博士(歯学)堀井毅史 学位論文題名
携帯式ブラキシズム診断記録装置の開発と 夜間ブラキシズム診断への応用
学位論文内容の要旨
[実験目的]
当教室では、自宅で夜間睡眠時のブラキシズムを計測する装置(以下、旧 装置)と自動解析装置を独自に開発してきた。この装置の特徴は、筋電計と 咬合接触振動を検出する加速度計を併用することで、制度の高いブラキシズ ムの計測を可能とし、これまで夜間ブラキシズムの診断に応用してきた。そ の結果、時間と場所を選ぱず患者の行動を妨げずにブラキシズムの測定を行 うには、装着感の改善、装置の携帯性、操作の簡便性が必要であると考えら れた。
本研究では、これらの特性をそなえたブラキシズムを診断する装置を開発 するための基礎的研究として、検出法と検出部位について詳細に検討し、こ の結果をもとに開発した携帯式ブラキシズム診断記録装置(以下、新装置)
を 用いて ブラ キシズ ムの 自覚の 有無 と実際 のブ ラキシ ズムの実態との関連 に つ い て 検 索 し 、 本 装 置 の 有 用 性 を 検 証 す る こ と と し た 。
[材料およぴ方法]
実 験1: 装 置 を 簡 略化 するた め、 検出装 置か ら加速 度計 の情報 を省 略して 筋 電計の みで ブラキ シズ ムを計 測し た場合 の影 響を検 索した。被験者は11 人とし、自宅で旧装置を用いて左右の咬筋筋活動と咬合接触振動を1晩計測し た。後日、計測データは、本学研究室で自動解析装置を使い、筋電計と加速度計 を併用した場合と、筋電計のみで計測した場合のブラキシズム計測時間の比 率を求め、また、2つの時間の相関関係も調べた。
実 験2: 筋 活 動 検 出部 位を咬 筋か ら側頭 筋ヘ 変更し た場 合のブ ラキ シズム 計 測 へ の 影 響 を検 索し た。 被験者 は10人とし 、自 宅で実 験1と 同じ 記録装 置を用いて左右の側頭筋および咬筋筋活動を1晩記録した。後日、計測データ は 、本学 研究 室で、A/Dデータ収集・解析ソフトを用いて分析された。側頭 筋と咬筋の筋活動によって判定したブラキシズム発現頻度を検索し、これに 対 する側 頭筋 のみの 筋活 動から 判定 したブ ラキ シズム 発現頻度の比率を計 算した。また、信号処理ソフトを使って、左右の側頭筋と咬筋の筋活動時間 の同期性を解析した。
実 験3: 以 上 の 結 果を もとに 開発 した新 装置 を用い て、 ブラキ シズ ムの自 覚の有無とブラキシズムの実態との関連について検索し、新装置の有用性を 検 証 し た 。 被 験者 は、 歯ぎ しりの 自覚 症状が 無いA群16人、歯 ぎし りの自
覚 症 状 の あ るB群16人 と し た。自 宅で 新装置 を用 いて左 右の 側頭筋 筋活 動 を3日間記録した。後日、計測データは、本学研究室でブラキシズム解析プロ グラムを用いて調べた。ノイズの混入がひどく測定内容が不明なものや測定 時 間が3時間 以内の もの はデー タとして採用しなかった。また、全被験者に 対してアンケート調査を実施し、旧装置との使用感の比較について答えても ら った 。3日 間の計 測デ ータか らブラキシズム持続時間の平均、ブラキシズ ム発現頻度の平均、ブラキシズム合計時間の平均を求めた。パラメトリック 検 定に はt一 検定を 用い 、ノン パラ メトリ ック 検定に はMann―Whitneyの旦 検 定 を 用 い た 。 ア ン ケ ー ト 結 果 の 検 定 に は ズ 2検 定 を 行 っ た 。
[結果]実験1:筋電計のみで計測したブラキシズム計測時間の比率は、.筋電計と加 速度計を併用して計測したブラキシズム計測時間に対して、平均124%土23% であり、結果として約24%多く計測された。ブラキシズム合計時間の短い被 験者でも長い被験者でも2つの計測時間の関連性は高く、相関係数r二ニニ0. 93 で強い正の相関関係を示した。
実 験2: 側頭 筋のみ の筋 活動か ら判定したブラキシズム発現頻度の比率は、
側 頭筋 と咬筋 の筋 活動に よっ て判定したものに対して、平均98%士2%であ った。また、側頭筋と咬筋のブラキシズムが同時に発現した合計時間の比率 は、側頭筋あるいは咬筋のブラキシズムが発現した合計時間に対して90%土 6%であった。
実 験3: ノイ ズ の 混 入 と 計 測時間 が3時 間以 内と短 かっ た5回 分のデ ータ を 除 外 し た 。 新 装 置 を32人 延 べ96回の計 測に 使用し 、91回、95%の計 測が 有 効 であpた。 新装置 の使 用感に ついて操作性、大きさ、装着感、睡眠状態の いずれにおいても良好と回答した率は旧装置と比較して高く、統計学的に有 意差が認められた。
