九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
金属材料の高温における強化に関する研究 : 積層強 化と固溶強化
森川, 龍哉
Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
https://doi.org/10.11501/3099898
出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
の
金 属 材 料 の 高 温 に お け る 強 化 に 関 す る 研 究
‑ 積 層 強 化 と 固 溶 強 化 ‑
森 川 龍 哉
目 次
1 序 論
1.1 本 研 究 の 背 景 と 目 的 1.1.1
1.1.2 1.2 概 要
. . . . . . . . . . . . . . . . .
巨 視 的 な 材 料 強 化 法 ( 積 層 強 化 ) 微 視 的 な 材 料 強 化 法 ( 固 溶 強 化 )
‑ ・ . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . . . . .
2 人 工 積 層 複 合 材 料 の 熱 疲 労
2.1 緒 言
2.2 実 験 方 法 .
2.2.1 試 験 片 の 作 製
2.2.2 熱 疲 労 試 験
2.3 実 験 結 果 と 検 討 .
サ イ ク ル 数 と 銅 層 の 伸 び .
熱 残 留 応 力 の 評 価 .• • • • • • . • • • 残 留 内 部 応 力 の 緩 和 過 程 .
ボ イ ド の 発 生 機 構 . . . . .
2.3.1 2.3.2 2.3.3 2.3.4
2.4 結 論 ‑ ・ ・ . . . . .
. . . . . . . .
.. . . . . . 1 1 2 4 7
9
9
0
0
0
2
2
5
6
1
3
1
1
1
1
1
1
1
2
2
3 人 工 積 層 複 合 材 の 高 温 変 形 24
3.1 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 3.2 実験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 3.2.1 試 験 片 の 作 製 . . • . . • . . . .. 24 3.2.2 圧 縮 試 験 . . . . • . . .. 27 3.3 実 験 結 果 と 検 討 ..
応力ーひずみ線図
異 相 界 面 す べ り の そ の 場 観 察 界 面 拘 束 に よ る 複 合 材 料 の 強 化 界 面 近 傍 の 構 造
3.3.1 3.3.2 3.3.3 3.3.4
3.4 結 論 ‑・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ー
ー・・・・・・・・・.
4 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 機 構 の 判 別 4.1 緒 言
4.2 回 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 挙 動 に よ る 変 形 機 構 の 判 別
4.2.1 実 験 方 法 .. . . .. 51 4.2.2 実 験 結 果 .. . . • . . . • .. 52 4.3 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 に お け る 刃 状 転 位 の 易 動 度 ・ ・ ・ 55 4.3.1 計 算 法 . . . . • . . . • . . . •. 55 4.3.2 計 算 結 果 と 検 討 . . . . .• 58 4.4 電 気 抵 抗 測 定 に よ る 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 機 構 の
判 別 .. . . • . . . • . . . • . • • . 62 4.4.1 実 験 方 法 .. . . • . • . • . . • . .• 62 4.4.2 実 験 結 果 と 検 討 . . . . • . . • •. 66 31 31 33 35 44 46
9 9 1
A古A斗A
V O
4 . 5
結 論 . . . • . . . ••7 2
5 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 挙 動 の 予 測
77 5 . 1
緒 言 . . . • . . . ..7 7 5 . 2
実 験 方 法 .. . . • . . • . • .•7 8 5 . 2 . 1
高 温 引 張 試 験 . . . • . ••7 8 5 . 2 . 2
応 力 緩 和 試 験 . . . ••8 1 5 . 3
実 験 結 果 と 検 討 . . . . ..8 2 5 . 3 . 1
応 力 緩 和 試 験 . . . ..8 2 5 . 3 . 2
高 温 変 形 応 力 の 変 形 経 路 依 存 性 . . . ..8 3 5 . 4
変 形 挙 動 の 予 測 .. . . ..8 7 5 . 4 . 1
予 測 法 . . . . ..8 7 5 . 4 . 2
パ ラ メ ー タ の 決 定 . . . . ..9 3 5 . 4 . 3
実 験 結 果 と 計 算 結 果 の 比 較 . . . . ..9 6 5 . 5
結 論 . . . ..1 0 2
6 総 括 103
謝 辞 109
参 考 文 献 110
牙 ヨ 1 早
序 論
1 . 1 本研究の背景と目的
ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン の 部 材 や 空 力 加 熱 に さ ら さ れ る 航 空 機 の 外 皮 部 材 な ど に は 高 温 で 高 い 強 度 を 保 つ こ と の で き る 材 料 が 必 要 と な る 。 高 温 で 強 度 の 高 い 材 料 に は セ ラ ミ ッ ク ス が あ る が 、 延 性 に 乏 し く 、
強 度 の ば ら つ き が 大 き い と い う 問 題 が あ り 、 構 造 用 材 料 の 主 流 は 依 然 と し て 金 属 材 料 で あ る 。
金 属 材 料 の 強 化 の た め に 既 に い ろ い ろ な 方 法 が 開 発 さ れ 、 実 用 に 供 さ れ て い る 。 材 料 の 塑 性 変 形 は 転 位 の 運 動 に よ っ て 担 わ れ て い る の で 、 材 料 の 強 化 と は 転 位 の 運 動 を 阻 止 す る こ と で あ る と 考 え る こ と が で き る 。 そ こ で 、 こ の 阻 止 を ど の よ う な 手 段 で 行 う か に よ っ て 、 材 料 の 強 化 法 は 巨 視 的 な 方 法 と 微 視 的 な 方 法 に 大 別 す る こ と が できる。
1 . 1 . 1
巨 視 的 な 材 料 強 化 法 (積 層 強 化 )航空機 等 の 構 成 材 料 の 軽 量 化 の た め に 、 材 料 の複 合 化 と い う 考 え 方 が生ま れ 発 展 し て き た 。 そ の 成 果 の 1っとし て、軽量 で し か も 強 い 、 す な わ ち 高 比 強 度 、 高 比 剛 性 の 材 料 で あ る FRP(繊 維 強 化 プ ラ ス チ ッ ク ) が す で に 実 用 化 さ れ て い る 。 強 化 繊 維 に は ガ ラ ス 、 ボ ロ ン 、 炭 素 な ど が 用 い ら れ 、 さ ら に 高 強 度 を 実 現 す る 繊 維 が 追 求 さ れ ている。しかし、 FRPに は リ サ イ ク ル が 困 難 で あ る 、 耐 熱 性 が 著 し く 劣 る と い っ た 問 題 が あ る 。 超 高 温 用 材 料 と し て 炭 素 ー 炭 素 複 合 材 料 の 開 発 も 進 め ら れ て い る が 、 主 流 は 金 属 を マ ト リ ッ ク ス と し た 金 属 基 複 合 材 料 で あ る と 言 え る 。
金 属 基 複 合 材 料 に も 、 比 強 度 、 比 剛 性 に 優 れ て い る こ と が 要 求 さ れ る が 、 耐 熱 用 に は 高 温 に お い て 強 度 低 下 の 少 な い こ と が 重 要 で あ る 。 ま た 、 高 温 で 延 性 に 富 む こ と も 、 高 温 用 複 合 材 料 の 満 た す べ き 条 件 で あ る 。 比 強 度 の 点 、 で 優 れ て い て も 延 性 の 著 し く 劣 る 材 料 は 大
