• 検索結果がありません。

Microsoft Word 年度ゼミ論集完成版v2 forHP.doc

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Microsoft Word 年度ゼミ論集完成版v2 forHP.doc"

Copied!
99
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Vol. 11

2007 年度西澤ゼミ・学生論集

同志社大学法学部・政治学科

2008 年 3 月

岐 亡 羊 II

(2)

2

はしがき

中国の学者・楊子(ようし)が、分かれ道が多くて、逃げた羊を見つけることが できなかったことを深く悲しんだ。「分かれ道が多いために羊を逃してしまったの と同じように、学問の道もあまりに多方面にわたっているために、真理を見失って しまうことを悲しんだのだ」と、後にその弟子の一人・心都子(しんとし)が説明 したそうだ。 現代日本が抱える政治的な問題や日本あるいは外国の有権者の投票行動・価値観 について、多くの立場の研究に触れ、また、興味を持った具体的な疑問点について、 各自が独自な視点で分析を行ったわけだが、それには1年はあまりにも短かった。 おかげで、政治のメカニズムが理解できたというより、むしろよけいに分からなく なったというのが正直なところだろう。まさしく、「多岐亡羊」である。 さて、今年の3・4 ゼミには、10 名の諸君が集まってくれた。それらの諸君の努 力の結晶がここに収められた論文である。 今年も、国内研究を私はいただいたこともあり、法学部長を務めることとなった 昨年に続いて「普通ではない年」となった。もっとも、ゼミだけしか授業が無かっ たので、学生諸君と一緒の時間として、週に1 度のゼミがいつも以上に楽しみであ った。そして、時間外の自主添削会など、西澤ゼミの良き伝統が引き継がれるのを 見るのも喜びであった。何より、このゼミ生によるゼミ論文集『多岐亡羊』の完成 に感謝したい。 その間、TA として手伝ってくれた池田俊介君に感謝したい。彼の助言なくして この論文集は完成しなかった。 大学で学ぶことの究極の目的は、「真理とは何か(あるいは人間とはどういう生 き物なのか)」という問いに対する答えを見いだすことである。ただ、学生時代の 4 年間でその問いに答えを得ることのできる人は少ないだろう。つまり、社会に出 ても、この問いに対して自問し続けることになる。大学は、その「最初の一歩」に すぎない。「真理を問う」ことのおもしろさを体験した(と、私は信じているが) 在学生諸君は、残る時間を大切にして、今年以上に勉学に励んでほしい。卒業する みんなについても、このゼミで身につけた(と、私は信じているが)実証的な分析 視角と物事を批判的に見る態度を、ぜひ実社会で活かしてほしい。真理を見極める 道具として。 西澤由隆 2008 年 1 月 31 日 自宅の書斎にて

(3)

3

もくじ

はしがき ··· 西澤由隆 2 3 年生論文 1. 京都府選挙区における 自民党候補者の集票構造 ‐なぜ谷垣禎一と野中広務は 連続当選を果たせるのか‐···· 松井優文 5 2. 雨の日の投票行動 ‐京都府に住む有権者の投票行動‐ ··· 村上春佳 20 3. 選挙運動の効果 ‐なぜ選挙運動は新しい意思決定を する際、投票先の決定に 欠ける印象を与えるのか‐ 小川久美子 27 4. 個人主義者の投票行動 ‐なぜマスコミ の報道で 投票先が変わるのか‐··· 坂本裕嗣 36 4 年生論文 5. 公明党支持者の自民党評価要因 ∼連立政権前後を中心とした時系列比較による検証∼ ··· 井上拓紀 47 6. 報道と投票 ‐なぜマスコミ報道の接触頻度は 投票に影響を与えにくいのか‐·· 川口香緒里 55 7. 近接性対方向性 2005 年衆議院選挙 ‐なぜ争点によって モデルの説明力が変わるのか‐··· 森川敦司 64 8. 若年層の有効性感覚 ··· 西田隆政 82 9. 補助金と自民党議員 ∼なぜ政治家の地盤と地盤以外とでは 補助金の扱いが異なるのか?∼ ‐それは政治家にとって地盤が失うことの できない集票場だからだ‐··· 梅本貴稔 90 ゼミ生紹介 ··· 99 編集後記 ··· 西田隆政 112

(4)

4

(5)

5

自民党候補者の集票構造

京都府選挙区における

‐なぜ谷垣禎一と野中広務は連続当選を果たせるのか‐

松井 優文

1. はじめに

自民党は、1955 年の保守合同によって結党して以来、30 年以上にわたり 政権党であった。55 年体制下最初の 1958 年総選挙から 1960 年代前半は自 民・社会の二大政党時代であり、自民党は比較的安定して議席を獲得してい た。しかし1960 年代半ばに入ると、公明党・民社党の結党や共産党の躍進 などの多党化傾向が進行した。これによって自民・社会という二大政党制の 構図は一変し、自民党の相対得票率は次第に低下していく。さらに1970 年 代に入ると、石油危機後の経済混乱や田中角栄元首相のスキャンダルが保守 政権継続に対して深刻な危機をもたらした。こうした一連の危機的状況に直 面しながらも、自民党は継続して政権を担当し得るほどの議席を維持し、こ の危機を払拭した。三宅(1990) は、この保革伯仲から保守回帰に至ったこ とで「自民党一党優位のシステムが強化され」たとした。 自民党は、国政レベルでは一党優位政党であったが、地方レベルでは必ず しもそうではないようである。図1をご覧になっていただきたい。これは、 55 年体制下最初の第 28 回総選挙(1958 年)から中選挙区制最後の第 40 回総 選挙(1993 年)における、自民党と日本共産党(以下、共産党)の相対得票率 を全国と京都府で分けて図示したものである。この図より、全国と京都府に おける相対得票率の推移の動向は比較的似ているが、全国と比較して京都府 での自民党の相対得票率は低く共産党のそれは高いことが読み取れる。そし て両党の相対得票率の関係は経年的に「保革伯仲」状態へと変化していった ことがわかる。また京都府選挙区では、共産党の候補者が圧倒的な得票率で トップ当選を果たすことも少なくない。以上のように、京都府から立候補す る自民党候補者は、京都府選挙区では共産党を中心とした革新勢力の対抗を

(6)

6 意識せざるを得ないのである。 しかし、このような状況の中で京都府選挙区から立候補した谷垣禎一と野 中広務は、革新勢力の影響を多分に受けることなく、初出馬以来連続して当 選を果たしている。では、なぜ彼らは連続して議席を獲得することができた のだろうか。中選挙区制下における自民党候補者独特の集票構造を把握する ことによって、この点を明らかにすることが本稿の主たる課題である。 図1 京都府における自民党・共産党の相対得票率の推移 自民党(全国) 共産党(全国) (%) 自民党(京都府) 共産党(京都府) 50 40 30 20 10 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 (総選挙回数)

2.先行研究

このあと検証する命題・仮説を述べる前に、中選挙区制下における自民党 候補者の集票構造に関する先行研究を紹介する。 水崎・森(2007) は、中選挙区制下における自民党候補者の多くが選挙区 内の特定地域において偏重的に得票することで安定的当選を果たしている 事例に着目している。そしてその得票における地域偏重度を測定する方法と してRS指数を提案している。水崎によって開発されたRS指数は「候補者 の各市区町村得票率と選挙区得票率との偏差を、各市区町村の有効投票構成 比の重みをつけて平均し、それをさらに候補者得票率の2 倍で割って相対化 したもの」で、候補者個人の得票の地域偏重度を表すための指標である。こ

(7)

