitions の21. “Your Products” および 22.

“Your Work” において,品質等に関する保証・説明,警告・取扱説明の不 備も製造物・完成作業危険に含まれることを明示している。

⑸ ⽛生産物危険⽜⽛完成作業危険⽜の定義

米国約款は,Section Ⅴ-Definitions の16. に “Products-completed opera- tions hazard” を定義している。本間(1972)が不安としていた完成作業の 完成時期について,①契約上の全ての作業が完成した時,②複数事業場の作 業を請負っている場合は全ての事業場の全ての作業が終わった時,または③ 作業の一部が他人の使用下におかれた時,の最も早い時に完成したものとみ なす等,細かく規定がなされている。

⑹ 使用不能損害賠償金

米国約款は, Section Ⅴ-Definitions の17. で “Property damage” を定義 しているが,⽛有体物の物理的損傷(当該財物の使用不能損害を含む。)⽜に 加え,⽛物理的に損傷を受けていない有体物の使用不能損害⽜も財物損害

(Property damage)に該当することを規定している。

⑺ 法令違反免責の見直し

米国約款には,⽛故意または重過失による法令違反⽜免責はない。

⑻ 直接請求権導入

直接請求権は,米国約款でも対応していない。

(12)

⑼ テールカバーの必要性

米国約款は,テールカバーについては Section Ⅴ-Extended Reporting Pe- riods(CG 00 02 04 13(賠償請求ベース約款))において次のように規定し ている。すなわち,テールカバーについては,⽛この保険が解約・非更改の とき,または保険者によってこの保険の遡及日よりも遅い遡及日の保険もし くは賠償請求ベースでない保険に更新されたとき,に提供される⽜と規定し た上で,最後の保険の終期以前,遡及日以降に発生した事故については,追 加保険料不要の基本延長報告期間(いわゆるショートテールカバー,延長期 間60日または⚕年)と200%以内の追加保険料を条件に新たなてん補限度額 を提供する追加延長報告期間(いわゆるロングテールカバー,延長期間無期 限)を提供しているのである。ロングテールカバーの特長は,保険期間終了 日において,被保険者が事故の発生を認知していない場合でも,その後なさ れた損害賠償請求を補償の対象としていることである28)

⚖. 生産物賠償責任保険約款の課題

生産物賠償責任保険約款に対する指摘事項16について,実務における対応 状況ならびに米国約款との比較による指摘事項の重大性を勘案すると,次の ように整理できる。

28) テールカバーが導入されたのは1986フォームで賠償請求ベースの約款が導入 されたのに伴うものであるが,志田(1985)は,このように⽛全体として被保 険者に有利な内容となった背景には,依然として⽛請求ベース⽜に対する反対 論が根強い中で早期導入を図るためには相当の譲歩をせざるを得なかった事情 がうかがわれる⽜と指摘している(p. 179)。

指摘事項 実務対応・米国約款との比較による指摘事項の重大性

①生産物の損壊自体の

免責 保険法対応約款改訂で対応

②回収費用の不担保 生産物特別約款追加特約条項で対応

(13)

現在の日本の生産物賠償責任保険約款になお残る課題として,⚔点を以下 に指摘する。

③被保険者の範囲 実務対応されていないが,その後指摘はなく問題とし ては軽微

④一回の事故の定義 生産物特別約款追加特約条項で対応

⑤適用地域 生産物特別約款追加特約条項で対応

⑥ビジネスリスク 実務対応されているが,米国の範囲を超える免責範囲 となっており,課題

⑦保険期間の適用 生産物特別約款追加特約条項で対応

⑧被害者の属する団体

の損害 実務対応されていないが,その後指摘はなく問題とし ては軽微

⑨保証違反担保 実務対応されていないが,その後指摘はなく問題とし ては軽微

⑩⽛生産物危険⽜⽛完

成作業危険⽜の定義 実務対応されていないが,その後指摘はなく問題とし ては軽微

⑪使用不能損害賠償金 米国では担保されており,課題

⑫回収費用担保 生産物回収費用保険(リコール費用保険)発売で対応

⑬法令違反免責の見直

米国には同様の免責はなく,課題

⑭直接請求権導入 米国約款でも対応されておらず,また,諸外国の保険 法でも直接請求権を認めるのは限定的であり29),さら に日本の保険法でも第22条で責任保険契約についての 先取特権が規定されたことによって被害者救済の措置 が図られており,対応の必要性は低い

⑮リコール保険の定型

的契約方式 中小企業 PL 保険で対応

⑯テールカバーの必要

米国では十分な対応がなされており,課題

29) 山下(2005 a)p. 437。

(14)

