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反復有理写像の研究

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Academic year: 2021

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(1)平成9年度 学位論文. 反復有理写像の研究. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科. 教科・領域教育専攻 自然系コース.

(2) 序 文  有理関数の反復理論の根本的な考えや基礎づけは,フランスの数学者ガストン・ ジュリア(Gaston Julia)とピエール・ファトゥ(Pierre Fatou)によって1918年頃に研究. され始めた。彼らは,複素平面における有理関数という一般的な場合について,後に ファトゥ集合,ジュリア集合と呼ばれるようになった集合の諸性質について研究した。. 彼らの偉大な業績にも関わらず,彼らの研究は,大部分の数学者に知られるにいたら なかった。しかし,1970年代にベノワ・B・マンデルブロー(Benoit.B.Mandelbrot)に. よって,一見,非常に複雑で,無秩序に見える反復軌道のふるまいの中に秩序や規則 性があることが見いだされた。これにより,この分野は脚光を浴びることになった。  マンデルブローが扱った力学系は,数学的には簡単な式賜+1=!(∬η)=場+cで. 表される。ある数¢oが与えられたとき,それを2乗して定数。を加えればz1が得 られる。この操作を順次繰り返して範,¢3などが得られる。これを反復するという ただそれだけのことであったが,マンデルブローの独創的な点は,コンピュータ・グ ラフィックスを用いてジュリアとファトゥの精妙なアイデアを他の研究者に伝えるこ とが可能となったことである。.  ほとんどの初期値に対する上で述べた反復軌道は,複素数。で決まる定点たちや 無限遠点Ooに近づいていく。平面は,このような性質を持つ初期値の全体とその境 界によって二分される。cの値によって,この境界線は様々に形を変える。特に,境. 界線が滑らかではなく,細部を眺めても直接見たのと全く同様にギザギザした形状 をしている場合がある。マンデルブローは,このような境界線はフラクタル構造を もつものだと呼んだ。フラクタルは,不規則な断面ができるという意味で,樹木や. 入り組んだ海岸線に代表されるような構造及びそれに比べられるような現象などの 総称である。この境界線によって表される集合はジュリア集合と呼ばれる。一方,拡 張複素平面におけるジュリア集合の補集合はファトゥ集合と呼ばれる。  ジュリア集合は,マンデルブローによって初めて視覚化された。彼は,コンピュー タ・グラフィックスによって,ジュリア集合が最も美しいフラクタル集合の一つであ. ることを示し,数学の美しさを示したのである。それ以来盛んにこれらのテーマに ついて研究が続けられている。.  この論文の主目的は,有理写像の反復の興味深いふるまいをファトゥ集合やジュ リア集合を手がかりとして解析していくことである。なお,研究を進めていく上で,. 有理写像の不動点と周期点に着目し,反復理論におけるそれらの役割について,具.

(3) 体例を交えながら説明する。本論文の構成は以下のようである。.  第1章では,いくつかの有理写像の基本的な性質を述べる。点○○を複素平面0 に付け加えた拡張複素平面をσ。。で表し,σ∞に対する普通のモデル,リーマン球. 面を考える・膏血は恥)一. o鵜(PとQは互いに素な多項式)の形で表さ. れる関数である。有理写像Rの次数deg(R)をdeg(R)=max{deg(P),(Q)}で定. 義する。拡張複素平面σ∞に弦の計量と同値な球面計量を導入する。この時,d次 の有理写像は,0。。からそれ自身の上へのd重写像として見なされる。次に,共役. 性,位数,不動点,臨界点という重要な概念を導入し,吟味する。有理写像Rの不 動点ζは,ζにおけるRの乗数m(E,ζ)によって大きく3つに分類される。すなわ ち,吸引的不動点,反発的不動点,中立的不動点である。吸引的不動点の近傍では,. Rの反復軌道は吸引的不動点に更に近くへ動く。一方,反発的不動点の近傍では,R の反復軌道は反発的不動点から離れて動く傾向がある。.  第2章では,非定数有理写像Rの反復族{Rη}の同程度連続性によって,ファトゥ. 集合とジュリア集合を定義する。まず,非加算無限集合であるジュリア集合の閉完 全不変集合としての極小性,ファトゥ集合の完全不変性を示す。さらに,ジュリア集. 合は,周期点の集合の閉包に含まれることや,ジュリア集合に属する一点の後進軌 道の閉包と一致することを示す。また,ファトゥ集合の成分,特に,完全不変成分の 連結度,ジュリア集合の連結性及びそれらの関係について述べる。.  第3章では,有理写像の不動点と周期点に着目し,反復理論におけるそれらの役割. について包括的に吟味する。まず,有理写像Rの不動点くを,第1章よりも更に細 かく分類する。すなわち,超吸引的不動点,吸引的不動点,反発的不動点,有理的 に中立的不動点,無理的に中立的不動点に分ける。周期点は反復写像の不動点なの. で,不動点の分類を周期点へ拡張する。点ζが有理関数Rの周期ηの周期点のと き,相異なる点ζ,R(ζ), R2(ζ),_,.Rπ一1(ζ)の有限集合をζのサイクルという。反. 復写像の導関数(Rη)’はサイクルの各点において同じ値をもつことを示し,不動点 の分類をサイクルへ拡張する。サイクルについて研究することにより,(超)吸引的. 不動点はファトゥ集合に含まれ,反発的不動点はジュリア集合に含まれ,有理的に 中立的不動点はジュリア集合に含まれることがわかる。有理的に中立的不動点の近 傍には花弁と呼ばれる領域が存在することを示し,そこでのRの反復軌道のふるま いを明らかにする。無理的に中立的不動点くについては,ファトゥ集合に含まれる 可能性とジュリア集合に含まれる可能性が存在することをみる。前者の場合はζの 近くでRが線形化可能なときかつそのときに限ることを示し,後者の場合には,ζ ii.

(4) の近くでのRの標準形を求めた。 付録では,この論文に必要な複素関数論の諸定理を述べる。  最後に,この論文の決定・考察に当たり,ひとかたならぬご指導をいただいた野村 泰敏先生に深く感謝の意を表します。また,この論文の作成にあたり,多大なるご指. 導・ご助言をいただいた渡辺金治先生にお礼申し上げるとともに,小池敏司先生を はじめ数学研究室の諸先生方に心から感謝いたします。. iii.

