• 検索結果がありません。

韓国・日本・中国の保険法上の 告知義務制度に関する比較研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "韓国・日本・中国の保険法上の 告知義務制度に関する比較研究"

Copied!
21
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

■アブストラクト

約10年前から世界各国では保険法の改正作業が活発に行われており,その 主な目的は保険契約者を保護する法的根拠を設けることであった。特に,保 険契約を締結する際,保険契約者が負う告知義務のパラダイムの変化が目立 っていた。

保険法の改正過程で保険者の約款に対する説明義務と違反時の効果を強化 する反面,保険契約者の告知義務は緩和する方向が示されており,今や先進 的な保険法の評価基準の一つとして国際的な整合性を形成した。

本論文ではほぼ同じ時期に改正作業を終えた韓国と日本,中国の保険法上 の告知義務に関連した最近の改正内容を国際的整合性の観点で分析を行った。

東北アジアに位置する三国は,実質的に先進的保険市場を形成しており,量 的に急速な成長をなしてきたので,三国の保険法は周辺諸国に及ぼす影響は 少なくないだろう。

研究を行った結果,韓国の告知義務は応答義務へ変更されていないので,

国政的整合性に最もかけ離れていると把握できた。日本は応答義務の導入,

保険媒介者による告知義務の妨害時の解除権の制限規定を定めているが,比 率的保障制度に対する規定を定めていない。中国は応答義務の規定は勿論,

告知義務違反の主観的事情による故意と過失による故意に分けて,保険者の

*平成28年10月29日の日本保険学会大会(立命館大学)報告による。

/ 平成29年⚔月17日原稿受領。

韓国・日本・中国の保険法上の 告知義務制度に関する比較研究

朴 恩 京 李 芝 妍・訳

(2)

責任をそれぞれ定めているので,三国の中では最も前向きの告知義務制度で あると評価できる。国際的整合性とは少し差がある部分ではあるが,中国保 険法の適用過程に現れた道徳的危険の可能性,故意または過失の区分上の困 難,保険契約者に対する保険保護の効果に対する成果と問題点に対する分析 的研究は,今後の韓国と日本の保険法改正において示唆点を得られたと思わ れる。

■キーワード

告知義務,保険契約者の保護,契約解除

はじめに

約10年前から世界各国において保険法の改正作業が活発的に進められてい る。保険法改正の主な目的は,保険契約者を保護するための法的根拠を設け ることであった。特に,保険契約を締結する際,保険契約者が負う告知義務 制度のパラダイムの変化が目立っていた。今まで保険契約者と保険者との間 に存在する情報の非対称性は,保険契約者の告知義務と保険者による保険約 款の説明義務を通じて解消していた。保険法の改正過程では,保険者の保険 約款に対する説明義務とその義務違反の効果を強化する反面,保険契約者の 告知義務は緩和する方向が示されており,今や先進的な保険法を評価する基 準の一つとして国際的に整合性を形成したとも言えるだろう。

本論文で扱う主な論点は,同じ時期に改正作業を終えた韓国(2014)と日 本(2008),中国(2009)の保険法上の告知義務制度が国際的に整合性を有 するか否かに関するものである。これらの三つの国は,北東アジアに位置し ており,先進的な保険市場を形成していたり,量的に著しい成長がなされて いたりするため,これらの国の保険法が周辺の諸国に及ぼす影響は少なくな い。特に中国との経済交流が拡大する中,中国法に対する関心も高まってい る状況であるため,三つの国を比較研究することは大変有意義なものである と思われる。従って,韓国・日本・中国の保険法について,特に告知義務制

(3)

度に関連した最近の改正内容を分析し,その限界に対処できる改善策を提示 することにより,国際的な整合性を備えることが本研究の目的である。

告知義務制度の最近の変化

保険契約者の保護を目的とし,告知義務制度の厳格性を緩和する立法動向 が顕著に現れている。保険契約を締結する際,保険契約者等が保険者に対し,

リスク情報に関連して告知すべき重要な事項についての判断を負担させるこ とと,過失によって告知義務を履行していない場合,保険上の保障を全く受 けられないように規定していた従来の告知義務は,保険契約者側にあまりに も過酷であるという批判があった。告知義務制度に関連して大きく次の⚒つ の変化が見られている。

⚑.積極的告知義務から質問応答義務へ

保険者が質問した重要事項について誠実に答えたならば,告知義務を履行 したものとして規定している。応答義務への変化を通して,重要事項が何か を巡る当事者間の紛争を事前に防ぎ,保険契約者の保護のために従来の厳格 性を緩和していることが分かる。すなわち,保険者は保険加入を希望する者 に正確でかつ明確に質問する形式で,保険料率を決定したり,契約締結の可 否を決定すべき情報の提供を受けたりできると定めている。

保険契約者が自ら重要事項を発見して判断するようにし,これに違反すれ ば契約解除などの不利益を被るのは,保険契約者にとってあまりにも過酷で あるため,保険者が重要事項を判断するようにして,保険契約者は保険者か ら求められた質問に答えることがより合理的・現実的なものとなった。

応答義務は⑴申込段階で保険者が知りたい事項について注意を集中させる ようにし,⑵ただし,必要事項を質問するか否かは保険者が自由に選択でき るし,⑶申込者に通知すべき情報に対する明確な識別が可能となる,などの

