• 検索結果がありません。

複製 転載禁止 The Japanese Society of Gastroenterology, 2015 日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン 2015( 改訂第 2 版 ) Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Peptic U

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "複製 転載禁止 The Japanese Society of Gastroenterology, 2015 日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン 2015( 改訂第 2 版 ) Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Peptic U"

Copied!
212
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本消化器病学会

消化性潰瘍診療ガイドライン 2015(改訂第 2 版)

(2)

日本消化器病学会消化性潰瘍診療ガイドライン作成・評価委員

会は,消化性潰瘍診療ガイドラインの内容については責任を負う

が,実際の臨床行為の結果については各担当医が負うべきである.

消化性潰瘍診療ガイドラインの内容は,一般論として臨床現場の

意思決定を支援するものであり,医療訴訟等の資料となるものでは

ない.

日本消化器病学会 2015 年 4 月 1 日

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(3)
(4)

— iv —

日本消化器病学会は,2005 年に当時の理事長であった跡見

裕先生の発議によって,Evidence-Based Medicine

(EBM)の手法に則ったガイドラインの作成を行うことを決定し,3 年余をかけ,

2009〜2010 年に消化器 6 疾患のガイドライン(第一次ガイドライン)を完成・上梓した.6 疾患

とは,胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,肝硬変,クローン病,胆石症,慢性膵炎であり,

それまでガイドラインが作成されていない疾患で,日常臨床で診療する機会の多いものを重視

し,財団評議員に行ったアンケート調査で多数意見となったものが選ばれた.2006 年の第 92 回

日本消化器病学会総会の際に第 1 回ガイドライン委員会が開催され,文献検索範囲,文献採用

基準,エビデンスレベル,推奨グレードなど EBM 手法の統一性についての合意と,クリニカル

クエスチョン(CQ)の設定など基本的な枠組みが合意され,作成作業が開始された.6 疾患のガ

イドライン作成では,推奨の強さのグレード決定に Minds(Medical Information Network

Dis-tribution Service)システムを一部改変し,より臨床に則した日本消化器病学会独自の基準を用い

た.また,ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)が当時,社会的問題

となっており,EBM 専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員の COI を公開し

た.菅野健太郎前理事長のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として行われたガイド

ライン作成は先進的な取り組みであり,わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したもの

として大きな価値があったと評価できる.日本消化器病学会は,その後,6 疾患について「患者

さんと家族のためのガイドブック」も編集・出版し,治療を受ける側の目線で解説書を作成す

ることによって,一般市民がこれら消化器の代表的疾患への理解を深めるうえで役立ったと考

えている.

第一次ガイドライン作成を通じて,日本消化器病学会は消化器関連の Common Disease に関

するガイドラインの必要性と重要性の認識を強め,さらに整備する必要度の高い疾患について

評議員にアンケートを行い,2011 年から機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),

大腸ポリープ,NAFLD/NASH の 4 疾患についても,診療ガイドライン(第二次ガイドライン)

の作成を開始した.一方では,これら 4 疾患の診療ガイドラインの刊行が予定された 2014 年に

は,第一次ガイドラインも作成後 5 年が経過するため,いわゆる Sunset Rule(日没ルール:作成

から長期経過したガイドラインは妥当性が担保できないため,退場させる取り決め)に従い,先

行 6 疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行うこととなった.2011 年 11 月 9 日に 6 疾患の第

1 回改訂委員会が開催され,改訂の基本方針が確認された.改訂版では第二次ガイドライン作

成と同様,国際的主流となっている GRADE(The Grading of Recommendations Assessment,

Development and Evaluation)システムの考え方を取り入れて推奨の強さを決定することとした.

このシステムは,単にエビデンスに基づいて推奨の強さを決めるのではなく,患者さんへの有

益性,費用まで考慮し,たとえ比較対照試験であってもその内容を精査・吟味してエビデンス

レベルを決定するなど,アウトカムにとって有用かどうかを重視する立場に立っており,患者

さんの立場により則したガイドライン作成に有用と考えられた.また,完成後に改訂版は Journal

of Gastroenterology

に掲載することが予定されており,世界的趨勢である GRADE システムの考

え方を取り入れることで国際的ガイドラインとしての位置づけを強化する狙いもあった.

日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって

(5)

版に比べて内容的により充実し,記載の精度も高まるものと期待している.

最後に,ガイドライン委員会の前担当理事として多大なご尽力をいただいた木下芳一理事,

渡辺 守理事,ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに

評価委員会の諸先生,刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御

礼を申し上げたい.

2015 年 4 月 日本消化器病学会理事長

下瀬川 徹

(6)

— vi —

委員長

木下 芳一

島根大学第二内科

副委員長

渡辺  守

東京医科歯科大学消化器内科

委員

荒川 哲男

大阪市立大学消化器内科学

上野 文昭

大船中央病院

西原 利治

高知大学消化器内科

坂本 長逸

日本医科大学消化器内科学

下瀬川 徹

東北大学消化器病態学

白鳥 敬子

東京女子医科大学消化器内科

杉原 健一

光仁会 第一病院

田妻  進

広島大学総合診療科

田中 信治

広島大学内視鏡診療科

坪内 博仁

鹿児島市立病院

中山 健夫

京都大学健康情報学

二村 雄次

愛知県がんセンター

野口 善令

名古屋第二赤十字病院総合内科

福井  博

奈良県立医科大学第三内科

福土  審

東北大学大学院行動医学分野・東北大学病院心療内科

本郷 道夫

公立黒川病院

松井 敏幸

福岡大学筑紫病院消化器科

三輪 洋人

兵庫医科大学内科学消化管科

森實 敏夫

日本医療機能評価機構

山口直比古

日本医学図書館協会個人会員

吉田 雅博

化学療法研究所附属病院人工透析・一般外科

芳野 純治

松柏会 テルミナセントラルクリニック

渡辺 純夫

順天堂大学消化器内科

オブザーバー

菅野健太郎

自治医科大学

統括委員会一覧

(7)

協力学会:日本消化管学会,日本消化器内視鏡学会

作成委員会

委員長

芳野 純治

松柏会 テルミナセントラルクリニック

副委員長

佐藤 貴一

国際医療福祉大学病院消化器内科

委員

赤松 泰次

長野県立須坂病院内視鏡センター

伊藤 俊之

滋賀医科大学臨床教育講座

加藤 元嗣

北海道大学光学医療診療部

鎌田 智有

川崎医科大学消化管内科学

髙木 敦司

東海大学医学部内科学系総合内科

千葉 俊美

岩手医科大学消化器内科消化管分野

野村 幸世

東京大学大学院医学系研究科消化管外科

溝上 裕士

筑波大学附属病院光学医療診療部

村上 和成

大分大学医学部消化器内科

評価委員会

委員長

坂本 長逸

日本医科大学消化器内科学

副委員長

平石 秀幸

獨協医科大学消化器内科

委員

一瀬 雅夫

和歌山県立医科大学第二内科

上村 直実

国立国際医療研究センター国府台病院

後藤 秀実

名古屋大学消化器内科

城  卓志

名古屋市立大学消化器・代謝内科学

作成協力者 小坂 俊仁 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院消化器内科 櫻井 俊之 国立国際医療研究センター消化器内科

消化性潰瘍診療ガイドライン委員会

(8)

— viii —

1.改訂の背景

日本消化器病学会は胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,クローン病,肝硬変,胆石症,慢

性膵炎の 6 疾患に関する診療ガイドラインを 2009 年から 2010 年に作成した.その後,機能性

ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),大腸ポリープ,NAFLD/NASH の 4 疾患につい

ても診療ガイドラインの作成が 2011 年より開始され,2014 年に刊行されることになった.その

なかで,先に作成された 6 疾患の診療ガイドラインは作成されてより 5 年を経過することにな

るため,4 疾患と並行して改訂を行うこととなった.