(5) 目次 1 有理写像.   1   1.  1.1 拡張複素平面・一・・….  1.2 有理写像・一一・一….   3   6.  1.3 リプシッツ(Lipschitz)条件・.  1.4 共役性・・・…  一・_..  12.  1.5 位数・・・… 一・・一・. ・ 14.  1.6 不動点… 一・… 一・  1.7 臨界点一・… 一・_..  16  23  26.  !.8 有理関数のなす空間の位相・. 2 ファトゥ集合とジュリア集合.     29.  2.1 ファトゥ集合とジュリア集合の定義と例. …    29.  2.2 完全不変集合・・… 一・一・… 一.  ・   31.  2.3 正規族・・・・… 一...........  ・・  36.  2.4 例外点… 一・・一一・・.__.  2.5 ジュリア集合の性質 一・… 一一・.  ・   40.  2.6 ファトゥ集合の完全不変成分 ・・・・….  ・・  49.  2.7 ジュリア集合の成分         ・・.  ・  51.     42. 3 周期点. 56.  3.1 周期点の分類・・・・・・・・・… 一・・…. 56.  3.2 周期点の存在・・・・・… 一・・一・・一  一・. 58.  3.3 (超)吸引的サイクル・・… 一・・一・・・…. 60.  3.4 反発的サイクルー・一・・・・・… 一…  3.5 有理的に中立的サイクルー・・一・・・…. 66.  3.6 ファトゥ集合の中の無理的に中立的サイクル・. 94.  3。7 ジュリア集合の中の無理的に中立的サイクル・. 112.  3.8 周期点の存在の証明 … 一・・… 一・…. 114.  3.9 ジュリア集合と周期点・・一・一一・    ・. 117.  3.10局所共役性 ・一一・・・・・・・・・・・…  .. 119. iv. 67.

(6) A複素関数論の諸定理.   127.  A.1正則関数一一・一・・… 一.    !27.  A.2複素積分・・一・・一・・一・ ・  A.4有理型関数 ・・… 一・・….    128    130    134.  A.5 リーマン(Riemann)の写像定理. ・   135.  A.6正規族と同程度連続性・・….  ・・136    136.  A.3関数列とテイラー(Taylor)展開・  ・.  A.7連結性と単連結性… 一・…. 138. 参 考 文 献. V.

(7)  本章では,いくつかの有理写像の基本的な性質を示す。点Ooを複素平面に付け加 えることにより,d次の有理写像は,拡張複素平面からそれ自身の上へのd重写像と して見なされる。球面と弦の計量を導入し,共役性,価,不動点,臨界点という重 要な概念を吟味する。更に,リーマン・フルヴィッツ(Riemann』urwitz)の関係を証 明する。. 1.1 拡張複素平面  Ooで表される抽象的な点をとり,その点○○を複素平面σに付け加えた拡張複. 素平面は,和集合.               OoO=OU{∞} である。(フ∞上の計量を得るために,0をR3の中の水平面             {@、,・、,∬,)∈R3・¢、一〇}. と同一視する。そして,σ∞に対する普通のモデルを球面として作る。θを,原点. を中心とし,単位半径をもつR3の中の球面とし,5の頂上の点(0,0,1)をζで表. す。そこで,0の中の各点2をζの方へ向かって(または,ζから離れて)ζとは. 異なる点♂で3と交わるまで射影する。この時の写像π:2日♂は0から5の 中への立体射影と呼ばれる。明らかに,回が大きければ,♂はζに近い。そして, このことを念頭に置いて,Ooの射影π(Oo)はζであると定義する。この定義を用 いると,πは,0。。からβへの全単射な写像である。図1参照。  R3の中でのユークリッド計量を3から0。。上の計量σへと移すために,(フ。。か. ら5の上への全単射πを使う。このことにより,σが,公式 σ(2,ω)=1π(之)一π(切1−lz*一ω*1. 1.

(8) 2. 第1章 有理写像. ζ. 1 、. !!. 、.     〉 二,. c. 1   一’   w*. z*. 〆 π. π. 、. 、. ノ 、. w. ノ. \. z. !. \          /. 、、    ,’!   、  亀脚9. 図1 拡張複素平面 によって定義される。ベクトル幾何学によれば,zとωが(フの中にあるとき,公式.                   2i客}ω11   (・ユ)            σ(z,ω)=                 (1+12[2)蒼(1+1ωi2)互. を得る。ところが一方,0の中のgに対して                         2.           σ(之,OO)=limσ(2,ω)=     1.                       (1+1之12)互                ω→oo. となり,これは,ω→ooの時のσ(z7ω)の極限である。σ(2,切が♂とω*を結 ぶ弦のユークリッドの長さであるから,σは,0。。上の弦の計量と呼ばれる。更に, σ。。は,σの位相的な一点コンパクト化であり,○○でのチャートとして2ト〉ガ1を もったコンパクトリーマン面でもある。.  0上のユークリッド計量は,ocに関与している問題にうまく対処するとは限らな い。しかし,弦の計量σは,σ。。のすべての点を等しく容易に扱わせる。従って,σ. を用いると,Ooは特殊な点ではない。写像ん:2Dガ1は実際にσ一等長変換(すな わち,σ距離を保存する)であり,σ(2,ω)=σ(ガ1,ω一1)となる。.  初等幾何学から,球面5のすべての回転は,θの任意の回転¢に対し,共役写像                       ユ             c。。」ら3一町5’箕σ。。 はg一等長写像であるという意味において,0。。のσ・等長写像を誘導することは明ら. かである。実際に,3の回転は,次の形のメービウス(M6bius)変換の族と一致する。    α2一ご βト→    c2十窃,. 1α12十lo12==・1,                  (1.2).

(9) 3. 第1章 有理写像 (例えば,α二〇かつ。瓢客ならばZDガ1となる)。.  σ∞上には,もう一つの計量が存在する。これは,球面計量σoと呼ばれるもの で,弦の計量σと同値である。0。。の中の2とωの問の球面距離σo(z,ω)は,2*. とげの間の3上の一番短い経路(大円の弧)のユークリッドの長さである。♂と ω*を結んでいる弦が原点での角θを張るならば,. 姻一いい)一2血 なので             卿)一2血(σo(2,ω  2)). (1.3). となる。おそらく,これよりももっと役に立つのは,不等式           (2π)σ・(ろω)≦σ(ろω)≦σ・(ろω). (1.4). であろう。この不等式(1.4)は,基本的な不等式.             禦≦・inθ≦乱・≦θ≦吾 から導かれる。σとσoは互換的に使うことができるので,多くの例の中で,明白に 言わないでこの変換を行うことにする。  最後に,σ。。上の曲線ッが任意の(例えば,連続微分可能な)曲線ならば,’γの. 球面θにおける(σに関する)長さは,.                   2圃                 ∫                  1+1212 である。なぜならば,R3の中の多角曲線(折れ線)によって,7の球面上への射影 を近似することができ,.              lim lげ一♂L 2              ω→・ゆ一21                     1÷i212 となるからである。. 1.2 有理写像 有理写像は,.    P(z) R(之)=    Q(2).

