• 検索結果がありません。

博士(工学)村尾篤彦 学′位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(工学)村尾篤彦 学′位論文題名"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(工学)村尾篤彦 学′位論文題名

塗装 鋼材の 塗膜下腐食とその制御に関する研究 学位論文内容の要旨

  有機高分子材料を使った塗料やライニング材料による鋼材の防食技術は、我が国の防食 対策費の60数%を占め、種々の防食技術の中で圧倒的に広い適用分野を持っている。塗 覆装による防食技術は、塗膜によって腐食反応に関与する物質、例えば、酸素や水分を鋼 材表面から遠ざける(環境遮断)とともに、電気化学的に腐食反応が起こるアノードとカ ソードの間に電気抵抗の高い塗膜を挿入することによって塗膜下で起こる腐食反応をでき るだけ小さくすること(抵抗支配)を原理としている。しかし、現実の鋼材の防食技術に おいては、腐食に関与する物質やイオンを塗膜で完全に遮断することは不可能である。状 況によってはこれら塗膜を透過する物質やイオンの種類、量を積極的に評価し、また下地 金属の腐食特性を考慮し、これらをもとに塗膜による防食設計を行った方が好ましい結果 が得られることが多い。

  本論文は、塗膜がある程度、物質を透過することを前提として塗料設計を行うべきであ ることを例示し、これらに共通する塗膜の設計思想を提案し、さらには腐食物質の透過を 積極的に利用し生成する錆と共存しながら全体としては防食寿命を延長できるような、い わば環境調和型の塗膜防食技術の開発に挑戦して得た成果について述べたものである。

  本 論 文 は 、8章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。   第1章では、塗膜設計上重要な諸因子と塗膜の構成要素にっいて概説し、その諸特性、

特に酸素や水分などの物質の透過量が塗膜の主構成要素である顔料の含有量によって変化 すること、特に、限界顔料容積濃度(CPVC)以上に顔料を配合した塗膜は多孔質にな り物質の透過量が飛躍的に増大するにもかかわらず用途によっては耐食性向上に著しく寄 与し、新しい用途が開ける可能性のあることを指摘した。また、本研究の目的と範囲につ いて述べた。

  第2章では、塗膜の防食作用に最も基本的な役割を持つ塗膜の伝導機構に対する水分の 役割にっいて検討した。塗膜の水分含有量と電気伝導度の間に指数関数的な直線関係を見 出し、塗膜中の水分の解離生成物のH゛と〇H‑によって塗膜内のイオン伝導が起こりうる という新しい塗膜伝導機構を提案した。この結果は、塗膜内の水分が解離したイオンのみ で塗膜下腐食が進行する可能性を示唆している。

  第3章では、塗装した高張力鋼材がCO―C02―H20系の腐食環境で使用される場合、

塗膜を透過したCOが塗膜下で優先的に吸着し塗膜の接着性を低下させ、塗膜下でミク口 な腐食セルを形成して鋼材に割れを生じさせることを見出し、その対策を検討した。その 結果、COの吸着を阻害するような下塗の開発を行い、2コート系からなる高張力鋼材の

(2)

割れ防止システムを完成させた。

  第4章 で は 、C○2―H2S―H20系 に お け る 塗 装 鋼 材 の 塗 膜 下 腐 食 を 検 討 し た 結 果 を 述 べ た 。 こ の 系 に お い て は塗 膜 を 透 過 す るH2Sに よ っ て塗 膜 下 にFeSが 生 成 し 、 そ の 生 成 速 度 は 塗 膜 厚 と 密 接 な関 係 が あ る 。 塗 膜 が50彫m程度 の 薄 膜 で はFeSは 急 速 に 成 長 し 塗 膜 を 持 ち 上 げ 最 終 的 には 塗膜 の膨 れ、 剥離 をも たらす 。し かし 、200ロm程度 の 厚 膜 の 場 合 に はFeSは 緻 密 で あ り 、 そ の 生 成 速 度 は 極 めて 緩 慢 で あ る た め 、FeSが 塗 膜と共存してその防食効果を増加させるように作用することが判明した。このように、塗 膜を透過する物質とその生成物の性質によっては塗膜下腐食をむしろ利用する、いわば、

腐食生成物と塗膜の共存型の防食技術を確立することができた。

  第5章 で は 、C02−H2S−H20系 に お い て 使 用 さ れ る 塗 装 鋼 材 と し て 原 油 や 天 然 ガ スの採掘に使用される油井管の内面塗装膜の開発に必要な極厚膜の焼き付け塗料の開発と その評価にっいて述べた。原油の油井管では、管内外に温度差が存在するので、塗膜内に 化学ポテンシャル差が生じ、これを打ち消すように水などの物質移動が生じる。この移動 は高温側から低温側に起こり、短期間に塗膜下に過剰の水が移動・蓄積してブリスターが 発生するおそれがある。また、天然ガスの油井管の場合には、天然ガス成分のプロパン、

