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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 細 野 達 夫

学 位 論 文 題 名

水田におけるメタンフラックスとと水稲体を通した メタン放出機構に関する研究

学位論文内容の要旨

  本 論 文 は , 図39, 表7,118ぺ ← ジ か ら な る 和 文 で , 別 に10編 の 参 考 論 文が添えられている。

  大 気中 の メ タ ン 濃 度 は 産 業 革 命以 降 徐 々 に 増 加 し て お り ,特に1950年以 降 は急 激に増 加してきた。大気中のメタン濃度の増加は地球温暖化を引き起こし,

地球 環境の 悪化 に結 びっ く。メ タン は種 々の自 然お よび 人為 的放出 源か ら発生 して おり, メタ ンの 発生 の機構 を解 明し ,炭酸 ガス と同 様に 発生量 を削 減する ことが地球環境保全上,大きな課題となっている。

  こ の研究 はメ タン の主 要な人 為的 発生 源であ る水 田に つい て,メ タン フラッ クス の季節 変化 や日 変化 と気象 要素 の関 係を解 析す ると 共に ,水稲 体を 通した メタン輸送機構を解明したものである。

  第1章 は 「 序 論 」 で あ り ,大 気中 のメ タン 濃度の 増加 と水 田のか かわ り, 既 往の研究,研究目的などである。

  第2章 は「 水田の メタ ンフ ラッ クスお よび 土壌水中メ.タン濃度の季節変化」

で あ る。4年 間 の 水 稲 生 育 期間 につ いて ,稲 ワラ区 ,化 成肥 料区に 分け て, メ タン フラッ クス およ び土 壌水中 メタ ン濃 度の季 節変 化・ 年変 動を調 べた 。その 結果 ,水稲 生育 後半 (出 穂期以 降) には ,メタ ンフ ラッ クス および 土壌 水中メ タン 濃度と も両 区の 差は 小さく なっ た。 また, 水稲 生育 末期 には, 両区 とも土 壌水 中メタ ン濃度は高濃度であったが,メタンフラックスは減少傾向にあった。

これ は水稲 体を 通し たメ タン輸 送コ ンダ クタン ス( 以下 ,コ ンダク タン ス)の 低下 が原因 と推 察さ れた 。また ,水 稲生 育期間 中の 水田 から の総メ タン 放出量 は,稲ワラ区で31. 8‑‑ 74. 9gm‥,化成肥料区で4.4〜8.5gm―2であり,年によ る変 動が大 きか った 。さ らに, 水稲 体の コンダ クタ ンス は温 度と密 接な 関係が あることが判明した。

  第3章 は 「 水 田 の メ タ ン フラ ック スの 日変 化とそ の要 因」 である 。メ タン フ

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ラック スは15時頃 極大 ,7〜8時頃 極小を 示す日変化をし,これは地温(深 さ1 cm)の日変化の位相と一致する傾向が見られた。また,土壌水中のメタン 濃度,水稲体のコンダクタンス,ネットメタン生成速度などの日変化と気象要 素の関係を調べた。その結果,土壌水中のメタン濃度は地温の日変化の位相と 逆の傾向が見られた。水稲体のコンダクタンスは地温の日変化と位相が一致し 高い相関が見られたが,気温とは位相がずれており相関も低かった。ネットメ タン生成速度は,地温(深さ5cm)と高い相関がみられ,さらに日射量の影響 も示唆された。これらのことから地温が水稲体のコンダクタンスやネットメタ ン生成速度に影響を及ぼし,メタンフラックスの日変化に関与していることが 判明した。

  第4章は「水稲体を通したメタン輸送に及ばす温度の影響」である。水田の メタンフラックスの季節変化や日変化の測定結果から,温度が水稲体を通した メタン輸送過程に影響を及ぼすと考えられた。そこで水稲の根圏から大気ーの メタン輸送速度に及ぼす温度の影響を調べるため,水耕栽培の水稲を用いた実 験を行った。その結果,水耕液温度の変化とコンダクタンスの変化は一致した。

しかし,地上部の稲体周囲の気温を変化させる実験では,コンダクタンスの変 化は比較的小さかった。また,水耕液温度を変化させてコンダクタンスと溶液 中のメタン拡散係数を調べた結果,コンダクタンスの温度依存性には拡散の温 度依存性以外の要素が関係していることが判明した。水耕液に浸潤した水稲根 の量を変化させた実験から,水稲体を通したメタン輸送過程には水稲根の水耕 液に接する面積が関係することが判明した。また,明条件と暗条件でコンダク タンスを調べた結果,コンダクタンスに変化がないことからメタン輸送過程は 蒸散流とは関係がないことが判明した。さらに,水稲の生育段階によってもコ ンダクタンスは変化したが,温度との関係は生育段階によらずほば一定であっ た。これらの結果から,水稲地下部の温度が水稲体を通したメタン輸送過程に 大きく影響することが示された。

