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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 学 ) 深 田 陽 久

    学位 論文題 名

Immunochemical and Biochemical Studies     on Growth Hormone in Salmonids

(サ ケ科 魚類の 成長 ホル モン に関 する 免疫 生化 学的 研究)

学位論文内容の要旨

  魚 類の 増養 殖に おい て効 率的な成長と健全な卵を得ることは最優先課題である。

― 般 に 成長 には 脳下 垂体 より 分泌 され る成長 ホル モン(GH)が重 要な 役割 を果 たし て い る こと が広 く知 られ てい る。 近年 、このGHが 魚類 にお いて 生殖 腺刺 激ホ ルモ ン存 在下 で卵 巣に おい てエ スト ラジ オ― ル‐17pの 合成 量を増加させること、さら にエ ス卜 ラジ オ― ル.17p存 在下 で肝 臓に おけ るビ テ口 ジェニン(卵黄蛋白前駆物 質) の合 成を 促進 する など 、成長だけでなく成熟にも関与していることが生体外培 養実 験で 示さ れて きて いる 。これらのことから、魚類の成長と成熟を解析する上で GHの 動 態 を 観 察 す る こ とは 重 要 で あ る が 、 魚 類 に お い て 生 体 内 で の血 中GH量の 変 動 を 観察 した 例は 少な い。 また 、GHはほ乳 類と 同様 に魚 類に おい ても その 受容 体 で あ るGHレ セ プ タ ー を介 し て 作 用 す る と 考 え ら れ て い る が 、GHレセ プタ ーの 最 大 結 合容 量と 血中GH量 をと もに 観察 した研 究は ほと んど ない 。こ れま で数 種の 魚 種 に おい てGH測定 系が 確立 され てき たが、GHの 血中 量は 非常 に微 量で ある ため 高感度なラジオイムノアッセイ法が用いられてきた。しかしながら放射性物質には、

安全 性お よび 半減 期な どの 問題点があげられる。近年、放射性物質に代わり同等も しくはより高感度な検出を可能とする標識物質が開発されてきている。本研究では、

サ ケ 科 魚類GHの 成熟 への 作用 を解 析す ること を目 的に 、化 学発 光物 質の アク リジ ニウ ムを 標識 とし て用 いた 高感度な測定系と化学発光レセプタ―バインディングア ッ セ イ の確 立を 行っ た。 さら に様 々な ステ― ジに おけ るサ ケ科 魚類 の血 中GH量の 動態 およ び成 熟時 期の 肝臓 におけるGHレセプターの最大結合容量の変化を調べた。

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  供試魚には北海道大学水産学部附属七飯養魚実習施設で飼育中のサクラマスとカ ツ卜ス口―卜トラウト、および、さけ・ます資源管理センターで飼育中のシロサケ 稚 仔魚 と用い た。 抗シ ロサケGH血清(anti‑GH)はりコンビナントシロサケGH を 家兎 に免疫 し作 製し た。作 製し たanti‑GHを 用い サケGH化学発光イムノア ッ セイ の確立 をtwo‑site法に より 行っ た。 はじめ に、anti‑GH IgGをボリス チレンボールに固相化し、次に非特異的反応を減少させるために0.1%ウシ血清 アルブミンによりブロッキングを行った。ガラス試験管内に既知の濃度のGHま たは希釈した血清を添加し、anti‑GH IgG固相化ポリスチレンボールとともに 室 温 で6時 間 反 応 さ せた 。 洗 浄 後 、 ア ク リ ジ ニウ ム標識specific anti‑GH F(ab|)2を添加し、室温で6時間反応させ、再び洗浄後、自動化学発光測定装 置 によ り測定 を行 った 。その結果、(荊濃度39‑1250 pg/ml間で良好なスタ ンダ―ドカーブが得られ、サクラマス血清希釈系列と平行性を示した。さらに固 相 化 さ れ た 抗 体 と 抗原 の 反 応 を4℃ で12時 間 、 次い で 標 識 抗 体 を4℃ で20 時間反応させることにより3.9‑125 ng/mlの範囲で高感度なスタンダ―ドカー ブが得られた。  この測定系を用いることにより、通常の測定は十分であると考 えられたカi、孵化直後における仔魚の血中GH量を測定するためには、より高感 度化する必要性があった。そこで、近年開発された特異的反応を滅少させずに、

非 特 異 的 反 応 を 除 去 す る こ と に よ り 高 感 度 化 が可 能 なImmune  complex transfer immunoassay( 免疫 複合体 転移 法) を用 いて、 超高 感度 サケGH測 定 系の 確立を 試み た。 その結果、測定範囲は7.8‑250 fg/mrであり、シロサ ケ血清希釈系列もこれと良く一致した。この測定系を用いることにより、血清1 いIから血中GH量が測定可能となった。