⑴ 使用不能損害

日本の生産物賠償責任保険は,1957年に当時の米国とほぼ同じ補償内容で スタートした。しかしながら,財物損害の定義が,米国約款は “injury to or destruction of property” であったために後に非損傷財物の使用不能損害も 含まれることが明確化された一方,日本約款は⽛財物の損壊(滅失,き損ま たは汚損)⽜であったために非損傷財物の使用不能損害まで補償が広げられ ることはなかった30)。日本においては,1995年に製造物責任法が施行された が,その第⚓条は⽛製造業者等は,製造物の欠陥により他人の生命,身体又 は財産を侵害したときは,これによって生じた損害を賠償する責めに任ず る⽜と規定し,非損傷財物の使用不能損害についても責任が及ぶ。製造物責 任法立法当時の保険関連学界の議論では,生産物賠償責任保険の補償範囲を 拡大して純粋経済損害(非損傷財物の使用不能損害はこれに含まれる。)に も対応し,製造物責任法が規定する責任の範囲と生産物賠償責任保険の補償 範囲を一致させるべきとの意見があった31)が,これは,賠償責任保険普通保 険約款および生産物特別約款レベルではその後も実現していない32)

このような状況下,外資系の保険会社では,製造物に起因する純粋経済損 害を補償すべく,製造業 E&O 保険を発売している33)。E&O(Errors and Omissions)保険とは,身体障害・財物損害を伴わない経済損害を対象とす る保険であるが,日本の生産物賠償責任保険では非損傷財物の使用不能損害 30) 例外として,誰かの財物に損壊がある限りは,財物を損壊された者以外の財 物の使用不能損害も,財物損壊事故と相当因果関係ある範囲で対象となる(ク レーンが倒壊して電線を切断し,そのため隣接の映画館が停電して入場料を払 い戻した場合など)とされている(東京海上火災保険株式会社(1965),p. 69)。

31) 落合(1993)pp. 76-77。

32) 一部の保険会社では非損傷財物の使用不能損害を特約対応している。例えば,

東京海上日動火災社の⽛製造物責任法対応特約条項⽜や損保ジャパン日本興亜 社の⽛物理的損傷を伴わない財物の使用不能損害担保特約条項⽜など。

33)⽛フェデラル保険,製造業 E&O 保険を推進⽜(保険毎日新聞2011年⚗月⚖

日),⽛チューリッヒ,新たな製造業者向け保険⽜(保険毎日新聞2013年⚙月⚓

日)。

(15)

は財物損害(日本では⽛財物損壊⽜)の範疇に入っていないため,製造業者 向けに非損傷財物の使用不能損害を補償すべく製造業 E&O を設定したの である。しかしながら,製造物に起因する非損傷財物の使用不能損害は,米 国では財物損害を構成するので,一般的な CGL 保険または PL(Products Liability:製造物賠償責任)保険で対象となる。

日本においては,賠償責任保険の導入当初賠償問題を金銭で解決するとい う土壌が十分には醸成されていなかった。従って,導入当初の約款を,米国 のような広い概念である⽛損傷⽜ではなく狭めの⽛損壊⽜と規定したのは,

やむを得ない措置であったろう。しかしながら,賠償責任保険導入から約60 年が経過しその普及で日本にも賠償問題を金銭で解決するという土壌が根付 いてきた。米国約款の変遷も参考にすれば,財物損害の範囲をどこかの時点 で使用不能損害も含む⽛損傷⽜へ拡大することが必要だったのではないか。

これを怠ったために,製造業 E&O 保険といういびつな補償が出現するに至 った。使用不能損害を対象にするためには,生産物賠償責任保険に加え限ら れた保険会社のみが扱う製造業 E&O 保険を組合せなければならないとい うわずらわしい事態となっているのである。日本においても生産物賠償責任 保険において非損傷財物の使用不能損害(純粋経済損害)を補償すべく,財 物損害の定義の見直しを今一度真剣に検討すべきではないだろうか。

⑵ 免責事由

免責事由については,次の⚒点が大きな課題と考える。

a.法令違反免責

⽛被保険者が故意または重大な過失により法令に違反して生産,販売もし くは引き渡した生産物または行った仕事の結果に起因する賠償責任⽜は,

1957年当初より免責とされ,現在も変更がない。この免責規定に触れる事例 として,⽛食品衛生法で添加が禁じられている有毒着色剤を使用した食品に よる中毒事故⽜が典型的ケースとして挙げられるが,この規定では被保険者

(16)

