• 検索結果がありません。

委員会報告 2019;26: post-intensive care syndrome PICS 日本集中治療医学会 PICS 対策 生活の質改善検討委員会 PICS 対策 生活の質改善検討委員会 (Ad Hoc) は, 本邦の診療現場における post-intensive care

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "委員会報告 2019;26: post-intensive care syndrome PICS 日本集中治療医学会 PICS 対策 生活の質改善検討委員会 PICS 対策 生活の質改善検討委員会 (Ad Hoc) は, 本邦の診療現場における post-intensive care"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日集中医誌 2019;26:467-75.

委員会報告

要約:PICS対策・生活の質改善検討委員会(Ad Hoc)は,本邦の診療現場におけるpost-inten- sive care syndrome (PICS)の実態を把握するために,日本集中治療医学会会員を対象とし,

診療現場におけるPICSの実態調査を実施した。453名から回答を得た。PICSやABCDEFバ ンドルの認識度は約6割であった。実践しているPICS介入では,早期リハビリテーションが 92%であった。しかしながら,ICU患者の退室時あるいは退院時の身体・認知・精神機能障 害,QOLの評価は約1割程度にとどまっていた。また現時点では,PICS外来やPICSラウン ドを全ての患者で行っていると回答した割合は1%未満であった。ICU患者の長期予後を改善 するために,今後はさらなるPICSの認知・実態評価・予防・治療・フォローアップ・啓発活 動を,システマティックに実臨床で展開していくことが重要と考えられる。

Key words: ①post-intensive care syndrome, ②critically ill, ③outcome, ④survey

本邦の診療現場における post-intensive care syndrome

( PICS )の実態調査

日本集中治療医学会PICS対策・生活の質改善検討委員会

†著者連絡先:一般社団法人日本集中治療医学会(〒113-0033 東京都文京区本郷3-32-7 東京ビル8階)

受付日2019年 7 月17日

採択日2019年 7 月22日 一二三 亨(聖路加国際病院救急部)

河合 佑亮(藤田医科大学病院看護部)

宇都宮明美(京都大学医学部附属病院看護部)

飯田 有輝(海南病院リハビリテーション技術科)

剱持 雄二(東海大学医学部付属八王子病院看護部)

中村 謙介(日立総合病院救命救急センター)

畠山 淳司(東京医療センター救命救急センター)

山川 一馬(大阪急性期・総合医療センター救急診療科)

井上 茂亮( 神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急 医学分野)

西田  修(藤田医科大学医学部麻酔・侵襲制御医学講座)

緒 言

集中治療領域における比較的短期の生命予後は,集 中治療医学の発展とエビデンスの集積,診療ガイドラ インの普及などにより,近年目覚ましく改善してきて

いる1),2)。ICUにおける補助循環・呼吸装置の技術革

新やガイドラインによる診療レベルの向上と標準化,

教育プログラムの充実により,この四半世紀で救急・

集中治療医学は劇的な進化を遂げ,ICU死亡率や28日 生存率などICU患者の短期的なアウトカムは飛躍的に 改善したものの,彼らの長期予後や生活の質(QOL)は いまだ改善していない3)。約2,000名の敗血症患者を 対象とした2つの多国籍RCTでは,ICUを退室した患 者の3分の1は6ヶ月以内に死亡しており,生存者のう ち,さらに3分の1には6ヶ月後に何らかの機能障害が 残存し,activities of daily living(ADL)が障害されて いた3)。このような中,ICUに長期間入室した生存者 の多くは,ICU退室後さらには退院後も長期間に及

ぶ,身体機能障害や不安・ストレス障害・posttrau- matic stress disorder(PTSD)などの精神機能障害,

記憶・注意・実行機能低下といった認知機能の低下が 生じ,社会復帰が困難となっていることが明らかにな り,post-intensive care syndrome(PICS)として認識 されてきている4),5)。さらに,PICSは患者家族に対し ての精神的影響も含むものとして認識され始めてお り,その裾野の広さは計り知れないものとなってきて いる。少子高齢化が進む中で,集中治療により救命し てもその多くが要介護となるような構図は社会的に見 ても決して健全な状態とは言えず,集中治療の存在自 体が揺るぎかねない潜在的な問題をはらんでいる。

