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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

c-Ge基板を用いたヘテロ接合太陽電池に関する研究

中野, 慎也

https://doi.org/10.15017/4060181

出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

博士論文

c-Ge 基板を用いた

ヘテロ接合太陽電池に関する研究

2020 年

九州大学大学院 システム情報科学府

電気電子工学専攻

中野 慎也

(3)

目次

第 1 章 緒論 ... 1

1.1 太陽電池市場と政策の推移 ... 1

1.2 太陽電池の理論変換効率 ... 2

1.3 本研究の目的 ... 4

1.4 参考文献 ... 5

第 2 章 a-Si:H/c-Ge(p) ヘテロ接合太陽電池の作製および評価手法 ... 8

2.1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池作製方法 ... 8

2.1.1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の構造 ... 8

2.1.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池作製方法... 8

2.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の特性評価手法 ... 13

2.2.1 太陽電池電流-電圧特性 ... 13

2.2.2 分光感度特性 ... 14

2.3 単膜評価手法 ... 15

2.3.1 分光エリプソメトリー(SE) ... 15

2.4 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面評価手法... 16

2.4.1 高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM) ... 16

2.4.2 二次イオン質量分析(SIMS) ... 16

2.4.3 走査型静電容量顕微鏡(SCM) ... 16

2.5 参考文献 ... 17

第 3 章 シミュレーションを用いた c-Ge ヘテロ接合太陽電池特性の検討 ... 19

3.1 シミュレーションソフトの選定 ... 19

3.2 AFORS-HET概要 ... 20

3.3 c-Geヘテロ接合太陽電池の基板伝導型及びエミッタ層材料の影響 ... 21

3.3.1 シミュレーション条件 ... 21

3.3.2 シミュレーション結果:バンドプロファイル ... 23

(4)

3.3.3 シミュレーション結果:太陽電池特性 ... 24

3.3.4 基板伝導型の選定 ... 27

3.4 参考文献 ... 30

第 4 章 界面処理の a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池特性への影響 ... 32

4.1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面へのa-Si:H(i)層挿入の影響 ... 32

4.1.1 実験条件 ... 32

4.1.2 実験結果 ... 33

4.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の水素終端の影響 ... 35

4.2.1 実験条件 ... 36

4.2.2 実験結果 ... 38

4.3 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面へのホスフィン暴露処理の影響 ... 39

4.3.1 実験条件 ... 39

4.3.2 実験結果 ... 41

4.3.3 セル作製条件調整による変換効率改善 ... 42

4.4 シミュレーションを用いたホスフィン暴露処理の検証 ... 44

4.4.1 シミュレーション条件 ... 44

4.4.2 シミュレーション結果 ... 45

4.5 参考文献 ... 47

第 5 章 c-Ge 基板面方位の a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池特性への影響 50

5.1 c-Ge基板面方位のa-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池特性への影響確認 ... 50

5.1.1 実験条件 ... 50

5.1.2 実験結果 ... 51

5.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の詳細構造評価 ... 53

5.3 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の界面P濃度評価 ... 54

5.4 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面のキャリア濃度評価 ... 56

5.5 評価結果に関する考察 ... 57

5.6 評価結果を反映して作製したa-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の特性 ... 57

5.7 参考文献 ... 58

(5)

第 6 章 ヘテロエピタキシャル成長層の影響検討 ... 60

6.1 シミュレーション条件 ... 60

6.2 シミュレーション結果 ... 62

6.2.1 a-Si:H/epi-Si/c-Ge(p)及びa-Si:H/epi-Si/c-Si(p)ヘテロ接合太陽電池の特性 ... 62

6.2.2 エピタキシャル成長層欠陥密度及び界面欠陥密度の影響 ... 63

6.3 考察 ... 66

6.3.1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の太陽電池特性への影響因子 ... 66

6.3.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の太陽電池特性改善方法 ... 66

6.4 参考文献 ... 67

第 7 章 ヘテロ接合層製膜条件の a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池特性への影響 ... 70

7.1 a-Si:H(i)層の単膜評価 ... 70

7.1.1 a-Si:H(i)層の評価方法 ... 70

7.1.2 a-Si:H(i)層評価結果 ... 71

7.2 a-Si:H層製膜条件のa-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池特性への影響 ... 71

7.3 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の詳細評価 ... 73

7.3.1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の構造評価 ... 74

7.3.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の伝導型評価... 74

7.4 参考文献 ... 75

第 8 章 a-Si:H/c-Ge(p) ヘテロ接合界面への酸素暴露処理の影響 ... 78

8.1 酸素暴露処理を適用したa-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の特性 ... 78

8.1.1 酸素暴露処理を適用したa-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の構造評価 ... 79

8.1.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の伝導型評価... 80

8.2 酸素暴露処理を適用したa-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の特性 ... 81

8.3 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池作製条件の最適化 ... 83

8.4 参考文献 ... 86

第 9 章 結論 ... 88

9.1 結論 ... 88

9.2 今後の課題と展望... 90

(6)

謝辞 ... 92

(7)

- 1 -

第 1 章 緒論

1.1 太陽電池市場と政策の推移

結晶シリコン(c-Si)の pn 接合を用いた太陽電池は 1954 年にベル研究所にて Chapin、Fuller、

Pearsonによって開発され[1]、その変換効率は6%であった[2]。地球上に多量に存在するケイ素を原

料とし、無限に降り注ぐ太陽光を用いてエネルギーを得ることができると新聞でも報道された。主に人 工衛星用の電力供給源として開発が進められていたが、1973 年のオイルショックを機に地上用の電 力源として本格的に開発が始まった。日本では 1974 年に国家プロジェクトとしてエネルギー問題およ び環境問題の解決を目指して、太陽エネルギー、地熱エネルギー、石炭エネルギー、水素エネルギー を重要項目として開発を行うサンシャイン計画がスタートした。その後、省エネルギー技術を推進する ムーンライト計画などと 1993 年に統合され、ニューサンシャイン計画として2002 年まで継続され、予 算は総額 1 兆円を超え、基礎研究から実用化に結び付けるまでの体制を整備し、日本の太陽電池開 発の礎となった。

この頃から製造コストの削減や、補助金制度の充実により民生用の太陽電池が一般的なものとなり 市場が拡大していった。特に、ドイツを皮切りに欧州で導入が相次いだ発電した電力を固定価格で一 定期間買い取りを保証する固定価格買い取り制度(Feed-in Tariff)によって爆発的に市場が拡大した。

その結果、2005 年時点では日本は世界の太陽電池生産量の約 50%を製造していたが、製造技術の 進歩もあり、フルターンキーと呼ばれる製造ラインを一括で導入するといった方法で市場に新規参入す る企業が相次ぎ、中国をはじめとする製造コストの低い国で生産された太陽電池が市場を席巻し、

2012年には日本の世界シェアは6%まで低下した。

ニューサンシャイン計画が終了した後も、同計画を推進してきた新エネルギー・産業技術総合開発 機構(NEDO)主導のもと、4 年~6 年程度のプロジェクトが推進されてきたが、上述のように日本の太 陽電池製造の世界シェアが低下してきた。そこで、技術的優位性に基づく国際的な競争力の維持を目 的とし、2030 年あるいは 2050 年を見据えた太陽光発電技術の開発戦略ロードマップ(2004 年に