7 の値は0 から 1 の範囲に分布し、特定の候補者得票率がすべての市区町村に おいて均一であれば0 の数値を示し、得票の地域的な偏りが大きくなるほど 限りなく1に近づく。RS指数は以下のような数式で表される。 そして水崎・森は、RS指数の実際の事例への適用について二つの留意点 を指摘している。第一に、政令指定都市のような得票が区単位で集計される 選挙区や選挙区内に大きい人口比率を占める市を含んでいる選挙区は、その 有効投票構成比の大きさがこの指数に多大な影響を与えること。第二に、得 票数の極端に低い泡沫候補はどこの地域で得票するかはかなりの偶然性に 左右されるため、この指数の意味をなさないこと、を挙げている。

3.命題と仮説

先行研究をふまえ、本稿では次の命題について検討する。 命題:京都2 区から立候補した谷垣禎一と野中広務は、なぜ連続して議席 を獲得することができたのだろうか。 先述した通り、京都府選挙区では共産党候補者がコンスタントに高い得票 率を記録している。またそれに追随するように他の革新系政党も比較的高い 得票率を獲得している。このように、保守系安定選挙区とは必ずしも言えな い京都2 区から立候補した谷垣禎一と野中広務は、なぜ連続して議席を獲得 することができたのだろうか。 この命題の根拠となる仮説は以下の通りである。 仮説:地盤の存在 三宅(1989) によれば、「地盤」とは「候補者をめぐる支持ネットワークが 濃密なある地理的範囲でそこから総得票数のかなりの部分を期待できる」も のであり、カンバン(候補者の知名度)・カバン(政治資金)とともに当選に必 要不可欠な要素である。この地盤の存在が谷垣・野中の支持基盤を確立し、 当選を確実なものにしていると考える。

(8)

8

4.研究意義

政治の研究・評価を行う上で、カーティス(1967) は二つのアプローチを 紹介している。第一に、「対象となる政治制度の総合的全体像を追求して、 巨視的分析を試みる」ことである。第二に、「顕微鏡にたとえられる政治科 学の手法をもちいて、政治制度の一部分に焦点を当て、全体像の理解を助け るような特質を発見する」ことである。そしてカーティスは後者のアプロー チを用いて、日本の国会議員選挙に立候補した一議員の選挙戦に着目するこ とで日本的選挙運動の実態を明らかにしようとした。 このカーティスの研究をふまえ、本稿では「京都2 区」という一選挙区に 焦点を当てる。この一選挙区の研究は、地盤という言葉に象徴される、中選 挙区制下の自民党独特の集票構造を明らかにする。さらにこの研究は、当該 選挙区にとどまらず、他の選挙区を理解する上で大きな手がかりを供給する ものと考える。

5.分析枠組み

5‐1 分析対象 本稿では、研究サンプルとして谷垣禎一と野中広務を選んだ。以下では、 彼らの政治的キャリアについて整理しておこう。 谷垣禎一は京都府福知山市出身である。1983 年の衆議院京都府第 2 区補 欠選挙に初当選して以来、連続8 回当選(2003 年総選挙までの累計、補欠選 挙も一回にカウント)を果たしている。(1) 谷垣は、郵政・防衛・大蔵政務次 官、科学技術庁長官、国務大臣・国家公安委員長、産業再生機構担当大臣、 財務大臣などを歴任している。また谷垣禎一の父 谷垣専一も、第29 回総選 挙(1960 年)に初当選して以来、6 回当選(第 34 回に一度落選)を果たし、建 設・厚生政務次官、自民党社会部会長、副幹事長、文部大臣などを務めた。 つまり谷垣禎一は二世議員である。 野中広務は京都府船井郡園部町(現在は南丹市園部町)出身である。野中も 谷垣同様に、1983 年の衆議院京都府第 2 区補欠選挙に初当選して以来、連 続8 回当選(2003 年総選挙までの累計、補欠選挙も一回にカウント)を果た している。衆議院初当選以前は園部町議会議員を3 期、園部町長を 2 期、京 都府議会議員を3 期務めている。また 7 期 28 年間に及ぶ革新府政の蜷川虎 三知事の引退によって革新から府政を奪還した林田悠紀夫知事の下で京都 副知事も務めた。初当選以後は自民党京都府連会長、内閣官房長官、自治大

(9)

9 臣・国家公安委員長、自民党幹事長などを歴任した。 5‐2 京都 2 区の選挙区特性 中選挙区制下における京都府選挙区は1 区と 2 区で構成される。以下では、 谷垣・野中を選出した京都2 区の選挙区特性を見ていこう。 まずは、京都2 区の選挙区域である。(2) 京都2 区は、京都市の一部(右京 区・西京区・伏見区)を含む 11 市(福知山市・舞鶴市・綾部市・宇治市・宮 津市・亀岡市・城陽市・向日市・長岡京市・八幡市)と12 郡(乙訓郡・久世 郡・綴喜郡・相楽郡・北桑田郡・船井郡・天田郡・加佐郡・与謝郡・中郡・ 竹野郡・熊野郡)から構成される極めて広大な選挙区である。 次に、京都2区の政治構図である。戦後初めて中選挙区制が導入された第 28 回総選挙(1958 年)における京都 2 区の 5 議席は自民 3 社会 2 で分け合っ ていた。先述したように、これは55 年体制の前半であり自民・社会の二大 政党時代であった。 しかし1960 年代に入り、都市化の進展にしたがって野党の多党化傾向が 強まる中で、自民・社会の構図は一変した。(3)1960 年に民社党、1964 年に 公明党が結成され、それぞれ一議席ずつ獲得するようになったのである。そ れまで定数いっぱいに候補者を擁立していた自民党はこの時期から候補者 数を二人に限定するようになった。 京都2 区において共産党が躍進し始めたのも 1960 年代からである。第 28 回以後の4 回の総選挙では、共産党は候補者を擁立するものの議席を獲得す ることは一度もなかった。しかし第32 回総選挙(1969 年)において初当選を 果たして以来、第37 回総選挙(1983 年)を除いて連続して議席を獲得してき た。また第32 回から第 40 回(1993 年)までの 9 回中 5 回の総選挙において、 共産党候補者がトップ当選を果たしていることは注目すべき点である。 以上のように、京都2 区は 5 党以上(自民党・公明党・民社党・社会党・ 共産党・諸派)が競合する激戦選挙区なのである。 5‐3 分析に用いるデータ 本稿では、1983 年衆議院議員補欠選挙と第 37 回(1983 年)から第 40 回 (1993 年)の衆議院総選挙における京都 2 区の市町村別得票データを用いる。 それらは京都府選挙管理委員会編『衆議院議員総選挙の記録』より得た。ま た分析期間を第40 回衆議院総選挙までとしたのは、その後の選挙制度改革 によって小選挙区比例代表並立制が導入され、谷垣は京都5 区へ、野中は京

(10)

10 都4 区へと選挙区が別々になったからである。これにより彼らの地盤の存在 を確認する試みの意義は薄れ、本稿の課題から逸脱することとなる。 5‐4 分析手法 本稿では、山田(1992) の分析手法に依拠した分析を行っていくことに留 意されたい。山田は、茨城1 区に着目し、橋本登美三郎から額賀福志郎への 地盤の継承と彼らの得票の動態を把握する試みを行っている。その分析手法 は第一に、RS指数の採用によって、橋本・額賀の得票の地域偏重度とその 変遷を提示している。第二に、第一作業で得票の偏重を示した地域が橋本か ら額賀へと継承された「地盤」であるか確認するために、彼らの市町村得票 率を時系列的に示し、他の候補者より圧倒的に高い得票率を記録している地 域を見ることで「地盤」の存在を確定している。 本稿ではこの分析手法を採用する。しかし、分析手法の順序だけは逆にす る。なぜなら本稿の目的は、谷垣・野中の「地盤」の存在を明らかにするこ とにあるからである。本稿におけるデータ分析の具体的な方法は、まず、山 田の第二作業を用いることで谷垣・野中の集票組織である「地盤」を明らか にする。次に、山田の第一作業であるRS指数の採用により、谷垣・野中の 得票の地域偏重度とその変遷を示す。これにより、彼らが選挙区内において どれほど「地盤」に依拠しているのか、または依拠していないのかを確認す ることで、彼らの集票動向を把握する。例えばRS指数が高く算出されれば、 地盤に依拠しつつ地域偏重的に得票していることが示唆される。逆にRS指 数が低く算出されれば、地盤を中心に選挙戦を展開しているのではなく選挙 区全体から包括的に得票していることが示唆される。

