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二〇〇六年度接触場面における勧誘談話管理武田加奈子

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(1)

2006 年度

博士論文

接触場面における勧誘談話管理

千葉大学大学院

社会文化科学研究科

武田 加奈子

(2)

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日 本 語 学 習 を始 める動 機 は 、以 前 よりも多 種 多 様 になってきている。アジアを中 心 に日 本 のアニメやドラマは 浸 透 しており、好 きなアニメや俳 優 への興 味 が日 本 語 学 習 へのきっか けと なり、留 学 生 と して来 日 した学 生 にも出 会 うよ うになった。現 在 では 、昔 のよ うな日 本 語 や東 洋 文 化 専 攻 の学 生 よりも、その他 の専 門 の学 生 の方 が多 くなっているし、理 工 系 の学 部 や大 学 院 に所 属 し、研 究 室 では 日 本 語 をまったく使 わないという学 生 もいる。ちょうどこの論 文 に 取 りかかった時 期 である 2003 年 に留 学 生 数 が 109,508 人 (文 部 科 学 省 学 生 支 援 課 調 べ) になったということが報 道 されていた。「留 学 生 10 万 人 計 画 」(21 世 紀 初 頭 までに留 学 生 を 10 万 人 受 け入 れる計 画 )が策 定 された 1983 年 から、達 成 までに 20 年 を要 したことになる。 日 本 で生 活 している外 国 人 となると、さらにその 10 倍 以 上 の数 にのぼるそうだ。法 務 省 入 国 管 理 局 の調 べでは、2005 年 現 在 における外 国 人 登 録 者 数 は 197 万 3747 人 で、前 年 に 引 き続 き過 去 最 高 記 録 を更 新 しているという。他 国 からは まだまだ少 ないと言 われるか もしれ ないが、日 本 人 にとっては 思 ったよ りも多 い数 字 なのではないか 。日 本 で生 活 する外 国 出 身 者 が増 え ているということは 、異 文 化 の者 と接 する機 会 が増 え るということになるが、いわゆる 「日 本 人 」はこの現 実 をどのぐらい認 識 できているのだろうか。 清 (1997)に、外 国 人 社 員 と日 本 人 社 員 に対 して行 った調 査 結 果 がある。そ の中 に、「外 国 人 社 員 にとり、意 見 の産 出 ・受 容 において適 切 な敬 語 表 現 、待 遇 表 現 、婉 曲 表 現 を駆 使 する事 が最 も困 難 であ り、特 に 「断 り 」状 況 におい てそ れが顕 著 である事 が明 らか になった」 (清 1997:71-72)と、断 り行 動 の難 しさについての報 告 がある。この調 査 はビジネス場 面 であ るが、留 学 生 も含 めた長 期 滞 在 の生 活 者 にとっても大 きな問 題 であるだろう。 私 が最 初 に本 論 文 に関 連 のある断 り行 動 について興 味 を持 ったのは、90 年 代 半 ばであっ た。留 学 生 10 万 人 計 画 からは 10 年 は過 ぎていたが、達 成 できなかった焦 りからか、受 け入 れ拡 大 が叫 ばれていたことを覚 えている。またそれから 10 年 経 ち、大 学 内 にも留 学 生 は増 え ているし、日 本 語 を教 える仕 事 を通 して、さらに接 する機 会 も増 えた。この 10 何 年 で確 かに研 究 は 進 ん で きて いる 。特 に接 触 場 面 研 究 は 飛 躍 的 に 増 え た と思 われ る 。しか し 、 本 当 に 清 (1997)で紹 介 されているような問 題 は解 決 されたのだろうか。 1997 年 に私 が行 った調 査 では 、依 頼 、勧 誘 に対 する断 り行 動 を収 集 し、会 話 参 加 者 に フォ ロ ーアップ ・インタ ビューを実 施 し、断 る者 のどのよ うな発 話 が逸 脱 と留 意 されていたかを 分 析 した。そ の結 果 、社 会 言 語 行 動 に関 係 したことが逸 脱 と留 意 されていること、そ して、そ れまでの研 究 でよ く分 析 されてきた発 話 の分 類 項 目 では 十 分 では ないことが明 らかになった。

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つまり、他 言 語 と使 用 率 などが比 較 されてきた言 い訳 や直 接 的 な断 り発 話 以 外 の発 話 によっ ても、断 りが伝 達 されているという、よく考 えれば当 然 の事 実 である。 日 本 で 行 われ る大 抵 の 日 本 語 講 座 は 、あいさ つ と初 級 文 法 か ら始 めら れているは ずだ。 文 法 を知 らなければ言 葉 を使 ってコミュニケーションできないし、間 違 った文 型 や活 用 を覚 え ても使 えない。しか し、文 法 以 外 の部 分 では 、何 が正 しくて何 が正 しくないのか の判 断 はとて も難 しい。そ のよ うなことまで取 り上 げるには 時 間 的 な余 裕 も必 要 で、分 か っていても現 実 的 にはできないことが多 いのではないかと想 像 される。ある文 化 の人 にとって普 通 のことでも、他 の文 化 の人 には 普 通 ではないことは様 々な面 で存 在 するだろう。学 習 者 からも“正 しさ”を求 められるため、どのよ うに説 明 すべきかは 難 しい点 であるが、正 しさでは なく、どのような(管 理 プロセスでの)評 価 が生 まれるかの違 いであると考 える。 本 研 究 では 、断 り行 動 に分 析 対 象 を限 定 せず、テーマを勧 誘 談 話 と設 定 し、内 部 でどの ようなやりとりが行 われ、どのように談 話 が構 築 されているのか、どのように承 諾 や断 りを共 有 し ているのか(あるいはできないのか)について分 析 を行 おうと考 えた。これは、断 りが内 包 される 談 話 において、どのようなやりとりが行 われているのか、接 触 場 面 に参 加 する者 にとっては、ど のよ うな点 に気 をつければ誤 解 を回 避 できるのかなどが、いまだ明 らか になっていないと感 じ ていたためである。 分 析 の時 には、勧 誘 者 である日 本 語 母 語 話 者 側 から分 析 したが、もし、非 母 語 話 者 が母 語 話 者 に否 定 的 に評 価 される発 話 を使 用 したとしても、非 母 語 話 者 の誤 りを責 めているので はなく、そのように評 価 される可 能 性 があることを指 摘 する、という立 場 で述 べた。(実 際 には、 はっきりとした否 定 的 評 価 は少 なく、間 違 いであると判 断 しやすい文 法 的 な誤 りは、勧 誘 談 話 の参 加 者 にとって、ほとん ど評 価 の対 象 外 であったが。)本 研 究 の調 査 方 法 は 、データ を大 量 に収 集 できるタ イプ では ないため、ただ一 人 の母 語 話 者 に否 定 的 に評 価 されたからといっ て、その人 だけ特 別 なのではないか、というご指 摘 もあることは 確 かだ。しかし、実 際 、否 定 的 に評 価 されればそ れは 一 つの事 実 なのである。そして、そ の原 因 を談 話 やインタ ビュー結 果 か ら分 析 すると、評 価 者 なりの評 価 した理 由 があることが分 か る。一 般 化 によ ってその小 さな 事 実 を削 除 してしまわず、様 々な状 況 や事 例 を情 報 として提 供 することが、接 触 場 面 を研 究 する者 の使 命 だと考 える。

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(i)

はじめに

第1章 本研究の目的と理論的枠組み

1.1. 本研究の目的 ...2 1.2. 本研究の背景 ...3 1.2.1. 言語哲学の観点からの分析...3 1.2.2. 語用論の観点からの分析...5 1.2.3. ポライトネス理論の観点からの分析 ...7 1.2.4. 接触場面の観点からの分析...12 1.3. 勧誘談話に関する先行研究 ...15 1.3.1. 海外における勧誘行動、断り行動に関する先行研究...15 1.3.2. 日本語の勧誘行動、断り行動に関する先行研究...16 1.3.3. 先行研究の問題点 ...17 1.4. 本研究の理論的枠組み...21 1.4.1. 勧誘、断りの定義 ...21 1.4.2. 勧誘談話の構造 ...21 1.4.2.1. 勧誘の談話構造 ...23 1.4.2.2. 境界発話...26 1.4.3. 言語管理理論による勧誘談話分析...27 1.4.4. 勧誘談話における2種類の管理...29 1.4.4.1. 勧誘談話管理 ...30 1.4.4.2. インターアクション管理 ...31 1.4.5. 承諾・断りのシグナル ...33 1.4.6. 接触場面における勧誘談話の言語管理プロセス ...36

第2章 調査

2.1. 調査目的 ...38 2.2. 先行研究での調査方法と問題点 ...38 2.3. 本調査の概要 ...42 2.3.1. 調査方法の開発 ...42 2.3.2. 調査期間・調査地・録音機材 ...44 2.3.3. 調査協力者 ...44 2.3.4. 調査手順 ...47 2.3.5. フォローアップ・インタビュー...48 2.4. 会話資料のデータ化...51 2.4.1. 文字化の方法 ...51 2.4.2. 勧誘談話部分の選定...51 2.4.3. 勧誘談話資料の紹介...52

第3章 発話、非言語行動の抽出とその分類

3.1. 勧誘談話における2種類の管理プロセス ...60 3.2. 発話、非言語行動の抽出方法 ...60 3.3. 抽出した発話、非言語行動の分類 ...65 3.4. 勧誘談話管理におけるシグナル【A】 ...68 3.4.1. 承諾類【A-1】...68 3.4.1.1. 感謝 (2件)...68

