博 士 ( 医 学 ) 李 水 庚
学位論文題名
Enhancement of Lymphokine‑Activated Killer Cell Activity by Fibronectin
(フィブロネクチンによるLAK 細胞活性の増強)
学 位 論 文 内 容 の 要旨
目 的 : 細 胞 外マ ト リ ッ ク ス 蛋 白 特 に ( ECM) は 細胞 間、 血管 基底膜 、細 胞表 面な どに広く分布し、細胞表面のインテグリン受容体と結合することによって細胞の増 殖、活性化、発生分化、細胞死などに重要な役割を果たしていることが明らかにな っ て き た 。 免 疫 担 当 細 胞 に お い て は 、 固 相 化 フ ィ イ ブ ロ ネ ク チ ン ( FN) と a5D l/a4p1 イン テ グ リ ン あ る い は ラ ミ ニン ( LN) と Q6pl イ ン テ グ リ ンと の 結合 を介してりンパ球の活性化、増殖が誘導されることが報告されている。さらに、細 胞外マトリックス蛋白と接着分子の結合によってそのシグナルがどのように伝達さ れているのか伝達経路の検討がすすめられている。
一 方 、 LAK 細 胞 は り ン パ 球 を イ ン タ ーロ イキ ン2 (11‑2 ) で刺激 培養 する こと に よ っ てMHC ( 組織 適合抗 原複 合体 )非 拘束性 に広 範囲 の癌 細胞を 傷害 する 活性 化 リ ン パ球 として 1982 年に 報告 された 。LAK 細 胞は その 腫瘍 細胞傷 害能 が強 いこ と、標的スペクトラムが広いこと、誘導が比較的容易であることから養子免疫療法 の エ フ ァ ク ター 細 胞 と し て 用 い ら れ て いる。 LAK 細胞 は、 生体 内に おいて はECM などの種々の生理活性物質によってその活性が制御されていることが予想されるが、
こ れ ま で LAK 細 胞 活 性 に 与 え る ECM の 影 響につ いて は報 告が ない。 そこ で申 請者 は、 ECM よっ てLAKIII 胞 活性 がど のよう に調 節さ れてい るのか、さらに活性調節 の機序について検討した。
材 料 と 方 法 : 6 〜 8 週 齢 の C57BL/6 マ ウ ス よ り 脾 細 胞 を 採 取 し 、 10%FCS 添 加 RPMI‑1640 培地 に10 °/ml に 調製 後、ヒ トリ コン ビナン イン タロ ーキ ンー2 ( rIL‑
2 )を 2 50IU/ml 加え て、 5 % C02 ・ 37 °C の 条件下 で4 日間 培養した。培養後、固相
化FN (10 pLg/ml )、LN (10 いゼノml )、コラーゲン(COL ) (10l.Lg/ml )あるV ゝ
は コ ン ト ロ ール の BSA 上 に て 24 時 間 培 養し て以 下の実 験に 用い た。 LAK 感受 性の
マウス線維肉腫細胞株QR‑ 32 に対するLAK 細胞活性を  ̄Chl‑ome 放出試験にて検討
し た 。 LAK 細胞 と細 胞外マ トリ ック ス蛋 白の接 着に 関与 する 接着分 子は 各種 抗bl
イ ン テ グ リ ン 抗 体 ( anti‑ al 、 a2 、 a4 、 a5 、 a6 mAb) を 用 い た FACScan お よ
び接 着阻 止実 験にて 検討 した。2 種類の細胞を異なる色素にて標識し、結合した細
胞 をFACScanを 用 い てtwo color analysisで 検 出 す るConj ugate formation assay に てLAK細 胞 と 標 的 細 胞 の 結 合 能 を 検 討 し た 。 ま た 抗Blイ ン テ グ リ ン 抗 体 、 抗 LFAー1抗 体 を 用 い て そ の 結 合 の 抑 制 活 性 を 検 討 し た 。LAK細 胞 の バ ー フ ォ リ ン 、 TNFなどのmRNA発現をRT‑ PCRにて検討した。
結 果 : @ 本 実 験 系 に お い て 誘 導 さ れ たLAK細 胞 は 、CD8陽 性 、CD56陰 性 のT細 胞 由 来 で あ っ た 。 @LAK細 胞 表 面 のplイ ン テ グ ル ン 分 子 の 発 現 は 、 新 鮮 脾 細 胞 と 比 ぺてqユ.、a2、a5、a6あるし、はviti‑onectin i'ccc1〕toi'(VNR)カミ増カ‖してし、た。
