• 検索結果がありません。

博 士 論 文 概 要 書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 論 文 概 要 書"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

早稲田大学大学院 経済学研究科

博 士 論 文 概 要 書

Trade and Industrial Policies under International Interdependence

-Essays on Strategic Export Subsidy Policy 国際相互依存下の貿易・産業政策

-戦略的輸出補助金政策に関する研究

魏 芳 WEI FANG

2009年2月

(2)

2

1. 本稿の目的

近年、経済活動のグローバリゼーションが加速され、世界は財貿易といったモノの面だけで なく、ヒトやカネの面での国際取引、すなわちサービス貿易や直接・間接投資面での相互依存 関係が強まりつつある。そのなか、従来の国際貿易の問題に加え、海外直接投資、資本移動自 由化、企業株式の国際相互持合などグローバル経済活動をめぐるさまざまな問題が日増しに注 目されている。各国政府が独自に決定する貿易・産業政策が国内経済のみならず、他国や世界 経済にも影響を及ぼすようになってきた。そうしたグローバル相互依存の下で、各国政府によ って独自に決定される貿易・産業政策が自国、そして他国及び全世界の厚生に及ぼす経済効果 を理論分析の視点より解明することが本稿の目的である。

本稿は企業の戦略的行動と政府の戦略的政策決定を中心に分析を展開する。とりわけ企業 の直接投資の立地決定、国際的所有・経営の構造という観点から、輸出国政府の戦略的輸出 補助金政策決定を第 3国市場競争モデルの枠組みで再検討する。各国の個別政策決定に影響 を及ぼす要因を分析したうえで、当事国だけでなく世界全体から見たときにどのような非効 率性および国際的所得分配面での不公正を生む傾向があるかを明らかにする。そしてそれら を踏まえたときにどのような政策協調、国際的ハーモナイゼーションが必要かについて経済 理論の観点から解明する。

2. 各章の概要

第2章

次章から分析の基礎台である Brander and Spencerの第3国市場競争モデルを詳細に検討 する。1980年代以降、新しい産業組織論、特にゲーム論を応用した寡占理論の発展は戦略的貿 易・産業政策の研究を生みだした。そのなか、戦略的貿易政策理論の「元祖」とも言われる Brander and Spencer(1985, JIE)のモデルが登場してから、さまざまな政策分析に応用され た。本稿の主要な議論が第3国市場競争モデルの枠組みで展開されるので、本章はその先行モ デルを詳細に分析し、ゲーム理論の分析手法を用いて、戦略的補助金政策のレントシフト効果 の仕組みを明らかにする。そのうえで、全世界の厚生を最大化するための補助金政策の効果を 検討する。さらに、輸出企業間の費用格差に着目し、各輸出国の補助金供与のインセンティブ に与える影響を明らかにする。そのほか、異質財が生産・販売される場合についての分析結果 が整理されている。

第3章

従来行われた貿易政策と直接投資の相互依存関係に関する研究は、ほとんど輸出国と輸入

(3)

3

国の間の問題として取り上げられてきた。輸出国間の直接投資自由化問題、とりわけ資本自 由化問題はまだ十分な議論が行われていない。そのなか、 Janeba(1997, JIE)は国際寡占 産業の枠組みで、輸出国企業の生産立地点の国際移動を検討し、輸出国間の資本移動自由化 が各国の貿易政策に及ぼす影響を明らかにした。

第3章は対内直接投資規制と戦略的貿易政策のかかわりという観点から、Janebaの研究を 踏まえて、各輸出国個別の資本自由化のインセンティブを検討し、輸出国間の資本自由化政 策が戦略的輸出促進政策に与える影響を明らかにする。特に輸出企業の生産費用格差が大き い場合、両輸出国が同時に資本自由化すると、効率的な輸出国だけでなく、世界全体の厚生 が悪化し、すべての輸出国が同時に資本自由化する国際的協調が必ずしも必要とは限らない ことを明らかにする。

本章は、国際資本自由化の4段階ゲームのもとで、各輸出国が国内市場を開放するかしな いかによって四つのサブゲームに分けて分析を行う。片方の輸出国だけ対内直接投資を自由 化するサブゲームでは、輸出補助金競争の均衡は純粋戦略均衡と混合戦略均衡が必ず存在す る。混合戦略均衡において、対内直接投資規制を続ける輸出国は戦略的輸出補助金供与のイ ンセンティブをいっそう強め、財貿易面での歪みが拡大するおそれがある。両輸出国が同時 に対内直接投資を自由化するサブゲームと規制するサブゲームを比較すると、輸出国企業間 の生産費用格差が小さい場合、両輸出国の経済厚生は改善する。その一方、生産費用格差が 大きい場合、効率的な輸出国の厚生は悪化するが、非効率的な輸出国の厚生は逆に改善する ことがわかる。さらに、生産費用条件にかかわらず、輸出国の補助金供与のインセンティブ が弱まるので、輸入国(第3国)および全世界の経済厚生が必ず悪化することを明らかにす る。

本章の分析は輸出国企業間の費用条件の非対称性に着目し、各輸出国個別の資本自 由化するインセンティブを考察し、両輸出国ともに資本自由化する国際的協調が必要である ための生産費用条件を検討する。本研究から推察されるのは、輸出国企業間の費用格差が十分 に大きい場合、資本自由化の国際的協調が必ずしも必要とは限らないことである。

■公刊論文

K. Kiyono and F. Wei, 2008, The Role of Location Choice in Strategic Export Pro- motion Policy-Capital Liberalization Incentives of Exporting Countries, Journal of Economics, 95, pp.55-74.