PV2030。2009年に見直し版PV2030+)をNEDOが公表した。当ロードマップに従い、2008年から超

高効率太陽電池のシーズ探索研究プロジェクトとしてNEDO が「革新的太陽光発電技術研究開発」を スタートさせた。既存の電力コストと同等以下を意味する Grid Parity を実現するための基礎研究で、

2030年あるいは2050年の実用化を目指すものであり、変換効率向上のため、多接合太陽電池の吸 収帯域増加や量子ドット太陽電池の開発を推し進めるものであった。本論文における研究開発はこの

「革新的太陽光発電技術研究開発」のテーマの一つとして開始したものであり、多接合太陽電池のボト ムセルとして、狭バンドギャップ材料を用いた太陽電池の開発を行ったものである。当プロジェクトの他 にもNEDOが推進するプロジェクトとして、産学の科学的知見を集約するためコンソーシアム形式を採 った「太陽光発電システム次世代高性能技術の開発」や、2030年までに発電コスト7 円 /kWh、2020 年に発電コスト14円 /kWhを実現する可能性が高い太陽電池に重点化して、変換効率向上、製造コ スト低減技術、性能評価等の共通基盤技術の開発を行う「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト

(8)

- 2 -

低減技術開発」や、産業技術総合研究所が中心となり福島大学などと発足させた「次世代結晶シリコ ン PV コンソーシアム」など技術的な国際競争力を維持回復させるため継続的に研究開発が進められ ている。

1.2 太陽電池の理論変換効率

ShockleyとQueisserは1961年に太陽電池の理論限界効率に関する論文を発表し、その理論限

界効率はShockley-Queisser limitとして知られている[3]。太陽電池の理論限界効率はバンドギャップ

で決定される。一般的にバンドギャップ以下の光は吸収することができないため、バンドギャップが狭 いほど短絡電流密度(JSC)は増加するが、pn 接合のフェルミレベル差が小さくなるため、開放電圧

(VOC)は減少する。したがって、バンドギャップによりJSCと VOCのバランスが変わり、変換効率が最大 となるバンドギャップが存在し、計算方法にもよるがバンドギャップ約1.4 eV の時、変換効率が最大と

なる。図 1-1 に AM1.5(エアマス 1.5。太陽電池の評価に用いられる太陽光スペクトルであり、地球に

垂直入射する場合と比較し、1.5 倍の大気を通過した太陽光スペクトル)の分光フォトン放射強度と、す べてのフォトンを吸収した場合の短波長側からの積分電流密度を示す。例えば、現在最も一般的な c- Si太陽電池の場合、バンドギャップが1.12 eVであり約1100nmまでしか太陽光を吸収できない。JSC

は最大で約 43 mA/cm2しか得ることができず、より長波長の光は各フォトンが持つエネルギーは低い ものの、使用することができない。図 1-2にAM1.5のすべてのフォトンを吸収した場合のJSCとバンド ギャップの関係および、実際に得られている代表的な半導体を用いた世界最高効率の太陽電池のJSC

を示す。JSCは参考文献[4]をおよび参考文献[5]を、バンドギャップは参考文献[6]を参照した。ただし、

CIGS、ペロブスカイト、アモルファスシリコン(a-Si)は製膜条件によってバンドギャップが変化するため、

1.12 eV、1.47 eV、1.7 eVと仮定した。c-SiやGaAsに関してはほぼ理論限界付近のJSCが得られて いるが、十分な光吸収が難しい薄膜材料を用いたa-Siや微結晶Si(c-Si)、十分な開発が行われてい

0 10 20 30 40 50 60 70

0.0E+00 1.0E+14 2.0E+14 3.0E+14 4.0E+14 5.0E+14

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

積分電流密度(mA/cm2) 分光フォトン放射強度 (Photons/cm2/nm)

Wavelength (nm)

分光フォトン放射強度 積分電流

図 1-1 AM1.5の分光フォトン放射強度および積分電流密度

(9)

- 3 -

ない結晶ゲルマニウム(c-Ge)に関しては改善の余地が残されている。ここで、狭バンドギャップ材料で あるc-Geはバンドギャップ0.66 eVであり、最大約61 mA/cm2のJSCを得ることができ、c-Si太陽電 池で吸収できないフォトンも電力として取り出せることがわかる。しかしながら、先に述べたとおり、バン ドギャップが狭いためVOCが低い。

図 1-3 にバンドギャップに対する太陽電池の世界最高効率と理論限界を示す。理論限界の算出に

は、VOCはバンドギャップ-0.3 eV、曲線因子(F.F.)はVOCに対する経験則から求まる値[7]を用いた。こ のように単一材料ではバンドギャップによりJSC、VOCに制約が存在するため、1.4 eVの材料を用いた としても約 30%が上限である。この理論限界を超える変換効率を実現する手法で、すでに実用化され ているものとして多接合化がある。異なるバンドギャップの太陽電池をバンドギャップが広い順に配置 することで、高いエネルギーを有するフォトンはバンドギャップが広い太陽電池が吸収し、高 VOCを実 現、エネルギーの低いフォトンは狭バンドギャップ太陽電池が吸収することで、単一材料の太陽電池よ

0 5 10 15 20 25 30 35

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

Conversion Efficiency(%)

Band Gap (eV) c-Si

c-Ge

GaAs

c-Si a-Si

Conversion efficiency limit

CIGS Perovskite

図 1-2 バンドギャップと理論変換効率及び各材料の世界最高効率の関係 0

10 20 30 40 50 60 70

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

Current Density(mA/cm2)

Band Gap (eV) c-Si

c-Ge GaAs

a-Si

c-Si

Current density limit

CIGS

Perovskite

図 1-3 バンドギャップと短絡電流密度の関係

(10)

- 4 -

りロスを減少させることができる。図 1-4に多接合太陽電池と単接合太陽電池のエネルギー利用効率 の概念図を示す。エネルギーは電圧×電流で表されるため図中の四角形は各バンドギャップの太陽 電池が発生することができるエネルギーに相当する(厳密には VOC×JSC×F.F.で表されるため、バン ドギャップとVOCの差とF.F.のVOC依存を考慮する必要がある)。多接合化することで四角形の面積が 増加し得られるエネルギーが増加することが理解できる。接合数が多いほどロスが減少するため、接 合数により理論限界効率が異なり、二接合で 42%、三接合で 49%、無限に接合を増加させると 68%

が実現できると試算されている(非集光の場合)[8]。ここで、多接合太陽電池を構成するすべての要素 太陽電池を直列接続し、二端子で電力を取り出す場合、電流が最小の太陽電池に律速されるため、

バンドギャップの選定によって大きく特性が左右される。また、単純に積層するだけでなく、入射する太 陽光を分光して異なるバンドギャップの太陽電池に入射させることでも同様の効果を得ることができる。

このほかにも、量子ドットや量子井戸を用いて、単一の太陽電池内に異なるバンドギャップを生成し変 換効率を高める手法なども研究されている。

1.3 本研究の目的

日本はサンシャイン計画をはじめとする研究開発の推進により、世界の太陽電池の製造を牽引して きたが、近年新興国の台頭により世界シェアが急落している。従来のような技術的優位性による国際 競争力を取り戻すため、変換効率の向上が急務であり、多接合化による変換効率向上がその一端を 担っている。狭バンドギャップ材料を用いた太陽電池は単接合では変換効率が低く、これまで十分な検 討がされてきたとは言えない。しかしながら、多接合太陽電池ではこれまで有効活用されていなかった フォトンを利用するため、狭バンドギャップ材料を用いたボトムセルの開発が急務である。そこで、本研 究ではc-Geを用いたヘテロ接合太陽電池の研究開発に取り組んだ。