特 に 、a5は 新 鮮 牌 細 胞 表 面 に は 検 出 で き な い の に 対 し てLAK糸nl胞 で は 顕 著 に 誘 導 さ れ て い た 。 ◎LAK細 胞 の 固 相 化FNへ の 接 着 は コ ン ト ロ ーJレBSAへ の 接 着 と 比 ぺ て 有 意 に 増 強 し た が 、 抗a5抗 体 に よ っ て 抑 制 さ れ 、a5を 介 し てLAK細 胞 がFNヘ 接 着 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 OLAK細 胞 のQR32細 胞 傷 害 活 性 は 、 固 相 化FNへ の 接 着 に よ っ て 増 強 さ れ 、 こ の 現 象 は 他 の 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス 蛋 白 、LN、COLな ど に 接 着 す る こ と に よ っ て も 同 様 に 認 め ら れ た 。 ◎ 固 相 化FNと の 接 着 に よ っ て 増 強 さ れ たLAK細 胞 活 性 は 抗a5抗 体 に よ っ て 抑 制 さ れ 、a5を 介 す るLAK細 胞 とFNの 相 互 作 用 がLAK細 胞 の 活 性 化 に 重 要 な 役 割 を 演 じ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 ◎ LAK細 胞 は ECM上 で 培 養 し た 場 合 で も 増 殖 が 促 進 さ れ ず 、LAK細 胞 活 性 の 増 強 は lytic unitで 計 算 さ れ る 活 性 の 増 強 で あ っ た 。O固 相 化FN上 で 培 養 し たLAK細 胞 は 標 的 細 胞 と の 結 合 が 増 強 さ れ て い た 。 こ の 結 合 の 増 強 は 抗a5抗 体 で 抑 制 さ れ な い の に 対 し て 抗LFA‑1抗 体 に よ っ て 抑 制 さ れ た 。 ◎ 固 相 化FN上 で 培 養 し たLAK細 胞 表 面 のLFA‑1分 子 の 発 現 量 に は 変 化 が な か っ た こ と か ら 、a5を 介 し たLKA細 胞 と FNの 接 着 に よ っ てLAK細 胞 表 面 のLFA‑1分 子 が 活 性 化 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。
◎ バ ー フ ォ リ ン やTNFのmRNA発 現 量 はFNの 接 着 に よ っ て 変 化 し な か っ た 。 考 案 : 本 研 究 に よ っ て 、 イ ン テ グ リ ンa5を 介 し た LAK細 胞 とFNの 接 着 に よ っ て LAK細 胞 活 性 が 増 強 さ れ る こ と が 示 さ れ た 。 さ ら に 他 の 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス 蛋 白 、 LN、COLな ど に 接 着 す る こ と に よ っ て も 同 様 にLAK細 胞 活 性 が 増 強 さ れ た 。 こ の 結 果 は 、adherent LAKの 活 性 がnon‑adherent LAKの 活 性 よ り 高 い と の 報 告 と 合 わ せ る と 、 接 着 し て 定 着 す る こ と がLAK細 胞 活 性 化 に と っ て 重 要 で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 さ ら にLAK細 胞 が 生 体 内 に お い て も 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス 蛋 白 に よ っ て 活 性 化 さ れ る 可 能 性 を 示 し て お り 、 固 相 化FNと の 接 着 後 に 検 出 さ れ るLAK活 性 こ そin vivoに お け る LAK細 胞 の 抗 腫 瘍 活 性 を 反 映 し て い る と 考 え ら れ る 。 固 相 化FNと の 接 着 に よ っ てLAK細 胞 活 性 が 増 強 さ れ る そ の 機 序 に つ い て は 、 パ ー フ ォ リ ン やTNFのmRNA発 現 量 と 標 的 細 胞 と の 結 合 能 の 変 化 を 検 討 し た 。 