6.分析

6‐1 地盤の存在の実証 ここからは分析手法に基づき、「地盤」の存在を実証していく。表1 と表 2 は、1983 年補欠選挙と第 37 回から第 40 回までの総選挙について、谷垣・ 野中の相対得票率を市町村別にまとめたものである。これによれば、谷垣は 天田郡や加佐郡とともに、自身の出身地である福知山市を確実に票田として いることがわかる。また野中も自身の出身地である船井郡園部町を中心に、 その近辺である北桑田郡から比較的高い得票率を記録している。 そしてこれら5 回の総選挙における各市町村別相対得票率の平均を算出し、 その相対得票率を縦軸に、市町村を横軸にとり、谷垣・野中の得票分布を示

(11)

11 したのが図2 である。この図 2 及び表 1・表 2 から以下の各点を指摘するこ とができる。第一に、谷垣・野中は京都府北部において自身の「地盤」を明 瞭に保持している。すなわち出身地を中心的な集票源としており、京都府北 部の特定地域において圧倒的に高い得票率を記録している傾向があるから である。第二に、谷垣・野中は地理的に地盤の棲み分けを行っている。(4) 図 2 からわかるように、谷垣が高い得票率を記録している地域では野中のそれ は低く、逆に野中が高い得票率を記録している地域では谷垣のそれは低い。 このことから、彼らの間で地盤の棲み分け状態が存在していると言える。第 三に、京都府南部での得票率が極めて低い。谷垣の相対得票率が 20%以上 を記録したことのない地域は亀岡市、八幡市、相良郡笠置町であり、京都府 南部ではあまり票を得ていない。また野中の相対得票率が 20%以上を記録 したことのない地域は宇治市、城陽市、向日市、八幡市、乙訓郡大崎町、久 世郡久御山町であり、彼もまた京都府南部での支持は薄い。第四に、京都2 区の有権者の約30%を占め、最大の票田である京都市(右京区・西京区・伏 見区)での得票率が、京都府南部とともに一貫して低い。5 回の総選挙におい て、谷垣の得票数のうち京都市内からの得票が占める割合は、最小19%(補 欠選挙)・最大28%(第 39 回)・平均 25%である。また、野中の得票率のう ち京都市内からの得票が占める割合は、最小19%(補欠選挙)、最大 28%(第 39 回)、平均 25%である。 以上のことから、谷垣・野中は自身の出身地を中心とした「地盤」から集 中的に票を集めることで、連続して議席を獲得していることがわかる。また 彼らの間で「地盤」の棲み分けを行うことで、安定的当選を果たしていると 言える。ゆえに、先に示した仮説は検証できたものと考える。 表1 谷垣の市町村別相対得票率(%表示) 補欠選挙 第37 回 第38 回 第 39 回 第40 回 京都市 右京区 17.62 14.44 15.38 15.00 10.35 西京区 24.06 18.63 18.16 17.25 12.04 伏見区 22.65 13.99 15.37 15.34 11.14 福知山市 66.03 51.35 51.67 46.24 43.56 舞鶴市 28.32 16.82 17.82 18.04 15.90 綾部市 42.29 31.69 35.76 34.66 27.40 宇治市 25.69 12.58 14.07 13.05 9.95 宮津市 23.23 16.49 20.99 18.19 15.85

(12)

12 亀岡市 17.82 13.66 14.12 12.80 11.36 城陽市 26.94 12.45 12.92 13.43 10.58 向日市 21.87 16.02 16.59 16.68 11.98 長岡京市 27.30 17.79 18.21 17.09 11.96 八幡市 14.10 10.21 10.44 13.01 11.21 乙訓郡 大山崎町 23.30 16.64 17.84 18.06 12.72 久世郡 久御山町 26.94 12.24 11.32 13.13 11.46 綴喜郡 田辺町 25.86 13.79 13.53 14.29 11.06 井手町 25.58 16.29 15.85 14.43 14.01 宇治田原町 29.11 18.69 17.12 20.14 18.35 相楽郡 山城町 22.19 8.25 7.24 7.61 5.69 木津町 34.48 12.79 14.96 16.13 11.28 加茂町 29.76 7.42 6.97 8.94 7.44 笠置町 17.49 7.08 10.41 10.93 9.83 和束町 35.23 16.50 12.80 15.71 15.41 精華町 27.93 12.30 2.10 17.23 12.41 南山城村 25.49 8.92 9.68 11.58 10.32 北桑田郡 京北町 10.18 6.83 12.10 7.76 5.90 美山町 11.19 8.78 7.21 6.58 5.47 船井郡 園部町 5.42 4.61 4.40 3.49 3.20 八木町 8.68 6.07 5.73 5.76 6.47 丹波町 11.10 7.66 7.63 6.79 5.64 日吉町 5.94 4.17 3.18 3.74 3.61 瑞穂町 9.74 8.62 8.00 11.21 8.78 和知町 13.22 9.94 7.80 7.84 8.38 天田郡 三和町 54.67 44.80 47.94 46.19 42.02 夜久野町 57.59 43.30 45.60 41.13 39.97 加佐郡 大江町 57.68 51.43 54.13 50.25 46.70 与謝郡 加悦町 35.26 28.71 32.53 31.86 28.04 岩滝町 21.28 14.36 18.87 16.25 14.83 伊根町 18.97 14.63 16.11 16.11 15.46 野田川町 31.92 22.21 22.27 21.14 19.16 中郡 峰山町 22.50 20.00 20.68 22.20 19.07 大宮町 28.10 22.02 21.18 23.34 19.27 竹野郡 網野町 33.03 28.31 32.65 26.92 23.34 丹後町 32.18 24.03 28.48 24.52 22.41 弥栄町 34.32 25.18 26.67 28.09 26.99 熊野郡 久美浜町 21.02 17.78 19.13 20.84 19.18 註 1 山田(1992 p.376)を参考に作成。 表2 野中の市町村別相対得票率(%表示) 補欠選挙 第37 回 第38 回 第39 回 第 40 回 京都市 右京区 15.47 14.12 14.72 14.56 11.20 西京区 16.90 16.16 17.09 16.00 12.26

(13)

