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博士(歯学) 本間啓史 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)   本間啓史 学位論文題名

化学的根管拡大後にスーノヾーボンド根充シーラーを用いた      根管充填の封鎖性

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

(緒言)

  

根管治療では,まず根管を無菌化することが必要で、そのためには根管を機械的に拡大 して感染歯質を物理的に除去するとともに,根管を洗浄することが重要である.しかし扁 平な根管や樋状根,イスムスを有する根管などでは機械的に根管を拡大することが難しく,

多量の細菌が残存する.根管内に残存した細菌はバイオフイルムを形成し,薬剤に対して 抵抗性を示すことから,根管貼薬で確実に死滅させることは難しいとされている.したが っ て , こ の よ う な 根 管 を 無 菌 化 す る た めに は 化 学的 清 掃 がき わ め て重 要 と な る.

  

機械的に根管を拡大形成できない場合,無機質溶解性に優れる薬剤と有機質溶解性を有 する薬剤を組み合せて化学的に根管壁を溶解し,無菌化するとともに接着性レジンシーラ ーの流入スペースが確保できれば,高い無菌性と封鎖性が得られると思われる.一方,化 学的に処理された根管壁はレジンの接着大きく低下させることが報告されており,根管壁 を長時間溶解することは,封鎖性を低下させる危険性もある.

  

本研究は,根管の化学的根管拡大清掃として有効な処理法を検討するとともに,化学的 に拡大清掃した根管壁への接着性シーラーの接着状態と根管充填後の封鎖性を評価するこ とを目的とする.

(材料と方法)

実験1 .

 38

%リン酸および10 %クエン酸/3 %塩化第二鉄水溶液による象牙質脱灰深度の測定

  

ヒト抜去 歯の象牙 質面を 次の4 っの条件で処理し,SEM で脱灰深度を測定した.@38 % リ ン酸( パルフイ ークエ ッチング 剤、以 下

PA)5

分,◎

PA5

分 ,10 %次亜塩素酸ナトリウ ム (ネオ クリーナ ー、以 下NC)2 分,◎

10

%クエ ン酸3 %塩化 第二鉄(表面処理剤グリー ン、以下10‑3 溶液)5 分,@

10‑3

溶液5 分,NC2 分.

実 験

2

. リ ン 酸 お よ び

10‑3

溶 液 処 理 後 の

NC

処 理 時 間 と 象 牙 質 面 の 形 態 変 化

  

ヒ ト 抜 去歯 の 象 牙質 面 を 次の

12

の 条件で 処理し、

SEM

観 察を行っ た.@

PA5

分,

NCO

秒 ◎

PA5

分 ,

NC60

秒 ◎

PA5

分 ,

NC90

秒 @

PA5

分 ,

NC120

秒 ◎

PA5

分 ,

NC120

秒 , 芳 香族 スルフ イン酸 塩(アク セル,サ ンメデ ィカル)

10

秒,10‑3 溶 液

10

秒, ◎PA10 秒

10‑3

溶 液

5

分 ,

NCO

秒 ◎

10‑3

溶 液

5

分 ,

NC60

秒 ◎

10‑3

溶 液

5

分 ,

NC90

秒 ◎

452

(2)

    I

10‑3

溶 液

5

分 ,

NC120

秒 @

10‑3

溶 液

5

分 ,

NC2

分 ,ア ク セ ル10 秒 ,

10

3

溶 液

10

秒◎

10‑3

溶 液

10

実験3 :象牙 質片に よる色素 侵入試験 と微小 引張試験

  

ヒト抜 去歯の象 牙質面 を次の2 つの条件で処理した,◎化学的処理群:

10‑3

溶液5 分,

NC2

分 , 芳香 族 ス ルフ オ ン酸塩( アクセ ル)10 秒,

10‑3

溶液10 秒 .◎対 照群:10‑3 溶 液

10

秒の み,両群 とも水 洗,乾燥 後,ス ーパーボ ン

H

長 充シーラー(以下SBS) を塗布,

硬化後 に色素侵 入試験 と微小引 張り試 験を行っ た,

実験4 :扁平な根管における根管充填の封鎖性の検討

  

ヒト抜去歯を用いて根管が扁平なモデルを作製し,次の3 つの条件で根管充填を行った.