(4)

メリットがあると指摘されている1)

⚒.故意と過失を区別し,告知義務違反時の効果をそれぞれ別に与えることに 保険契約者が故意又は過失によって告知義務に違反した場合,保険者は保 険契約を取消(解除,解約など)できると規定するのが一般的であった。

最近,保険法を改正した諸国の中には過失による告知義務違反の場合,保 険事故が発生した場合には因果関係に基づいて保険者の保障責任の可否を判 断したり,その事実を知っていたならば保険者が受けたはずの保険料との差 額の割合に応じて,保険金を減額支給することを定めたりする場合がある

(割合的保険てん補)。そして,過失による告知義務違反はあったが,保険者 が保険事故の発生前にその事実を知っていた場合には,保険契約の解除権ほ か,保険者の保険契約変更権を認める態度を取っている。告知義務違反の事 実を保険事故が発生する前に保険者が知った場合には,保険者が保険料の増 額請求や保険契約条件の変更を請求できる権利を有すると立法している。

ドイツの場合,保険者の保険料増額請求が過大である場合(10%以上に増 加する場合)には,保険契約者が保険契約を解除できるようにしている2)

韓・日・中⚓か国間の告知義務制度の比較

⚑.法律体系上の比較

韓国は商法第⚔編保険の第⚑章通則で告知義務と義務違反の効果(651条),

質問表の効力(651条の⚒),保険契約の解除と保険者のてん補責任(655条)

1) Law Commission, Insurance Contract Law: Misrepresentation, Non-Disclosure and Breach of Warranty by the Insured, (TSO, London, 2007), para 4. 20 p. 78;

李潤錫⽛保険契約上の最大善意義務と告知義務 最近のイギリス家計保険法の 立法案を中心として⽜漢陽法学第32巻(2010),263~287頁,韓基貞⽛告知義務 の受動化 自発的告知義務から受動的応答義務へ⽜比較司法第16巻⚓号(2009),

325~363頁,張德祖⽛イギリス保険契約法の改正動向と最大善意⽜保険学会誌 第82集(2009),韓国保険学会,133~154頁。

2) 朴恩京⽛2014年改正商法保険編告知義務制度に対する批判的考察⽜商事判例 研究2014年。

(5)

に関連して⚓つの条文を定めている。一方,日本は保険法を単行法に制定し,

第⚒章の損害保険,第⚓章生命保険,第⚔章傷害疾病定額保険に分けて,そ れぞれ告知義務(⚔,37,66条)と告知義務違反による効果(28,55,84 条)と解除の効力(31,59,88条)を定めている。

中国保険法は,保険契約法と保険業法が一緒に規定されている膨大な単行 法典である。第⚒章保険契約第⚑節一般規定の中に一つの条文を置いて,告 知義務の要件と効果(第16条)について定めている。

中華人民共和国保険法(以下,中国保険法という)は,1995年に初めて制 定されたが,中国が WTO 加盟のため,2002年に保険業と監督法規を中心 とする⚑次改正作業を行った。2002年の改正保険法は,当時の政策的要請に よるものであり,保険契約法を含む全体的な改正作業が行われたものではな い。中国政府は2002年に改正法が施行されると,すぐに保険法の先進化のた めの⚒次改正作業に着手し,2009年の全国人民大会で,現在の中国保険法が 成立し,同年10月⚑日から施行されている。⚑次改正は保険市場の開放と保 険監督の公正性に中心を置いたのに対し,⚒次改正では保険契約者の保護と 保険監督の先進化に重点を置いていた3)

3) 朴恩京⽛中国保険法の主要な改正内容とその示唆点⽜中国法研究第13集137 頁(韓中法学会,2010年⚖月)。

(6)

第651条(告知義務違反による契約解除)

保険契約の締結に際し,保険契約者または被保険者が故意または重大な過 失により重要な事項を告知せず,または不実告知を行ったとき,保険者は その事実を知った日から⚑ヶ月以内に,契約を締結した日から⚓年以内に 限り,契約を解除できる。ただし,保険者が契約当時その事実を知り,ま たは重大な過失により知らなかったときはこの限りでない。

第651条の⚒(書面による質問の効力)

保険者が書面で質問した事項は重要な事項として推定する。

第655条(契約解除と保険金請求権)

保険事故が発生した後でも保険者が第650条,第651条,第652条及び第653 条に従って契約を解除したときは,保険金を支払うべき責任はなく,既に 支払った保険金の返還を請求できる。ただし,告知義務に違反した事実ま たは危険が著しく変更したり,増加したりした事実が保険事故の発生に影 響を及ぼさなかったことを証明したときは,この限りでない。

第⚔条(告知義務)/第37条/第66条

保険契約者または被保険者になる者は,損害保険契約の締結に際し,損害 保険契約によりてん補することとされる損害の発生の可能性に関する重要 な事項のうち保険者になる者が告知を求めたものについて,事実の告知を しなければならない。

第28条(告知義務違反による解除)/第55条/第84条

①保険者は,保険契約者または被保険者が,告知事項について,故意また は重大な過失により事実の告知をせず,または不実の告知をしたとき は,損害保険契約を解除することができる。