き な 衝 撃 力 が 付 加 さ れ た と き に 破 壊 し や す い か ら で あ る 。 延 性 に 富 む 母 相 を 持 つ 金 属 基 複 合 材 料 は こ の 条 件 を 満 た す こ と が で き る 。
さらに、 2種 以 上 の 異 な る 材 料 を 用 い て い る こ と か ら 、 複 合 材 料 に は 異 相 間 の 界 面 の 安 定 性 や 密 着 性 の 良 い こ と が 必 要 で あ る 。 こ れ は 、 強 化 相 に 外 力 を 伝 達 さ せ て 強 度 を 上 げ る と い う 複 合 化 の 利 点 を 確 保 す る 上 で 重 要 で あ る 。
複 合 材 料 は 強 化 相 の 分 布 の 形 態 に よ っ て 次 の
3
種 類 に 分 類 で き る 。 母 相 中 に 第 2相を分散させた分散強化材(析出強化材を含む)、繊 維 状 の 強 化 相 を 複 合 さ せ た 繊 維 強 化 材 、 お よ び 板 状 の 強 化 相 を 複
合させた積層強化材である。
3種 に 分 類 し た 複 合 材 料 の 中 で 、 分 散 強 化 材 で は 、 母 相 の 転 位 が 分 散 粒 子 に 到 達 し た 際 に 、 転 位 は 上 昇 運 動 に よ る 乗 り 越 え(1)̲(3)、あ る い は オ ロ ー ワ ン 機 構(4)(粒 子 の 周 り に 転 位 ル ー プ を 作 っ て 転 位 が 粒 子 聞 を 通 過 す る 機 構 ) 等 に よ っ て 通 過 す る こ と が 可 能 で あ る 。 ま た 、 繊 維 強 化 材 の 場 合 も オ ロ ー ワ ン 機 構 に よ っ て 転 位 は 繊 維 聞 を 通 過 可 能 で あ る 。 し か し 、 積 層 強 化 材 で は 、 母 相 の 転 位 が 強 化 相 に 到 達 し た と き 、 そ の 運 動 は 完 全 に 阻 止 さ れ る 。
以 上 の よ う に 、 積 層 強 化 材 は 転 位 論 的 な 強 化 の 効 果 が 最 も 大 き い 複 合 材 料 で あ る と 考 え ら れ る 。 こ の よ う な 観 点 か ら 、 本 研 究 で は 巨 視的な材料強化法の典型的な例として、積層複合材料を取り上げた。
金 属 基 の 複 合 材 料 を 作 製 す る 際 に は 、 母 相 と 強 化 相 の 界 面 密 着 性 の 問 題 や 構 成 相 聞 の 化 学 反 応 に よ り 反 応 相 が 界 面 に 形 成 さ れ る な ど の問題があるが、技術的には強化相表面の処理(コーテイング等)な ど に よ っ て こ れ ら の 問 題 は 克 服 さ れ て い る 。 ま た 、 金 属 同 士 を 複 合 さ せ て 積 層 材 を 作 製 す る 場 合 に は 、 共 品 系 を 利 用 す る こ と に よ り 化 学 的 に 安 定 な 界 面 を つ く る 方 法 も あ る(5)。 し か し 、 高 温 用 に 使 わ れ る複合材料は、高温から低温(室温)、またその逆の温度履歴を繰り 返 し 与 え ら れ る の が 一 般 で 、 そ の よ う な 使 用 条 件 の も と で も 界 面 の 安 定 性 が 保 持 さ れ な け れ ば な ら な い 。 こ の と き 、 上 に 述 べ た よ う な 界 面 の 化 学 的 安 定 性 も 必 要 で あ る が 、 構 成 相 の 熱 膨 張 係 数 の 相 違 に 由 来 す る 熱 応 力 に よ っ て 界 面 す べ り や 軟 相 の 変 形 な ど が 発 生 す る と い っ た 物 理 的 な 不 安 定 性 を 阻 止 す る こ と も 、 複 合 材 料 を 高 温 で 使 用 す る 上 で 重 要 な 課 題 で あ る 。 高 温 で 使 用 中 に 界 面 す べ り な ど の 物 理
的 な 不 安 定 性 が 露 呈 す る と 、 外 力 を 強 化 相 に 伝 達 す る 効 果 が 著 し く 減 ず る 。 そ こ で 、 本 論 文 の 前 半 で は 、 金 属 基 の 人 工 積 層 複 合 材 料 に つ い て 、 界 面 す べ り を 中 心 に し た 異 相 界 面 の 高 温 に お け る 物 理 的 な 不 安 定 性 を 、 熱 サ イ ク ル に よ る 熱 疲 労 と 高 温 変 形 に よ っ て 検 討 し 、 その原因を考察した。
本 研 究 で は 、 積 層 複 合 材 を 構 成 す る 材 料 と し て 母 相 ( 軟 相 ) に は 銅 、 強 化 相 ( 硬 相 ) に は タ ン グ ス テ ン を 選 択 し た 。 銅 と タ ン グ ス テ ン は 銅 を 溶 解 し て 接 合 す る と 密 着 性 の 非 常 に 良 い 界 面 が 得 ら れ る 。 し か も 、 化 学 反 応 に よ る 化 合 物 が 形 成 さ れ ず 、 互 い に 固 溶 す る こ と も な い 。 す な わ ち 、 こ の 組 み 合 わ せ を 用 い る と 、 化 学 的 に 安 定 で 強 固 な 界 面 を 持 つ 積 層 複 合 材 料 を 作 製 す る こ と が で き 、 熱 疲 労 や 高 温 変 形 の 挙 動 を 調 べ る 上 で 、 界 面 の 物 理 的 な 性 質 の み に 絞 っ て 検 討 す
る こ と が で き る と い う 利 点 が あ る 。
1 . 1 . 2
微 視 的 な 材 料 強 化 法 ( 固 溶 強 化 つ前 節 の 複 合 強 化 も 強 化 相 の 分 布 を 密 に し て 行 け ば 微 視 的 に な る が 、 本 研 究 で は 微 視 的 な 材 料 強 化 法 の 代 表 と し て 固 溶 強 化 事 を 取 り 上 げ た 。 合 金 元 素 が 原 子 レ ベ ル で 均 一 に 分 布 す る 固 溶 体 は 十 分 微 視 的であるといえる。
合 金 化 に よ る 回 溶 硬 化 は 、 結 晶 粒 の 微 細 化 な ど と 並 び 、 代 表 的 な 金 属 材 料 の 強 化 法 の 一 つ で あ る 。 国 溶 硬 化 の 研 究 は 過 去 に お い て 多 数 行 わ れ 、 そ の 機 構 に 関 す る 知 見 は 多 い(6)。 固 溶 硬 化 合 金 で は 、 高 事国溶強化は寸実に固溶硬化と呼ばれているので、以下では統ーして固溶硬化 と呼ぶ
温 に お い て 転 位 の 周 り に 溶 質 原 子 の 雰 囲 気 が 形 成 さ れ る 。 置 換 型 固 溶 体 の 場 合 に は 、 こ の 雰 囲 気 は 、 溶 質 原 子 が 母 相 の 格 子 点 に 置 換 す る こ と に よ っ て 格 子 を ひ ず ま せ 、 生 じ た 応 力 場 と 転 位 の 応 力 場 と の 相 互 作 用 に よ っ て 溶 質 原 子 が 流 動
( d r i f tf l o w )
す る こ と に よ り 形 成 さ れ る も の で あ る 。 し た が っ て 、 高 温 で 変 形 す る 際 に は 、 転 位 は 溶 質 原 子 の 雰 囲 気 を 引 き ず っ て 運 動 す る 。 こ の 引 き ず り 抵 抗 が 硬 化 の 原 因 と 考 え ら れ て い る (7)。 こ の と き の 転 位 の 運 動 は 粘 性 的 で あ り 、 溶 質 原 子 の 拡 散 を 媒 介 と す る 熱 活 性 化 過 程 で あ る 。 こ の よ う な 変 形 様 式 で は 、 巨 視 的 に は 、 ひ ず み 速 度 の 応 力 指 数 が 約 3になる(純金 属では 4から 5)(8)、 加 工 軟 化 す る(9)、逆遷移クリープ現象が見られる(10)な ど の 特 有 の 現 象 が 起 こ る 。
金 属 加 工 の 分 野 で 大 き な 割 合 を 占 め る 熱 間 圧 廷 で は 、 材 料 に 複 雑 な 変 形 履 歴 が 与 え ら れ る 。 こ の と き 、 圧 延 す る 材 料 の 変 形 抵 抗 の 変 動 を 、 上 に 述 べ た よ う な 回 溶 硬 化 の 機 構 に 関 す る 知 見 を 利 用 し て 予 測 で き れ ば 、 よ り 効 率 の 高 い 操 業 が 可 能 に な る と 考 え ら れ る 。
