石炭ガス化スラグ発泡体を使用したコンクリートの中性化及び凍結融解抵抗性に関する検討
(財)電力中央研究所 正会員 ○正会員 蔵重 勲 西田 孝弘 非会員 沖 裕壮 電源開発(株) 正会員 石川 嘉崇 非会員 山下 洋
1.
はじめに石炭火力発電における熱効率の更なる向上ならびに 環境保全対策に応える次世代発電方式として,石炭ガ ス化複合発電システムの開発・実証が進められている。
本発電システムでは,石炭中の灰分を溶融スラグとして 排出し,これを冷却固化した石炭ガス化スラグ(CGS:
Coal Gasification Slag)が副産される。本研究では CGS
の高付加価値化利用方策のひとつとして開発されたCGS
の加熱発泡技術に着目し1)
,これにより得られるCGS
発泡体を使用したコンクリートの中性化抵抗性およ び凍結融解抵抗性を実験的に把握した。2.
実験概要本研究では,CGS 発泡体として,A スラグ発泡体(表 乾密度
1.44g/cm 3,吸水率 0.68%,粗粒率 3.87)を細骨
材として使用したコンクリートを作製し,促進中性化試験,
凍結融解試験を実施した。また,比較のために,普通細 骨材(表乾密度
2.63g/cm 3,吸水率1.9%
,粗粒率2.90)
を使用した。セメントは普通ポルトランドセメント(密度
3.16g/cm 3,3120cm 2 /g
) , 粗 骨 材 は 砕 石 ( 表 乾 密 度
2.70g/cm 3,吸水率0.66%,粗粒率 6.83)を使用した。
0.66%,粗粒率 6.83)を使用した。
表-1 に促進中性化試験及び凍結融解試験に用いた コンクリートの配合及びフレッシュ性状を示す。なお,A スラグ発泡体を使用したコンクリートは細骨材の形状お よび粒度分布に起因したと考えられる練混ぜ時のまき込 み空気が確認され,空気量が増大する結果となった。
促進中性化試験は,10x10x10cm のコンクリート供試 体を
1
ヶ月の水中養生(20℃)後,促進中性化環境(CO2
濃度:10%,温度
40℃,湿度 60%)に曝露し,中性化深
さをJIS A 1153
に準拠し測定した。凍結融解試験は,10x10x40cm
のコンクリート供試体を1
ヶ月の水中養生(20℃)後,JIS A 1148に準拠し実施した。なお,凍結融 解抵抗性に関する実験結果を評価するため,同一配合 の供試体に対し,リニアトラバース法(ASTM C 457-98)
に基づき,気泡率と気泡間隔係数の測定を行った。
3.
実験結果及び考察図
-1
に中性化深さの経時変化を示す。これより,A ス ラグ発泡体を使用したコンクリートの中性化深さは普通 細骨材を使用した場合より大きいことが分かる。また,図-2
に中性化速度係数と硬化コンクリート中の気泡率の関 係を示す。これより,コンクリートの中性化速度係数は気 泡率に依存して大きくなっており,気泡性状の相違が中 性化速度に影響を及ぼしたものと考えられる。一方,い ずれの細骨材においても,水セメント比が低いほど中性 化速度係数が低くなることが確認され,気泡率との正の 相関性が認められる。すなわち,今回の実験範囲内で は,A スラグ発泡体を使用したコンクリートでは中性化抵 抗性が低いことが認められたが,初期のまき込み空気の 低減および水セメント比の低下を図れば,所要の中性化 抵抗性を持ったコンクリートを製造可能と考えられる。図-3,図-4に相対動弾性係数及び質量減少率と凍結 融解サイクルの関係をそれぞれ示す。なお,凡例中の 括弧内は気泡間隔係数を示す。これらより,A スラグ発 泡体を使用したコンクリートでは,相対動弾性係数が低 下 す る 場 合 (
C-A5-I
) 及 び 質 量 減 少 を 生 じ る 場 合(C-A5-I,II)があることが分かる。さらに相対動弾性係数
キーワード 石炭ガス化スラグ,副産物有効利用,軽量細骨材,中性化抵抗性,凍結融解抵抗性 連絡先 〒270-1194 千葉県我孫子市我孫子
1646 (財)電力中央研究所 TEL 04-7182-1181
表
-1
コンクリート供試体の配合およびフレッシュ性状27.3 14.8 24.3 15.8 5.6 5.5 空気量 (%)
5.5±1.0
1478 1653 1544 1791 2309 2271 単位容積 質量(kg/m3) 単位量(kg/m3)
709 709 717 717 921 931 G
AE減水剤-X(0.8) AE剤(0.02) AE減水剤(0.8) SP剤-X(0.8) AE剤(0.01) SP剤(0.8) AE減水剤(1.2) SP剤(1.5) AE剤(0.005)
混和剤*
(C×%)
23.0 19.0 19.5 18.0 20.0 20.5 スランプ
(cm) 18±2.5
563 360 180 0.6 0.5 Aスラグ C-A5-II
563 360 180 0.6 0.5 Aスラグ C-A5-I
569 400 160 0.6 0.4 Aスラグ C-A4-II
569 400 160 0.6 0.4 Aスラグ C-A4-I
829 360 180 0.48 0.5 普通細骨材 C-N5
838 400 160 0.48 0.4 普通細骨材 C-N4
S C s/a W W/C 細骨材種類 略号
27.3 14.8 24.3 15.8 5.6 5.5 空気量 (%)
5.5±1.0