PICSの理解とそれに対する介入は,集中治療を受け る患者の救命の先にある社会復帰を目標とすべきもの であり,日本集中治療医学会が中心となって,集中治 療に直接関わらない医療従事者との連携も含めて取り 組むべき課題であると考える。すでに,「日本版敗血 症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016)」において欧

(2)

米に先駆けて,啓発を兼ねてPICSを取り扱った6),7)。 高齢化は未曾有の速さで進行しており,今後確実に 高齢化社会は到来すると思われるため,我々が直面す るPICSについて改めて考え,ICUを退室した患者一 人ひとりの「QOL」の改善に少しでも寄与できる対策 を打ち立てる必要がある。このため我々は,本学会に おいて,「PICS対策・生活の質改善検討委員会(Ad Hoc)」を立ち上げた。PICSに関連する多職種のエキ スパートで構成される本委員会の目的は,本邦におけ るPICSの現状に基づいた適切なPICS予防や治療法 を見出し,新たなエビデンスの創出につなげ,保険診 療とすることで,ICU患者の長期予後改善に貢献でき るよう尽力することである。

このようにPICSは新たな集中治療領域の問題とし て近年大きく注目されているものの,どのような患者 が,いつどのような経過をたどりPICSに陥るか,また そのPICSの症状がいつまで遷延するのかは十分評価 されていない。さらに,集中治療医や集中治療看護師,

コメディカルがどの程度PICSを認知し,どのような PICSの予防や治療に関連したプラクティスを実践し ているかについても十分検討されていない。このこと から,まず本邦の診療現場におけるPICSの実態を把 握するために,本学会員を対象にアンケート調査を実 施した。

調査方法

調査形式はアンケート調査の形式とした。

「本邦の診療現場におけるPICSの実態調査」は,日 本集中治療医学会の会員を対象とし,2019年4月8日 から4月22日までの2週間にわたり実施した。調査は インターネットを通して無記名のアンケート方式で行 い,IPアドレスの制限により重複して回答できないよ うにした。

調査項目は,日本集中治療医学会の会員の職種,経 験年数など基礎背景に加えて「『PICS:Post-Intensive Care Syndrome』という用語や疾患概念は,ICUで周 知され使用されていますか?」,「『ABCDEFバンドル』

という用語は,ICUで周知され使用されています か?」,「家族の精神障害(PICS-F)に対する何らかの 介入を実施していますか?」,「ICU患者の退室時ある いは退院時などに,身体機能評価をしていますか?」,

「ICU患者の退室時あるいは退院時などに,QOLの評 価をしていますか?」,「あなたの施設はPICS対策を 十分に実施できていると思われますか?」など,30項 目とした(Table 1)。

 結 果

日本集中治療医学会員10,550名(アンケート配信 時)に対し,計453名より回答を得た。そのうち,回答 完了済みが449名であった。回答者の職種は集中治療 医が33%,麻酔科医が21%,救急医が21%,内科医が 3%,外科医・小児科医がともに2%,その他の医師が 1%(医師は科の重複を含む)であった。看護師が 38%,理学療法士が11%,臨床工学技士・薬剤師がと もに1%,その他が1%であった。集中治療領域での経 験年数は 20 年超が 19%,15 〜 20 年が 15%,10 〜 15 年 が 25%,6 〜 10 年 が 27%,3 〜 5 年 が8%,1〜3年 が6%,1年未満が1%であった。所属施設に関しては,

大学病院42%,国公立病院24%,民間病院30%,その 他3%であった。主として勤務している部署は,closed ICUが16%,semi-closed ICUが49%,open ICUが 24% , stroke care unit(SCU)が1%,PICUが3%,

neonatal intensive care unit(NICU)が1%,high care unit(HCU)が17%,CCUが8%,救急病棟が16%,成 人一般病棟が10%,小児病棟1%,その他が8%であっ た。Closed ICU・semi-closed ICU・open ICUと回答 し た う ち,一 般ICU76%,内 科 系ICU2%,外 科 系 ICU9%,救命救急センターICU35%,その他3%(複数 回答可),さらにICUのベッド数と個室の数について は平均12床,個室の数は6部屋であった。部門長は 21%であった。