②保険者は,前項の規定にかかわらず,次に掲げる場合には,損害保険契 約を解除することができない。

⚑.損害保険契約の締結の時において,保険者が前項の事実を知り,ま たは過失によって知らなかったとき。

⚒.保険者のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者が,保 険契約者または被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。

⚓.保険媒介者が,保険契約者または被保険者に対し,前項の事実の告 知をせず,または不実の告知をすることを勧めたとき。

③前項第⚒号及び第⚓号の規定は,当該各号に規定する保険媒介者の行為 がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第一項の事実の告知をせ ず,または不実の告知をしたと認められる場合には,適用しない。

④第⚑項の規定による解除権は,保険者が同項の規定による解除の原因が あることを知った時から⚑箇月間行使しないときは,消滅する。損害保 険契約の締結の時から⚕年を経過したときも,同様とする。

第31条(解除の効力)/第59条/第88条

①損害保険契約の解除は,将来に向かってのみその効力を生ずる。

②保険者は,次の各号に掲げる規定により損害保険契約の解除をした場合 には,当該各号に定める損害をてん補する責任を負わない。

⚑.第28条第⚑項 解除がされた時までに発生した保険事故による損 害。ただし,同項の事実に基づかずに発生した保険事故による損害に ついては,この限りでない。

(7)

⚒.告知義務の履行方法上の比較

告知義務を履行する方法上の違いがある。

韓国の場合,未だに積極的な告知義務を課す態度を維持している。日本は リスクに関する重要事項のうち保険者(となる者)が質問した事項について,

保険契約者または被保険者は真実の告知をするように定めている。中国保険 法は保険契約の締結時に保険者が保険目的または被保険者に関連する事情に 関して質問したことに対して,保険契約者は誠実に告知するように求めてい る。韓国の場合も,生命保険標準約款では,告知義務を応答義務として定め ていると見られる規定を設けており4),韓国の大法院判例も大法院2013õ

第16条保険契約の締結時に,保険契約者は保険者が保険の目的または被保険者に 関連して質問した事項について,誠実に告知しなければならない。

保険契約者が故意又は重大な過失によって前項に規定する告知義務を履行 しなくて,保険者の承諾または保険料の算定に影響を及ぼした場合,保険 者は保険契約の解除権を有する。

前項の保険契約解除権は,保険者が解除事由を知った日から30日間行使し ない場合には消滅する。保険契約が成立した日から⚒年が経過した場合,

保険者はその保険契約を解除できない。保険事故が発生した場合に,保険 者は保険金の支払責任を負うべきである。

保険契約者が故意に告知義務を違反した場合,保険者は保険契約を解除す る前に発生した保険事故に対して保険金支払責任を負わず,保険料も返還 しない。保険契約者が重大な過失によって告知義務を違反し,その違反が保険事故 の発生に重大な影響を及ぼしたときは,保険者は保険契約を解除する前に 発生した保険事故に対して保険金支払責任はないが,保険料は返還しなけ ればならない。

保険者が保険契約の締結時に,既に保険契約者の告知義務違反の事情を知 っていた場合,保険契約を解除できない。保険事故が発生した場合,保険 金支払責任を負うべきである。

保険事故は,保険契約で約定した保険責任の範囲内での事故をいう。

4) 生命保険標準約款(2015年⚘月31日)第13条(契約前に知らせる義務)契約 者または被保険者は申込を行う際(診断契約の場合には健康診断を行うときを いう),申込書で質問した事項に対して知っている事実を必ず誠実に知らせな ければならない(以下,契約前に知らせる義務といい,商法上の告知義務と同 様である)。ただし,診断契約で医療法第⚓条(医療機関)の規定に従う総合

(8)

6õ13宣告2011 54631,54648判決などにより,告知義務を受動的な答弁義 務として解釈しているが5),商法上の明文規定として応答義務を規定したも のではない。韓国商法第651条は保険契約者を保護するために早急に改正す る必要のある規定である。

応答義務の規定に関連して,告知すべき事項に対する表現にも違いがある。

韓国商法第651条⽛重要な事項⽜という表現を使用しており,大法院の判 例は⽛重要な事項とは,保険者が保険契約を引き受けるかまたはどのような 条件で契約を引き受けるかの判断に影響を及ぼす事項⽜であると解釈してい る。現行の韓国商法上,告知すべき重要事項は何かについての判断リスクが 依然として保険契約者側にあるので,保険契約者の保護を図る世界的な動向 とはかけ離れている。

日本保険法は第⚔条などで⽛損害保険契約の締結に際し,損害保険契約に よりてん補することとされる損害の発生の可能性(リスク)に関する重要な 事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの⽜として定めている。

中国保険法は,⽛保険の目的または被保険者に関連する事情に関して質問 したもの⽜に対して誠実に回答するように定めている。しかし,保険者が質 問したすべてのものが重要事項となるわけではなく,再び質問した事項のう ち,保険者の契約の引受可否と契約条件に影響を及ぼす事項が重要事項であ り,告知義務違反を判断する基準になると規定している。

告知すべき重要事項について応答義務を規定している日本と中国は,保険 者が質問した事項のうち,保険契約の引受可否と契約条件に影響を及ぼす事 項として規定し,保険契約者側の負担を緩和したという点に違いがある。一 方,保険者が応答義務のリスクから自分を保護するために,質問事項を曖昧 に表現したり,抽象的に表現したり,一般的に質問すると,依然として保険 病院と病院で職場または個人が実施した健康診断書の写本など,健康状態を判 断できる資料で健康診断に代わることができる。

