第 4 章 界面処理の a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池特性への影響
4.2 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面の水素終端の影響
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a-Si:H(i)層の膜厚増加によって、長波長領域の透過率が向上(反射率が減少)するため、同領域 の分光感度特性が向上している。また、a-SI:H(i)層 40nm 時の短波長領域での分光感度計測値 と計算値の比較より、a-Si:H(i)層は発電に寄与していると考えられ、a-Si:H(i)層の膜厚増加は、
80nm時のようにc-Ge基板からの電流取り出しが制限されない限りJSC減少の要因にはならない と考えられる。一方、長波長領域の分光感度特性は計算値よりも低く、c-Ge 基板内で生成された 電子正孔対の一部がヘテロ接合界面で再結合していると考えられる。
以上より、a-Si:H(i)層の挿入及び膜厚増加により、c-Ge基板のパッシベーション効果の向上は確認 できるが、a-Si:H(i)層なし(0nm)で a-Si:H(n)層を直接製膜した太陽電池の方が VOC高く良好な特性 が得られている。a-Si:H(i)層を用いて太陽電池特性を向上させるためには、さらにa-Si:H(i)層によるパ ッシベーション効果を高めることや、c-Ge基板中の拡散電位を増加させることで、ヘテロ接合界面での 再結合を抑制する必要がある。
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果が期待できる[12], [13]。また、H2希釈によるa-Si:Hの膜質改善も期待できる[14]–[16]。
一方、CVDを用いたa-Si:H製膜では、H2希釈すると結晶化が起こりc-Si:Hが製膜されること が知られている[17]。c-Si ヘテロ接合太陽電池の場合、c-Si 基板上にエピタキシャル成長が起 こると太陽電池特性が低下することが報告されている[18]–[21]。
② ヘテロ接合界面の水素暴露、水素プラズマ処理
a-Si:H(i)層の製膜前にH2をチャンバ内に供給し、ヘテロ接合界面の水素終端効果について検
討を行った。①のSiH4のH2希釈とは異なり、a-Si:H(i)層の製膜はH2希釈を行わず、H2希釈
によるa-Si:H(i)層膜質変化の影響との効果の切り分けを行った。
また、c-Siヘテロ接合太陽電池ではa-Si:H(i)層製膜前にH2プラズマ処理を適用すると良好な 界面が得られることが報告されており[22], [23]、c-Ge ヘテロ接合太陽電池においても同様の 効果を期待して、H2プラズマ処理の適用を検討した。
4.2.1 実験条件
表 4-2に界面処理条件、表 4-3にa-Si:H層製膜条件、表 4-4にセル作製条件組み合わせを示す。
H2プラズマ処理条件には、なるべく界面へのダメージが小さくなるように、VHF帯域の 100MHz かつ プラズマが安定に点灯する最低限の電力密度を採用している。その他の作製条件はすべて共通であ り、c-Ge(p)基板には面方位がGe(100)、抵抗率2.67~4.03 cm、厚さ500mの両面研磨基板を用 いた。
- 37 - 表 4-2 界面処理条件 処理条件 ガス流量(sccm) ヒータ
温度(℃)
処理圧力 (Pa)
励起周波 数(MHz)
電力密度 (mW/cm2)
処理時間 (秒) H2
H2暴露 60 200 13.3 - - 300
H2プラズマ(5sec) 60 200 13.3 100 23 5 H2プラズマ(30sec) 60 200 13.3 100 23 30
表 4-3 a-Si:H層製膜条件
製膜条件 ガス流量(sccm) ヒータ 温度(℃)
製膜圧力 (Pa)
励起周波 数(MHz)
電力密度 (mW/cm2)
膜厚 (nm) SiH4 H2 PH3
a-Si:H(i) H2希釈なし 20 0 - 200 13.3 60 15 5
a-Si:H(i) H2希釈あり 20 60 - 200 13.3 60 15 5
a-Si:H(n) 5 20 40 200 13.3 100 24 8
PH3はH2で希釈されたガスを使用(PH3:0.6%希釈)
表 4-4 セル作製条件組み合わせ一覧
セル作製条件
界面処理条件 a-Si:H(i)層製膜条件 H2暴露
処理
H2プラズマ 処理
H2希釈 なし
H2希釈 あり
処理なし(基準) - - 〇 -
H2希釈a-Si:H(i) - - - 〇
H2暴露処理 〇 - 〇 -
H2プラズマ処理(5sec) - 〇(5sec) 〇 - H2プラズマ処理(30sec) - 〇(30sec) 〇 -
〇:適用条件。その他の作製条件は全て共通。
- 38 - 4.2.2 実験結果
図 4-5及び図 4-6にIV特性計測結果を示す。2.2.1項に記載した通り、作製条件の相対比較のた め、電圧及び電流は代表セル(処理なし)のVOC及びJSCで規格化した値を示している(電流値が高め に評価されているため、あくまで参考値であるが、基準条件(処理なし)での太陽電池特性は以下の通 り:VOC=0.071V、JSC=41.7mA/cm2、F.F.=0.309、Eff.=0.92%)。
H2希釈 a-Si:H(i)条件では VOCがわずかに向上した。一方、H2暴露処理条件ではほとんど特性が
向上していないため、a-Si:H(i)層製膜前のc-Ge基板表面へのH2供給は特性向上に寄与しておらず、
-1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2
-1 0 1 2 3
Current Density (Normalized)
Voltage (Normalized) H2plasma
30s H2plasma
5s
H2exposure
without treatment
H2diluted a-Si:H(i)
図 4-5 IV特性の処理条件依存(処理なしの特性で規格化)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
0 1 2 3 4 5 6
VOC(Normalized)
without treatment
H2diluted a-Si:H(i)
H2
exposure H2plasma
5 sec.
H2plasma 30 sec.
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
0 1 2 3 4 5 6
JSC(Normalized)
without treatment
H2diluted a-Si:H(i)
H2
exposure H2plasma
5 sec.
H2plasma 30 sec.
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
0 1 2 3 4 5 6
F.F. (Normalized)
without treatment
H2diluted a-Si:H(i)
H2
exposure H2plasma
5 sec.
H2plasma 30 sec.
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
0 1 2 3 4 5 6
Efficiency (Normalized)
without treatment
H2diluted a-Si:H(i)
H2
exposure H2plasma
5 sec.
H2plasma 30 sec.
図 4-6 各種太陽電池特性の処理条件依存(処理なしの特性で規格化)
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H2希釈によるa-Si:H(i)層の膜質向上、又はH2を含む材料ガス環境下でのプラズマ点灯により太陽電 池特性が向上したものと考えられる。H2プラズマ処理では、処理時間の増加に伴いVOC、JSCともに急 激に悪化しており、プラズマによるダメージによりヘテロ接合界面の欠陥が増加し、界面再結合が増加 したことが要因と考えられる。
第一原理計算を用いた解析では、c-Ge中のH結合は、ダングリングボンドと同様に負に帯電した状 態で安定となるため、c-Ge のダングリングボンドのパッシベーションには有効ではないとの報告もあり
[24]、a-Si:H(i)層製膜前の H 終端では、c-Si 基板使用時のような良好な界面は得られなかったものと
考えられる。