  次に 、化学 発光 物質 を用いたGHレセプ夕一の検出およびGHレセプ夕―バイ ンディングアッセイの確立を試みた。カットス口ートトラウトの肝臓から常法に よ ル サ イ 卜 ゾ― ル分 画を 得た 。この 分画 をジ ゴキ シゲニ ン標 識GHと15℃ で 20時間反応させた後、洗浄、遠心を行い、得られた沈殿分画を電気泳動および ウエスタンブロッティングに供した。ブロッキング後、ペルオキシダーゼ標識抗

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ジゴキシゲニン血清と反応を行い、化学発光法によルバンドを可視化した。その 結果 、分 子量112 kDaお よび83 kDaの ニつの バン ドが 観察 され、先に報告さ れた ギン ザケの 結果 と良 くー 致して いた 。さ らに、 未標 識のGHを100倍量添 加することによりこれらのバンドは消失したためGHレセプタ―と同定した。ま たア クリ ジニウ ム標 識GHを用 いて、GHレセプタ―バインディングアッセイの 確立を試みた。特異的結合はサイトゾ―ル分画の蛋白量に依存して増加し、一方、

未標識GHの添加量に依存して滅少した。スキャッチャード解析により得られた 親和 係数 は0.69x109 M‑1、最 大結合容量は105 fmol/mg proteinでありこれ までの報告とほぼ一致していた。

  こ れら の確立 した 化学 発光 サケGH測定系を用いてサケ科魚類の血中GH量の 測定および解析を行った。サクラマス1年魚では血中C+I量は銀毛時の4月に上昇 した後、8月に最大値を示し以後、滅少した。GHの動態は先に報告されたギン ザケと良く似ていたことから、この測定系の有効性が確認された。  次に、シロ サケ 仔魚 の血中GH量 を孵 化2週目 から 測定し た。 孵化2週 目か ら孵化7週日ま で、成熟魚の約10倍量である100 ng/m|という高値を示した。浮上後、血中 GH量 は滅 少し、 放流 時に は成 熟魚の血中GH量とほぼ一致した。シ口サケは孵 化7週目より、充分な塩分耐性を有することから、この高値のGHは海水適応能 の獲得に関与していることが示唆された。

  最 後に 、カッ 卜ス 口一 卜ト ラウト1年魚群および2年魚群の血中GH量の測定 を行った。2年魚群の雌においてはGHレセプ夕一バインディングアッセイで肝 臓におけるGHレセプターの最大結合容量も併せて解析した。1年魚群において   血中GH量は11月にピークを示したのに続き、エストラジオール―17pは12月に   最大値を示した。2年魚群の血中GH量は雌雄ともに11月と12月に高値を示し、

  雌魚において血中エストラジオールー170量の動態は血中GH量の動態と良く一   致していた。また、血中ビテロジェニン量は、排卵4ケ月前の11月から1月まで   高値を維持していた。これらのことから、カットスロート卜ラウトにおいてGH     丶丶

  は生体内においても卵巣でのエストラジオール‑17p合成を促進させ、さらにェ

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ストラジオール‑17Bとともに存在することにより肝臓におけるビテロゲニン合 成の効率化に貢献していることが示唆された。一方、肝臓のGHレセプタ―6/最 大結合容量は、GHが高値を示した冬期に低値を示した。このことは、成熟期の 体成長の停滞と関連していると考えられた。

  以上、本研究は高感度なサケGH化学発光イムノアッセイを初めて確立し、極 微量なGHを測定することを可能にした。さらに成熟期のカットス口―トトラウ トの血中GH量の動態を解析し、ビテロジェニン合成への関与を示唆した。しか しながら、 卵巣等の生殖器官におけるGHレセプ夕―の最大結合容量と血中GH 量の関連は今後の課題とされた。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授   島 教 授   原 教 授   小 助教授  桜

崎 健 二     彰彦 城 春 雄 井 泰 憲

     学位論文題 名

Immunochemical and Biochemical Studies     on Growth Hormone in Salmonids

(サケ科魚類の成長ホルモンに関する免疫生化学的研究)