13 伏見区 16.67 12.43 12.23 12.33 9.18 福知山市 5.42 4.49 3.70 3.09 3.39 舞鶴市 33.82 25.70 27.97 24.90 21.16 綾部市 24.65 18.98 15.78 13.42 17.09 宇治市 19.33 13.15 13.09 14.09 10.70 宮津市 38.90 32.35 32.06 30.40 30.23 亀岡市 46.32 35.66 36.18 30.19 26.41 城陽市 18.57 11.77 14.55 13.69 11.19 向日市 18.81 14.60 15.76 14.72 11.86 長岡京市 20.39 15.38 17.52 15.56 12.86 八幡市 10.79 9.94 10.11 10.95 9.59 乙訓郡 大山崎町 19.22 13.44 16.18 13.32 11.59 久世郡 久御山町 18.67 13.31 16.05 15.67 12.95 綴喜郡 田辺町 21.15 14.14 13.13 14.63 12.64 井手町 25.68 18.27 16.08 16.95 17.54 宇治田原町 24.01 19.41 18.31 17.67 18.28 相楽郡 山城町 39.06 15.90 16.92 19.30 19.98 木津町 21.05 10.49 11.80 12.15 9.72 加茂町 22.19 5.75 5.76 7.65 5.96 笠置町 44.48 26.43 21.16 21.07 22.49 和束町 39.07 18.59 18.05 15.56 12.58 精華町 30.05 14.94 14.79 13.33 11.34 南山城村 35.10 16.04 18.77 22.76 17.15 北桑田郡 京北町 42.87 34.95 31.00 34.26 35.75 美山町 46.92 37.38 37.95 37.01 39.66 船井郡 園部町 71.93 62.83 63.62 59.62 59.90 八木町 65.90 55.35 55.47 49.56 49.82 丹波町 64.45 51.60 51.54 47.04 47.61 日吉町 64.77 54.70 52.24 47.68 47.82 瑞穂町 68.24 57.46 54.35 47.27 46.00 和知町 60.39 47.13 50.78 44.37 44.40 天田郡 三和町 11.64 9.25 9.75 7.93 8.57 夜久野町 5.83 5.76 4.48 3.69 6.57 加佐郡 大江町 5.49 4.28 2.83 3.90 6.47 与謝郡 加悦町 33.72 29.88 30.01 25.40 24.54 岩滝町 47.91 39.50 35.82 34.68 31.80 伊根町 43.02 40.50 45.44 45.97 43.19 野田川町 38.20 32.40 36.51 34.38 30.25 中郡 峰山町 37.85 27.61 29.96 25.55 23.99 大宮町 39.53 34.16 35.69 31.65 30.25 竹野郡 網野町 24.55 22.96 22.48 26.16 22.07 丹後町 27.06 27.83 25.20 28.02 25.78 弥栄町 28.85 30.84 32.84 27.99 23.84 熊野郡 久美浜町 36.81 30.09 29.79 29.41 25.03 註 1 山田(1992 p.376)を参考に作成。

(14)

14 図2 谷垣と野中の地盤棲み分け状況 註 1 山田(1992 p.373)を参考に作成。 註 2 上記の図は5 回の総選挙における各市町村別相対得票率の平均値をグラフ化したもの である。上記の図を出力する前に5 回すべての得票分布を出力したが、平均値である 上記の図から逸脱した結果を示したものはなかった。 6‐2 RS指数の分析 ここからはRS指数を用いることで、谷垣・野中の得票の地域偏重度を具 体的に示そう。さらにRS指数と相対得票率の関係を経年的にたどることで、 彼らの集票動向を明らかにしていこう。 図3 は谷垣・野中のRS指数の変遷を表したものである。また比較のため に自民党全候補者のRS指数の平均値を同時に示した。この図から、谷垣の RS指数は低いため、それほど地盤に依拠することもなく全選挙区から包括 的に票を集めていることがわかる。一方野中のRS指数は谷垣や自民党全候 補者平均よりも高いため、僅かながら地盤の影響を確認でき地域偏重的に票 を集めていることがわかる。しかしそれほど明確には地盤の影響を確認でき るわけではない。 そして図4 は横軸に相対得票率をとり、縦軸にRS指数をとったものであ る。二つの変数の共変関係に焦点を当てることで特定候補者の集票動向がよ り明確になる。図中の数字は何回目の総選挙であるかを示している。この図 から以下の各点を指摘することができる。第一に、谷垣・野中における二つ の変数の変動は極めて似ていることから、彼らの集票動向は同じであること。

(15)

15 第二に、谷垣・野中の補欠選挙における相対得票率だけが突出して高いこと は「自民党現職代議士の死去」というセンセーショナルな出来事が有権者に 図3 谷垣・野中及び 全自民党候補者のRS 指数

RS 0.4 野中 谷垣 0.3 自民党全候補者平均 0.2 0.1

補欠 37 38 39 40

(総選挙回数) 図 4 谷垣・野中・共産党候補者のRS と相対得票率 RS 野中 0.3 谷垣 共産党 40 37 補 0.2 39 38 40 37 39 38 補 0.1 38 補 39 40 37 10 12 14 16 18 20 22 24 26 (%) 註 1 第37 回総選挙だけ共産党は二人の候補者を擁立させた。このため補欠選挙から第 37 回に

(16)

16 かけて2 本の直線が描写されるはずだが、両者の得票数をあわせて一本の直線で表した。こ れは、本稿では共産党の候補者個人ではなく政党に焦点を当てているからである。 与えた影響を大きく反映していること。(5) 第三に、40 回総選挙を見る限り、 谷垣・野中は相対得票率を下げRS指数を上げているが、共産党候補者は相 対得票率を上げRS指数を下げていることから、共産党候補者の集票動向が 谷垣・野中のそれに少なからず影響を与えること。第四に、谷垣・野中の推 移直線はわずかながら左上がりを表していることから、得票率の下降ととも にRS指数が上昇しているわけで、「地元回帰」の傾向を示していること。(6) 第五に、谷垣・野中の相対得票率だけに焦点を当てたとき、総選挙回数を重 ねるにつれてその数値は次第に低下していること、がわかる。 以上のように、RS指数を採用することで、谷垣・野中の「地盤」がどの 程度彼らの集票動向に影響を与えているか見てきた。その結果彼らは自身の 地盤から集中的に得票しているにも関わらず、RS指数の変遷からはそれら の影響を明瞭に確認することができなかった。しかし相対得票率とRS指数 という二つの変数の変動を経年的にたどることで、谷垣・野中と共産党候補 者の集票動向に少なからず関係があることが確認できた。

7.結論

本稿は、衆議院京都府第2 区補欠選挙(1983 年)と第 37 回(1983)から第 40 回(1993 年)において自民党候補者である谷垣禎一と野中広務の「地盤」 の存在を確認するため、得票データの時系列分析による検討を行った。分析 によって明らかになったことは以下の各点である。 (1)谷垣・野中の「地盤」の存在が確認された。彼らは出身地を中心とした 地域を地盤としている。そしてその地域から集中的に得票することで安定的 当選を果たしている。 (2)谷垣・野中の間で、地理的に地盤の棲み分けを行っているが確認された。 (3)候補者個人の得票の地域偏重度を測定するRS指数を用いて、谷垣・野 中における「地盤」の存在がどの程度彼らの集票動向に影響を与えるのか見 たが、その影響は明確に確認することはできなかった。 (4)共産党候補者の集票動向が、谷垣・野中のそれに少なからず影響を与え ている。

(17)