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(ii) 3.4.1.2. 希望 (5件)... 69 3.4.1.3. 興味・関心 (6件) ... 69 3.4.1.4. 実行意思 (4件) ... 69 3.4.2. 断り類【A-2】... 71 3.4.2.1. 意見 (4件)... 71 3.4.2.2. 遺憾 (3件)... 71 3.4.2.3. 事情・都合 (16件) ... 72 3.4.2.4. 実行不可 (1件) ... 72 3.4.2.5. 代案 (1件)... 73 3.4.2.6. 保留 (7件)... 73 3.5. インターアクション管理における留意された逸脱 ... 75 3.5.1. 情報の伝達・応答【B】... 75 3.5.1.1. 応答 (8件)... 75 3.5.1.2. 確認 (10件) ... 76 3.5.1.3. 確認要求 (47件) ... 76 3.5.1.4. 情報提供 (30件) ... 77 3.5.1.5. 情報要求 (28件) ... 77 3.5.2. あいづち・フィラー・非言語行動【C】 ... 78 3.5.2.1. あいづち (5件) ... 79 3.5.2.2. フィラー (3件) ... 80 3.5.2.3. 笑い (2件)... 81 3.5.2.4. 沈黙 (3件)... 82 3.5.2.5. 表情 (5件)... 82 3.5.3. その他の言語行動【D】 ... 83 3.5.3.1. はげまし (1件)... 83 3.5.3.2. ほめ (2件)... 83 3.5.3.3. 依頼 (1件)... 84 3.5.3.4. 評価 (3件)... 84 3.6. 勧誘者意識下の発話、非言語行動のタイプ ... 86 3.6.1. 勧誘談話行動に関する言語管理―勧誘談話管理― ... 87 3.6.2. インターアクションに関する言語管理―インターアクション管理―... 90 3.6.3. 例外 ... 91 3.7. 勧誘談話で留意される発話、非言語行動 ... 92

第4章 発話、非言語行動のシグナル化

4.1. 承諾、断りのシグナル... 96 4.2. カテゴリー別シグナル数... 96 4.3. 勧誘談話管理【A】のシグナル化... 99 4.3.1. 承諾類【A-1】 ―シグナル化した発話―... 99 4.3.1.1. 承諾類としての機能 (9件) ... 99 4.3.1.2. 発話位置の影響による断りシグナル化 (1件)... 104 4.3.2. 承諾類【A-1】 ―非シグナル化した発話―... 105 4.3.2.1. 発話音量の影響 (1件)... 105 4.3.2.2. 発話不理解の影響 (2件)... 106 4.3.2.3. 発話位置の影響 (1件)... 107 4.3.2.4. シグナル化報告なし (3件)... 108 4.3.3. 断り類【A-2】 ―シグナル化した発話― ... 110 4.3.3.1. 断り類としての機能 (17件)... 110 4.3.3.2. 発話位置 (1件) ... 119 4.3.4. 断り類【A-2】 ―非シグナル化した発話― ... 121 4.3.4.1. 発話内容に対する驚きの影響 (1件)... 121

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(iii) 4.3.4.3. 再処理 (1件)...126 4.3.4.4. 日本語不理解の影響 (2件)...127 4.3.4.5. その他 (3件) ...128 4.4. インターアクション管理【B、C、D】のシグナル化...132 4.4.1. 情報の伝達・応答【B】 ―シグナル化した逸脱― ...133 4.4.1.1. (承諾)遂行前提表現の影響 (2件) ...133 4.4.1.2. (承諾)興味を表す表現の影響 (3件)...134 4.4.1.3. (承諾・断り)NSの先行発話の影響 (3件)...136 4.4.1.4. (断り)否定的表現の影響 (6件) ...138 4.4.1.5. (断り)パラ言語的特徴の影響 (4件)...143 4.4.2. あいづち・フィラー・非言語行動【C】 ―シグナル化した逸脱―...146 4.4.2.1. パラ言語的特徴の影響 (5件)...146 4.4.2.2. 発話位置 (1件)...150 4.4.3. その他の言語行動【D】 ―シグナル化した逸脱― ...152 4.4.3.1. 発話位置 (1件)...152 4.5. インターアクション管理【B、C、D】のシグナル以外の逸脱 ...153 4.5.1. 情報の伝達・応答【B】 ...153 4.5.2. あいづち・フィラー・非言語行動【C】...179 4.5.3. その他の言語行動【D】...188 4.6. シグナル化の要因...193 4.7. 非シグナル化の要因...194 4.8. シグナル化しなかった逸脱...195 4.9. 勧誘談話における発話のシグナル化 ...196

第5章 シグナルと境界発話の関係

5.1. 境界発話 ...200 5.1.1. 境界発話の定義 ...200 5.1.2. 境界発話の認定 ...201 5.1.3. 談話上の位置 ...205 5.1.4. 境界発話の発話分類...207 5.1.5. 境界発話前後に現れた発話とそのシグナル化 ...208 5.1.5.1. 境界発話前に現れた逸脱とシグナル...210 5.1.5.2. 境界発話後に現れた逸脱とシグナル化...211 5.1.6. まとめ...212 5.2. A類境界発話談話のシグナルの連鎖 ...213 5.2.1. A-1(承諾)類境界発話談話のシグナル連鎖...213 5.2.1.1. 境界発話前にシグナルを含む談話 (3例) ...214 5.2.1.2. 境界発話前にシグナルを含まない談話 (3例) ...223 5.2.1.3. まとめ ...228 5.2.2. A-2(断り)類境界発話談話のシグナル連鎖 ...230 5.2.2.1. 境界発話前にシグナルを含む談話 (8例) ...231 5.2.2.2. 境界発話前にシグナルを含まない談話 (3例) ...255 5.2.2.3. まとめ ...262 5.3. B、C、D類境界発話のシグナル連鎖 ...263 5.3.1. B類境界発話談話におけるシグナル連鎖 ...263 5.3.1.1. 境界発話前にシグナルを含む談話 (4例) ...264 5.3.1.2. 境界発話前にシグナルを含まない談話 (2例) ...274 5.3.1.3. まとめ ...277 5.3.2. C類境界発話談話におけるシグナル連鎖 (1例) ...278 5.3.3. D類境界発話談話におけるシグナル連鎖 (1例) ...281

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(iv) 5.3.4. まとめ ... 284 5.4. 第1シグナルと境界発話の関係 ... 285 5.4.1. 第1シグナルが【A】類である談話 ... 287 5.4.2. 第1シグナルが【BCD】類である談話... 288 5.4.3. 第1シグナルが境界発話である談話... 289 5.5. 境界発話から見たシグナル発話の連鎖... 291 5.5.1. A類境界発話談話... 291 5.5.2. B、C、D類境界発話談話... 292 5.5.3. まとめ ... 293

第6章 接触場面勧誘談話における勧誘者 NS の母語規範適用

6.1. 接触場面勧誘談話で生じる誤解の発生原因... 296 6.2. 解釈パターン①: 勧誘談話管理(シグナル化規範)... 299 6.2.1. 〈事情・都合〉発話のシグナル化 (No.15談話の例) ... 299 6.2.2. 〈事情・都合〉発話の繰り返し (No.21談話の例)... 301 6.3. 解釈パターン②: インターアクション管理と勧誘談話管理(シグナル化規範)... 303 6.3.1. 〈あいづち〉のシグナル化 (No.21談話の例)... 303 6.3.2. 〈あいづち〉のシグナル化 (No.24談話の例)... 305 6.4. 解釈パターン③: 勧誘談話管理(進行規範)と勧誘談話管理(シグナル化規範) ... 307 6.4.1. フレームの移行部分で断りシグナルと解釈された例... 309 6.4.1.1. 第Ⅰフレームから第Ⅱフレームへの移行部分 (No.18談話の例) ... 309 6.4.1.2. 第Ⅱフレームから第Ⅲフレームへの移行部分 (No.14談話の例) ... 310 6.4.1.3. 第Ⅱフレームから別話題への移行部分 (No.24談話の例)... 312 6.4.2. 承諾シグナルと解釈された例 ... 314 6.4.2.1. 第Ⅰフレームから第Ⅱフレームへの移行部分 (No.07談話の例) ... 314 6.4.2.2. 第Ⅰフレームから第Ⅱフレームへの移行部分 (No.08談話の例) ... 316 6.4.2.3. 第Ⅱフレームから第Ⅲフレームへの移行部分 (No.07談話の例) ... 318 6.4.3. シグナル化しなかった例... 320 6.4.3.1. 第Ⅰフレームから別話題への移行部分 (No.14談話の例)... 320 6.4.3.2. 第Ⅲフレームから別話題への移行部分 (No.19談話の例)... 322 6.5. 接触場面勧誘談話における母語規範適用と解釈パターン... 324

第7章 結論

7.1. 勧誘談話に出現する発話とシグナル化される発話 ... 328 7.2. 勧誘談話上の位置とシグナル化の因果関係 ... 329 7.3. 接触場面勧誘談話の留意点... 330 7.3.1. 勧誘談話構造との関わりから... 331 7.3.2. 適用される規範との関わりから... 332 7.4. これからの勧誘談話研究にむけて... 333