  第5章は「水田土壌中の気相が水稲体を通したメタン輸送に及ばす影響」で ある。水稲の地下部(根および茎の一部)をメタンガスにさらし,そのガスの 圧カを変化させ,水稲地上部からのメタン放出速度を通気式チャンバー法によ り測定した。その結果,水稲地下部を暴露したメタンガスの圧カの増加により,

水稲地上部からのメタン放出速度は著しく増大した。しかし,茎の基部付近を アルギン酸塩で被覆し,茎が直接メタンガスに接触しないようにすると,メタ ンガスの圧カを増大させてもメタン放出速度は増加しなかった。また,水田に おける観測から,気相が土壌の表層付近(例えぱ,深さlcm)に存在している

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ことが推察され,水田において水稲茎の基部付近の一部は気相に接していると 考えられた。一方,従来提唱された稲茎表面の薄い空気層を通したマスフロー によるメタン輸送を確かめる実験を行った。稲茎表面の薄い空気層を遮断して も,メタン放出速度に変化はなかったことから,茎表面のマスフローによるメ タン輸送は確認されなかった。これらの結果から,土壌中の気相が水稲の茎の 基部付近から,田面水の圧カによって水稲の通気組織に侵入し,大気中へ放出 される機構が判明した。

  第6章は 「水田のメタンフラックスのモデル化」である。1993年〜 1996年 の水稲生育期間における試験水田のメタンフラックス,および土壌水中メタン 濃度の季節変化データから,コンダクタンスの推定式を回帰分析により作成し た。その結果,稲ワラ区,化成肥料区とも,地温と移植後日数をパラメータと して用いた重回帰式によルコンダクタンスを精度よく推定できた。この推定さ れたコンダクタンスと実測土壌水中メタン濃度とからメタンフラックスの季節 変化をよく再現できた。このことから,拡散モデルはメタンフラックスの季節 変 化 の モ デ ル 化 の 基 本 モ デ ル と し て , 有 効 な も の と 考 え ら れ た 。   以上のように,本論文は水田におけるメタンフラックスの日変化,季節変化 を測定し,これらの変化と気象要素の関係を明らかにした。また,水稲体を通 したメタン輸送のメカニズムを研究し,解明した。さらに,これらの研究に基 づいて.水田のメタンフラックスのモデルを作成し,実測値と良く再現するこ とを見いだした研究である。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    堀口 郁夫 副査   教授   波多野隆介 副 査    教授    松田    豊

学 位 論 文 題 名

水田におけるメタンフラックスととカ師沼体を通した      メタン放出機構に関する研究

  本 論 文 は , 図 39, 表7118べ ー ジ か ら な る 和 文 で , 別 に10編 の 参 考 論 文 が 添 え ら れ て い る 。

  大 気 中 の メ タ ン 濃 度 は 産 業 革 命 以 降 徐 々 に 増 加 し て お り , 特 に1950年 以 降 は 急 激 に 増 加 し て き た 。 大 気 中 の メ タ ン 濃 度 の 増 加 は 地 球 温 暖 化 を 引 き 起 こ し , 地 球 環 境 の 悪 化 に 結 び っ く 。 メ タ ン は 種 々 の 自 然 お よ び 人 為 的 放 出 源 か ら 発 生 し て お り , こ の メ タ ン の 発 生 の 機 構 を 解 明 し , 炭 酸 ガ ス と 同 様 に 発 生 量 を 削 減 す る こ と が 地 球 環 境 保 全 上 , 大 き な 課 題 と な っ て い る 。

  こ の 研 究 は メ タ ン の 主 要 な 人 為 的 発 生 源 で あ る 水 田 に っ い て , メ タ ン フ ラ ッ ク ス の 季 節 変 化 ・ 日 変 化 と 気 象 要 素 の 関 係 を 解 析 す る と 共 に , 水 稲 体 を 通 し た メ タ ン 輸 送 機 構 を 解 明 し た も の で あ る 。