17 (5)谷垣・野中は当選回数の増加とともに相対得票率を下げRS指数を上げ ていることから、彼らの集票動向は「地元回帰」の傾向を示している。 (6)谷垣・野中の相対得票率だけに焦点を当てたとき、総選挙回数を重ねる につれてその数値は次第に低下している。 これらを踏まえると、本稿の結論は第 3 節で掲げた仮説を確認できたとい うことになる。 上述した(3)にも示したように、RS指数の分析のもとでは「地盤」の影 響を明確に確認することができなかった。そもそも初当選における谷垣・野 中のRS指数は低い数値を示している。(7) 水崎・森(2007) によれば、例え ば図4 において、一般に新人候補者は得票率も低く得票地域も限定的である ために、左上にプロットされる傾向があるとしている。しかし特殊な選挙状 況であった補欠選挙を除いても谷垣・野中のプロット位置は中央下である。 これは彼らの政治的キャリアと大きく関係している。 谷垣は二世議員である。父 谷垣専一によって形成された地盤を引き継い だことにより、RS指数は低い数値を示している。また、谷垣は初出馬から 連続当選を果たしていることから、地盤の継承はある程度成功したことが推 測される。 また、野中は地方政治経験者である。初出馬以前、彼は園部町議会議員・ 園部町長・京都府議会議員・京都府副知事など32 年にわたり京都府の地方 政治活動に携わってきた。その過程で形成された支持を基盤として国会議員 選挙へと進出してきた。これによって、新人候補者でありながらRS指数は 低い数値を示していると推測される。 以上、本稿の分析結果が示唆するところについて述べてきた。今後「地盤」 など、自民党候補者独特の集票構造の研究が進むことを期待して本稿を閉じ ることにする。 (1) 1983 年 8 月 7 日の衆議院京都府第二区補欠選挙は、現職代議士が死亡 したことにより欠員が生じたために行われた選挙である。中選挙区制下で は、定数に関わらず一律に「欠員2」になった時点で補欠選挙が行われる。 またこのとき死亡した現職代議士は二人とも自民党議員であった。一人 は前尾繁三郎である。彼は東大卒業後、大蔵省(現在の財務省)に入り主 税・造幣各局長を経て、第24 回総選挙(1949 年)に初当選以来、連続 12 回当選を果たしている。その間通産・国務・法務の各大臣、自民党幹事長 などを歴任した大物議員である。もう一人は谷垣禎一の父 谷垣専一であ る。彼も東大卒業後、農林省に入り、第29 回総選挙(1960 年)に初当選以

(18)

18 来、8 回当選(第 34 回に一度落選)を果たしている。その間建設・厚生政 務次官、文部大臣などを歴任した。 (2) 1983 年における京都府の市区町村地図を以下に記しておく。 図5 京都府の市区町村地図(1983 年) 出所:『全国市町村要覧』 (3) 小林(1985) は、社会経済データに基づき〈都市―農村〉を表す主成分 値によって衆議院130 選挙区の地域特性を検討している。その主成分値は 【強都市型】から【弱農村型】の 7 類型化されている。そして、この類型 に従って、1960 年(昭和 35 年)から 1980 年(昭和 55 年)までの期間を一 定の尺度に基づいて区分し、経年的な変化を分析している。それによると 京都2 区は、1960 年については【弱農村型】であったが、1965 年には【平 均型】、1970 年には【弱都市型】、1975・80 年には【都市型】と、年月を 重ねるごとに都市化している。 (4) 建林(2004) によれば、中選挙区制下における自民党議員の票割りは、 各候補者が選挙区を地理的に分割しそれを縄張りとして得票する「地域割 り」 と各候補者が選挙区全体において政策空間上で棲み分けを行う「セ クター割り」の二つがあるとした。どちらも重要な得票戦略であるが、本 稿では後者の分析を行っていない。これは時間的な制約などによるもので あり将来の課題にしておきたい。 (5) 脚注 1 参照。

(19)

19 (6) 水崎・森(2007) p.61-63 参照。 (7) 5 回の選挙における谷垣・野中のRS指数を以下に記しておく。 表 3 5 回の選挙における谷垣・野中のRS指数 参考文献リスト 市川太一 1990 『世襲代議士の研究』 日本経済新聞社。 京都府選挙管理委員会 1983 1986 1990 1993『衆議院議員総選挙の記 録』 京都府選挙管理委員会。 京都府選挙管理委員会 1979 1983 1986 1990 1993『衆議院議員総選 挙公報』京都府選挙管理員会。 小林良彰 1985 『計量政治学』 成文堂。 ジェラルド・カーティス 1967 『代議士の誕生』 サイマル出版会。 自治省行政局振興課(編) 1983 『全国市町村要覧』 第一法規出版。 建林正彦 2004 『議員行動の政治経済学』有斐閣。 水崎節文・森裕城 2007 『総選挙の得票分析:1958-2005』 木鐸社。 三宅一郎 1989 『投票行動』 東京大学出版会。 三宅一郎 1990 『政治参加と投票行動』 ミネルヴァ書房。 山田真裕 1992 「選挙地盤と得票の動態 橋本登美三郎と額賀福志郎を 中心に」『筑波法政』第15 号。

(20)

20

雨の日の投票行動

―京都府に住む有権者の投票行動―

村上 春佳

. はじめに

雨の日の選挙で投票率が下がることは一般的によく言われる議論である。雨が降 ると傘が必要になることや服や靴が濡れるという点で人々は雨に対してコストを感 じる。実際、私も雨が降る日に外に出かけることは快晴の日と比べて面倒だと感じ る。もし選挙の日に雨が降れば、選挙に行くことが面倒だと感じるであろう。これ は私だけでなく、ほとんどの人に当てはまるのではないだろうか。雨は有権者に対 して棄権を促がす要因の一つであるだろう。 しかし果たして全ての有権者が同じように雨の影響を受けるのだろうか。政治に 対する意識の強さや政党支持度などは有権者により異なる。様々な有権者がいる中 で皆が同じように雨の影響を受けるとは考えにくい。雨が降ることで有権者は投票 行動に影響を受けるがその影響は有権者によって異なるのではないだろうか。 本稿の目的は雨による投票率への影響をアグリゲートデータを用いた分析によ り検証することである。分析にあたり、アグリゲートデータであるということから 有権者個人ではなく各地域単位で比較を行なう。各地域にはそれぞれその地域特有 の特色がみられ、政治に対する意識の強さや政党支持度は各地域により異なる。こ れらの地域は果たして同じように雨の影響を受けているのであろうか。

. 先行研究

雨の日の投票行動についての先行研究としては、田中善一郎『日本の総選挙 1946-2003』が挙げられる。台風 18 号の直撃により東海地方や関東地方に暴風雨警 報が出された 1979 年 10 月 7 日の総選挙について、雨と投票行動の関係が分析され ている。台風の結果、投票率は当時では大変低い結果の 68.01%となった。選挙区 単位で比べた結果降水量が高くなればなるほど投票率の低下が見られた。ただどの 選挙区においても降水量が増えるにつれて同じように投票率が下がったわけでは

(21)

21 なかった。田中は選挙区を都市型と農村型の4つに分けて分析を行なった結果、大 都市と比べて農村地域は雨に対して抵抗力があることがわかった。大都市になれ ばなるほど投票率は低下した。また雨が降ったことにより得した政党と損した政党 が存在したことを実証している。特に自民党は大損をして共産党と公明党は得をし た。しかし自民党においては都市部では大きく票を落としたが農村部における自民 党の票は非常に固いことがわかる。 この先行研究について二点疑問を感じた。一点目は、一日の降水量でしか見てい ないということである。例えば午前中は大雨であったが午後からは快晴になったと いうことも考えられる。一日の降水量を見るだけでは雨がどのような時間配分で降 ったのかということがわからない。よって雨の影響を明確に見ることはできない。 二点目は、選挙区単位で見ているということである。選挙区単位では幅がとても広 く、その地域特有の特色は見られないのではないだろうか。

. 研究意義

本稿では京都府に限定して各市区郡の一時間ごとの降水量と投票率を比較して いく。各市区群単位で細かく見ていくことで二つのことがわかる。一点目はその地 域特有の特色を見ることができるということ。二点目は一時間ごとに見ることで明 確に雨の影響を見ることができるということ。これらは田中氏の分析では配慮され ていなかったため本稿には意義があると考える。

. 命題

命題は「京都府において投票率に対する雨の影響があまり見られない地域と大き く見られる地域がある」(なぜ京都府において投票率に対する雨の影響があまり見 られない地域と大きく見られる地域があるのか)である。雨は投票率に影響を与え るがどの地域でも同じように影響を与えているわけではない。雨が降ることでそれ ぞれの地域で投票率の減少に差が見られるのではないだろうか。

