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博 士 ( 工 学 ) 島 村 宏 之 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 島 村 宏 之

学 位 論 文 題 名

宇 宙 環 境 曝 露 に よ る ポ リ イ ミ ド フ イ ル ム の      機 械 特 性 劣 化 と そ の 予 測 法

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  宇宙機(人工衛星、宇宙ステーション等)のサイズや形状は、宇宙輸送機(ロケット、スベース シャトル等)の搭載容積に拘束される。そのため、地上で小さく収納して輸送機に搭載し、打上げ 後、宇宙空間で伸展・展開する宇宙膜構造物(フレキシプル太陽電池パドル、ソーラーセール等)

は、宇宙開発において欠かすことのでき次い技術である。宇宙膜構造物の構造材には、耐熱性に優 れ、 比強度 及び寸 法安定 性が高いポリイミド(PI: Polyimide)フアルムが一般的に使用される。宇 宙膜 構造物 におい て、構 造材の機 械特性 劣化は 構造物全体の変形または破壊を引起し、宇宙機の ミッション失敗に繋がる可能性が高い。そのため、宇宙膜構造物の材料設計において適切顔マージ ンを 見込ん だ強度 を設定 できるよ う、宇 宙環境 曝露によるPIフアルムの機械特性劣化について事 前に 評価及 び予測 するこ とは極め て重要 である 。これまでの研究により、宇宙環境に曝されたPI フィルムの引張強さ・伸びは、大きく低下することが明らかとをっている。しかし、宇宙環境曝露 によ るPIフィ ルムの 機械特 性劣化 に関す る研究実績は非常に少たく、その劣化メカニズムは不明 であ る。そ のため 、PIフィ ルムの 機械特 性劣化を予測することは困難である。また、宇宙機には ITO(Indium Tin Oxide)、Si02、Al等を表面にコーティングしたPIフアルムが頻繁に使用される。

コー ティン グ付PIフ ィルム が宇宙 環境に 曝される と、コ ーティ ングの 欠陥部 で原子 状酸素(AO:

Atomic Oxygen)による 浸食が生じ、フィルム表面に微小教穴(Undercut cavity)が形成される。こ のUndercut cavityによ りPIフアルムの機械特性は大きく劣化することが懸念される。以上より、

本研 究では 、SM/SEED(Service Module/Space Environment Exposure Device)実験により実宇宙環 境に曝したPIフィルム、及び、各種照射設備を用いた宇宙環境模擬試験(地上模擬試験)に供した PIフィルムの機械特性劣化挙動を評価し、それら評価結果を比較することにより宇宙環境曝露によ るPIフ ィルム の機械 特性劣 化メカ ニズム の解明を試みた。また、n、oコーティング付PIフアルム (ITO.伊Iフィルム)に対しても同様に評価・検討を行った。そして、PIフアルム及びITt班Iフィ.ル ムの 機械特 性劣化 を破壊 力学的立 場から 検討す ることにより強度劣化予測法の開発を目指した。

  本論文は全7章から成る。各章の内容は以下の通り要約される。

  第1章 では、PIフィル ムを宇 宙膜構 造物の 構造材 へ適用 する上 での課題を指摘し、本研究の目 的を示した。

  第2章で は 、SM/SEED実 験に より実宇 宙環境 に曝露 したPIフ ィルム (RightIPDの 引張試 験、

曝露 面観察 、破面 観察の 結果を示 した。SM/SEED実験では、同一のサンプルを搭載したユニット 3式を同時に打上げ、国際宇宙ステーション(ISS:IntemanonalSpaceStation)の外壁に設置し、曝 露期間を変えて1式ずつ回収した。FlightIPIの引張強さ・伸びは、曝露期間の増加に伴い徐々に低

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下した。 曝露面はAOの浸食により粗 い面を呈しており、その粗さ は曝露期間の増加に伴い増加し た。破面 には、曝露面、っまりAOの 浸食を受けた面を起点とした 放射状模様が確認され、その起 点周辺に は平坦部(ミラー部)が見 られた。この起点周辺の様相は、セラミックス等の脆性材料の 破面と類似していた。

  第3章 では、地上模擬試験としてAO、紫外線(UVニUltraviolet)、電子線(EB: Electron Beam)の 照射試験 に供したPIフィルムに対し 、Flight‑PIと同様の評価を 実施した結果を示した。地上模擬 試 験 に 供 し たPIフ ィ ル ムの う ち、AO照 射し たPIフ アル ム(AO‑PI)に おい ての み 引張 強さ ・伸 びの低下 が確認され、その低下はAOフルエンス(み〇)の増加に伴い大きく教った。照射面には、