初版の消化性潰瘍診療ガイドラインは厚生労働省の研究補助金(厚生科学研究費)

「EBM に基

づく胃潰瘍診療ガイドライン」をもとにして,十二指腸潰瘍,外科的治療などを追加して作成

され,2009 年 10 月に刊行された.また,刊行後に保険適用の拡大や新薬の発売など,ガイドラ

インの記載と実臨床において齟齬が生じた内容について,2013 年に学会ホームページに Annual

Review

版として掲載した.本ガイドラインが作成されてから,新たなエビデンスが明らかにな

るとともに,新しい薬剤の登場や保険適用の追加もみられ,診療の現状に適した診療ガイドラ

インの作成が求められていた.

2.改訂の手順

1)診療ガイドライン委員会の設立

日本消化器病学会ガイドライン委員会の第 1 回統括委員会が 2011 年 7 月に開催され,4 疾患

の診療ガイドライン作成と並行して,先行の 6 疾患の診療ガイドラインの改訂が行われること

が決定された.改訂版ガイドラインの作成は,初版のガイドラインと同様に作成委員会と評価

委員会が協力して行うこととなったが,ガイドラインの改訂は今後も継続して行われていくと

考えられることから,委員の若返りを考慮に入れて両委員会の委員を一部変更し新たな委員会

が組織された.第 1 回作成委員会は 2012 年 9 月 13 日に開催され,改訂の基本方針が確認され,

改訂の作業が開始された.

2)作成基準

初版のガイドラインでは Minds に準拠した「推奨グレード」,「文献のエビデンスレベル」で

行われたが,改訂版では GRADE システムによる「推奨の強さ」,「文献のエビデンスレベル」

により行った.

3)作成方法

はじめに作成委員会にて CQ を作成し,評価委員会が問題点などを評価し作成委員会に報

告し,修正,追加などを行い,CQ を完成させた.次に,それぞれの CQ について論文検索

を行い,作成委員会にて検索された論文を GRADE システムにより評価し,CQ ごとに「ス

テートメント」,

「推奨の強さ」,

「エビデンスレベル」,

「解説」,

「文献」を作成し,評価委員

会に報告した.評価委員会にて評価したあと,作成委員会に報告し,最終的に作成・評価

両委員会が合同にて完成させた.推奨の強さの合意率は作成委員会にて挙手により行った.

また,文献の掲載は CQ ごとに行った.作成委員会におけるガイドライン(案)の作成は委

消化性潰瘍診療ガイドライン作成の手順

(9)

央雑誌を用いた.新たな CQ については 1983 年から 2012 年 6 月末までの期間,初版と同

じ CQ では 2008 年以降〜2012 年 6 月末までの期間を検索した.

網羅的に検索された論文を吟味し採用論文を決定し,採用論文ごとに構造化抄録を作成し

た.

採用論文は研究デザインによって分類し,バイアスリスクなどの要因により総合評価を行

い,最終的にエビデンスの質を「質の高いエビデンス(A)」から順に,「B」,「C」,「D」の

4 段階で判定した.

「推奨の強さ」は文献のエビデンスレベルだけでなく,利益と不利益のバランス,患者の

嗜好性,費用対効果の各要素を検討して判定した.また,

「推奨の強さ」は「強い推奨」と

「弱い推奨(提案)」の 2 者のみで,ステートメントは「…を行うよう推奨(提案)する」,あ

るいは「…を行わないよう推奨(提案)する」とした.

構成は初版ガイドラインを踏襲し,「出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍」,「H. pylori 除菌

治療」,

「非除菌治療」,

「薬物性潰瘍」,

「外科的治療」,

「穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)

治療」としたが,新たに「非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍」が加わった.特に,

「薬物性潰瘍」

では疫学・病態が加わり,その内容を大きく変更した.

CQ 数は順に 13,16,14,33,6,5,3 の計 90 項目で,主として治療,疫学,病態に関す

る CQ から成り,診断に関する CQ はない.

統括委員会での取り決めに従い,2012 年 7 月以降の検索期間外の重要なエビデンスについ

ては「解説」に記載するのみとした(2014 年末までの文献).また,保険適用のない治療に

ついては「解説」にその点を記載した.

フローチャートは,三次除菌の CQ が新たに加わったが,保険適用がないためフローチャー

トには追加を行わず,初版とほぼ同様となった.

パブリックコメントは日本消化器病学会のホームページ上にて 2015 年 1 月 19 日から 2 月

2 日の間に募集し,それを加味して消化性潰瘍診療ガイドラインを最終的に完成させた.

3.使用法

本ガイドラインは消化性潰瘍の治療,疫学,病態などについての 2012 年までのエビデンスを

もとに作成され,一般的な診療の内容を提示することにより,臨床の場を支援するものである.

しかし,患者の状態はそれぞれ異なることから,本ガイドラインを一律に盲目的に運用するこ

とは求めていない.それぞれの患者に適した治療を選択することが望ましい.また,医学は日々

進歩しており,本ガイドラインはそれに対応することが今後必要となると思われる.

2015 年 4 月 日本消化器病学会消化性潰瘍診療ガイドライン作成委員長

芳野 純治

(10)

— x —

1.エビデンス収集

初版で行われた系統的検索によって得られた論文に加え,今回新たに以下の作業を行ってエ

ビデンスを収集した.

それぞれのクリニカルクエスチョン(CQ)からキーワードを抽出し,学術論文を収集した.

データベースは,英文論文は MEDLINE,Cochrane Library を用いて,日本語論文は医学中央雑

誌を用いた.新規 CQ については 1983 年〜2012 年 6 月末,変更 CQ についても同期間を文献検

索の対象期間とし,初版と同じ CQ については 2008 年〜2012 年 6 月末を文献検索の対象期間と

した.また,2012 年 7 月以降の重要かつ新しいエビデンスについては,検索期間外論文として

文献に掲載した.各キーワードおよび検索式は日本消化器病学会ホームページに掲載する予定

である.

収集した論文のうち,ヒトまたは human に対して行われた臨床研究を採用し,動物実験や遺

伝子研究に関する論文は除外した.患者データに基づかない専門家個人の意見は参考にしたが,

エビデンスとしては用いなかった.

2.エビデンス総体の評価方法

1)各論文の評価:構造化抄録の作成

各論文に対して,研究デザイン

1)

表 1

)を含め,論文情報を要約した構造化抄録を作成した.

さらに RCT や観察研究に対して,Cochrane Handbook

2)

や Minds 診療ガイドライン作成の手

引き

1)

のチェックリストを参考にしてバイアスのリスクを判定した(

表 2

).総体としてのエビ

デ ン ス 評 価 は ,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and

Evaluation)システム

3〜22)

の考え方を参考にして評価し,CQ 各項目に対する総体としてのエビ

デンスの質を決定し表記した(

表 3

).

