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酵母細胞壁の生化学的研究 第3報 寡糖類の細胞壁透過について シュウクロース,マルトースの細胞外分解 (Ⅰ)

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酵 母 細 胞

     第3報

 壁 の 生 化 学 的 研 究

寡糖類の細胞壁透過について

シュウクロース,マルトースの細胞外分解 (工) 長 崎    亀 ・ 苅 谷 泰 弘* (高知大学農学部農芸化学科)        緒     言  前報において細胞質膜にホスファターゼ(1)およびヘキソキナーゼ(2)が相当密に分布しているこ とを観察し,ヘキソキナーゼがヘキソースの透過に重要な(パーミアーゼ的な)役割を果している のではないか,と考えた。ヘキソーズ透過におけるヘキソキナーゼのこの役割についてはまだ確認 していないが,もう少し押し広げて糖類一般の透過に寄与・しているのではないかということも想像 される。この想像は糖類が細胞外でヘキソースに分解されてから利用されることを前提としてい る。  従来,酵母による複糖類の利用方法については,直接透過を前提とした直接発酵と,細胞外での 氷解を前提とする氷解後発酵との二説があり,その主張する根拠もそれぞれもっともと思われるも のである。しかし最近シュウクロースとマルトースはそれぞれ異なった方法によって利用されてい るという見方が強くなっている。すなわち,シュウクロースについてはインベルターゼの分布位置 決定の試み(3.4)と関連して氷解後発酵という意見が強く支持されるようになり(シュウクロースの 発酵液中にヘキソースが存在することも認められた)(5)。マルトースについてはその発酵速度から 直接発酵が指摘されていたのであるが(6),ラベルしたマル・トースを使っての実験からマルトースパ ーミアーゼの存在が推定され(7),ますますその可能性か大となって来ている。しかしながら,これ らの研究結果についてもなお2,3の疑問がある。 たとえば,マルトースパーミアーゼは仮定上の 物質であること,および,細菌において種々の酵素類が細胞壁には認められず細胞質膜に分布して いることが指摘されているが,同じような体制をしている酵母においてインベルターゼが細胞質膜 でなくその外側の細胞壁中に存在すると主張されている(3.4)ことなどである。  そこで本実験においては,マルトースの細胞外分解か確かに起らないか,シュウクロースは確か に細胞外で分解されているか,そしてインベルターゼは細胞質膜に存在しないのか,という点を主 として追究しこれら糖類の透過機構を考察する資料とした。       実験ならびに考察  1.ヘキソーズ透過阻害剤にモノヨード酢酸を用いることについて  シュウクロース,マルト ースガ細胞外で分解されることを証明する一つの方法として,これらの分解物を細胞外液中で確認 することが考えられる。 先に著者らは細胞質膜にヘキソキナーゼが密に分布していることを見(2) て,との意義としてヘキソースに対するパーミアーゼ的役割を想像した。そこでヘキソキナーゼの 阻害剤であるモノヨード酢酸を使用すればシュウクロースおよびマルトースの氷解物であるヘキソ ースが細胞外に蓄積するので確認し易いだろうと考えた。ヘキソキナーゼ阻害能のあるモノヨード 酢酸の存在下ではグルコースか細胞内に透過してゆかないことを確かめるため,イヌリンスペー戈 法(8)を応用した実験とC'"-グルコースを用いる実験とを行なった。 実験結果はそれぞれ第1表, 第2表に示してある。 * 現在京都大学化学研究所 (1)

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100   高知大学学術研究報告 第12巻  自然科学 Ⅱ 第11号’      −   一一 第1表  酵母を粘液に浸漬した場合の糖濃度の変化(mg/ml上澄液)