(10) 4. 第1章 有理写像. の形の関数である。ここで,PとQは,多項式で,両方とも同時には零多項式では ない。例えば,Pが零多項式ならば, Rは定数関数零である。更に, Qが零多項式 ならば,Rは定数関数∞である(この場合,有理関数と見なされる)。 Q(2)瓢0か. っPは零多項式ではないならば,R㈲はOoであると定義され, R(Oo)を2→Oo の時のE(2)の極限と定義する。.  今,PとQ両方とも零多項式ではないと仮定する。厳密に言えば, Rは, Pと. Qの共通な零点では定義されない。しかし,もしもPとQの共通な零点が存在す るならば,それに対応する一次の因数を約すことができ,それによって,PとQは 互いに素である(すなわち,PとQは共通な零点を一つももたない)と見なす。以 下では,このことを仮定し,この時,PとQは,スカラー倍を度外視してRによっ てそれぞれ単独に決定され,Rの次数deg(R)は, deg㈹=max{吻(P>,deg(Q)}. によって定義される。ここで,deg(5)は,多項式5の通常の次数を表す。  Rが定数写像の時は,4eg(R)=oと定義する。そして, Rがメービウス(M6bius) 写像の時に限り,deg(E)=1となる。  有理写像は,σ。。からそれ自身の中への解析写像として特徴づけることができる。. そして,計量σとσoは,Ooで定義された関数や値Ooをとる関数を取り扱うことを. 可能にさせる。平面領域D上で定義された関数!:D→σは,Dの各点で導関数 !’が存在するならば,Dにおいて正則であるという。そして,写像!:D→0。。. は・Dの各点が・そ結!欄号のどちらかが正則であるような近傍をもつ とき,Dにおいて有理型であるという。!の極とは,∫(ω)=Ooとなる点ωで,               1                 は正則で,ωで値零をもつ。!は極ωで連続 その点の近くでは,写像2D               !(2). である.なぜならば,⊥は,ユークリッド計量1こおいてωで連続であり,よって,           ∫ 弦の計量においてもωで連続であり,ん,鮒1はσ諄長写像であるので,. σ(!脚))一σ. ・右).         一σ佑,・) 2→ωの時, となるからである。. → 0.

(11) 第1章 有理写像. 5.  関数!が,ある集合{同〉丹U{Oo}上で定義されるならば,!は, ooの近く. で,または,ooのある近傍において定義されると言う。そして,この場合におい て・写像・一!(1)が原点の近くで正貝・1である(または・有理型である)ならば. !は,Ooで正則である(または,有理型である)。σ∞の任意の二つの部分領域 の間の写像ア:D1→D2が, D1の各点で正則である,または,有理型であるなら ば,!はD1において解析的であるという。例として, P(2)=αo十α12十…  十απzπ,  γz>0カ〉つαη≠0. とする。この時,P(Oo)=Ooであり,写像                1      ♂             之Hp(1)=・…+…+・・. は,0の近くで正則で,0で値0をもつので,Pは, Ooを固定し, Ooで解析的であ る。特に,Ooはすべての非定数多項式の不動点である。もっと一般的に言うと,各 有理関数は(フ。。全体にわたって解析的であり,リウヴィル(:Liouville)の定理の拡張. (辻[8]参照)より,有理関数はこの性質をもった唯一の写像である。. 命題1。2.1 Rが正の次数dの有理関数であるならば,Rはσ。。からそれ自 身の上へのd重写像である,すなわち,0。。の中の任意のωに対して,方程式. R(の=ωは,gにおいて重複度を込めて正確にd個の解をもつ。 【証明】.  Rは定数でないとし,.         R¢)一紙,吻(P)叩姻)一㎎ とし,PとQは互いに素であると仮定する。η=皿ならば, Rのすべての零点と極 はσの中にある。そして,PとQの零点はそれぞれη個存在し, Rは,極と同じ数 の零点,すなわち,deg(R)個もつ。次に,η≠mの場合,例えば,η〉鵬と仮定す る。この時,Rはσにおいてη個の零点とm個の極をもち, R(○○)=○○である。                       1                         の零点の数であり,η一観個 00での極の数は,定義より,零での写像z→                      鴫). である。同様にして,m>ηの時の場合は, Ooでの極の数はm一η個である。従っ て,すべての場合において,Rは0。。において正確にdeg(R)個の零点とdeg(R) 個の極をもつことがわかる。    ..

(12) 6. 第1章 有理写像.  0の中の任意のωに対して,R(の=ωの解の数は,定義より, R(2)一ωの零 点の数である。今,                   P(の一ωQ(2)             R(2)一ω=                     Q(2). であるので,R(z)一ωとR(のは同じ次数をもつ(しかし,このことは, PとQ が互いに素であるならば,P一ωQとQも互いに素であるという事実にのみよる)。. よって,方程式R(z)=ωは,0。。の中のωの値に関わらず,zにおいて正確に deg(R)個の解をもつ。従って, Rは0。。からそれ自身の上への4重写像である。□.  Rの定義域と値域が一致するので,Rを繰り返して適用することができ,よって,. Rのπ回目の反復Rπを得る。任意の二つの非定数有理写像R,5に対し, dθ9(R5);deg(R)deg(5). (ユ.5). より,.               deg(∫ヒπ)=[deg(R)]π. が従う。本論文では,特に断らない限り,写像R,5に対し,E5と書けば,それ は写像の合成を表すことにする。今,関係(1.5)が成り立つことを証明する。Rと5. は,それぞれ,次数pと次数qをもっとする。ある有限集合を除くすべてのωに対 して,集合R−1{ω}は,正確にp個の値ζ1,_,窃をもつ。あるε 1{ζゴ}がg個の. 元より少ない元をもつ有限個のωを除く時,ある有限個のωを除くすべてに対し て,集合(R5)一1{ω}は正確にpq個の元をもつので,よって,関係(L5)が成り立 つ。更に,Rと3のどちらか一方が定数の時も,関係(1.5)は成り立つ。. 1.3 リプシッツ(:Lipschitz)条件  一般的に,あるコンパクト距離空間から別のコンパクト距離空間への連続写像は,. 一様連続である。従って,有理写像Rは,0∞上の弦の計量と球面の計量両方に関 して,一様連続である。しかしながら,もっと多くのことが成り立つ。ここでは,R が,これらの計量に関して,あるリプシッツ(Lipschitz)条件を満たすことを示す。.