2)アウトカムごと,研究デザインごとの蓄積された複数論文の総合評価

(1)初期評価:各研究デザイン群の評価

本ガイドライン作成方法

表 1 研究デザイン

各文献へは下記 9 種類の「研究デザイン」を付記した.  (1)メタ (システマティックレビュー /RCT のメタアナリシス)  (2)ランダム (ランダム化比較試験)  (3)非ランダム (非ランダム化比較試験)  (4)コホート (分析疫学的研究(コホート研究))  (5)ケースコントロール (分析疫学的研究(症例対照研究))  (6)横断 (分析疫学的研究(横断研究))  (7)ケースシリーズ (記述研究(症例報告やケース・シリーズ))  (8)ガイドライン (診療ガイドライン)  (9)(記載なし) (患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見は, 参考にしたが,エビデンスとしては用いないこととした)

(11)

メタ群,ランダム群=「初期評価 A」

非ランダム群,コホート群,ケースコントロール群,横断群=「初期評価 C」

ケースシリーズ群=「初期評価 D」

(2)エビデンスレベルを下げる要因の有無の評価

研究の質にバイアスリスクがある

結果に非一貫性がある

エビデンスの非直接性がある

データが不精確である

出版バイアスの可能性が高い

(3)エビデンスレベルを上げる要因の有無の評価

大きな効果があり,交絡因子がない

用量–反応勾配がある

可能性のある交絡因子が,真の効果をより弱めている

(4)総合評価:最終的なエビデンスの質「A,B,C,D」を評価判定した.

選択バイアス か 詳細に記載されている (2)コンシールメント 組み入れる患者の隠蔽化がなされているか 実行バイアス (3)盲検化 検出バイアス (4)盲検化 症例減少バイアス (5)ITT 解析 ITT 解析の原則を掲げて,追跡からの脱落者に対してその原則を遵守 しているか (6)アウトカム報告バイアス  (解析における採用および除外データを含めて) (7)その他のバイアス 告・研究計画書に記載されているにもかかわらず,報 告されていないアウトカムがないか

表 3 エビデンスの質

A:質の高いエビデンス(High)    真の効果がその効果推定値に近似していると確信できる. B:中程度の質のエビデンス(Moderate)    効果の推定値が中程度信頼できる.    真の効果は,効果の効果推定値におおよそ近いが,それが実質的に異なる可能性もある. C:質の低いエビデンス(Low)    効果推定値に対する信頼は限定的である.    真の効果は,効果の推定値と,実質的に異なるかもしれない. D:非常に質の低いエビデンス(Very Low)    効果推定値がほとんど信頼できない.    真の効果は,効果の推定値と実質的におおよそ異なりそうである.

(12)

— xii —

3)エビデンスの質の定義方法

エビデンスレベルは海外と日本で別の記載とせずに 1 つとした.またエビデンスは複数文献

を統合・作成した統合レベル(body of evidence)とし,

表 3

の A〜D で表記した.

4)メタアナリシス

システマティックレビューを行い,必要に応じてメタアナリシスを引用し,本文中に記載し

た.

また,1 つ 1 つのエビデンスに「保険適用あり」の記載はせず,保険適用不可の場合に,解

説の中で明記した.

3.推奨の強さの決定

以上の作業によって得られた結果をもとに,治療の推奨文章の案を作成提示した.次に,推

奨の強さを決めるためにコンセンサス会議を開催した.

推奨の強さは,①エビデンスの確かさ,②患者の希望,③益と害,④コスト評価,の 4 項目

を評価項目とした.コンセンサス形成方法は,Delphi 変法,nominal group technique(NGT)法

に準じて投票を用い,70%以上の賛成をもって決定とした.1 回目で,結論が集約できないとき

は,各結果を公表し,日本の医療状況を加味して協議の上,投票を繰り返した.作成委員会は,

この集計結果を総合して評価し,

表 4

に示す推奨の強さを決定し,本文中の囲み内に明瞭に表

記した.

推奨の強さは「1:強い推奨」,「2:弱い推奨」の 2 通りであるが,「強く推奨する」や「弱く

推奨する」という文言は馴染まないため,下記のとおり表記した.また,投票結果を「合意率」

として推奨の強さの下段に括弧書きで記載した.

4.本ガイドラインの対象

1)利用対象:一般臨床医

2)診療対象:成人の患者を対象とした.小児は対象外とした.

5.改訂について

本ガイドラインは改訂第 2 版であり,今後も日本消化器病学会ガイドライン委員会を中心と

して継続的な改訂を予定している.

6.作成費用について

本ガイドラインの作成はすべて日本消化器病学会が費用を負担しており,他企業からの資金

提供はない.

表 4 推奨の強さ

推奨度 1(強い推奨) 実施する ことを推奨する 実施しない ことを推奨する 2(弱い推奨) 実施する ことを提案する 実施しない ことを提案する

(13)

成・評価委員と企業との経済的な関係につき,各委員から利益相反状況の申告を得た(詳細は

「利益相反に関して」に記す).

2)本ガイドラインでは,利益相反への対応として,協力学会の参加によって意見の偏りを防

ぎ,さらに委員による投票によって公平性を担保するように努めた.また,出版前のパブリッ

クコメントを学会員から受け付けることで幅広い意見を収集した.

8.ガイドライン普及と活用促進のための工夫

1)フローチャートを提示して,利用者の利便性を高めた.

2)書籍として出版するとともに,インターネット掲載を行う予定である.

・日本消化器病学会ホームページ

・日本医療機能評価機構 EBM 医療情報事業(Minds)ホームページ

■引用文献

1) 福井次矢,山口直人(監修).Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014,医学書院,東京,2014 2) Higgins JPT, Green S (eds). Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions version 5.1.0:

The Cochrane Collaboration http://handbook.cochrane.org/(updated March 2011)[最終アクセス 2015 年 3 月 11 日]

3) 相原守夫,三原華子,村山隆之,相原智之,福田眞作.診療ガイドラインのための GRADE システム,凸 版メディア,弘前,2010

4) The GRADE* working group. Grading quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2004; 328: 1490-1494 (printed, abridged version)

5) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength of recommendations GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recom-mendations. BMJ2008; 336: 924-926

6) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength of recommendations: What is "quality of evidence" and why is it important to clinicians? BMJ2008; 336: 995-998

7) Schünemann HJ, Oxman AD, Brozek J, et al; GRADE Working Group. Grading quality of evidence and strength of recommendations for diagnostic tests and strategies. BMJ2008; 336: 1106-1110

8) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE working group .Rating quality of evidence and strength of recommendations: incorporating considerations of resources use into grading recommendations. BMJ 2008; 336: 1170-1173

9) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength of recommendations: going from evidence to recommendations. BMJ2008; 336: 1049-1051

10) Jaeschke R, Guyatt GH, Dellinger P, et al; GRADE working group. Use of GRADE grid to reach decisions on clinical practice guidelines when consensus is elusive. BMJ2008; 337: a744

11) Guyatt G, Oxman AD, Akl E, et al. GRADE guidelines 1. Introduction-GRADE evidence profiles and sum-mary of findings tables. J Clin Epidemiol2011; 64: 383-394

12) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 2. Framing the question and deciding on impor-tant outcomes.J Clin Epidemiol2011; 64: 295-400

13) Balshem H, Helfand M, Schunemann HJ, et al. GRADE guidelines 3: rating the quality of evidence. J Clin Epidemiol2011; 64: 401-406

14) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al. GRADE guidelines 4: rating the quality of evidence - study limita-tion (risk of bias). J Clin Epidemiol2011; 64: 407-415

15) Guyatt GH, Oxman AD, Montori V, et al. GRADE guidelines 5: rating the quality of evidence - publication bias. J Clin Epidemiol2011; 64: 1277-1282

16) Guyatt G, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 6. Rating the quality of evidence - imprecision. J Clin Epidemiol2011; 64: 1283-1293

(14)

— xiv —

quality of evidence - inconsistency. J Clin Epidemiol2011; 64: 1294-1302

18) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 8. Rating the quality of evidence - indirectness. J Clin Epidemiol2011; 64: 1303-1310