◎ 化 学 的 拡 大

+SBS

群 : 根 管 内を

10‑3

溶 液

5

分,

NC2

分 , ア クセ ル

10

秒 ,

10‑3

溶 液

10

秒 ,水 洗 乾 燥,

SBS

を 用い た単一 ポイント 根管充填 ,◎SBS 群:SBS を用 いた単一 ポイ ント根 管充填. ◎Ob 群: キャナルス

N

とObtura II を用いた垂直加圧法.3 群とも硬化後 に色素侵入試験とSEM 観察を行った,

( 結果 ) 実 験

1

  

PA5

分 , ◎

PA5

分 ,NC2 分, ◎

10‑3

溶 液

5

分 , .@10‑3 溶 液5 分,NC2 分、それ ぞれ の 脱灰 深 度 は(D29.7 土

6

5

m

31.4

4.9pm

22.8

4.7p m D22.7

4.0pm

でPA と

10‑3

溶 液に 大 き な差 は な かっ た .

実験2

  

象 牙 質面 に

PA

ま た は

10‑3

溶液

5

分 ,NC60‑120 秒の処 理を行っ て、形 態変化を

SEM

観 察した結 果,

PA

処 理後に

NC

処理を行なうと象牙細管は大きく開口し,著しい凹凸が生じ たが、

10‑3

溶液5 分後にNC 処理を行なうと,象牙細管は同様に大きく開口したが、象牙質 面の凹凸 はPA より 少なかっ た.

実験3

  化学的処理群の色素侵入率は,25.5土7.3%,対照群は,23.0土6.7%,微小引張り強さは それぞれ17.5土2.7MPa,20.4土4.7MPaで、いずれも両群間に有意差はなかった(p〉0.05).

実 験

4

  

色素 侵 入 距離 は化学 的拡大

+SBS

群が267.2 土183.9 弘

m

SBS

群 が

250.3

129.5pm

Ob

群が

854.1

307.2pm

で 、化 学 的 拡 大+SBS 群 は

SBS

群 と 有意 差 が なく (p>0.05) 、

Ob

群よ り 有 意に 少 な かっ た (

p

O

01

) .

453

(3)

( 考 察 )

  5分 間 の 脱 灰 深 度 は ,38% リ ン 酸 と10‑3溶 液 で 大 き な 差 は な く ,10‑3溶 液 で も5分 問 で 根 管 直 径 が 約0.05mm, す な わ ち フ ァ イ ル1サ イ ズ に 近 い 拡 大 が 行 え る こ と が 明 ら か と な り , 十 分 に 臨 床 応 用 可 能 な 脱 灰 速 度 で あ る と 考 え ら れ た .

  38% リ ン 酸 ま た は10‑3溶 液 で 脱 灰 し た 後 にNCを 用 い た 場 合 , 管 間 象 牙 質 は 凹 凸 を 示 し 一 部 に は 欠 け た よ う な 像 も み ら れ ,10‑3溶 液 を 用 い た 場 合 よ り も り ン 酸 を 用 い た 場 合 の 方 が そ の 傾 向 は 大 き く な っ た , さ ら に , 化 学 的 根 管 拡 大 後 に コ ラ ー ゲ ン がNCで 溶 解 さ れ ず に 象 牙 質 面 に 残 存 し た 場 合 , 酸 で 変 性 し た コ ラ ー ゲ ン は 接 着 を 劣 化 さ せ る 原 因 に な る 危 険 性 が あ る が ,10‑3溶 液 の 方 が り ン 酸 よ ル コ ラ ー ゲ ン の 変 性 が 少 な い と さ れ て い る こ と か ら , リ ン 酸 よ り10‑3溶 液 を 用 い た 方 が 接 着 の 安 定 に も 良 い と 思 わ れ た , ま た 、10‑3溶 液 とNC を 併 用 す る と 象 牙 細 管 が 大 き く ・ 開 口 し た が 、 こ れ は 象 牙 細 管 内 壁 も 化 学 的 拡 大 が 行 わ れ た こ と を 示 す も の で あ り , 象 牙 細 管 内 に 細 菌 が 侵 入 し て い る 根 管 で は , 細 管 壁 に 付 着 し て い る 細 菌 も 物 理 的 に 除 去 で き る と 考 え ら れ た ,

  10‑3溶 液 とNCで 象 牙 質 面 を 処 理 後 に , ス ー パ ー ボ ン ド 根 充 シ ー ラ ー を 接 着 さ せ る と 、 色 素 侵 入 量 と 微 小 引 つ 張 り 強 さ は 未 処 理 の 象 牙 質 面 と 有 意 差 が な か っ た こ と か ら 、 化 学 的 処 理 後 の 象 牙 質 面 に 十 分 な 接 着 が 得 ら れ た と 考 え ら れ た 。