(13) 第1章 有理写像. 7. 定理1.3.1 有理写像Rは,複素球面において,リプシッツ(Lipschi七z)条件            σo(R(2),R(切)≦Mσo(z,ω) を満たす。. 【証明】  (1.3)より,.             ㈱)一2㎡(σ(z,ω  2))  (・・6) であり,また,                  ロ  ユ.                撫s’デー・    (・・7) である。.Rが点之をR(2)に写すとき,計量σoで測定されたzでの比率の変換は, (1.6),(1.7)を用いると,. 鶴⑳( Z(ω)L楓2雛嵩)))                  σ(R(2),R(ω)).              = lim.                ω→・ σ(2,ω)                    21∫∼(z)一R(ω)1              一概1+}R(Z)12V1+IR(ω21z一回)12.                   v坪・〉行;研                  lR(2)一R(ω)1・1+レ12・1+剛2              = lim                ω→Zlz一ω卜1+IR(釧2・1+iR(ω)12                     1+12i2              = IR’(z)1・                    1刊R(2)i2 となる。従って,比                lR(2)1(1刊212)                                     (1.8)                 1+IR(之)12 が複素球面上で上に有界であるということを証明すれば十分である。このためには,. 関数(1.8)がOoの近くとRの有限なすべての極の近くで上に有界であるということ                       P をチェックすればよい。之=Ooの近くでは, R;一のとき,                       Q            dleg(」Pノ・Q−P・Q’)≦2deg(1宅)一2.

(14) 8. 第1章 有理写像. となるので,2=ocの近くでは,(1.8)は上に有界である。また,各点20≠Ooの近 くでは,Rは本質的にある項(2−20)mに近いので, Rの有限なすべての極の近く では,(1.8)は上に有界である。もちろん,(1.8)の上限は,実際に定理1.3.1におけ. る定数.Mの最良の値である。                     □  Rがメービウス(M6bius)写像であるとき,定理1.3.1におけるMの限界を得る ことは役立つ。よって,次の定理へと拡張する。. 定理1.3.2 メービウス(M6bius)写像.           9(・)一1謡・曲一ユ は,リプシッツ(Lipschitz)条件 σ。(9(・),9(ω))≦llgi12σ。(・,切. を満たす。ここで, ilgl12−1α12+1わ12刊C12+ld12 である。. 【注意】   ここでの:最良のリプシッツ(Lipschitz)定数は,.                llgl14−4十llgl12                                   (1.9).                   2 である。. 【証明】.  定理1.3.1の証明を用いれば,すべての2に対して                1+1之12.                      ≦llgli2     (1.10)             1αZ+612+ic2+di2. となることだけを示せばよい。(1.!0)の左辺をΦ(g,勾で表すと,Φ(g,z)は,計量. σoにおけるzでのgの比率の微小変化を測定するものである。直接の計算により, Φ(g,之)は連鎖律.             Φ(9−1,9(・))Φ(9,・)一・    (…1) を満たすことが導かれる。このことを用いると,Φ(g,のにおける下界が得られる。.

(15) 9. 第1章 有理写像 コーシー・シュヴァルツ(Cauchy・Schwarz)の不等式(アールフォルス[1]参照)より           1・・+ゐ12≦(1・12+1わ12)(・+1・12),. (!.12).           1・網12≦(1・12+ld12)(・+1・12). (1.13). が従う。不等式(1。12),(L13)より,任意のzに対して               Φ(9,・)≧llgll『2. (1.14). が成り立つ。連鎖律(1.11)と不等式(1.14)より              Φ(9−1,9(・))≦Ilgl12. (1.15). が従う。不等式(1.ユ5)は任意のgに対して成り立つ。従って,         i19−1112=ldi2+トb12+1一・12+1・12−llgl12. (1.16). であるので,不等式(1.15)において,gをg−1で置き換え,関係式(1.16)を用いると,              Φ(9,9−1(・))≦llgl12. を得る。よって,すべての複素数ωに対して               Φ(9,ω)≦119[12. が成り立つ。                             □  定理1.3.2は,ノルムllgl【がある族σの中のすべてのρに対して有界であるな らば,Gに対して一様なリプシッツ(Lipschitz)不等式が存在するということを導く。. 次の結果において,このことが成り立つ幾何学的判定条件を与える。. 定理1.3.3 mを任意の正数とする。この時,  σ(g(0),g(1))≧γπ, σ(g(1),g(Oo))≧γπ, σ(g(Oo),g(0))≧γn  (1ユ7). を満たすメービウス(M6bius)変換gは,一様なリプシッツ(Lipschitz)条件.                    8π            σ(9(・),9(ω))≦葎σ(・,ω) を満たす。. 【証明】. gが(L17)を満たすと仮定する。この時,       σ(9(0),9(1))・σ(9(1),9(・・))・σ(9(・。),9(0))≧m3. (1.18).

(16) 10. 第1章有理写像 となる。.            9(・)÷多,・d一δ・一1 とし,σ¢,切に対する公式(1.1)を用いて(!.18)の左辺の数値を求める。.             6     α十δ      α          9(0)「,9(1)=。+d,9(○○)㍉ なので,.    1+!畠12・1+1諾121+1諾{2・1+1砦121+謄12・1+1各12 21島一面1.       21諾一暑1   21薯一畠i (1α+612+IC+412)(ld[2+lb12)(ICi2+1α12).                   8           1   ≦           葎 となり,.        (1・i・+1・i・)(161・+ldi・)(i・+61・+1・+dl・)≦轟 (…9) を得る。今,.           1=αd一わ。=d(α十6)一わ(c+d) であるので,コーシー・シュヴァルツ(Cauchy・Schwarz)の不等式(アールフォルス[1]. 参照)より     ・一ld(α十δ)一6(・+のi2≦(ld12+i−612)(1・+わ12+1・+4i2). となり,.           ・≦(1612刊d12)(【・+6i2+i・+d12)   (・・2・) を得る。(1.19)と(ユ.20)より.               1・1・+id・≦蒜    (・・2・) が従う。全く同様な論議により,.               1わ1・+ldl・≦蒜    (・・22) も従う。(1.2!)と(1.22)より,(1.17)を満たす任意のgもまた.                llgli・≦誰    (・・23).