す で に Dlイ ン テグ リ ン を介 したシグナ ルにより 、リンノ 弋球のノ ヾーフォ リン、サ イトカイ ン 産 生 が 増 強 さ れ る こ と が 報 告 さ れ て い る が 、 本 研 究 で は パ ー フ ォ リ ン やTNFの mRNA発 現 量 はFNの 接 着 に よ っ て 変 化 し な か っ た 。 む し ろ イ ン テ グ リ ンa5を 介 し たLAK細 胞 とFNの 接 着 に よ っ て 伝 達 さ れ る シ グ ナ ル がLAK細 胞 を 活 性 化 し 、 さ ら にLFA‑1分 子 の 活 性 化 を も た ら す こ と が 示 唆 さ れ た 。 以 上 の 結 果 は 、LAK細 胞 と FNの 接 着 に よ るLAK細 胞 活 性 の 増 強 がLFAー1分 子 の 活 性 化 に よ る 標 的 細 胞 と の 結 合 増 強 に よ る も の と 考 え ら れ た 。LFA‑1は イ ン テ グ リ ンD2フ ん ミ リ ー に 属 し 、 抗
LFA‑1 抗体で LAK 細胞による標的細胞の傷害が抑制されることが報告されており、
標的細胞との接着に重要な役割を果たしている接着分子と考えられる。本研究でも 抗LFA‑1 抗体 でLAK 細 胞と 標的 細胞 の結合 が阻 害さ れ、 標的細 胞と の接 着に重 要 な役割を果たしていることが確認された。
以 上、 LAK 細胞 とFN の接 着によ って LAK 細胞 活性 が増 強され るこ と、 その機 序
はLFA‑1 分子 の活 性化 を介 してLAK 細胞の 標的 細胞 との 結合が 増強 する ためで あ
るこ とを 明ら かにした。今後、この成績に基づぃて養子免疫療法への応用につい
更に検討していきたいと考えている。
学 位 論 文 審査 の 要 旨
学位論文題名
Enhancement of Lymphokine‑Activated Killer Cell Activity by Fibronectin
,(フィブロネクチンによるLAK 細胞活性の増強)
細胞外マトリックス蛋白は、細胞間、血管基底膜、細胞表面などに広く分布し、細胞表面 のインテグリン受容体と結合することにより細胞増殖、活性化、発生分化、細胞死等に重 要な役 割を果たしている。免疫担当細胞においては、固相化フィブ口ネクチン(FN)や ラミニンとの結合を介して、リンバ球の活性化や増殖を誘導するとの報告がなされてきた。
LAK細 胞は正常リ ンバ球をイ ンター口イキン2 (IL―2)で刺激培養することにより MHC( 主要 組 織 適合性抗 原複合体) 非拘束性に ナチュラル キラー(NK)感受性 のみな らず、NK抵抗性の腫瘍細胞を傷害し、腫瘍患者に対する養子免疫療法のエフウクター細 胞として用いられてきた。さらに、近年LAK細胞が種々のインテグリン分子を発現する ことが判明してきた。本研究では、LAK細胞を生体内に投与した場合、腫瘍組織中に存 在する細胞外マ卜リックス蛋白と結合することにより、その機能が、どのように制御され るか検討した。申請者は、マウス脾臓細胞をIL一2存在で刺激培養して作成したLAK細胞 はCD8陽性 、CD4陰 性、CD56陰 性で あ り、 新 鮮脾 臓 細胞 に 比し 、a,l,a2,a5,a6 のl31インテグリンあるいは、av[33インテグリンの発現が増強してることを示した。とく にa5は新鮮脾臓細胞では検出されなかった。LAK細胞はFNに強い接着を示し、この接着 はa5インテグリンに対する抗体で抑制された。固相化FNに接着することによりLAK細胞 は、腫瘍細胞に対して強い細胞傷害活性を示した。更に、腫瘍細胞とLAK細胞との結合 も、固相化FNに接着することにより増強し、この結合はLFA―1分子の活性化を介してい ることを明らかにした。
審査にあったて、副査の小林教授より、adhesionをlodgingとspreadingを区別して いるか 、固相化FNで はなく、ピ ーズにFNをコートしてLAK細胞を刺激すると、細胞傷 害活性はどうなるか、インテグリンの発現が変化しないのにインテグリンを介する刺激が 増強するのはどうしてか、副査の小池教授より、腫瘍化すると、FNの産生が低下するの か、LAK細胞の細胞傷害活性の増強と標的細胞との結合に関与する受容体が異なるのは、
一般的か、予想外か、主査の上出教授より、細胞傷害活性のアッセイにFNをいれると、