参考文献

... 335

おわりに

談話資料

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第 1章

本 研 究 の目 的 と理 論 的 枠 組 み

本 章 では 、ま ず発 話 行 為 研 究 の流 れを概 観 し、 先 行 研 究 をまとめ 、勧 誘 談 話 を取 り上 げ る本 研 究 の位 置 付 けを行 う。そして、本 研 究 における理 論 的 枠 組 みを紹 介 し、勧 誘 、勧 誘 応 答 の捉 え方 、分 析 方 法 を説 明 する。 1.1. 本 研 究 の目 的 ... 2 1.2. 本 研 究 の背 景 ... 3 1.2.1. 言 語 哲 学 の観 点 からの分 析 ... 3 1.2.2. 語 用 論 の観 点 からの分 析 ... 5 1.2.3. ポライトネス理 論 の観 点 からの分 析 ... 7 1.2.4. 接 触 場 面 の観 点 からの分 析 ... 12 1.3. 勧 誘 談 話 に関 する先 行 研 究 ... 15 1.3.1. 海 外 における勧 誘 行 動 、断 り行 動 に関 する先 行 研 究 ... 15 1.3.2. 日 本 語 の勧 誘 行 動 、断 り行 動 に関 する先 行 研 究 ... 16 1.3.3. 先 行 研 究 の問 題 点 ... 17 1.4. 本 研 究 の理 論 的 枠 組 み ... 21 1.4.1. 勧 誘 、断 りの定 義 ... 21 1.4.2. 勧 誘 談 話 の構 造 ... 21 1.4.2.1. 勧 誘 の談 話 構 造 ... 23 1.4.2.2. 境 界 発 話 ... 26 1.4.3. 言 語 管 理 理 論 による勧 誘 談 話 分 析 ... 27 1.4.4. 勧 誘 談 話 における2種 類 の管 理 ... 29 1.4.4.1. 勧 誘 談 話 管 理 ... 30 1.4.4.2. インターアクション管 理 ... 31 1.4.5. 承 諾 ・断 りのシグナル ... 33 1.4.6. 接 触 場 面 における勧 誘 談 話 の言 語 管 理 プロセス ... 36

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1.1. 本 研 究 の目 的 依 頼 、ほめ、謝 罪 など発 話 行 為 に分 類 されるものは、哲 学 、社 会 、言 語 、文 化 などの観 点 か ら調 査 、研 究 さ れてきた(Cohen1996)。日 本 語 におけるそ れらの発 話 行 為 に関 しても、 他 言 語 (英 語 、 中 国 語 、 韓 国 語 、タ イ語 、スペイン語 、フランス語 等 )との対 照 研 究 が盛 ん に行 われてきている。しかし、以 前 から談 話 レベルで考 察 する必 要 があると指 摘 されているものの、 そ の分 析 方 法 は 表 現 形 式 やポ ライトネス・ストラテジーの分 類 などにとどまっているものが多 く、 また、会 話 参 加 者 の片 方 (つまり、依 頼 行 動 では 依 頼 者 )だけを取 り上 げており、参 加 者 の相 互 交 渉 を分 析 したものは少 ない。そ して、主 に取 り上 げられる言 語 行 動 は、「依 頼 、断 り、ほめ、 謝 罪 」などが多 く、 「勧 誘 」は あまり 注 目 さ れてこなか った。日 本 で生 活 する日 本 語 非 母 語 話 者 を考 え た時 、自 らの行 動 としては 依 頼 の方 が使 用 頻 度 が高 いのか もしれないが、誘 い/誘 われるという言 語 行 動 も、人 間 関 係 づくりには重 要 であろう。 勧 誘 行 動 とは 文 字 通 り、自 己 が良 いと思 っているものについて、勧 めたり誘 ったりする行 動 であるが、山 本 (2004)も指 摘 しているよ うに、被 勧 誘 者 側 が同 じよ うにそ れを良 いと評 価 する か は 勧 誘 を遂 行 するまでは 分 か らず、行 き過 ぎると押 しつけがましくなったり、強 制 したりする ことになる危 険 性 を孕 んでいる。つまり、依 頼 や断 りと同 じように FTA(Face Threatening Act: 1.2.3.参 照 )になる可 能 性 があると言 える。 被 勧 誘 者 側 については 、これまでの断 り研 究 、特 に誘 いの応 答 としての断 り研 究 が参 考 と な る が 、 実 際 に 「 誘 い 」 の 応 答 と し て 断 り を 見 て い る の は 、 藤 森 ( 1994 ) 、 元 ( 2000 ) 、 伊 藤 (2002a)、藤 原 (2003)、任 (2003)など、ごくわずか だ。 筆 者 が取 り組 ん でい る日 本 語 教 育 の観 点 か らは 、これ までの 日 本 語 の 勧 誘 、断 り行 動 の 特 徴 の研 究 とともに、母 語 話 者 と非 母 語 話 者 が接 触 した時 の会 話 で生 じる現 象 の分 析 も必 要 であると考 える。どのよ うに非 母 語 話 者 は インターアクションを行 い、問 題 が起 こった時 にど う処 理 しているか 、また、 母 語 話 者 は 非 母 語 話 者 とのやりとりをどのよ うに捉 え ているか 、など をまず調 べなければ、非 母 語 話 者 に対 応 策 を提 供 することもできないだろう。これまでの研 究 を見 ると、非 母 語 話 者 のアンケート回 答 やロ ールプ レイ会 話 を分 析 しているものはいくつか あ るが、実 際 の 会 話 を 扱 った研 究 は 少 なく 、接 触 場 面 における 勧 誘 談 話 でのやりと りを明 らか にしていない。 そこで、本 研 究 では勧 誘 談 話 の構 造 、特 に、勧 誘 者 と被 勧 誘 者 のやりとりから勧 誘 の結 末 (承 諾 /断 り等 )、談 話 終 了 に到 るまでを見 ていくことで、両 者 がどのよ うな発 話 や行 動 で勧 誘 談 話 を構 築 しているかを解 明 することを目 的 とする。特 に接 触 場 面 での勧 誘 談 話 をデータ と して扱 い、 母 語 話 者 と非 母 語 話 者 の 相 手 言 語 接 触 場 面 (Fan1994) で 生 じる 可 能 性 のある 問 題 を追 求 し、日 本 語 教 育 への応 用 に貢 献 したい。また、分 析 も調 査 者 の一 方 的 な分 析 に ならぬよう、会 話 参 加 者 へのインタ ビュー結 果 も適 宜 使 用 し、実 際 のインターアクションに則 し た分 析 を行 うことを目 標 とする。

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以 下 、発 話 行 為 に関 係 する研 究 、勧 誘 と断 りに関 する先 行 研 究 をまとめ、本 研 究 で取 り上 げる内 容 と理 論 的 枠 組 みを提 示 する。 1.2. 本 研 究 の背 景 言 葉 を 発 す る こ と 自 体 が あ る 行 為 を 成 す と い う 概 念 を 提 供 し て い る 発 話 行 為 理 論1は 、 1960 年 代 の言 語 哲 学 か ら発 展 した。しか し、哲 学 的 な探 究 ばか りでは なく、依 頼 や断 りなど の言 語 行 動 については様 々な分 野 から関 心 が寄 せられていた。例 えば、1980 年 代 のアメリカ では 、アルコールやタバコ、ドラッグの年 少 者 使 用 の対 策 の一 つとして、断 り能 力 の育 成 が注 目 さ れていたと いう (Kline&Floyd1990) 。また 、 第 二 言 語 教 育 で も、 学 習 者 言 語 の 研 究 か ら 語 用 論 的 視 点 が重 要 視 されるよ うになり、発 話 行 為 を語 用 論 的 に捉 えようとする研 究 が盛 ん になった。そ れぞれの分 野 で様 々な研 究 がなされてきたが、本 節 では そ れらを言 語 哲 学 、語 用 論 、ポ ライトネ ス 、そ して接 触 場 面 の 4点 か ら ま とめ、本 研 究 のテーマであ る勧 誘 談 話 にま つわる研 究 成 果 を概 観 する。 1.2.1. 言 語 哲 学 の観 点 からの分 析 発 話 行 為 についての分 析 は 、言 語 哲 学 の分 野 、具 体 的 には Austin(1962)によ り開 か れ たと言 っても過 言 ではない。その著 作 の中 で、発 話 行 為 は以 下 の3つに分 けられている。 発 語 行 為 (locutionary act) 発 語 内 行 為 (illocutionary act) 発 語 媒 介 行 為 (perlocutionary act) 声 を発 するという 「発 語 行 為 」、 発 話 によ りある行 為 を遂 行 する 「発 語 内 行 為 」、そ して 、そ の 発 話 の二 次 的 な影 響 による「発 語 媒 介 行 為 」である。例 え ば、「あした行 くよ」という言 葉 を A が B に向 けて発 した場 合 、「あした行 くよ」という言 葉 を発 することが「発 語 行 為 」、その言 葉 に より A と B が【約 束 】をしたならば、それは「発 語 内 行 為 」になり、そ して、発 語 内 行 為 により B が安 心 した場 合 には 、そ れが「発 語 媒 介 行 為 」になる。これらもただ発 話 だけのことでは なく、 適 切 な条 件 下 で適 当 な人 により発 せられなければその効 力 はない。

Searle( 1969) では 、そ れを適 切 性 条 件 (felicity conditions) として 行 為 の 成 立 条 件 を定 義 しようと試 みた。Request(依 頼 )の例 を引 用 する。

1 命 題 的 意 味 (locutionary meaning)と発 語 内 の力 (illocutionary force)の両 方 を持 つ文 ま

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Propositional content(命 題 内 容 ):Future act A of H. (聞 き手 Hによってなされる未 来 の行 為 A)

Preparatory(予 備 条 件 ):

1. H is able to do A. S believes H is able to do A.

( 聞 き 手 Hは A する こ と がで き る。 話 し 手 S は 聞 き 手 が A す る こと が でき る と 信 じ て い る) 2. It is not obvious to both S and H that H will do A in the normal course of

events of his own accord.