  さ ら に 、 扁 平 な 根 管 を 用 い て10‑3溶 液 とNCに よ る 化 学 的 根 管 拡 大 後 、 ス ー パ ー ボ ン ド 根 充 シ ー ラ ー と ガ ッ タ パ ー チ ャ ポ イ ン ト に よ る 単 一 ポ イ ン ト 根 管 充 填 法 は , 根 尖 か ら の 色 素 侵 入 量 が 垂 直 加 圧 充 填 法 よ り 少 な く 、 化 学 的 根 管 拡 大 を 行 わ な か っ た 場 合 と 有 意 差 が な か っ た こ と 、SEMで 根 管 壁 と シ ー ラ ー が 良 好 に 接 着 し て い た こ と か ら 、 接 着 条 件 の 厳 し い 根 管 内 に お い て も 、 ス ー パ ー ボ ン ド 根 充 シ ー ラ ー は 化 学 的 根 管 拡 大 後 の 根 管 壁 に 接 着 し て 高 い 封 鎖 性 を 得 る こ と が 可 能 と 考 え ら れ た 。

( 結 論 )

1. 象 牙 質 面 を38% リ ン 酸 ま た は10% ク エ ン 酸l3% 塩 化 第 二 鉄 水 溶 液 で5分 間 処 理 を 行 う こ と に よ り , そ れ ぞ れ 象 牙 質 面 を29.76.5m22.84.7m溶 解 す る こ と が 可 能 で あ っ た . 2 10% ク エ ン 酸 ,3% 塩 化 第 二 鉄 水 溶 液 で5分 間 , さ ら に10% 次 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ ム で2 分 間 の 処 理 を 行 い , ス ー パ ー ボ ン ド 根 充 シ ー ラ ー を 用 い た 単 一 ポ イ ン ト 法 で 根 管 充 填 す る と , シ ー ラ ー が 根 管 壁 に 接 着 し て 高 い 封 鎖 性 が 得 ら れ た .

454

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨

主 査    教 授    川 浪 雅 光 副 査    教 授    佐 野 英 彦 副 査    教 授    亘 理 文 夫

学 位 論 文 題 名

化学的根管拡大後にスーノヾーボンド根充シーラーを用いた      根管充填の封鎖性

  審査 は主査 ,副査 全員 が一同 に会し て口頭で行った.はじめに申請者に対して本論文の概要の説明を求 めた ところ ,以下 の内容 にっい て論 述した ,

  本研究 は, 根管の 化学的 根管拡 大清掃 とし て有効な処理法を検討するとともに,化学的に拡大清掃した 根 管 壁 へ の 接 着 性 シ ー ラ ー の 接 着 性 と 根 管 充 填 後 の 封 鎖 性 を 評 価 す る こ と を 目 的 と す る . 実 験1 38% リ ン 酸 お よ び10% ク エ ン 酸 /3% 塩 化 第 二 鉄 水 溶 液 に よ る 象 牙 質 脱 灰 深 度 の 測 定 ヒト抜 去歯の 象牙質 面を 次の4つの 条件で 処理し ,SEMで脱灰 深度 を測定した.@38%リン酸5分,◎38% リン 酸5分 ,10NaOCl( 以 下NC)2分 ,◎10‑3溶 液 (10%ク ェン 酸3% 塩化 第二鉄 :表面 処理剤 グリ ー ン)5分, @10‑3溶 液5分 ,NC2分,

実験2. 38%リ ン酸お よび10%クェン酸/3%塩化第二鉄水溶液処理後の次亜塩素酸ナトリウム処理時間と 象牙質 面の形 態変化

被 験 面 を り ン 酸 と10‑3溶 液 を 用 い て そ れ ぞ れ 次 の6つ の 条 件 で 処 理 を 行 っ た ,

@38% ル ン 酸も し く は10‑3溶 液5分 ,NCO秒◎38% リン 酸 も し く は10‑3溶 液5分 ,NC60秒 ◎38% リ ン 酸も し く は10‑3溶 液5分 ,NC90秒 @38%リ ン 酸 も し く は10‑3溶液5分 ,NC120秒 ◎38% リ ン 酸も し く は10‑3溶液5分 ,NC2分 , 芳 香 族スル フイン 酸塩( アク セル, サンメ ディカ ル)10秒,10‑3溶液10秒 ,

◎38%リ ン酸 もしく は10‑3溶 液10秒 各処理 終了後 ,SEM観察 を行っ た.