Ⅴ. 仮説

雨が降ることでそれぞれの地域で投票率の減少に差が見られることの理由は、そ れぞれの地域で特有の特色を持っているためである。本稿では特に公明党・共産党 支持者の割合と人口密度に着目して考える。これらは雨による投票率の減少に影響 を与えると考える。つまり仮説は以下の2 つとする。 ① その地域特有の政党支持の影響 公明党・共産党支持者が多い地域では雨が降っても投票率があまり下

(22)

がらない。公明党・共産党支持者は他の党の支持者と比べると政党支持 度が大変強い。公明党・共産党支持者は投票に関してコストを感じにく く、たとえ雨が降ろうとも投票に行くのである。公明党・共産党支持者 が多い地域と少ない地域では雨による投票率の変化に差が見られるので はないだろうか。 ② 都市地域と農村地域との差 農村地域の人々は雨が降っても投票に行くが都市の人々は雨が降ると 投票に行かなくなる。農村地域の人々はより地域の人々との繋がりが強 いことや、一戸建てに住み長年その地域に住んでいてこれからもその地 域に住み続ける人が多い。これらの理由から投票へ行くことは重要であ ると感じているため投票にコストを感じにくい。よって農村地域の人々 はたとえ雨が降ろうとも投票に行く。それと比べて都市部に住む人々は 近所付き合いが薄いことや、その地域に長く住んでいない人が多いとい う点などから政治に対する関心が低く投票にコストを感じやすい。その ため農村部と都市部では雨による投票率の変化に差が見られるのではな いだろうか。

Ⅵ. 分析枠組み

(1) 使用するデータ ①京都府選挙管理委員会選挙の記録* ・時間別投票状況に関する調 ・市区町村別党派別投票数に関する調 ②気象庁 ・一時間ごとの地域別降水量 投票率は二時間単位で出ている時間帯もあるため、すべて一時間単位 に揃えることが必要である。二時間単位でしか出ていない投票率は 2 で 割り一時間ごとに分ける。投票率が二時間単位で出ている時間帯に限り 降水量も揃えるために二時間分を足して 2 で割り一時間ごとに分ける。 小数点第三位以下を四捨五入。 ③京都府総務部統計課 ・市区町村別の面積・人口・人口密度 1990 年のデータを使用。郡部の人口密度はデータがないため、人口 面積で人口密度を計算する。小数点第三位以下を四捨五入。 (2) 分析対象 京都府で一番最近雨が降った 1993 年の衆議院議員総選挙について分 析を行なう。分析にあたり雨がほとんど降らなかった1990 年の衆議院議

(23)

員総選挙との比較を行なう。 分析の作業上対象地区は京都府に限定する。京都府を33 の地域に分けて分析を 行なう。 降水量については京都府の 15 の観測所データを使用する。33 の地域にそれぞ れ一番近い観測所のデータを適用。一つの地域に複数の観測所が存在する地域はよ り人口が集まっている土地周辺の観測所を用いる。船井郡に関しては面積が広く判 断に困ったため3 つの観測所(本庄・須知・園部)のデータの平均をとる。また花背 峠と鷲峰山の観測所に関しては 1990 年の観測を行なっていないため、1990 年の 降水量についてはそれぞれ一番近い観測所である京北と京田辺のデータを使用す る。地域と観測所の詳細は以下の通りである。 京都 市 その他 の市 郡部 地域名 観測所 地域名 観測所 地域名 観測所 1.北区 京都 12.福知山市 福知山 22.乙訓郡 長岡京 2.上京区 京都 13.舞鶴市 舞鶴 23.久世郡 長岡京 3.左京区 花背峠 14.綾部市 綾部 24.綴喜郡 京田辺 4.中京区 京都 15.宇治市 鷲峰山 25.相楽郡 京田辺 5.東山区 京都 16.宮津市 宮津 26.北桑田郡 美山 6.山科区 京都 17.亀岡市 長岡京 27.船井郡 本・須・園 7.下京区 京都 18.城陽市 京田辺 28.天田郡 福知山 8.南区 京都 19.向日市 長岡京 29.加佐郡 福知山 9.右京区 京北 20.長岡京市 長岡京 30.与謝郡 峰山 10.西京区 京都 21.八幡市 長岡京 31.中郡 峰山 11.伏見区 長岡京 32.竹野郡 間人 33.熊野郡 峰山 (3) 従属変数 従属変数は晴れ選挙である 1990 年から雨選挙である 1993 年にかけての投票率 の減少量をとる。単に 1993 年の投票率としない理由は地域により元々投票率が高 い地域と低い地域があるためである。雨選挙による前回選挙からの減少量を従属変 数とすることにより、元々存在する各地域の投票率の差をコントロールすることが 可能である。

(24)

(4) 独立変数 この分析における独立変数は7つある。それらは単に雨による投票率への影響 を見るためのもの、地域の公明党・共産党支持者の割合による投票率への影響、そ して人口密度による投票率への影響を見ているものがある。また、これらに付け加 えて公明党支持者の割合・共産党支持者の割合・人口密度による雨の影響を明確に するために、それぞれ雨による重み付けを行ったものも独立変数に投入する。それ では一つずつの独立変数を詳しく見ていく。 1. 地域別・時間別の降水量の差 1993 年の降水量から 1990 年の降水量を地域・時間ごとに引いたもので ある。単に1993 年の降水量とするのではなく差をとる理由は、晴れ選挙で ある1990 年でもある地域ある時間帯だけわずかに雨が降ったということも 考えられるためである。 2. 地域別公明党支持度 1993 年の地域ごとの公明党絶対得票率を公明党支持度とする 3. 地域別共産党支持度 1993 年の地域ごとの共産党絶対得票率を共産党支持度とする 4. 地域別人口密度 5. 雨による重み付けをした地域別公明党支持度 6. 雨による重み付けをした地域別共産党支持度 7. 雨による重み付けをした地域別人口密度 5・6・7 で雨による重み付けを行なうことは従属変数に対する雨の影響を より明確に見ることを期待しているためである。 (5) 分析手法 分析手法については重回帰分析を使用する。

. 分析結果

分析の結果は表1を参照 結果を見ると雨による重み付けを行なっていないモデルの R2 乗値は 0.069 であ ったが雨による重み付けをすることで 0.201 となりモデルの説明力が上がってい ることがわかる。細かく結果を見ていくと、雨による重み付けをした共産党支持度 と雨による重み付けをした人口密度は有意確率が大変低い数値で出ている。 それぞれ個別に見ていくと、雨による重み付けをした共産党支持度は-1.300 と

(25)

マイナスの方向に結果が出ている。つまり共産党支持度が高い地域であればあるほ ど雨が降っても投票率は下がらなかったと言える。また雨による重み付けをした人 口密度に関しては 0.377 とプラスの方向に結果が出ている。つまり人口密度が高い 地域であればあるほど雨が降ると投票率は下がったと言える。 分析の結果、二つの仮説を実証することができた。つまり仮説①の雨による投票 率への影響は地域特有の政党支持度により差があるということと、仮説②の農村地 域と都市部で差があるということである。しかし仮説①では共産党支持度のみ実証 ができ、公明党支持度に関しては実証をすることはできなかった。これは両党の支 持者の質が異なるからかもしれない。 表1:雨の投票率への影響 雨による重み付けなし 雨による重み付けあり 標準化係数 有意確率 標準化係数 有意確率 降水量の差 -0.270 0.000 0.314 0.490 公明党支持度 -0.023 0.665 -0.037 0.513 共産党支持度 -0.075 0.162 0.004 0.944 人口密度 0.012 0.814 -0.170 0.003 雨*公明党支持度 ― ― 0.528 0.054 雨*共産党支持度 ― ― -1.300 0.000 雨*人口密度 ― ― 0.377 0.000 調整済みR2 乗値 0.069 0.201 N=363 従属変数:1990 年から 1993 年にかけての投票率の減少量