( 話 し 手 S と 聞 き 手 H の 双 方 に と って 、 聞 き 手 H が A す る こと は 自 明 では な い。) Sincerity(誠 実 性 条 件 ): S wants H to do A. ( 話 し手 Sは聞 き手 Hが A することを望 む。)

Essential( 本 質 条 件 ): Counts as an attempt to get H to do A. ( 聞 き 手 H が A す る 試 み と みな す。 ) Searle (1969: 66 日 本 語 訳 は筆 者) これらを、熊 取 谷 (1995)が依 頼 行 為 の違 反 例 から分 かりやすくまとめているので引 用 する。 (1) 昨 日 ここに来 てください。(命 題 内 容 条 件 の違 反 ) (2) 水 の上 を素 足 で歩 いて渡 ってください。( 予 備 条 件 1 の違 反 ) (3) (いままさにドアを締 めようとする人 に)ドアを締 めてください。(予 備 条 件 2の違 反 ) (4) (実 際 は窓 を開 けて欲 しくもないのに)窓 を開 けてください。(誠 実 性 条 件 の違 反 ) 熊 取 谷 (1995: 13) このように、適 切 性 条 件 は、ある発 話 が行 為 として成 立 するにはどのよ うな条 件 が必 要 か定 義 を試 みたものである。しか し、話 し手 (S)と聞 き手 (H)の関 係 はただの話 し手 と聞 き手 とだけ しか 考 え られておらず、よ く指 摘 される親 疎 関 係 や上 下 関 係 などは 含 まれていない。また、あ る一 つの発 話 についての定 義 しか 可 能 では ないが、発 話 行 為 (例 え ば依 頼 )が一 発 話 で終 わることの方 が少 ないことは 、我 々が経 験 的 に知 っていることである。そ して、依 頼 なら依 頼 者 、 断 りなら断 る者 からの一 方 向 からしか 見 ることができないという限 界 もある。ヴァンダーヴェーケ ン(1995)では Searle の出 した4つの条 件 (命 題 内 容 、予 備 、誠 実 性 、本 質 )のほかに、「達 成 の様 式 (Mode of achievement)」、「強 さの度 合 い(Degree of strength)」が付 け加 えられ、聞 き手 を考 慮 した設 定 にはなったものの、談 話 レベルを捉 えることは依 然 難 しいだろう。 言 葉 を発 する ことがある意 味 を持 った行 為 になる という視 点 は 、そ の後 の言 語 と行 動 につ いての研 究 に大 きな示 唆 を与 えたが、「言 語 哲 学 」というよ うに、言 語 にとらわれすぎ、そ の行 為 を遂 行 する者 の発 する言 葉 (発 話 )の一 部 しか 注 目 せず(できず)、前 後 の文 脈 や会 話 の 相 手 (その発 話 の受 け手 )は見 えてこないという問 題 点 がある。熊 取 谷 (1995)では 、「ことばを 使 って我 々は どのよ うに行 為 を遂 行 するか」から、「ことばのやりとりを通 してわれわれは どのよ うに行 為 を遂 行 するか 」という問 題 へと視 点 を移 動 する必 要 があると 指 摘 している。 この「こと

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ばのやりとり」というのは 、会 話 の受 け手 を含 め、談 話 レベルで考 察 すべきだと解 釈 でき、発 話 行 為 研 究 の進 展 には視 点 の転 換 が必 要 不 可 欠 であることを示 唆 しているだろう。 1.2.2. 語 用 論 の観 点 からの分 析 発 話 行 為 の言 語 行 動 については 、文 法 的 な面 か らだけでは 限 界 があり、どのような文 脈 で の使 用 かが大 きな影 響 を及 ぼすことから、語 用 論 における分 析 が注 目 されるようになった。 第 二 言 語 教 育 、外 国 語 教 育 の分 野 では 、1970 年 代 頃 か ら学 習 者 のおかす間 違 いの分 析 、いわゆる誤 用 分 析 の研 究 が始 まった。学 習 者 はなぜ間 違 うのか、その原 因 は何 かを解 明 するため、学 習 者 の言 語 の中 の誤 用 (誤 答 )についての分 析 が行 われた。この誤 用 分 析 によ り、第 一 言 語 からの転 移 や中 間 言 語 という現 象 が明 らかになった。しかし、どれが第 一 言 語 か らの転 移 で、ど れが中 間 言 語 なのか を指 摘 するこ と、文 法 以 外 の問 題 については 、何 をもっ て誤 りとするのかの判 断 が難 しいという問 題 がある。 日 本 語 教 育 の分 野 で発 話 行 為 、語 用 論 についての研 究 が急 速 に進 展 したのは、1990 年 代 に入 ってからだった。非 母 語 話 者 の生 み出 す発 話 には、母 語 からの語 用 論 的 な転 移 が含 まれていて、それは深 刻 な問 題 を引 き起 こす可 能 性 があるとして、1980 年 代 から本 格 的 に研 究 が始 まった。「依 頼 」については 1995 年 に、「ほ め」については 1996 年 に雑 誌 「日 本 語 学 」 で特 集 が組 まれたのが一 次 的 な研 究 のピークで、近 年 、依 頼 や断 りについて、日 本 語 と他 言 語 との対 照 研 究 が盛 んに見 られるようになり、2度 目 のピークを迎 えている。 Levinson(1983)からも分 かるように、語 用 論 (Pragmatics)の範 疇 には 、ダイクシス、会 話 の 含 意 、前 提 、発 話 行 為 、会 話 の構 造 などさまざまな現 象 が含 まれ、発 話 行 為 も内 包 されてい る2

Thomas(1983)では 語 用 論 的 知 識 は 、Sociopragmatic knowledge(社 会 語 用 論 的 知 識 ) と Pragmalinguistic knowledge(語 用 言 語 学 的 知 識 )に分 けられている。第 二 言 語 習 得 での 学 習 者 の誤 用 という観 点 から見 ると、社 会 語 用 論 的 失 敗 (学 習 者 の社 会 的 に不 適 切 な行 為 によ って起 こるもの)と、語 用 言 語 学 的 失 敗 (適 切 な方 法 でそ の意 味 を表 現 しないことによ っ て起 こるもの)に言 い換 え られる。この2種 で言 え ば、研 究 として発 話 行 為 が取 り上 げられる場 合 には、Pragmalinguistic(語 用 言 語 学 )に関 するものに、より注 目 が集 まっていた。つまり、あ る 行 為 を 遂 行 す る と き に ど の よ う な 言 葉 を 用 い て い る か と い う こ と で あ る 。 Gass & Houck (1999) では 、 断 りを 遂 行 する 日 本 語 母 語 話 者 が 英 語 を 使 用 する 時 、 語 用 言 語 学 的 ・社 会 文 化 的 知 識 や能 力 の 不 足 を補 うために、語 用 論 的 コミュニケーション・ストラテジーを使 用 し ていたことを報 告 している(Gass & Houck1999)。

2 ダイクシス(言 語 が発 話 の文 脈 の特 徴 を記 号 化 する方 法 )、会 話 の含 意 と前 提 (実 際 に言

語 としては記 号 化 されていない意 味 を伝 えるのに言 語 が用 いられる方 法 )、発 話 内 行 為 (述 べる、質 問 する、命 令 するなどの言 語 行 為 を遂 行 するための言 語 の使 用 )、会 話 の構 成 (やり とりが繰 り返 されながら会 話 が作 られる方 法 ) (エリス 1996 より)

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これまでの依 頼 行 動 や断 り行 動 の研 究 は、狭 義 の語 用 論 (清 水 2003)の範 囲 にあたり、場 面 に対 する表 現 の選 択 の部 分 しか 扱 っていない。ある場 面 に適 した表 現 を考 察 するというの は 、ある行 動 が成 立 するための条 件 を考 え ていた発 話 行 為 理 論 よ りは 扱 う範 囲 が広 くなって は いるが、会 話 の相 手 (相 互 行 為 の相 手 )が見 え ない点 では 同 じである。被 依 頼 者 が断 りを 暗 示 すると、依 頼 者 が断 りを促 すよ うなストラテジーを行 使 することがあるが、そ れは狭 義 の語 用 論 の範 囲 では 説 明 がつか ない。現 在 の「語 用 論 」を謳 った研 究 でも、「よ びか け」「依 頼 表 現 」「感 謝 」など 3 点 ほどを扱 っているだけで、会 話 相 手 との交 渉 は含 まれていない。本 研 究 は Pragmalinguistic(語 用 言 語 学 )の研 究 に含 まれるが、ある特 定 の発 話 だけではなく、発 話 と談 話 の関 係 を分 析 に盛 りこむことで、以 上 のような問 題 は克 服 できると考 える。 また、 語 用 論 の 観 点 か ら指 摘 されてい る、 語 用 論 的 なルー ルの 転 移 であるプ ラ グマテ ィッ ク・トランスファー(pragmatic transfer)についても 再 考 が必 要 である。転 移 には 文 法 的 な転 移 ばか り では な く、 語 用 論 的 な転 移 も 存 在 するが 、プ ラグマティ ック ・トラン スファ ーは 文 法 の ルールの転 移 とは 異 なり、転 移 による誤 りが発 生 したときも原 因 は 転 移 であるとは 気 づか れに くく、誤 解 を招 きやすいといくつかの研 究 (Beebe, et al.1990、生 駒 ・志 村 1993、藤 森 1994) で指 摘 されている3。確 かに母 語 ・母 文 化 からの転 移 、借 用 は あるため、調 査 結 果 による指 摘 は、日 本 語 非 母 語 話 者 にとって有 益 な情 報 を与 えるとは思 われる。しかし、母 語 ・母 文 化 から の転 移 だけを解 決 すれば、問 題 は すべて解 消 されるのだろうか 。語 用 論 的 転 移 という視 点 に ついて、以 下 のような批 判 もある。 このような Beebe らおよび生 駒 ・志 村 の研 究 に共 通 している問 題 意 識 は 「有 害 なトラ ンスファー」(生 駒 ・志 村 )という言 葉 に明 らかなように、第 二 言 語 を学 習 するということ を目 標 言 語 への完 全 な同 化 と捉 え、その視 点 から母 語 の規 則 を目 標 言 語 に持 ち込 んでいるかどうか (トランスファー)、そしてそのトランスファーされた母 語 の規 則 は 目 標 言 語 の規 則 に照 らしてどう評 価 さ れるものであるか を見 よ うというものである。このよ う な把 握 は しかしながら伝 達 能 力 の重 視 やバイリンガル教 育 を標 榜 しつつある外 国 語 教 育 の現 場 における直 感 からはかなりずれたものであるといわなければならない。 岡 崎 (1995: 97-98) これまでの中 間 言 語 研 究 で明 らか になってきているよ うに、言 語 学 習 の途 上 には 、母 語 に も目 標 言 語 にも どちらにも原 因 を 求 められない誤 用 が生 じたり 、目 標 言 語 のあるルー ルを過 剰 般 化 してしまう例 が見 られたりするように、転 移 だけでは 説 明 できない部 分 もある。言 語 、文 化 同 士 の比 較 も必 要 だが、同 時 に、実 際 にどのようなインタ ーアクションが行 われているのか 3 「発 話 行 為 上 の誤 りは、発 音 ・文 法 上 のそれよりも重 大 な誤 解 を引 き起 こすと思 われる。 (中 略 )特 に、上 級 レベルの学 習 者 は、表 面 的 には学 習 言 語 に流 暢 なため、この種 の誤 解 を 招 きやすいと思 われる。」(生 駒 ・志 村 1992)

