第 4 章 界面処理の a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池特性への影響
4.3 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面へのホスフィン暴露処理の影響
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H2希釈によるa-Si:H(i)層の膜質向上、又はH2を含む材料ガス環境下でのプラズマ点灯により太陽電 池特性が向上したものと考えられる。H2プラズマ処理では、処理時間の増加に伴いVOC、JSCともに急 激に悪化しており、プラズマによるダメージによりヘテロ接合界面の欠陥が増加し、界面再結合が増加 したことが要因と考えられる。
第一原理計算を用いた解析では、c-Ge中のH結合は、ダングリングボンドと同様に負に帯電した状 態で安定となるため、c-Ge のダングリングボンドのパッシベーションには有効ではないとの報告もあり
[24]、a-Si:H(i)層製膜前の H 終端では、c-Si 基板使用時のような良好な界面は得られなかったものと
考えられる。
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表 4-5 PH3暴露界面処理条件 処理条件 ガス流量(sccm) ヒータ
温度(℃)
処理圧力 (Pa)
励起周波 数(MHz)
電力密度 (mW/cm2)
処理時間 (秒) H2 PH3
PH3暴露 - 40 200 13.3 - - 300
PH3はH2で希釈されたガスを使用(PH3:0.6%希釈)
表 4-6 a-Si:H層製膜条件
製膜条件 ガス流量(sccm) ヒータ 温度(℃)
製膜圧力 (Pa)
励起周波 数(MHz)
電力密度 (mW/cm2)
膜厚 (nm) SiH4 H2 PH3
a-Si:H(i) 20 60 - 200 13.3 60 15 5
a-Si:H(n) 5 20 40 200 13.3 100 24 8
PH3はH2で希釈されたガスを使用(PH3:0.6%希釈)
表 4-7 セル作製条件組み合わせ セル作製条件 PH3暴露
処理
a-Si:H(i)層 製膜
a-Si:H(n)層 製膜
界面への PH3暴露有無 PH3暴露なし/a-Si:H(i)層あり(基準) - 〇 〇 なし PH3暴露あり/a-Si:H(i)層あり 〇 〇 〇 あり
a-Si:H(i)層なし(a-Si:H(n)を直接製膜) - - 〇 あり
〇:適用条件。その他の作製条件は全て共通。
- 41 - 4.3.2 実験結果
図 4-7にPH3暴露処理前後のc-Ge基板表面のAESスペクトルを示す。PH3暴露後にPH3暴露 前には存在しなかったP起因のピーク(PKLL)が出現し、PH3暴露によりヘテロ接合界面にPH3が吸着 していることを確認した。
図 4-8及び図 4-9にIV特性計測結果を示す。2.2.1項に記載した通り、作製条件の相対比較のた
め、電圧及び電流は代表セル(PH3暴露なし/a-Si:H(i)層あり)のVOC及びJSCで規格化した値を示して いる(電流値が高めに評価されているため、あくまで参考値であるが、基準条件(PH3 暴露なし /a-Si:H(i)層 あ り ) で の 太 陽 電 池 特 性 は 以 下 の 通 り :VOC=0.081V、JSC=42.2mA/cm2、F.F.=0.316、 Eff.=1.08%)。
PH3暴露処理を適用すると、主にVOC、F.F.が向上し、変換効率が約2.4倍に向上した。ヘテロ接合 界面とエミッタ間にa-Si:H(i)層が存在しても、PH3暴露処理適用により太陽電池特性が向上することが 明らかになった。
a-Si:H(i)層なし条件でも同様に、PH3暴露処理なし条件より変換効率は向上するが、PH3暴露処理
ありかつ a-Si:H(i)層あり条件と比較すると、太陽電池特性は低かった。c-Ge 基板中の拡散電位を考
えると、a-Si:H(i)層なしで直接a-Si:H(n)層を製膜する方が、拡散電位は大きくなり、再結合が抑制され
ると考えられる。しかしながら、PH3暴露処理ありかつ a-Si:H(i)層あり条件の方が太陽電池特性は良 好であることから、a-Si:H(i)層によって界面欠陥が抑制されていると考えられる。また、a-Si:H(n)層を 直接製膜する場合、a-Si:H(n)層製膜がPH3暴露処理を兼ねるため、PH3暴露処理とヘテロ接合界面 の製膜条件がa-Si:H(n)層の製膜条件によって制限されてしまうという観点からも、PH3暴露処理と
a-Si:H(i)層の組み合わせの方が高効率化に適していると考えられる。
100 110 120 130
Intensity (arbitrary units)
Kinetic Energy (eV) PKLL
(a)
(b)
(c) (d)
250 260 270 280 Intensity (arbitrary units)
Kinetic Energy (eV) CLMM
490 500 510 520
Intensity (arbitrary units)
Kinetic Energy (eV) OLMM
図 4-7 PH3暴露処理前後のc-Ge基板表面のAESスペクトル (a) 基板洗浄前、(b) 表面酸化後、(c) 酸化膜除去アニール後、(d) PH3暴露後
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4.3.3 セル作製条件調整による変換効率改善
セル作製条件を調整し変換効率の向上を試みた。JSCに関しては、バンドギャップに相当する領域ま で感度があることが確認できているが、VOCに関しては、PH3暴露処理を適用したセルであっても、シミ ュレーションで得られている0.2Vを越えるVOCは得られていない。
そこで、従来使用していた比較的高抵抗の2.67~4.03 cmのc-Ge(p)基板から、2桁抵抗率を下 げ、0.023 cmのc-Ge(p)基板を採用し、基板厚さも、従来の500mから175mに薄板化した。低
-1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2
-1 0 1 2 3
Current Density (Normalized)
Voltage (Normalized) w/o PH3exp.