実験3:象 牙質片 による 色素侵 入試 験と微 小弓i張試 験

ヒト抜 去歯の 象牙質 面を 次の2つの 条件で 処理し ,接着 性を 評価し た,化 学的処 理群:10‑3溶液5分,NC 2分 , ア ク セ ル10秒 ,I0‑3溶 液10秒 .対 照群:10‑3溶液10秒のみ .両 群とも 水洗, 乾燥後 ,SBS(ス ー バ ー ボ ン ド 根 充 シ ー ラ ー ) を 塗 布 , 硬 化 後 に 色 素 侵 入 試 験 と 微 小 弓I張 り 試 験 を 行 っ た , 実験4:大 きく扁 平な根 管にお ける 根管充 填の封 鎖性の 検討

30本ヒ卜 抜去 歯を用 いて扁 平根管 モデル を作 製し, 次の3つの 条件に分け化学的拡大後の根充封鎖性を評 価し た . 化 学 的拡 大+SBS群 : 根 管 内 を10‑3溶液5分 ,NC2分 , ア ク セル10秒,10‑3溶液10秒, 水洗乾

455 ‑

(5)

燥 、 SBSを 用 いた 単一 ホ イン ト法.SBS群:SBSを用いた単一 ホイント法,Ob群: キャナルス@NとObtura IIを用い た垂直加圧法,3群とも硬化 後に色素侵入試験とSEM観察 を行った.

次の結果 が考えられた,

実験1:脱灰深度は ルン酸で約30Lim,lO・3溶液で約25Limであっ た.

実験2:象 牙質表面構造の変化 は10‑3溶液よルリ ン酸の方が大きか った.

実 験3:化 学 的 処 理 群 の 色 素 侵 入 率 、 微 小 弓I張 り 強 さ は 対 照 群 と 有 意 差 は な か っ た . 実験4:色素侵入距 離は化学的拡大+SBS群とSBS群がOb群に比較し て有意に色素侵入が少なく(pく0.01)っ 化学的拡 大+SBS群とSBS群には有意差 がなかった.

こ れら のこ と から5分間 での 脱灰 深度は,リン酸,10‑3溶液で大きな差 はなく、10‑3溶液 を用いた場合で も ,5分 間で 根管 直 径が 約O.05mm,すなわ ちフんイル1サイズに近い拡 大が行えることが 明らかとなり、

十 分に 臨床 応 用可 能な 脱 灰速 度で あ ると 考え ら れた .38%リン酸また は1013溶液で脱灰 した後にNCを用 い た場 合, 象 牙質 表面 に どの ような形態変 化を生じるかをSEMで観察し た結果,象牙細管 が大きく開口し た ,こ れは象牙 細管内壁も化学的 拡大が行われたこと を示すものであり ,象牙細管内に細 菌が侵入してい る 根管 では,細 管壁に付着してい る細菌も物理的に除 去できると考えら れた,また,化学 的根管拡大後に コ ラー ゲン がNCで 溶解 さ れず に象 牙 質面 に残 存 した 場合,酸で変性し たコラーゲンは接 着を劣化させる 原因にな る危険性があるが,10‑3溶液の方がり ン酸よルコラーゲ ンの変性が少ないとされていることから,

ルン酸よ り10‑3溶液を用いた 方が接着の安定に も良いと思われた .

以上より,10%クェン酸/3%塩化第二鉄 水溶液と10%次亜塩素酸ナトリウムを用いた化学的根管拡大後に,

スーパーボン ド根充シーラーに よる単一ホイン卜 根管充填法を行うこ とは,ファイルに よる機械的根管拡 大 が 難 し く , 加 圧 根 管 充 填 が 困 難 な 症 例 に お い て , 有 効 な 根 管 治 療 法 に な る と 考 え ら れ た ,

引き 続き 審査担当者と申請者 の間で,論文内容 および関連事項に ついて質疑応答がな された 主な 質問 事 項は ,

(1) 今回 の研 究 で2つ の酸 を使 っ た理 由に つ いて

(2) 象牙 質片 作 製の 方法 に つい て

(3) 披験 面処 理 後の 乾燥 方 法に つい て

(4) 象牙 質片 と 根管 を使 っ た色 素侵 入 試験 の違 い につ いて

(5) 細い 根管 , 側枝 など へ の応 用に っ いて

これらの質問に対 して,申請者は適切 な説明によって回 答し,本研究の内 容を中心とした専門 分野はもと より、関連分野に ついて十分な理解と 学識を有している ことが確認された .

本研究は化学的根 管拡大後にスーバー ボンド根充シーラ ーを用いた根管充 填が有効であること を示したこ とが高く評価され た,本研究の内容は 、歯科医学の発展 に十分に貢献するものであり,審査担当者全員は,

学位申請者が博士 (歯学)の学位を授 与するに値するも のと認めた.

456

参照

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