ブタン、ヘプタンが圧力低下により気化し、塗膜中で急速に膨張して塗膜を持ち上げる。

さ らに 、1回当 たり 数百um塗装 し焼 き付 ける 場合 、焼 き付 け硬 化過 程の 塗膜 中を 溶剤が 急速に蒸発して塗装面に焼き膨れを発生させる。このような用途と塗膜形成時の膨れ発生 に は 、 従 来 の 防 食 塗 料 の よ うにCPVC以内 の顔 料し か配 合され てい ない 緻密 な塗 膜で は 対 応 で き な い 。 そ こ で 、CPVC以 上 の 顔 料 を 含 む 多 孔 質 塗 膜 の 概 念 を 提 案 し 、CPVC を 超 え る60% の 顔 料 を 含 む 塗 料 を 開 発 し た 。 こ の 塗 料は1コ ー ト 当 た り200ロm以 上 の塗装が可能であり、温度差:塗膜形成時の膨れに対応できる耐食性に優れた内面塗装系 であることが明らかになった。この塗装系の実用性を実際のフィールドで試験するため、

石 油開 発資 源公 団の 新潟 県片員鉱場において2年間の実管試験を行い、その有効性を確認 した。さらに、用途に適した試験法としてガス/油/水の3相のオートクレーブ浸漬試験、

温度差浸漬試験等の開発、厚塗りしても硬化応カの少ない樹脂の開発、極厚膜塗装を行っ ても塗膜にタレやランといった塗膜欠陥を発生しないチキソ卜ロピー性付与剤の検討も行っ た。

  第6章お よび 第7章 では 、耐 候性 鋼材 の安 定錆 形成 能力評価の促進試験法と錆安定化処 理方法の開発にっいて述べている。耐候性鋼材の塗装処理に必要な特性はブリスターを発 生せず、腐食速度をコン卜ロールしながら処理面を均一に腐食させることである。この場 合 も 塗 膜 の 顔 料 をCPVC以 上 に配 合し て、 塗膜 の透 過性 を増加 させ 、ブ リス ター の発 生 を抑え、直接発錆させながら腐食速度をコン卜ロールすることが有効であった。さらに、

下 塗り をア ニオ ン交 換膜 、上塗りをカチオン交換膜といったバイポーラ2層構造にするこ とによって、多孔質塗膜であるにもかかわらず、錆汁の防止効果を向上させることに成功 した。このようなコンセプトで塗膜下腐食を積極的にコントロールした例は著者が初めて で あ る 。 す な わ ち 、 著 者 の 研究 は、 従来 の塗 料設 計概 念では 禁止 ゾー ンで あっ たCPVC 以 上 の 顔 料 組 成 を 持 っ 塗 料 の 応 用 研 究 領 域 に 新 境 地 を 開 い た も の と 言 え る 。   第8章は 総括 であ り、 本論文 の各 章に おい て得 ら′ れた 結果 を総 括し て述 べて いる。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

塗装鋼材の塗膜下腐食とその制御に 関する研究

  塗装によ る防食技 術は、塗膜によって腐食反応に関与する物質、例えば、酸素や水分を 鋼材表面 から遠ざ けるとともに、電気化学的に腐食反応が起こるアノードとカソードの間 に電気抵 抗の高い 塗膜を挿入することによって塗膜下で起こる腐食反応をできるだけ小さ くするこ とを原理 としている。しかし、現実の鋼材の防食技術においては、腐食に関与す る物質や イオンを 塗膜で完全に遮断することは不可能である。状況によってはこれら塗膜 を透過する物質やイオンの種類と量を積極的に評価し、また下地金属の腐食特性を考慮し、

これらを もとに塗 膜による 防食設計 を行った 方が好まし い結果が 得られる ことが多い。

  本論文は 、塗膜が ある程度、物質を透過することを前提として塗料設計を行うべきであ ることを 例示し、 これらに共通する塗膜の設計思想を提案し、さらには腐食物質の透過を 積極的に 利用し、 生成する錆と共存しながら全体としては防食寿命を延長できるような、