19) Guyatt GH, Oxman AD, Sultan S, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 9. Rating up the quality of evidence. J Clin Epidemiol2011; 64: 1311-1316

20) Brunetti M, Shemilt I, et al; The GRADE Working. GRADE guidelines: 10. Considering resource use and rating the quality of economic evidence. J Clin Epidemiol2013; 66: 140-150

21) Guyatt G, Oxman AD, Sultan S, et al. GRADE guidelines: 11. Making an overall rating of confidence in effect estimates for a single outcome and for all outcomes. J Clin Epidemiol2013; 66: 151-157

22) Guyatt GH, Oxman AD, Santesso N, et al. GRADE guidelines 12. Preparing Summary of Findings tables-binary outcomes. J Clin Epidemiol2013; 66: 158-172

(15)

日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員と企業との経済的な関係につき,下記の基準で, 各委員から利益相反状況の申告を得た. 消化性潰瘍診療ガイドライン作成・評価委員には診療ガイドライン対象疾患に関連する企業との経済的な関係につき, 下記の基準で,各委員から利益相反状況の申告を得た. 申告された企業名を下記に示す(対象期間は 2011 年 1 月 1 日から 2014 年 12 月 31 日).企業名は 2015 年 3 月現在の 名称とした.非営利団体は含まれない. 1.委員または委員の配偶者,一親等内の親族,または収入・財産を共有する者が個人として何らかの報酬を得た企 業・団体 役員・顧問職(100 万円以上),株(100 万円以上または当該株式の 5%以上保有),特許権使用料(100 万円以上) 2.委員が個人として何らかの報酬を得た企業・団体 講演料(100 万円以上),原稿料(100 万円以上),その他の報酬(5 万円以上) 3.委員の所属部門と産学連携を行っている企業・団体 研究費(200 万円以上),寄付金(200 万円以上),寄付講座 ※統括委員会においては日本消化器病学会診療ガイドラインに関係した企業・団体,作成・評価委員においては診 療ガイドライン対象疾患に関係した企業・団体の申告を求めた 統括委員および作成・評価委員はすべて,診療ガイドラインの内容と作成法について,医療・医学の専門家として科 学的・医学的な公正さを保証し,患者のアウトカム,Quality of life の向上を第一として作業を行った. 利益相反の扱いは,国内外で議論が進行中であり,今後,適宜,方針・様式を見直すものである. 表 1 統括委員と企業との経済的な関係(五十音順) 1.エーザイ株式会社,大塚製薬株式会社 2.味の素製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパ ン株式会社,株式会社医学書院,エーザイ株式会社,MSD 株式会社,大塚製薬株式会社,オリンパスメディカル システムズ株式会社,杏林製薬株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会 社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,ファイザー株 式会社 3.旭化成メディカル株式会社,味の素製薬株式会社,あすか製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼ ネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパン株式会社,エーザイ株式会社,MSD 株式会社,大塚製薬株 式会社,小野薬品工業株式会社,花王株式会社,株式会社カン研究所,杏林製薬株式会社,協和発酵キリン株式 会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,株式会社 JIMRO,株式会社ジーンケア研究所,ゼリア新薬工業株式 会社,センチュリーメディカル株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社, 武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,株式会社ツムラ,東レ株式会社,ファイザー 株式会社,ブリストル・マイヤーズ株式会社,株式会社ミノファーゲン製薬,持田製薬株式会社,株式会社ヤク ルト本社,ユーシービージャパン株式会社 表 2 作成・評価委員と企業との経済的な関係(五十音順) 1.なし 2.アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,エーザイ株式会社,大塚製薬株式会社,第一三共株式会社, 武田薬品工業株式会社,ファイザー株式会社 3.味の素製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,エーザイ株式会社,MSD 株式会社, 大塚製薬株式会社,株式会社岡畑農園,株式会社紀州ほそ川,サノフィ株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,第 一三共株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社, 株式会社トノハタ,日本新薬株式会社,日本製薬株式会社,バイエル薬品株式会社,ファイザー株式会社,株式 会社丸惣

利益相反に関して

(16)

— xvi —

第 1 章 出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 

(1)内視鏡的治療

(2)非内視鏡的治療 

第 2 章 H. pylori 除菌治療

(1)初期治療

(2)レジメン

(3)二次除菌

(4)三次除菌

(5)再発防止

(6)除菌後潰瘍 

第 3 章 非除菌治療 

(1)初期治療

(2)維持療法

第 4 章 薬物性潰瘍

(1)NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)

(2)非選択的 NSAIDs 潰瘍

(3)選択的 NSAIDs(COX-2 選択的阻害薬)潰瘍

(4)低用量アスピリン(LDA)潰瘍

(5)その他の薬物

第 5 章 非

H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍

第 6 章 外科的治療

(1)手術適応

(2)手術術式

(3)術後維持療法

第 7 章 穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療

(1)穿孔

(2)狭窄

本ガイドラインの構成

(17)

フローチャート

除菌成功 除菌不成功 内視鏡的止血治療 手術 消化性潰瘍 合併症あり 合併症なし 穿孔・狭窄あり 出血あり 除菌適応あり 除菌適応なし 除菌・潰瘍治療 二次除菌 非除菌潰瘍治療  1)PPI  2)H₂RA  3)選択的ムスカリン受容体    拮抗薬もしくは    一部の防御因子増強薬 NSAIDs あり 1)PPI *2 2)PG 製剤 *1:禁忌である.中止不能のため,止むを得ず投与する場合. *2:LDA 潰瘍は PPI を選択. NSAIDs なし . 陰性 . 陽性 手術 保存的治療 通 常 の 潰 瘍 治 療 止血成功 止血不成功 IVR 止血成功 止血不成功 手術 . 陽性 . 陰性 NSAIDs の中止 NSAIDs の投与継続 *1 治癒 除菌成功 除菌不成功 治癒 治癒 未治癒 維持療法 症 併 合 り あ 窄 狭 ・ 孔 穿             り あ 症 り あ 血 出             療 治 血 止 的 鏡 視 内 瘍 潰 性 化 消             し な 症 併 合             り あ 窄 狭 ・ 孔 穿 術 手 保存的治             り あ 血 出 療 治 止血成             療 治 血 止 的 鏡 視 内 術 手 功 成 止血不成功 R V I 功 成 血 止             R 功 成 不 血 止             D I A S N             潰 り あ s D の 常 通             療 A S N 治 瘍 潰             し な s D I 術 手                         性 陽 . 1 * 続 継 与 投 の s D I A S N             菌 除 菌 除 性 陰 . 止 中 の s D I A S N             り あ 応 適 菌 除菌適応な 療 治 瘍 潰 ・ 菌 非除菌潰 性 陽 .             し 療 治 瘍 潰 性 陰 .             剤 製 G P ) 2 2 * I P P ) 1            功 成 菌 除 癒 治 除             功 成 不 菌 除 菌 除 次 二 部 一抗 拮択 選 ) 3)H₂R 2)PPI 1 功 成 菌 除 除菌不成功             部抗の薬防も御し因く子は増強薬 体 容 受 ン リ カ ス ム 的 択RA 癒 治 未治癒             択 選 を I P P は 瘍 潰 A D L : 2 *:禁忌である.中止不能の 1 *             . 択のため,止むを得ず投与する場合.             癒 治             法 療 持 維

(18)

