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- 85 - 免疫性神経脱髄性疾患の血液・髄液解析による急性期鑑別法の確立

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Academic year: 2021

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免疫性神経脱髄性疾患の血液・髄液解析による急性期鑑別法の確立

星野泰延1)2) 横山和正1) 能登大介2) Cossu Davide1) 三宅幸子2) 服部信孝1)

 

研究要旨 

  視神経脊髄炎(NMOSD)は中枢神経の抗体依存性自己免疫性疾患であるが、NMOSD における抗体産 生細胞の同定、T‑B 細胞インターアクションによる B 細胞分化機序、分化の場について詳細な解 明はされていない。さらに急性期においては中枢神経特異的自己免疫疾患である多発性硬化症 (MS)やミエリン外膜を構成するミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)に対する抗体 陽性で近年注目されてきた MOG 抗体関連疾患(MOG‑IgG‑associated encephalomyelitis: 

MOG‑EM)との鑑別が困難である。今回我々は健常人(HC)24 例、MS 24 例、AQP4 抗体陽性 NMOSD 22 例、MOG‑EM 12 例の患者から得られた末梢血単核細胞(PBMC)の T 細胞および B 細胞サブセット を解析した。また急性期の MS および AQP4 抗体陽性 NMOSD 患者の脳脊髄液(CSF)の免疫細胞を比 較した。結果として、寛解期の AQP4 抗体陽性 NMOSD 患者において、peripheral helper T(TPH)細 胞と Switched memory B(SMB)細胞、Plasmablast(PB)の頻度が MS, HC に比べて優位に増加してい た。しかし、これらの変化は MOG‑EM では認めなかった。また急性期の MS と AQP4 抗体陽性 NMOSD の比較では、寛解期と同様に TPH 細胞、SMB 細胞、PB の頻度が MS に比べて優位に増加していた。

CSF においても SMB 細胞は AQP4 抗体陽性 NMOSD 患者において優位に増加していた。さらに、SMB 細胞と TPH 細胞の共培養の結果では、健常群と比して AQP4 抗体陽性 NMOSD 患者の方が抗体分泌細 胞(ASC)に分化する割合が優位に増加していた。以上の結果は SMB 細胞と TPH 細胞が NMOSD の抗 体産生に強く関与していることを示している。また類縁抗体関連疾患である MOG‑EM は NMOSD と 病態機序が異なることも推察させる。NMOSD を含めた抗体関連中枢神経特異的自己免疫疾患の急 性期診断への応用および病態の一部を明らかとした。 

 

研究目的 

NMOSD は中枢神経の自己免疫性疾患である。水 チャンネル aquaporin が発見されたが、患者 血清からアクアポリン 4 抗体(AQP4 抗体)が陽 性であることが発見され、広く臨床診断とし て利用されている。しかし、NMOSD における抗 体産生、病態機序については一部報告されて いるがまだ不明な点が多い 1)。さらに抗体産 生が PB のみならず SMB 細胞からも産生される のか、T‑B 細胞インターアクションがどこでど の細胞間で行われ B 細胞の分化に関与し、抗

体分泌を行うのかは不明である。特に扁桃、リ ンパ節、脾臓、パイエル板などの二次リンパ節 ではなく、三次リンパ組織様構造において抗 体産生に関与する TPH 細胞が最近報告された が 2)、この細胞群の NMOSD による関与はまだ 証明されていない。本研究ではそれらの抗体 分泌細胞への分化と病態への関与について明 らかとし、臨床においては特定の細胞群に着 目した急性期の中枢神経脱髄性疾患の鑑別を 行うことをその目的とする。 

 

所属:1)順天堂大学神経学講座  2)順天堂大学免疫学講座

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研究方法 

健常人 24 例、多発性硬化症(MS)24 例、AQP4 抗体陽性 NMOSD 22 例、ミエリンオリゴデンド ロサイト糖タンパク質 MOG‑EM 12 例の患者か ら得られた PBMC の T 細胞および B 細胞サブセ ットの頻度を分析した。また再発期の MS また は AQP4抗体陽性 NMOSD 患者の CSF の免疫細胞 を解析した。さらには、ソーティングで分離 した B 細胞と T 細胞サブセットの共培養を行 い、ASC への分化と免疫グロブリンの産生を分 析した。 

(倫理面への配慮) 

  連結可能匿名化で限られた臨床情報の提供 を受ける研究であり、順天堂大学の倫理委員 会の承認を受けている。 

 

 

研究結果 

寛解期の AQP4抗体陽性 NMOSD 患者において、

TPH 細胞と SMB 細胞、Plasmablast の頻度が MS, HC に比べて優位に増加していた。しか し、これらの変化は MOG‑EM では認めなかっ た。また急性期の MS と AQP4抗体陽性 NMOSD の比較では、寛解期と同様に TPH 細胞、SMB 細 胞、Plasmablast の頻度が MS に比べて優位に 増加していた。CSF 中でも SMB 細胞は AQP4抗 体陽性 NMOSD 患者において優位に増加してい た。さらに、SMB 細胞と TPH 細胞の共培養の結 果では、健常群と比して AQP4抗体陽性 NMOSD 患者の方が ASC に分化する割合が優位に増加 していた。 

考  察

以上の結果は SMB 細胞と TPH 細胞が三次リンパ 組織様構造での AQP 抗体分泌により NMOSD の病 因に関与すること、また類縁疾患である MOG‑

EM は NMOSD と病態機序が異なること、臨床で は急性期の髄液、血液解析で NMOSD,  MOG‑EM, 

MS が鑑別可能であることが明らかとなった。最 近免疫チェックポイント阻害剤の効果を示す 患者においては B 細胞特に SMB が腫瘍内に入り 込んでいて三次リンパ組織様構造での SMB が重 要であることが報告された 3)。よって、NMOSD および重症筋無力症のような抗体関連自己免 疫疾患においても、SMB、TPH に着目したさらな る解析が新治療標的薬の発見につながる可能 性がある。

  結  論 

SMB 細胞と TPH 細胞が NMOSD の抗体産生に強く 関与していることを初めて明らかとした。また 類縁抗体関連疾患である MOG‑EM は NMOSD と病 態機序が異なること含め、フローサイトメトリ ーにより MS/NMOSD/MOG‑EM の急性期診断に応用 可能であることが明らかとなった。

 

  文  献 

1)Chihara et al., PANS 2011;108: 3701‑

06.Scott A Jenks et al., Immunity 2018; 

49: 725‑239. 

2)Deepak A. Rao et al., Nature  2017; 542, 110–114 

3) Helmink BA et al. Nature 2020, 577: 

549‑555

   

健康危険情報          なし 

知的財産権の出願・登録状況        特許取得:なし 

  実用新案登録:なし   

 

 

 

参照

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