図 1-4 多接合および単接合太陽電池のエネルギー利用効率概念図

(11)

- 5 -

c-Geは世界初のトランジスタの材料となった半導体[9]であるが、酸化膜の安定性がc-Siの方が優 れているため、c-Si の研究開発が盛んに行われてきた。しかし、近年トランジスタのさらなる高性能化 のため、c-Siよりも高移動度を示す c-Geが注目を集め始め、MOSトランジスタに関する研究が盛ん に行われている。

太陽電池分野に於いても、c-Geはバンドギャップが0.66eVであり、ボトムセル材料として長波長光 を十分吸収する能力があり、さらにSiと全率固溶を示し、GeとSiの比率を調整することで0.66 eVか らc-Siのバンドギャップである1.12 eVまで任意に調整することができるため、光吸収層としての研究 が行われている[10]–[13]。また、同じ14族ではあるが、単体では金属であるスズ(Sn)との合金に関す る報告もあり[14]、化合物半導体のように多接合太陽電池を構成する太陽電池として非常に重要な要 素であるバンドギャップの調整が0.66 eVを中心に上下ともに可能である。

一方で、狭バンドギャップ材料を用いた太陽電池は、一般的に界面での再結合電流が多いためVOC

が低く、高温時の性能低下幅が大きい(温度特性が悪い)ことが懸念される。そこで、c-Si に対して、水

素化a-Si(a-Si:H)を用いて再結合の少ない良好な界面を実現することで、世界最高の変換効率[15]を

記録し、高VOCおよび良好な温度特性を示しているc-Siヘテロ接合太陽電池と同様に、a-Si:Hをヘテ ロ接合材料として用いることにした。a-Si:Hはc-Siに対して良好なパッシベーション特性を示すだけで なく[16], [17]、c-Geに対しても良好なパッシベーション特性が報告されている[18]。ここで、従来のモノ シリック型の多接合太陽電池では、製膜の下地層として使用するため、化合物半導体などエピタキシ ャル成長が必要な材料を用いる場合、格子定数が近い必要があり、アモルファス材料であるa-Si:Hは 使用できなかった。また、後流に高温プロセスが存在すると、基板として用いた太陽電池に影響を及ぼ すことが懸念されるといった問題もある。しかし、近年、個別に作製した太陽電池を導電性の接着剤で 機械的に接合するメカニカルスタック技術の開発が進められており[19]、a-Si:Hを用いた太陽電池でも 多接合太陽電池として用いることができるようになりつつある。

本研究では、将来的に多接合太陽電池のボトムセルとして Ge を含む材料を用いることを見込み、

現状安定した供給が可能な c-Ge 基板を用いて、表面処理方法の検討から太陽電池の作製・評価ま でを一貫して行い、最適なバンドギャップを有する Ge をベースとした材料に適用するための知見を得 ることを目的とし研究を行った。先ず、シミュレーションで基板の導電型やヘテロ接合材料依存性、界 面欠陥の影響、特性改善手法を検討した。次に実際にデバイス化を行い、太陽電池特性を計測、ヘテ ロ接合界面を観察し詳細に評価することで、製作方法の最適化を行った。

1.4 参考文献

[1] D. M. Chapin, C. S. Fuller, and G. L. Pearson, “A New Silicon p‐n Junction Photocell for Converting Solar Radiation into Electrical Power,” J. Appl. Phys., vol. 25, no. 5, pp.

676–677, May 1954.

[2] M. B. Prince, “Silicon Solar Energy Converters,” J. Appl. Phys., vol. 26, no. 5, pp. 534–

(12)

- 6 - 540, May 1955.

[3] W. Shockley and H. J. Queisser, “Detailed balance limit of efficiency of p-n junction solar cells,” J. Appl. Phys., vol. 32, no. 3, pp. 510–519, 1961.

[4] M. A. Green, Y. Hishikawa, E. D. Dunlop, D. H. Levi, J. Hohl-Ebinger, and A. W. Y. Ho- Baillie, “Solar cell efficiency tables (version 51),” Prog. Photovoltaics Res. Appl., vol. 26, no. 1, pp. 3–12, Jan. 2018.

[5] J. van der Heide, N. E. Posthuma, G. Flamand, W. Geens, and J. Poortmans, “Cost- efficient thermophotovoltaic cells based on germanium substrates,” Sol. Energy Mater.

Sol. Cells, vol. 93, no. 10, pp. 1810–1816, 2009.

[6] S. M. Sze, Physics of Semiconductor Devices, 2nd ed. New York: Wiley, 1981.

[7] Green and M.A., “Solar cells: operating principles, technology, and system applications.”

Prentice-Hall, Inc.,Englewood Cliffs, NJ, 01-Jan-1982.

[8] A. De Vos, “Detailed balance limit of the efficiency of tandem solar cells,” J. Phys. D.

Appl. Phys., vol. 13, no. 5, pp. 839–846, May 1980.

[9] J. Bardeen and W. H. Brattain, “The Transistor, A Semi-Conductor Triode,” Phys. Rev., vol. 74, no. 2, pp. 230–231, Jul. 1948.

[10] T. Kaneko and M. Kondo, “High open-circuit voltage and its low temperature coefficient in crystalline germanium solar cells using a heterojunction structure with a hydrogenated amorphous silicon thin layer,” Jpn. J. Appl. Phys., vol. 50, no. 12, 2011.

[11] B. Hekmatshoar, D. Shahrjerdi, M. Hopstaken, K. Fogel, and D. K. Sadana, “High- efficiency heterojunction solar cells on crystalline germanium substrates,” Appl. Phys.

Lett., vol. 101, no. 3, 2012.

[12] E. U. Onyegam et al., “Exfoliated, thin, flexible germanium heterojunction solar cell with record FF=58.1%,” Sol. Energy Mater. Sol. Cells, vol. 111, pp. 206–211, 2013.

[13] R. Oshima et al., “High-quality SiGe films grown with compositionally graded buffer layers for solar cell applications,” J. Cryst. Growth, vol. 378, pp. 226–229, 2013.

[14] M. Bauer et al., “Ge-Sn semiconductors for band-gap and lattice engineering,”

Kouvetakis Cit. Appl. Phys. Lett, vol. 81, p. 73707, 2002.

[15] K. Yoshikawa et al., “Silicon heterojunction solar cell with interdigitated back contacts for a photoconversion efficiency over 26%,” Nat. Energy, vol. 2, no. 5, p. 17032, Mar. 2017.

[16] M. Taguchi, A. Terakawa, E. Maruyama, and M. Tanaka, “Obtaining a higher voc in HIT cells,” Prog. Photovoltaics Res. Appl., vol. 13, no. 6, pp. 481–488, 2005.

[17] H. Fujiwara and M. Kondo, “Effects of a-Si:H layer thicknesses on the performance of a- Si:H/c-Si heterojunction solar cells,” J. Appl. Phys., vol. 101, no. 5, pp. 1–9, 2007.

[18] N. E. Posthuma, G. Flamand, W. Geens, and J. Poortmans, “Surface passivation for germanium photovoltaic cells,” Sol. Energy Mater. Sol. Cells, vol. 88, no. 1, pp. 37–45,

(13)

- 7 - 2005.

