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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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     博士( 歯学)ハ ッサンヌ ル   モハマ ドモンス ル      学 位論文題 名

Aberrant Expression of HOX GeneslnoralDySDlaSia     andSqumouSCe11CarClnomaTiSSueS

(口腔異形性組織および扁平上皮癌におけるHOX遺伝子の発現異常)

学位論文内容の要旨

  【背景・目的】癌における組織構築の乱れや浸潤・転移を発生生物学的に考える と,細胞のもつ位置情報の異常に基づく現象と捉えることができる.発生過程に おいて細胞に位置情報を与える遺伝子にホメオボックス遺伝子群が知られている.

ホメオボックス遺伝子は転写因子をコードし,その下位にある標的遺伝子の発現 を制御しながら形態形成を進めていく.ホメオボックス遺伝子のひとつのファミ リー であ るHOX遺 伝子群 は4つの 異な った 染色 体上に9〜11個のHOX遺伝子から なる遺伝子集合体として存在し,合計39個の遺伝子が同定されている,近年,HOX 遺伝子は胎生期の形態形成過程だけでなく成体においても臓器・組織に特徴的な 発現を示すこと,また,乳癌,腎癌,肺癌,悪性黒色腫,膀胱癌,前立腺癌など のHOX遺伝子の発現パターンは,それらの発生した正常臓器の発現パターンとは 異なることが明らかとなってきた.このようにHOX遺伝子の発現異常と癌化ある いは浸潤・転移を関連づけて考えられるようになってきたが,口腔癌におけるそ の役割は未だに明らかではない.本研究の目的は,口腔癌の発生あるいは浸潤・

転移にHOX遺伝子の発現異常が関与しているか否かを明らかにすることである.

【材料・方法】北海道大学病院においてインフオームド.コンセントを得た患者 から生検あるいは外科切除した口腔扁平上皮癌組織31例,異形成組織11例およ び正常口腔粘膜組織10例を対象とした,各組織からRNAを抽出し,逆転写反応を 行いcDNAを得た.cDNAを鋳型にして各HOX遺伝子に特異的なプライマー・ペアを 用いてSYBR一greenの螢光強度を指標にしたりアルタイムPCRを行った.RNAのサ ンプル間における量的ばらっきを考慮して,内部標準としてローアクチンの発現量 を測定し,各HOX遺伝子の発現を,HOX遺伝子/内部標準遺伝子の発現量比で評価 した.各組織におけるHOX遺伝子の発現と臨床病理学的パラメーターとの関連を MannーWhitneyUtestおよびKruskal−Wallis rank testを用いて統計学的に検討し,

pくO.Olを統計学的に有意とした.統計解析はStatview (SAS,USA)にて算出した.

【結果】

1.正常口腔粘膜におけるHOX遺伝子の発現

  正常口腔粘膜において39個のHOX遺伝子のうちHOXA2,B2,D3,D4,D8およぴ D9の発現が他のHOX遺伝子に比ベ有意に高かった.なかでもHOXD8の発現が最も     ―673―

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高かった.

2. 正 常 口 腔 粘 膜 , 異 形 成 お よ ぴ扁 平 上 皮 癌 組織 にお けるHOX遺 伝子 発現 の違 い   39個のうち18個(HOXAI,A2,A3,A5,A9,B3,B6,B7,B9,C4,C6,C8,C9,Cll, C13,D9,Dl0お よ ぴDll)のHOX遺伝 子 の 発 現 が , 正 常 粘 膜 組 織 に 比 べ 扁 平上 皮 癌組織において有意に高かった(pく0.01,Mann‑WhitneyUtest).異形成組織において は ,HOXA2,A3,B3お よびDl0の 発現 が正 常粘 膜組 織よ り有 意に 高く (pく0.01, Mann―WhitneyUtest), 一方HOXA1,B7,B9およ ぴC8の発 現が 扁平上皮癌組織より 有 意 に 低 い こ と が 明 ら か と な っ た (pくO.Ol,Mann−WhitneyUtest).

3. リ ン パ 節 転 移 の 有 無 に よ る 扁 平 上 皮 癌 の HOX遺 伝 子 発 現 の 違 い   りン パ 節 転 移 を有 する扁 平上 皮癌 組織 のHOXC5,C6お よぴC8の 発現 は, リン パ 節 転移 の な い も のに 比ベ高 い傾 向を 示し た. なか でもHOXC6の発 現は りン パ節 転 移 陽 性 群 に お い て 有 意 に 高 か っ た くpく0.01,MannーWhitneyUtest).