5) 金恩京・林采郁⽛保険契約における告知義務違反と重大な過失の判断問題⽜

Hongik 法学第15巻⚑号970頁(Hongik 大学校法学研究所,2014年)。

(9)

契約者は当該質問が重要事項に該当するか否かの判断負担を負う可能性が高 い。従って,質問事項に対する一定の制限が必要であるとの見解6)は,大変 意味深い指摘であると思われる。

⚓.告知義務違反時の効果の比較

⚑)告知義務違反時の基本的な効果

告知義務の違反時に,保険者に保険契約を解除または解除できる権利を与 えることと解除前の事故に対して保険者の保険金支払責任がないことを規定 する基本的な効果の部分では,⚓カ国が同じ規定を定めている。ただし,中 国の場合,告知義務違反が保険契約者の故意によるものであるかまたは重大 な過失によるものであるかを分けて,違反時に異なる効果を与えている点に 特色がある。

日本保険法は保険契約の媒介者による告知妨害があった場合に,保険者の 解除権行使を制限する事由として特別な規定を設けている点が独特である。

韓国は生命保険標準約款で,告知妨害がある場合,保険者の保険契約解除 権の制限について日本保険法と同一内容の規定を定めている7)

6) 韓基貞⽛告知義務の受動化 自発的告知義務から受動的応答義務に⽜比較私 法第16巻⚓号351頁(韓国比較私法学会,2009年)。

7) 生命保険標準約款(2015年⚘月31日)第14条(契約前に知らせるべき義務違 反の効果)

①会社は契約者または被保険者が第13条(契約前に知らせるべき義務)にもか かわらず,故意または重大な過失によって契約を解除したり,保障を制限し たりできる。しかし,次の一つに該当する場合,契約を解除したり,保障を 制限したりすることはできない。

⚕.保険設計士などが契約者または被保険者に告知すべき機会を与えなかっ たり,契約者または被保険者が誠実に告知することを妨害した場合,契約 者または被保険者に誠実に告知しなかったり,不実な告知を勧誘したとき。

ただし,保険設計士などの行為がなかったとしても契約者または被保険者 が誠実に告知しなかったり,不実の告知をしたと認定できる場合は契約を 解除したり保障を制限したりできる。

(10)

⚒)保険契約の解除権の行使期間

告知義務違反による保険者の解除権行使期間について検討する。

韓国は保険者が違反の事実を知った日から⚑ヶ月,保険契約を締結した日 から⚓年間に行使すべきであると規定する反面,日本は⚑ヶ月,⚕年と規定 しており,中国は30日,⚒年と規定している。

保険契約者の告知義務違反がある場合,保険者の保険契約解除権の存続期 間は,日本>韓国>中国の順で,日本が一番長く設定している。告知義務違 反による保険者の保険契約解除権の行使期間は長ければ長いほど,保険契約 者の告知義務違反について強い効果を与えるものとして理解できる。

韓国の場合も,従来は契約を締結した日から⚕年以内であったが,1991年 改正で⚓年以内に期間を短縮した(注釈商法134頁,2001年⚑月)点を鑑み れば,中国保険法が不可争期間をより短縮することで,より保険契約者の保 護になると思われる。

⚓)告知義務違反と保険事故との間における因果関係の要否

告知義務違反により保険契約を解除した場合,解除前の事故との間に因果 関係がなかったのであれば,保険者の保障責任は認定できるか?

韓国は因果関係を要求し,故意又は重大な過失を問わずに告知義務違反の 事実が保険事故の発生に影響を及ぼさなかったことが証明されたときには,

契約を解約しても保険金を支払う責任はないものとして規定している。保険 料返還に関する明文規定はないが,商法第648条(保険契約の無効による保 険料返還請求)を類推適用できれば,保険契約者と被保険者が善意でかつ重 大な過失がないときに該当しないため,保険者の保険料返還請求義務はない ものと解釈できる8)

日本保険法は第31条,第59条,第88条(以下,31条など)で,保険者の保 険契約解除権行使の効力として保険契約を解除する前の事故に対して保険者 の保障責任はないが,告知義務違反の事実に関係なく発生した保険事故によ る損害に対しては保障責任を負うと規定している。改正前の韓国商法と同様

8) 張德祖⽝保険法(第⚓版)⽞130頁(法文社,2016年)。

(11)

である。

反面,中国の場合は独特な立法例を示している。すなわち,告知義務(質 問書への応答義務)を履行しなくて,保険者の保険契約引受の可否または保 険料の算定に影響を及ぼした場合,保険者に保険契約解除権を与えているこ とが一つ目の特色である。故意による告知義務違反の場合は因果関係を問わ ず,保険契約の解除権を行使して保険の保障責任を免れることはもちろん,

保険料返還義務もない。しかし,重大な過失によって保険契約者が告知義務 を違反した場合には,その違反の事実が保険事故の発生に重大な影響を及ぼ した場合には,解除前の事故に対して保障責任を負わないが,保険料返還義 務はあると定めている。重大な過失による告知義務の場合にのみ,事故との 因果関係を要求しているという点が第二の特色である。重大な過失で告知義 務を違反した場合ではあるが,事故との間に因果関係が存在しない場合には,