[19] K. Makita et al., “Over 20% Efficiency Mechanically Stacked Multi-Junction Solar Cells Fabricated by Advanced Bonding Using Conductive Nanoparticle Alignments,” MRS Proc., vol. 1538, pp. 167–171, Jan. 2013.

(14)

- 8 -

第 2 章 a-Si:H/c-Ge(p) ヘテロ接合太陽電池の作製および評価手法

2.1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池作製方法

2.1.1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の構造

図 2-1 に本研究で作製した代表的なヘテロ接合太陽電池の構造を、図 2-2 に外観写真を示す。

14mm×24mmに切断したc-Ge基板に5mm角の太陽電池セルを作製し評価を行った。表 2-1に本

研究で用いたヘテロ接合太陽電池作製プロセスを示す。各プロセスの詳細は2.1.2項に示す。

2.1.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池作製方法

表 2-1 に示したヘテロ接合太陽電池作成プロセスについて、以下の①~⑨(表 2-1 のNo.に対応)

に詳細を記載する。

① 基板洗浄

c-Ge基板上に付着した有機物、金属イオン、酸化膜を除去するため、以下の手順で基板洗浄を行っ た。

図 2-2 本研究で作製したa-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池外観 14mm 24mm

Agグリッド ITO

Ge基板

c-Ge基板 175~500m 集電用Agグリッド電極 200nm

透明電極(ITO) 70nm エミッタ層 8nm バッファ層(a-Si:H(i)) 0~80nm 裏面Al電極 200nm

図 2-1 本研究で作製した代表的なa-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の構造

(15)

- 9 -

表 2-1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池作製プロセス No. プロセス名 構造図 詳細

① 基板洗浄 c-Ge基板表面清浄化のため、有機洗浄及び 酸化膜除去を行う

② 界面処理 ヘテロ接合界面の特性改善のため、ヘテロ接 合形成前に各種界面処理を行う

③ ヘテロ接合形成 プラズマCVD法でバッファ層、エミッタ層を形 成

④ 透明電極製膜 RF スパッタリング法で集電用の透明電極を 形成

⑤ 素子分離 素子の範囲を限定するため、RIE 法でバッフ ァ層、エミッタ層、基板の一部をエッチング

⑥ グリッド電極製膜 電流収集時の直列抵抗を低減するため、RF スパッタリング法でAgのグリッド電極を形成

⑦ 裏面電極製膜 抵抗加熱蒸着法を用いて、裏面電極を形成

⑧ アニール 太陽電池特性向上のため、熱処理を行う

(反射防止膜製膜)

※通常は適用せず、最大変 換効率確認時のみ適用した

反射率を低減し電流値を向上させるため、電 子ビーム蒸着法でSiO2を形成

1 アセトン洗浄

有機物除去のため、アセトンに浸漬して超音波洗浄を実施。

2 半導体基板用洗浄剤での洗浄

汎用の洗浄液(フルウチ科学製 セミコクリーン23)を用いて超音波洗浄を実施(有機物、金 属イオンを除去)

3 フッ酸洗浄

フッ酸に浸漬して酸化膜を除去し、基板表面に付着した汚染物質を除去 4 表面酸化

過酸化水素水に浸漬して基板表面に酸化膜(基板ハンドリング時の保護層)を形成 c-Ge基板

界面処理

(16)

- 10 - 5 真空アニール

真空チャンバ内でヒータを用いて加熱し、表面の酸化膜を除去(基板表面温度は放射温度計 計測値で600℃超)

アニール後の基板表面に酸化膜は存在せず、清浄なGe表面が得られていることをオージェ 電子分光(Auger electron spectroscopy : AES)及び低速電子線回折(Low energy electron diffraction : LEED)を用いて確認している。図 2-3及び図 2-4にGe(100)基板を 洗浄した際のAESスペクトル及びLEED像を示す。アニール処理後にO起因のピークが 消失し、2×1構造の回折像が得られている。

なお、アニール処理後のGe基板表面が大気中の酸素で再酸化されることを防止するため、

マルチチャンバ製膜装置を使用しており、真空破壊することなく後工程の②界面処理、③ヘ テロ接合形成が連続して処理可能である。

② 界面処理

欠陥密度やバンドダイヤグラムの制御を目的に、太陽電池特性に影響を与えると考えられるヘテロ 接合界面に処理を実施した。基板洗浄後、大気暴露せずに、ホスフィン(PH3)や酸素(O2)への暴露や プラズマ処理を実施した。詳細は各項に記載する。

③ ヘテロ接合形成

バッファ層及びエミッタ層の製膜には容量結合型のプラズマCVD (plasma enhanced chemical

vapor deposition)法を用いた。プラズマ励起周波数は一般的に用いられる工業周波数の13.56MHz

ではなく、VHF(very high frequency)帯域の60MHz及び100MHzを用いた。励起周波数を高めるこ とで、プラズマの電子温度が低下し、イオン衝撃の抑制による膜質改善が期待できる。

バッファ層には、a-Si:H(i)を用いた(条件によってはバッファ層なしの太陽電池も作製)。a-Si:H(i)は c-Si基板に対して良好なパッシッベーション特性が報告されており[1], [2]、c-Siヘテロ接合太陽電池 に適用し、高VOC[3]及び良好な温度特性(高温時も出力低下が少ない)[4]を実現している材料であ

200 400 600 800 1000 1200

Kinetic Energy (eV)

Intensity (a.u.)

未洗浄基板

C O Ge

有機洗浄・表面酸化後

アニール処理後

図 2-3 基板洗浄プロセス時のAESスペクトル

図 2-4 c-Ge(100)基板のア ニール処理後のLEED像

(17)

- 11 -

る。狭ギャップ材料であるc-Geを用いた太陽電池は、VOCが低く温度特性が良好でないことが見込ま れるが、a-Si:H(i)はc-Ge基板に対しても、良好なパッシベーション特性が報告されており[5]、a- Si:H(i)を用いることでVOCの改善が期待できる。エミッタ層にはPH3をドーパントとして用いたa-

Si:H(n)を用いた。本研究で用いた代表的な製膜条件を表 2-2に示す。

④ 透明電極製膜

ヘテロ接合太陽電池のエミッタ層は数 nmと非常に薄いためシート抵抗が高く、太陽電池内で生成さ れた電子正孔対を収集するため、エミッタ層上に透明電極を製膜する必要がある。本研究では、c-Si ヘテロ接合太陽電池にも適用されており、高透明かつ低抵抗な透明電極材料である酸化インジウムス ズ(Indium Tin Oxide : ITO)を用いた。製膜にはRFマグネトロンスパッタリング法を用いた。c-Geは波

長 1800nm を超える領域まで吸収可能であるため、ITO は室温で製膜を行い、フリーキャリア吸収を

抑制している。このため、ITOとしてはやや抵抗が高く、膜厚70nmで電気抵抗率は約5.0×10-4cm

(シート抵抗:71/□)である。⑤の素子分離時のマスクとしても使用するため、メタルマスクを使用し約 5mm角に領域を制限して製膜を行った。

⑤ 素子分離

太陽電池素子を分離するため、容量結合型の反応性イオンエッチング(reactive ion etching : RIE)を 用いて、エミッタ層、バッファ層及びc-Ge基板の一部を除去した。エッチングガスには六フッ化硫黄