【考察】

1.正常口腔粘膜におけるHOX遺伝子の発現について

  正常 口 腔 粘 膜 に お い てHOX遺 伝子 のDク ラ ス タ ー , と り わ けHOXD8お よ ぴD9の 発現 が他のHOX遺伝子に比べ高かった.HOXD8.およびD9は正常の唾液腺,甲状腺,

気管 ,肺お よぴ 胸腺 にお いて 高い 発現 を示 すこ とが 既に 知ら れており,発生学的 見地から考えても矛盾しない結果と考えられた.

2. 正 常 口 腔 粘 膜 , 異 形 成 お よ び扁 平 上 皮 癌 組織 にお けるHOX遺 伝子 発現 の違 い   正常 口 腔 粘 膜 ,異 形成お よび 扁平 上皮 癌組 織問 で発 現に 有意 差の あっ たHOX遺 伝 子 は18個 だ っ た . そ の う ち4個 のHOX遺 伝 子(HOXA2,A3,B3お よ びDl0)の 発現 が正常粘膜組織より異形成組織において有意に高く,4個のHOX遺伝子(HOXAI, B7,B9お よ ぴC8)の発 現が 異形 成組 織よ り扁 平上 皮癌組 織に おい て有 意に 高く , 18個す べ て のHOX遺伝 子の 発現 が正 常粘 膜組 織よ り扁平 上皮 癌組 織に おい て有 意 に高 かった .こ のこ とか ら, 正常 口腔 粘膜 から 異形 成や 扁平 上皮癌が発生する過 程においてHOX遺伝子の発現が変化することが示唆された.

3.口腔扁平上皮癌のりンパ節転移とHOX遺伝子発現の関連性

  HOXC5,C6およ びC8の発 現は りン パ節 転移 陽性 群にお いて 陰性 群よ りも 高か っ た. リンパ 節転 移性 の前 立腺 癌で はHOXC4,C5,C6,またりンパ節転移性の口腔扁 平上 皮癌で はHOXC8の高 発現 を認 めた報告があり,HOXC4ー8の高発現は前立腺癌の み な ら ず 口 腔 扁 平 上 皮 癌 の り ン パ 節 転 移 に 関 与 す る こ と が 示 唆 さ れ た ・   以 上 の 結 果 から ,特 定のHOX遺 伝子 の発 現異 常が 口腔粘 膜の 異形 成や 扁平 上皮 癌 の 発 生 な ら び に 転 移 能 の 獲 得 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ た ,

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学位論文審査の要旨

主査   教授   井上農夫男 副査   教授   戸塚靖則 副査   教授   進藤正信

副査   教授   守内哲也(医学研究科)

    学 位 論文 題 名

Aberrant Expression of HOX Genes in Oral Dysplasia     ´

    and Squmous Cell Carcinoma Tissues

  (口 腔 異 形性 組 織お よぴ 扁平上皮癌 におけるHOX遺伝子の 発現異常)

審査は、審査担当者全員の出席の下に行われた。最初に申請者より提出論文の概要が説 明され、その後、申請者に対し提出論文とそれに関連した学科目にっいて口頭試問が行わ れた。以下に、論文の要旨と審査の内容を述べる。

【背景と目的】

  癌における組織構築の乱れや浸潤・転移を発生生物学的に考えると,細胞のもつ位置情 報の異常に基づく現象と捉えることができる。発生過程において細胞に位置情報を与える 遺伝子にホメオボックス遺伝子群が知られている。ホメオボックス遺伝子は転写因子をコ ードし,その下位にある標的遺伝子の発現を制御しながら形態形成を進めていく。ホメオ ボックス 遺伝子のひ とっのファミリーであるHOX遺伝子群は4つの異なった染色体上に 9ー11個 のHOX遺伝 子からなる遺伝子集合体として存在し,合計39個の遺伝子が同定さ れている。近年,HOX遺伝子は胎生期の形態形成過程だけでなく成体においても臓器・組 織に特徴的な発現を示すこと,また,乳癌,腎癌,肺癌などのHOX遺伝子の発現パター ンは,それらが発生した正常臓器の発現パターンとは異なることが明らかとなってきた。

このようにHOX遺伝子の発現異常は癌化あるいは浸潤・転移と関連づけて考えられるよ うになってきたが,口腔癌に韜けるその役割は未だに明らかではない。本研究の目的は,

口腔癌の発生あるいは浸潤・転移にHOX遺伝子の発現異常が関与しているか否かを明ら かにすることである。

【材料と方法】

  北海道大学病院において生検あるいは外科切除した口腔扁平上皮癌組織31例,異形成組 織11例およ び正常口腔 粘膜組織10例を 対象とした 。各組織からRNAを抽出し,逆転写 反応 を 行いcDNAを 得た 。cDNAを鋳 型に して各HOX遺伝子に特 異的なプラ イマー.ペ アを用い てSYBR‑greenの螢光強度を指標にしたりアルタイムPCRを行った。RNAのサン プル問における量的ばらっきを考慮して,内部標準としてロ―アクチンの発現量を測定し,

