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自己抗原応答性免疫細胞の調節について

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Academic year: 2021

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東京女子医科大学学会 第52回総会演説抄録

〔特別講演〕 体外循環の進歩とその展望 (第1外科)和田 壽郎 現代外科学の発展は1910年Elsbergらによる挿管麻 酔法と抗生物質の発見によって第2次世界大戦のヨー ロッパ大陸に於いて戦創を対象に開胸術の安全性を確 立し,又心臓銃弾の摘出の臨床も背景に戦後急速に新 しい胸部心臓血管外科分野の発展を導いた. 臨床面で即ち食道の直達手術,肺結核及び悪性腫瘍 に対する肺切除術の普及と共に心臓疾患に対する外科 治療の分野が開拓された,1950年から60年にかけて高 気圧酸素治療や低温の利用による開心術への研究はや がて人工心肺を用いる開心術をその安全化と長時間化 とに研究が向けられ更に近年大動脈遮断下における心 筋保護法の導入によって3∼6時間の開心術は安全に 行なう事が出来る様になった.心臓は最初metal一 本gerpumpが用いられたが,次でrotary pumpが20 年以上に亘って広く用いられてきている.近年,新し くcentrifugal pulnpが開発されて臨床に応用されて 来ている.人工肺はscreen型,創m型に続いて良質な プラスチック材料とその消毒法の改善によって,sheet 型そしてhardshe11型の気泡型人工肺の全盛期を迎え たが,より生理的な長時間使用を目的に血液酸素付加 を人工膜を介して行なう膜型肺が導入され,今日にお ける臨床にはこの2つの方法が相半していると思われ る. 体外循環は生命の危険に直結するものだけに数多く の研究を背景に大型のそして複雑な機構となってきた が,近年の人工材料の改善medical electronicsの進 歩,更にcomputerの導入により,より生理的な体外循 環法を目標としつつ装置の縮小化とにその自動制御化 autoregulationを求められていこう. 〔シンポジウム〕 自己免疫疾患をめぐって (序言) (微生物学)吉岡 守正 (リウマチ・痛風センター)御巫 清允 医学の進歩はスルフォンアミド,ペニシリンに端を 発した感染症対向策によって,人類は感染から縁を切 れるかとの錯覚におちいったこともあったが,まもな く単なる病原微生物退治だけでは万全でないことがわ かってきた, この原因はいくつも挙げられるが,免疫異常が大き な原因であることも知られてきた.かつては免疫とは 外来異物に対する生体の防御機構との解釈が有力で あった.ところが,自己抗原にも免疫応答を起こす事 実に直面するに及んで,生体の,ひいてはリンパ球の 抗原認識の問題に立入らざるを得なくなった.個体に よる抗原認識の差,その後に起こる免疫応答の差の研 究は,免疫異常の理解に大きく貢献した. 人類の疾病には先天性奇形性疾患,退行性疾患,炎 症,腫瘍,外傷等々以外に病像もはっきりしなければ, 原因もはっきりしない一連の疾患があることもわかっ

ていた.H.Selye.のadaptation theoryから, Hench

のcortisoneに至る過程で表面化してぎた自己免疫性 疾患は,現在もなお未解決であり,広範囲に研究され ている部門である.この部門は現在発展段階であるた め,個々の研究はかなり進んでいても相互の協調,統 合に欠けることが多く,本学にも微生物学教室,リウ マチ・痛風センター,内分泌総合医療センター,糖尿 病センター等,この自己免疫疾患を研究対象とする部 門が少なくないが,同じ感を懐かせられている, この自己免疫疾患の研究への取り組み方を基礎・臨 床の面から各演者に発表していただぎ,相互にそれら を参考にし研究を発展させて,患者の幸福が1日も早 く来るよう努力していただきたいことを目的として, シンポジウムを開催する. 1.自己抗原応答性免疫細胞の調節について (微生物学)内山 竹彦 生体には自己抗体産生細胞は自己免疫疾患等の病的 な状態でなくても存在している.正常マウスをLPSで 刺激すれぽ自己抗体の産生が見られる.また,正常マ ウスのB細胞を用いて細胞融合法によりhybridoma を作製すれぽ,ある割合で自己抗体産生hybridomeを 得ることが出来る.その割合は自己免疫疾患NZBマ ウスではさらに増加する.それ故に,自己免疫疾患は, 生体に存在する自己抗体産生細胞の増加と,その結果 惹起される病的状態という2段階の過程として考える ことが出来る.本シンポジウムでは,基礎医学の立場 から,マウスにおける自己抗体産生の出現と増加の機 構について考察して見たい. 一613一