(SF6)と酸素(O2)を用いた。エミッタ層を完全に除去することで、評価対象外の部位で生成された電子

正孔対を捕集せずに評価可能となる。

⑥ グリッド電極製膜

直列抵抗を低減するため、④で製膜した透明電極の上部に、低抵抗な銀(Ag)の集電用グリッド電極 を製膜した。製膜にはDCマグネトロンスパッタリング法を用いた。膜厚は約200nmである。

⑦ 裏面電極製膜

裏面電極としてアルミニウム(Al)を用いた。製膜には抵抗加熱蒸着法を用いた。タングステン(W)ワイ ヤに電流を流し、Alを溶融、蒸発させて製膜している。膜厚は約200nmである。

表 2-2 代表的なバッファ層及びエミッタ層製膜条件 ガス流量(sccm) ヒータ

温度(℃)

製膜圧力 (Pa)

励起周波 数(MHz)

電力密度 (mW/cm2) SiH4 H2 PH3 B2H6

a-Si:H(i) 20 60 - - 200 13.3 60 15

a-Si:H(n) 5 20 40 - 200 13.3 100 24

PH3はH2で希釈されたガスを使用(0.6%希釈)

(18)

- 12 -

⑧ アニール

太陽電池特性向上の為、真空下で150℃、8時間の加熱処理を行った。

⑨ 反射防止膜製膜

反射率低減により電流値を向上させるため、低屈折率層としてSiO2を製膜した。製膜には電子ビー ム蒸着法を用い、ターゲットにはペレット状のSiO2を用いた。

反射防止膜の膜厚は、分光エリプソメトリーを用いて計測した光学定数を用いて、以下の式で表され る多層膜の特性インピーダンス[6]より計算した結果を用い、ITO 膜厚の標準条件としている 70nm に 対して最大の電流値向上が見込める90nmを適用した。

𝝆 =𝒁𝑳𝟏−𝜼𝟏

𝒁𝑳𝟏+𝜼𝟏……… (数式 2-1)

𝑍𝐿1= 𝜂2(𝜂3cos 𝑘2𝑙+𝑗𝜂2sin 𝑘2𝑙

𝜂2cos 𝑘2𝑙+𝑗𝜂3sin 𝑘2𝑙)……… (数式 2-2)

ここで、各記号は図 2-5 に示す構造での:反射率、ZL1:Z=0 での特性インピーダンス、:インピー ダンス、k:波数を示す。図 2-6にITOとSiO2膜厚に対するc-Geヘテロ接合太陽電池の短絡電流密

z=0 z=l







+

Z

L1

Transmitted

Incident

Reflected

図 2-5 多層反射計算の光学モデル

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110

ITO thickness(nm)

SiO2thickness(nm)

35-36 36-37 37-38 38-39 39-40 40-41 41-42 42-43 43-44 44-45 45-46 46-47 JSC(mA/cm2)

図 2-6 反射防止膜効果計算結果

(c-GeとITOのa-Si:Hの間に47nma-Si:Hがある場合の計算結果)

(19)

- 13 -

度(JSC)計算結果を示す。図 2-6の条件では、SiO2反射防止膜適用で約 3mA/cm2のJSC向上効果 が見込める。また、図 2-7に示す通り、反射防止膜適用後の分光感度特性が計算値と精度よく一致し ていることを確認している。

なお、反射防止膜なしでも太陽電池特性の比較は可能であり、作業効率向上のため、通常は適用 せず、最大変換効率確認時のみ適用した。

2.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の特性評価手法

太陽電池特性測定のため、電流-電圧(I-V)特性と分光感度特性を計測した。以下に詳細を記載する。

2.2.1 太陽電池電流-電圧特性

太陽電池の変換効率を計測するため、疑似太陽光照射装置(ソーラーシミュレーター)を用いて、I-V 特性を計測した。計測時には、受光面積を制限するため、5mm角の遮光マスクを太陽電池に取り付け て計測を行った。遮光マスクの開口部面積が0.25cm2、Agグリッド電極の面積が0.04cm2であり、有 効発電面積0.21cm2の真性発電効率で評価している。

疑似太陽光の光源には Xe ランプを用い、フィルタを介して透過波長帯域を制限し、AM1.5 相当の スペクトルを得ている。しかしながら、汎用のソーラーシミュレーターは一般的に太陽電池に用いられて いるc-Siなどの吸収波長帯域に合わせて 1100nmまでの整合を保証しているため、1800nm超まで 吸収可能な c-Ge の評価に用いると、電流密度を正しく評価できない。このため、本研究では、変換効 率を定義する場合、疑似太陽光の照射強度を、2.2.2 項で説明する分光感度特性計測結果(評価波長 域:300nm~2000nm)で得られるJSCに合わせ込んだ後に計測を行った(太陽電池作製条件の比較な ど、相対比較を行う場合は、簡単のため c-Si の基準セルで照射強度を合わせて計測を行っているた め、実験で得られた代表セルのVOC及びJSCで規格化した値で評価を行っている。c-Si基準セルで照 射強度を調整した場合、分光感度特性計測結果より約 15%JSCが高い結果が得られており、1100nm 以上のフォトンが多いと考えられる)。

温度特性の評価にはペルチェ素子を用いた温調プローバを用いた。25℃で計測した分光感度特性

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

External quantum efficiency

Wavelength (nm)

Calc. w/o ARC Exp. w/o ARC Calc. with ARC Exp. with ARC

図 2-7 反射防止膜適用前後の分光感度特性の計算値と計測値比較

(20)

- 14 -

から得られるJSCに照射強度を合わせ、5℃から75℃までの温度領域で計測を行った。

I-V 特性を示すパラメータとして、JSC、VOC、F.F.、変換効率(η)を求めた。光照射下のダイオード特 性は以下の式で表すことができる。

I = 𝐈𝐩𝐡− 𝐈𝟎{𝐞𝐱𝐩 ( 𝐞𝐕

𝐧𝐤𝐁𝐓) − 𝟏}……… (数式 2-3)

ここで、Iph:光電流、I0:逆方向飽和電流、e:素電荷、n:ダイオード因子、kB:ボルツマン定数、T:絶 対温度である。一般的に太陽電池の特性を示す際は光電流方向を正と取るため、正負を逆に記載し ている。この式において、外部回路が短絡状態(V=0)の時に流れる電流が短絡電流であり、単位面積 あたりに換算するとJSCとなる。また、外部回路が開放状態(I=0)の時の電圧がVOCとなる

𝑉𝑂𝐶= (𝑛𝑘𝐵𝑇

𝑒 ) 𝑙𝑛 {(𝐼𝑝ℎ

𝐼0) + 1}……… (数式 2-4)

変換効率は入射エネルギーPinに対する最大出力の割合で表されるため、以下の式で表される。

𝜂 =𝑉𝑜𝑝×𝐼𝑜𝑝

𝑃𝑖𝑛 × 100 (%)……… (数式 2-5)

ここで、Vop及びIopは最大動作点での電圧、電流である。F.F.はVOC、JSCの積と、Vop、Iopの積の 比を表し、以下の式で示され、ダイオード因子nや太陽電池の直列抵抗、並列抵抗の影響を表すパラ メータである。図 2-8に太陽電池の電流-電圧特性を示す。

𝐹. 𝐹. = 𝑉𝑜𝑝×𝐼𝑜𝑝

𝑉𝑂𝐶×𝐼𝑂𝐶……… (数式 2-6)