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各HOX遺 伝 子 の 発 現 を , HOX遺 伝 子 / 内 部 標 準 遺 伝 子 の 発 現 量 比 で 評 価 し た 。

【結果ならびに考察】

1。正常口腔粘膜におけるHOX遺伝子の発現にっいて

  正 常 口 腔 粘 膜 に 韜 い て39個 のHOX遺 伝 子 の う ちHOXA2,B2,D3,D4,D8およ ぴD9の 発 現 が 他 のHOX遺 伝 子 に 比 ベ 有 意 に 高 か っ た 。 と り わ けHOXD8お よ ぴD9の 発 現が 他 の HOX遺 伝 子 に 比 べ 高 か っ た 。HOXD8お よ びD9は 正 常 の 唾 液 腺 , 甲 状 腺 , 気 管 ,肺 お よ び胸腺に おいて高 い発現を 示すこと が既に知 られてお り,発生学 的見地から考えても矛盾 しない結果と考えられた。

2。 正 常 口 腔 粘 膜 , 異 形 成 お よ び 扁 平 上 皮 癌 組 織 に お け るHOX遺 伝 子 発 現 の 違 い   正 常 口腔 粘 膜 ,異 形 成お よ ぴ 扁平 上 皮癌 組 織 間で 発 現 に有 意 差の あ ったHOX遺伝 子は 18個(HOXAI,A2,A3,A5,A9,B3,B6,B7,B9,04,C6,C8,C9,Cll,C13,D9,Dl0およびDll) だ っ た 。 そ の う ち4個 のHOX遺 伝 子(HOXA2,A3,B3お よ びDl0)の 発 現 が 正 常 粘 膜 組 織 よ り 異 形 成 組 織 に 船 い て 有 意 に 高 く ,4個 のHOX遺 伝 子(HOXAI,B7,B9お よ びC8) の発 現 が 異形 成 組 織よ り 扁平 上 皮 癌組 織 にお い て 有意 に 高く ,18個 す べてのHOX遺 伝子 の発現が 正常粘膜 組織より 扁平上皮 癌組織に おいて有 意に高かっ た。このことから,正常 口腔 粘 膜 から 異 形 成や 扁 平上 皮 癌 が発 生 する 過 程 に茄 い てHOX遺 伝 子の 発現が変 化する ことが示唆された。

3。口腔扁平上皮癌のりンパ節転移とHOX遺伝子発現の関連性

  HOXC5, C6お よ びC8の 発現 は り ンパ 節 転 移陽 性 群に お い て陰 性 群よ りも 高かった 。リ ンパ 節 転 移性 の前立腺 癌ではHOXC4,C5,C6,またり ンパ節転 移性の口 腔扁平上 皮癌では HOXC8の 高 発 現を 認 め た報 告 が あり ,HOXC4‑8の 高 発 現は 前 立腺 癌 の みな ら ず口 腔 扁 平 上皮癌のりンパ節転移に関与することが示唆された。

  以 上 の結 果 か ら, 特 定のHOX遺 伝子 の 発現 異 常 が口 腔 粘 膜の 異 形成 や扁 平上皮癌 の発 生過程ならびに転移能の獲得に関与していると推察した。

  論 文にっい て概要が 説明され た後、各審 査員より 、本研究 の背景、 方法、結 果、考察お よ ぴ 関 連の 研 究に っ い て質 問 がな さ れ た。 論 文 提出 者 は、 ◎ な ぜHOXD8は 正 常 口腔 粘 膜 に おいて高 く発現す るのか、 ◎癌は発生 母地と同 じHox geneの発現 を示すか 、◎転移 性癌 に お け るHox C6 geneの 機能 は、など いずれの 質問に対し ても明確 かつ的確 に回答し 、さ ら に今後の 研究につ いても発 展的な将来 展望を示 した。

  試 問の 結 果、 本 論 文は 特 定 のHOX遺 伝子 の 発 現異 常 が口 腔 粘 膜の 異 形成 や 扁 平上 皮 癌 の 発生過程 ならぴに 転移能の 獲得に関与していることを示唆した点において新規性が高く、

今 後の歯科 医学の発 展にも大 きく貢献す るものと 評価した 。さらに 、学位申 請者は、 本研 究 を中心と した専門 分野はも とより、関 連分野に っいても 十分な学 識を有し ているこ とを 審 査員一同 が認めた 。

  よ って 、 学位 申 請 者は 博 士 (歯 学 )の 学 位 を授 与 され る資格を 有するも のと認め た。

参照

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