こ の 予 測 法 の 適 用 は 、 ま ず 面 心 立 方 品 の
AI‑Mg
合 金 を 対 象 に 行 わ れ た(11)(12)。 い ろ い ろ な 温 度 と 変 形 経 路 の 条 件 で 得 ら れ た 実 験 値 に 対 し て 予 測 が 行 わ れ 、 予 測 結 果 は 実 験 値 を 概 ね 再 現 す る こ と が で き た 。 し か し 、 変 形 条 件 に よ っ て は 予 測 値 が 実 験 値 を 上 回 る 場 合 が あ っ た 。 こ の 相 違 は 、 そ の 変 形 条 件 で は 転 位 の 運 動 速 度 が 大 き く 、 一 部 の 転 位 が 溶 質 雰 囲 気 か ら 離 脱 し 始 め て い る こ と に 起 因 す る の で は な い か と 考 え ら れ た(11)。 転 位 が 雰 囲 気 か ら 離 脱 し て い れ ば 、 予 測 法 の 前 提 に な っ て い る 変 形 機 構 が 変 化 し て い る こ と に な る か ら で あ る 。 実 際 、 計 算 で 求 め ら れ た 転 位 速 度 と 、 理 論 的 に 推 定 さ れ た 雰囲 気 離 脱 開 始 転 位 速 度 を 対 応 さ せ る と 、 前 者 が 後 者 を 上回る領域と 予 測 値 が 計 算 値 よ り 大 き な 領 域 と が 対 応 す る こ と が わ か っ た(11)。 以 上 に 述 べ た 変 形 応 力 の 予 測 お よ び 変 形 機 構 の 変 化 の 検 討 は 、 い ず れ も 面 心 立 方 品 の
AI‑Mg
合 金 に つ い て 行 わ れ た も の で 、 他 の 種 類 の 合 金 や 結 晶 系 に お い て 、 こ の 方 法 が 適 応 で き る か 否 か は 未 だ 明 ら か に さ れ て い な い 。 そ こ で 、 本 論 文 の 後 半 で は 、 材 料 の 変 形 を 微 視 的 視 野 か ら 見 て 構 築 さ れ た 変 形 応 力 の 予 測 法 を 用 い 、 こ の 方 法 が 異 な る 結 品 系 の 材 料 に も 汎 用 し 得 る か 否 か に つ い て 検 討 し た 。本 研 究 で は 、 原 子 半 径 差 に 基 づ く ミ ス フ ィ ッ ト パ ラ メ ー タ が 0.08 と 大 き い 典 型 的 な 固 溶 硬 化 合 金 で あ り 、 実 用 に 広 く 使 わ れ て い る 鉄 をベ ースにした Fe‑Mo合 金 を 体 心 立 方 晶 合 金 の 中 か ら 選 択 し た 。
以 上 の よ う に 、 本 研 究 で は 材 料 の 巨 視 的 な 強 化 法 と し て 積 層 強 化 法 を 、 微 視 的 な 強 化 法 と し て 合 金 化 に よ る 固 溶 硬 化 を 選 び 、 そ れ ぞ れ の 高 温 変 形 挙 動 の 特 徴 を 調 べ た も の で あ る 。 高 温 変 形 に は 拡 散 が 関 与 す る と い う 共 通 点 が あ る が 、 そ の 関 与 の 重 点 が 積 層 強 化 材 料 で は 界 面 す べ り と 硬 相 の 拘 束 下 で の 軟 相 の 塑 性 変 形 に あ り 、 固 溶 硬 化
材 料 で は 転 位 の 溶 質 雰 囲 気 引 き ず り 運 動 に あ る と い う 大 き な 違 い が あ る 。 そ れ 故 、 本 論 文 で は 前 半 で 積 層 強 化 に つ い て 述 べ 、 後 半 で 固 溶 硬 化 に つ い て 述 べ る こ と と し 、 最 後 に 両 研 究 成 果 を 総 括 す る こ と
とした。
1 . 2 概要
本 論 文 は 、 以 下 の 6章 よ り 構 成 さ れ る 。 第 1章 序 論
第 2章 人 工 積 層 複 合 材 料 の 熱 疲 労 第 3章 人 工 積 層 複 合 材 料 の 高 温 変 形
第 4章 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 機 構 の 判 別 第
5
章 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 挙 動 の 予 測 第 6章 総 括第 1章 に は 、 本 研 究 の 背 景 と 目 的 お よ び 各 章 の 概 要 を 記 し た 。 第 2章 と 第 3章 に は 、 積 層 複 合 材 料 の 高 温 変 形 挙 動 に つ い て 記 した。
第 2章 で は 、 銅 ー タ ン グ ス テ ン 人 工 積 層 複 合 材 料 に 3つ の 異 な る 熱 サ イ ク ル を 与 え た と き に 、 軟 相 で あ る 銅 相 が 界 面 方 向 に 伸 び 、 銅 相 中 に ボ イ ド が 発 生 す る こ と を 示 し 、 こ れ ら の 実 験 結 果 と 、 熱 サ イ
ク ル 中 に 熱 膨 張 係 数 差 に 起 因 し て 試 料 内 部 に 発 生 す る 熱 残 留 応 力 と の関連を検討した。
第 3章 に は 、 銅 ー タ ン グ ス テ ン 人 工 積 層 複 合 材 料 を 高 温 で 圧 縮 試 験 し 、 変 形 挙 動 を 調 べ た 結 果 を 示 し た 。 こ の と き 、 タ ン グ ス テ ン の 圧 延 方 向 と 界 面 の せ ん 断 応 力 方 向 が 平 行 な と き と 垂 直 な と き の 2つ の 実 験 条 件 で 圧 縮 し て 、 前 者 で は 複 合 材 料 の 変 形 は も っ ぱ ら 銅 相 の 変 形 で 担 わ れ る こ と 、 後 者 で は 界 面 す べ り を 伴 う 変 形 が 生 じ る こ と を 示 し 、 界 面 す べ り の 方 向 に よ っ て 変 形 挙 動 が 大 き く 異 な る こ と を
明 ら か に し た 。 ま た 、 変 形 が 銅 相 に 担 わ れ る 場 合 に つ い て は 界 面 拘 束 に よ る 母 相 ( 銅 相 ) の 強 化 機 構 を 考 察 し 、 界 面 す べ り が 生 じ る 場 合 に つ い て は 、 界 面 す べ り と 界 面 構 造 と の 関 連 を 検 討 し た 。
第 4章 と 第 5章 に は 、 固 溶 硬 化 合 金 の 高 温 変 形 挙 動 に つ い て 述 べた。
第 4章では、まず、 Fe‑Mo合 金 を 用 い て 、 転 位 の 溶 質 雰 囲 気 引 き ず り が 変 形 を 律 速 す る と き に 観 測 さ れ る ひ ず み 速 度 の 応 力 に 対 す る べ き 乗 則
( 3
乗 則 ) と ひ ず み 速 度 の 増 大 に 伴 う3
乗 則 か ら の ず れ を 実 験 的 に 明 ら か に し た 。 ま た 、 固 溶 硬 化 合 金 中 の 溶 質 原 子 と 転 位 の 弾 性 的 相 互 作 用 ( 寸 法 効 果 に よ る ) に 基 づ い て 、 転 位 速 度 の 変 化 に よ る 転 位 の 運 動 抵 抗 の 変 化 を 算 出 し 、 ひ ず み 速 度 の 増 大 に 伴 う 変 形 の 律 速 機 構 の 変 化 と の 関 係 を 検 討 し た 。 さ ら に 、AI‑Mg
合 金 に つ い て 、 溶 質 雰 囲 気 形 成 に よ っ て 合 金 の 比 抵 抗 が 変 化 す る 可 能 性 を 検 討 し 、 こ れ を 利 用 し て 変 形 の 律 速 機 構 の 変 化 を 実 験 的 に 直 接 と ら え る ことを試みた。第 5章 で は 、 ま ず 、 体 心 立 方 品 固 溶 硬 化 合 金 (Fe‑Mo合金)の高 温 に お け る 変 形 応 力 の 変 形 経 路 依 存 性 を 実 験 的 に 明 ら か に し た 。 ま た 、 こ れ ま で 面 心 立 方 品 の 合 金 に 有 用 で あ っ た 、 固 溶 硬 化 合 金 の 変 形 機 構 ( 転 位 の 溶 質 雰 囲 気 引 き ず り 機 構 ) に 基 づ い た 変 形 応 力 の 予 測 法 を 示 し 、 こ の 予 測 法 を 使 っ て 体 心 立 方 品 固 溶 硬 化 合 金 の 実 験 値 の 再 現 を 試 み 、 予 測 法 の 汎 用 性 と そ の 適 用 限 界 を 明 ら か に し た 。
第 6章 で は 本 研 究 で 得 ら れ た 主 な 結 果 を 要 約 し て 示 し た 。
弟 2 早