2.2.2 分光感度特性

各波長に対する太陽電池の感度を確認するため、また、I-V特性より変換効率を求める際に使用す るJSCを求めるため、分光感度特性を計測した。モノクロメーターを用いて単色化した光をチョッパーで

図 2-8 太陽電池の電流-電圧特性

(21)

- 15 -

変調して太陽電池に照射し、ロックインアンプで光電流を検出することで、各波長に対する感度を計測 している。300nmからGeの吸収端より長波長の2000nmまでの波長帯域について計測を行った。

図 2-9に分光感度特性計測装置の概略図を示す。

2.3 単膜評価手法

ヘテロ接合を形成するa-Si:H層の膜厚及び膜質を評価するため、以下に示す評価手法を用いた。

2.3.1 分光エリプソメトリー(SE)

ヘテロ接合を形成するa-Si:H層の評価には分光エリプソメトリー(Spectroscopic Ellipsometry :SE)

を用いた。分光エリプソメトリーは試料から反射した光の偏光状態の変化を観測し、原子層オーダーの 薄膜の膜厚を高精度かつ高速に、非破壊で計測可能であるため、ヘテロ接合を形成するnmオーダー

の a-Si:H 層の計測に適している。また、反射光を用いて解析するため、基板の自由度が高く、Ge 基

板上であっても、Si基板上であっても a-Si:H層の計測が可能である(但し、解析にはそれぞれの構造 の光学モデルの構築が必要。a-Si:H 層の誘電関数にはTauc–Lorentzモデルを使用)。さらに、解析 結果より各層の光学定数(複素屈折率(N=n-ik)、複素誘電率(=1-i2))も求めることができるため、

吸収係数やバンドギャップも同時に求めることが可能である。

分光エリプソメトリー計測で求まる2のピーク値はa-Si:H層中のSiH2結合密度と相関があり、2の 減少に伴いSiH2結合密度が増加することが報告されている[7], [8]。SiH2結合密度はa-Si:Hの光劣 化(Staebler–Wronski effect[9])と相関があることが報告されており[10]–[12]、a-Si:H の膜質評価指 標として用いられている。一般的に a-Si:H 中の SiH2 結合密度はフーリエ変換赤外分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy :FT-IR)を用いて計測されるが、十分な感度を得るためには、数百 nm程度の膜厚が必要であり、ヘテロ接合太陽電池に用いる数nm~数十nm では計測が難しい。全

Lamp

Voltage Supply

Monochro mator

Optical Chopper

Voltage Supply

Lock-in Amplifier

Computer

Current Amplifier Reference Filter

Sample

図 2-9分光感度特性計測装置概略図

(22)

- 16 -

反射測定(Attenuated Total Reflection :ATR)法を用いて計測している例もあるが[7], [13]、基板とし て使用する高抵抗Si又はGe基板の端面を斜めに鏡面加工する必要があるなど制約が多い。本研究 ではSE解析結果を用いてSiH2結合密度を推定することにした。SiH結合密度を9.0 at.%と仮定し[7], [8]、SiH2結合密度が既知のa-Si:H薄膜の2を基準としてフィッティングを行った。

2.4 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面評価手法

ヘテロ接合界面の結晶構造、界面に存在する元素、界面の電気的性質の確認を行うため、以下の 手法を用いた。

2.4.1 高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM)

ヘテロ接合界面の結晶構造を観察するため、高分解能透過型電子顕微鏡(High-Resolution Transmission Electron Microscope :HR-TEM)を用いた。HR-TEMを用いると、原子の配列状況 が観測できるため、c-Ge基板上に製膜したa-Si:H膜の結晶構造の観測、特にヘテロエピタキシ ャル成長の有無を確認に用いた。加速電圧は300kVで、観測倍率は全体観測用に500,000倍、

詳細観測用に2,000,000倍を用いた。

2.4.2 二次イオン質量分析(SIMS)

ヘテロ接合界面への界面処理によって付着した原子を確認するため、二次イオン質量分析法

(Secondary Ion Mass Spectrometry :SIMS)を用いた。照射する一次イオンにはセシウムイオ ン(Cs+)、加速電圧は5 keVを用いた。a-Si:H/c-Ge構造をSIMS評価すると、一次イオンビー ムによる原子の押し込み(ノックオン効果)により、マトリックス効果の影響を受け、正確な定 量ができないため、同元素のa-Ge:H を用いて、a-Ge:H/c-Ge ヘテロ接合界面の評価を行った。

また、c-Ge基板内への不純物拡散の有無を確認するため、c-Ge基板を研磨し薄膜化した試料に 対して裏面側から分析を行うBack Side SIMSを用いている。分析深さは標準試料のスパッタレ ートを用いて推定している。

2.4.3 走査型静電容量顕微鏡(SCM)

太陽電池のキャリア分離性能に影響を及ぼすヘテロ接合界面の導電型及びキャリア濃度分布 を確認するため、走査型静電容量顕微鏡(Scanning Capacitance Microscopy :SCM)を用いた。

SCMは化合物系太陽電池の粒界の評価や[14], [15]、c-Siを用いた pn接合の電気的な接合広が りの評価[16] 、c-Si ヘテロ接合太陽電池の接合界面評価[17]にも用いられている。SCM は原子 間力顕微鏡(原子間力顕微鏡 :AFM)に導電性の探針を適用したものであり、探針に高周波電圧 を印加し、キャリア濃度に依存する静電容量を計測することで、導電型及びキャリア濃度の分布 を可視化することができる。計測されるSCM信号(dC/dV)はキャリア濃度と相関があり、1015

(23)

- 17 -

~1020 cm-3程度のキャリア濃度を検出可能であるが、相対値であり定量性はない。本研究では、

pn接合を形成するヘテロ接合界面近傍を計測対象としており、キャリア濃度が低い空乏化して いる領域を含むため、比較的高い変調電圧1 Vと、DCバイアス電圧-0.5 V(試料側に印加。n型 の信号強度を強調)を印加して計測を行った。なお、SCMの分解能は最高10 nm程度であるが、

キャリア濃度が低い(≤ 1016 cm-3)領域ではキャリアの空間的な広がりにより100 nm程度にな るため、空乏化している領域では空間分解能は高くない。

2.5 参考文献

[1] S. De Wolf, “Intrinsic and Doped a-Si:H/c-Si Interface Passivation,” in Physics and Technology of Amorphous-Crystalline Heterostructure Silicon Solar Cells, no.

September, Berlin, Heidelberg: Springer, 2012, pp. 223–259.

[2] M. Z. Burrows, U. K. Das, R. L. Opila, S. De Wolf, and R. W. Birkmire, “Role of hydrogen bonding environment in a-Si:H films for c-Si surface passivation,” J. Vac. Sci. Technol. A Vacuum, Surfaces, Film., vol. 26, no. 4, pp. 683–687, 2008.

[3] M. Tanaka et al., “Development of New a-Si/c-Si Heterojunction Solar Cells: ACJ-HIT (Artificially Constructed Junction-Heterojunction with Intrinsic Thin-Layer),” Jpn. J. Appl.

Phys., vol. 31, no. Part 1, No. 11, pp. 3518–3522, Nov. 1992.

[4] M. Taguchi, A. Terakawa, E. Maruyama, and M. Tanaka, “Obtaining a higherVoc in HIT cells,” Prog. Photovoltaics Res. Appl., vol. 13, no. 6, pp. 481–488, Sep. 2005.