— xviii —

除菌成功 除菌不成功 内視鏡的止血治療 手術 消化性潰瘍 合併症あり 合併症なし 穿孔・狭窄あり 出血あり 除菌適応あり 除菌適応なし 除菌・潰瘍治療 二次除菌 非除菌潰瘍治療  1)PPI  2)H₂RA  3)選択的ムスカリン受容体    拮抗薬もしくは    一部の防御因子増強薬 NSAIDs あり 1)PPI *2 2)PG 製剤 NSAIDs なし . 陰性 . 陽性 手術 保存的治療 通 常 の 潰 瘍 治 療 止血成功 止血不成功 IVR 止血成功 止血不成功 手術 . 陽性 . 陰性 NSAIDs の中止 治癒 除菌成功 除菌不成功 治癒 CQ1-1∼4 CQ1-12 CQ6-2 CQ6-4 CQ6-1 CQ6-3 CQ6-5 CQ6-6 CQ7-1∼5 CQ2-1∼6 CQ2-7 CQ3-1∼4 CQ3-5∼14 CQ4-12∼13 CQ4-21 CQ2-8 CQ2-10∼14 NSAIDs の投与継続 *1 治癒 未治癒 維持療法 CQ1-5∼11 CQ1-13 *1:禁忌である.中止不能のため,止むを得ず投与する場合. *2:LDA 潰瘍は PPI を選択. 症 併 合 り あ 窄 狭 ・ 孔 穿             り あ 症 り あ 血 出             療 治 血 止 的 鏡 視 内 瘍 潰 性 化 消 4 ∼ 1 -1 Q C             し な 症 併 合             り あ 窄 狭 ・ 孔 穿 術 手 保存的治 C 6 -6 Q CQ6-5 CQ6-3 CQ6-1 C             り あ 血 出 療 治 止血成 5 ∼ 1 -7 Q 3 1 -1 Q CQ1-5∼11 C             療 治 血 止 的 鏡 視 内 術 手 功 成 止血不成功 R V I 功 成 血 止             R 功 成 不 血 止 4 -6 Q CQ6-2 CQ1-12 C             D I A S N 1 2 -4 Q CQ4-12∼13 C             潰 り あ s D の 常 通             療 A S N 治 瘍 潰             し な s D I 術 手                         性 陽 . 1 * 続 継 与 投 の s D I A S N             菌 除 菌 除 性 陰 . 止 中 の s D I A S N             り あ 応 適 菌 除菌適応な 療 治 瘍 潰 ・ 菌 非除菌潰 性 陽 . 7 -2 Q C 6 ∼ 1 -2 Q C             し 療 治 瘍 潰 性 陰 . 4 ∼ 1 -3 Q C             剤 製 G P ) 2 2 * I P P ) 1            功 成 菌 除 癒 治 除 -2 Q C             功 成 不 菌 除 8 菌 除 次 二 部 一抗 拮択 選 ) 3)H₂R 2)PPI 1 功 成 菌 除 除菌不成功 -2 Q             部抗の薬防も御し因く子は増強薬 体 容 受 ン リ カ ス ム 的 択RA 癒 治 未治癒             択 選 を I P P は 瘍 潰 A D L : 2 *:禁忌である.中止不能の 1 *             . 択のため,止むを得ず投与す             癒 治             4 1 ∼ 5 -3 Q C 法 療 持 維

【クリニカルクエスチョンとの関連】

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(19)

第 1 章 出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍

内視鏡的治療

CQ 1-1

出血性潰瘍に対する内視鏡的治療は有用か? ………2

CQ 1-2

出血性潰瘍に対する内視鏡的止血法はどのような潰瘍を対象とするか? ………4

CQ 1-3

出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血法の成績は? ………6

CQ 1-4

止血確認のための内視鏡検査(セカンド・ルック)は必要か? ………9

非内視鏡的治療

CQ 1-5

内視鏡的治療後に酸分泌抑制薬を用いる必要はあるのか? ………11

CQ 1-6

内視鏡的治療後に防御因子増強薬を用いる必要はあるのか? ………14

CQ 1-7

どのような場合に輸血が必要か? ………15

CQ 1-8

出血性消化性潰瘍患者における食事の中断と再開はどのように行えばよいか? ……17

CQ 1-9

出血性消化性潰瘍患者は入院して治療を行うべきか? ………18

CQ 1-10 抗凝固薬・抗血小板薬服用中の出血性潰瘍に対してどのように対応すべきか? ……19

CQ 1-11 止血後の抗凝固薬・抗血小板薬の再開時期を決定する指標は? ………21

CQ 1-12 interventional radiology(IVR)はどのような場合に行うべきか? ………22

CQ 1-13 再出血予防に H. pylori 除菌療法は必要か?………24

第 2 章 

H. pylori

除菌治療

初期治療

【胃潰瘍】

CQ 2-1

H. pylori

除菌は胃潰瘍の治癒を促進するか? ………28

CQ 2-2

H. pylori

除菌前の PPI 投与は胃潰瘍の除菌率に影響を与えるか? ………30

CQ 2-3

開放性(活動期)胃潰瘍に対して H. pylori 除菌治療後の潰瘍治療の追加は必要か?

………32

【十二指腸潰瘍】

CQ 2-4

H. pylori

除菌は十二指腸潰瘍の治癒を促進するか? ………34

CQ 2-5

H. pylori

除菌前の PPI 投与は十二指腸潰瘍の除菌率に影響を与えるか? ………36

CQ 2-6

開放性(活動期)十二指腸潰瘍に対して H. pylori 除菌治療後の潰瘍治療の追加は

必要か? ………37

レジメン

CQ 2-7

どのようなレジメンを選択すべきか? ………39

クリニカルクエスチョン一覧

(20)

— xx —

二次除菌

CQ 2-8

二次除菌治療はどのようなレジメンを選択すべきか? ………44

三次除菌

CQ 2-9

三次除菌治療はどのようなレジメンを選択すべきか? ………46

再発防止

CQ 2-10 H. pylori 除菌療法は潰瘍再発を抑制するか? ………47

CQ 2-11 除菌成功例に潰瘍再発予防治療は必要か? ………50

CQ 2-12 除菌後の H. pylori の再陽性化は?………52

CQ 2-13 除菌後の GERD 発症は? ………54

CQ 2-14 除菌後症例の上部消化管検査は必要か? ………57

除菌後潰瘍

CQ 2-15 除菌成功後における未治癒潰瘍の頻度と対策は? ………59

CQ 2-16 除菌成功後における再発潰瘍の頻度と対策は? ………61

第 3 章 非除菌治療

初期治療

【胃潰瘍】

CQ 3-1

胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)にどのような薬剤を選択すべきか? ………64

CQ 3-2

胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の

併用療法は有効か? ………72

【十二指腸潰瘍】

CQ 3-3

十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)にどのような薬剤を選択すべきか?

………74

CQ 3-4

十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において,酸分泌抑制薬と防御因子増

強薬の併用療法は有効か? ………79

維持療法

【胃潰瘍】

CQ 3-5

胃潰瘍の非除菌治療において維持療法は必要か? ………81

CQ 3-6

胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)にどのような薬剤を選択すべきか? ………83

CQ 3-7

胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)において,酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の

併用療法は有効か? ………85

CQ 3-8

胃潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)の期間はどのくらい必要か? ………86

CQ 3-9

胃潰瘍に対する非除菌治療において,維持療法中に内視鏡検査は必要か? …………88

【十二指腸潰瘍】

CQ 3-10 十二指腸潰瘍の非除菌治療において維持療法は必要か? ………89

CQ 3-11 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)にはどのような薬剤を選択すべきか?

