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Thrombin induced by the extrinsic pathway and PAR-1 regulated inflammation at the site of fracture repair 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 佐藤 信隆 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医 学 ) 学 位 記 番 号 医工博乙 第 82 号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年9月25日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第2項該当 専 攻 名 博士課程医学領域

学 位 論 文 題 名 Thrombin induced by the extrinsic pathway and PAR-1 regulated inflammation at the site of fracture repair

(トロンビンは PAR-1 を介して骨折治癒部位の炎症制御に関わ っている) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 安達 登 委 員 准教授 百澤 明 委 員 講 師 飯野 弥

学位論文内容の要旨

(研究の目的) 骨折治癒過程は一般的に 1)炎症期、2)修復期、3)リモデリング期の 3 段階のプロセスで理解 されている。第1 段階では、骨折部位における血腫が炎症を誘発することが知れている。この炎症 段階では、血腫、骨形成、軟骨形成および脂肪生成ポテンシャルを有する間葉系幹細胞(MSC)が 骨折部位に集積し、骨折関連血腫によってIL-1β、IL-6 および TNF-αを含むいくつかのサイトカ インが増大され、これらの重要性はすでに確立されている。間質由来因子(SDF)-1 および単球走 化性タンパク質(MCP)-1 を含むケモカインもまた、骨折修復に重要である。 SDF-1 は骨折部位 にMSC を誘導し、MCP-1 は炎症部位に MCS およびマクロファージを誘導することによって炎症 期における重要調節を担っている。骨折関連血腫内の初期には、内因性経路よりも外因性経路が活性 化され、トロンビン(IIa 因子)が生成され、それがフィブリノーゲンをフィブリンに変換すること によって総出血量を抑えるメカニズムが働く。 しかしながら、凝固・線溶系が骨折修復に影響する詳細なメカニズムは未だ不明である。そのため、 本研究では、In vitro においてマウス骨芽細胞様細胞株(MC3T3)を使用し、トロンビンの骨芽細 胞への影響をみた。受容体から細胞内シグナル、産生タンパクとその機能を検討した。In vivo では 骨折マウスモデルを使用し、骨芽細胞・破骨細胞の集積と関連タンパクの発現を免疫染色によって評 価した。そして、我々の仮定である、凝固によって生成されたトロンビンが骨折部の骨芽細胞の PAR-1 受容体を介して MCP-1 を産生し、骨折治癒過程の第一段階である炎症期に影響を検討するこ とを目的とした。

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(方法) マウス骨芽細胞様細胞株(MC3T3)とマウスマクロファージ様細胞株(RAW264)は理研細胞バンク から購入し、37℃、5%CO2、10%FBS 条件で培養実験に使用した。遺伝子発現を PCR 法で、タンパク 発現および細胞内シグナル発現を WB 法で、細胞表面発現を FACS 法で、培養上清中タンパク濃度を ELISA 法で、受容体からの細胞活性を細胞内 Ca で評価した。マウスは C57BL/6、8 週齢、雄を日本ク レアから購入、全身麻酔下に骨折モデルを作成し、免疫染色法でタンパク発現を評価した。統計分析: データは、平均±SD として表示し、スチューデントまたはウェルチの t 検定を用い、正規分布に適 合しない場合はマン•ホイットニーの U 検定を用いた。p <0.05 を有意とした。以上、すべての実験 は山梨大学整形外科研究室および総合分析実験センター・動物実験施設内にて施行した。 (結果) まず、MC3T3 細胞の PAR-1 受容体の発現を WB 法で確認した。トロンビン刺激により細胞内 Ca 濃度が増加したが、PAR-1 受容体阻害薬である SCH79797 によりこの反応は抑制された。トロンビ ン刺激によってMC3T3 細胞よりの MCP-1、TF の発現量が RNA レベル、タンパクレベルともに増 強されていた。発現されたMCP-1 は上清中に放出され RAW 細胞の遊走を促すことを ELISA 法と migration assay にて確かめた。これらの反応は、LY294002(PI3 阻害薬)、PD98059(MAPK 阻 害薬)およびSCH79797 により抑制された。マウス大腿骨骨折部および仮骨部において正常骨髄に はみられないようなトロンビンの発現がみられ、同部位にMCP-1、TF の発現をみた。 (考察) トロンビン刺激がPAR-1 受容体を介し、マウス骨芽細胞様細胞株における外因性経路を活性化し、 最終的にトロンビンを生成することができる機能的なTF を発現することを突き止めた。このトロン ビンとTF のポジティブフィードバック的な関係は骨折部における血腫と骨芽細胞との間にも起こ ると示唆される。加えて、トロンビンはAKT と MEK の両方のシグナル伝達により MCP-1 を発現 させマクロファージを動員することができる。免疫染色法によりマウス骨折部にも同様のメカニズム が働いていることが示唆された。本研究の限界点として1 種類のみ骨芽細胞株を使用していること があげられるが、今後さらにマウスからの初代培養骨芽細胞やヒト骨芽細胞株を用いた実験を計画し ている。 (結論) 我々は骨折修復におけるトロンビンの重要な役割を実証した。トロンビン刺激はMC3T3 細胞上の PAR-1 受容体を介し、MCP-1、TF、MCSF、IL-6 および PAI-1 の産生を調節し、また産生された MCP-1 は RAW264 細胞の遊走を増強させた。また、マウス骨折モデルの検討においても同関連分子 の発現を認めた。本研究は、トロンビンが骨芽細胞機能の一部を制御する可能性を示唆するものであ り、骨折治癒過程における新たなメカニズムの理解に寄与するものと考えられる。