いわば環 境調和型 の塗膜による防食技術の開発に挑戦して得た成果にっいて述べたもので ある。その主要な成果は次の点に要約される。

  1)塗膜の 防食作用 に最も基 本的な役 割を持つ 塗膜の伝導機構に対する水分の役割につ いて検討 した。塗 膜の水分含有量と電気伝導度の間に指数関数的な直線関係を見出し、塗 膜中の水 分の解離 生成物のH゛とOHーに よって塗 膜内のイオン伝導が起こりうるという新 しい塗膜 伝導機構 を提案し、塗膜内の水分が解離して生成するイオンのみで塗膜下腐食が 進行する可能性を示唆した。

  2) 塗 装 し た 高 張 力 鋼 材 がCO−C02―H20系 の 腐 食 環 境 で 使 用さ れ る場 合 、 塗膜 を 透過したCOが塗膜下 で優先的 に吸着し 塗膜の接 着性を低下 させ、塗 膜下でミクロな腐食 セルを形 成して鋼 材に割れを生じさせることを見出し、その対策を明らかにした。また、

COの 吸 着を 阻 害 するよ うな下塗 り塗料の 開発を行 い、2コー ト系から なる高張力 鋼材の 割れ防止システムを完成させた。

  3)H2SーC02―H20系 に お け る 塗 装 鋼 材 の 塗 膜 下 腐 食 を 検 討 し 、 こ の 系 に お い て は 塗 膜 を 透 過 す るH2Sによ っ て 塗膜 下 にFeSが 生 成し 、 そ の生 成 速度 は 塗 膜厚 と 密接 な 関 係 が あ る こ と を 見出 し た 。塗 膜 が50ルm程 度の 薄 膜 ではFeSは急 速 に 成長 し 、塗

士 雄 明 浩 弘達 和真 橋川 田尾 大石 横瀬 授授 授授 教教 教教 査査 査査 主副 副副

(4)

膜 の 膨 れ 、 剥 離 を も た ら す 。 し か し 、200um程 度 の 厚 膜 の 場 合に はFeSは 緻 密 で あ り、 その 生成 速度 は極 めて 緩慢 であ るた め、FeSが 塗膜 と共 存し てその防食効果を増加 させるように作用することが判明した。このように、塗膜を透過する物質とその生成物の 性質によっては塗膜下腐食をむしろ積極的に利用する、いわば、腐食生成物と塗膜の共存 型の防食技術を確立することができた。

  4)原 油や天然ガスの採掘に使用される油井管の内面塗装膜の使用中または焼き付け硬 化 過 程 の 膨 れ発 生を防 止す るた めに 、限 界顔 料容 積濃 度(CPVC)以 上の 顔料を 含む 多 孔 質 塗 膜 の 概 念 を 提 案 し 、CPVCを 超 え る60% の 顔 料 を 配 合 し た 塗 料 を 開発し た。 こ の 塗 料 は1コ ー ト 当 た り200彫m以 上 の 塗 装が 可能 であ り、 温度 差、 塗膜 形成時 の膨 れ に対応できる耐食性に優れた内面塗装系であることを明らかにした。この塗装系を実際の フィ ール ドで試験し、その有効性を確認した。さらに、ガス/油/水の3相のオートクレ ーブ浸涜試験、温度差浸漬試験等の開発、厚塗りしても硬化応カの少なぃ樹脂の開発、極 厚膜塗装を行っても塗膜にタレやラン等の塗膜欠陥を発生しないチキソトロピー性付与剤 の検討を行い、それらの有効性を明らかにした。

  5)耐 候性鋼材の塗装にブリスターを発生せず、腐食速度をコント口ールしながら処理 面 を 均 一 に 腐食 させる ため に、CPVC以上 の顔 料を 配合 して 、塗 膜の 透過 性を増 加さ せ た塗装方法を開発した。また、下塗りをアニオン交換膜、上塗りをカチオン交換膜といっ たバ イポ ーラ2層構造にすることによって、多孔質塗膜であるにもかかわらず、錆汁の防 止効果を向上させることに成功した。

  これを要するに、著者は、鋼材の塗膜下腐食を積極的に利用する塗料設計概念を提案し、

錆と共存しながら全体としては防食寿命を延長できるような、環境調和型の塗膜による防 食技術の確立に成功しており、鉄鋼材料の防食技術の進歩に貢献するところ大なるものが ある。

  よ って 著者 は、 北海 道大 学博 士( 工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

関連したドキュメント

  

    

[r]

。 そして 本論 文で 与え た述 語の a ―決 定性 とr 一決

  

[r]

   第4 章 では,ガ スフッ 化処理を 施した PEEK 膜材につ いて, 処理条件 による材料特性の 違い を 検 討し た .また, 処理後 の試料に 対しAO お よぴUV を照 射し,

[r]