保険契約を解除しても解除前の事故については保険者の保障責任が認められ る部分においては,韓国や日本の立場と同じであるだろう。ただ,韓国と日 本は,告知義務違反の主観的要件として故意と重大な過失を区別していない が,中国は故意による告知義務違反の場合には事故との因果関係の有無と関 係なく,免責されるという点で違いがある。重大な過失で告知義務を違反し た場合には事故との間に重大な影響を及ぼした場合のみに免責を認めている。

韓国と日本は因果関係が100または⚐であるかによって保障責任が決定され る。

中国保険法は,2009年の改正時に保険契約者保護に重要な目的を置いてい たので,現行法と同じ改正成果を収めることができたものと思われる。

このように,告知義務違反時の効果を故意と重大な過失による場合を区別 したという点で,最近の先進的保険法改正と同様の立場をとったものと評価 できるが,要件と効果を著しく細分化して,むしろ条文を複雑にしたのでは ないかとも考えられる。しかしながら,保険契約者の告知義務を応答義務と して規定した点,故意と重大な過失による告知義務違反の効果を区別しよう と試みた点,保険者の保険契約解除権の行使期間を契約締結時点から⚒年に

(12)

規定して,保険契約者の保護に重点を置いている点から鑑みると,⚓カ国の 中で最も先進的な規定であると評価できる。

中国保険法上,重大な過失で告知義務を違反した場合には,事故との間に 重大な影響を及ぼした場合のみに免責を認めており,告知義務の違反時の効 果を整理すると〈表⚑〉のような内容である。

韓国と日本は因果関係が100または⚐であるかによって保険者の保障責任 の可否が決定され,保険料の返還に関連する規定はない。

⚔.保険者の契約解除権の制限事由

保険契約者などの告知義務違反があった場合にも一定の事由がある場合に は保険者の保険契約上の解除権の行使が制限される。これに関連しては日本 の立法例が最も独特である。すなわち,日本法は,①保険契約の締結時に保 険者が前項の事実を知っていたか,過失によって知らなかったとき,②保険 仲介者となる者が告知を妨害したとき,③解除の原因があることを知った日 から⚑ヶ月間解除権を行使しないときまたは保険契約を締結したときから⚕

年が経過したとき,④告知義務違反と保険事故の間に因果関係がないときを 挙げている。

韓国商法と異なる点は,①韓国商法は保険者が重大な過失により知らない ときとしているが,日本法は過失により知らないときとしてその制限範囲を

〈表⚑〉 中国保険法上の告知義務違反時の効果 主観的

要 件 答弁形態 引 受 ま た は 保険料に影響 告知義

務違反 保険者

解除権 事故への影響 ( 因 果 関 係 ) 解除前

の事故 保険料 返 還 義 務 故 意 不 告 知不実告知

あり 違反 発生 あり 免責 なし

なし なし 免責 なし

重大な

過 失 不 告 知 不実告知

あり 違反 発生 重大であり 免責 あり なし なし・軽微 負責

(13)

拡大しており,②について,日本法のみに規定されている独自の規定であり,

③韓国商法は保険契約を締結した日から⚓年であるが,日本法は⚕年の長 期間である点である。

このように保険仲介者による告知義務履行の妨害があった場合,これを保 険者の保険契約解除権の制限事由として規定したのは独特の立法例である。

保険仲介者の告知妨害がなかったとしても,保険契約者などが告知事項に関 する事項を告知しないか,不良の告知をしたと認められる場合には適用され ない(日本保険法第28条第⚓項)。

以上,韓国と日本,中国の現行法上における告知義務制度を比較分析して みた。三つの国の全てが最近の世界的な保険法改正で現れている告知義務制 度の改正動向と比較してみると,保険契約者の保護に未だに足りない点があ ると思われる。国際的な整合性を備えるためには,今後も引き続き追加的な 改正作業が必要であるし,次のような新しい議論も含まれるべきであると思 われる。

Ⅳ 追加的な議論が必要な部分

⚑.遺伝子情報を告知義務の対象とすべきか?

遺伝子情報を告知義務の対象とするか否かの問題に関連して,現行商法の 下では⽛重要な事項⽜に該当する遺伝子情報を保険契約者が積極的に陳述告 知すべきであるが,商法改正によって⽛消極的応答義務⽜に転換される場合 には,保険者が質問票に遺伝子情報に対する広範囲の質問を記載できるので,

高額保険などの例外的な場合に限り,受動的な告知義務の形で保険者が知り たい情報を具体的かつ限定的にのみ質問できると明文で規定すべきである9)

日本でも保険法改正議論の際に,遺伝子情報を告知義務の対象に含むべき かについての議論があったが,公益とプライバシー等,考慮すべき問題が多 いとの理由から改正段階では検討されなかったが,後日,社会の変化に応じ 9) 朴恩京⽛遺伝子の診断情報と保険法的な問題⽜韓国医療法学会誌第21巻⚑号

113頁以下(韓国医療法学会,2013年)。

(14)