(17) 11. 第1章 有理写像 を満たすことがわかる。(1.4)と定理1.3.2と(1.23)より, σ(9(2),9(ω))≦σ。(9(z),9@)).        ≦llgl12σ。(9,ω)        ≦llgl12晋σ(・,ω).          16 7τ.        ≦掃プ(・・ω)          8π        一葎σ(之,ω) となり,定理L3.3が示された。. □.  最後に,定理1.3.1に依存する球面上の閉曲線に関する結果を述べる。しかし,そ の前に,いくつかの定義を述べる。ッを球面上のある閉曲線とする。この時,ッの補. 集合は,互いに素な領域の和集合である。そして,これらをッの相補的な成分と 呼ぶ。今,7はある開半球に含まれると仮定する。この時,確かに相補的な成分のう ちの一つは半球を含み,これをE(ッ)で表し,ッの外部と呼ぶ。7の他の相補的な. 成分を,7の内部成分という。 定理1.3.4 Rを有理関数とする。この時,ッがδより小さいσo一直径の任意. の閉曲線であるならば,7の内部成分Ωの像R(Ω)はR(のの外部E(R(の) と交わらないような正数δが存在する。.  この結果は,大まかに言って,曲線7が十分小さいならば,ッの内部成分は像曲 線R(のの内部成分へ写るということを言っているのと変わらない。しかしながら,. 内部成分の像もまたR(のの点を含んでいるかもしれないので,像曲線の外部の見 地からこのことをもう少し注意深く表す必要がある。 【証明】.  Rは定数でないと仮定してよい。そして,証明を通して,集合の直径はσo一直径を. 示す。まず,7の任意の内部成分Ωは,高々ッ自身の直径であるような直径しかも たない。従って,Mを定理1.3.1において与えられたものとするならば, d乞αmeオeγ(E(Ω))≦M(海αmeオer(’γ). となる。今,Mδ<πとなる任意のδを選ぶ。この時,ッがδより小さいσo一直径 の閉曲線ならば,R(Ω)はπより小さい直径をもつことになる。従って, R(Ω)は E(R(の)を含むことができない。.

(18) 12. 第1章 有理写像. 今,任意の有理写像Rと球面上の任意の領域Wに対して, ∂(R(w))⊂R(∂w). (1.24). が成立しているとしよう。この時,(1.24)をΩに適用すると, ∂(R(Ω))⊂R(∂Ω)⊂R(の. (1.25). となる。(1.25)より,順次にE(R(7))は∂(R(Ω))と互いに素であることが導かれる。. よって,E(R(の)∩R(Ω)=のかE(R(ッ))⊂R(Ω)のうちのどちらかであるが,上で 見たようにR(Ω)はE(R(の)を含むことができない。従って,E(R(’γ))∩R(Ω)=の となり,(1.24)を証明することだけが残った。.  (1.24)を証明するために,∂R(W)の中の任意の点ζは点R(之η),2η∈Wの極限. であることに注意する。一般性を失うことなく,妬→zとでき,ζ=R(2)となる。. ここで,zはWの閉包に含まれる。今, zはWの元であり得ない。もし2がWの 元ならば,ζもR(W)の元である。R(W)は開集合なので, R(W)は∂R(W)と互. いに素である。従って,ζが∂R(W)の元であることに矛盾する。よって,2は∂W の元となり,ζは君(∂置)の元であることがわかる。つまり,(L24)が示された。□. 1.4 共役性、  次数が1の有理写像は,メービウス(M6bius)写像                α2÷b                    αd一わ。≠0             2→                c2十♂ である。メービウス写像全体は,C。。からそれ自身の上への解析的な同相写像の群を 構成するので,共役性を導入するのに使うことができる。あるメービウス(M6bius). 写像gが存在し,.                 5=gRg−1. となるときかつそのときに限り,二つの有理写像Rと5は共役であるという。共 役性は同値関係であり,その同値類は有理写像の共役類といわれる。.  Rと3が共役であるならば,関係(L5)より, deg㈹=deg(5) が従う。. (1.26).

(19) 13. 第1章 有理写像 共役性の別の重要な性質は,反復を保存するということである。すなわち,. 3=gRg−1ならば, 3π=gRπ9『1 となるということである。このことにより,Rに関する問題を, Rと共役なθに関 する単純な問題へと移すことができ,更に,3を用いて解くことができる。.  更にもう一つの共役性の性質は,不動点を保存するということである。もっと具. 体的にいうと,Rが2を固定するときかつそのときに限り,5=gRg−1ならば,5 はg㈲を固定する。 例1.4.1(メービウス(Mδbius)変換の場合).  Eが恒等変換でないメービウス(M6bius)変換のとき, Rは,単一不動点をもつか,. または,2つの異なる不動点をもつのうちのどちらかである。 【単一不動点をもつ場合】  今,ん=gEg㍊とおく。 Rが単一不動点ζをもっとき,ζとある点ω(≠く)に対. して,gを          9(ζ)二・・,9(ω)=o,9(R(ω))=1. を満たすメービウス(M6bius)変換とするとき,.           gEg−1(○○)=Oo, gRg『1(0)=1 となる。従って,ん=gRg−1はg(ζ)薫Ooのみを固定し,ん(の=gRg−1(2)=2+1 である。. 【2つの異なる不動点をもつ場合】.  単一不動点をもつ場合と同様に,ん=gRg−1とおく。 Rが2つの異なる不動点 α,βをもっとき,α,βに対して,gを 9(α)=・。,9(β)一〇. を満たすメービウス(Mδbius)変換とするとき,           9R9 1(Oc)=○○,  gRg−1(0)=0. となる。従って,ん=gRg−1はg(α)=○○とg(β)=0を固定し,ん(勾= gRg−1(z)=舵債≠1)である。 【注】メービウス(M6bius)変換の細かい分類についてはBeardon[17,§4.3]参照。.

(20) 第1章 有理写像. 14. 例1.4.2(2次の多項式の場合).  すべての2次の多項式は2−22+cの形の多項式と共役である。 【証明】. 今・2次の多項式をP(・)一α・・+β・+第α≠暁し・曽(・)…+ξとする・ この時,.             卿・(・)一・・÷α7 となるので,すべての2次の多項式はgト・22+cの形の多項式と共役となる。 □  共役性を用いた単純な説明によって,多項式が有理写像の族の中で特徴づけられ る。リウヴィル(:Liouville)の定理の拡張(辻[8]参照)より,非定数有理写像Rが,. ○○で極をもち,かつ,σにおいて極を一つももたないときかつそのときに限り,もっ と簡潔にいうなら,R−1{Oo}={○。}のときかつそのときに限り, Rは多項式であ. る。よって,もっと一般的に表した次の定理が従う。. 定理1.4.3 非定数有理写像Rが多項式と共役であるための必要十分条件は, 0。。において,あるωが存在し,R−1{ω}={ω}となることである。. 1.5 位数  非定数で,σの中の点20の近くで正則な任意の関数∫を考察する。その時,! は,20に:おけるテイラー(Taylor)展開         !(β)=α0+αた(β一20)た+α婦(2−20)ん+1+…. をもつ。ここで,砺≠0,そして,正の整数んは,極限.     無!蔑鉤)一麟契諸              一蕩婦一び警箭ボ+○●’              ==  αた. が存在し,その極限は有限でかつ零でないという条件により,一意に決定される。こ. の整数鳶をuノ(20)で表し,それを之。における∫の位数,または,価と呼ぶ。も ちろん,それは,20における∫(2)=!(Zo)の重複度を込めた解の数である。.

