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a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面への a-Si:H(i)層挿入の影響

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 38-41)

第 4 章 界面処理の a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合太陽電池特性への影響

4.1 a-Si:H/c-Ge(p)ヘテロ接合界面への a-Si:H(i)層挿入の影響

c-Si ヘテロ接合太陽電池では、ヘテロ接合界面の欠陥密度低減のため c-Si 基板とエミッタ層の間 にa-Si:H(i)層を挿入した構造(HIT:Heterojunction with intrinsic thin layer)[4] が用いられており、高 VOC及び良好な温度特性を有するヘテロ接合太陽電池が得られることが報告されている[5]。a-Si:H(i) 層の膜厚は、a-Si:H(i)層挿入によるVOC改善とa-Si:H(i)層の吸収ロスの関係から、5nm 程度が最適 と報告されている[4], [6]。c-Ge基板においてもa-Si:H(i)層は基板表面のパッシベーションに有効であ ることが報告されている[7]–[9]。a-Si:H(i)層の膜厚は、60nm 程度でパッシベーションの効果が飽和す る傾向にあることが報告されている[7]。

ヘテロ接合太陽電池の高効率化にはヘテロ接合界面の欠陥Ditを低減し、界面再結合を抑制するこ とが重要であるため、本研究で用いた太陽電池作製プロセスにおいても、a-Si:H(i)層の有無、膜厚の 影響を確認した。

4.1.1 実験条件

a-Si:H(i)層の有無及び膜厚の影響を確認するため、a-Si:H(i)層の膜厚を0nm~80nmに変化させ、

太陽電池特性を確認した。c-Ge(p)基板は面方位Ge(100)、抵抗率2.67~4.03 cm、厚さ500mの 両面研磨基板を用いた。a-Si:H(i)層及びa-Si:H(n)層の製膜条件は表 4-1に示す条件を用いた。

表 4-1 a-Si:H層製膜条件 ガス流量(sccm) ヒータ

温度(℃)

製膜圧力 (Pa)

励起周波 数(MHz)

電力密度 (mW/cm2)

膜厚 (nm) SiH4 H2 PH3

a-Si:H(i) 20 0 - 200 13.3 60 15 0~80

a-Si:H(n) 5 20 40 200 13.3 100 24 8

PH3はH2で希釈されたガスを使用(PH3:0.6%希釈)

- 33 - 4.1.2 実験結果

図4-1及び図4-2にIV特性計測結果を示す。2.2.1項に記載した通り作製条件の相対比較のため、

電圧及び電流は代表セル(a-Si:H(i)層 0nm)のVOC及び JSCで規格化した値を示している(電流値が 高めに評価されているため、あくまで参考値であるが、a-Si:H(i)層 0nm の太陽電池特性は以下の通 り:VOC=0.11V、JSC=45.5mA/cm2、F.F.=0.409、Eff.=2.04%)。3.3 項でシミュレーションで求めた

a-Si:H(n)/c-Ge(p)構造の太陽電池特性と同等のJSCであり、多接合太陽電池のボトムセルとして使用す

るために必要な赤外領域の吸収能力が認められる(分光感度は図4-3で示す)。一方、VOC及び F.F.

は低く、Dit=4.0×1012cm-2時の太陽電池特性と同等であり、Dit低減による太陽電池特性の向上が必 要であると考えられる。

a-Si:H(i)層なし(0nm)時の変換効率が最も高く、a-Si:H(i)層膜厚の増加に伴い、主にVOCの低下に より変換効率が低下している(10nmまで)。20nm、40nmまで膜厚が増加するとVOCは改善傾向を示 し、JSCに関してはa-Si:H(i)層が0nm又は薄い時よりも高い値が得られている。a-Si:H(i)層を80nmま で増加させると、顕著にJSCが減少、VOCが増加している。前述の c-Si ヘテロ接合太陽電池や c-Ge 基板に対するパッシベーション効果に関する報告[4], [6], [7]では、a-Si:H(i)層の膜厚増加に従い VOC

増加や少数キャリアのライフタイム増加が確認されているが、当検討では a-Si:H(i)層なしで良好な特

-0.5 0 0.5 1 1.5

-0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

Current Density (Normalized)

Voltage (Normalized)

0nm 5nm 10nm 20nm 40nm 80nm

図4-1 c-Geヘテロ接合太陽電池のIV特性a-Si:H(i)層膜厚依存性(0nmの特性で規格化)

80nm 0nm

40nm 20nm 10nm

5nm

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 10 20 30 40 50

VOC(Normalized)

a-Si:H(i) layer thickness (nm)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 10 20 30 40 50