てその問題が現実化される場合には,立法措置を検討すべきである10) フランスで最初に遺伝子情報を規制した法律は,1994年⚗月29日の法律第 94-653号生命倫理法である。同法第⚕条は,民法16-10条11)を新設し,刑法 第226-26条12)を新設した。また,ほぼ同じ規定が1994年⚗月29日の法律第 94-653号によって公衆衛生法に追加された。このような規定で保険加入希望 者が自発的に提供した遺伝子情報を保険の引受可否などに使用できるかにつ いて疑問があり,フランス保険協会の使用禁止約束と上記の条項を包括的に 適用して解釈論としてその使用を禁じていたが13),この点を明確にしたのが 2002年の改正である。

改正内容は,⽛誰でも遺伝子特性を理由とする差別を目的とすることはで きない⽜という内容の民法16-13条を新設し,保険法第⚑部第⚓章に⽛第⚓

節傷害または死亡リスクに対する保険の加入⽜という節を追加し,⽛傷害ま たは死亡リスクに対する保険加入は,公衆衛生法1141-1条14)ないし1141-3条 に定める条件に従って保証される⽜という内容の保険法第133-1条を新設し た。

保険法133-1条により,⽛傷害または死亡リスクに対する保障を提供する企 業や組織,その保障を請求する者の遺伝子特性の検査結果を考慮できない⽜

と明確に定めた。このような遺伝子情報の利用禁止は,本改正前にも民法と 10) 山下友信・竹濵修⽝保険法(第⚓補訂版)⽞261頁(有斐閣,2015年)。

11) 人の特性の遺伝子学的な調査は医学的な目的または科学的な研究目的の意外 で着手してはならない。本人の承諾は調査の実施前に得なければならない。

12) 遺伝子の特性調査によって人から収集した情報を医学的な目的または科学的 な研究意外で使用する行為は⚑年の禁固と10万フランの罰金に処する。

13) 山野嘉朗⽝保険契約と消費者保護の法理⽞171頁(成文堂,2007年)。

14) 公衆衛生法1141-1条は,障害または死亡危険に対する補償を提供する企業ま たは組織は,その補償を請求する者の遺伝子特性の検査結果を考慮することは できない。例えば,その結果が当事者または当事者の同意を得た者によって伝 えられたとしても同様である。また,当該企業または組織は遺伝子検査とその 結果に関していかなる質問もしてはならないし,またある者に対して契約締結 前と契約期間中に遺伝子検査の受診を要求できないと定めている。

(15)

刑法の規定から類推されたが,保険法で保険の危険選択の遺伝子情報の利用 を明確に禁止した点に意義が認められる。

同法は,さらに⽛例えば,その結果が当該者又は当該者の同意を得た者に よって伝わっても同様である⽜と規定している。つまり,保険加入希望者と その者の同意を得た代理人が積極的に当該遺伝子情報を提供しても,保険会 社はこれを危険選択に利用できない。同法はまた⽛当該企業または組織は,

遺伝子検査とその結果についていかなる質問もできず,またいかなる者に対 して契約締結前と契約期間中に遺伝子検査の受診を求められない⽜と規定し ている。

これにより,保険会社は質問票で告知事項に遺伝子検査とその結果に関す る事項を記載することが禁じられ,身体検査で検査医が口頭で遺伝子検査と その結果について質問することが禁じられるようになった。保険の引受条件 として遺伝子検査を受けるようにすることはもちろん,遺伝子検査の結果,

自分が優れた遺伝子情報を持っていることが判明され,このリスク要素を保 険会社に提供することにより非喫煙者割引のように保険料の割引を受けよう とすることも禁じられた15)

立法上,原則として遺伝子検査の要求または遺伝子情報の活用が禁じられ るが,保険金受領額が高額である場合,被保険者の逆選択による保険会社の 損害率の歪みや偶然性の原則という側面から例外的に遺伝子情報の活用を許 容する方法(スカンジナビア⚓国)やドイツのように公共保険の場合は,例 外的にその活用を許容する方案の中の一つが適切であると思われる16)

⚒.故意または過失の区分と比率的減額保障の問題

告知義務違反が保険契約者などの故意によるものでない場合には,保険料 の割増または保険金の一部を減額して支給する方法をとることよって優先的 に保険契約者を保護し,保険者の信頼性を向上できるようになるという点で

15) 韓昌熙⽝保険法⽞100~119頁(国民大学校出版部,2014年)。

16) 韓昌熙・前掲注15)123頁。

(16)

議論が必要である。この場合,次の二つの方法が考慮されるべきである。

まず,比率的減額保障を認めることが保険契約者に現行規定よりも有利で あるかという点である。

商法第651条では告知義務違反が保険契約者側の故意または重大な過失に よる場合,保険者の契約解除権と免責権を認めている。軽過失による告知義 務違反の場合は全額保障する all or nothing の原則が適用される。しかし,

比率的保障責任を規定すると,重大な過失による告知義務違反に対する保険 者の免責範囲が維持され,軽過失は比率保障されると保険契約者の告知義務 違反に対する保険者の免責範囲がむしろ拡大され,保険契約者側の不利益に つながる結果をもたらすのではないかとの疑問がある。

次に,過失を区別することが可能かつ容易であるかという点である。

保険契約者などに軽過失などがある場合にまで主観的要件を拡張する問題 については,契約者変更権と比例てん補原則の導入を前提としてこれを考慮 しようとする見解もあるが17),慎重に扱おうとする見解が多いと思われる18) その理由は,軽過失にまで保険契約者の責任を問うのはあまりにも厳しいと いう点,商法の他の規定において故意または重過失による違反に対して一定 の効果があるのに対し,特別に告知義務についてのみその例外を認めること は全体規定の整合性の側面で問題がある点などが提示されている19)

⚓.企業保険の場合にも告知義務制度の変化は必要であるか?