K. Kiyono and F. Wei, 2007, Capital Liberalization between the Exporting Countries, Waseda University 21COE-GLOPE Working Paper 32.

(4)

4 第4章

グローバリゼーションが進むなか、企業の株式は自国民または自己企業の株主だけに所有さ れるではなく、外国の国民または外国企業の株主に相互所有されるようになった。そういう企 業株式の国際相互持合構造は各国政府の政策決定に大きな影響を与える。従来の戦略貿易政策 理論では各企業の利潤配分はすべてその国の厚生となり、企業の所有権問題に触れていない。

資産市場のグローバリゼーションに伴い、国家間あるいは企業間の株式相互持合は各国の国益 への利潤配分を変更し、政府の政策決定過程に重要な役割を果たしている。

第4章は企業の株式の一部が外国の国民に所有されるという国家間の株式相互持合、および ライバル企業の株主に所有される企業間の株式相互持合構造を考察する。さらに二つの株式相 互持合が同時に存在する混合持合構造に発展し、各輸出国の戦略的補助金供与のインセンティ ブがどのように影響されるか検討する。そのうえで、各輸出国の最適な補助金政策,そして輸 出国と輸入国、及び世界全体の厚生利益を比較するうえで、より望ましい企業株式の相互持合 構造を明らかにする。

企業の株式が国際的に相互持合されると、各輸出国の政府は戦略的輸出補助金供与のインセ ンティブを弱める。それは以下の四つの効果に起因すると考える。まずはクロス・レントシフ ト効果である。補助金政策は自国企業の利潤を上昇させるが、その上昇の一部分が配当金とし て外国企業の株主へ流出し、外国企業の価値を上昇させる効果である。次は企業間株式相互持 合構造のレントシフト効果である。企業間株式相互持合構造の下で、企業間の共謀行為によっ て、自社の生産量を抑制し、利潤を低下させる効果がある。3番目は補助金流出効果である。

それは政府の補助金支出の一部が配当金として外国の株主に流出する厚生損失である。最後は 配当流出効果である。補助金政策は外国企業の利潤を低下させる一方、自国の持合分の配当を 減少させる効果を持っている。

さらに、企業間の株式相互持合構造と国家間の相互持合構造を比較すると、各輸出国政府 の補助金供与のインセンティブがいっそう強まることを明らかにする。その結果、各輸出企 業の実現する均衡生産量が上昇し、企業間の暗黙的に共謀するインセンティブがなくなり、

世界全体の厚生が改善する。本章は従来の産業組織論の分析と異なり、政府の介入政策があ る場合、企業間相互持合構造のほうは世界厚生の観点からみればより望ましいことを明らか にする。

■公刊論文

F. Wei and K. Kiyono, 2005, Strategic Export Policy under International Cross Share-holding, 2005, Waseda Journal of Political Science and Economics, No.359, pp.5-20.

(5)

5 第5章

伝統的な産業組織論の研究では、寡占市場における企業行動の分析は利潤最大化の下で行わ れている。だが、現代企業の行動を理解するには、重要な企業構造に目を向けなければならな い。現代企業の多くは所有と経営が分離され、企業の所有者が経営者に生産活動を委任し、企 業のパフォーマンスに連動する報酬契約を締結する仕組みである。経営者インセンティブ契約 の存在を考慮した寡占モデルは産業組織論では広く応用されているが、閉鎖経済の分析に留ま るのである。開放経済への拡張、とくに国際寡占市場において、政府が介入すると、経営者イ ンセンティブ契約の存在が政府の貿易政策にどのような影響を及ぼすかについての研究はご く少ないといえる。そのなか、 Das(1997, JIE)は戦略的貿易政策と経営者インセンティブ 契約のかかわりという観点から、企業の所有と経営の分離構造が政府の戦略的貿易政策に及ぼ す影響を検討した。

第5章は Dasの分析結果を再検討し、特に輸出国間の戦略的補助金競争に注目し、経営者イ ンセンティブ契約の提示による生産再配分効果と政府の輸出補助金供与による生産再配分効 果の相互関係を考察し、経営者インセンティブ契約提示のもとで輸出補助金政策の社会厚生に 及ぼす経済効果を明らかにする。