………91

CQ 3-12 十二指腸潰瘍に対する非除菌治療(維持療法)において,酸分泌抑制薬と防御因子増

強薬の併用療法は有効か? ………93

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(21)

第 4 章 薬物性潰瘍

NSAIDs 潰瘍(低用量アスピリンを含む)

【疫学・病態】

CQ 4-1

NSAIDs

服用者では,消化性潰瘍,上部消化管出血のリスクは高まるか? …………98

CQ 4-2

NSAIDs

潰瘍および消化管出血の発生頻度は? ………99

CQ 4-3

NSAIDs

潰瘍の発生時期は? ………101

CQ 4-4

NSAIDs

による上部消化管傷害における症状は? ………103

CQ 4-5

NSAIDs

潰瘍は H. pylori 関連の潰瘍と発生部位,個数,深さが異なるか? ………105

CQ 4-6

NSAIDs

潰瘍とびらんの違いは? ………107

CQ 4-7

NSAIDs

潰瘍のリスク因子は? ………108

CQ 4-8

NSAIDs

の種類により潰瘍(出血)発生率に差があるか? ………110

CQ 4-9

NSAIDs

の投与量により潰瘍(出血)発生率に差があるか? ………112

CQ 4-10 NSAIDs の経口投与と坐薬で潰瘍(出血)発生率に差があるか? ………113

CQ 4-11 NSAIDs の単剤投与と多剤投与で潰瘍(出血)発生率に差があるか? ………114

非選択的 NSAIDs 潰瘍

【治 療】

CQ 4-12 NSAIDs 潰瘍の治療はどのように行うべきか? ………115

CQ 4-13 H. pylori 除菌治療で NSAIDs 潰瘍の治癒率は高まるか? ………117

【予 防】

CQ 4-14 NSAIDs 投与患者で H. pylori 陽性の場合,潰瘍予防として除菌治療を行うべきか?

………119

CQ 4-15 潰瘍既往歴がない患者における NSAIDs 潰瘍発生予防治療は必要か? ………121

CQ 4-16 高用量 NSAIDs,抗血栓薬,糖質ステロイド,ビスホスホネートの併用者,高齢者お

よび重篤な合併症を有する患者における NSAIDs 潰瘍予防はどうするか? ……123

CQ 4-17 潰瘍既往歴,出血性潰瘍既往歴がある患者が NSAIDs を服用する場合,再発予防は

どうするか? ………125

選択的 NSAIDs(COX-2 選択的阻害薬)潰瘍

【治 療】

CQ 4-18 COX-2 選択的阻害薬服用時に潰瘍発生予防治療は必要か?

(潰瘍既往歴がある患者の場合/潰瘍既往歴がない患者の場合) ………128

【予 防】

CQ 4-19 NSAIDs 潰瘍発生は COX-2 選択的阻害薬により減少するか? ………129

CQ 4-20 NSAIDs は心血管イベントを増加させるか? ………131

低用量アスピリン(LDA)潰瘍

【治 療】

CQ 4-21 低用量アスピリン(LDA)潰瘍の治療はどのように行うべきか? ………133

(22)

— xxii —

【予 防】

CQ 4-22 低用量アスピリン(LDA)服用者では,消化性潰瘍発生率,有病率が高いか? ……135

CQ 4-23 低用量アスピリン(LDA)服用者ではどのような併用薬を用いれば,消化性潰瘍発生

率,有病率が低くなるか? ………136

CQ 4-24 低用量アスピリン(LDA)服用者では,上部消化管出血リスク,頻度は高いか? …139

CQ 4-25 低用量アスピリン(LDA)服用者ではどのような併用薬を用いれば,上部消化管出血

発生率,有病率が低くなるか? ………141

CQ 4-26 上部消化管出血既往歴がある患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,どの

ような併用薬を用いれば,再出血が少なくなるか? ………143

CQ 4-27 潰瘍既往歴がある患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場合,どのように潰瘍

再発を予防するのか? ………145

CQ 4-28 潰瘍既往歴など潰瘍発生リスクがない患者が低用量アスピリン(LDA)を服用する場

合,潰瘍発生予防策は必要か? ………147

CQ 4-29 低用量アスピリン(LDA)服用者における NSAIDs 投与は潰瘍発生のリスクを上げ

るか? ………149

CQ 4-30 低用量アスピリン(LDA)服用者における COX-2 選択的阻害薬は通常の NSAIDs

より潰瘍リスクを下げるか? ………150

CQ 4-31 低用量アスピリン(LDA)服用者における NSAIDs 併用時の潰瘍予防法はあるか?

………152

その他の薬物

CQ 4-32 NSAIDs 以外に潰瘍発生リスクを高める薬物は? ………154

CQ 4-33 糖質ステロイド投与は,消化性潰瘍発生(再発)のリスクファクターか? …………156

第 5 章 非

H. pylori

・非 NSAIDs 潰瘍

CQ 5-1

非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の頻度は? ………160

CQ 5-2

非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の原因や病態は? ………163

CQ 5-3

非 H. pylori・非 NSAIDs 潰瘍の治療はどのように行うべきか? ………164

第 6 章 外科的治療

手術適応

CQ 6-1

消化性潰瘍穿孔の手術適応は? ………166

CQ 6-2

消化性潰瘍出血の手術適応は? ………168

手術術式

CQ 6-3

消化性潰瘍穿孔に対する最適な手術術式は? ………170

CQ 6-4

消化性潰瘍出血に対する最適な手術術式は? ………173

CQ 6-5

消化性潰瘍による狭窄に対する手術術式は? ………175

(23)

第 7 章 穿孔・狭窄に対する内科的(保存的)治療

穿 孔

CQ 7-1

穿孔に対する内科的治療の適応は? ………180

CQ 7-2

穿孔に対する内科的治療はどのように行うべきか? ………182

CQ 7-3

穿孔に対する内科的治療から外科的治療に移行するタイミングは? ………184

狭 窄

CQ 7-4

狭窄に対する内科的治療の適応は? ………185

CQ 7-5

狭窄に対してどのような治療を選択すべきか? ………186

索引 ………187

(24)

— xxiv —

略語一覧

APC argon plasma coagulation アルゴンプラズマ凝固 COX cyclooxygenase シクロオキシゲナーゼ EHS Enterohepatic Helicobacter spp.

EM extensive metabolizer

FD functional dyspepsia 機能性ディスペプシア GERD gastroesophageal refl ux disease 胃食道逆流症

H2RA histamine H2-receptor antagonist ヒスタミン H2受容体拮抗薬

IVR interventional radiology

LDA low dose aspirin 低用量アスピリン NHPH non-H. pylori Helicobacter species

NSAIDs non-steroidal anti-infl ammatory drugs 非ステロイド抗炎症薬 PG prostaglandin プロスタグランジン PPI proton pump inhibitor プロトンポンプ阻害薬 PUD peptic ulcer disease 消化性潰瘍

SSRI selective serotonin reuptake inhibitors 選択的セロトニン再取り込み阻害薬

(25)
(26)

— 2 —

解説

出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的治療が有用であることは「消化性潰瘍診療ガイドライン」

初版に収載された Sacks ら

1)

のメタアナリシスで明らかにされている.すなわち,25 文献によ

るメタアナリシスでは出血性消化性潰瘍に内視鏡的治療を行うことにより持続・再出血および

緊急手術の移行を有意に減少するとしている.

今回検索された文献のうち Barkun ら

2)

のメタアナリシスでは,出血性消化性潰瘍の内視鏡

的治療と薬物療法単独(18 文献)を比較し,内視鏡的治療は薬物治療単独に比して再出血率(オッ

ズ比 0.35,95%信頼区間(CI)0.27〜0.46),手術移行率(オッズ比 0.57,95%CI 0.41〜0.81)およ

び死亡率(オッズ比 0.57,95%CI 0.37〜0.89)を有意に減少させたとしている.Sacks らのメタア

ナリシスとの違いは,死亡率に関しても内視鏡的治療は有意に改善したという点で,今回のス

テートメントに反映している.