最近,イギリス2015年保険法第⚓条で⽛保険契約が締結される前に,保険 者にリスクに対する公正な提供を行うべきである⽜という規定を設けた。公 正な提供義務とは被保険者が保険者に重要事項を提供したり20),このような 17) 金孝信⽛告義務の立法上の課題⽜比較私法第20巻⚑号293頁(韓国比較私法

学会,2013年)。

18) 韓基貞⽛保険契約上の告知義務に対する立法的な考察⽜ソウル大学校法学第 52巻⚓号372頁(ソウル大学校法学研究所,2011年)。

19) 韓基貞・前掲注18)372~373頁。

20) これは過去の判例内容を参照した条文として評価できる。すなわち,過去の

(17)

義務を履行しななかったとしても重要事項を明確にするために追加質問が必 要であると慎重な保険者が認識するのに十分な情報を保険者に提供する義務 である。つまり,公正な提供義務は被保険者が知っているか知っておくべき すべての重要事項を保険者に提供しなければならず,その限りでなくても,

慎重な被保険者が追加質問をするのに十分な情報を提供した場合には,提供 義務を履行したものと見做すことをいう(2015年保険法第⚓条第⚔項b号)。

2015年保険法第⚓条第⚔項b号は,保険者が追加質問をするのに十分な情 報を提供して警告した場合は,重要事実を告知しなくても公正な提供義務を 履行したものとみなすものとする,万一に備えた告知原則(fall-back disclo- sure)を設定してこの困難を解決した。

万が一に備えた告知原則(fall-back disclosure rule)を規定する2015年保 険法第⚓条第⚔項b号が告知義務制度の改正ポイントである21)。万が一に備 えた告知原則は被保険者が重要事実を告知しなくても,慎重な保険者が引受 を決定する前に追加情報の要請が必要であると認識するのに十分な情報を保 険者に提供した場合に適用される。全ての重要事実の告知が必要であるか,

可能でないことを認める判例の立場を反映したものである22)

韓日中の⚓国の告知義務制度を改正する際,企業保険にも告知義務の変化 を規定することが必要であると思われる。

⚔.保険契約変更権を認めるべきか?

告知義務違反の場合に,保険契約の変更権を認めるべきかが問題である。

判例では保険者が保険契約書に明示的に告知が必要ないとした場合はもちろん,

保険者がいかなる質問もしなかった場合に,当該の他の重要事項に対しては告 知されることを放棄したものとして扱っていた。稲田行祐⽝英国再保険法の基 礎知識一問一答⽞169頁(保険毎日新聞社,2015年)。

21) Law Commission, Final Report No. 353, Insurance Contract Law: Business Disclosure; Warranties; Insurersʼ Remedies for Fraudulent Claims; and Late Payment, para 7. 34.

22) Law Commission (Final Report No. 353), op. cit., para 7. 34.

(18)

これは多数の国で認められている制度である。故意で違反していない場合,

韓国法制では重過失の場合に保険者は保険契約解除権と契約変更権を選択的 に認めるかの可否である。この問題についても主観的要件を現在のように維 持する限り,これを導入する必要性は少ないとの見解がある23)。しかし,こ の問題については,より前向きな姿勢が必要であると思われる。契約変更権 は軽過失を前提にして議論されているが,この問題は,重過失の場合も含め て議論できると思われる。重過失にまで免責ではなく,契約変更権という保 険契約者に緩和された措置をとることが望ましいだろうかの反論があり得る が,重過失は故意ではないので異なる扱いのできる余地があり,故意と重過 失の区分も明確でないが,重過失と軽過失の区分もあいまいであることを鑑 みればなおさらそうである。重過失を含めて議論するとしたとき,もちろん 故意と重過失の区別が曖昧であるとの問題は比例てん補主義の導入の場合も 同様であるが,比例てん補主義は保険事故が発生した場合に該当するもので あり,契約変更権の問題はまだ保険事故の発生がなく,保険金を支給すべき 問題が発生する前の状況である。そうだとすると,一度,締結された保険契 約は可能な限り維持するのが当事者の利益と経済的損失を防ぐ側面でも望ま しいことがある。従って,重過失に該当するほどの不利益を保険契約者に負 担させながら,既存の契約内容を適切な線で変更できる権利を保険者に与え る基本的態度自体は妥当な方向であると思われる。保険者の追加保険料の要 請があまりにも高い場合には保険契約者が契約を解除できるように規定する 必要がある。ドイツの立法例を見ると,追加保険料が10%以上である場合,

保険契約者の契約解除権を認定する24)

Ⅴ 結 論

告知義務は生きて動く生命体のように実務の変化に応じて,いつでもその 状況に合う方向で法理が展開され運用されることになるだろう。このような

23) 韓基貞・前掲注19)374頁。

24) ドイツ保険契約法第19条⚖項。

(19)