人 工 積 層 複 合 材 料 の 熱 疲 労
2 . 1 緒言
高 温 で 使 用 さ れ る 複 合 材 料 に は 、 高 温 と 低 温 を 往 復 す る サ イ ク ル 型 の 温 度 履 歴 が 繰 り 返 し 与 え ら れ る 。 こ の と き 、 複 合 材 料 の 開 発 に あ た り 克 服 す べ き 重 要 な 課 題 は 、 母 相 と 強 化 相 の 異 相 界 面 に お け る 反 応 相 の 生 成 な ど の 化 学 的 不 安 定 性 と 界 面 す べ り な ど の 物 理 的 な 不 安 定 性 で あ る 。 本 章 で は 、 モ デ ル 積 層 複 合 材 料 と し て 銅 と タ ン グ ス テ ン に よ る 界 面 密 着 性 の 良 い 複 合 材 料 を 作 製 し 、 異 相 界 面 の 化 学 的 安 定 性 が 満 た さ れ て い る 条 件 で 、 熱 サ イ ク ル に よ る 複 合 材 料 の 形 状 変 化 を 調 べ 、 温 度 履 歴 を 与 え た と き に 各 相 に 生 ず る 熱 応 力 が 複 合 材 料 の 異 相 界 面 の 物 理 的 な 劣 化 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 に 基 づ き 、 母 相 に 延 性 に 富 む 金 属 材 料 を 用 い た 場 合 で も 、 高 温 で 使 用 す る と き に は 構 成 相 の 熱 膨 張 率 の 適 合 性 が 重 要 に な る こ と を 示 す
(13)
2 . 2 実験方法
2 . 2 . 1
試 験 片 の 作 製積 層 複 合 材 料 の 硬 相 の タ ン グ ス テ ン に は 、 粉 末 焼 結 の 後 圧 延 さ れ た 純 度
99.9wt%
、厚さO.lmm
のタングステン箔((株)東芝製)を用 い た 。 こ れ を25x10mm
の 寸 法 に 切 り だ し た 後 、 フ ッ 酸30%
、 酢 酸30%
及 び 硝 酸40%
の 体 積 比 の 溶 液 を 用 い て 酸 洗 し た 。 こ の 寸 法 の タ ン グ ス テ ン 箔 の 4隅 に 銅 溶 浸 用 の ス ペ ー サ ー と し て 同 じ 厚 さ で2mm
角 の タ ン グ ス テ ン 箔 を 点 溶 接 し 、 こ れ ら を1 0
枚積層させて、タ ン グ ス テ ン 線 で 縛 っ た 。
こ の 積 層 体 を ア ル ミ ナ 製 の る つ ぼ の 底 に 立 て 、 そ の 上 に 純 度
9 9 . 9 9 w t %
の銅箔(日本電球工業(株)製)約
1 7 0 g
を 詰 め た 。 こ の る つ ぼ を 、 1.0x 1 0 ‑
4Pa
の真空下で、高周波誘導加熱によって銅の融点 (1356K)直 上 で2
時 間 保 持 し 、 積 層 体 中 に 銅 を 溶 浸 さ せ た 。 溶 浸 後 は 、20rnm/h
の 速 度 で る つ ぼ を ワ ー ク コ イ ル 中 で 降 下 さ せ 、 一 方 向 凝 固 さ せ た 。 こ れ は 、 凝 固 の 際 に 銅 層 内 に マ イ ク ロ ポ ア が 発 生 す る の を 防 ぐ た め である。
2 . 2 . 2
熱 疲 労 試 験溶 浸 法 で 作 製 し た 積 層 材 か ら
4x4x3mm
の 寸 法 に 切 り だ し た 試 験 片に、赤外線瞬間加熱ゴールドイメージ炉(真空理工(株)製RHL E ‑ 4 1 0 P )
を 用 い 、 こ れ を 点 滅 さ せ る こ と に よ り 図2 . 1
に 示 す3
種 類 の 熱 サ イ ク ル を 与 え た 。 熱 サ イ ク ル の 最 高 温 度 は 1073Kとし、サイクル 1、2で は こ の 温 度 で
6 0 0
秒 保 持 し 、 サ イ ク ル 3で は 保 持 時A B C D E F
表 2.1 3種 の 熱 サ イ ク ル の パ タ ー ン
C y c l e 1
600s
C y c l e 2
S盟主C y c l e 3
Os1 0 7 3 K ‑ 一 一
一‑ s
一一 疋
JV
一 一 万
Kパ
q u
マI7I
473K 十 一 ‑ ‑
1230s 690s
図 2.1与 え た 3つ の 熱 サ イ ク ル の パ タ ー ン
聞を O秒 と し た 。 ま た 、 熱 サ イ ク ル の 最 低 温 度 は サ イ ク ル 1、3で は 473Kと し て 最 高 温 度 と 600Kの 温 度 差 を 与 え 、 サ イ ク ル 2では
7731<と し 温 度 差 を 3001(に し た 。 こ れ ら の 熱 サ イ ク ル を 与 え る こ と に よ り 、 熱 疲 労 挙 動 に つ い て サ イ ク ル 1、3で 高 温 保 持 時 間 の 影 響 、 サ イ ク ル 1、2よ り 温 度 差 の 影 響 を 調 べ る こ と が で き る 。 い ず れ の サ イ ク ル に お い て も 冷 却 速 度 は 温 度 が 下 が る と 小 さ く な り 、 冷 却 中 で 一 様 で は な か っ た 。 表 2.1に 示 し た 冷 却 速 度 は 冷 却 開 始 点 で のイ直である。
2 . 3 実験結果と検討
2 . 3 . 1
サ イ ク ル 数 と 銅 層 の 伸 び図 2.2は 、 図 2.1に 示 し た サ イ ク ル 3を 442回 与 え た 後 の 試 験 片 端 部 の 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 ( 日 立 製 作 所 ( 株 ) 製 8‑510型)写真である。
熱 膨 張 係 数 の 相 違 に よ り 、 軟 ら か い 構 成 相 の 銅 層 が 塑 性 変 形 し 、 界 面 に 平 行 に 伸 び が 生 じ た 様 子 が わ か る 。 ま た 、 端 部 の 一 部 よ り ク
ラック(界面剥離)が生じている。
図 2.3(a)に 熱 サ イ ク ル を 与 え た 回 数 と 積 層 方 向 に 平 行 な 方 向 へ の 銅 層 の 伸 び と の 関 係 を 示 す 。 伸 び の 量 は サ イ ク ル 数 と と も に 単 調 に 増 加 し て い る が 、 そ の 増 え 方 は サ イ ク ル 1を 与 え た 場 合 が 最 も 大 き く 、 つ い で サ イ ク ル 3、 サ イ ク ル 2の 順 に 小 さ く な っ て い る 。 表
2.1と 対 比 す る と 、 温 度 差 が 大 き い ほ ど 、 高 温 で の 保 持 時 聞 が 長 い ほ ど 伸 び が 大 き く な る こ と が わ か る 。
図
2 . 2
熱 サ イ ク ル ( サ イ ク ル3 : 4 4 2
回 ) を 与 え た 後 に 複 合 材 料 の 端 部 で 観 察 さ れ た 銅 層 の 伸 び と 界 面 剥 離c f ! .
、、、
。
〉E'‑U、
。 』 コ
。
←‑。 c
. ‑
4 c
・u
d0)
c
w 。
4
2
。
。
( a ) 0 Thermal Cycle 1
a Thermal Cycle 2
口 ThermalCycle 3
I ( b )
Cycle 1
500
Number o f Thermal Cycles
図
2 . 3
熱 サ イ ク ル の 回 数 と 銅 層 の 伸 び の 関 係( a )
実 験 値( b )
界 面 す べ り の み で 残 留 応 力 が 緩 和 さ れ る と 仮 定 し た と き の 理 論 値2 . 3 . 2
熱 残 留 応 力 の 評 価熱 膨 張 率 の 異 な る 材 料 を 積 層 さ せ た 複 合 材 料 に お い て 、 そ の 界 面 で の 接 合 が 強 固 で あ る と き に は 、 加 熱 お よ び 冷 却 の 際 に 界 面 応 力 が 生 ず る 。 熱 膨 張 率 の 大 き い 構 成 相 ( 本 複 合 材 料 で は 軟 相 の 銅 ) は 加 熱 の 際 に 熱 膨 張 率 の 小 さ い 構 成 相 ( 本 複 合 材 料 で は 硬 相 の タ ン グ ス
テ ン ) か ら 圧 縮 応 力 を 受 け 、 冷 却 の 際 に は 引 張 応 力 を 受 け る 。 こ の 応 力 は 次 の よ う に 見 積 も ら れ る 。
今 、 銅 箔 と タ ン グ ス テ ン 箔 を 積 層 接 合 し 、 こ れ に 内 部 応 力 零 の 温 度 ( 基 準 温 度 ) か ら の 温 度 差
D : .