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論文審査結果の要旨

本論文は、凝固・線溶系が骨折修復にどのように関与するかを評価するため、In Vitro においてマ ウス骨芽細胞様細胞株(MC3T3)を使用し、トロンビンの骨芽細胞への影響を調査した研究である。 筆者等の研究によって骨折修復においてトロンビンが重要な役割を果たしていることが実証され、実 際の臨床上の有用性と先見性、独自性が認められる。 本論文は、審査以前の状態と比べ、各委員の質問に対して概ね適切に回答する形で修正されており、 この結果、評価に耐え得るものとなっている。よって、学位論文として、ふさわしい内容と考えられ る。 なお、審査内容の詳細については、別紙「各委員からの質問およびそれに対する回答」を参照され たい。

(別紙)各委員からの質問およびそれに対する回答

百澤先生のご質問 1. SCH は、トロンビンの活性化をどのようにブロックするのでしょうか? A. SCH530348(SCH)はトロンビンの受容体である PAR-1 に対するアンタゴニストとして拮抗的 に働きます。 2. 凝固によって生成されたトロンビンが PAR-1 受容体を介して、骨折治癒に関与するとのことです が、では、PAR-3 や PAR-4 を介する経路に関してはいかがでしょうか? A. トロンビンの受容体として、PAR-1,3,4 が報告されており(Nature. 2000. 14:258-64.)、その中 でもPAR-1 が中心的な働きをし、他の受容体に比較して低濃度のトロンビンで活性化されること が知られています。SCH が PAR-1 特有の拮抗薬であること。また、今回の一連の実験において SCH の投与によりトロンビン刺激で誘導されるの種々の反応が抑制されたため、骨折治癒に関す るトロンビンの働きはPAR-1 受容体を介するものが主であると考察されました。しかしながら、 PAR-3、PAR-4 がその他の働き、補助的な働きをしている可能性はあると考えます。 3. 今後、この研究成果が臨床の場で貢献あるいは応用できることはないのでしょうか? A. 骨芽細胞の PAR-1 を意図的に活性化させることができれば、骨折時における新たな骨癒合促進剤 としての開発に寄与できる可能性があると考えます。また、高齢化社会における骨粗鬆症問題に 対しても、あらたな骨形成促進剤としての可能性が考えられます。また、強力な抗凝固薬の投与 を継続して行っている患者さんの骨折、四肢切断後の再接着などにおける抗凝固療法時にどのよ うな調整が必要となるかの指標への貢献ができれば幸いです。

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飯野先生のご質問 1. Fig.3 F はトロンビン刺激によりMC3T3-E1 細胞からMCP-1 が誘導され、RAW264 migration がおきるというものだが、Fig1.A にあるようにRAW264 細胞にもトロンビンレセプ ターPAR-1 が発現していることから、RAW264 migration に際してRAW264 へのトロンビン の直接的な影響はないのか。 A. 御指摘のようにトロンビンが RAW264 細胞に作用する可能性があり、実際に過去の報告にてもト ロンビンがRAW264 に作用していることは知られております。過去の報告からトロンビンの RAW264 細胞への影響についての可能性を否定できるものではありませんが、主にはトロンビン 刺激によりMC3T3-E1 細胞からMCP-1 が誘導され、RAW264 の migration が誘導される と考えておりました。必要に応じて追加実験を行う予定です。 2. 本論文は骨折に伴う炎症期の非常に早い段階での反応を説明しようとするものと思うが、マウス の骨折実験でsacrifice するのが骨折から 1 週間後となっている。もっと早い時期での変化を評価 すべきではないか。 A. 学位論文中においての評価時期が骨折後 1 週間の 1 点であり、時系列評価としては全く不十分で あります。特にin vitro の結果を踏まえれば、御指摘のようにより短い時間での評価が有用であ ったと考えます。臨床における骨折評価が骨折後1 週ずつのレントゲンで評価となっており、マ ウスにおいても骨折後1 週ごとに屠殺し検討しておりました。その中での骨折後最短標本が骨折 後1 週となってしまったことも実験計画段階での甘さであったかもしれません。

3. 公開発表の中にはなかったが、論文では骨折を major fracture と minor fracture にわけて評価し ている。意図するものは何か。また、TRACPとMCP-1 の発現は minor fracture の方が強く 出ているのは何を意味しているのか。

