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超高強度ひずみ硬化型セメント系複合材料の自己修復性状の評価

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Academic year: 2022

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超高強度ひずみ硬化型セメント系複合材料の自己修復性状の評価

名古屋大学大学院 学生会員 ○森本 拓也 名古屋大学大学院 正会員 国枝 稔,上田 尚史,中村 光

1.はじめに

超高強度ひずみ硬化型セメント系複合材料(UHP-SHCC)は,引張応力下において複数ひび割れ特性を示し,曲 げ,引張,圧縮破壊時の靭性を大幅に向上させた材料である.また,引張応力下においてひび割れ幅が10μm程度 と,既往のひずみ硬化型セメント系材料に比べて微細な複数ひび割れを生じるという特徴がある 1).当該材料を例 えばコンクリート構造物の補修材料として適用するにあたり,外力の作用によりひび割れが発生した場合でも,ひ び割れ幅が微細なため,そのひび割れ部を内部の未水和セメントを利用して自己修復できる可能性がある.そこで 本研究では透気係数に着目したひび割れ部の物質透過に対する抵抗性の回復程度の把握を行なった.

2.実験概要

本研究では Torrent2)によって提案された Torrent Permeability Tester (TPT)による透気係数を指標として利用する.この試験方法はコンクリート 表層部の緻密性を判定し,コンクリートの耐久性を評価する非破壊的な方法 として利用されている.コンクリートに関しては,水の移動と空気の移動に 相関関係があることがTorrentによって示されており,透気係数によりコン クリートの耐久性が相対的に評価できると考えられる.この方法では図-1 に模式図で示すチャンバーを測定するコンクリート表面にあて,真空ポンプ でチャンバー内の圧力を下げた後のチャンバー内の圧力変化から透気係数を 求める.

表-1に本研究に使用したUHP-SHCCの配合を示す. UHP-SHCCの水 結合剤比(W/B)は0.22である.セメント

は 低 熱 ポ ル ト ラ ン ド セ メ ン ト(密 度 3.14g/cm3)を使 用し ,セメ ント 質量の 20%をシリカフューム(密度 2.2g/cm3)で 置換した。細骨材は7号硅砂

(密度 2.68g/cm3)を用いた。

繊維は長さ6mmの超高強度 ポリエチレン(PE)繊維(直径 0.012mm,密度 0.97g/cm3

弾性係数 88GPa,引張破断

強度 2700MPa)を体積比で

1.0%混入した。化学混和剤に は高性能 AE 減水剤(ポリカ ルボン酸系)と消泡剤を使用 した.

供試体は図-2に示す形状 のものを1本作製した.供試

キーワード 超高強度ひずみ硬化型セメント系複合材料 UHP-SHCC 自己修復 未水和セメント 透気試験 連絡先〒464-8603 愛知県名古屋市千種区不老町工学部9号館526号室TEL 052-789-4484

写真-1 各測定位置でのひび割れの様子 載荷方向

図-2 供試体形状

図-1 チャンバーの模式図

表-1 UHP-SHCC の示方配合

*1:高性能 AE 減水剤(ポリカルボン酸系) 繊維

混入率 シリカ

(%) フューム

0.22 1.0 347 1343 237 171 31.6 6.95 9.7

W/B 単位量(kg/m3)

水 セメント 細骨材 混和剤*1 消泡剤 繊維

5-342 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)

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体は打設の翌日に脱型した後,水中養生を行い,材齢28日で引張によるひび割れの導入を行った.

透気係数の測定はひび割れ導入の前日(総材齢27日),翌日(総材齢29日),31日後(総材齢59日),61日後(総材 齢99日)に行った.供試体は測定の前日に気中にて乾燥させ,測定後は再び水中での養生をおこなった.透気試験 はひび割れ導入部2か所(いずれもひび割れ幅0.05mm以下)と,損傷を受けなかった部分1か所にて測定を行った.

写真-1に各測定位置でのひび割れの様子を示す.

3.実験結果及び考察 3.1 圧縮強度

材齢28日および材齢81日における圧縮強度を表-2に示す.供試体 は打設の翌日に脱型し,載荷日まで水中養生を行ったものである.実験 には,各材齢につき 3 本の供試体を用いた.表-2 より養生期間の延長 による強度の増進が確認された.材齢28日の強度に対する材齢81日の 強度の上昇率は1.16となり,材齢28日において未水和のセメントが残 留していることが分かる.

3.2 透気試験

図-3に透気係数の変化を示す.透気係数kが小さいほど空気が移動しに くいことを表している.なお,損傷のなかった部分のひび割れ導入61日後 の透気係数は,試験器で測定できる値より小さくなったため,図には表示 していない.

図-3より,損傷を受けなかった箇所は材齢が増加するにつれ透気係数が 小さくなっていることが分かる.これは材齢とともにマトリクスが緻密化 したためと考えられる.また,ひび割れ部についてはひび割れの導入によ り透気係数は大幅に増加するが,一定期間水中での再養生を行うことで透 気係数の減少がみられる.ひび割れ導入61日後の透気係数はひび割れ導入 直後よりも小さくなっている.

写真-2に曲げ試験によるひび割れ導入後,53日間水 中で再養生を行ったものと行わなかったものひび割れ 面の様子を示す.再養生を行った供試体には行わなかっ た供試体には見られない白い生成物が観察できる.透気 係数の減少は材齢の増加によるマトリクスの緻密化と,

写真-2に見られるような再水和による生成物でひび割 れが閉塞したためと考えられる.

4.結論

UHP‐SHCC部材のひび割れ部の透気係数は一定期間再養生を行うことで回復が可能であることが分かった.そ

の機構としてはひび割れ面への新たな生成物の析出が考えられる.今後はひび割れ幅と再水和の関係や水和物の確 認など詳細な検討を行う予定である.

参考文献

1)国枝稔, Kamal,A.,中村光, Brühwiler,E.:超高強度ひずみ硬化型セメント系材料の開発,コンクリート工学年 次論文集,Vol.29,No1,pp.315-320,2007

2) Torrent,R.:A two-chamber vacuum cell for measuring the coefficient of permeability to air of the concrete cover on site,Material and Structures,vol25,pp.358‐365,1992

単位:MPa 表-2 圧縮強度試験結果

図-3 透気係数の変化

b)再養生を行わなかったもの a)再養生を行ったもの

写真-2 ひび割れ面の様子

材齢28日 材齢81日 強度上昇率 93.0 108.0 1.16

5-342 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)

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参照

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