Tを 与 え た と き を 考 え る 。 銅 と タ ン グ ス テ ン の 熱 膨 張 係 数 を そ れ ぞ れ αCu、α w、 温 度 差 ムT
に よ る 銅 の 拘 束 の な い と き の 伸 び 率 (eigenひずみ)をεCu、 複 合 材 料 の ひ ず み をεと す る と 、 界 面 す べ り や 塑 性 変 形 が な け れ ば 、 ε‑εCuが 弾 性 ひ ず み と な る の で 、 銅 に 働 く 応 力σCuはσ
C u = = E c u (
ε‑εC u )
(2.1 )となる。ここで、
E c u
は 銅 の ヤ ン グ 率 で あ る 。 同 様 に 温 度 差 ムT
に よ る タ ン グ ス テ ン の 無 拘 束 下 で の 伸 び 率 をεw、 タ ン グ ス テ ン の ヤ ング率をEw
と す る と 、 タ ン グ ス テ ン に 働 く 応 力σwはσ
w = = Ew(
ε‑εw )
で あ る 。 こ れ ら の 応 力 は 界 面 を 通 し て 構 成 相 が 互 い に 他 に 及 ぼ す も の で あ る 。 本 複 合 材 料 で は こ れ ら の 相 の 体 積 分 率 が 等 し い の で 、 つ
り あ い の 条 件 よ り
σCu
+
σw = = 0
と な る 。 し た が っ て 、 複 合 材 料 の 伸 び 率 は
ε ‑Ec〆Cu
+
Ewεw Ecu+
Ewで与えられる。また、 εCu==αC包ム
T
、εw==αwムT
な の で ECuαCu +Ewα wε ‑ 凶 H H
ム T
Ecu+
Ewで あ る 。 上 式 と 式 (2.1)か ら 熱 膨 張 係 数 差 に よ る 応 力σ(==σCu==
一σ
w )
はE
CuEwσ = ‑ ( α w一αCu)
ム
Tu+Ew (2.2) で 与 え ら れ る 。 こ れ よ り 、 残 留 内 部 応 力 は 熱 膨 張 率 の 差 と 材 料 に 与 え る 基 準 温 度 と の 温 度 差 に 比 例 す る こ と が わ か る 。
本 研 究 で は 銅 と タ ン グ ス テ ン の 複 合 化 を 銅 の 融 点 直 上 で 行 っ て い る の で 、 基 準 温 度 は 銅 の 融 点 1356Kとしてよいであろう。また、
αCu(== 1.41x10‑5K‑1)
ど
αw (==0.444 X 10‑5K‑1)、 ムT三
Oな の で 、 作 製 し た 複 合 材 料 に は 、 銅 相 に 引 張 応 力 、 タ ン グ ス テ ン 相 に 圧 縮 応 力 が 作 用 し て い る で あ ろ う 。 ヤ ン グ 率 と し て 室 温 の 値 、 ECu==1.23 x 102GPa、Ew==4.07x102GPa、ムT
として銅の融点 1356K と室温 298Kとの差 1058Kを 用 い る と 、 式 (2.2)か ら 室 温 で の 本 複 合 材 料 の 残 留 内 部 応 力 は 約 970MPaと な る 。 ま た 、 サ イ ク ル 1と サ イ ク ル 3の 温 度 差 (600K)を tJ.T
と し た と き の 内 部 応 力 は 、 約 530MPaとなる。2 . 3 . 3
残 留 内 部 応 力 の 緩 和 過 程前 節 に 述 べ た よ う に 、 本 複 合 材 料 の 作 製 温 度 か ら 室 温 ま で の 温 度 差 に よ る 界 面 で の 残 留 内 部 応 力 は 、 銅 の 降 伏 応 力 48MPa(14),こ比べ
て非常に大きし,0 そ の た め 、 室 温 に お い て こ の よ う な 内 部 応 力 が 残 留 し て い る と は 考 え に く く 、 冷 却 の 過 程 で 塑 性 変 形 に よ り 緩 和 さ れ 、 内 部 応 力 は ほ と ん ど 零 に 近 く な っ て い る も の と 思 わ れ る 。 こ の こ と は 、 熱 サ イ ク ル の 最 高 温 度 に 保 持 し た だ け で は 銅 層 の 伸 び や ボ イ ド の 発 生 が 見 ら れ な か っ た こ と や 、 図 2.3(b)に お い て 熱 サ イ ク ル 数 の 増 加 に 伴 う 銅 層 の 伸 び が ほ ぼ 一 様 で あ る こ と 、 す な わ ち 、 各 サ イ ク ル 毎 に 内 部 応 力 状 態 が ほ ぼ 同 じ に な っ た と 考 え ら れ る こ と か ら も わ か る 。 そ れ 故 、 本 複 合 材 料 の 銅 層 の 伸 び は 、 各 サ イ ク ル ご と に 温 度 差 に よ る 残 留 内 部 応 力 が 塑 性 緩 和 さ れ 、 そ の 塑 性 変 形 が サ イ ク ル 数
と と も に 累 積 す る こ と に よ っ て 生 じ た も の と 考 え ら れ る 。
図 2.4は 、 本 複 合 材 料 の 熱 サ イ ク ル 中 の 残 留 内 部 応 力 と そ の 緩 和 過 程 を 説 明 し た 模 式 図 で あ る 。 先 に 述 べ た よ う に 、 試 料 作 製 温 度 か ら 室 温 ま で 冷 却 し た と き に 発 生 し た 内 部 応 力 は 塑 性 緩 和 し た と 考 え られる(この状態で試験片を作製)。熱サイクルの最低温度と最高温 度 を そ れ ぞ れ
T
1,T
2と し た と き 、 温 度T
1の 状 態1
からT
2(三 T
1)に 加 熱 す る と 、 タ ン グ ス テ ン 層 に は 引 張 応 力 、 銅 層 に は 圧 縮 応 力 の か か っ た 状 態 2に な る 。 図 2.4の 銅 と タ ン グ ス テ ン の 層 中 に 示 し た 矢 印 の 方 向 は 、 そ れ ぞ れ の 層 に 作 用 し て い る 残 留 内 部 応 力 の 方 向 を 示している。
こ れ ら の 応 力 を 緩 和 す る に は 、 各 層 に お い て 応 力 を 緩 和 す る 方 向 に 変 位 が 生 じ れ ば よ い 。 こ こ で 、 高 温 下 で あ る た め 銅 層 と タ ン グ ス テ ン 層 の 界 面 で す べ り が 起 こ る と 考 え れ ば 、 界 面 に お け る 両 層 の ひ ず みεの 連 続 性 は 失 わ れ る の で 、 銅 層 に 作 用 し て い る 圧 縮 応 力 と タ
ン グ ス テ ン 層 に 作 用 し て い る 引 張 応 力 は 緩 和 さ れ る 。 界 面 す べ り に
h e a t i n g
T 1
くT 2
. ‑ ‑
‑
2
‑
ー
・
1
・ 幽 . ゆ . { 止
l・ i ‑ w
ア川市‑ H
、 ーー
‑・・ー‑
‑
‑
‑
‑
・司 司 司. .
T 2 i
State
!Cu
I n t e r f a c i a l s l i d i n g
3
c o o l i n g
4
iW
I State
!Cu ‑ ‑
『・司 ‑‑ ‑ ‑
・‑‑ ‑ ‑ ‑
‑ ‑ ‑ ‑
‑ ‑ ‑ ‑
‑ ‑ ‑ ‑
‑ ‑ ‑ ‑
‑ a
図 2.4熱 サ イ ク ル に よ る 残 留 内 部 応 力 の 発 生 と 緩 和 の 説 明 図
‑ ‑
『 司 司
p l a s t i c d e f o r m a t i o n l
‑・‑
‑
‑ ‑
5
川 一
! ! 同 一 同 l 川 一
! l
・
1・
1N
よ り そ れ ぞ れ の 層 が 拘 束 さ れ る こ と な く 熱 膨 張 し た 結 果 、 状 態 2に 比 べ て 銅 層 が 伸 び タ ン グ ス テ ン 層 が 縮 ん だ 様 子 を 表 し た の が 状 態 3 である。
こ の よ う に し て
T
1からT
2へ加熱し、T
2に 保 持 す る こ と に よ り 、 残 留 応 力 が 零 の 状 態 が 得 ら れ た と す る 。 こ の 状 態 か ら 冷 却 し て 、 初 期 温 度 T1に 達 す る と 、 タ ン グ ス テ ン 層 に は 圧 縮 応 力 、 銅 層 に は 引 張 応 力 が か か っ た 状 態4
になる。T
1ま で の 冷 却 は 速 や か で 、 か っT
1は 低 温 で あ る か ら 、 界 面 す べ り は ほ と ん ど 起 こ ら ず 、 こ れ ら の 応力 は 銅 層 の 塑 性 変 形 に よ っ て 緩 和 さ れ る と 考 え ら れ る 。 そ の 様 子 を 示 し た の が 状 態 5で あ る 。 タ ン グ ス テ ン 層 に は 温 度
T
1に お け る 界 面 の 拘 束 が な い 状 態 へ と 弾 性 的 な 伸 び が 生 じ 、 層 の 長 さ は 状 態 1と 同 じ に な る 。 こ の よ う に 、 1サ イ ク ル に お け る 銅 層 の 伸 び は 、 高 温 保 持 で は 圧 縮 応 力 を 緩 和 す る た め の 界 面 す べ り 、 低 温 で は 引 張 応 力 を 緩 和 す る た め の 塑 性 変 形 に よ る も の と 考 え ら れ る 。1サ イ ク ル ご と に こ の 機 構 が 繰 り 返 さ れ る こ と に よ っ て 、 連 続 し