状況に備えるため,着実に各国の保険関連法理と立法の変化に注目するし,

これにより学界は法理的な考察に先立って,判例は実務と法理の推移をリー ドまたは従いながら,保険契約上の最も伝統的でありながら現代的な告知義 務分野において合理的かつ公平で洗練されたモデルを開発しなければならな い。

まず,保険契約締結時の保険契約者が保険者に告知すべき重要事項につい ての判断エラーのリスクから保険契約者を保護するために,韓国商法上の告 知義務を応答義務へ転換する必要がある。この場合,書面により質問した事 項を重要条項として推定する条項は削除すべきである。また,保険者の質問 に誠実に答えてない場合として,不告知と不実告知を区別する実益はないと 考えられる。特に,保険契約者側の告知義務制度が応答義務に切り替えた場 合,保険者の質問票が添付されている申込書を受領する行為として告知義務 を履行したと見做す余地が大きくなれば,告知受領権の問題は肯定的に検討 されるしかないので,応答義務に転換する場合,保険募集人の告知受領権問 題も解決できるようになる。

第二に,保険契約者が告知義務(応答義務)を違反した主観的要件に応じ て,保険契約解除権の異なる行使要件を定める案を検討する必要がある。す なわち,故意で応答義を違反した場合には,保険者は因果関係の存否と関係 なく保険契約を解除し,解除前に発生した事故に対しても保障責任を負わな いと定めて,保険契約の最大善意性と情報の偏在性,リスクに対する評価で ある点で存在意義のある告知義務制度の趣旨が実現されるようにすべきであ る。しかし,保険契約者が(重大な)過失により応答義務に違反した場合は,

故意と(重大な)過失に対する扱いが異なるとの立場で,その効果を差別化 して定める必要がある25)。(重大な)過失により応答義務に違反したが,そ の事実を保険者が知っていたとしても同じ条件で保険契約を締結した場合に 25) これは故意と重大な過失との区分が難しく,実務上に重大な過失が故意の立 証の難しさを緩和させる性格を有する意味で反対する見解もある(韓基貞・前 掲注18)373頁)。

(20)

は,保険者の契約解除権を認めず,保険金の支払責任を認める。もし保険者 がその事実を知っていたなら保険契約の引受を拒否したである場合は,保険 契約の解除権と免責を認める。

保険者がその事実を知っていたならば,異なる条件で保険契約を承諾した り,又はより高い保険料を受けたりしたことが認められる場合には,保険者 は保険契約の変更権(保険料増額請求または他の保険契約)を有し,保険事 故発生時の比率的減額保障に対する検討を行うべきである。主要国の立法例 で軽過失や無過失による告知義務違反の効果を導入する方案も一緒に議論さ れる必要があると思われる26)

第三に,保険者の保険契約変更権に関連する条項の新設を検討すべきであ る。告知義務制度の趣旨が引受ようとするリスクを正確に評価して保険料率 に合わない保険料で付保されることを防止し,リスクグループを保護する機 能を遂行していることは否認できない。従って,保険契約者が応答義務に違 反して保険者の保険料決定に影響を及ぼしたり,異なる条件で契約を締結す べきであった場合には,保険者にその保険契約を維持するが,保険料の増額 を請求したり,保険条件の変更を請求したりできる権利を与えることが必要 であるからである。保険者の保険料増額請求が過度の場合,保険契約者は一 定期間内に保険契約を解除できるようにしたドイツの立法例は,有用な参考 になるだろう。

第四に,告知義務違反と保険事故との因果関係のニーズに対するものであ る。告知義務があまりにも厳しすぎて保険契約者に過酷な結果をもたらす可 能性があるという点で,これに対する補完策として告知義務違反と保険事故 の間に因果関係が存在しない場合に保険者の保障責任を認めていると考えら れる。重過失による応答義務違反時の効果を解除と免責に限定しなければ,

因果関係を求めなくても保険契約者に対する保護が可能となるため,因果関 係の要求は削除しても構わないと思われるが27),中国保険法のように重大な

26) 金孝信・前掲注17)285頁。

27) 金善政⽛日本保険法上の告知義務制度の改革⽜企業法研究第22巻⚔号402頁

(21)

過失がある場合にのみ,因果関係を求める折衷的方策も検討すべき余地はあ るだろう。

(筆者は慶星大学教授,訳者は東洋大学教授)

(韓国企業法学会,2008年),Lee JinSoo⽛現代における主要国の保険法の改正 動向の主要内容とその示唆点⽜保険学会誌第93集180頁(韓国保険学会,2012 年)。

参照

関連したドキュメント

が漢民族です。たぶん皆さんの周りにいる中国人は漢民族です。残りの6%の中には

[r]

本報告書は、日本財団の 2016

東京電力ホールディングス株式会社(以下,東電HDという。 ) ,東京電力パワーグリ ッド株式会社(以下,東電PGという。

この国民の保護に関する業務計画(以下「この計画」という。

本報告書は、日本財団の 2015

(国民保護法第102条第1項に規定する生活関連等施設をいう。以下同じ。)の安

告—欧米豪の法制度と対比においてー』 , 知的財産の適切な保護に関する調査研究 ,2008,II-1 頁による。.. え ,