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を解 明 する、ミクロレベルの調 査 も重 要 であると考 える。 1.2.3. ポライトネス理 論 の観 点 からの分 析 ポ ライトネ ス(Politeness )とは 、 「丁 寧 さ 」と 訳 さ れ ていたこと もあるが 、現 在 は よ り 広 義 の 意 味 を表 せるよ うに「ポライトネ ス」とカタカナのまま使 われることが多 い。日 本 語 には 言 語 的 な敬 語 体 系 があるが、それらも含 むよ り広 い概 念 を指 し、仲 間 内 の言 葉 遣 いや、敬 語 の範 囲 には 入 らない待 遇 表 現4もポライトネスに含 まれる。「お断 りします」と遂 行 動 詞 を丁 寧 体 で言 っても、 場 面 によっては 失 礼 になることがあるが、これは敬 語 だけで「丁 寧 さ」を表 現 することは不 可 能 であるためで、ポライトネスの観 点 が必 要 であることを表 しているだろう。

社 会 言 語 学 者 Goffman の face(面 子 、体 面 )5をもとに、人 類 学 者 の Brown & Levinson

(1978,1987)によりポライトネス理 論 は 確 立 された。彼 らによるとポライトネスとは、(a)言 語 がど のよ うに話 者 どうしの間 の社 会 的 距 離 (social distance)とそ の役 割 関 係 を表 すか 、(b)体 面 作 業 (face-work)、すなわち、会 話 が行 われている間 、顔 を立 ててつぶさないよ うにする試 み が、いかに言 語 社 会 で実 行 されるか、ということをさす。FTA(Face Threatening Act:Brown & Levinson1987)を行 使 する場 合 は 、どのよ うな方 法 でそ の侵 害 をなるべく小 さくするかが対 人 関 係 上 問 題 になることから、上 掲 書 では発 話 者 がどのように FTA に対 処 しているかについて、 下 図 のようにまとめている。face の侵 害 度 により、1 番 から 5 番 までのストラテジーを挙 げている が、数 字 が小 さい方 が face の侵 害 度 が大 きいストラテジーを表 す。

図 1: ストラテジーの選 択 (Br own & L evinson 1987: 60)

4 「待 遇 表 現 」という用 語 では表 現 上 の問 題 に限 定 されてしまう恐 れがあるとして、蒲 谷 他 (2003)では「待 遇 コミュニケーション」という術 語 を使 用 することを提 唱 している。 5 二 人 以 上 のコミュニケーションにおいて,他 の関 与 者 に対 して示 したり,示 そうとしたりする 自 分 自 身 の肯 定 的 なイメージや印 象 。(『ロングマン応 用 言 語 学 用 語 事 典 』) Do t h e FT A 5 . Do n’t do the FTA o n re co rd 4 . o f f re co rd wit h re d re s s i ve ac t io n 3 . n e g at ive p o l it e n e s s 2 . p o s it ive p o l it e n e s s 1 . w it h o u t re d re s s i ve a ct io n , b a ld l y

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1. without redressive action, baldly(直 接 的 に表 現 する) 2. positive politeness(ポジティブ・ポライトネス)

3. negative politeness(ネガティブ・ポライトネス) 4. off record(暗 示 する)

5. Don’t do the FTA(FTA を行 わない)

( 筆 者 訳 ) ポ ライトネ スの 原 理 は どの 社 会 ・文 化 に も 存 在 し、 対 人 関 係 に大 きく 関 わってい る。 ただ、 社 会 や 文 化 に よ っ て ど の 部 分 が 重 要 視 さ れ て い る の か が 異 な っ て い る よ う で あ る ( 井 出 他 1986)。 欧 米 ・日 本 におけるポ ライトネ ス研 究 については 、宇 佐 美 (2001b)が詳 しい。そ の中 で、ポ ライトネスに対 する4つのアプローチとして次 のようにまとめている。 (1) 規 範 的 捉 え方 (2) 会 話 の原 則 としての捉 え方 (3) フェイス保 持 のためのストラテジーとしての捉 え方 (4) 会 話 の契 約 としての捉 え方 宇 佐 美 (2001b)では上 記 の4つのうち、(2)から(4)が語 用 論 的 捉 え方 だとしている。そ して、 「ポ ライトネ スという用 語 自 体 の捉 え 方 やポ ライトネ ス研 究 の主 関 心 の違 いなどが 明 確 にさ れ ないまま「ポ ライトネ ス研 究 」という同 じ名 称 の枠 の中 で、まちまちな議 論 が展 開 されている」こ とが現 在 の問 題 点 であると指 摘 している。発 話 行 為 研 究 でもポライトネスに注 目 が集 まってい るが、その中 でポライトネ スという用 語 が使 われるときは、(3)の Brown & Levinson(1987)が 作 り上 げた 、フェ イス保 持 のストラテジーとして、( ある言 語 行 動 を遂 行 する 場 合 に)ある発 話 が使 用 されている、という観 点 で分 析 しているようだ。 依 頼 や断 りなど の研 究 の 中 には 、ポ ラ イトネ スを 分 析 の 観 点 に入 れてい る研 究 もい くつか 成 されている。まず、「依 頼 は FTA である」という視 点 で分 析 を進 めている研 究 は次 のようなも のがある。 北 尾 ・ 北 尾 (1988) : 依 頼 にお けるポ ライトネ スは 、依 頼 者 が 自 己 の 目 的 である 依 頼 内 容 を 達 成 して、しか も相 手 とよ い人 間 関 係 を保 つため の手 段 である。依 頼 者 は 、依 頼 さ れる 者 が感 じる負 担 の程 度 に応 じたポライトネスを使 用 する。 ナカミズ(1992): どの言 語 でもものを頼 むことは 聞 き手 に迷 惑 をかけ、自 分 のメンツをつぶす 可 能 性 がある行 為 である。 熊 谷 (1995): 依 頼 は、ポライトネスの議 論 にもしばしばとりあげられるように、相 手 に何 かを課

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す こ と で 、 権 利 や 自 由 を 侵 害 さ れ た く な い と い う 相 手 の negative face(Brown & Levinson1987)を損 なう恐 れがある。 浜 田 (1995): 依 頼 は 代 表 的 な FTA である。FT A を補 償 するためにどの言 語 もさまざまな方 略 を用 いているが、どのような手 段 で補 償 を行 うかは言 語 によって異 なり、異 文 化 摩 擦 の 原 因 ともなりうる。 このように、自 分 の望 みを叶 えるためには相 手 に負 担 をかけてしまう(negative face を侵 害 する FTA になってしまう)難 しい行 為 であるとして、依 頼 を遂 行 する際 には どのよ うなストラテ ジーを使 用 しているかの分 析 を行 っている。ほかに、Tanaka & Kawade (1982)、Blum-Kulka (1987)、大 倉 (2000)等 がポライトネスの観 点 から分 析 を行 っている。 また、断 りについても FTA であるという視 点 で進 められてきた研 究 がある。 藤 森 (1995): 「断 り」という発 話 行 為 は 、相 手 の意 向 に沿 え ないという点 で相 手 の領 域 を侵 しかねない行 為 である。 堀 江 (1995): 依 頼 される側 も、もし、その依 頼 を断 る場 合 、どう断 れば相 手 のメンツをつぶさ ずにうまく断 ることができるか 、そ の相 手 との従 来 の関 係 を維 持 することができるのかなど に心 を砕 かなければならない。 金 (2000): 断 りの「コミュニケーション・ストラテジー」が円 滑 なコミュニケーションを維 持 するた めのストラテジーとしての「ポライトネス」と深 く関 わっている。 断 りについてもこのよ うに、待 遇 コミュニケーションの観 点 から難 しさが指 摘 されている。このほ か、伊 藤 (2001a)でも FTA の要 因 の一 つである“負 担 の度 合 ”に注 目 し、分 析 を行 っている。 断 りの場 合 は 依 頼 と違 い 、自 己 の反 応 は 相 手 か らの何 らか の行 為 の遂 行 後 になるため、 自 分 の negative face を守 りつつ、どのようなストラテジーを用 いて断 る相 手 へ断 りを伝 達 する かが問 題 になる。確 かに依 頼 も断 りも FTA になりうる行 為 であり、FTA になりうることを分 かって 依 頼 したのに対 して、被 依 頼 者 が断 ることは FT A がさらに強 まるとも考 えられる。勧 誘 も相 手 の都 合 が関 係 する場 合 は FTA になるだろう。 「誘 い」については 分 析 にポライトネ ス理 論 を直 接 的 に使 用 している研 究 は 見 られないが、 「勧 め」についての分 析 を行 っている山 本 (2004a)が、待 遇 コミュニケーションの観 点 から指 摘 している。 山 本 (2004 a)6: 「勧 め 主 体 」は 、「勧 め」のやりとり に臨 む際 、「勧 められ主 体 」によ る「勧 め」 6 山 本 (2004a)の場 合 は、ポライトネスではなく待 遇 コミュニケーションであるが、待 遇 コミュニ ケーションとポライトネスの関 係 について、蒲 谷 (2003)は「用 語 の点 からだけ見 ると、「ポライト ネス」の持 つ、「丁 寧 さ」という用 語 との誤 解 が生 じやすい(中 略 )ポライトネスでは 軽 卑 表 現 や、