1

)多職種カンファレンス

多職種カンファレンスの実施頻度については,毎日 が57%,週3回程度10%,週1回程度15%,月に数回 が7%,ほとんど行っていないが10%であった。多職種 カンファレンスに参加する職種は,集中治療医77%,

リハビリテーション科医14%,各科の医師60%,看護 師97%,臨床工学技士49%,理学療法士74%,作業療 法士13%,言語聴覚士5%,薬剤師62%,栄養士30%,

患者2%,患者の家族0.5%(複数回答可)であった。

2

PICS

「『PICS:Post-Intensive Care Syndrome』という用 語や疾患概念は,ICUで周知され使用している」と回 答した割合が61%であった。

職種別に検討すると,医師69%,看護師50%,理学 療法士・作業療法士71%であった(Fig. 1)。

3

ABCDEF

バンドル

「『ABCDEFバンドル』という用語は,ICUで周知さ れ使用している」が57%であった。

職種別に検討すると,医師56%,看護師54%,理学 療法士・作業療法士73%であった(Fig. 2)。

(3)

Table 1 本邦の診療現場におけるPICSの実態調査に関する調査項目 質問1 あなたの職種を教えてください。

質問2 あなたの集中治療領域での経験年数について教えてください。

質問3 質問1で医師と回答された方に質問です。あなたは集中治療専門医の資格を持っていますか?

質問4 あなたの所属施設について教えてください。

質問5 可能であれば病院名(施設名)を教えてください。※部署名(ユニット名)もご記載ください。

質問6 あなたの所属施設の病床数について教えてください。

質問7 あなたが主に勤務している部署について教えてください。

質問8 質問7でICUと回答された方に質問します。ICUの種類を教えてください。

質問9 質問7でICUと回答された方に質問します。ICUのベッド数とそのうちの個室の数を教えてください。

質問10 あなたは部門長ですか?

質問11 多職種カンファレンスの実施頻度を教えてください。

□毎日 □週3回程度 □週1回程度 □月に数回 □ほとんど行っていない 質問12 多職種カンファレンスに参加する職種を教えてください。(複数回答可)

□集中治療医 □リハビリテーション科医 □各科の医師 □看護師 □臨床工学技士

□理学療法士 □作業療法士 □言語聴覚士 □薬剤師 □栄養士 □患者 □患者の家族

質問13 『PICS:Post-Intensive Care Syndrome』という用語や疾患概念は,ICUで周知され使用されていますか?

質問14 『ABCDEFバンドル』という用語は,ICUで周知され使用されていますか?

質問15 あなたの施設では下記介入を実践していますか? 実践している介入を教えてください。(複数回答可)

□非薬理学的せん妄・睡眠ケア(光・アラーム,騒音対策,音楽療法,身体抑制の制限など)

□早期リハビリテーション(疾患の新規発症,手術または急性増悪から48時間以内に開始するリハビリ)

□患者のケアやリハビリテーションへの家族の参加,家族の関わりの調整

□面会時間の調整・制限の緩和 □患者や家族へのPICSに関する書面での情報提供

□ICU日記 □PICSに関する情報を含めた転棟先・転院先への申し送り・伝達 

□医療従事者に対するPICSに関する啓発活動 

□一般の方に対するPICSに関する啓発活動 □その他

質問16 質問15において「早期リハビリテーションを実践している」と回答した方に質問します。

リハビリテーション科医(以下,リハ科医)の診察やリハビリの処方について教えてください。

□依頼したその日のうちにリハ科医が診察・処方することが多い

□翌日以降にリハ科医が診察・処方することが多い

□リハ科医はコンサルテーションなどの形式で関与 □リハ科医はほとんど関与していない 質問17 質問15において「ICU日記を実践している」と回答した方に質問します。

あなたの施設でのICU日記の実施頻度を教えてください。

□毎日1名以上の患者に実施している □週3回程度は1名以上の患者に実施している

□週1回程度は1名以上の患者に実施している □月に数回程度1名以上の患者に実施している 質問18 家族の精神障害(PICS-F)に対する何らかの介入を実施していますか?