Barkun

らのメタアナリシスでは,薬剤を PPI と H2RA

に分けてさらに詳細に検討している.

内視鏡的治療と PPI の静脈投与についての比較(7 論文)では再出血率は有意に減少したが,手

術移行率および死亡率には差はなかった.このメタアナリシスで高用量の PPI を用いたものは

1 論文

3)

のみであった.また,内視鏡的治療と H2RA

との比較(11 論文)では内視鏡的治療は再

出血率,手術移行率および死亡率のすべてが有意に減少した.また,それぞれの内視鏡的止血

法と薬物治療との治療効果の対比に関しても解析しており,薬剤局注法は薬物治療に対して再

出血率に関しては優れるが(オッズ比 0.43,95%CI 0.24〜0.78),手術移行率および死亡率につい

ては差がなかった(9 論文).局注療法で 1 剤局注は 2 剤局注より再出血率,手術移行率および

死亡率で悪化する傾向にあった(8 論文).凝固療法は薬物治療と比較して,再出血率(オッズ比

0.41,95%CI 0.26〜0.65)および手術移行率(オッズ比 0.51,95%CI 0.28〜0.94)は有意に減少し

たが,死亡率については差がなかった(6 論文).凝固療法と局注療法の併用と薬物治療につい

ても検討されているが,再出血率は有意に減少したが(オッズ比 0.18,95%CI 0.08〜0.41),手術

移行率と死亡率では差はなかった(4 論文).

Clinical Question 1-1

1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❶内視鏡的治療

出血性潰瘍に対する内視鏡的治療は有用か?

CQ 1-1

出血性潰瘍に対する内視鏡的治療は有用か?

ステートメント

推奨の強さ

(合意率)

エビデンス

レベル

出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的治療は薬物治療単独に比べて初

回止血・再出血の予防が良好で,緊急手術への移行・死亡率を減少

させるため,行うように推奨する.

1

(100%)

A

(27)

文献

1) Sacks HS, Chalmers TC, Blum AL, et al. Endoscopic hemostasis: an effective therapy for bleeding peptic ulcers. JAMA1990; 264: 491-499(メタ)

2) Barkun AN, Martel M, Toubouti Y, et al. Endoscopic hemostasis in peptic ulcer bleeding for patients with high-risk lesions: a series of meta-analysis. Gastointest Endosc2009; 69: 786-799(メタ)

3) Sung JJ, Chan FK, Lau JY, et al. The effect of endoscopic therapy in patients receiving omeprazole for bleeding ulcers with nonbleeding visible vessels or adherent clots: a randomized comparison. Ann Intern Med2003; 139: 237-243(ランダム)

(28)

— 4 —

解説

内視鏡的止血治療をどのような潰瘍に行うかについては,活動性出血および非出血性露出血

管症例が再出血のリスクが高く,よい適応である.このステートメントは「消化性潰瘍診療ガ

イドライン」初版と不変である.

初版で収載した Sacks ら

1)

のメタアナリシスでも,活動性出血および非出血性露出血管症例

を内視鏡的止血法の適応としている.初版においてどのような潰瘍を内視鏡的止血治療の対象

とするかを潰瘍の出血状態を改変 Forrest 分類(

表 1

2)

に従って分類し,内視鏡的治療の再出血

および持続出血のオッズ比を求めて比較したところ,活動性出血(Ⅰ)および非出血性露出血管

症例(Ⅱa)において内視鏡的止血治療が非内視鏡的治療に比して再出血および持続出血を有意に

予防するという結果が得られた.今回検索された文献では,米国消化器病学会が発表した出血

性消化性潰瘍の管理についてのガイドライン

3)

において活動性出血および非出血性露出血管症

例に内視鏡的治療を行うべきとするステートメントが掲載されている.

血餅付着例(ForrestⅡb)に対して内視鏡的止血を行うかどうかについては議論が分かれると

ころである.内視鏡的止血法が薬物治療に対して再出血率を有意に減少させたと 2 つの非ラン

ダム化比較試験

4, 5)

で報告されている.一方,内視鏡的止血と PPI 投与を併用した群と PPI 単独

で比較すると再出血率に差はみられないとの報告がある

6)

.この報告では高用量の PPI を投与し

Clinical Question 1-2

1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❶内視鏡的治療

出血性潰瘍に対する内視鏡的止血法はどのような潰瘍を対象

とするか?

CQ 1-2

出血性潰瘍に対する内視鏡的止血法はどのような潰瘍を対象とするか?

ステートメント

推奨の強さ

(合意率)

エビデンス

レベル

出血性消化性潰瘍のうち活動性出血例と非出血性露出血管例が内視

鏡的止血治療のよい適応であるので,行うように推奨する.

(100%)

1

A

表 1 改変 Forrest 分類

Ⅰ.活動性出血    a.噴出性出血    b.湧出性出血 Ⅱ.出血の痕跡を認める潰瘍    a.非出血性露出血管    b.血餅付着    c.黒色潰瘍底 Ⅲ.きれいな潰瘍 (文献 2 より)

(29)

考慮するとしている.このため,再出血のリスクが高い場合を除いて,Forrest Ⅱb を内視鏡的止

血の適応とはしなかった.

また,米国消化器病学会のガイドライン

3)

では黒色潰瘍底およびきれいな潰瘍(ForrestⅡc お

よび Ⅲ)は重症な再出血例はまれであり,内視鏡的治療は有意な効果をもたらさないとしてい

る.

文献

1) Sacks HS, Chalmers TC, Blum AL, et al. Endoscopic hemostasis: an effective therapy for bleeding peptic ulcers. JAMA1990; 264: 491-499(メタ)

2) Kohler B, Riemann JF. Upper GI bleeding: value and consequences of emergency endoscopy and endo-scopic treatment. Hepatogastroenterology1991; 38: 198-200

3) Laine L, Jensen DM. Management of patients with ulcer bleeding. Am J Gastroenterol 2011; 107: 345-360 (ガイドライン)

4) Jensen D, Kovacs T, Jutabha R, et al. Randomized trial of medical or endoscopic therapy to prevent recur-rent ulcer hemorrhage in patients with adherecur-rent clots. Gastroenterology2002; 123: 407-413(非ランダム) 5) Bleau B, Gostout C, Sherman K, et al. Recurrent bleeding from peptic ulcer associated with adherent clot: a

randomized study comparing endoscopic treatment with medical therapy. Gastrointest Endosc2002; 56: 1-6(非ランダム)

6) Sung JJ, Chan F, Lau J, et al. The effect of endoscopic therapy in patients receiving omeprazole for bleeding ulcers with nonbleeding visible vessels or adherent clots: a randomized clots: a randomized comparison. Ann Intern Med2003; 139: 237-243(ランダム)

(30)

— 6 —

解説

「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版では内視鏡的治療には各種の方法があるが,その効果に

差はないとのステートメントを掲載した.また,血管収縮薬局注に関しては血管収縮薬局注単

独に比べて,局注に他の内視鏡的治療を追加することで再出血の予防効果が向上するとした.

今回検索された文献のうち,2010 年に Vergara ら

1)

によりエピネフリン局注と他の内視鏡的

治療の追加による効果を検討したシステマティックレビューが報告されている.このレビュー

によればエピネフリン局注後に他の内視鏡的治療を追加することで,再出血リスクの高い消化

性潰瘍の再出血(リスク比 0.55,95%CI 0.42〜0.73)および手術の移行(リスク比 0.69,95%CI

0.51〜0.95)を有意に減少させたとしている.今回のエピネフリン局注に他の内視鏡的治療を追

加することで再出血および手術移行の成績が向上するというステートメントは,このシステマ

ティックレビューの結果が反映されている.また,米国消化器病学会のガイドライン

2)

によれ

ば,エピネフリンは単独で用いるべきでなく,他の内視鏡的治療との併用を推奨している.