(21) 15. 第1章 有理写像 位数関数”は,重要な連鎖律を満たす。すなわち,             η∫9(Zo)=勿ノ(9(20))Ug(Zo),                  (1.27). ここで,之。,g(20),そして!g(Zo)は,すべてσに含まれる。今,(1.27)が成り立. つことを証明する。gは,20の近くで正則でかつ定数でないので,20の除外近傍1V, {9:0<12一之ol<ε},0<ε:小,上で,9≠9(名。)である。そして, N上で,恒等式      !gll等!劾)一儲≡濃i留)(レ(z)一9(Zo(・一・。)柚)P)             一(ア(9(Z))一ア(9(20  [9(2)一9(20)]q)))(9害≡諾1鉾))q(・⑱. が成り立つ。ここで,q=η∫(g(20))誘=Ug(20)である。 z→Zoの時,(1.28)の両. 辺とも有限な零でない極限をもつので,従って,u/g(20)=陶となり,連鎖律が成 り立つ。.  穿(20)=1のときかつそのときに限り,!は劾のある近傍において単射である。 このことを用いると,連鎖律より,合成関数に関して,単射関数を前に適用しても 後に適用しても,位数は保存されるということがわかる。もっと具体的にいうなら. ば,zの近くで単射であるgと共に!gが2の近くで定義され,!(2)の近くで単射 であるんと共にんアが2の近くで定義されるならば, ”ア9(2)=”ノ(9(2))%(2)=”ノ(9(2)),. (1.29).  刀んノ(2)=ηん(!(之))”∫(2)=り∫(2). (1.30). となる。.  今,(1.29)と(1.30)より,勿∫(如の定義を,Zo=Ooまたは!(之。)二〇〇の場合(ま. たは両方の場合)へと拡張できる。任意のメービウス(M6bius)写像gとんを選び,. gとんは,それぞれZOと∫(20)を0の中の点へと写すとする。この時,”バZO)を            ”ノ(20)=”F(9(Zo)),  F=ん!g−1             (1.31). により定義する。(1.29)と(!.30)を用いることにより,”∫(之。)はgとんの選択とは. 無関係に定義されることが示される。実際に,二つのリーマン面の間の任意の解析. 写像に対して,位数を定義することができる。ノが0の中の20において位数んの 極をもつならば,!は之0において位数鳶をもつ。そして,gRg−1がg(20)におい て鳶個の零点をもっときかつそのときに限り,EはZoにおいてん個の零点をもつ。 ここで,gは任意のメービウス(M6bius)写像を表す。.

(22) 第1章 有理写像. 16.  解析写像!:D→σ∞がDにおいて単鮒であるならば,!はDにおいて単葉 であるという。!がDにおいて単葉であるならば,Dの中のすべての2に対して 衿(2)=1である。しかし,その逆は成り立つとは限らない。例えば,0一{0}から. それ自身の上への写像22は,どこでも位数1をもつが,0一{0}において単射では ないからである。.  最後に,次数4の非定数有理写像Rはσ。。からそれ自身の上へのd重写像であ るという基本的な事実は,位数を用いて表される。R−1{ω}の中の任意の之。に対し て,ηR(Zo)は, ZoにおけるR(の=ωの解の数である。従って,複素球面の中の各 ωに対して,.               Σ蝋・)一吻㈹      (1・32)              廃R−1{ω} となる。. 1.6 不動点                                 P  本節では,有理写像の不動点の数を計算する。非定数有理関数をR=一とする。                                 Q ここで,PとQは互いに素な多項式である。まず,・Rは, deg(P)>deg(Q)のとき. かつそのときに限り,∞を固定する。σの中のζがRによって固定されるならば, Q(ζ)≠0である。従って,ζは,.                P(ζ)一ζQ(ζ)       (1.33) を満足する。逆に,(1.33)が成り立つならば,PとQは互いに素よりQ(ζ)≠0な. ので,ζはRによって固定される。従って,σの中のRの不動点は,               P(之)一2Q(2)=0                     (1.34). の解である。. 【注意】 (1.34)は0の中に解をもつとは限らない。仮に,左辺が多項式だとして           1 も,例えば,2H之+一はσの中に不動点をもたない。  解析写像の零点の数を数えるのと同じ方法で不動点の数を数えるならば,次数d≧1. の有理写像は,0。。において重複度を込めて正確にd+1個の不動点をもつ。  一般的な解析写像に対しても関連した量を定義することは役立っ。. 定義1.6.1  自明でない解析写像!に対して,ζが!の不動点で,ζ≠Ooなら ば,!(2)一2がζでん障め零点をもつとき,!はζで鳶個の不動点をもつという。.

(23) 17. 第1章 有理写像. 例1.6.2 之+23は,原点で3個の不動点をもつが,そこで位数1をもつ。とこ ろが,23は,原点で1個の不動点をもつが,そこで位数3をもつ。  !(2)一2が不動点をもつとは限らないので,定義1.6.1は,Ooでの不動点は適用. されない。このことにうまく対処するためには,次の補題が必要である。. 補題1.6.3 σの中のζを正則写像!の不動点とし,ψを,ζのある近傍に おいて正則で,単射である任意の写像とする。この時,曽加一1は¢(ζ)で,! がζでもつのと同じ数の不動点をもつ。 【証明】.  !はζにおいてん個の不動点をもつと仮定する。この時,恒等式  (ρ!(ρ一1(之)一之.                                    (1.35)   レー(ρ(ζ)]た 一(∼ρ!¢4(Z)一¢∼0 1(之∫幹㎜1(2)一望『1(Z)))(!『島!吉肇))([二字)漏鴇(ζ)嘗). を考察する。2が似ζ)に近づくとき,(L35)の右辺の各項が有限な零でない極限に 近づくことを示せば十分である。(1.35)の右辺の第一項は,                 (ρ(u)一(ρ@).                                    (1.36).                  駕一” の形をしている。くの周りの小円0に適用されたコーシー(Cauchy)の積分公式(定 理A.2.7,定理A.2.8)を(1.36)に適用すると,鴛と”両方ともζに近づくとき,. _賜一。(2π孟。一駕2π乞鴻。一。の    lim¢(錫)一曽@)一lim 1」二曽(・)d。一⊥曽(・) u,”→ζ   賜一u. 一浸碧ζ2π乞(漏る(鶏1鴇)d・ 一法碧嘉(7噴一駕)(3一。)d・. 一瓢邊碧ζ(T−u)(3一のd・ 一塁(曽(7)τ一ζ)・許. ;曽’. iζ). となり,(1.36)は有限な零でない極限曽’(ζ)に近づく。よって,(1.35)の右辺の第一. 項も有限な零でない極限望’(ζ)に近づくことが導かれる。次に,1.5節のんの定義よ.

