第 6 章 ヘテロエピタキシャル成長層の影響検討
6.2 シミュレーション結果
6.2.1 a-Si:H/epi-Si/c-Ge(p)及びa-Si:H/epi-Si/c-Si(p)ヘテロ接合太陽電池の特性 図 6-3にc-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池及びc-Si(p)ヘテロ接合太陽電池の特性のepi-Si層欠陥密 度(Depi)依存を示す。Ditは1.0×1010cm-2から1.0×1013cm-2の4条件を検討した。Dit及びDepiそれぞ れが最も小さい条件で、変換効率が最も高く、c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池で 7.4%、c-Si(p)ヘテロ接 合太陽電池で 12.7%であった。c-Si(p)ヘテロ接合太陽電池の変換効率は、研究機関から報告されて いる変換効率はもちろん、市販されているヘテロ接合太陽電池と比較しても低い値である。これは、
epi-Si層の影響のみではなく、光閉じ込め構造や、BSF(back surfce field)構造を適用していないこと
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30
VOC(V)
0 10 20 30 40 50
JSC(mA/cm2)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
Fill Factor
0%
1%
2%
3%
4%
5%
6%
7%
8%
1.E+15 1.E+17 1.E+19 1.E+21
Conversion Efficiency (%)
Defect Density of Epitaxial Si Layer (cm-3)
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
VOC(V)
0 5 10 15 20 25 30 35
JSC(mA/cm2)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
Fill Factor
0%
2%
4%
6%
8%
10%
12%
14%
1.E+15 1.E+17 1.E+19 1.E+21
Conversion Efficiency (%)
Defect Density of Epitaxial Si Layer (cm-3)
(a) a-Si:H(n)/epi-Si/c-Ge(p) (b) a-Si:H(n)/epi-Si/c-Si(p) 図 6-3 各Ditでの太陽電池特性のDepi依存性シミュレーション結果 Dit=1010cm-2
1011cm-2 1012cm-2 1013cm-2
Dit=1010cm-2 1011cm-2
1012cm-2
1013cm-2
- 63 -
が要因である。一方で、c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池では、シミュレーション結果は過去に研究機関か ら報告された最も高い変換効率(7.2%)[14]と同等であり、c-Ge ヘテロ接合太陽電池には作製条件の 最適化による変換効率向上の余地が多く残されていることが示唆される。
c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池と c-Si(p)ヘテロ接合太陽電池を比較すると、c-Ge(p)基板を用いた場
合はDepiが1019cm-3を超えるまで、ほとんど変換効率に影響しないの対して、c-Si(p)を用いた場合は Depiがわずかに増加するだけで、主に VOCが低下して変換効率が低下する。特に Ditが低く変換効率 が高い場合にその傾向が顕著である。Ditに対しては、c-Ge(p)基板を用いた場合の方が、変換効率へ の影響が顕著であり、Dit=1013cm-2の時、Depiが低い領域でも、VOC及びF.F.が低下し、変換効率はわ ずか1.3%である。
6.2.2 エピタキシャル成長層欠陥密度及び界面欠陥密度の影響
図 6-4に短絡状態でのバンドダイヤグラムと電子正孔密度を示す。図 6-3中の最も変換効率が高
い太陽電池であるDitと Depiが1.0×1010cm-2及び1.0×1015cm-3の条件である。c-Ge(p)ヘテロ接合 太陽電池では、ヘテロ接合界面の拡散電位が小さく、電子正孔密度は反転していない。これは、
c-Ge(p)と a-Si:H(n)の仕事関数差が小さいことに起因するものである。一方、c-Si(p)ヘテロ接合太陽電
池では、拡散電位が大きく、電子正孔密度が反転している。c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池では、Dit増 加による変換効率の低下が顕著であるが、これは、多数キャリア(正孔)と少数キャリア(電子)の密度 差が小さく、ヘテロ接合界面での再結合速度が大きくなっているためであると考えられる。また、c-Ge
-6.0 -5.5 -5.0 -4.5 -4.0 -3.5 -3.0
Energy (eV)
EC
EF
EV c-Si(p)
a-Si(n) epi-Si
1.E+02 1.E+04 1.E+06 1.E+08 1.E+10 1.E+12 1.E+14 1.E+16 1.E+18
0 100 200
Electron/Hole Density (cm-3)
Distance (nm) hole
electron a-Si(n)
epi-Si -6.0
-5.5 -5.0 -4.5 -4.0 -3.5 -3.0
Energy (eV)
EC
EF EV
a-Si(n) epi-Si
c-Ge(p)
1.E+02 1.E+04 1.E+06 1.E+08 1.E+10 1.E+12 1.E+14 1.E+16 1.E+18
0 100 200
Electron/Hole Density (cm-3)
Distance (nm) hole
electron
a-Si(n) epi-Si
(a) a-Si:H(n)/epi-Si/c-Ge(p) (b) a-Si:H(n)/epi-Si/c-Si(p) 図 6-4 短絡状態でのヘテロ接合界面近傍のバンドダイヤグラムと電子正孔密度の
シミュレーション結果(Dit=1.0×1010cm-2及びDepi=1.0×1015cm-3、光照射なし)