た 銅 層 の 伸 び が 観 察 さ れ た の で あ ろ う 。 こ の こ と は 、 熱 サ イ ク ル を 与 え た 後 の 試 験 片 に は 銅 層 に 塑 性 変 形 し た こ と を 示 す 多 く の す べ り 線 が 見 ら れ 、 界 面 す べ り に よ る と 思 わ れ る け が き 線 の ず れ も 観 察 さ れ た こ と か ら も 裏 付 け ら れ る ( 第 3章参照)。
高 温 保 持 時 間 600秒 の サ イ ク ル 1と 高 温 保 持 時 間 O秒 の サ イ ク ル
3と は 温 度 変 化 幅 が 等 し い の で 、 こ の 2つ の 結 果 を 比 較 す る こ と に よ っ て 、 高 温 保 持 中 の 界 面 す べ り に よ る 残 留 内 部 応 力 の 緩 和 の 程 度 を 知 る こ と が で き る 。
図 2.3(
a )
に 示 し た よ う に 、 サ イ ク ル 1で の 銅 層 の 伸 び は サ イ ク ル3よ り 大 き く 、 こ れ は 高 温 保 持 時 間 が 長 い ほ ど 界 面 す べ り に よ る 残 留 応 力 の 緩 和 が よ り 進 ん だ こ と を 意 味 し て い る 。 し か し 、 サ イ ク ル
3で も 銅 層 の 伸 び が 観 察 さ れ た こ と か ら 、 界 面 す べ り は 最 高 保 持 温 度 で の み 起 こ る の で は な く 、 保 持 温 度 近 傍 で す で に 起 こ っ て い る も のと思われる。
サ イ ク ル 1と サ イ ク ル 2で は 、 温 度 変 化 幅 の 大 き い サ イ ク ル 1の 方 が よ り 残 留 内 部 応 力 が 大 き い た め に 、 銅 層 の 伸 び も サ イ ク ル 1の 方 が 大 き か っ た の で あ ろ う 。
銅 と タ ン グ ス テ ン の 熱 膨 張 率 の 差 で 生 じ た 界 面 拘 束 が 高 温 保 持 中 ( 銅 層 に 圧 縮 応 力 ) に は す べ て 界 面 す べ り に よ っ て 緩 和 さ れ 、 降 温 中 ( 銅 層 に 引 張 応 力 ) に は す べ て 銅 層 の 塑 性 変 形 に よ っ て 緩 和 さ れ る と い う 極 端 な 仮 定 を す る と 、 1サ イ ク ル 当 た り の 銅 層 の 伸 び は 1サイ ク ル の 昇 温 時 の 界 面 す べ り 量 に 等 し い こ と に な る が 、 こ の す べ り 量 は 半 サ イ ク ル の 温 度 差 で 生 ず る 銅 と タ ン グ ス テ ン の 熱 膨 張 の 差 に な る 。 こ れ に 熱 サ イ ク ル の 回 数 を 乗 じ 、 銅 層 の 伸 び を サ イ ク ル 1とサ イ ク ル
2
に つ い て 計 算 し た も の を 図2 . 3 ( b )
に 示 す 。 ど ち ら の サ イ ク ル に お い て も 、 実 験 値 に 比 べ て 計 算 値 は 絶 対 値 で ほ ぼ 2けた大きく な っ て お り 、 上 述 の 極 端 な 仮 定 ( 図 2.4も 同 様 ) は 成 立 た な い こ と が わ か る 。 し か し 、 熱 サ イ ク ル 数 の 増 加 に 伴 う サ イ ク ル 1と サ イ ク ル2に お け る 銅 層 の 相 対 的 な 伸 び 方 に つ い て は 、 実 験 値 と 計 算 値 は 同 じ 傾 向 に あ り 、 サ イ ク ル 数 当 た り の 伸 び 速 度 は サ イ ク ル 1がサイク ル 2の 約 2倍 に な っ て い る 。
高 温 保 持 と 降 温 で 銅 層 の 変 形 が 非 対 称 と な る の は 、 塑 性 変 形 に 比 べ て 界 面 す べ り は 高 温 で 長 時 間 を 必 要 と す る た め で あ る 。 上 述 の
極 端 な 仮 定 で は 銅 層 の 伸 び が 2け た も 大 き く 見 積 も ら れ た こ と は 、 1073K
,
6008の 高 温 保 持 で も 内 部 応 力 が 完 全 に 緩 和 す る の に 十 分 な 界 面 す べ り が 起 こ ら な か っ た こ と と 、 昇 温 時 に も 塑 性 緩 和 ( 圧 縮 変 形 ) が 大 き か っ た こ と 、 す な わ ち 、 界 面 す べ り よ り も 塑 性 変 形 の 効 果 の 方 が は る か に 大 き い こ と を 示 し て い る 。 以 上 の よ う に 、 塑 性 変 形 を 起 こ す 残 留 応 力 は 、 銅 層 に 加 熱 の 際 に 圧 縮 方 向 に 、 冷 却 の 際 に 引 張 方 向 に か か る と 考 え ら れ る 。 こ の こ と は 、 積 層 複 合 材 料 に 大 き な 温 度 変 動 を 繰 り 返 し 与 え た と き に は 、 繰 返 し 圧 縮 、 引 張 の 塑 性 変 形 を す る こ と に よ り 、 軟 相 内 部 に 疲 労 損 傷 ( 亀 裂 等 ) が 与 え ら れ る 可 能 性 が あ る こ と を 示 唆 し て い る 。2 . 3 . 4
ボ イ ド の 発 生 機 構熱 サ イ ク ル を 与 え た 試 料 に は 、 わ ず か 5サ イ ク ル 与 え た だ け で も ボ イ ド の 発 生 が 見 ら れ た 。 図 2.5に サ イ ク ル 2を 100回 与 え た も の の 走 査 電 子 顕 微 鏡 像 を 示 す 。 こ の ボ イ ド の 発 生 が 、 真 空 に お け る 赤 外 線 加 熱 に よ る 銅 の 昇 華 に よ る も の で は な い こ と を 確 認 す る た め 、 熱 サ イ ク ル と 同 じ 時 問 、 同 じ 真 空 条 件 で 高 温 保 持 を 行 っ た が 、 ボ イ
ド の 発 生 は 認 め ら れ な か っ た 。 し た が っ て 、 ボ イ ド の 発 生 が 熱 サ イ ク ル を 与 え た こ と に よ っ て 生 じ た こ と は 明 ら か で あ る 。
ボ イ ド の 発 生 機 構 は 以 下 の よ う に 考 え ら れ る 。 銅 と タ ン グ ス テ ン の 熱 膨 張 率 の 違 い か ら 発 生 す る 内 部 応 力 を 緩 和 す る た め に 、 銅 相 中 で 塑 性 変 形 が 起 こ る 。 こ の た め 、 転 位 の 上 昇 運 動 、 交 差 す べ り 、 対 消 滅 な ど に よ っ て 、 空 孔 が 形 成 さ れ る 。 ま た 銅 相 中 に 多 数 の す べ り 線 が 観 察 さ れ た こ と か ら 、 転 位 が す べ り 面 上 を 運 動 し 、 界 面 近 傍 に
W
.
︐
︐
︐
t '
h
fF '
ハリ
‑E aE SE
‑e
図
2 . 5
熱 サ イ ク ル ( サ イ ク ル2 : 1 0 0
回 ) を 与 え た 後 の 複 合 材 の 界 面 と 観 察 さ れ た ボ イ ド堆 積 し た と 考 え ら れ る 。 こ の と き 、 堆 積 転 位 に よ る 応 力 集 中 が 界 面 上 に ボ イ ド を 発 生 さ せ た 可 能 性 が 大 き い 。
ま た 、 銅 相 の 界 面 に 平 行 な 伸 び は 界 面 す べ り を 伴 っ て お り 、 こ れ が 界 面 転 位 の 運 動 に よ る も の と す る と 、 銅 相 中 を 運 動 し 界 面 に 到 達 した転位が界面転位になり、界面に垂直なノてーガースベクトルの成 分 が 上 昇 運 動 す る こ と に よ り 空 孔 を 形 成 す る 可 能 性 も あ る(15)(16)。
こ の よ う に し て 形 成 さ れ た 空 孔 が 前 述 の 交 差 す べ り 等 に よ り 生 成 し た 空 孔 と と も に ボ イ ド の 成 長 を 促 し た も の と 考 え ら れ る 。
2 . 4 結論
銅 ー タ ン グ ス テ ン 人 工 積 層 複 合 材 料 を 、 熱 履 歴 ( 高 温 保 持 温 度 、 保 持時間)の異なる 3種 類 の 熱 疲 労 試 験 に 供 し た 後 、 複 合 材 料 の 形 状 の 変 化 を 観 察 し 、 各 々 の 層 に お け る 熱 残 留 応 力 の 発 生 お よ び 緩 和 と 関 連 づ け て 検 討 を 行 い 、 以 下 の 結 論 を 得 た 。
1 . 熱 疲 労 試 験 後 に 複 合 材 料 に 生 じ た 形 状 変 化 と し て 、 軟 相 で あ る 銅 層 の 変 形 、 銅 層 の 界 面 方 向 へ の 伸 び の 進 行 お よ び 界 面 の 銅 層 側 で の ボ イ ド の 発 生 が 観 測 さ れ た 。
2.熱 サ イ ク ル の 温 度 変 化 の 幅 が 大 き く 、 高 温 保 持 時 間 の 長 い も の ほ ど 、 熱 サ イ ク ル 数 の 増 加 に と も な っ て 銅 相 の 伸 び が 著 し く 進 行 し 、 界 面 で の ボ イ ド 生 成 が 促 進 さ れ た 。 こ れ ら の 複 合 材 の 形 状 変 化 は 、 銅 と タ ン グ ス テ ン の 熱 膨 張 率 の 違 い か ら 生 ず る 残 留 内 部 応 力 が 界 面 す べ り と 銅 層 の 塑 性 変 形 に よ っ て 緩 和 さ れ る と い う モ デ ル で 、 定 性 的に説明できる。