  魚類の増養殖において効率的な成長と健全な卵を得ることは最優先課題である。

一般に成長には脳下垂体より分泌される成長ホルモン(GH)が重要な役割を果たし ていることが知られている。近年、GHが成長だけでなく成熟にも関与していること が生体外培養実験で示されてきている。これらのことから、魚類の成長と成熟機構 を解 析する 上でGHの動態を解析することは重要であるが、生体内での血中GH量 の変動を観察した例は非常に少ない。また、魚類GHはほ乳類と同様にその受容体で あるGHレセプタ―を介して作用すると考えられているが、GHレセプタ―の最大結 合容量と血中GH量をともに観察した研究はほとんどない。本研究では、サケ科魚 類においてGHの成熟への作用を解明することを目的に、化学発光法による高感度 なGH測定系とGHレセプ夕一バインディングアッセイの確立を行った。さらに様々 なステージにおけるサケ科魚類の血中GH量の動態および成熟時期の肝臓における GHレセプターの最大結合容量の変化を調べた。

  供試魚には北海道大学水産学部附属七飯養魚実習施設で飼育中のカットスロート 卜ラウト、および、さけ・ます資源管理センターで飼育中のシロサケ稚仔魚を用い た。 抗シ口 サケGH血清(anti‑GH)はりコンビナントシロサケGHを家兎に免疫し 作 製 した 。 作 製 し たanti‑GHを用 いサケGH化 学発 光イ ムノア ッセ イの 確立 を

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two‑site法 に よ り行 っ た 。 そ の 結 果 、GH濃 度39〜1250 pg/ml間 で良 好なス タンダードカーブが得られ、サクラマス血清希釈系列と平行性を示した。この測定 系を用いることにより、通常の測定は十分であると考えられたが、孵化直後におけ る仔魚の血中GH量を測定するためには、より高感度化する必要性があった。そこ で、近年開発された特異的反応を減少させずに、非特異的反応を除去することによ り高感度化が可能な免疫複合体転移法を用いて、超高感度サケGH測定系の確立を 試みた。その結果、測定範囲は7.8 ‑ 250 fg/mlであり、シロサケ血清希釈系列も これと良く一致した。この測定系を用いることにより、血清1い1から血中GH量が 測定可能となった。

  次に、 化学 発光 法を 用いたGHレセプタ―の検出およびGHレセプターバインデ イングアッセイの確立を試みた。カッ゛トスロートトラウトの肝臓から常法によルサ イトゾール分画を得た。この分画をジゴキシゲニン標識GHと反応させた後、検出 を 行った とこ ろ2つの バン ドが 可視化 され た。 これ らのバ ンド は未標識のGHを 100倍量添加することにより消失したためGHレセプターと同定した。またアクリ ジニウム標識GHを用いて、GHレセプターバインディングアッセイの確立を試み、

ス キャッチャード解析により得られた親和係数は0.69x109M‥、最大結合容量は 105 fmol/mg proteinで あ り こ れ ま で の 報 告 と ほ ぼ 一 致 し て い た 。   これら の確 立し た化 学発光 サケGH測定系を用いてサケ科魚類の血中GH量の測 定および解析を行った。シロサケ仔魚の血中GH量を孵化2週目から測定した。孵化 2週日から孵化7週日まで、成熟魚の約10倍量である100 ng/mlの高値を示した。

浮上後、血中GH量は滅少し、放流時には成熟魚の血中GH量とほぼ一致した。シロ サケは孵化7週目より、充分な塩分耐性を有することから、この高値のGHは海水適 応能の獲得に関与していることが示唆された。次に、カットス口―トトラウト1年 魚 群 お よ び2年 魚 群の 血中GH量の 測定 を行 った。2年魚 群の雌 にお いて はGHレ セプターバインディングアッセイで肝臓におけるGHレセプターの最大結合容量も 併せて解析した。1年魚群において血中GH量は11月にピークを示したのに続き、工 ス トラジ オ― ル‑17pは12月に 最大 値を 示した 。2年 魚群の 血中GH量は雌雄とも に11月と12月に高値を示し、雌魚において血中エストラジオール‑17p量の動態は     ―1192−

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血 中GH量の動態と良く一致していた。また、血中ビテロジェニン量は、排卵4ケ 月前の11月から1月まで高値を維持していた。これらのことから、カットス口―卜 ト ラウ 卜に おい てGHは 生体 内に おいても卵巣でのエストラジオ―ル‑17B合成を 促進させ、さらにェストラジオ―ル‑17pとともに存在することにより肝臓におけ るビテロジェニン合成の効率化に貢献していることが示唆された。―方、肝臓のGH レセブターの最大結合容量は、GHが高値を示した冬期に低値を示した。このことは、

成熟期の体成長の停滞と関連していると考えられた。

  以上の結果は、硬骨魚類においてGHの作用を解明するための有用な方法および 貴重な知見を提供したものとして高く評価され、審査員―同は本論文が博士(水産 学)の学位請求論文として相当の業績であると認定した。

参照

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