□はい □行っていないが予定はある □行っていないし予定もない 質問19 ICU患者の退室時あるいは退院時などに,身体機能評価をしていますか?

□全ての患者で行っている □一部の患者で行っている 

□行っていないが予定はある □行っていないし予定もない

質問20 ICU患者の退室時あるいは退院時などに,認知機能評価をしていますか?

□全ての患者で行っている □一部の患者で行っている 

□行っていないが予定はある □行っていないし予定もない

(4)

Table 1 本邦の診療現場におけるPICSの実態調査に関する調査項目(つづき)

質問21 ICU患者の退室時あるいは退院時などに,精神障害の評価をしていますか?

□全ての患者で行っている □一部の患者で行っている 

□行っていないが予定はある □行っていないし予定もない

質問22 ICU患者の退室時あるいは退院時などに,QOLの評価をしていますか?

□全ての患者で行っている □一部の患者で行っている 

□行っていないが予定はある □行っていないし予定もない 質問23 ICU退室後の患者の長期転帰をフォローする体制はありますか?

□はい □行っていないが予定はある □行っていないし予定もない

質問24 ICU退室後のPICS症状の診療を目的としたフォローアップ外来(PICS外来)をしていますか?

□全ての患者で行っている □一部の患者で行っている 

□行っていないが予定はある □行っていないし予定もない

質問25 ICU退室後のPICS症状の診療を目的としたフォローアップラウンド(一般病棟に対するPICSラウンド)をして いますか?

□全ての患者で行っている □一部の患者で行っている 

□行っていないが予定はある □行っていないし予定もない 質問26 亡くなった患者の家族をフォローアップする介入をしていますか?

□全ての患者で行っている □一部の患者で行っている 

□行っていないが予定はある □行っていないし予定もない 質問27 面会時間を制限していますか?

□面会時間を制限していない(一般病棟と同じ時間である)

□制限しているが,今後面会時間を拡大する予定がある  

□制限しているし,今後面会時間を拡大する予定もない □その他 質問28 面会できる人を制限していますか?

□面会できる人を制限していない(一般病棟と同じである)

□制限しているが,今後面会できる人を拡大する予定がある

□制限しているし,今後面会できる人を拡大する予定もない □その他 質問29 あなたの施設はPICS対策を十分に実施できていると思われますか?

□十分に実施できている □やや実施できている 

□あまり実施できていない □実施できていない

質問30 質問29で十分に実施できていると回答された方以外に質問します。

PICS対策が実施できない理由を教えてください。(複数回答可)

□多職種の連携不足 □スタッフの知識不足 □マニュアルの不足

□マンパワーの不足 □設備の不足 □システムの不足

4

PICS

介入(施設で実践している介入)

PICS介入については,「早期リハビリテーション

(疾患の新規発症,手術または急性増悪から48時間以 内に開始するリハビリ)」が最多の92%であり,「非薬 理学的せん妄・睡眠ケア」が2番目に多く,66%で あった(Fig. 3)。

5

)早期リハビリテーション

「早期リハビリテーションを実践している」と回答

した410名のうち,39%が「依頼したその日のうちに リハ科医が診察・処方することが多い」と回答した

(Fig. 4)。

6

ICU

日記

「ICU日記を実践している」と回答した300名のう ち,33%(24/73)が毎日1名以上の患者に実施してい ると回答した。

(5)

Fig. 1 「PICS:Post-Intensive Care Syndrome」という用語や疾患概念が,ICUで周知され使用してい ると回答した職種別割合

Fig. 2 「ABCDEFバンドル」という用語が,ICUで周知され使用していると回答した職種別割合

Fig. 3 回答者の施設で実践しているPICSに対する介入(n=444:複数回答含む)

早期リハビリテーション:疾患の新規発症,手術または急性増悪から48時間以内に開始するリハビリテーション 非薬理学的せん妄・睡眠ケア:光・アラーム,騒音対策,音楽療法,身体抑制の制限など