各被 験者の ブラ キシズ ム持 続時間の平均は、B群では持続時間の長い被験 者 が多 く認め られ た。A群は平 均4.5土4.O秒、B群は21.2土27.7秒で、B群 で はA群 に比 べ て 統 計 学 的 に有意 に長 かった 。B群 の平 均を超 えるA群の 被 験 者は 認めら れず 、A群 の平均 を下 回るB群の被 験者 も認め られ なかった。
各被 験者の ブラ キシズ ム発 現頻度の平均は、B群では発現頻度の高い被験 者が多く認められ、A群にも発現頻度の高い被験者が認められた。A群が10.8 土5.3秒 、B群 が13.5土5.1秒 で 統 計 学的 に 有 意 差 が 認 めら れ なか った 。 各被 験者の ブラ キシズ ム合 計時間の平均は、B群では合計時間の長い被験 者 が多 く認め られ た。A群が47.9土37.1秒 、B群 が261.6土156.2秒で統計学 的 に 有 意 に 長 か っ た。B群 の平均 を超 えるA群の被 験者 は認め られ ず、A群 の平均を下回るB群の被験者も認められなかった。
[考察]
検出装置を簡易化することは、小型軽量化にっながり、携帯が可能になる。
さらに、被験者の行動を妨げずにブラキシズム計測が可能となり、長期間の 測定に対応できると考えられる。そこで、筋活動のみでブラキシズムを判定 す るこ とに着 眼し た。筋 電計 のみの ブラ キシズ ム計 測時間 の比 率は、平均 124%で約24%ブラキシズムとは異なる活動が計測されていた。筋電計のみで ブラキシズムを判定すると体動、嚥下等によるノイズの混入が考えられる。
し か し 、 本 実 験 の 結果 、 こ の2つ のブ ラキシ ズム 計測時 間の 相関係 数はr‑
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O.、93と強い正の相関関係が認められ、筋活動のみの計測でもブラキシズムの 傾向が計測されることが示唆された。
当教 室では、咬筋 を被験部位にしてブラキシズムの判定を行ってきたが、
頬 部に付着した 電極から伸びるコードが視界に入ると入眠の邪魔になり、装 着 感が悪いとい う被験者からの報告があった。そこで睡眠障害を防ぎ、装着 感 の改善を目的 に側頭筋を測定部位にすることを考えた。ブラキシズムの検 出 を左右の側頭 筋と咬筋を被験部位として行った報告は存在するが、側頭筋 の みで計測した 報告はこれまでみられない。側頭筋のみでブラキシズ発現頻 度 を判定した場 合、側頭筋と咬筋によって判定したブラキシズ発現頻度と比 べ て98%と高い確率 で判定できることが判明した。また、側頭筋と咬筋のブ ラ キシズムが同 時に発現した合計時間の比率について、早期に筋活動を始め る 部位や、放電 状態などによって一致しない部位が認められたが、90%と高 い 確率で同時に 活動していたことが判明した。咬筋から側頭筋へ測定部位を 変 更 し て も 、ブ ラ キシ ズ ム測 定 には 有効 で ある こ とが 明 らか とな っ た。
問診 や臨床診査に よってブラキシズムを推測することは可能であるが、実 際 のブラキシズ ム活動を知るためには、計測機器を使った生体現象の観察が 客 観的診断には 必要である。今回新装置を使ってブラキシズムの自覚の有無 と実態について調べた結果、発現頻度.については両群とも有意な差は認めら れ ず、持続時間 、合計時間について、ブラキシズムを自覚する群は自覚しな い 群と比較して 有意に大きいことが認められた。市来らはブラキシズムの自 覚 の有無で被験 者を比較した結果、発現頻度に差はなく、持続時間および筋 活 動量に差があ ることを報告しており、我々の結果とほぼ一致した結果を報 告している。
新装置は、装置の簡略化と検出部位の変更によって、被験者の゛使用感が著 し く改善し、患 者自身による夜間ブラキシズムの観察が可能になった。ブラ キ シズムの頻度 や持続時間、合 計時間を計測 することで、1晩のブラキシズ ム の傾向を知る 装置として臨床 応用の有用性 が高いと考えられる。また、1 晩 の計測結果を 自宅のコンピュ ータで1分以内 に知ることができるため、研 究 室に持ち運ん でデータを分析する診断法から、自宅で患者自身が自己診断 す る新しい診断 システムに発展させる可能性がでてきた。今後、本装置を応 用 し た研 究 がブ ラキシズムの 程度と歯周病 罹患度との関 連などの解明に 役 立っことが期待される。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
携帯式ブラキシズム診断記録装置の開発と 夜 間 ブ ラ キ シ ズ ム 診 断 へ の 応 用
審 査は主査 、副査全 員が一同 に会して 口頭で行っ た。はじ めに申請 者に対し 本 論 文 の 要 旨 の 説 明 を 求 め た と こ ろ 、 以 下 の 内 容 に つ い て 論 述 し た 。