二大

キシロース ガラクトース* グルコース イ ヌ リ ン  0  0.5  2 18    35 32.5 (32.6) 32. 5 (3. 26) 32.5 (32.0)   35 32. 6 (32. 7) 32.5 32. 4 (32. 4)    35   曇31.4 (31.4) 30.3 31.4   27.0 31.4(30.93) 0   35 32.9 (32.6)   (32. 5) 31.8 (32.1) Total sugar/Final sugar/ml 43. 1 (44. 0) 43. 1 (43. 2) 44,5 (45.2) 44. 2 (44. 0) 註。糖液(35mg/ml) 40 mlに酵母塊(1,000 G 15 分逮沈の沈殿よりとる)を全丘£が50 mlになる  ように入れ,均−にし,一定時間毎に遠沈(1,000 G 15分)上澄中の糖を定量。( )内は煮沸  死酵母について,*は1/65 M. 終濃度のモノヨード酷酸共存,イヌリン(重量法)以外は還元  力測定による。  第1表におけるTota】sugar/Final sugar/m目ま糖が均一に拡敞あるいは惨透したと考えた場合 のその容積を示すが,これか45 ml を越えないということは細胞内に透過して行かないことを示し ている。その理由は次の計算による:  酵母柴直径5μの球と仮定し約L OOOGの遠沈によりこの球が変形せずに密接に並んだとする(8) そうすると10 m1 の酵母塊は約6.98 mlの細胞と約3.02 m1 の開隙水より成ることになる。この酵 母を40mlの糖液に懸濁させると,細胞外の水はだいたい40ml + 3.02ml = 43.02mlということにな る。ところが細胞壁は比較的疎にできており,また親水性であるから,この部分にも糖液は拡散す る。この容積はHilda D. Agar(9)らの超薄切片電顕像から判断して約0.33μの細胞壁厚を有す る,と仮定すれば10mlの酵母塊は約2.42mlの細胞壁部分を有すると計算される。従って糖液が細 胞内に入らない場合43.02 ml + 2.42 m1 = 45.44 m1 およそ45mlに拡散する訳である。        第2表  モノヨード酢酸存在下C14−グルコース液浸漬酵母のカウント分布 上澄液 洗  液 菌      体 浸清2時間後のカウント カウント分布割合 88,800 cpm 88.8 % 5,800 com  5.8 % 5J)・p祠貿斜辺ソ00 c『) 5.3 % (*6.9%)    註.4%グルコース溶液11.5 ml (20μCのC'"-グルコースを含む, 100,000 cpm)に4mlの酵母     塊を加えて2時開放回後逮沈し,沈殿(4m1)と上澄液(11. 5mnに分け,沈殿は3回水洗,洗液     は合せて50 mlとし,上澄液,洗液,菌体各区分のカウントを測定した.菌休区分は更にカタッ     ムリ消化液で細胞壁区分とプロトプラストに分別した(脚註).モノヨ.一ド酢酸終濃度M/63o *:     細胞壁区分に惨透すべき計算値で      ’      {細胞壁の容積/U. 5mH-1.45ml (細胞間隙水)十〇.97ml (細胞些の容積)}×lOOo

    C14ゞグルコース:3. lmc/molS) Radiochemical purity・99. 5%

 更にこのことを確かめるために第2表の実験を行なったのであるが,モノヨード酢酸存在下では 菌体区分には全体のカウントの5.3%が存在し,(細胞内部に入らないとして細胞壁区分にあるべき 註:プロトプラストの作り方;完全酵母l g,カタツムリ消化液0.66ml,JO%ポリエチレングリコ  ール5.5ml, PH6. 0のリン酸緩衝液8.3 mlの割合にまぜ合せ水を加えて17 m1 にした反応液を  30°Cに保つ。酵母が沈殿しないように時々静かにまぜて50分程すれば細胞壁は溶解する。この  間位相差顕微鏡で常に観察を続ける。酵母の種類年令などによってプロトプラスト製作に剣易が  ある。1,000 r. p. m. 5分の分別遠沈により細胞壁区分(上澄液)とプロトプラスト区分(沈殿)と  に分ち得る。文献[])参照。       (2)