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の評 価 というものを、完 全 には 把 握 しきれないという点 を踏 まえ ておく必 要 がある。このよ うな点 において、 「勧 め」は 、「依 頼 」や 「誘 い 」など の様 々な「待 遇 コミュニケーシ ョン」の 中 でも、特 にやりとりの相 手 への表 現 上 の配 慮 というものが必 要 になると考 えられる。 日 本 語 の勧 誘 談 話 の分 析 を行 ったザトラウスキー(1993)では 、分 類 項 目 の1つに関 係 の ある項 目 が含 まれている。「気 配 り発 話 」と呼 ばれている発 話 だが、それについて以 下 のような 説 明 を行 っている。 《気 配 り発 話 》は 勧 誘 者 の発 話 であるが、断 わる 理 由 や「勧 誘 」に不 利 な情 報 、 否 定 的 な評 価 を含 む発 話 である。勧 誘 者 は 、被 勧 誘 者 が「勧 誘 」に対 する否 定 的 な態 度 を示 し、話 にあまり乗 ってこない時 にこの種 の発 話 を用 いて、被 勧 誘 者 に気 を配 り、被 勧 誘 者 が断 わりやすくする。 ザトラウスキー(1993: 76) ザトラウ スキー (1993) では 「 気 配 り」と しているが 、 これには ポ ライ トネ ス理 論 も関 係 して いると 考 えられる。被 勧 誘 者 が断 りを暗 示 したら、その状 況 を理 解 し、ネガティブ・フェイス(negative face)を補 償 するために「気 配 り 発 話 」をしていると考 え られる。筆 者 の以 前 の調 査 でも 、断 ら れた 時 のショ ックを やわらげ るために 初 めか ら 断 り 促 し7をつけて 依 頼 すると いう 、 自 己 のネ ガ ティブ・フェイスを守 るストラテジーとして使 用 するとも被 調 査 者 から報 告 されたことがある。 断 りを 選 択 する ことは 、Brown & Levinson (1987 )が図 式 化 した ストラテ ジー 選 択 の うち、 「FTA を行 わない(Don’t do the FTA)」以 外 のストラテジーを選 択 したと言 えるが、その後 の 流 れ の 中 で 、 直 接 的 に 言 う ( baldly on record ) 、 ポ ジ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ ト ネ ス ( positive politeness)あるいは ネ ガティブ ・ポ ライトネ ス(negative politeness)のいずれか を使 用 するだ けで終 わることが少 ないことは 経 験 的 にも予 想 され、また、これまでの研 究 か らも明 らかになり つつあることである。依 頼 や断 りに現 れるさまざまなストラテジーは 、ポライトネス理 論 のどのスト ラテジーにあたるか 説 明 することは 可 能 と思 われる。実 際 の断 り談 話 を見 てみると、「へー、面 白 そ うだね」など、直 接 的 に相 手 のポジティブ ・フェイス(positive face)を補 償 するものや、依 頼 や勧 誘 について情 報 要 求 することで間 接 的 にポ ジティブ・フェイスを補 償 するポジティブ・ポ ライトネス・ストラテジー(positive politeness strategy)が含 まれることがある。また、相 手 に好 意 的 な発 話 だけしていたのでは断 りが達 成 できないので、自 己 のネガティブ ・フェイスを守 るた めに断 りを暗 示 したりするストラテジーも使 用 することになるだろう。 以 上 のよ うな観 点 によ り、ポ ライトネ ス理 論 を用 い、発 話 行 為 を含 ん だ談 話 を分 析 していく だれかを貶 める表 現 までは扱 えないという点 もあります」とその違 いを説 明 している。ここでは 他 のポライトネスについての論 考 と分 析 態 度 は 同 じと考 え、他 と一 緒 に列 挙 した。 7 断 りを促 すような発 話 。例 えば「できなさそう?」「嫌 だったらいいけど」「別 にむりしなくても」 など。(例 は武 田 1997 より)

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とすれば、一 発 話 ずつストラテジーを認 定 していき、その連 鎖 を見 ていくことは可 能 だと思 われ る。ポライトネ ス理 論 では、負 担 をか けるかか けないか、かけるときはどのぐらいの負 担 をかける か という調 整 は 説 明 でき、また、談 話 が始 まってから終 わるまで、会 話 の参 加 者 は 様 々なスト ラテジーを行 使 しているとは 言 え る。しか し 、そ の 様 々なストラテジーを含 ん だ依 頼 、ある いは 断 りの談 話 は全 体 的 にどのような構 造 を持 っているのか、なぜそこでそのストラテジーを使 用 し なければならないのかを説 明 するのは 難 しいのではないか 。これまでの断 り行 動 の研 究 で、ポ ライトネス理 論 を有 効 に使 っている研 究 をまだ目 にしていないのは、このよ うな点 に原 因 がある のではないか。宇 佐 美 (2001b)では 、「一 発 話 行 為 レベル、多 くて幾 つかの発 話 行 為 の連 鎖 (sequence)レベルの分 析 に留 まっており、よ り長 い談 話 におけるポライトネ スをうまく説 明 でき ない」(p.24)、「 聞 き手 の側 か らの観 点 、及 び、 話 者 の相 互 作 用 の観 点 が、この理 論 には 充 分 に組 み込 まれていない」(p.25)と指 摘 されている。これは、上 述 のよ うに、談 話 の中 のポライ トネ ス・ストラテジーを一 つずつ特 定 することは できるが、その連 鎖 の要 因 を説 明 できないか ら だろう。 また、語 用 論 の 分 野 で 指 摘 さ れている、 非 母 語 話 者 である ことが招 く、 特 有 の 問 題 を 取 り 上 げる場 合 には 適 さないと考 え る。これまでの研 究 を見 ると、ある母 語 の人 は どのよ うなストラ テジーを選 択 することが多 いか 、というよ うな全 体 的 な傾 向 を出 していく分 析 になることが多 く、 場 面 や文 脈 、接 触 場 面 (次 節 参 照 )の影 響 などは考 慮 されていないと考 えられるためである。 日 本 語 教 育 な どの外 国 語 教 育 ・ 第 二 言 語 教 育 に反 映 させるた めには 、そ のよ うな大 きな 観 点 からの調 査 研 究 とともに、ミクロのレベル(どのような要 因 に基 づきどのような調 整 を行 ってい るのか)を扱 った調 査 研 究 も不 可 欠 であると考 える。

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1.2.4. 接 触 場 面 の観 点 からの分 析

第 二 言 語 習 得 の研 究 は、学 習 者 言 語 の分 析 から発 達 した領 域 だが、母 語 ・母 文 化 が違 う 相 手 とのインタ ーアクションとしてもう少 し広 い視 点 で捉 え た、接 触 場 面 研 究 と呼 ぶことができ る研 究 が、近 年 増 え てきている。Neustupný(1996 )には 、日 本 研 究 について次 のよ うな指 摘 がある。