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76 正常マウスのIgM型自己抗体産生細胞は外来抗原 に対する抗体産生細胞とは異なる特徴をもつ細胞集団 (Lyl陽性細胞)として成熟マウスの脾,骨髄,肝臓に 存在し,NZBマウスではその細胞数は増加する. 免疫応答は種々の調節性T細胞によって制御を受 けている,マウスにおける実験的臓器特異的自己免疫 疾患の成立には種々のT細胞集団が関与しているこ とが明らかになって来た.例えばLyt1−2+3+T細胞は 胃粘膜,甲状腺,睾:丸組織に対する自己抗体産生を誘 導し,Ly1+2皿3−T細胞はこの反応を抑制する.この自 己抗体産生を促進する調節性T細胞の活性化の機構 は,1つの考え方として,何らかの原因により(例え ばr・インターフェロン),自己構成細胞がIa抗原陽性 となり,自己抗原応答性T細胞の活性化を導くことが 考えられる. 自己抗体産生の過程は複数の道筋よりなっていると 思われる.これからの研究方向は,それぞれの道筋を 解明して,ヒトの自己免疫疾患の解明の手がかりを与 えることと思われる, 2.免疫応答の遺伝的背景 マウスH・2class II抗原(la抗原)について (東京大学医学部物療内科)山本 一彦 免疫応答には種々の細胞が関与しており,これらが お互いに相互作用をして機能を発揮している.主とし てマウスの実験でわかってきたことであるが,ある特 定の抗原を動物に免疫してこの動物の免疫した抗原に 対する反応を調べると,種々の系統のマウス間で高反 応と低反応(又は無反応)の早撃に分けることができ る.一つの純系マウスでは,個体が違っても反応は同 じであるから,その特定の抗原に対する免疫応答は遺 伝的に規定されていることがわかる.純系同士でいろ いろな染色体の一部が組み替えられたマウスを用いる と,この免疫応答を規定する遺伝子の多くが,17番目 の主要組織適合抗原遺伝子群(H−2,ヒトでのHLAに 相当する)の1領域に存在することが分かってぎた. この1領域にある構造遺伝子はclass II抗原(la抗原) と呼ばれる糖蛋白を支配し,このIa抗原分子はマクロ ファージ,B細胞などの細胞表面上に存在する.細胞 免疫の詳細な実験により,外来異物に対して生体が反 応するときには,まず異物はマクロファージ等に取り 込まれ細胞内消化され,異物の一部が細胞表面に再び 現われ,これとIa抗原が結びつき複合物を形成し,こ れをT細胞が認識し活性化され,生体全体を異物特異 的免疫反応へと導いていくことがわかってきた.免疫 反応の高低は,異物断片とIa抗原が複合体を作るとき の結合度によるのであろうとの実験報告もある. このような免疫応答の初期に起る抗原特異的な反応 機序が自己免疫や移植免疫でも重要な役割を果たして いる可能性が大きい.例を挙げれば,抗Iaの抗体を生 体に注射することで自己免疫モデルマウスの腎炎はか なり抑制されるし,犬の腎移植でも,ドナーの腎を抗 Iaの抗体で処理すると急性拒絶反応が抑えられるこ とがわかっている.慢性関節リウマチでも滑膜中の細 胞にIa抗原が多く存在し,これと反応するT細胞が 多く集まっていると思われる所見がある.Ia抗原の性 状をより詳細に調べることでこれら疾患の理解につな がる可能性があると思われる. 3.SLEにおけるCR l receptorについて (リウマチ。痛風センター)寺井 千尋 補体第3成分(C3)は補体系の中心的役割をなす蛋 白で,補体系の生物活性の多くは,このC3の活性成分 が細胞膜上の補体レセプターに結合することにより発 現する.C3レセプターにはCR1(C3bレセプター), CR2(C3dレセプター), CR3(iC3bレセプター)があ る.CR1は分子量約20万の糖蛋白で,霊長類では赤血 球,好中球,単球,Bリンパ球や腎上皮,肝脾の網内 系細胞上などに存在する. 免疫粘着反応(IA)は抗原抗体と補体の結合物が霊 長類赤血球に附着する現象でC3bとCR1の結合によ り起こる.鋭敏な反応として検査に用いられるが赤血 球のIA活性には大きな個人差がある.熱変性グロブ リンを免疫複合体(IC)モデルとし補体を加えてSLE 患者赤血球のIA活性を測定すると2/3の患者は陰性 であった.正常人では赤血球IA活性は90%で陽性を 示した.その後単クローン抗CR1抗体を用いた研究に よりIA活性陰性は,赤血球上CRI site数の減少によ ることが判明した.正常人の赤血球CRl site数は,低 値(10%),中間値(60%),高値(30%)の三峰性に 分布するが,SLE患者では低迷,中間値が約半数宛で 高値はみられなかった.赤血球CRI活性は多くは治 療・病勢の影響を受けず,家系調査の結果からも主に 遺伝的に規定されると考えられる. CR1は補体活性化の抑制因子として働く他に, IAに 見られるようにICなど異物の補促・除去を行なう. CR1分子数は赤血球で500程度,好中球, Bリンパ球で 数万であるが,赤血球の絶対数が多いので血中CR1の 90%以上は赤血球に存在する.サルを用いた実験で, ICを静注すると大部分は直ちに赤血球に結合し,肝の 一614一

参照

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