が故意または重大な過失が要件となっているので,実務対応としては,再三 の警告または改善命令を無視して製造された場合のように,客観的に故意・

重過失を推認しうる場合に限ってこの規定は適用されると解説される34) ところで,この免責規定は日本独自のものであり,わが国への導入当初に 参考にされた米国 ISO 1955ポリシーやそれ以降の ISO ポリシー・フォーム にもこのような免責規定はなく,松島(1981)によればフランスにおいても 同様で,これらの国の約款では⽛被保険者の故意⽜のみが免責とされている。

この免責規定は,生産物特別約款のほか昇降機特別約款にも存在する。参 考とした米国約款にない免責規定を導入したのは,賠償責任保険開発時に当 時の商法641条に規定される⽛保険契約者または被保険者の悪意または重過 失⽜免責を任意規定ととらえ,賠償責任保険では重過失を担保するとした35) 際に,賠償責任保険を付保することによる安全確保面のモラルハザードが生 じる懸念があったことから,安全確保の法令が整備されている昇降機・生産 物に限って,重過失担保を補完するためにこの免責規定を設けたものと思わ れる。

賠償責任保険の導入当時はこのような慎重な姿勢も必要であったことは理 解できるが,導入から60年が経過し日本における賠償責任保険の内容,役割 も十分認知されてきたことを考え合わせると,安全確保措置の徹底について は関連法規に任せ,賠償責任保険約款からはこの免責規定を削除すべきでは ないだろうか36)

34) 保険毎日新聞社(1988)p. 91。

35) 竹田(1958)p. 46。

36) 会社役員賠償責任保険の⽛法令に違反することを被保険者が認識しながら行 った行為⽜免責についても,故意免責との関連や参考とした米国約款の dis- honest 免責との関連において,議論のあるところである(甘利(1998),山下

(2005 b)〔洲崎博史〕pp. 77-81,内藤(2012)など)。しかし,当該保険にお いては賠償責任保険普通保険約款の故意免責に代えて当該免責が採用されてい るのであって,法令違反免責は文言を修正する必要はあるかもしれないものの 免責自体をなくすということは考えられないし,当該保険においては参考とし た米国約款に類似の趣旨の免責規定があった。一方,生産物賠償責任保険では,

(17)

b.ビジネスリスク免責

日本の生産物賠償責任保険約款が担保内容に踏み込んで大きく改訂された のは,保険法対応のための約款改訂の一度だけである。この改訂により,ビ ジネスリスクに関し,従来は itself 免責だけであったものが拡がり,完成品 全般が免責となった。米国約款では,完成品に物理的損傷がある場合はビジ ネスリスクとして扱わず補償対象としている。ビジネスリスクとして免責に しているのは,完成品に使用不能損害がある場合で,それらが欠陥ある生産 物(部品または原材料)の除去等により元の状態に修復できる場合に限られ る。さらに,元の状態に修復できる場合であっても生産物に生じた急激かつ 偶発的な物理的損傷に起因する場合はその免責は適用されないのである。こ れと比較すると,日本の新約款は被保険者にとって格段に厳しい内容となっ た。特にこの分野に関心が高いと思われる部品・原材料メーカーにとっては,

米国約款の方により納得感があるだろう。やり直しのきく完成品の不具合は ビジネスリスクとして保険対象外でもやむを得ないが,やり直しのきかない 完成品の不具合や完成品の他の部分を物理的損傷した場合は,通常の財物損 壊と同様に扱われてしかるべきと考えるのが自然であろう。約款改訂にあた っては,米国の状況も当然考慮したと思われるのに,なぜこのような免責範 囲の拡大がなされたのかはなはだ疑問である。この広すぎる免責規定は見直 し,使用不能損害まで補償範囲を広げた場合に必要となるビジネスリスク免 責については,米国約款を参考にして減損財物免責規定を導入すべきであろ 37)

また,身体障害にも適用される効能不発揮免責については,各社でその内 容が相違しすぎており,米国約款に比し極めて広い免責となっている会社も

賠償責任保険普通保険約款の故意免責に加えて法令違反免責が採用されている のであって,さらに参考とした米国約款には類似の免責規定はなかったのであ る。従って,会社役員賠償責任保険における議論を生産物特別約款にそのまま 当てはめることはできない。

37) 鴻上(2016 a)参照。

(18)

ある38)。免責範囲の縮小ならびに各社間の免責範囲の統一が望まれる。

⑶ テールカバー

生産物賠償責任保険は,基本は事故発生ベースの約款39)である。しかしな がら,薬品や治験を対象とする契約では事故発生時期を明確にできない問題 やロングテール問題40)があるため,従来から特約を付して賠償請求ベース約 41)化しての引受けが一般的であった。広く賠償請求ベース約款での引受け が普及したのは,製造物責任法施行に伴って発足した中小企業 PL 保険制度 以降であり,現在では各社において独自の賠償請求ベース特約が用意され,