(24) 18. 第1章 有理写像. り,2が¢(ζ)に近づくとき,(1.35)の右辺の第二項は有限な零でない極限に近づく ことが導かれる。最後に,(1.35)の右辺の第三項は[幹’(ζ)]読に近づく。従って,補. 題L6.3が示された。                        □  補題1.6.3で表された不変性によって,Ooでの不動点の数の定義を与えることが できる。というのは,R(○○)=ooならば, Ooを有限な不動点ζに移すようにEを. 共役化することができ,それから,そこで共役な関数の不動点の数を数えられるか らである。不動点の数はその共役写像の選び方に独立であるということは,補題L6. 3より従う。従って,必要とする定義を得る。この定義と補題1.6.3より,次の定理 が従う。. 定理1.6.4 ζを有理写像Rの不動点とし,gをメービウス(M6bius)写像と する。この時,gRg『1はg(ζ)で, Rがζでもつのと同じ数の不動点をもつ。. 定理1.6.5 次数d≧1ならば,次数dの自明でない有理写像は,σ。。にお いて重複度を込めて正確にd+1個の不動点をもつ。 【証明】.  任意の有理写像EはOoを固定しないある有理写像5と共役であり,5とRの 不動点の数は,補題L6,3より,重複度を込めてθとRの次数と同じである。従っ て,RはOoを固定しないと仮定してよい。. 今・R一 ゚とQは互いに素とし・ζをRの臆の不動点とする・従って・ζ は有限である。Q(ζ)≠0なので,ζにおけるR(2)一2の零点の数は,ζにおける P(2)一2Q(勾の零点の数と同じである。よって, Rの不動点の数は,重複度を込め. て正確に0におけるP(の=之(2(2)の解の数である。Rは∞を固定しないので, 4eg(P)≦deg(Q)==deg(R). となる。従って,P(2)一2Q(2)の次数は,正確にdeg(R)+1であり,定理1.6.5. が示された。                           □  有理写像Rの各不動点ζに対して,ζでのRの乗数皿(R,ζ)と呼ぶ複素数を対 応させる。ζが0に含まれるならば,乗数は単純に微分係数R’(ζ)で,共役写像の. 対応する不動点もまた0に含まれるならば,乗数は共役写像のもとで不変である。. OoがRによって固定される時,乗数m(R,○○)を定義する。定義の方法は,0の.

(25) 第1章 有理写像. 19. 中にg(○○)をもつメービウス(M6bius)写像gを選び,それから,            皿(E,Oo)聯m(gRg−1,9(・・)). と定義する。ここで,この定義はgの選択と独立である。従って,有理写像Rの任 意の不動点ζでの任意の有理写像Rの共役不変な乗数m(R,ζ)を定義した。  このことは以下のように説明される。.                αo+α1z+…+απ♂            R(之)=                わ。十612十…十bmzm,. αη妬≠0かつη〉祝とする。従って,EはOoを固定する。次に, OoでのRの乗 数m(R,Oo)を計算する。定義より, m(R, Oo)は,原点での.                    1                3:2ト→                   E(1) の微分係数で,これは,.           ♂⑩)一撫;鴛灘1. である。一方,.        π(・G)一妙)一{量蹴∴1:;、. である。これらの計算により,不動点ζでの有理写像Rの乗数m(R,ζ)は,          m帆ζ)一{R’(ζ) 1R’(・。):麟:.                                 1 によって得られることがわかる・例え1弍R(・)一3諏らば・m(R,・・)一言となる・  最後に,プの不動点における反復芦の不動点の数を調べ否。そのために,次の定 理が必要になる。.

(26) 20. 第1章 有理写像. 定理1.6.6 原点の近くで,            !(・)=α之+6〆+1+…. (1.37). と仮定する。ここで,α≠0,δ1≠0,T≧1である。この時,            !η(β)=απβ+δπ2γ+1+…. (1.38). となる。ここで, 6・一αη一1b・(1+α・+α2「+_+α(・一1)り. である。. 定理1.6.6より直ちに次の系が従う。. 系1.6.7 α=!ならば,妬=励1. 系1.6.8 α7≠1かつα僻=1のときかつそのときに限り,bη=0  απ≠1ならば,α≠1である。従って,!ηが0においてただ一個の不動点をもつ. ならば,∫も0においてただ一個の不動点をもつ。もっと一般的に表すと,次の系 が従う。. 系1.6.9 反復芦は,原点において,∫がもつのと少なくとも同じ数の不動 点をもち,!πが!よりも多く不動点をもつならば,α≠1ではあるがαπ=1 である。. 【定理1.6.6の証明】  !が(i.37)の形をしているとして,帰納法により証明する。(1.38)において,η=1. のときは,(1.37)となり,成り立つ。(1.38)において,π篇んのとき成り立つ,すな わち,             !た(z)=α鳶2十わ鳶2T+1刊一…                     (1.39). とする。この時,. 押(・)一∫伊(・)).

(27) 第1章 有理写像. 21.        一・(α㌔+わ・♂+1+…)+b・(α㌔+b・♂+1+…)叫1+・・6.        一凸+(α6た+α姻1)δ・)ノ+1+…. (1.40). となり,(1.39)と(1.40)の係数を同一視することにより,              6鳶+1=αδた+α鳶(7十1)61. (1.41). を得る・(圃の両辺を・・で割り・砺轟とすると・(瑚は               βん+1=βん十♂Tわ1. (1.42). となる。(1.42)より.           β・+・一わ・(・+・7+α2γ+…+αり. (1.43). が従い,(1.43)を砿の形に書き直すと,.           わ・+・一α%・(・+♂+幽…+αり. となる。よって,η=ん+1のときも成り立つ。従って,すべてのηについて成り 立つこととなり,定理1.6.6が示された。                □ 定義1.6.10  有理写像Rの不動点ζでの微分係数R’(ζ)が定義されるとき,不 動点ζは,. (1)IRノ(ζM〈1のとき,吸引的不動点である, (2)1躍(ζ)1>1のとき,反発的不動点である, (3)1R’(ζ)1=1のとき,中立的不動点である という。. 考察1.6.11 zが不動点ζに近いならば,近似的に,         レR(2)一ζ1=IR(2)一∫己(ζ)[=i∫∼’(ζ)1ヨ2一ζ1. となる。従って,Rを適用するとき,吸引的不動点に近い点は,吸引的不動点に更 に近く動く。ところが一方,反発的不動点に近い点は,反発的不動点から離れて動. く傾向がある。特に,20が吸引的不動点ζに十分近いならば,η→∞のとき,.