患者ケアや家族の関わりの調整:患者のケアやリハビリテーションへの家族の参加,家族の関わりの調整

7

)家族の精神障害(

PICS-F

)に対する介入

「PICS-Fへの何らかの介入を実施している」が17%

であった。「行っていないが予定はある」が26% , 「行っ ていないし予定もない」が56%であった。

8

ICU

患者の退室時あるいは退院時の身体機能評価 19%が「全ての患者で行っている」,その一方で35%

が「行っていないし予定もない」であった(Fig. 5)。

9

ICU

患者の退室時あるいは退院時の認知機能評価 12%が「全ての患者で行っている」,その一方で44%

が「行っていないし予定もない」と回答した(Fig. 5)。

10

ICU

患者の退室時あるいは退院時の精神障害

の評価

9%が「全ての患者で行っている」,その一方で49%

が「行っていないし予定もない」と回答した(Fig. 5)。

11

ICU

患者の退室時あるいは退院時の

QOL

の評価 9%が「全ての患者で行っている」,その一方で50%

が「行っていないし予定もない」と回答した(Fig. 5)。

12

ICU

退室後の患者の長期転帰のフォロー体制 7%が「長期転帰のフォロー体制がある」に対して,

24%が「行っていないが予定はある」,さらに69%は 0

n医師220

n看護師167 理学療法士 作業療法士 n51

周知され使用している 周知され使用していない

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100%

0 n医師221

n看護師167 理学療法士 作業療法士 n51

周知され使用している 周知され使用していない

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100%

0 早期リハビリテーション

患者ケアや家族の関わりの調整 医療従事者に対するPICSに関する啓発活動

一般の方に対するPICSに関する啓発活動 ICU日記

その他 患者や家族へのPICSに関する書面での情報提供 転出先へのPICS情報の申し送り・伝達 面会時間の調整・制限の緩和 非薬理学的せん妄・睡眠ケア

10 20 30 40 50 60 70 80 90

92.1

59.5 49.3 30.0

8.6 2.5 2.3

100%

13.5 15.1

66.2

(6)

「行っていないし予定もない」と回答した。

13

PICS

外来

ICU退室後のPICS症状の診療を目的としたフォ ローアップ外来(PICS外来)について,0.5%が「全て の患者で行っている」,その一方で89%が「行ってい ないし予定もない」と回答した(Fig. 6)。

14

PICS

ラウンド

ICU退室後のPICS症状の診療を目的としたフォ ローアップラウンド(一般病棟に対するPICSラウン ド)について,0.7%が「全ての患者で行っている」,そ の一方で71%が「行っていないし予定もない」と回答 した(Fig. 6)。

15

)亡くなった患者の家族をフォローアップする介入 0.9%が「全ての患者で介入を行っている」,その一

Fig. 5 ICU退室時あるいは退院時の機能評価(n=441)

Fig. 6 ICU退室後におけるPICSに対する介入(n=437)

方で80%が「行っていないし予定もない」と回答した

(Fig. 6)。

16

)面会:時間制限

24%が「面会時間を制限していない」,その一方で 44%が「制限しているし,今後面会時間を拡大する予 定もない」と回答した(Fig. 7)。

17

)面会:人の制限

18%が「面会できる人を制限していない」,その一方 で59%が「制限しているし,今後面会できる人を拡大 する予定もない」と回答した(Fig. 8)。

18

)施設での

PICS

対策

0.9%が「十分に実施できている」と回答し,32%が

「実施できていない」と回答した(Fig. 9)。

Fig. 4 「早期リハビリテーションを実践している」と回答した方の施設におけるリハビリテーション科

医の診察やリハビリの処方(n=410)

39%

11% 16%

34% 依頼したその日のうちにリハ科医が診察・処方することが多い 翌日以降にリハ科医が診察・処方することが多い

リハ科医はコンサルテーションなどの形式で関与 リハ科医はほとんど関与していない

0 身体機能

認知機能 精神障害 QOL

全ての患者で行っている 一部の患者で行っている 行っていないが予定はある 行っていないし予定もない

20 40 60 80 90

10 30 50 70 100%

0 PICS外来 PICS ラウンド フォローアップ家族の

全ての患者で行っている 一部の患者で行っている 行っていないが予定はある 行っていないし予定もない

20 30 50 70 90

10 40 60 80 100%

(7)

Fig. 7 面会時間の制限(n=442)

Fig. 8 面会者の制限(n=443)

