長尺長さ変化測定器によるコンクリートのひずみ測定方法の提案
ハザマ 正会員 ○白岩誠史 正会員 庄野 昭 正会員 林 俊斉 正会員 新居秀一 1.目的
コンクリート構造物の型枠を取りはずした後の給水養生に,水中養生と同様の養生効果を期待できる浸水養 生システム(以後,アクアカーテン)を実用化させている1).実構造物にアクアカーテンを適用する目的の1 つとして,収縮ひび割れの抑制効果を挙げている。この効果は、部材の収縮ひずみを高精度で測定することに より,定量的に評価できると考え、現場での測定,長期の測定期間,標点間の距離を十分長くできることを条 件に機械的な測定方法を提案する.
従来のコンタクトゲージ法(JIS A 1129-2)では,基長を 20cm とし,連続した標点数を増やすことによって 標点間の距離を長尺化できる2).しかし,現場での測定は試験室での測定と異なり,測定に時間がかかる.長 尺長さ変化測定器は,標点間の距離を 900~1200mm とし,変位測定に 1/1000mm 読みのマイクロメータを使用 し,支点間の変位量を読み取ることで,数μの精度で変位を測定することができると考えた.
そこで,実構造物でのひずみ測定に先立ち,10cm の正方形断面の供試体に対して,コンタクトゲージ法,
ダイヤルゲージ法(JIS A 1129-3),長尺長さ変化測定器による比較計測を実施し,長尺長さ変化測定器の精 度の確認を行うとともに,示方書養生とアクアカー
テンの養生効果を比較した.
2.長尺長さ変化測定器による測定方法
長尺長さ変化測定器は,図-1に示すように,長さ 450~600mm の 2 本の定尺プレートと中央部の変位測 定部からなる.P コン撤去後のセパレータのネジを 利用して,2 本の定尺プレートの一端をそれぞれボル ト固定(図-1中の(1))し,中央には定尺プレートの ブレを防止するガイド(図-1 中の(2))を設置する.
コンクリートの収縮によって,定尺プレート間の変 位を測定する(図-1 中の(3)参照).定尺プレートの 温度変化による変位は,線膨張係数により補正する.
3.試験方法
コンクリートの配合と測定方法を表-1に,養生方法を表-2 に示す.試験環境は,温度 20℃,相対湿度 60%
である.長さ変化の測定(写真-1,2参照)は,型枠とりはずし時,アクアカーテン終了時,その後 1 週間間 隔,2 週間間隔に実施した.
キーワード 給水養生,アクアカーテン,長さ変化,ひずみ測定,ひび割れ抑制 連絡先 〒105-8479 東京都港区虎ノ門 2-2-5 ハザマ 土木事業本部 TEL03-3588-5770
表-1 配合および供試体サイズ
表-2 供試体の養生条件
写真-2 ダイヤル ゲージ法 写真-1 コンタクトゲージ法
*2 AC:アクアカーテンによる養生
供試体中心軸の 長さ変化を測定 供試体の表面の長さ変化を測定
図-1 長尺長さ変化測定器の概要
*1
示方書:コンクリート標準示方書 中の湿潤養生の標準に準拠した養生セメント 配合 測定方法 供試体
普通ポルトランドセメント スランプ12cm ダイヤルゲージ法 標準型枠
(10x10x40cm)
高炉セメントB種 W/C=55% 長尺ひずみ測定器 コンタクトゲージ法
長尺型枠
(10x10x120cm)
ケース
No. 種別 条 件
① 普通 材齢5日脱型→気中養生
② 高炉B種 材齢7日脱型→気中養生
③ 普通 材齢3日脱型→1週間AC→気中養生
④ 高炉B種 材齢4日脱型→1週間AC→気中養生
セメント 養 生
示方書*1 AC*2
(1) 固定部 (2) 変位測定部 (3) 測定状況 全景写真
固定部 変位測定部 定尺プレート
P
コン跡(深さ 25mm)
平面図土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)
‑907‑
Ⅴ‑454
4.試験結果および考察
図-2~5にセメントの種類および養生方法ごとに得られたひずみを示した.長尺長さ変化測定器により測定 されたひずみの増加速度は,他の二つの
JIS
法と同程度となっている.したがって,実構造物の長さ変化を 測定するために検討した長尺長さ変化測定器は,十分な測定精度を有していると考えられる.ただし,ひずみ の大きさは“コンタクトゲージ法 > ダイヤルゲージ法 > 長尺長さ変化測定器”の順となっている. この 理由として,コンタクトゲージ法は,供試体の収縮が最も大きい表面での測定であり,ダイヤルゲージ法は,中心軸の長さ変化であることから 10cm×10cm の正方形断面の平均ひずみでの測定,長尺長さ変化測定器は,P コン長さの 2.5cm を差し引いた断面での平均ひずみの測定と考えると,先の順位は説明できる.