JSC(Normalized)

a-Si:H(i) layer thickness (nm)

図4-2 VOC及びJSCのa-Si:H(i)層膜厚依存性(0nmの特性で規格化。80nmを除く)

- 34 -

性が得られており、その傾向から外れている。また、JSCに関しても a-Si:H(i)層の膜厚増加に伴う減少 が報告されているが、20nm、40nmで改善している。これらの事象の要因として、以下が考えられる。

① a-Si:H(i)層なし(0nm)の特性が良好である要因

a-Si:H(i)層が存在すると、拡散電位がa-Si:H(i)層に生じるようになるため、c-Ge基板の拡散電位

が弱まり、界面近傍の電子と正孔のキャリア密度差が小さく界面再結合が多くなり、太陽電池特 性が悪化していると考えられる。a-Si:H(i)層の膜厚が 20nm 程度まで増加すると、報告事例[7]と 同様に c-Ge 基板に対するパッシベーション効果が高くなり、太陽電池特性も改善したと考えられ る。なお、c-Siヘテロ接合太陽電池の場合は、数nmの薄いa-Si:H(i)層を挿入しても太陽電池特 性低下は見られない[4], [6]。これは、c-Si基板(p型、n型両方)のフェルミレベルと、a-Si:Hエミッ タのフェルミレベルの差が c-Ge(p)基板より大きく、a-Si:H(i)層を挿入してもヘテロ接合界面の拡 散電位が確保できているためと考えられる。

② a-Si:H(i)層を80nmまで厚膜化した際のJSC減少、VOC増加の要因

a-Si:H(i)層なしと 80nm の太陽電池の分光感度計測結果を図 4-3 に示す。a-Si:H(i)層が 80nm の太陽電池の感度がある波長領域は、a-Si:H の吸収帯域に限られ、c-Ge の吸収帯域である長 波長側には感度がない。これは、a-Si:H(i)層の厚膜化に伴い、空乏化する領域がa-Si:H(i)層に限 定され、c-Ge基板ヘテロ接合界面の拡散電位が小さくなり、c-Ge基板内で発生した少数キャリア

(電子)が価電子帯ヘテロ接合界面のバンドオフセットを越えられなくなったためと考えられる。 a-Si:H(n)とc-Ge(p)基板をn層、p層とするpin型のa-Si:H太陽電池として動作しており、a-Si:Hの バンドギャップが広い(約1.7eV)ため、VOCが大きい値を示している。

③ a-Si:H(i)層増加に伴うJSC低下が見られない要因

図4-4にa-Si:H(i)層なしと40nmの時の透過率(1-反射率)の計算値と、分光感度特性の計算値

及び実測値を示す。透過率の計算値は、各層の膜厚と光学定数を用いて計算した値、分光感度 特性の計算値は、a-Si:H(i)層0nm時の分光感度特性計測値を元に、40nm製膜したa-Si:H(i)層 を発電に寄与しない(吸収により発生した電子正孔対が再結合する)層とした場合と、発電に寄与 する(吸収により発生した電子正孔対が分離される)層とした場合の計算結果である。

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

External Quantum Efficiency

Wavelength (nm)

図4-3 a-Si:H(i)層なし及び80nm時の分光感度特性 80nm

0nm

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a-Si:H(i)層の膜厚増加によって、長波長領域の透過率が向上(反射率が減少)するため、同領域 の分光感度特性が向上している。また、a-SI:H(i)層 40nm 時の短波長領域での分光感度計測値 と計算値の比較より、a-Si:H(i)層は発電に寄与していると考えられ、a-Si:H(i)層の膜厚増加は、

80nm時のようにc-Ge基板からの電流取り出しが制限されない限りJSC減少の要因にはならない と考えられる。一方、長波長領域の分光感度特性は計算値よりも低く、c-Ge 基板内で生成された 電子正孔対の一部がヘテロ接合界面で再結合していると考えられる。

以上より、a-Si:H(i)層の挿入及び膜厚増加により、c-Ge基板のパッシベーション効果の向上は確認 できるが、a-Si:H(i)層なし(0nm)で a-Si:H(n)層を直接製膜した太陽電池の方が VOC高く良好な特性 が得られている。a-Si:H(i)層を用いて太陽電池特性を向上させるためには、さらにa-Si:H(i)層によるパ ッシベーション効果を高めることや、c-Ge基板中の拡散電位を増加させることで、ヘテロ接合界面での 再結合を抑制する必要がある。

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