1478 1653 1544 1791 2309 2271 単位容積 質量(kg/m3) 単位量(kg/m3)
709 709 717 717 921 931 G
AE減水剤-X(0.8) AE剤(0.02) AE減水剤(0.8) SP剤-X(0.8) AE剤(0.01) SP剤(0.8) AE減水剤(1.2) SP剤(1.5) AE剤(0.005)
混和剤*
(C×%)
23.0 19.0 19.5 18.0 20.0 20.5 スランプ
(cm) 18±2.5
563 360 180 0.6 0.5 Aスラグ C-A5-II
563 360 180 0.6 0.5 Aスラグ C-A5-I
569 400 160 0.6 0.4 Aスラグ C-A4-II
569 400 160 0.6 0.4 Aスラグ C-A4-I
829 360 180 0.48 0.5 普通細骨材 C-N5
838 400 160 0.48 0.4 普通細骨材 C-N4
S C s/a W W/C 細骨材種類 略号
*SP 剤はポリカルボン酸エーテル系高性能 AE 減水剤を,AE 減水剤はリグニンス ルホン酸化合物とポリカルボン酸エーテルの複合体を,AE 剤はアルキルエーテル 系陰イオン界面活性剤をそれぞれ使用した。なお,“-X”は低空気連行型を示す
。
5-411 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)
-821-
が低下する場合では,気泡間隔係数が大きいことがわ かる。図-5 に硬化コンクリートの気泡間隔係数とフレッシ ュコンクリートの空気量の関係を示す。これより,フレッシ ュコンクリートの空気量がまき込み空気の影響により
15%
と一般的なコンクリートと比べ多い場合でも気泡間隔係 数が大きくなり,凍結融解抵抗性が低くなることが確認さ れた。したがって,まき込み空気の混入によって空気量 が多くなる場合では,混和剤を適切に使用し所要のエン トレインドエアを確保する必要があると考えられた。
4.
まとめ(1)本研究で対象とした CGS
発泡体を使用したコンクリー トは,今回の実験範囲内では,普通細骨材と比較して中 性化抵抗性が低いことが確認された。しかし,フレッシュ コンクリートのまき込み空気量の低減および水セメント比 の低下を図れば,所要の中性化抵抗性を持ったコンクリ ートを製造可能なものと考えられた。(2)本研究で対象とした CGS
発泡体を使用したコンクリー トでは,適切なエントレインドエアを導入すれば,凍結融 解抵抗性の高いコンクリートを作製可能である。参考文献:
1)
蔵重勲,山本武志,市川和芳,沖裕壮:石炭 ガス化スラグの高付加価値化有効利用技術の開発-コン クリート用軽量細骨材への適用性評価-,電力中央研究 所,研究報告N05040,2006.7.
謝辞: 化学混和剤の使用にあたっては,
BASF
ポゾリス㈱の杉山知巳氏に多大なるご助言をいただきました。ここに 感謝の意を表します。
0.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0 600.0 700.0
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0
フレッシュコンクリートの空気量(%)硬化コンクリートの気泡間隔係数(μm)
C-N4 C-N5 C-A4-I C-A4-II C-A5-I C-A5-II
相対動弾性係数が低下した実験ケース
図
-5
硬化コンクリートの気泡間隔係数と フレッシュコンクリートの空気量の関係0 5 10 15 20 25 30 35
0 20 40 60 80 100
試験期間(day)
中性化深さ
(mm)
C-N4 C-N5 C-A4-I C-A4-II C-A5-I C-A5-II
促進条件:40℃,60%RH,CO210%
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0
硬化コンクリートの気泡率(%)
中性化速度係数(
m m /day
0.5 )C-N4 C-N5 C-A4-I C-A4-II C-A5-I C-A5-II
W/C=0.5
W/C=0.4
図-1 中性化深さの経時変化 図-2 中性化速度係数と硬化コンクリートの 気泡率の関係
0 20 40 60 80 100 120
0 50 100 150 200 250 300
凍結融解サイクル数 (回)
相対動弾性係数
(%)
C-N4 (412μm) C-N5 (324μm) C-A4-I (401μm) C-A4-II (212μm) C-A5-I (586μm) C-A5-II (133μm)
カッコ内は気泡間隔係数 を示す。
相対動弾性係数の閾値
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
7.0
0 50 100 150 200 250 300
凍結融解サイクル数 (回)
質量減少率
(%)
C-N4 (412μm) C-N5 (324μm) C-A4-I (401μm) C-A4-II (212μm) C-A5-I (586μm) C-A5-II (133μm)
カッコ内は気泡間隔係数 を示す。
図-3 相対動弾性係数と凍結融解サイクルの関係 図-4 質量減少率と凍結融解サイクルの関係