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[7] S. Kageyama, M. Akagawa, and H. Fujiwara, “Dielectric function of a-Si:H based on local network structures,” Phys. Rev. B, vol. 83, no. 19, p. 195205, May 2011.

[8] S. Kageyama, M. Akagawa, and H. Fujiwara, “Ellipsometry characterization of a-Si:H layers for thin-film solar cells,” J. Non. Cryst. Solids, vol. 358, no. 17, pp. 2257–2259, Sep. 2012.

[9] D. L. Staebler and C. R. Wronski, “Reversible conductivity changes in discharge- produced amorphous Si,” Appl. Phys. Lett., vol. 31, no. 4, pp. 292–294, 1977.

[10] N. Nakamura et al., “The Influence of the Si-H 2 Bond on the Light-Induced Effect in a-Si Films and a-Si Solar Cells,” Jpn. J. Appl. Phys., vol. 28, no. Part 1, No. 10, pp. 1762–

1768, Oct. 1989.

(24)

- 18 -

[11] K. Koga, T. Indue, K. Bando, S. Iwashita, M. Shiratani, and Y. Watanabe, “Highly stable a-Si:H films deposited by using multi-hollow plasma chemical vapor deposition,”

Japanese J. Appl. Physics, Part 2 Lett., vol. 44, no. 46–49, pp. 3–6, 2005.

[12] S. Shimizu, M. Kondo, and A. Matsuda, “A highly stabilized hydrogenated amorphous silicon film having very low hydrogen concentration and an improved Si bond network,”

J. Appl. Phys., vol. 97, no. 3, pp. 1–5, 2005.

[13] H. Fujiwara and M. Kondo, “Real-time monitoring and process control in

amorphouscrystalline silicon heterojunction solar cells by spectroscopic ellipsometry and infrared spectroscopy,” Appl. Phys. Lett., vol. 86, no. 3, pp. 1–3, 2005.

[14] I. Visoly-Fisher, S. R. Cohen, A. Ruzin, and D. Cahen, “How Polycrystalline Devices Can Outperform Single-Crystal Ones: Thin Film CdTe/CdS Solar Cells,” Adv. Mater., vol. 16, no. 11, pp. 879–883, Jun. 2004.

[15] S. Sadewasser et al., “Nanometer-scale electronic and microstructural properties of grain boundaries in Cu(In,Ga)Se2,” Thin Solid Films, vol. 519, no. 21, pp. 7341–7346, Aug. 2011.

[16] H. Edwards et al., “Scanning capacitance spectroscopy: An analytical technique for pn- junction delineation in Si devices,” Appl. Phys. Lett., vol. 72, no. 6, pp. 698–700, Feb.

1998.

[17] K. Maknys, A. G. G. Ulyashin, H. Stiebig, A. Y. Y. Kuznetsov, and B. G. G. Svensson,

“Analysis of ITO thin layers and interfaces in heterojunction solar cells structures by AFM, SCM and SSRM methods,” Thin Solid Films, vol. 511–512, pp. 98–102, Jul. 2006.

(25)

- 19 -

第 3 章 シミュレーションを用いた c-Ge ヘテロ接合太陽電池特性の検討

本章では、c-Ge ヘテロ接合太陽電池を作製するに当たり、デバイスシミュレーションを用いて基本的 な特性を確認した。先ず、シミュレーションソフトの選定を行い、選定したソフトを使用し、基板の導電型 やヘテロ接合材料依存性、界面欠陥の影響などを把握し、太陽電池の特性向上に必要な条件の検討 を行った。最後に、c-Geヘテロ接合太陽電池の基板として採用するc-Geの伝導型選定を実施した。

3.1 シミュレーションソフトの選定

c-Ge ヘテロ接合太陽電池を作製するに当たり、デバイスシミュレーションを用いて基本的な特性を 確認するため、シミュレーションソフトの選定を行った。候補として主にc-Si太陽電池のシミュレーション ソフトとして広く用いられてきたPC-1D(開発元:The University of New South Wales)[1]、薄膜Si太 陽電池のシミュレーションに用いられることが多いAMPS(開発元:Pennsylvania State University)[2]、

c-Siヘテロ接合太陽電池用に開発されたAFORS-FET(開発元:Helmholtz Zentrum Berlin)[3]の三 種類を挙げ、以下の選定条件を比較した。

A) 入手の容易性(価格)

B) 積層可能な層数

C) 欠陥密度のシミュレーションへの組み込み可否

D) アウトプットの種類(IV、バンドダイヤグラム、キャリア密度、再結合速度を含むこと)

E) 計算速度 F) 操作性

表 3-1 シミュレーションソフト評価結果

項目 PC-1D AMPS AFORS-HET

A) 入手の容易性 無償で提供。Webサイトにて入手可能。

B) 積層可能な層数 5層

(各層内でドーピングのプ ロファイルは可能)

30層 制限なし

C)

欠陥密度の組み込み 可否

×

(バルクおよび表面再結 合速度が指定可能)

○ ○

D) アウトプットの種類 ○ ○ ○

E) 計算速度 ◎ ○ △

F) 操作性

(パラメータが少なく操作 が簡単。パラメータスタデ ィが容易)

(吸収係数などのパラメー タがファイルから取り込め ず、すべて手入力)

(パラメータをファイルから 取り込み可能。パラメータ スタディも容易)

評価結果 ― ― 採用

(26)

- 20 -

評価の結果を表 3-1 に示す。PC-1D は操作が簡単であり、簡易的な解析には有効であると考えら れるが、欠陥の導入が不可能であり、界面に注目した解析には不適である。また、5層までしか積層で きないため、複雑な構造のシミュレーションが難しい。AMPSは30層まで積層可能、かつ欠陥密度の 導入も可能であり、ヘテロ接合太陽電池の詳細なシミュレーションに耐えうると判断できるが、パラメー タの指定など操作性が他のソフトと比べて悪い。AFORS-HETはヘテロ接合太陽電池のシミュレーショ ンのために開発されただけあり、積層数、欠陥密度の導入など必要十分な機能を有している。また、比 較したソフトの中では最もユーザーフレンドリーなインターフェースを有しており、直感的な操作やエク セルで編集したファイルの取り込みなど、操作性に優れている。導入可能なパラメータが多いため計算 には最も時間を要するが、パラメータスタディが容易であり一度計算プログラムを設定すると自動でパ ラメータ依存性を計算可能なため、運用上大きな問題にはならないと考えた。以上の評価結果より、

AFORS-HETを選定した。

3.2 AFORS-HET概要

AFORS-HETはドイツのヘルムホルツセンターベルリン研究所(HZB:Helmholtz-Zentrum Berlin)で 開発されたヘテロ接合太陽電池向けのシミュレーションソフトであり、HZBのWebサイトにて無償で一 般公開されている[3]–[6]。

AFORS-FET は電子、正孔に対する一次元のポアソン方程式(Poisson’s equation)と連続の方程

式を解くプログラムであり、平衡や過渡状態のシミュレーションが可能である。電子正孔対の生成に関 わる光学モデルは、透過率と反射率の計測値及びLambert-Beerの法則を用いた計算だけでなく、多 層膜の干渉を考慮した吸収を用いることも可能である。再結合は、放射再結合、オージェ再結合、バン ドギャップ中に任意に分布させた欠陥準位による Shockley-Read-Hall 再結合とダングリングボンドに よる再結合を考慮することができる。界面電流はドリフト-拡散モデル又は熱電子放出モデルを用いて 計算可能であり、界面に任意に欠陥を設定することが可能である。また、挿入する層数に制限がない ため、界面中の欠陥としてではなく、極めて薄い欠陥を有する層を界面に挿入することで界面再結合を 模擬することも可能である。金属との界面はフラットバンド、ショットキー接合、MIS 接合を選択可能で ある。