東 3 早
人 工 積 層 複 合 材 の 高 温 変 形
3 . 1 緒言
前章に お い て 、 温 度 変 動 に よ っ て 積 層 複 合 材 料 中 に 生 じ る 熱 残 留 応 力 が 緩 和 さ れ る 際 に 、 界 面 す べ り と 軟 相 の 塑 性 変 形 が 生 じ る こ と が わ か っ た 。 そ こ で 本 章 で は 、 圧 縮 試 験 を 用 い 、 高 温 で 複 合 材 料 の 界 面 に 平 行 に せ ん 断 応 力 を か け た と き 、 複 合 材 料 が ど の よ う な 変 形 挙 動 を 示 す か に つ い て 調 べ 、 変 形 条 件 と の 関 連 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 界 面 す べ り は 界 面 構 造 の 制 御 に よ っ て 抑 制 で き る 可 能 性 の あ る
こ と と 、 界 面 す べ り が 抑 制 さ れ た と き に は 高 温 に お い て も 複 合 化 に よ る 強 化 が 持 続 で き る 可 能 性 の あ る こ と を 示 す(13)。
3 . 2 実験方法
3 . 2 . 1
試 験 片 の 作 製こ こ で は 、 前 章 で 用 い た 溶 浸 法 よ り 簡 便 な 溶 着 法 に よ っ て も 、 比 較 的 層 厚 を 均 一 に で き 、 界 面 を 強 固 に 接 合 す る こ と の で き る こ と が
知 ら れ た の で 、 以 下 に 示 す よ う に 溶 着 法 に よ り 積 層 複 合 材 試 料 の 作 製を行った。
純 度 99.99wt%の 銅 箔 (0.1x 20 x 15mm)と 純 度 99.9wt%の タ ン グ ス テ ン 箔 (0.1 x 20 x 15 mm)の 表 面 を 酸 洗 し 、 銅 箔 と タ ン グ ス テ ン 箔 を 交 互 に 積 層 さ せ た 。 タ ン グ ス テ ン の 酸 洗 は 前 章 と 同 様 と し た が 、 銅 箔 の 酸 洗 に は 硝 酸 10%i溶 液 を 用 い た 。 用 い た タ ン グ ス テ ン 箔 は 、 bcc金 属 の 典 型 的 な 圧 延 集 合 組 織 を 持 ち 、 圧 延 面 が {100}、 圧 延 方 向 が (110)である (17)。 こ の 積 層 体 を タ ン グ ス テ ン 線 で 縛 っ た 後 、 1.0x 10‑4Paの 真 空 下 で 赤 外 線 瞬 間 加 熱 ゴ ー ル ド イ メ ー ジ 炉 ( 真 空 理工(株)製 RHL
E ‑
410P)を 用 い て 銅 の 融 点 (1356I<)直 上 ま で 加 熱 して約 3分 間 保 持 し 、 溶 着 一 体 化 さ せ た 。 こ の と き 積 層 体 に 与 え た 温 度 履 歴 を 図 3.1に 示 す 。 圧 縮 試 験 に 用 い た 試 料 は 、 す べ て こ の 方 法 に よ っ て 作 製 し た も の で あ る 。 得 ら れ た 複 合 材 料 の 光 学 顕 微 鏡 写 真 を 図 3.2に 示 す 。 得 ら れ た 複 合 材 料 の 銅 相 の 厚 さ は 約 O.lmmで あ り 、 溶 着 前 の 銅 箔 の 厚 さ と ほ ぼ 同 じ で あ っ た 。試 験 片 は 、 得 ら れ た 積 層 複 合 材 料 よ り 、 図 3.3の 説 明 図 に 示 す よ う に 、 異 相 界 面 が 高 さ 方 向 ( 応 力 負 荷 方 向 ) に 対 し て 450の 角 度 に な る よ う に 低 速 切 断 機 ( ア イ ソ メ ッ ト T M、 ビ ュ ー ラ 一 社 製 ) を 用 い て 切 り 出 し 、 エ メ リ ー 研 磨 の 後 、 試 験 片 の 表 面 を 粒 度 約 1μm
の ダ イ ヤ モ ン ド ペ ー ス ト を 用 い た ノ マ フ 研 磨 に よ り 鏡 面 仕 上 げ し て 、 2x2x3mmの 寸 法 に し た 。 異 相 界 面 を 450に 傾 け た 理 由 は 、 界 面 に せ ん 断 応 力 を か け 、 複 合 材 の 変 形 に 及 ぼ す 界 面 す べ り の 効 果 を 調 べ るためである。
予 備 実 験 で 、 本
Cu‑w
複 合 材 料 の 高 温 変 形 挙 動 は 、 タ ン グ ス テ ンモ3min~
20Q KJm i n
300K/min
1223K
とζ
h
、
︒ ﹂ 2 0 ﹂ 包
ε ω
ト
. . 園 田 ー一一
1 5 1 0
図 3.1積 層 体 に 与 え た 温 度 履 歴
了 ;me I min
戸h
。
d箔 の 圧 延 方 向 と せ ん 断 変 形 方 向 と の な す 角 に よ っ て 著 し く 異 な る こ と が 知 ら れ た の で 、 こ の 角 が 00と 900に な る よ う な 2種 類 の 試 験
片 を 用 意 し た 。 図 3.3の 矢 印 は 、 タ ン グ ス テ ン 箔 の 圧 延 方 向 を 示 し た も の で い ) は 上 述 の 角 が 900,(b)は 00の も の で あ る 。 こ れ ら の 試 験 片 は 、 溶 着 法 を 用 い て 一 体 化 さ せ た 同 じ 積 層 材 よ り 切 り 出 し 方 を 変 え て 作 製 し た の で 、 そ れ ぞ れ の 試 験 片 に お け る 界 面 の 密 着 性 の ば ら つ き は 少 な い と 思 わ れ る 。 こ の 後 、 図 3.3に 示 し た (
a )
と( b )
の 試 料 を そ れ ぞ れ 試 料 (
a )
お よ び 試 料 (b)と呼ぶことにする。ま た 、 変 形 中 の 界 面 す べ り の 挙 動 を 直 接 観 察 す る た め に 、 界 面 に 垂 直 に ダ イ ヤ モ ン ド 針 に よ り け が き 線 を つ け た 。
3 . 2 . 2
圧 縮 試 験強 度 お よ び 変 形 特 性 は 圧 縮 試 験 に よ っ て 調 べ た 。 圧 縮 試 験 に は サーボノマルサ‑EHF2型 疲 労 試 験 機 ( ( 株 ) 島 津 製 作 所 製 ) を 改 良 し た も の(18)を 用 い た 。 定 速 圧 縮 試 験 は 、 773",,973Kの温度範囲、
S X 10‑6 ",,2 X 10‑48‑1の 初 期 ひ ず み 速 度 範 囲 で 、 定 荷 重 圧 縮 ク リ ー
プ試験は 773""1073Kの温度範囲、 11.3""S4.4MPaの 応 力 範 囲 で 行 っ た 。 試 験 は い ず れ も 1 .3
x
10‑4Pa以 下 の 真 空 下 で 行 っ た 。試 験 片 の 加 熱 は 、 図 3.4の 説 明 図 に 示 し た タ ン グ ス テ ン 製 の サ ス セ プ タ ー を 高 周 波 誘 導 加 熱 し て 、 間 接 的 に 行 っ た 。 通 常 、 圧 縮 試 験 で は 、 変 形 を 開 始 す る と と も に 試 験 片 の 温 度 が 急 激 に 低 下 す る が 、 試 験 片 を 圧 縮 す る 治 具 に 熱 伝 導 率 の 小 さ な ク ロ セ ラ ム 〈 黒 崎 窯 業 ( 株 ) 製 、 反 応 焼 結 法 に よ っ て 作 成 し た 窒 化 珪 素 〉 を 用 い る こ と に よ り 試 験 中 の 温 度 低 下 を 10I(以 下 に 抑 え る こ と が で き た 。 ま た 、 試 験
‑
F
100μm
図 3.2溶 着 法 に よ っ て 作 製 し た 積 層 複 合 材 料 の 断 面
ー
~
( a ) ( b )
EE
の2mm
図 3.3圧 縮 試 験 片 の 説 明 図 。 矢 印 は タ ン グ ス テ ン 箔 の 圧 延 方 向 を 表す。
‑
F
s p e c l m
宇n v a c u u π 1
一 irosco;
20 。 。 品 I I • R‑l 。
c o m p r e s s i o n ↑
. ♂
図 3.4圧 縮 試 験 中 の そ の 場 観 察 の 方 法
‑ーー一一一一一ー‑
F
中 の 温 度 は Pt‑13%Rd熱 電 対 を 試 験 片 に 点 溶 接 し て 直 接 測 定 し た 。 さ ら に 、 図 3.4の 加 熱 用 の サ ス セ プ タ ー に 開 け た 穴 ( 直 径 約 3mm)
か ら 、 真 空 チ ャ ン パ ー の ガ ラ ス 窓 を 通 し て 、 試 験 片 上 の 界 面 に 垂 直 に つ け た け が き 線 の 動 き を 、 実 体 顕 微 鏡 を 用 い て そ の 場 観 察 す る こ と に よ り 、 変 形 中 の 異 相 界 面 す べ り の 様 子 を 観 察 し た 。