(28) 第1章 有理写像. 22. 餅(20)=砺→ζとなる。他方,2が反発的不動点ζに近いが等しくないならば,最. 初は,2はζから離れて反発される。しかし,後の段階でζの近傍に戻ってくるか もしれないし,あるいは,ちょうどζ自身に戻ってくるかもしれない。実際に,毎. が反発的不動点ζに収束することができる唯一の方法は,π≧ηoに対して錫=ζ となることである。このことを矛盾を導くことにより証明する。まず,z。→ζ,こ. こで,任意のηに対してzπ≠ζと仮定する。確かに,砺がζに収束するが,砺は ζとは異なるということから,無限に多くのηに対して,               lZη+1一ζ1<12rL一ζ1. が導かれる。しかしながら,lRノ(ζ)1>鳶>1となるある数鳶とζのある近傍Arを. 選ぶことができ,κの中のzに対して,           11ヒ(之)一ζ1=1∫∼(之)一1∼(ζ)1>んレーζi. となる。この時,g=錫とおくと,            i2π+1一ζ1>制砺一ζi>12π一ζ1 となり,矛盾が導けた。. 例1.6.12  関数               R(z)=22−4g十6                     (1.44) は,.             {             E(・。)=∞             ∫∼(2)一z=(z−2)(2−3),.               {                lR’(○○)1=0〈1                卜石己’(2)[=0<1                1.石己’(3)1;2>1. となるので,吸引的不動点2,∞と反発的不動点3をもつ。  従って,関数(ユ.44)に対して,編→ωならば,ωは2またはOoであるか,また. は,あるηに対して妬=3(このことが生じるのは,例えば,之。=1のとき)であ るかのどちらかである。.

(29) 23. 第1章 有理写像. 1.7 臨界点  本節では,臨界点と臨界値の概念について述べる。有理写像Rが点2の任意の 近傍において単射でないとき,zはRの臨界点といい,更に, Rが定数でないな らば,これらの点は伽(2)>1となる点である。値ωがある臨界点の像である,す. なわち,ある臨界点之に対してω=R(z)のとき,ωはRの臨界値という。.  Rが次数dの有理写像で,ωが臨界値でないならば,R−1{ω}は正確にd個の 異なる点21,_,2dから成る。どのろも臨界点でないとき,ωの近傍たち万と 21,...,2dの近傍A4,...,境がそれぞれ存在し, Rは各A4,_,垢からκの上へ. の全単射として働く。各ゴに対して,写像Rの垢への制限Rゴは,逆写像                Rア1:π→A弓. をもち,これらをωにおけるR−1の分枝と呼ぶ。 R’が零も極ももたないσの中の任意の点のある近傍において,Rは単射である。 よって,ある有限集合を除くすべての之に対して,娠(之)=1である。従って,               Σ[蝋・)一1]<+。・. である。ただし,その和は,σ∞の中のすべての之にわたってとっている。この和 により,Rの重根の数が数えられ,その実際の値は,次のリーマン・フルヴィッツ (Riemann−Hurwi七z)の関係により与えられる。 定理1.7.1(リーマン・フルヴィッツ(Riemann−Hurwitz)の関係).  任意の非定数有理写像Rに対して,. Σ[蝋・)一1}一2吻㈹一2. (1.45).  定理1.7.1の和における一般項は,之がEの臨界点のときのみ正である。よって,. その位数は整数なので,定理1.7.1より,Rの臨界点の数の評価を得る。非定数多 項式Pに対して,式(1.32)においてω=Ooとすれば,”p(Oo)=deg(P)である. ので,同様にして,σにおけるPの臨界点の数の評価を得る。これらの二つの評価 は,次の系において与えられる。. 系1.7.2  正の次数dの有理写像は,0。。において高々2d−2個の臨界点を. もつ。正の次数dの多項式は,σにおいて高々4−1個の臨界点をもつ。.

(30) 第1章 有理写像. 24.  通常,重複度を臨界点に割り当てる。この重複度は伽(2)一1であり,重複度も. 考えて数えると,次数dの有理写像は正確に2d−2個の臨界点をもつ。. 【定理L7.1の証明】  まず,(1.45)の両辺は共役写像のもとで不変であるということに注意する。従っ て,Rのある共役写像に対して,(1.45)が成り立つことを証明すれば十分である。今, R(ζ)≠ζ,噸(ζ)=1で,R(2)二ζがd個の異なる解をもつような点ζを選び,こ. の時,ζをOoへ,そして, E(ζ)を1へ写すメービウス(M6bius)変換gを構成す. る。この時,5;gRg−1とするならば, gはRの性質を5の性質へ写すので,5 を再びRと書き替え, (1)R(Oo)コ1,. (2)Rは異なる一位の極21,_,24(すべてσにふくまれる)のみをもつ, (3) ”R(○○)=1. と仮定してよいとわかる。これらの条件により,OoにおけるRの位数と各zゴにお けるRの位数は1であり,よって,和(1.45)は,点%を除くσの中のすべての之 にわたって合計された                Σ[・R(の一1]. と同じであるということが導かれる。そのようなすべてのzに対して,E(z)は0 に含まれ,位数の定義より,伽(2)≧2のときとは,鱗(の一1は1宅’のzにおける 零点の個数であるので,(L45)の左辺の和はRノ(z)の零点の総数である。.           P  今,既約の形でR=一とする。この時,           Q               P’(之)・Q(の一P(z)・Q’(2).           R’(z)=                                   (1.46)                   (Q(之))2 であり,これも既約の形である。というのは,(1.46)の右辺が既約の形でなければ,. 分母と分子が共通の零点(ある2ゴでなければならない)をもち,そして,その時,           0=P’(2ゴ)・Q(2ゴ)=P(2ゴ)・Q’(zゴ).                         P. となり・P㈲=oかまたはQ’(%)=oとなるが而は既約の形であるので・. P(紛)=0は成り立たず,之ゴはQの一位の零点であるので,Qノ(2ゴ)=0も成り立 たないからである。従って,(1.45)の左辺の和は,R’(2)の零点の総数であるので,.

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