The study of Japan can be divided into two streams: the study of native situations, where foreign elements are not of basic importance, and the study of contact situations in which at least one foreign element plays a major role. 日 本 に 関 する 研 究 は 2 つ の 流 れ に 分 け るこ と が で きる: 外 国 の 要 素 は 基 本 的 に 重 要 視 さ れ な い、 母 語 場 面 に 関 する 研 究 、 およ び、 少 なく と も 1 つ の 外 国 の 要 素 が 主 な 役 割 を 果 た す 接 触 場 面 に 関 す る 研 究 で あ る。 Neustupný(1996: 208) 筆 者 訳 ネ ウ ス ト プ ニ ー は 、 外 国 の 要 素 の 有 無 に よ り native situations ( 母 語 、 又 は 内 的 場 面 ) と contact situations(接 触 場 面 )の 2つに分 けてい る。前 者 は 、研 究 者 が様 々な 文 を作 り、 非 文 か どうか を検 証 するものや、小 説 か ら抜 き出 した例 文 を分 析 するよ うなタ イプ の研 究 で、言 語 学 などで伝 統 的 に行 われてきたものを指 しており、後 者 は 、これまでの学 習 者 言 語 の分 析 や異 文 化 間 コミュニケーションの特 徴 に関 する研 究 があてはまるだろう。 接 触 場 面 という概 念 は、1981 年 の日 本 語 教 育 45 号 に、「外 国 人 の日 本 語 の実 態 」という タイトルのもと、7 編 の論 文 が掲 載 されたことで、日 本 に紹 介 された8。その巻 頭 論 文 では 、以 下 のような指 摘 がある。 日 本 語 教 育 の目 的 が、日 本 語 を外 国 人 の話 し手 に使 わせることにあるなら、外 国 人 の話 し 手 が実 際 に日 本 語 をどのよ うに使 っている か を研 究 してみる 価 値 があるは ず である。 ネウストプニー(1981: 30) 接 触 場 面 の 対 に な る 概 念 が 、 母 語 場 面 ( ま た は 、 内 的 場 面 : internal situation ) で あ る 。 ファン(2003)では、「接 触 場 面 という用 語 は、母 語 場 面 (native situations)と区 別 して使 われ、 異 なる言 語 、文 化 背 景 をもつ参 加 者 間 のインターアクションの場 面 を示 している」とまとめられ ている。簡 単 にまとめると次 のようになる。

8 接 触 場 面 の概 念 は、1970 年 代 から foreign language use situation(外 国 語 使 用 場 面 )と

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母 語 場 面 (母 国 語 場 面 )native situations: 話 し手 のすべてが母 語 話 者 の場 面 接 触 場 面 (外 国 人 場 面 )contact situations: 外 国 人 が参 加 する場 面 接 触 場 面 については さらに分 析 が進 ん でいる。母 語 が同 じ英 語 であっても、アメリカ人 とイ ギリス人 のインターアクションのパターンがまったく同 じではないのは容 易 に想 像 できるが、この ようなことから、Fan(1994)では、接 触 場 面 をさらに3つに分 けている9 接 触 場 面 の概 念 が発 表 された初 期 の段 階 では「外 国 人 場 面 」と呼 ばれていたように、接 触 場 面 には 、foreign speaker(外 国 人 話 者 )が含 まれていること、semantic uncertainty(意 味 の 不 確 か さ ) や switching ( 切 り 替 え ) が 発 生 す る こ と な ど が 特 徴 と し て 挙 げ ら れ る (Neustupný1974)。これらの他 に、次 のような特 徴 がある。 a) 発 話 が開 始 される前 の外 国 人 話 者 の予 想 や計 画 に関 する特 徴 b) 実 際 に 発 話 が 開 始 さ れ た 後 、 外 国 人 話 者 が 直 面 す る 問 題 と そ の 処 理 に 関 す る 特 徴 c) 発 話 が終 わった後 の外 国 人 話 者 の意 識 (例 えば、自 分 自 身 のコミュニケーションの 結 果 の評 価 などに関 する特 徴 ) ネウストプニー(1981: 31) これら、事 前 ・事 中 ・事 後 訂 正 や他 者 ・自 己 訂 正 などの訂 正 (調 整 )行 動 も特 徴 の一 つである が、これらは接 触 場 面 の参 加 者 全 員 に生 じ、外 国 人 話 者 (あるいは 非 母 語 話 者 )だけに生 じ る現 象 ではないことも、これまでの接 触 場 面 研 究 で明 らかになってきている。 日 本 人 には単 一 民 族 思 想 が強 いが、日 本 にも様 々な人 が住 ん でいることは 自 明 であり、ま た、生 活 の多 様 化 により海 外 からの帰 国 生 も増 えてきている今 日 では、母 語 場 面 と接 触 場 面 の区 別 はかなり難 しくなってきているのは 事 実 である1 0。しか し、現 実 的 には 、インタ ーアクショ ン上 に何 らかの問 題 が生 じた時 、相 手 が異 文 化 出 身 の場 合 には 、相 手 文 化 と自 己 の文 化 と の差 異 に結 論 を求 めたり、相 手 の人 格 の問 題 にしてしまうことが多 いのではないか。ネウストプ ニー (1981 ) で「 外 国 人 話 者 が 日 本 語 と は じ めて 接 触 す るのは 、ほ とん どの 場 合 、こ のよ うな 「外 国 人 場 面 」(foreign user situation)の一 ケースの教 室 場 面 であるし、その後 の数 年 間 、 外 国 人 場 面 にしか 参 加 しないであろ う」と指 摘 さ れているよ うに、そ の場 面 に参 加 している外 国 人 話 者 が 、母 語 話 者 によ って「準 母 語 話 者 」と して認 めら れない限 り、 接 触 場 面 か ら 抜 け

9 cognate variety contact situations(共 通 言 語 接 触 場 面 )、partner variety contact

situations(相 手 言 語 接 触 場 面 )、third-party variety contact situations(第 三 者 言 語 接 触 場 面 )

1 0 日 本 語 教 育 では逸 脱 と留 意 される NNS の話 し方 が接 触 場 面 で受 けいれられたり、母 語 場

面 のようなホスト・ゲスト関 係 (ファン 1998b)が見 られたりしたケースが紹 介 されている(武 田 2000)。

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出 すことも難 しい。このような点 からも、接 触 場 面 の分 析 は 重 要 であろう。また、接 触 場 面 と母 語 場 面 が根 本 的 に違 うなら、母 語 場 面 の分 析 結 果 を日 本 語 教 育 に応 用 することは難 しいは ずである。(接 触 場 面 の規 範 については、ファン 2003、加 藤 2002、フェアブラザー2002 等 で 考 察 されている。) 「接 触 場 面 」という言 葉 がキーワードやタイトルに含 まれていなくとも、日 本 語 非 母 語 話 者 の 発 話 や、参 加 している場 面 を分 析 対 象 として取 り上 げている研 究 は、接 触 場 面 研 究 と言 える だろう。発 話 行 為 に関 する研 究 についても、そ のよ うな捉 え 方 をすれば接 触 場 面 研 究 の数 は 増 え てきてお、日 本 語 教 育 の分 野 でも、接 触 場 面 への関 心 が高 まっているという現 れと言 え るだろう。

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1.3. 勧 誘 談 話 に関 する先 行 研 究 本 研 究 に関 係 する勧 誘 と断 りについての先 行 研 究 をまとめ、問 題 点 を明 らかにする。先 行 研 究 の調 査 方 法 については第 2章 で本 調 査 の紹 介 とあわせてまとめる。 1.3.1. 海 外 における勧 誘 行 動 、断 り行 動 に関 する先 行 研 究 海 外 での調 査 研 究 で も、依 頼 や 断 りについての文 献 は 多 数 あるが、勧 誘 のみを扱 った研 究 は管 見 の限 り見 られない。

依 頼 に 関 す る 代 表 的 な 研 究 と し て 、 Blum-Kulka, House & Kasper ( 1989 ) の Cross Cultural Speech Act Realization Project(CCSARP)が挙 げられる。謝 罪 と共 に大 規 模 な調 査 が 行 わ れ 、 言 語 ・ 文 化 に よ る 差 を 報 告 し 、 こ の 時 に 作 成 さ れ た 分 析 方 法 ( Coding Manual1 1)は 日 本 語 の発 話 行 為 分 析 にも 影 響 を与 え た。同 じ方 法 によ る9言 語 調 査 が日 本 語 非 母 語 話 者 を対 象 に行 われている1 2。ほ か に、談 話 完 成 型 テスト( DCT )を初 めて発 話 行 為 研 究 で使 用 し、アメリカ人 ヘブライ語 学 習 者 の依 頼 について調 査 した Blum-Kulka(1982、 1987 ) 、 韓 国 人 英 語 学 習 者 と 英 語 母 語 話 者 の 依 頼 表 現 選 択 に つ い て 比 較 し て い る Suh (1999) 、韓 国 語 母 語 話 者 と 韓 国 語 非 母 語 話 者 ( 韓 国 系 アメリカ人 )の 依 頼 ・ 謝 罪 につ いて の比 較 を行 った Koo(2001)、ビジネス場 面 の依 頼 を取 り上 げた Yeung(1997)、ポライトネスの 観 点 から依 頼 の直 接 性 について調 査 した Afifi & Lee(2000)などがある。

「断 り(refuse)」については 、コミュニケーション研 究 以 前 に、年 少 者 の喫 煙 、アルコール防 止 対 策 の中 で取 り上 げられていた(Kline & Floyd 1990)という報 告 がある。近 年 、もちろん、 コミュニケーション問 題 として取 りあげられているが 、学 習 者 を対 象 者 にした研 究 (Beebe, et al.1990、Hayashi1992、Houck & Gass1997、Gass & Houck1999)のほかは、母 語 ・文 化 によ る差 異 を明 らかにする研 究 が行 われている(Saeki & O’Keefe1994 によるアメリカ人 と日 本 人 の比 較 、Nelson, et al.2002 のアラビア語 と英 語 の比 較 研 究 がある)。調 査 方 法 や分 析 方 法 に工 夫 が見 られる研 究 としては、工 場 労 働 者 の談 話 を分 析 データとし、ある語 彙 の使 用 実 態 か らそ の場 面 における機 能 を見 出 そ うと した Daly, et al.(2004)、 英 語 学 習 者 を対 象 に 行 ったロールプレイを分 析 データ とし、非 言 語 行 動 まで含 めた断 りの分 析 を行 った Houck & Gass ( 1997 ) 、 Gass & Houck ( 1999 ) 、 電 話 に よ る 調 査 を 行 っ た Kawate-Mierzejewska (2002)などがある。