A. Major fracture は転位(骨折のずれ)が大きく骨膜を破壊した状態の骨折であり、minor fracture は骨膜まで破壊されてはいない状態での転位の少ないものとして評価していました。論文上の結 果からはminor fracture において TRACP と MCP-1 がより強く染色されていました。このこと は、minor fracture では骨膜が破たんしていないことにより、骨折により生じた凝血塊が骨折部 によく残り、骨折部での骨代謝がより活性化されているものと考えられました。つまり、転位の 少ない(骨膜の破たんの少ない)骨折においてはより骨癒合が得られやすい可能性が示唆されま した。しかしながら、当研究グループの判断としては、そのことまで言い切る根拠しては不十分 であると判断し、公開発表においては割愛させていただきました。そのため、現在投稿中の雑誌 BONE には骨折の違いを表さず、骨折部分に MCP-1 が発現し、その周辺に TRACP が染まって きたという形に変更いたしました。

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4. 骨折の治癒に際して外因系凝固が重要な働きをしているという結論だが、実臨床においてワーフ ァリン等の外因系凝固を阻害する薬剤を内服している患者は実際に骨折の治癒が遷延するのか。 A. ワーファリンなどの外因系の凝固を阻害してしまう薬剤においては、明らかに骨癒合が遷延する

との報告が多数されており、われわれの実臨床の場においても実感されております。しかしなが ら、Xa 阻害薬などの pin point における抗凝固薬では骨折治癒が遷延されないとの報告もあり、 凝固系と骨折治癒の関連性を明らかにしていくことは臨床的に意義のあるものと考えます。 安達先生の質問 1. 4 ページ下から 7 行目 抗血液凝固薬が骨折の治癒に悪影響を与えることがある、とのことですが、これは論文引用の必要 もないほど一般的な整形外科臨床の常識なのでしょうか。もしそうでなければ、何らかの引用文献 が必要だと思います。 A. 抗凝固薬(ワーファリンなど)では骨癒合が遅延することが言われています。よく根拠とされる 論文といたしましては(Gage BF et al. Arch Intern Med. 2006 Jan 23;166(2):241-6.)があげら れます。現在(2015.6)、IF:13.246、2904 views, 85 citations であります。この論文およびワーフ ァリンと骨折に関する最新の論文を引用文献に追加いたします。 Q. 上記と関連しますが、先生がトロンビンの骨折治癒に対する影響に着目された理由は、抗血液凝 固薬が骨折の治癒に悪影響を与えるという現象なのでしょうか。 A. 本実験を開始する 1 番目の動機といたしましては、御指摘のように抗血液凝固薬(特にワーファ リン)が骨折の治癒に悪影響を与えることでありました。第2 の動機といたしまして、実臨床に おいて骨折部を展開して凝血塊を除去した症例に比較し、展開を行わずに経皮的鋼線固定や、ギ プス固定したも症例においてより骨癒合が早いことが指摘されていました。その原因として、骨 折治癒には血腫・凝固因子の関連があり、特にトロンビンの影響があるのではないかと考察して おりました。第3 には、指導教官の 1 人である市川先生の先行研究として“トロンビンの骨肉腫 に対する影響”があり、研究するにあたり環境が整っていた側面もありました。 2. Methods 試薬購入先のメーカーについて、メーカー名のみのものと所在地が記載されているものが混在して います。所在地を記入する場合が多いように思いますので、それで統一してはいかがでしょうか。 また、引用2 回目以降の場合にも所在地が記載されている場合がありますが、2 回目以降はメーカ ー名のみが普通だと思います。 A. 御指摘のように修正いたします。

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3. P13 second paragraph

Major fractures, minor fractures の定義を記載すべきと思います。

A. 学位論文上は、Major fracture は転位(骨折のずれ)が大きく骨膜を破壊した状態の骨折であり、 minor fracture は骨膜まで破壊されてはいない状態での転位の少ないものとして定義いたしまし た。論文上の結果からはminor fracture において TRACP と MCP-1 がより強く染色されていま した。このことは、minor fracture では骨膜が破たんしていないことにより、骨折により生じた 凝血塊が骨折部によく残り、骨折部での骨代謝がより活性化されているものと考えられました。 つまり、転位の少ない(骨膜の破たんの少ない)骨折においてはより骨癒合が得られやすい可能 性が示唆されました。しかしながら、当研究グループの判断としては、そのことまで言い切る根 拠しては不十分であると判断し、公開発表においては割愛させていただきました。そのため、現 在投稿中の雑誌BONE には骨折の違いを表さず(major or minor)、マウスの骨折として一本化 いたしました。

4. 骨折患者に抗血液凝固薬が投与される状況は当然あると思います。抗凝固薬の骨折治癒への悪影 響を低減するために、先生のご研究を踏まえて、何か提言できることはありますでしょうか。 A. ワーファリンなどの外因系の凝固を阻害してしまう薬剤においては、明らかに骨癒合が遷延する

との報告がされており(質問1 回答)、われわれの実臨床の場においても実感されております。 しかしながら、Xa 阻害薬などの pin point における抗凝固薬では骨折治癒が遷延されないとの報 告もあり、抗凝固薬の選択、変更が骨折治癒への悪影響を低減することに有効であると考えます。 また、骨折を治療する際に、可能であれば骨折部を展開することがなく、整復・固定を行い、血 腫が除去されないよう(凝固系が働く状態)にしていくことが肝要と思われます。

参照

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