Fig. 9 回答者の施設はPICS対策を十分に実施できているか(n=446)

19

PICS

対策ができていない理由

「スタッフの知識不足」が71%,「マンパワーの不足」

が69%であった(Fig. 10)。

考 察

本邦でのPICSの現状を明らかにすることを目的と して,インターネットを利用したアンケート調査を 行った。PICSやABCDEFバンドルの認識度は約6割 であった。実践している介入では,早期リハビリテー ション(疾患の新規発症,手術または急性増悪から48 時間以内に開始するリハビリ)が92%であった。しか しながら,ICU患者の退室時あるいは退院時の身体・

認知・精神機能障害,QOLの評価は約1割程度しか全 患者で行っていると回答していない。また現時点では,

PICS外来やPICSラウンドを全ての患者で行っている

と回答した割合は1%未満であった。

PICSやABCDEFバンドルの認識度が約6割を認め たのは,本アンケート回答者の約2割を各職種の部門 長が占めていることや,集中治療領域での経験年数が 10年以上の回答者が約6割を占めていることなど,ア ンケート回答者のselection biasが関係している可能 性 が あ る。 そ の 一 方 で,日 本 集 中 治 療 医 学 会 は,

J-SSCG2016において世界に先駆けてPICSに関する CQを掲げ8),9),その後の集中治療早期リハビリテー ション委員会,PICS対策・生活の質改善検討委員会 などでの積極的な啓発活動が一定の成果をあげたとも 考えられる。

早期リハビリテーションは約9割が実践している介 入として回答した。これは日本集中治療医学会集中治 療早期リハビリテーション委員会が施行した2018年

面会時間を制限していない(一般病棟と同じ時間である)

制限しているが,今後面会時間を拡大する予定がある 制限しているし,今後面会時間を拡大する予定もない その他

24%

44% 20%

12%

面会できる人を制限していない(一般病棟と同じである)

制限しているが,今後面会できる人を拡大する予定がある 制限しているし,今後面会できる人を拡大する予定もない その他

18%

17%

59%

6%

十分に実施できている やや実施できている あまり実施できていない 実施できていない 19%

48%

32%

0.9%

(8)

Fig. 10 「PICS対策を十分に実施できている」と回答した方以外の施設におけるPICS対策が実施できな  い理由(n=422:複数回答含む)

度集中治療室におけるリハビリテーションの現状調査 結果と一致する10)。J-SSCG2016でPICSの予防に早 期リハビリテーションを弱く推奨したこと8),9),さら に上記の委員会活動や2018年より新設された「早期 離床・リハビリテーション加算」により,現状では集 中治療患者において高率に早期リハビリテーションが 展開されてきている。

しかしながら,ICU患者の退室時あるいは退院時の 身体・認知・精神機能障害,QOLの評価は約1割程度 しか「全患者で行っている」と回答していないことか ら,認識をしていても実践にまで,特に施設全体とし ての実施までには至っていないのが現状である。今回 のアンケート調査の最後の質問において,PICS対策 ができない理由としては「スタッフの知識不足」や「マ ンパワーの不足」が約7割の回答であった。よって,

今後委員会としてさらなる啓発活動や実際のモデル ケースを確立して,人員確保が可能となる方法を提案 して行く必要がある。

PICSに関して現時点ではエビデンスは限定的であ り,さらなるエビデンスを確立するための臨床研究を 行うには,ICU患者の退室時あるいは退院時の身体・

認知・精神機能障害,QOLの評価が必要となるため,

後ろ向き観察研究が難しい環境である。そのため,本 研究においてもICU退室後の患者の長期転帰のフォ ロー体制について,現状では7%が「長期転帰のフォ ロー体制がある」に対して,24%が「行っていないが 予定はある」との回答があるので,そのような施設に 学会として声かけをしながら多施設前向き研究を展開 していくことも検討していかなければならない。実際 に医療機関で長期転帰フォローをするためには,コス ト面や実際の診療ブースの確保,院内での他科との調 整(特にPICSに関わる科として重要な精神科),診療 を行う看護師や医師の確保など諸懸案を解決する必要 がある。ICU退室後の患者の長期転帰のフォロー体制 の確立は,現状の治療における長期アウトカムの評価 が可能となり,患者家族のフォローなども含めた結果,