コ ーン 状の 微 小突 起が無数に形成 されており、コーンの高さ及 び直径はFAOの増加に伴い大 きく をった。破面には、照射面を起点とした放射状模様が見られ、Flight一PI破面と同様、その起点周辺 にはミラー部が確認された。

  第4章で は、 破面 様相より引張試 験中におけるき裂伸展挙動 について考察し、各PIフアル ムの き裂伸展 挙動を比較することにより 、宇宙環境曝露によるPIフィ ルムの機械特性劣化メカニズム を検討した。Flight‐PI、AO‐PIにおいて、引張強さ・伸びの劣化挙動、表面様相、破面様相は類似 しており 、AOがPIフアルムの機械特 性劣化を引起す主要因である ことが明らかとをった。また、

こ れらPIフ ィ ルム の破 面様 相 より 、宇 宙環 境に曝されたPIフ アルムは、AOの浸食を受けた 面か らき裂が 伸展し、き裂の安定成長を 経て破壊に至ると推測された。そして、曝露期間の増加に伴う 引 張強 さ・ 伸 びの 低下は、凡Dの増 加に伴いA0の浸食により形 成される曝露面の凹凸が大き く教 るためだと考察した。

  第5章で は、A0照 射 したIT0/PIフア ルム の引 張 試験 、表 面観 察、 破 面観 察の 結果 を 示し 、 UndercutcavityがPIフ ィル ム の機 械特 性に 与え る 影響 につ いて 考察 した。AO―IT叩Iの引 張強 さ ・伸 びは 凡 〇の 増加に伴い低下 し、その低下の程度はAOIPIと比較して大きかった。照射 面に はUndercutcavityが随所に形成され ており、破面にはU・ndercutcaVityを起点とした放射状模様が 見られた 。以上より、Undercutcaviりは破壊起点として作用し、PIフィルムの引張強さ・伸びを大 きく劣化させることが明らかと教った。

  第6章で は、 各PIフ アル ムに おけ るR〇と 引張強さの関係を 破壊力学に基づき予測するこ とを 試みた。強度予測に先立ち、PIフアルムの破壊靭性(疋)評価試験を実施し、心と欠陥面積(Ad)の 関係式を 得た。また、Hight一PI、AO‐PIではミラー部寸法を、AO‐IT0 田IではUndercutcavity寸 法を破壊 起点と叔る欠陥寸法と見を し、それぞれについて凡Dと の関係を定式化した。nightlPI、 AO・PIの強 度 予測 では、以上で求 めた疋とんの関係式及びミラ ー部寸法とn〇の関係式を、 「表 面に半楕 円クラックのある有限帯板 の一様引張り」における疋の 近似式に代入することにより強 度 を計 算し た 。一 方、AO−ITo/PIの強 度予 測では、疋とAdの 関係式及びUndercutcaviけ寸 法と R〇の関 係式を、「表面に任意形状ク ラックのある半無限体の一 様引張り」における心の近似式に 代入した。破壊力学に基づぃて計算したFlightIPI、AO―PI、AO−IT() 田Iの引張強さは、いずれも実 験値とほ ばー致した。す教わち、宇 宙環境曝露によるPIフアルム 及びコーティング付PIフィルム の強度劣化評価に対する破壊力学的手法の有効性が示された。

  第7章では、本研究で得られた成果及び知見をまとめた。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    中村    孝 副査   教授   佐々木一彰 副査    教授    藤田    修 副査   教授   佐々木克彦 副査    教授    覺知豊次

学 位 論 文 題 名

宇宙環境曝露によるポリイミドフイルムの      機 械 特 性 劣 化 と そ の 予 測 法

  宇 宙輸送機内に小さく収納し て打上げた後、宇宙空間で展開する宇宙膜構造物は、宇宙開発にお ける 重要橡先端技術である。宇 宙膜構造物の構造材には、耐熱性、比強度、寸法安定性が高いポリ イ ミ ド(PDフア ル ムが 一般に使用され る。宇宙環境がPIフィルムの 物理的あるいは化学的特性 に 及ば す影響については、これま で数多くの検討がをされてきた。しかし、機械特性に着目した研究 は非 常に少をく、Prフィルムの 機械特性が宇宙曝露によってどのよう顔影響を受けるかはほとんど 明ら かにされてい教い。本論文 はこの問題に着目し、国際宇宙ステーションを用いて実宇宙環境に PIフ ィルムを曝露する実験、お よび原子状酸素(AO: Atomic oxygen)、紫外線(UV: Ultraviolet)、 電 子 線(EB: Electron Beam)教どの宇 宙環境因子をPIフアルムに照 射する地上実験を行うこと で 機械 特性の劣化挙動を明らかに するとともに、破壊力学の援用によって宇宙環境における強度劣化 を定 量的に予測する手法の開発 を試みたものである。