本研究よ携帯弌ブラキシズム勃蝙識劇鑓(以下、新装置)の開発のための基攤伍ヰ究 とし て、検出 法と検出 部位について詳細に検討し、この結果をもとに開発した新 装 置 を用 いてブ ラキシズ ムの自覚 の有無と実 際のブラ キシズム の実態と の関連 について検索し、本装置の有用性を検証した。
装置 を 簡易化す るため、 カセッ卜 テープを記 憶媒体と した装置 (以下、 旧装 置 ) を使 用し、 筋電計の みで測定 した場合の ブラキシ ズム計測 への影響 につい て 検 索し た。結 果、被験 者11人の筋 電計と加速 度計で計 測したブ ラキシズ ム時 間 に 対す る 筋 電計 の みで 計 測 した ブ ラキシ ズム時間 の比率は 平均で124% であ った。両者のブラキシズム時間の隰童出ヨ:高く、相関係数r ‑0. 93の高い正の相関関 係 を 示し 、筋活 動のみの 計測でも ブラキシズ ムが高く 検出され ることが 示唆さ れた。
装着 感 の改善を 目的に、 筋活動計 測部位を咬 筋から側 頭筋にし た場合の プラ キ シ ズム 計 測 への 影 響を 検 索 した 。 結果 、 被 験者10人の 側 頭筋 の みの筋 活動 で 判 定し たブラ キシズム 発現頻度 は、側頭筋 と咬筋の 筋活動に よって判 定した も の に対 して、98%と高い 確率で判 定できるこ とが判明 した。次 に、側頭 筋と 咬 筋 のブ ラキシ ズム同時 筋活動時 間の比率は 、側頭筋 あるいは 咬筋のブ ラキシ ズ ム が活 動した 時間に対 して、90% と高い確率 で同時に 活動して いたこと が判 明 し 、咬 筋から 側頭筋ヘ 測定部位 を変更して も、ブラ キシズム 測定は有 効であ ることが示唆された。
以上 の 結果をも とに、新 装置を開 発し、ブラ キシズム の自覚の 有無と実 際の ブ ラ キシ ズムの 実態との 関連につ いて検索し 、本装置 の有用性 を検証し た。被
光忠 昇 雅 浪池 畑 川赤 大 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
験 者 は 、 歯 ぎ し り の 自 他 覚 症 状 が 無 いA群16人 、 歯 ぎ し り の 自 他 覚 症 状 の あ る B群16人 と し た 。 新 装 置 を32人 延 べ96回 の 計 測 に 使 用 し た 結 果 、91回 、95% の 計 測 が 有 効 で あ っ た 。 ま た 、 新 装 置 の 使 用 感 に つ い て 、 良 好 と 回 答 し た 率 は 、 I日 装 置 と比 較し て高 く、 統計 学 的に 有意 差が 認め られ た。 各被 験昔 のブ ラキ シズ Z篭搬まA群とB群との間に績計孝歇肩意差が認められず、各被験昔のブラキシズ,凵寺院 時間と各被験者のブラキシズ|ム合計時間についてB君鞄血攤と比較して有意に大きいことが 認められたo今回計則システムを改善し丶簡剔ヒと/J壟軽副匕した新装勵よ患者カ渡Vや尹 く、晦莉溯の有田陞カ瀞堪攫であることカ訪ミされた
弓1き 続 き 審 査 担 当 者 と 申 請 者 の 間 で 、 論 文 内 容 お よ び 関 連 事 項 に つ い て 質 疑 応 答 が な さ れ た 。 主 な 質 問 事 項 と し て 、
@ グ ラ イ ン デ ィ ン グ と ク レ ン チ ン グ 、 タ ッ ピ ン グ の 検 出 の 違 い に つ い て
◎A/Dデ ー タ 収 集 ・ 解 析 ソ フ ト 上 で の 筋 電 図 波 形 の 読 み 方 に つ い て
◎ 信 号 処 理 ソ フ ト 上 で の 筋 電 図 波 形 の 積 分 方 法 に つ い て
@ 新 し く 開 発 し た 装 置 の 計 測 結 果 と 臨 床 的 評 価 と の 関 係 に つ い て
◎1晩 の 計 測 に お け る ブ ラ キ シ ズ ム 出 現 と 睡 眠 時 間 帯 と の 関 係 に つ い て
などであった。
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こ れ ら の 質 問 に 対 し 、 申 請 者 は 適 切 な 説 明 に よ っ て 回 答 し 、 本 研 究 の 内 容 を 中 心 と し た 専 門 分 野 は も と よ り 、 関 連 分 野 に つ い て も 十 分 な 理 解 と 学 識 を 有 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 本 研 究 で は 、 ブ ラキ シズ ム診 断記 録装 置は 患者h;f吏 い やすく、臨莉胡ヨの有用陞カ浦沁堪置であることを明囓こした勧滴lく評価された本瞬知吶脅よ 歯 離鸚 紡発 鳳こ →扮 貢獣 ナる もの であ り、 審査担当者全員は、 学位申請者が博士噛齣 が粒を授与するt沛吋るものと認めた