本章では、国際寡占市場において、経営者インセンティブ契約の生産再配分効果は戦略的 補助金供与のレントシフト効果と同一であることを明らかにする。各企業の所有者は経営者 インセンティブ契約を設計し、経営者が直面する自国企業の限界生産費用を低下させる。経 営者はよりaggressiveな生産活動を行うので、自国企業の生産量が上昇し、外国企業の生産 量が減少する。したがって、企業の所有者は経営者インセンティブ契約の提示を通じて、生 産補助金を供与するように企業行動に影響を与えるのである。そして、経営者インセンティ ブ契約の提示によって、輸出国政府は過剰な市場競争を押さえるため、戦略的補助金供与の インセンティブを弱める。その一方、企業の所有者はより高い生産補助金を供与するような 経営者インセンティブ契約を設計することになる。その結果、企業側が実際に得た最終補助 金が上昇したので、各輸出企業の均衡生産量は過大となる。輸出国の経済厚生が悪化し、輸 出補助金が国内の社会厚生に及ぼす歪みがいっそう拡大することを明らかにする。

さらに、両企業の非対称的な企業構造を検討する。片方の企業しか経営者インセンティブ 契約を提示しない場合、その企業の所在国の政府は貿易を介入するインセンティブを持たな いことがわかる。その一方、相手国の政府は補助金供与のインセンティブを強め、経営者委 任を行う企業に対してシュタッケルベルグ・リーダーの補助金率を供与する。両企業の所有 者が政府より先に行動できる場合、両企業ともに経営者委任をしない結果となるが、その利 得は囚人のジレンマの状況に陥らないことを明らかにする。

(6)

6

■公刊論文

魏芳, 2009, 戦略的貿易政策と経営者委任―ベルトラン価格競争のケース,Waseda Jour- nal of Political Science and Economics, No.373-374, pp.21-31.

Wei, F., 2008, Strategic Export Subsidies and Managerial Incentives, Waseda Eco- nomics Working Paper, No. 08-04.

第6章

第4章と第5章は個別に企業株式の相互持合構造、および所有と経営の分離構造が企業行動、

そして政府の政策決定に与える影響を分析する。企業活動のグローバリゼーションに伴い、同 一企業では二つの構造が共存する、いわゆる所有と経営の国際的分離はよくある現象である。

第6章は前二章の議論を踏まえ、所有と経営の国際的分離の下で、輸出国政府の最適な補助金 政策を検討する。株式の相互持合と所有・経営の分離という二つの企業構造の相互関係を分析 し、輸出国政府の補助金供与のインセンティブに与える効果を明らかにする。

本章は国民間の株式相互持合構造に着目し、企業の所有と経営が分離された場合の政府の政 策決定を検討する。分析の結果とは、相互持合構造は経営者委任の有無にかかわらず必ず政府 の補助金供与のインセンティブを弱める一方、経営者委任が政府の政策決定に与える影響は相 互所有持合の構造に依存する。とくに、株式の自国民所有率が十分に低い場合、経営者委任は 補助金供与のインセンティブを高める(税金を課すインセンティブを弱める)ことになる。そ れは自国民の所有率が低いほど、外国企業の自国厚生に占める比重が大きくなり、クロス・レ ントシフト効果と配当流出効果が補助金政策に与える負の効果が所有と経営の分離のもとで いっそう弱まるので、政府はより高い補助金を供与する(より低い税金を課す)インセンティ ブを持つわけである。

本章はさらに本稿で議論される企業の所有・経営にかかわる四つのケースを整理する。均衡 における各ケースの補助金率と生産量を比較し、自国民の所有率によってその大小関係を検討 する。とりわけ二つの特殊な(対称と部分)相互持合構造の下での大小関係を明らかにする。

参照

関連したドキュメント

[4] Takako Ogawa, Tetsuyuki Harada, Hiroshi Ozaki and Kintake Sonoike (2013) Disruption of the ndhF1 gene affects chlorophyll fluorescence through state transition in the

[r]

Suhara, "Method and device for measuring surface potential distribution, method and device for measuring insulation resistance, electrostatic latent image measurement device,

T.Edura, M.Nakata, H.Takahashi, H.Onozato, J.Mizuno, K.Tsutsui, M.Haemori, K.Itaka, H.Koinuma, Y.Wada, “Single Grain and Single Grain Boundary Resistance of Pentacene Thin

Kobayashi, Different orientation of AgGaTe 2 and AgAlTe 2 layers grown on a-plane sapphire substrates by a closed space sublimation method, 41st Conference on the Physics and

[r]

“In vitro studies on the mechanistic details of adhesion and wound healing of epithelial cell sheet therapy”, JSPS A3 foresight international symposium on nano-biomaterials

Global circadian transcription rhythms without robust kai-gene cycling in the heterocyst-forming multicellular cyanobacterium, Anabaena sp.