  第 1章 で は 、 本 研 究 の 背 景 と 目 的 、 お よ び 本 論 文 の 構 成 を 述 べ て い る 。   第2章では、実宇宙環境に曝露 したPIフアルム(Flight‑PI)の引張試験、曝露面観察、 破面観察 を行 っている。その結果、曝露 期間の増加に伴い、引張強さ ・伸びが低下すること、曝 露面はAO の 浸 食に より 深さ 数ロmの微小を円錐 状の様相を示し、その粗さは 曝露期間の増加に伴い増加 す るこ と、教どを定量的に明らか にした。

  第3章で は、 地 上実 験と してAO、UV、EBの照 射試験に供したPIフアルムに対し、Flight‑PIと 同様 の評価を行っている。地上 実験に供したPIフアルムのう ち、AO照射したPIフィルム(AO−PI) にお いてのみ引張強さ・伸びが低下し、その低下量はAOフルエンス(F・A〇)の増加に伴い大きく怨 るこ と、および照射面には、円 錐状の微小突起が無数に形成 され、この円錐の高さ及び直径はn〇 の増 加に伴い大きく顔ること教 どを明らかにした。

  第4章では、破面解析により引 張試験中におけるき裂進展 挙動を調ベ、宇宙環境曝露による機械 特性 劣化の機構を検討している。Right―PI、A0ーPIにおいて、引張強さ・伸びの劣化挙動、表面様 相 、 破面 様相 は類 似し て おり 、AOがPIフィ ル ムの機械特性劣化の 主因であることを明らかに し

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た。また、宇宙環境に曝 されたPIフアルムは、AOの浸 食を受けた面からき裂が進 展し、き裂の安 定成長を経て破壊に至る ことを示した。さらに、曝露期間の増加に伴う引張強さ・伸びの低下は、

FAOの 増 加に伴いAOの 浸食により形成される曝露 面の凹凸が大きく次るためで あることを明らか にした。

  第5章 では 、耐AO性 を 向上 させ るた めにITO(Indium Tin Oxide)をコ ー ティ ング したPIフィ ルム(ITO/PI)にAO照 射試 験を 行い 、 その 機械 特性 を 預0定 している。その結 果、AOを照射した ITO/PI(AO‑ITO/PI)の 引 張強 さ・ 伸び はFAOの 増加 に 伴い 低下し、その低下 の割合はAO‑PIと比 較して逆に大きくをるこ とを明らかにした。その理由 として、ITOコーティングに潜在的に存在す る数Hmの 微小 を 欠陥 を起 点と してAOによ る激 しい 侵 食が 生じ るこ と、 こ の損 傷度 合いは1110 コーティングの無い通常 のPIフアルムに比べて大きく をることをどを、破面解析 により示した。

  第6章 では、宇宙環 境曝露によるPIフィルムの 強度劣化を破壊力学に基づき 予測する手法の構 築を 試み てい る 。こ れま で厚 さ数 十から数百pmのPIフアルムの破壊靱性(疋 )を測定する方法 が確 立さ れて い 教か った こと から 、これを求め る新た趣手法を提案し疋値を 測定した。さらに FlightlPI、AO−PI、AO−IT().田Iにおける曝露面の凹凸寸法や不安定破壊を生じるまでのき裂寸法と F,A〇との関係を定式化した。これらの値をもとに破壊力学を用いて宇宙環境曝露後の引張強度を予 測した。その結果、解析によって求めたFlight・PI、AO‐PI、AO‐ITO伊Iの引張強さは、いずれも実 験値とほば一致し、宇宙 環境曝露によるPIフアルム及 びコーティング付PIフアル ムの強度劣化を 予測する本手法の有効性が示された。

  第7章は、総括であり、本研究で得られた主教結果をまとめている。

  以上のように本論文は 、宇宙環境におけるポリイミ ドフアルムの機械特性の劣 化挙動を明らか にするとともに、その予 測法を開発したものであって、宇宙工学教らびに材料強度学の分野に貢献 するとてろ大である。よ って著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認 める。

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