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       酵母細胞壁の生化学的研究(3)    (長崎・苅谷)         101 カウントの割合を計算すれば匠y曼万万玉口実測値が少ないのは洗濡による流失,あるいは,計算        一一 値が細胞壁の容積そのものに拡散するとしていることによる誤差と考えられる。)しかも菌休を細 胞壁とプロトプラストに区分すると細胞壁区分のみにあって,細胞内部には入っておらない。  以上の実験によってモノヨード酢酸存在下ではグルコースが細胞内部に入って行かないことか判 明した。  2.酵母によるシュウクロ' −スよりヘキソースの蓄積 酵 母によるシェウクロースの発酵 波を径時的に分析すれば,イン ベルターゼ作用が強力なために 初期において相当量の転化糖が 蓄積することは良く知られた事 実である。この転化糖は間もな く消費されるか,一方モノヨー ド酢酸を入れておくと転化糖は 反応液中に蓄積したまま残る (第1図)。モノヨード酢酸の存 在下でグルコースの出入はない か飢・この現象はシュウクロー スが細胞外で分解されているこ とを推定させる(C14−シュウク ロースを使った実験によりグル コースとフラクトースを検出し た)。  ろ: インベルターゼの分布 シュウクロースが細胞外で分解 される事実を観察したが,この 裏付けとしてインベルターゼが 細胞外にあることを証明すれば 一層確実なものとなる。 J. Best(3)はインベルターゼが細 胞壁にあるといっているか,こ れは著者らの見解と反するので このことを更に詳しく調査して みた。  第2図はソニケート,細胞壁 区分,プロトプラストおよびイ ンタクト細胞のインベルターゼ 作用力を測定したものである が,細胞壁区分にかなり強い作 用が認められる。またこのソニ ケートは超音波処理を行なった 酵母懸濁波そのままで,細胞破 片も完全細胞も取り除いてない ものであるから,この転化糖生 成カーブが完全細胞のカーブよ '︱︱ a* − 0    0 en C\j  jui/Siu   旧 郭邸J S‘○こ○’○-○-○-○-○-○-○-○- 9●。。 ●`●\ ●へ ●へ●へ ●へ●べI ∼●∼  O     1    2    3    4. ‘5 h「 第1図 パン酵母によるシュウクロースから転化糖の生成  反応温度 30°C  反応液組成    パン酵母(ニットウ製)       2.5gr. (湿重)    シュウクロース       1 gr-   モノヨード酪酸(Na)        0.4 m moles‘    クエン酸緩衝液(PH 5.5)     20 m1    水を加えて  Total         25 m1  −C←○− モノカード酷酸添加  −●−●− モノヨード酷酸無添加 8 0 0    0r0    4   jui/3ui    20 但州m'^m   0     30    60    90    120 min. 第2図 ビール酵母のプロトプラスト,ソニケートおよび細胞  壁区分*による転化糖の生成   反応温度 30°C,*酵素液に溶解された状態   反応液組成 酵素源(原料酵母として) シュウクロース モノヨード酪酸(Na) クエン酸緩衝液(PH 5.5) 水を加えて  Total −×−×一 完全細胞, −●−●一 細胞壁, o) L-△−△− −○−○− 2。5 gr. (湿m)  2F・ 0.4 m moles 20 m1 25 m1 ソニケート プロトプラスト

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102 高知大学学術研究報告 第12巻  自然科学 n 第11号 り高くないということは細胞質中にインベルターゼは余り存在しないということを推定させる。  細胞壁区分にインベルターゼがあることは意外であったので,更にこれを精査することにした。 すなわちプロトプラスト作成中に溶出が起り細胞壁区分に。出現したのではないかという疑問であ る。そこで不純物を多く含んでいるカタツムリ消化液を成る丈け純粋にして,細胞壁溶解能のある 成分のみを用いてプロトプラストを作製し,調査することにした。 カタツムリ消化液よりβ−グル コシダーゼの単離はB. Helferich""'らにより報告されているか,文献入手不可能であったので 第3図に示すような方法を用いて行なった。この方法を用いて得た酵素は必ずしも純粋とはいえな       上 澄 アセトン45%二│       遠 沈 上 澄 硫安73.2 上 (1500 ml) 4. 5 (Mcllvain Buffer)等電点沈殿 殿 沈 殿    遠沈     | 二     ̄¬    上 澄 %飽和一│    遠 沈 上 沈 遠 殿 沈・殿 H 5.5・緩衝液に溶解  析 ン石灰ゲル吸若  沈 殿    −P]    一浪 分離酵素液 *乾燥貯蔵中の試料(約1年半  貯蔵) 10. 75gを水1.5/に溶  解した(カタツムリより採取  した原液を約25倍に稀釈した  酵素力に相当する)。 (約120ml,酵素収m約20%)        第3図 カタツムリ消化液よりβ.グルコシダーゼ分離法 いが,第3表aに示す如く爽雑酵素類の作用力は非常に微弱となっており,その他の不純物もおお       (4)