依 頼 や断 りのほ か 、ほ めなどについて研 究 を行 っている研 究 者 が、よ りよ い調 査 方 法 につ

1 1 依 頼 については Head Acts(依 頼 を遂 行 できる最 小 単 位 の要 素 )、Alerters(呼 びかけ等 )、

Supportive Moves(依 頼 に付 属 し、負 担 を重 くしたりやわらげたりする効 果 を発 揮 する要 素 ) の大 きく3つに分 け、構 成 要 素 の分 類 を行 っている。

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いて考 察 を行 っているところが日 本 語 とは 異 なる情 況 である1 3。Rose (1992、1994:依 頼 )を

筆 頭 に、Cohen (1996:発 話 行 為 )、Beebe & Cummings (1996:依 頼 )、Turnbull(2001:依 頼 )、Golato(2003:ほめ)などがそれぞれ最 善 の調 査 方 法 を検 討 している。 1.3.2. 日 本 語 の勧 誘 行 動 、断 り行 動 に関 する先 行 研 究 これまで、勧 誘 行 動 は 依 頼 やほ めなどと同 じよ うに、発 話 行 為 の一 つとされながら、注 目 さ れることは 少 なか った。誘 い表 現 について 日 本 語 と英 語 の比 較 分 析 をした 姫 野 (1991)を始 めとし 、 勧 誘 の 談 話 を 考 察 し た 筒 井 (2002 )、 鈴 木 (2003 ) 、日 本 語 の 誘 いを 待 遇 表 現 の 観 点 か ら分 析 した川 口 ・蒲 谷 ・坂 本 (2002)、伊 藤 (2001b:依 頼 と一 緒 に収 集 )等 は あるが、依 頼 行 動 の研 究 に比 べるとまだ数 は 少 ない。そ して、実 際 の勧 誘 談 話 を分 析 しているのは ザト ラウスキー(1993)、ファン(1998a)、武 田 (2004)に限 られているよ うだ。その他 、勧 めについて は 斎 (1998 、2003) 、姫 野 (2000 )、 山 本 (2004a 、 2004b )、 誘 い 表 現 の アクセ ントについては 福 岡 ( 2001 ) な ど で 考 察 さ れ て い る 。 本 研 究 で は 勧 誘 者 だ け を 見 る の で は な く 、 勧 誘 の イ ン タ ーアクション全 体 を考 察 に 含 めるため、断 り行 動 も当 然 含 まれる 。勧 誘 に 関 する先 行 研 究 が乏 しいため、本 研 究 の調 査 方 法 や分 析 方 法 などの計 画 時 には 、断 り行 動 の研 究 を参 照 し た。 日 本 語 の「断 り」についての研 究 は、一 番 古 いものは Ueda(1974)の論 考 があるものの、そ の後 は森 山 (1990)や生 駒 ・志 村 (1993)など、1990 年 代 前 半 まで見 られない。生 駒 ・志 村 ら の研 究 は 、Beebe, et al.(1990)の研 究 をもとに日 本 語 での断 り行 動 について分 析 を行 った 最 初 の研 究 であるが、以 降 の日 本 語 (教 育 )の分 野 で扱 われる断 り行 動 の研 究 の発 展 に大 いに寄 与 し たと言 え るだろ う。 生 駒 ・ 志 村 (1993) の調 査 ・ 研 究 時 か ら指 摘 されているよ うに、 当 初 は 「発 話 行 為 上 の誤 りは 、文 法 上 の誤 りと違 い、人 格 上 の問 題 と誤 解 されやすい」という 語 用 論 的 な視 点 か ら注 目 されていた。 以 後 、 多 く は 日 本 語 とそ の他 の言 語 との対 照 研 究 の 様 相 を呈 し、現 在 までに、英 語 との対 照 研 究 のほ かに、中 国 語 、韓 国 語 、フランス語 、マレー 語 、タイ語 などの研 究 が見 られる(依 頼 についてはドイツ語 、スペイン語 も調 査 されている)。 断 り行 動 の研 究 で、アンケートやロ ールプレイ調 査 を実 施 する際 、誘 いについての断 りも一 緒 にデータ収 集 している研 究 がいくつか 見 られる。生 駒 ・志 村 (1993)を筆 頭 に、ラオハブラナ キット(1995)、村 井 (1998)、武 田 (1998)、荒 巻 (1999)等 があるが、藤 森 (1994)、元 (2000)、 伊 藤 (2002a)、藤 原 (2003)、任 (2003)等 は誘 いに対 する断 りのみを分 析 対 象 にしている。 代 表 的 な断 り行 動 の研 究 としては、まず、Beebe, et al.(1990)と、その同 じ調 査 を日 本 語 において行 った生 駒 ・志 村 (1993)が挙 げられる。この2つは 、語 用 論 的 転 移 の存 在 を指 摘 し ていたが、同 じよ うに語 用 論 的 転 移 の有 無 を考 察 している研 究 には 、藤 森 (1994、1995)、岡 1 3 日 本 語 の分 野 でも、熊 取 谷 (1995)、小 玉 (1996)、武 田 (1999)などで談 話 レベルでの考 察 を行 うべきだという指 摘 はされているがまだ少 ない。

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崎 (1995)、ルンティーラ(2004)がある。また、待 遇 表 現 、ポライトネ ス・ストラテジーの観 点 から 分 析 した研 究 として 、熊 井 (1993) 、 志 村 ( 1995 )、 伊 藤 ( 2001a)、 元 (1999b 、2003)が 、断 り の 方 略 ( ス ト ラ テ ジ ー ) の 観 点 か ら 分 析 し て い る 研 究 に 、 森 山 ( 1990 ) 、 魚 住 ( 1994 ) 、 村 井 (1998 )、 顧 ・ 趙 ・董 (2000) 、任 (2003)など がある 。そ の他 、断 り 表 現 に 着 目 した 研 究 (野 村 1992、Kanemoto1993、馬 場 ・禹 1994、藤 巻 1996、山 口 1997、ラオハブラナキット 1997、鮫 島 1998、小 野 ・劉 1998、加 納 ・梅 2002、任 2004)や、断 り表 現 の理 解 度 を調 査 した研 究 (目 黒 1994・1996、小 野 1998)、日 本 語 教 科 書 に見 られる断 り表 現 の分 析 (ラオハブラナキット 1995)がある。以 上 のような先 行 研 究 により明 らかになったことは次 のようにまとめられる。 ・ 文 法 的 に正 しい日 本 語 でもその文 脈 に合 わなければ(発 話 意 図 を)誤 解 される。 ・ 日 本 語 母 語 話 者 のストラテジー・パタ ーンと、非 母 語 話 者 のストラテジー・パタ ーンは 異 なる点 が存 在 する。 ・ 文 化 により、言 語 行 動 の捉 え方 が違 う。 ・ 言 語 ・文 化 により、その言 語 行 動 時 に使 用 するストラテジー(のイメージ)に差 がある。 このほか、言 語 ごとの傾 向 や、母 語 別 の非 母 語 話 者 が使 用 する表 現 やストラテジーの傾 向 な どの蓄 積 がある程 度 できてきていると言 える。 1.3.3. 先 行 研 究 の問 題 点 日 本 語 に おける 発 話 行 為 研 究 でも 接 触 場 面 を 対 象 と した研 究 は 増 え てきては いるが、ま だ不 十 分 であることがまず挙 げられる。接 触 場 面 の重 要 性 は 1.2.4.で述 べたが、調 査 対 象 が 母 語 場 面 であるか 接 触 場 面 であるか で依 頼 ・断 り ・ほ め等 の先 行 研 究 を分 けると 以 下 のよ う になる。 ● 母 語 場 面 ① 調 査 者 の内 省 により(又 は母 語 との対 照 により)言 語 の特 徴 を見 出 そうとする研 究 【ある一 種 類 の母 語 場 面 の分 析 】 Ueda(1974) 、 森 山 (1990 )、 野 村 ( 1992) 、Hayashi(1992) 、 ザトラ ウ スキー (1993) 、 Ma(1996)、川 口 ・蒲 谷 ・坂 本 (2002)他 ② 言 語 の違 いによる表 現 方 法 、ストラテジーの比 較 を行 っている研 究 【2つ以 上 の母 語 場 面 同 士 の比 較 ・分 析 】

Hill, et al(1987)、Blum-Kulka(1987)、姫 野 (1991)、Kanemoto(1993)、張 (1993)、 西 光 ( 1993 ) 、 Saeki & O’Keefe (1994)、Yeung ( 1997 ) 、 顧 ・ 趙 ・ 于 ( 1998 ) 、姫 野 (2000)、田 中 (2001)、Nelson, et al.(2002)他

図   1:  ストラテジーの選 択   (Br own & L evinson  1987: 60)
表   2:  調 査 協 力 者 属 性   NS:勧 誘 者   NNS:被 勧 誘 者   性 別 出身地 方 年齢 専門 性別 出身国 レベル 滞日年数 年齢 身分 専門 女   関 東   20 前   文 系   1  女   中   初   7ヶ月   20 後   研 究 生   理 系   女   関 東   20 前   理 系   2  女   中   日   2ヶ月   20 前   短 期   日 本 語   女   関 東   10 後   文 系   3  女   中   日
表 4:  カ テゴリー別 シグナル数   分 類 名   y  n  z  -  小 計     合 計   感 謝   1  0  1  2  希 望   2  1  2  5  実 行 意 思   5  0  1  6 【A-1】 承 諾 類   興 味 ・関 心   1  0  3  4  17  (8.6%)  意 見   0  2  2  4  遺 憾   0  1  2  3  事 情 ・都 合   0  10  6  16  実 行 不 可   0  0  1  1  代 案   0  1

参照

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