with a-Si:H(i)
with PH3exp.
with a-Si:H(i)
w/o a-Si:H(i) (direct a-Si:H(n))
図 4-8 IV特性依存性(PH3暴露有無及びa-Si:H(i)有無)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
0 1 2 3 4
VOC(Normalized)
w/o PH3exp.
with a-Si:H(i)
with PH3exp.
with a-Si:H(i)
w/o a-Si:H(i) (direct a-Si:H(n))
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
0 1 2 3 4
JSC(Normalized)
w/o PH3exp.
with a-Si:H(i)
with PH3exp.
with a-Si:H(i)
w/o a-Si:H(i) (direct a-Si:H(n))
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
0 1 2 3 4
F.F. (Normalized)
w/o PH3exp.
with a-Si:H(i)
with PH3exp.
with a-Si:H(i)
w/o a-Si:H(i) (direct a-Si:H(n))
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
0 1 2 3 4
Efficiency (Normalized)
w/o PH3exp.
with a-Si:H(i)
with PH3exp.
with a-Si:H(i)
w/o a-Si:H(i) (direct a-Si:H(n))
図 4-9 各種太陽電池特性依存性(PH3暴露有無及びa-Si:H(i)有無)
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抵抗基板を用いると、内蔵電位が増加しVOCの向上が期待できる[6]。一方で、発電に寄与しない長波 長領域のフリーキャリア吸収が増加するため JSCの低下が懸念されるが[9]、今回は VOCの改善を優 先した。基板の薄板化では、c-Ge基板内でのキャリア再結合減少によるVOCの向上が期待できる[25]。
薄板化による光吸収の低下により、低抵抗化と同様にJSC低下が懸念されるが、低抵抗基板を用いた
場合、約 1600nm 以上の領域ではフリーキャリア吸収による感度の低下が発生し、基板厚さによらず
感度が低いためJSCへの影響は小さい(1600nmに於いて、基板厚さを500mから175mに減じて も、吸収できずに透過する光子数の差は1%以下であり、1600nm以下の領域では吸収可能な光子数 の差はほとんどない)。a-Si:H(i)層の厚さは4.1項でのa-Si:H(i)層厚さの影響確認結果より、パッシベ ーション効果向上のため40nmとした。また、透明導電膜のITO上に低屈折率材料のSiO2を製膜し、
反射率を低減した。
IV 特性計測結果を図 4-10 に、分光感度特性を図 4-11 に示す。IV 特性は分光感度特性計測結 果を用いてシミュレータの放射強度を調整した計測結果のため、JSC、VOCを規格化せず計測値を記載
0 10 20 30 40 50
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25
Current Density (mA/cm2)
Voltage (V)
with ARC
without ARC
With ARC VOC JSC F.F.
Eff.
0.207 V 46.0 mA/cm2 0.554 5.29 %
図 4-10 セル作製条件調整後のc-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池IV特性
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
External Quantum Efficiency .
Wavelength (nm) without ARC
with ARC
図 4-11 セル作製条件調整後のc-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池分光感度特性
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している。セル作製条件の改善により、VOCが0.2Vを越える太陽電池を得た。
ヘテロ接合適用による温度特性改善効果の確認のため、温度特性の計測を行った(図 4-10 のセ ルのうち、ARCなしセルに対して計測を実施)。比較対象となるc-Geホモ接合太陽電池の計測結果を 調査したが、文献値を見つけることができなかったため、理論計算値[26]を引用した。なお、引用した 文献の理論計算では AM1.0 の放射強度で計算を行っていたため、本研究の評価条件である AM1.5 と異なっていた。同条件での比較とするため、25℃でのJSCを図 4-10に示すセルと同じJSCに補正し た計算結果を用いて温度特性を補正した。理論計算では、単結晶c-Geを用いた理想的なホモ接合太 陽電池について計算を行っているため、図 4-10 のセルよりも高効率なセル(25℃に於いて VOC: 0.246V、変換効率:8.21%)と比較を行っている。
図 4-12 にc-Geヘテロ接合太陽電池の実測値と、c-Ge ホモ接合太陽電池の温度特性を示す。c-Ge ホモ接合太陽電池の変換効率の温度特性が-1.11%/℃であるのに対して、c-Ge ヘテロ接合太陽 電池の温度特性は-0.91%/℃であり、VOCが低いにもかかわらず、良好な温度特性を示した。ヘテロ接 合適用によって、逆方向飽和電流が抑制された結果であると考えられる。