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酵母細胞壁の生化学的研究(3)    (長崎・苅谷)    第.3表a.分離β−グル=2シダーゼの性質 ホスファターゼ作用力**   分解P-N-P mg/ml/10 min/N mg プロテアーゼ作用力***   基質;カゼイン   280 mμにおけるOD/20hr 0.06 0.07 1.45 0.31 註。*P.ニトロフェニールβ−グルコシド法(12)(Cニよる, ** p.ニトロフェニールホスフェートを基  質とするOmori法(13)による,94カゼインを基質とするKunitz法(14)による。第3図の粗酵  銀液および分離酵素液をそのまま使用。   第3表b.分離β・グルコシダーゼの酵母グルカン分解能(生成還元糖mg/g substrate) 1 0 ろ へ 時間 酵素試こ`ヘヘ 0.5 1 1.5 2 3 分 離 試 料 粗 消 イヒ 液 5 8 10 9.5 14 15 20 19 28 28.5 註。酵母グルカンlg(水分91%)を6mlのMcllvain緩衝液(PH 5.0)に懸濁し酵素液4m1を  30°Cで作用させ還元糖をSchaffer-Somogyi法で定量した。酵母グルカンは,酵母を熱3%カ  セイソーダで処理する方法(1)に従って調製した。 かた除かれていると考えられ る。 しかもこのものの細胞壁溶 解作用力は第3表bに示してあ るとおりで,プロトプラスト形 成能は充分保存されているど考 えられる。この試料を用いてプ ロトプラストを調製し,分別遠 沈によって細胞壁区分とプロト プラストとに分け,インベルタ ーゼ作用力を測定してみると第 4図のとおりで,細胞壁区分に インベルターゼ作用は少なくな りプロトプラストの方が作用力 大となった。カタツムリ消化液 の中に何かある種のインベルタ ーゼを溶出させる因子があるの ではないかと考えられる。要す るにできるだけ純粋にしたβ− グルコシダーゼを用いて作った 細胞壁試料にはインベルターゼ 作用が非常に少ない。 5 0 4 0     3 11E  20   10 俗遡源¥J 0 /○ -o o ○ 第4図 分離したβ−グノ゛゜シダーゼ試料を用いて作製した  プロトプラストおよび細胞壁区分*による転化糖の生成   反応温度 30°C,*酵素液に溶解された状態   反応液組成     プロトプラストまたは細胞壁    (原料ビール酵母として)   シュウクロース   モノヨード酢酸(Na)   クェン酸緩衝液(PH 5.5)   水を加えて  Total べ)べ)− プロトプラスト, −×−×− −●−●一 細胞壁区分   (5)  2.5 gr・  1.25 gr-0.4m moles   20 m1   25 m1 完全細胞

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 104         高知大学学術研究報告 第12巻  自然科学 n 第11号  ソニケートと完全細胞の転化糖生成カーブから,細胞質中にはインベルターゼか存在しないだろ うと推定したか,このことを確かめるため酵母を超音波で破壊し細胞質溶液と細胞破片(第5図に 示す)とに分別し,そのおのおののインベルターゼ作用力を調べたところ第6図の結果を得た。明 l u i / s u j           v i w m ' : \ B i 第5図超音波破壊したビール酵母の電顕像×6,000 静置培養5日目の酵母2.5 gr.を10 m1 のクェ ン酸緩衝液(PH6)に懸濁し20分間氷冷しつ つ超音波処理,1,000 r. p. m/ 5 min の上澄液を 3.000 r.p. m/10 min で遠沈して試料とした。   0    30   60   90   120   150  180 min 第6図 ソニケートから分別した細胞壁および細胞質区分に  よる転化糖の生成   反応温度’:30°C,試料:ビール酵母   反応液組成     細胞壁または細胞質(原料酵母として)  2. 5 gr.     シュウクロース       2 gr●     モノヨード酢酸(Na)       0.4m moles     クェン酸緩衝液( P H 5. 5)         20 m1     水を加えて  Total       25-ml   −×−×一 細胞壁区分    −△−△一 細胞質   −○−C← 細胞壁区分十MIA −●−●一細胞質十MIA        (6) らかに細胞質部分にはインベル ターゼの分布が少ない。インベ ルターゼの分布が細胞質膜に集 冲し細胞質中に少ないというこ と,および細胞外液中にヘキソ ースが検出されることは明らか にシュウクロースの分解後透過 脱を支持している。  4.マルトースの分解  同 様に,マルトースにモノヨード 酢酸存在下で酵母を作用させ, ヘキソースが検出されるかされ ないかによって細胞外で水解さ れるか,されないかを判断する わけである。予備実験に於てマ ルトースとヘキソースの分離定 量にTauber-Kleiner法変法(U) の使用が好ましくなかったので (鋭敏性,糖濃度において),ペ ーパークロマトグラフィーで分 離後抽出しSomogyi・Nelson法 で定量する方法の検討とマルタ ーゼ作用力の傾向を知るため, 風乾酵母を試料として第4表の 実験を行なった。この結果グル コースの生成量は大体時間に比 例しており,マルトースの減少 量と量的にも一致し,定量方法 反応条件いずれもたいした問題 のないことか判明した。そこで この方法を用いて,完全酵母十 モノヨード酢酸十マルトース, 完全酵母十モノヨード酢酸,超 音波破砕酵母十モノヨード酢酸 十マルトース,の三種類の反応 液についてグルコースの生成量 を測定した。その結果は第5表 に示してあるとおりで,完全酵 母lll体からは反応中マルトース もグルコースも放出されない,