患者・患者家族に満足のゆく医療提供が可能になると 考える。

結 語

本邦でのPICSの現状を明らかにすることを目的と して,インターネットを利用したアンケート調査を施 行した結果,PICSやABCDEFバンドルの認識度は約 6割であった。実践している介入では約9割が早期リ ハビリテーションと回答した。しかしながら,ICU患 者の退室時あるいは退院時の身体・認知・精神機能障 害,QOLの評価は約1割程度しか「全患者で行ってい る」と回答していない。また,現時点ではPICS外来や PICSラウンドを「全ての患者で行っている」と回答し た割合は1%未満であった。ICU患者の長期予後を改 善するために,今後はさらなるPICSの認知・実態評 価・予防・治療・フォローアップ・啓発活動を,シス テマティックに実臨床で展開していくことが重要と考 えられる。

本論文の記述内容に関して,著者全員に利益相反(COI)は ない。

文 献

1) Mukherjee V, Evans L. Implementation of the Surviving Sepsis Campaign guidelines. Curr Opin Crit Care 2017;23:

412-6.

2) Levy MM, Rhodes A, Phillips GS, et al. Surviving Sepsis Campaign: association between performance metrics and outcomes in a 7.5-year study. Crit Care Med 2015;43:3-12.

3) Yende S, Austin S, Rhodes A, et al. Long-Term Quality of Life Among Survivors of Severe Sepsis: Analyses of Two International Trials. Crit Care Med 2016;44:1461-7.

4) Needham DM, Davidson J, Cohen H, et al. Improving long-term outcomes after discharge from intensive care unit: report from a stakeholders’ conference. Crit Care Med 2012;40:502-9.

5) Elliott D, Davidson JE, Harvey MA, et al. Exploring the scope of post-intensive care syndrome therapy and care:

engagement of non-critical care providers and survivors in a second stakeholders meeting. Crit Care Med 2014;42:

2518-26.

6) Nishida O, Ogura H, Egi M, et al. The Japanese Clinical 80%

70 71 69

46 44 20

スタッフの知識不足 マンパワーの不足 システムの不足 多職種の連携不足 マニュアルの不足 設備の不足

60 50 40 30 20 10 0

49

(9)

Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2016 (J-SSCG 2016). Acute Med Surg 2018;5:3-89.

7) Nishida O, Ogura H, Egi M, et al. The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2016 (J-SSCG 2016). J Intensive Care 2018;6:7.

8) Doi K, Nishida O, Shigematsu T, et al. The Japanese clinical practice guideline for acute kidney injury 2016.

Clin Exp Nephrol 2018;22:985-1045.

9) Doi K, Nishida O, Shigematsu T, et al. The Japanese Clinical Practice Guideline for acute kidney injury 2016. J Intensive Care 2018;6:48.

10) 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員 会.2018年度集中治療室におけるリハビリテーションの 現状調査結果.Available from: https://www.jsicm.org/

news/news190612.html

A questionnaire survey regarding recog- nition and clinical practice of post-inten- sive care syndrome in Japan

The committee on PICS management and improvement of quality of life, Japanese Society of Intensive Care Medicine

J Jpn Soc Intensive Care Med 2019;26:467-75.

参照

関連したドキュメント

【大塚委員長代理】 はい、お願いします。. 【勝見委員】

不適合 (第二)地下水基準不適合として調製 省略 第二地下水基準不適合として調製 不適合.

ポイ イン ント ト⑩ ⑩ 基 基準 準不 不適 適合 合土 土壌 壌の の維 維持 持管 管理

【細見委員長】 はい。. 【大塚委員】

廃棄物の排出量 A 社会 交通量(工事車両) B [ 評価基準 ]GR ツールにて算出 ( 一部、定性的に評価 )

関谷 直也 東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター准教授 小宮山 庄一 危機管理室⻑. 岩田 直子

【外部有識者】 宇田 左近 調達委員会委員長 仲田 裕一 調達委員会委員 後藤 治 調達委員会委員.

二月八日に運営委員会と人権小委員会の会合にかけられたが︑両者の間に基本的な見解の対立がある