. 結論

地域別・時間別に降水量と投票率の関係を見たことでより明確に雨の影響を見 ることができたと考えている。分析の結果雨による影響を受けやすい地域と受けに くい地域が存在するということがわかった。それはそれぞれ各地域の特有の特色が あるため、各地域により雨による影響の差が出たのである。地域の特色を見るのに 選挙区単位では範囲が広すぎる。地域の特色はより狭い範囲で見なければ見えてこ ない。また、一日の降水量と一日の投票率を見るだけでは雨の影響は見ることがで きない。降水量を一時間ごとで見ることにより明確に投票率への影響を見ることが できた。

(26)

本稿の問題点は分析において投票率に与えうる他の要因の影響について見てい ないことである。今回は独立変数に挙げたもののみの影響しか見ていないため他の 要因をコントロールしていない。また京都府に限定しているためケース数が少ない。 本来は全国単位で調べるべきであり、全国で調べれば違う結果が出るかもしれない。 これらは今後の課題であり、改善していきたいと考えている。 * データ収集をするにあたり、協力してくださった京都府選挙管理委員会の皆 様に感謝いたします。 参考文献 蒲島郁夫 1998 「政治参加」東京大学出版会。 田中善一郎 2005 「日本の総選挙 1946-2003」東京大学出版会。 参考ウェブサイト 気象庁「気象統計情報」 http://www.jma.go.jp/jma/menu/report.html 京都府ホームページ 「市区町村のデータ」 http://info.pref.kyoto.lg.jp/stat/StatDBCitySelectPage.aspx Google 「マップ」 http://maps.google.co.jp/maps?tab=wl

(27)

選挙運動の効果

なぜ選挙運動は新しい意思決定をする際、

投票先決定の決め手に欠ける印象を与えるのか

小川久美子

1. はじめに

本稿の目的は選挙運動の効果を明らかにすることである。筆者は支持政党を持っ ているわけでもなく、投票先を前々から決めているということもない。選挙になる といつも投票先に迷う。投票先を決めようとポスター掲示場に行くが、候補者の顔 写真と名前しか載っていないポスターが多く、やはり迷ってしまう。このような経 験から、選挙運動は投票先の決め手に欠けるという印象を筆者は持っている。しか し、すべての有権者が同じような印象を持っているのだろうか。筆者のような立場 の者、つまり選挙運動に接触することによって新しい意思決定をしようとする者に 対しては効果に欠けても、他の立場の者(他の立場とはどのような立場かについて は3-1で述べる)に対しては何らかの効果があるのではないかと考えた。

2. 先行研究

選挙運動の効果を分析した研究として、三宅(1989)を紹介する。三宅は、 Lazarsfeld など選挙の古典的研究の概念を用い、選挙運動の効果を「結晶化効果」・ 「補強効果」・「改変効果」の3 つに分けている。3 つの効果の定義を以下に引用する。 「活性化効果はそれまで眠っていた選挙への関心や候補者・政党への忠誠心など を、あらためて自覚させる効果である。『結晶化』は活性化効果の道程の最後の段階 である投票意図が結晶する段階を指す。補強効果とは選挙期間中に新しい意思決定 をさせるのではなく、既存の意思決定を維持強化してゆく作用である。最後に、改 変効果とはある候補者から他の候補者へ、ある政党から他の政党へ、政策争点のあ る立場から別の立場へとその内容を改変する効果である」(三宅、1989、P209)。

(28)

そしてJES 調査を使用し、7つの選挙情報メディア(後援会・個人的依頼・選挙 葉書・候補者の集会・選挙公報・テレビ政見放送・新聞の紹介記事)間で 3 つの効 果の大きさを比較している。(1) その結果は表1 のとおりである。 表1 選挙情報メディアの効果(投票候補者と一致した人のみ)(%)(三宅、P214、表 6-4 一部省略) 候補者基準* 政党基準 選挙情報メディア 結晶化** 補強 改変 結晶化 補強 改変 後援会 20 75 5 28 66 6 個人的依頼 37 55 8 43 47 10 選挙葉書 28 65 7 26 64 10 候補者の集会 14 80 6 17 76 7 選挙公報 19 72 7 23 69 8 テレビ政見放送 18 76 7 22 70 8 新聞の紹介記事 15 79 6 22 71 7 * 候補者基準は投票意図も投票も候補者,政党基準はどちらも政党名. ** 「結晶化効果」は選挙前調査で「意図なし」の人の%,「補強効果」は意図も投票も同一人( 政党 )の%,「改変 効果」は両者の異なる人の%. 出所:JES 調査. 三宅によると、結晶化効果においては「個人的依頼」の効果が最も大きく、次い で「選挙葉書」の効果が大きい。選挙葉書の結晶化効果が比較的大きいことについ ては、「選挙葉書は無差別に発送するのではなく、後援会や支持者に知人の宛名を書 いてもらうそうで、個人的依頼の一部と見ることができる」という説明がされてい る。改変効果においては、個人的依頼の効果が他の選挙情報メディアよりわずかで はあるが大きい。また改変効果が最も小さいのは「後援会」である。補強効果にお いては最も大きい選挙情報メディアは「候補者の集会」である。候補者の集会と後 援会については、「いずれも特定候補との結びつきがもともと強い人々に向けられた ものである」と説明されている。

3. 分析枠組

3‐1. 命題と仮説 本稿では、JESⅢ、特に 2003 年・2005 年衆議院選挙調査を用いる。また投票先 を候補者ではなく政党単位で分析するため、比例区を扱う。(2) 命題と仮説を以下に 示す。

(29)

命題 有権者の立場により選挙運動の効果は異なる 仮説 補強効果仮説 選挙運動に接触することで新しい意思決定をしようとする者は、選挙運動の改変 効果・結晶化効果を期待しているといえる。つまり、選挙運動の3 つの効果のうち 補強効果が最も強く、結晶化効果・改変効果が弱ければ命題は成立する。ここで1 節の「他の立場の者」は、選挙運動において補強効果を期待する者を指すと述べて おく。 3‐2. 独立変数と従属変数 独立変数と従属変数を以下に示す。 独立変数 A 党の選挙運動に接触 従属変数 A 党に投票 選挙前調査時の投票予定政党により、効果の分類をする。事前調査で A 党に投 票予定だった者がA 党の選挙運動に接触し A 党に投票した場合は、既存の意思決 定が維持または強化されているので、その効果は「補強効果」だといえる。一方事 前調査でA 党以外の政党に投票予定だった者が A 党の選挙運動に接触し A 党に投 票した場合、ある政党から他の政党へと意思が変わっているので、「改変効果」と いえる。また、事前調査時は投票先未定だった人がA 党の選挙運動に接触し A 党 に投票した場合、眠っていた意志が自覚されているので、「結晶化効果」といえる。 以下にまとめる。 3 つの効果 補強効果 A 党に投票予定→A 党の選挙運動に接触→A 党に投票 改変効果 B 党に投票予定→A 党の選挙運動に接触→A 党に投票 結晶化効果 投票先は決めていない→A 党の選挙運動に接触→A 党に投票 3‐2. 実証方法 2003 年衆議院選挙における自民党の選挙運動の効果を例に挙げて、実証方法 を述べる。まず投票予定政党を「自民党」・「その他の政党」・「未定」に振り分け、 それぞれ「1」・「2」・「3」とする。次に投票予定政党と実際の投票政党を比較する。

(30)