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酵母細胞壁の生化学的研究(3)    (長崎・苅谷) ----一一 第4袁 乾燥酵母によるマルトースの分解 註。反応混液はPH6. 0リン酸緩衝液5mlを含み,30°Cで反応させた。反応液を一定時間毎Rニ取  り出し,遠沈により酵母を除き上澄液を直ちに東洋口紙No. 53に0. 20 ml スポットし乾燥す  る。ブタノール八  ってマルトースとグルコース帯を水で抽出し> Somogyi-Nelson法で比色定量した。 フ  *風乾ビール酵母 第5表 完全酵母,超音波破砕酵母によるマルトースの分解 105 反応液50 m1 中の成分   酵    母 完全酵母   50 mg 完全酵母   50 mg 超音波破砕酵母50mg モノヨー M/63 M/63 M/63 マルトース  0 4g 4g O分 0   0   0 生成グルコース量 mg/ml 30分160分レ90分120分 0 9 1  0 n 1 0 5 7  0 1 150分  0 1.3 4.9 Ocノ` O    “ 1 ︲−− 0 8 9   1 6 180分 - 0  2.5 11.8 註。麦芽汁培養液に30°C 5 日開静置培養したビール酵母を遠心集菌後数回水洗, PH6. 0リン酸  衝液中でi2時間通気し再び水洗した菌体を用いた。定量法は第4・表の場合と全く同じ。超音波処  理は氷冷しながら10分間超音波にあてた。反応液は10 ml のリン酸緩衝液(PH6.0)を含んで  いる。 240分 O   r r > 13 5 また超音被破砕酵母に比べて量的には劣るが完全酵母の作用によりマルトースからグルコースが生 成されて蓄積されている。このことからマルターゼは細胞内部に多いけれども,惨透障壁の外側に も少しはあること,そしてこの外部にあるマルターゼにより分解されてヘキソースになり透過する

経路も可能であって, Harris & Thompsonらのマルトースパーミアーゼによってのみ透過するも

のではないと考えられる。

 5.考 察  インベルターゼか細胞質部に僅かしかなく細胞質膜に集中していること,および 細胞外に著量のヘキソースか検出されることからシュウクロースは細胞外でヘキソースに分解され てから利用されると推定できる。マルトースも細胞外で分解されグルコースを生成していることか

ら, Harris & Thompsonらのマルトースパーミアーゼのみにより透過するものであるとは考えら

れない。しかしながら,グルコース生成速度が普通観察されるマルトースの発酵速度に比べ遅いこ とと,細胞質部分のマルターゼ作用力がその他の部分より著しく高いことから,細胞外で分解され た後に透過する経路は普通は余り起づていないのではないかと推定される。        要     約  寡糖類のうちシュウクロースとマルトースが酵母にどのようにして透過利用されるかを明らかに する一助として,これらの糖の細胞外で分解されるか,細胞内で分解されるかを調査した。  1.モノヨード酢酸の存在下,グルコースは細胞内に透過しないことを観察し,この現象を利用 してシュウクロースとマルトースが細胞外でヘキソースに分解されていることを確認した。        (7)

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106 2。 3.         。酵母細胞壁の生化学的研究(a)    (長崎・苅谷) インベルターゼは細胞質中には非常に少なく,細胞質膜に分布していると考えられる。 マルターゼは細胞質に多く分布しているが,細胞表層にもすこしはある。  本研究を行なうに当り終始御鞭鎧,御指導を賜った京大教授山本龍男先生ならびにラジオアイソ トープ使用実験に際しご便宜をお計り下さった京大化研杉井助教授に厚く感謝の意を表します。  なお本研究は一部文部省科学研究費によって行なったものである。記して謝意を表する。 剛岡回国㈲㈲哨朗朗I ■ = >   ^   s s   ■ ^ ■ c   ■ O '   o .   d 文 献 長崎 亀;高知大農学部紀要, 8 (1960) 長崎 亀・苅谷泰弘;日農化関西文部例会講演9, 30 (1961) J. Best ; J. Cell.  Comp. Pりsiol., 46, 29 (1955)

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