一般国内 PL(生産物賠償責任)保険契約においても賠償請求ベース約款で の引受けが一部行われるようになっている。賠償請求ベース特約におけるテ ールカバーに関する主な規定は,以下のとおりである。

この規定では,テールは非更改時のみならず更改時に毎回ショートテール カバーがついているイメージである。保険期間終了時に被保険者が認知でき

38) ビジネスリスク免責に関するわが国の近時の裁判例および学説等の議論の詳 細については,鴻上(2016 b)参照。

39) 身体障害または財物損壊が保険期間中に発生した場合に保険対象とする約款。

40) 保険成績の確定が保険期間終了後長期を要する問題。物保険に比べ賠償責任 保険はロングテールであるが,PL における蓄積被害のある製品や医療事故を 対象とする医師賠償は特にロングテールといわれている。また,ロングテール であることはその期間内に賠償責任にかかる法改正があった場合には,大きな 影響を受ける(Doherty(1991))。

41) 身体障害または財物損壊による損害賠償請求が保険期間中になされた場合に 保険対象とする約款。

損害賠償請求の原因となる事実が発生したことを知った場合には,60日 以内に書面で通知。

当該事実に起因して,保険期間終了後⚕年以内になされた損害賠償請求 は保険期間終了日になされたものとみなす。

(19)

ない事故42)や,通知済みでも⚕年を超えてなされる賠償請求43)には対応でき ず,事故発生ベースの約款への切替えの場合は接続上の問題が生じ44),無保 険になった場合は補償対象外となる。他の保険会社の賠償請求ベースの約款 への切替えの場合は,後続会社が遡及日を元の契約の遡及日に一致させれば 接続上の問題はないが,その場合でも,事故発生を知っていて通知を怠って いた場合は補償対象外となる45)。また,中小企業 PL 保険は加入日が遡及日 となるため,賠償請求ベースの一般 PL から中小企業 PL 保険への切替えの 場合は,遡及カバーによる接続問題解消は期待できない。

このような解約・非更改または切替えの場合の接続問題や被保険者の廃業 に対応するためには,米国のようなロングテールカバー(追加保険料の支払 いを条件に,事前に報告していない事故に起因する請求に関しても無期限に 補償するもの)が必要であろう。

42) 被害者は事故を認知しているが被保険者に当該事実を伝えていない場合や,

被害者の苦情を被保険者が賠償請求に至るとまでは認識せず通知しない場合な どが考えられる。

43) 特約の規定は,不法行為責任の消滅時効⽛損害および加害者を知ったときか ら⚓年間⽜を意識して⚕年の期間を設定しているものと思われるが,潜伏期間 の長い疾病の場合や遺族が加害者を発見するのに時間を要した場合など,保険 期間終了以前に発生した事故による賠償請求が保険期間終了後⚕年を超えてな される事態はあり得る。

44) 同様の問題は医師賠償責任保険などにおいても生じうる。鴻上(2012)は,

賠償請求ベースの保険から発見ベース(事故発生ベースの一類型)の約款に切 替えた際に,切替前の保険期間内に発生した医療事故につき賠償請求に至ると は考えず保険者に報告を行っていなかったところ,切替後の保険期間内に訴訟 提起され,切れ目なく保険を手配していたにもかかわらず,いずれの保険から も補償が得られなかった事例を紹介している(pp. 91-92)。

45) 全面的に補償対象外とするのではなく⽛当該通知がなかったことによって保 険者が被った損害の額を控除して支払う⽜旨の約款としている会社もあるが,

これでも米国約款のロングテールカバーに比べれば不十分な内容といえる。

(20)

⑷ その他の実務未対応指摘事項

米国約款には何らかの対応があるものの日本の実務では未だ対応されてい ないその他の指摘事項としては,被保険者の範囲,被害者の属する団体の損 害,保証違反担保および⽛生産物危険⽜⽛完成作業危険⽜の定義の⚔つがあ るが,今日まで社会的に注目を集めるような事案は発生しておらず,また,

その後学界からの指摘もなされていないため,上記⚓つの課題よりは比較的 軽微な問題といえよう。しかしながら,米国約款はこれらについても細かく 対応しているため,米国の約款文言を参考にして日本でも約款改訂を行うこ とが望ましい。

(筆者は長崎県立大学経営学部教授)

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【参考ウェブサイト】

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参照

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