それぞれの内視鏡的治療法の出血性消化性潰瘍に対する効果について,Barkun ら

3)

のメタア

ナリシスで検討がなされている.凝固法[ヒータープローブ,高周波凝固,レーザー,マイクロ

波凝固,アルゴンプラズマ凝固(APC)](12 論文)は局注法(エピネフリン単独,アルコール,

エピネフリンとポリドカノールの併用,精製水)と再出血,手術移行率および死亡率に差はな

かったとしている.局注法と凝固法の併用と局注法単独との比較(2 論文)では,ともにエピネ

フリン局注が用いられ,凝固法の併用はエピネフリン局注単独に比して再出血を有意に減少さ

せたが,手術移行および死亡率に差はなかったとの結果であった.凝固法と局注法の併用と凝

固法単独との治療効果の比較については 4 論文を用いて検討されているが,再出血,手術移行

Clinical Question 1-3

1.出血性胃潰瘍・出血性十二指腸潰瘍 ― ❶内視鏡的治療

出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血法の成績は?

CQ 1-3

出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血法の成績は?

ステートメント

推奨の強さ

(合意率)

エビデンス

レベル

エピネフリン局注法に他の内視鏡的治療を追加すると初回止血・再

出血の予防が良好で,手術への移行が減少する.

なし

A

局注法に凝固法あるいはクリップ法を併用すると,局注法単独より

再出血の予防が良好である.

なし

B

クリップ法は他の方法と比較されているが,その評価は一定ではな

い.

なし

C

(31)

および死亡率については差がなかったとの結果であった.しかし,この 4 論文のうち,あまり

用いられない単極凝固を用いた論文とトロンビンとヒータープローブを併用した論文を除外す

ると,凝固法と局注法の併用は凝固法単独に比して再出血を有意に減少するという結果になっ

た.日本では止血法(

表 1

)は単独で行い,十分な止血が得られなかった場合にさらに追加治療

として別の止血法が行われることが多い.欧米の報告にて併用法が推奨されるのは,手技によ

る差によるものかもしれない.

クリップ法については Barkun ら

3)

のメタアナリシスではクリップ法と局注法とで比較して,

クリップ法単独では局注法単独よりも再出血の予防効果に優れる(オッズ比 0.36,95%CI 0.17〜

0.76)が,手術移行および死亡率に差はなかった(4 論文).クリップ法と凝固療法との比較では,

クリップ法単独では凝固療法単独より再出血を有意に減少させたが(オッズ比 0.24,95%CI 0.06

〜0.95),手術移行および死亡率では差はなかった(2 論文).局注法とクリップ法の併用と局注

法単独では,局注法とクリップ法の併用が局注法単独より再出血および手術への移行を有意に

減少させたが,死亡率には差はなかった(3 論文).また,クリップ法とエピネフリン局注に対

して消化性潰瘍の再出血予防効果を比較した RCT が報告されており

4)

,クリップ法は少量エピ

ネフリン局注および大量エピネフリン局注に比して有意に再出血を減少させたとしている.ク

リップ法にアドレナリン局注を併用した場合と APC にアドレナリン局注を併用した場合を比較

した RCT が報告されているが

5)

,両群間で初回止血,再出血,手術移行および死亡率で差はな

かった.再出血率,手術の必要性,死亡率といったエンドポイントを組み合わせて 2 群間を評

価すると,クリップ法とアドレナリン局注の併用で良好な結果を得た.一方,Yuan ら

6)

が 2008

年にクリップ法の消化性潰瘍出血に対する有用性を評価するために他の内視鏡的治療(ヒーター

プローブ 2 論文,凝固療法と局注療法との併用 2 論文,局注法単独 5 論文)との比較を行ったメ

タアナリシスを報告している.この検討では,クリップ法は他の内視鏡的治療に比して初期止

血,再出血,手術移行および死亡率のいずれも差はなかった.このようにクリップ法について

は他の内視鏡的治療に比べて有用との報告もあれば,他の内視鏡的治療と比較して差はなかっ

たとの報告もある.また,米国消化器病学会のガイドライン

2)

では,止血や手術移行に優れる

が,他の治療法との比較は各種の成績が一定でなく,さらなる検討が必要としている.このた

め,今回のステートメントではクリップ法の評価は一定ではないとした.日本ではクリップ法

は広く行われているが,

「消化性潰瘍診療ガイドライン」初版でも指摘しているようにクリップ

法は他の方法に比べ手技が煩雑であること,潰瘍の観察が接線方向となる場合や線維化が進行

した潰瘍の止血には困難なことがこれらの成績に影響していると考えられる.

薬剤局注法  血管収縮剤局注法  硬化剤局注法 エピネフリン 高張 Na エピネフリン(HSE) 純エタノール ポリドカノール 凝固法 高周波凝固(モノポーラー・バイポーラー) Nd-YAG レーザー ヒータープローブ アルゴンプラズマ(APC) マイクロ波凝固 ソフロ凝固

図 1 胃潰瘍の再発予防におけるシメチジンの効果 (文献 1 より引用) シメチジン 54/0 50/1 48/1 47/5 46/5 45/5 42/654/049/2 45/5 43/17 42/19 42/19 42/23プラセボ治療経過シメチジンプラセボ0246810 12 (月)100806040200寛解率(%)
図 1 消化性潰瘍累積発生率の検討 消化性潰瘍既往のある LDA 内服開始する患者に対して,ランソプラゾール内服群とゲファルナート内服群で消化性潰 瘍の累積発生率を比較検討したところ,ランソプラゾール群はゲファルナート群と比較して消化性潰瘍再発率を低下さ せた. (文献 2 より引用) — 145 —解説LDA 起因性潰瘍にファモチジン 40 mg 群と pantoprazole 20 mg 群における 48 週後の潰瘍もしくは出血の再発を検討したところ,LDA 80 mg の継続投与では,消化性潰瘍もしく
図 1 胃・十二指腸側々吻合術(Jaboulay 法)潰瘍 切開 胃 十二指腸 図 2 Findterer-Bancroft 手術 胃体部前庭部境界に漿膜筋層切開をおき,前庭部の粘膜のみ切除する.粘膜断端と前庭部の漿膜筋層をそれぞれ縫合 切開する.

参照

関連したドキュメント

Methods: IgG and IgM anti-cardiolipin antibodies (aCL), IgG anti-cardiolipin-β 2 glycoprotein I complex antibody (aCL/β 2 GPI), and IgG anti-phosphatidylserine-prothrombin complex

 高齢者の外科手術では手術適応や術式の選択を

参考 日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第 2 版改訂版

10 Ma tsud a S, e t a l: Comparison of transthoracic esophag ecto my with de fin itiv e chemoradio the rapy as initia l trea tmen t for pa tien ts with e sophagea l squamous cell ca

輸送上の注意 ADR/RID RID陸上 陸上 陸上 国連番号 品名 国連分類 副次危険性 容器等級 海洋汚染物質 IMDG IMDG海上 海上 海上 国連番号 品名 国連分類

試験タイプ: in vitro 染色体異常試験 方法: OECD 試験ガイドライン 473 結果: 陰性.

We present sufficient conditions for the existence of solutions to Neu- mann and periodic boundary-value problems for some class of quasilinear ordinary differential equations.. We

(1) 送信機本体 ZS-630P 1)