シミュレーションのアウトプットとして、バンドダイヤグラム、擬フェルミ準位、生成/再結合速度、キャリ ア密度などに加えて、太陽電池特有の評価(IV、量子効率、フォトルミネセンス、エレクトロルミネセンス、

インピーダンス、キャパシタンス)も可能となっている。パラメータスタディも容易で、構成している層の バンドギャップや欠陥密度などの任意の物性値を走査するシミュレーションが可能であり、最適化やパ ラメータのデバイス特性への影響確認に適したシミュレーションソフトであると言える。

(27)

- 21 -

3.3 c-Geヘテロ接合太陽電池の基板伝導型及びエミッタ層材料の影響

基板の伝導型(p 型、n型)とエミッタ層材料の組み合わせによる太陽電池特性への影響を検討した。

c-Siヘテロ接合太陽電池の場合、n型基板を用いた方が良好な特性が得られており、c-Siヘテロ接合 太陽電池の世界最高効率26.7%もn型基板を用いて得られた結果である[7], [8]。エミッタ層材料には、

c-Siヘテロ接合太陽電池で一般的に用いられているa-Si:Hに加え、エミッタ層材料とのバンドオフセッ トや仕事関数の差の影響を比較検討するためc-Siも検討対象に加えた。c-Ge基板を用いる場合は、

a-Si:Hよりバンドギャップの狭いc-Siでも約0.4eVバンドギャップの差が存在する。c-Si基板を用いた

ヘテロ接合太陽電池では、a-Si:H とのバンドオフセットのセル特性への影響がシミュレーションで確認 されており、n型基板を用いた方がc-Si基板のヘテロ接合界面近傍の拡散電位が大きく、高効率が得 られるとされている[9], [10]。

また、界面欠陥密度の影響についても合わせて検討を行った。c-Siヘテロ接合太陽電池については、

バンドギャップの影響と同様にシミュレーションで影響を検討しており、欠陥密度の増加に伴い顕著に 変換効率が低下することが確認されている[9], [11]。

3.3.1 シミュレーション条件

p型およびn型のc-Ge基板に対し、n型およびp型のa-Si:H、c-Siをエミッタとして用いた構造に関 図 3-1 シミュレーションを行った太陽電池構造

c-Ge(p) c-Ge(n) c-Ge(n)

a-Si:H(n) a-Si:H(p) c-Si(p)

裏面電極200nm TCO 70nm Dit1nm

(a) a-Si:H(n)/c-Ge(p) (b) c-Si(n)/c-Ge(p) (c) a-Si:H(p)/c-Ge(n) (d) c-Si(p)/c-Ge(n) c-Ge(p)

c-Si(n) エミッタ5nm

基板175mm

表 3-2 シミュレーション主要パラメータ

a-Si:H(n) a-Si:H(p) c-Si(n) c-Si(p) c-Ge(p) c-Ge(n)

膜厚 5 nm 5 nm 5 nm 5 nm 175 mm 175 mm

電子親和力 (eV) 3.90 3.90 4.05 4.05 4.00 4.00

バンドギャップ

(eV) 1.72 1.72 1.06 1.06 0.66 0.66

電子移動度

(cm2 V-1 s-1) 5 5 202.4 202.4 2500 2500

正孔移動度

(cm2 V-1 s-1) 1 1 77.15 77.15 700 700

不純物密度(アク

セプタ) (cm-3) 0 7.5×1019 0 1.0×1019 2.0×1017 0 不純物密度(ドナ

ー) (cm-3) 6.9×1019 0 1.0×1019 0 0 2.0×1017

(28)

- 22 -

してシミュレーションを行った。図 3-1に太陽電池構造の模式図を示す。エミッタと基板の間に欠陥密 度低減のためバッファ層として導入されるa-Si:H(i)層はモデルの簡素化のため省略している。光照射 条件は暗状態及びAM1.5G照射の2通りでシミュレーションを行った。

モデルを構成する各層の主要なパラメータを表 3-2に示す。エミッタのa-Si:Hおよびc-Siの膜厚は 5nmで統一した。a-Si:Hの局在準位はAFORS-HETでデフォルトに設定されているバンド端から裾状 に尾を引いているテイル準位と、禁制帯中央付近に存在するガウス分布のダングリングボンドによる 欠陥準位を用いた。c-Siの欠陥準位は価電子帯上端(VBM: Valence band maximum)から0.94 eV 高エネルギー側に存在する 1.3×1014 cm-3の酸素欠陥を仮定した。c-Ge 基板の不純物密度以外は 導電型に依らず同一とした。板厚は 175 mm、電子及び正孔移動度は不純物密度から設定した[12]。

欠陥準位は禁制帯中央に 1.0×1013 cm-3存在すると仮定し、捕獲断面積は電子、正孔ともに 1.0×

10-14 cm-2とした。界面には欠陥密度を除きc-Ge基板と同じ物性値を持つ厚さ1nmの層を界面欠陥 層として導入した。界面欠陥密度Ditは以下の式で定義している。

Dit (cm-2) = Nit (cm-3) × dit (cm)……… (数式 3-1)

ここで、Nitは欠陥密度、ditは界面欠陥層の厚さを示す。c-Geの界面欠陥準位に関しては種々の報告 がされており、ショットキダイオード計測によって、荷電中性準位(Charge Neutrality Level :CNL)が価 電子帯付近に存在し、フェルミレベルが CNL によってピニングされること[13]、さらに、理論解析では、

c-Geの未結合手は VBM の直上または VBM より低エネルギー側に存在することが報告されている [14], [15]。これらを基に、当シミュレーションではドナーライク準位D+/0としてVBMから0.05eV高エネ ルギー側に、アクセプタ―ライク準位D0/-としてVBMから 0.11 eV高エネルギー側にピークを持つ半 値幅(半値半幅)0.1 eVのガウス分布を仮定した[14], [15]。本シミュレーションに用いたD+/0およびD0/- 分布を図 3-2に示す。

表面および裏面電極はエミッタおよびc-Ge基板とフラットバンド接合を形成するとし、表面再結合速 度は1.0×107 cm s-1を仮定した。表面電極の屈折率および吸収係数は膜厚70 nmのIn2O3:Sn(ITO)

図 3-2 シミュレーションに用いたc-Geの欠陥準位密度

0 0.2 0.4 0.6

Density of States (arb. units.)

Energy (eV) D+/0 donor-like state

D0/-acceptor-like state

図   1-3 バンドギャップと短絡電流密度の関係
図  2-7  反射防止膜適用前後の分光感度特性の計算値と計測値比較
表  3-2  シミュレーション主要パラメータ
図  3-4  各種構造の IV 特性シミュレーション結果。(a)  a-Si:H(n)/c-Ge(p)、(b)  c-Si(n)/c-Ge(p)、(c)  a- a-Si:H(p)/c-Ge(n)、(d)c-Si(p)/c-Ge(n)。実線は D it =0cm -2 、破線は D it =4.0×10 12 cm -2 の結果を示す。
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参照

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