   1章 は 「 序 論 」 で あ り , 既 往 の 研 究 , 研 究 目 的 な ど で あ る 。   2章 は 「 水 田 の メ タ ン フ ラ ッ ク ス お よ び 土 壌 水 中 メ タ ン 濃 度 の 季 節 変 化 」 であ る 。 4年 間 の 水 稲 生 育 期 間 に つ い て , 稲 ワ ラ 区 , 化 成 肥 料 区 に 分 け て , メ タ ン フ ラ ッ ク ス お よ び 土 壌 水 中 メ タ ン 濃 度 の 季 節 変 化 ・ 年 変動 を 調 べ た。 そ の 結果 , 水 稲生 育 後 半( 出 穂 期 以 降 ) に は , メ タ ン フ ラ ッ ク ス お よ び 土 壌 水 中 メ タ ン 濃 度 と も 両 区 の 差 は 小 さ く な っ た 。 ま た , 水 稲 生 育 末 期 に は , 両 区 と も土 壌 水 中 メタ ン 濃 度は 高 濃 度で あ っ たが , メ タ ン フ ラ ッ ク ス は 減 少 傾 向 に あ っ た 。 さ ら に , 水 稲 生 育 期 間 中 の 水 田 か ら の 総 メ タ ン 放 出 量 は , 稲 ワ ラ 区 で31. 874. 9gm‥ , 化 成 肥 料 区 で4485gm2で あっ た 。   3章 は 「 水 田 の メ タ ン フ ラ ッ ク ス の 日 変 化 と そ の 要 因 」 で あ る 。 メ タ ン フ ラ ッ ク ス の 日 変 化 は ,15時 頃 極 大 ,78時 頃 極 小 を 示 し た 。 こ れ は 地 温 の 日 変 化 の 位 相 と 一 致 す る 傾 向 が 見 ら れ た 。 ま た , 土 壌 水 中の メ タ ン 濃度 , 水 稲体 の コ ンダ ク タ ンス ,

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ネットメタン生成速度などの日変化と気象要素の関係を調べた。その結果,土壌水中 のメタン濃度は地温の日変化の位相と逆の傾向が見られた。水稲体のコンダクタンス は地温の日変化と位相が一致し高い相関が見られたが,気温とは位相がずれており相 関も低かった。ネットメタン生成速度は,地温(深さ5cm)と高い相関がみられた。

これらのことから地温が水稲体のコンダクタンスやネットメタン生成速度に影響を及 ぼ し , メ タ ン フ ラ ッ ク ス の 日 変 化 に 関 与 し て い る こ と が 判 明 し た 。   第4章は「水稲体を通したメタン輸送に及ぼす温度の影響」である。水耕栽培の水 稲を用いて,メタン輸送速度に及ぼす温度の影響を調べる実験を行った。その結果,

水耕液温度の変化とコンダクタンスの変化は一致した。しかし,地上部の稲体周囲の 気温を変化させる実験では,コンダクタンスの変化は比較的小さかった。また,水耕 液に浸潤した水稲根の量を変化させた実験から,水稲体を通したメタン輸送過程には 水稲根の水耕液に接する面積が関係することが判明した。さらに,明条件と暗条件で コンダクタンスを調べた結果,コンダクタンスに変化がないことからメタン輸送過程 は蒸散流とは関係がないことが判明した。これらの結果から,水稲地下部の温度が水 稲 体 を 通 し た メ タ ン 輸 送 過 程 に 大 き く 影 響 す る こ と が 判 明 し た 。   第5章は「水田土壌中の気相が水稲体を通したメタン輸送に及ぼす影響」である。

水稲の地下部(根と茎の一部)をメタンガスにさらしI圧カを変化させ水稲地上部か らのメタン放出速度を測定した。その結果,水稲地下部のメタンガスの圧カが増加す ると,水稲地上部からのメタン放出速度は著しく増大した。しかし,茎の基部付近を アルギン酸塩で被覆し,茎が直接メタンガスに接触しないようにすると,圧カを増大 させてもメタン放出速度は増加しなかった。また,水田における観測から,水稲茎の 基部付近の一部は水田のメタン気相に接していると考えられた。これらの結果から,

土壌中の気相が水稲の茎の基部付近から,田面水の圧カによって水稲の通気組織に侵 入し,大気中ヘ放出される機構が判明した。

  第6章は「水田のメタンフラックスのモデル化」である。試験水田のメタンフラッ クス,および土壌水中メタン濃度の季節変化データから,コンダクタンスの推定式を 作成した。その結果,稲ワラ区,化成肥料区とも,地温と移植後日数をパラメータと して用いた重回帰式によルコンダクタンスを精度よく推定できた。この推定されたコ ンダクタンスと実測土壌水中メタン濃度から,メタンフラックスの季節変化をよく再 現できた。

  以上のように,本論文は水田におけるメタンフラックスと気象要素の関係および水 稲体を通したメタン輸送のメカニズムを明かにし,水田のメタンフラックスのモデル を作成した研究である。この成果は学術的に高く評価される。よって審査員一同は,

細 野 達夫 が 博士 ( 農学 ) の学 位 をう け るに 十分な資 格を有する ものと認め た。

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