また,養生方法ごとに収縮ひずみを比較して図-6 に示した.アクアカーテンの場合の収縮ひずみは示方書 養生より遅れる傾向があり,ひずみの増加速度を抑制できている.収縮応力の載荷期間の延長に伴うひび割れ 発生限界ひずみの増大を考慮すると,ひび割れ抑制効果があると考えられる.
5.まとめ
① 長尺長さ変化測定器の精度は他の二つの
JIS
法と同程度であり,実構造物の測定に適用できる.② アクアカーテンにより,ひずみの増加速度を抑制でき,ひび割れ抑制効果が期待できる.
参考文献
1) 古川幸則・福留和人・庄野昭:コンクリートの浸水養生システム-型枠取りはずし後の給水養生工法の実用化と効果-,
コンクリート工学 vol.49 No.3 pp21~28 2011.3
2) 白岩誠史・齋藤淳:実構造物に対する養生効果の実用的評価手法の提案,土木学会第 66 回年次学術講演会 V-280 pp559~560 2011.09
図-6 長尺長さ変化測定器による養生効果の比較
図-4 ③普通セメント・アクアカーテンの測定結果 図-5 ④高炉セメント・アクアカーテンの測定結果 図-2 ①普通セメント・示方書養生の測定結果 図-3 ②高炉セメント・示方書養生の測定結果
-700 -600 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200
0 20 40 60 80 100 120
脱型後の日数(日)
ひずみ[長さ変化量(μ)]
コンタクトゲージ法 ダイヤルゲージ法 長尺長さ変化測定器
膨張
収縮
-700 -600 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200
0 20 40 60 80 100 120
脱型後の日数(日)
ひずみ[長さ変化量(μ)]
コンタクトゲージ法 ダイヤルゲージ法 長尺長さ変化測定器
膨張
収縮
-700 -600 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200
0 20 40 60 80 100 120
脱型後の日数(日)
ひずみ[長さ変化量(μ)]
コンタクトゲージ法 ダイヤルゲージ法 長尺長さ変化測定器
膨張
収縮
-700 -600 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200
0 20 40 60 80 100 120
脱型後の日数(日)
ひずみ[長さ変化量(μ)]
コンタクトゲージ法 ダイヤルゲージ法 長尺長さ変化測定器
膨張
収縮
-700 -600 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200
0 20 40 60 80 100 120
脱型後の日数(日)
ひずみ[長さ変化量(μ)]
高炉B種 示方書養生 高炉B種 アクアカーテン
脱型後 115 日で
20μ
のひずみ低減効果 高炉セメント B 種脱型後 60 日でひずみ低
減効果最大 65μ程度 ひずみ増加速度 の抑制 膨張
収縮
-700 -600 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200
0 20 40 60 80 100 120
脱型後の日数(日)
ひずみ[長さ変化量(μ)]
普通 示方書養生 普通 アクアカーテン
脱型後 115 日で
16μ
のひずみ低減効果脱型後 50 日でひずみ低 減効果最大 60μ程度
普通セメント
ひずみ増加速度 の抑制 膨張
収縮
土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)