試 験 片 の 形 状 か ら 、 圧 縮 の 際 に は 圧 縮 治 具 と 試 験 片 の 上 面 と 下 面 が 接 す る た め 、 銅 、 タ ン グ ス テ ン 各 層 の 端 面 の 一 部 が 拘 束 さ れ る 。 そ の た め 、 変 形 に 寄 与 す る 層 は 銅 、 タ ン グ ス テ ン そ れ ぞ れ 3層 で あった。
3 . 3 実験結果と検討
3 . 3 . 1
応 力 ー ひ ず み 線 図図 3.5に 773Krv973Kに お け る 圧 縮 試 験 で 得 ら れ た 応 力 ー ひ ず み 曲 線 を 示 す 。 圧 縮 の 途 中 で 試 験 機 の ク ロ ス ヘ ッ ド 速 度 を 変 え た ひ ず み を 矢 印 で 示 し 、 そ れ と 対 応 す る ひ ず み 速 度 を 図 中 に 示 し た 。
タ ン グ ス テ ン 箔 の 圧 延 方 向 が 圧 縮 試 験 の せ ん 断 方 向 に 垂 直 な 試 料 (
a )
は、 773Kと 873Kで は 、 変 形 の 進 行 と と も に 変 形 応 力 が い っ た ん 増 加 し た 後 に 急 激 に 低 下 し 、 そ の 後 変 形 応 力 は ほ ぼ 一 定 の 値 と な っ て い る 。 た だ し 、 試 料 (a )
の 873I(に お け る 曲 線 Bに よ っ て 示 さ れ る よ う に 初 期 ひ ず み 速 度 が 最 も 低 い 5.1X 10‑6s‑1においては、急 激 な 変 形 応 力 の 低 下 は 見 ら れ な し '¥0 973Kで は 変 形 応 力 の レ ベ ル が 低 く 、 急 激 な 低 下 は 見 ら れ て い な い が 、 加 工 硬 化 の 後 約 10MPa
の 鋸 歯 状 の 応 力 変 動 が 見 ら れ る 。
ー ι F
︑lノ
LU
/E¥
i / 1σ¥・1
1.76 ‑2.33‑3.09・・6.38
speClmen ( a )
773K
i / σ1も‑16.1 ~4.75
speClmen
70 60 50
20 40 30
10
正/ 10も・‑1
3.05 0.51
2.04‑2.7ら3.ω‑7.41 0.6トD.47‑0.93
1.77 0.94
E / 1σ¥・1
A 2.09・.2.75・~3.66-7.55
B 2.15
873K
0
70
I 873K
6 0
ABC D E F
50
30 20 40
何仏︾
JH
、、、
b
10
正 /10"¥・1
1.80..2.38・・3.16ー・6.51
973K
正I 10・も・1
1.71..2.25‑3.α)‑6.18
0 70
I 973K 6 0
25 20 15
10 5
%
30 0
ε
25 2015 10 5 50
30 20
。
40
773Krv973K
に お け る 圧 縮 試 験 で 得 ら3.5 Cu‑W積 層 材 料 の れ た 応 力 ー ひ ず み 曲 線 図
‑
ー‑
一方 、 タ ン グ ス テ ン 箔 の 圧 延 方 向 と 圧 縮 試 験 の せ ん 断 方 向 が 平 行 な 試 料 (b)で は 、 試 料 (
a )
に 見 ら れ た 応 力 の 急 激 な 低 下 は 、 行 っ た 実 験 の ど の 温 度 、 ど の ひ ず み 速 度 で も 観 察 さ れ な か っ た 。 973I(で は 試 料 (a )
と 同 じ く 、 変 形 応 力 は ひ ず み 約5%
まで加工硬化した後、鋸 歯 状 に 変 動 し て い る 。 こ の 変 動 は 動 的 再 結 晶 に よ る も の と 思 わ れ る が 、 ひ ず み 速 度 の 影 響 が 見 ら れ な か っ た 。 773I(と 873Kでは、
973I(で の よ う な 変 形 応 力 の 大 き な 変 動 は 見 ら れ な か っ た 。
3 . 3 . 2
異 相 界 面 す べ り の そ の 場 観 察圧 縮 試 験 中 に 変 形 応 力 が 急 激 に 低 下 し た 試 料 (
a )
の 873K、 ひ ず み 速 度 2.0X 10‑5S‑1に お け る け が き 線 の そ の 場 観 察 の 結 果 を 図 3.6 に 示 す 。 図 の 各 写 真 中 に 矢 印 で 示 し た よ う に 、 ひ ず み の 増 加 と と も に 銅 層 と タ ン グ ス テ ン 層 の け が き 線 に 異 相 界 面 上 で ず れ が 見 ら れ 、 界 面 す べ り を 生 じ て い る こ と が わ か る 。
図
3 . 7
は 、 試 料 (a )
の 圧 縮 試 験 で 観 察 さ れ た け が き 線 の ず れ 量S
を 、 時 間 tに 対 し て プ ロ ッ ト し た も の で 、 873Kの 例 で あ る 。 図 中 の 破 線 は 、 圧 縮 変 形 が す べ て 界 面 す べ り に よ る も の と 仮 定 し て 、 圧 縮 変 形 量 か ら 求 め た 理 想 的 な ず れ 量 と 変 形 時 間 と の 関 係 を 示 し た も の で あ る 。 ま た 、 同 図 に は 変 形 応 力 の 変 化 も 併 せ て 示 し た 。
変 形 応 力 は 、 界 面 す べ り が 観 察 さ れ な い 変 形 の 初 期 に は 単 調 に 増 加 し て い る が 、 界 面 す べ り が 起 こ り 始 め る と 急 激 に 低 下 し て い る 。 他 の 温 度 、 ひ ず み 速 度 の 条 件 で も 界 面 す べ り が 明 確 に 観 察 さ れ 始 め る と 同 時 に 応 力 一 ひ ず み 曲 線 上 で 急 激 な 応 力 の 低 下 が 観 察 さ れ た 。 こ れ よ り 、 試 料 (
a )
の 圧 縮 試 験 で 観 察 さ れ た 変 形 応 力 の 低 下 は 異 相図 3.6試 料
( a )
の 異 相 界 面 す べ り の そ の 場 観 察 。 873K、 ひ ず み 速 度 2.0x 10‑5 S‑l. . . . . . . . ‑ ‑ ‑ ‑ ‑
界 面 す べ り が 原 因 で あ る こ と が わ か る 。
界 面 す べ り の 量 の 実 測 値 と 、 変 形 が す べ て 界 面 す べ り に よ る も の と 仮 定 し て 変 形 量 か ら 求 め た 計 算 値 は 、 そ れ ら の 時 間 依 存 性 が 互 い にほぼ平行であることから、界面すべりがいったん起こり始めれば、
本 積 層 複 合 材 料 の 変 形 は ほ と ん ど こ の す べ り に よ っ て 生 ず る こ と が わ か る 。 応 力 低 下 を 示 さ な か っ た 試 料 (b)で は こ の よ う な 界 面 す べ
りは観察されなかった。
試 料 (
a )
の 変 形 挙 動 は 温 度 と ひ ず み 速 度 に よ っ て 異 な り 、 大 き く 3つ の 領 域 に 分 け ら れ る 。 す な わ ち 、 主 に 軟 相 の 銅 層 の み が 変 形 する 領 域 、 主 に 界 面 す べ り に よ っ て 変 形 す る 領 域 、 界 面 が 剥 離 し て し ま う 領 域 で あ る 。 図 3.8は、融点、で規格化した温度の逆数とひずみ 速 度 の 図 上 に 、 そ れ ぞ れ の 変 形 挙 動 を 示 し た 領 域 を 示 し た も の で あ る。界面すべりは、比較的低ひずみ速度、低温のときに生じている。
こ れ は 、 界 面 す べ り が 起 こ る と き は 、 変 形 に よ っ て 銅 層 中 の 転 位 密 度 が 高 い 状 態 に あ る こ と を 示 し て お り 、 界 面 す べ り が 界 面 へ の 転 位 の 落 ち 込 み 、 あ る い は 界 面 に 落 ち 込 ん だ 転 位 の 運 動 に よ っ て 進 行 し て い る こ と を 示 唆 し て い る (15。)
3 . 3 . 3
界 面 拘 束 に よ る 複 合 材 料 の 強 化次 に 、 図 3.5の 応 力 ー ひ ず み 線 図 に お い て 、 変 形 応 力 が ほ ぼ 一 定 と な っ た と き の 変 形 応 力 を 定 常 変 形 応 力 と 見 な し 、 こ れ を ひ ず み 速 度 に 対 し て プ ロ ッ ト し た 結 果 を 図 3.9に 示 す 。 図 中 に は 定 荷 重 圧 縮 ク リ ー プ 試 験 の 結 果 も 、 最 小 ひ ず み 速 度 を ク リ ー プ 応 力 に 対 し て プ ロ ッ ト し て 示 し た 。 界 面 す べ り に よ っ て 変 形 が 進 行 す る 場 合 に は 著
600r k田2.0x1 0・5S‑1 ーノ
i r
i1:::1.8 x10・5S‑1
σ
1 除
ε
, ミえ。
、、、
600~ ~
正=9.4x10・65‑1 正=6.1x10・6S‑1
c/)
川 f t / ) s
j , / ,
' 'J t~~
' ' ' '。
5 10 15 20 25 0 5 10 15 20 25k s
図 3.7圧 縮 に 伴 う 異 相 界 面 す べ り 量 Sと 変 形 応 力σの時間変化。
873K。 破 線 は 変 形 が す べ て 界 面 す べ り に よ る と 仮 定 し た と き の 界 面 す べ り 霊
50 40 30 20 CtS
10
9 三 : :
句、、
30 20