- 64 -
はc-Siと比較しバンドギャップが狭いため、真性キャリア密度が大きいこともヘテロ接合界面での再結 合速度増加に影響している。
一方、Depiはc-Si(p)ヘテロ接合太陽電池の変換効率を著しく低下させている。図 6-5にc-Ge(p)及
びc-Si(p)ヘテロ接合太陽電池の最適動作点でのバンドダイヤグラムと電子正孔密度及び再結合速度
を示す。c-Si(p)ヘテロ接合太陽電池のみ変換効率が著しく低下する Ditと Depiが 1.0×1010cm-2及び
1.0×1019cm-3の条件である。バンドダイヤグラムより、epi-Si/c-Ge(p)ヘテロ接合界面には伝導帯に
大きなバンドオフセットEVが存在するのに対して、epi-Si/c-Si(p)ホモ接合界面にはEVは存在しない。
c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池では、0.51eV と非常に大きいEVによってepi-Si 層中の正孔密度が低
く、最適動作点まで電圧が印加されてもepi-Si層中での再結合速度は低い。一方、c-Si(p)ヘテロ接合 太陽電池では、epi-Si/c-Si(p)ホモ接合界面にEV が存在しないため、印加電圧の増加に伴い反転領 域が減少し、欠陥密度の高いepi-Si層近傍で電子と正孔の密度が近くなっている。その結果、c-Si(p) ヘテロ接合太陽電池では、Depiが高い条件において epi-Si 層での再結合速度が増加し、変換効率が 著しく低下している。
-6.0 -5.5 -5.0 -4.5 -4.0 -3.5 -3.0
Energy (eV) EC
EFp EV EFn
a-Si(n) epi-Si
c-Ge(p)
-6.0 -5.5 -5.0 -4.5 -4.0 -3.5 -3.0
Energy (eV)
EC
EFp EV EFn
a-Si(n) epi-Si
c-Si(p)
1.E+04 1.E+08 1.E+12 1.E+16 1.E+20
Electron/Hole Density (cm-3) hole
electron
1.E+04 1.E+08 1.E+12 1.E+16 1.E+20
Electron/Hole Density (cm-3)
hole
electron
1.E+14 1.E+16 1.E+18 1.E+20 1.E+22 1.E+24
0 50 100 150 200
Recombination Rate (cm-3s-1)
Distance (nm) interface
epi-Si
1.E+14 1.E+16 1.E+18 1.E+20 1.E+22 1.E+24
0 50 100 150 200
Recombination Rate (cm-3s-1)
Distance (nm) interface
epi-Si
(a) a-Si:H(n)/epi-Si/c-Ge(p) (b) a-Si:H(n)/epi-Si/c-Si(p)
図 6-5 最適動作点でのヘテロ接合界面近傍のバンドダイヤグラムと電子正孔密度及
び再結合速度のシミュレーション結果(Dit=1.0×1010cm-2、Depi=1.0×1019cm-3、
AM1.5G光照射あり)。EFnとEFpはそれぞれ電子と正孔の擬フェルミレベルを示す。
- 65 -
c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池ではDitが1011cm-2及び 1012cm-2の時、Depi増加に伴い変換効率が 向上、その後低下する結果が得られている。図 6-6 に Depi=1.0×1018cm-3及び変換効率が向上する Depi=2.0×1019cm-3 時 の バ ン ド ダ イ ヤ グ ラ ム 、 電 子 正 孔 密 度 及 び 再 結 合 速 度 を 示 す 。Dit は
1.0×1012cm-2である。なお、ヘテロ接合界面近傍を詳細に確認するため、これまでのグラフと比較し、
表示する領域をヘテロ接合界面近傍 40nm に限定している。また、再結合速度は対数表示から線形 表示に変更している。Depiが増加すると、epi-Si 層中の Depiの CNL がわずかに伝導帯寄りであるた め、c-Ge(p)基板中の拡散電位が弱まり、電子と正孔の密度差が大きくなる。その結果、Ditによる再結 合が減少し、変換効率が改善している。
-6.0 -5.5 -5.0 -4.5 -4.0 -3.5 -3.0
Energy (eV) EC
EFp
EV
EFn
c-Ge(p)
a-Si(n) epi-Si interface
-6.0 -5.5 -5.0 -4.5 -4.0 -3.5 -3.0
Energy (eV)
EC
EFp
EV
EFn
c-Ge(p)
a-Si(n) epi-Si interface
1.E+04 1.E+08 1.E+12 1.E+16 1.E+20
Electron/Hole Density (cm-3)
hole
electron
1.E+04 1.E+08 1.E+12 1.E+16 1.E+20
Electron/Hole Density (cm-3)
hole
electron
0.E+00 2.E+22 4.E+22 6.E+22 8.E+22 1.E+23
0 10 20 30 40
Recombination Rate (cm-3s-1)
Distance (nm) a-Si(n) epi-Si c-Ge(p)
interface
0.E+00 2.E+22 4.E+22 6.E+22 8.E+22 1.E+23
0 10 20 30 40
Recombination Rate (cm-3s-1)
Distance (nm) a-Si(n) epi-Si c-Ge(p) interface
(a) Depi = 1.0×1018cm-3 (b) Depi = 2.0×1019cm-3 図 6-6 a-Si:H(n)/epi-Si/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池の短絡状態でのバンドダイヤグラム、
電子正孔密度及び再結合速度のシミュレーション結果(Dit=1.0×1012cm-2、AM1.5G光照射あり)
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