自民党にはもともと変数「1」があてられている。自民党に投票予定(「1」)の者が 実際に自民党に投票(「1」)していたら補強効果期待、その他の政党に投票予定(「2」) の者が実際は自民党に投票(「1」)していたら改変効果期待、投票政党は未定(「3」) だった者が実際は自民党に投票(「1」)していたら結晶化効果期待とする。ここで 「補強効果」・「改変効果」・「結晶化効果」とせずに「補強効果期待」・「改変効果期 待」・「結晶化効果期待」としているのは、この時点ではまだ選挙運動に接触・非接 触の変数を投入していないためである。 そして「自民党の選挙運動に接触」と「3 つの効果期待」をクロス集計する。つ まりここで「期待」の結果が出ることになる。例えば「補強効果期待」にあてはま る者のうち、選挙運動に接触した者が「補強効果」にあてはまる者ということであ る。反対に、「補強効果期待」にあてはまる者のうち選挙運動に接触しなかった者 については、期待がはずれたということを意味する。 最後に3 つの効果を比較するのだが、その方法を述べる。まず「3 つの効果期待」 と「選挙運動に接触・非接触」により6 つのパターンに分ける。次に 3 つの効果期 待にあてはまる者の合計人数を100 とし、6 つのパターンの人数の割合を、選挙年 度及び選挙運動の政党別に算出する。そしてそれぞれの効果期待における接触と非 接触のポイントを比較することで、効果の強さを図る。具体的には接触のポイント の方が非接触のポイントより大きく、かつその差が大きければ大きいほど、その効 果は強いとする。つまり仮説を実証するためには、「補強効果期待、接触」>「補 強効果期待、非接触」かつ「補強効果期待、接触」‐「補強効果期待、非接触」> 「改変効果期待、接触」‐「改変効果、非接触」かつ「補強効果期待、接触」‐「補 強効果、非接触」>「結晶化効果、接触」‐「結晶化効果、非接触」が成り立つ必 要がある。以下にまとめる。 手順 ①投票予定政党の分類 自民党―「1」 その他の政党―「2」 未定―「3」 ②実際の投票政党 自民党にはもともと変数「1」があてられている。 ③3 つの効果の分類 ①で「1」 ②で「1」 ならば 補強効果期待 →「1」 ①で「2」 ②で「1」 ならば 改変効果期待 →「2」 ①で「3」 ②で「1」 ならば 結晶化効果期待 →「3」 また、③で「1」・「2」・「3」をあてた補強効果期待・改変効果期待・結晶化効

(31)

果期待の変数を「効果期待自民03」とする ④クロス集計 変数「自民党選挙運動に接触」と変数「効果期待自民03」をクロス集計 ⑤3 つの効果の比較 接触 非接触 補強効果期待 a b 改変効果期待 c d 結晶化効果期待 e f 合計(N) g g を 100 とする

a>b かつ a‐b>c‐d かつ a‐b>e‐f(これを式 1 とする)であれば仮説実証 JESⅢに、「比例区で予定している投票政党」・「実際に投票した政党」・「接触し た政党別選挙運動」を問う質問文があるので、これを利用する。ただし、予定して いる投票政党についての質問文に、「未定」という選択肢がないため、「わからない」 の選択肢を代用する。 また、接触した政党別選挙運動についての質問文は、単に選挙運動に接触・非接 触を問う形ではなく、<ハガキ><新聞・ビラ><電話><演説会・街頭演説>の 4 つそれぞれの接触・非接触を問う形になっている。選挙運動の接触・非接触の 2 択で分析するために、4 つの変数を足してまとめる。その具体的な作業を述べる。 <ハガキ><新聞・ビラ><電話><演説会・街頭演説>の接触・非接触を問う質 問文は、接触に「1」、非接触に「0」という変数がそれぞれ与えられている。そこ で 4 つの変数を足した「合計の変数」を新たに作る。そして合計 0 を「0」とし、 合計1・2・3・4 を「1」とする。このようにして、接触か非接触かの 2 択にする ことが可能である。 分析対象とする政党は、自民党・民主党の2 つのみとする。他の政党については 実際投票した回答者が少なく、その中から3 つの効果いずれかが期待される者、さ らに選挙運動に接触した者に絞り込むと、サンプル数がごくわずかになるため分析 に不適切だと判断した。例えば2003 年衆議院選挙調査において 3 つの効果が期待 される者のうち、自民党・民主党のハガキに接触した者はそれぞれ318・156 に対 して、公明党は25、社民党は 13、共産党は 14 である。

(32)

4. 分析

分析結果は表2 のとおりである。「接触」の行のカッコ内の数字は、「非接触」と のポイント差である。 表2 からわかることを 2 点述べる。第 1 に自民党の選挙運動を見ると、2003 年・ 2005 年とも 3 つの効果すべてにおいてプラスの差が出ている。また、補強効果の ポイント差が他の2 つのポイント差よりも大きい。したがって式 1 は成立し、仮説 は実証されたといえる。 第2 に民主党の選挙運動を見ると、3 つの効果すべてにおいてプラスの差が出 ているわけではない。2003 年については 3 つの効果ともマイナスの差が出ている。 2005 年については結晶化効果のみマイナスの差が出ており、式1は成立する。し かし、補強効果のポイント差が+7 であるように、自民党の場合と比べて小さく、 仮説が実証されたとはいいにくい。 表2 選挙運動の効果 (%) 自民党 民主党 2003 年 2005 年 2003 年 2005 年 接触 非接触 接触 非接触 接触 非接触 接触 非接触 補強効果期待 50(+25) 25 53(+23) 30 28(‐3) 31 37(+7) 30 改変効果期待 4(+1) 3 4(+2) 2 8(‐3) 11 6(+1) 7 結晶化効果期待 10(+2) 8 6(+3) 9 8(‐5) 13 8(‐6) 14 合計(N) 664 558 516 382

5. 結論と問題点

以上より、仮説は部分的に実証された。つまり自民党の選挙運動については補強 効果が最も強いが、民主党の選挙運動については一概には言えないということであ る。この原因は不明であるが、政党により選挙運動の効果は異なるということはい えるであろう。 問題点も述べる。第1 に 3 つの効果の人数比が、期待の時点で大幅にばらついて いるということだ。3 つの効果の人数比が期待の時点ではほぼ同じくらいであるが、 選挙運動接触により差が出るということを筆者は期待していた。 第 2 に選挙運動以外の影響の排除である。三宅(1989)にもあるように、選挙 情報メディアは後援会・個人的依頼・テレビ・新聞など、選挙運動以外にも多数あ る。しかも三宅(1989)によると、個人的依頼が最も特徴的だという。本稿では 選挙運動以外の選挙運動は一切考慮していない。民主党に投票予定であったが、自

(33)

民党投票への個人的依頼を受け、加えて自民党の選挙運動に接触し、最終的に自民 党に投票した場合を例に挙げる。おそらくこの場合、この有権者が投票先を変更し たのは、選挙運動の影響というよりも個人的依頼の影響を受けたからだと多くの人 が感じるであろう。しかし本分析では、この場合も選挙運動の改変効果とされてい る。これは、個人的依頼を受けたが、選挙運動接触により依頼どおりに投票しない ということもあり得るので問題ないと考えたゆえの分析手法である。が、強引であ ることは否めない。 第3 に、心理的な問題である。具体例を挙げると、有権者は自分が支持している 政党の選挙運動に、支持していない政党の選挙運動より、意識的にしろ無意識的に しろ多く接触し得るということである。本稿はあくまで、接触した選挙運動の政党 と投票した政党が一致している者の中での分析なので、両者が一致していない場合 は欠損値となってしまう。欠損値が少なければ少ないほど分析結果の正確さは増し、 やはりこのことは問題である。

6. おわりに 選挙公営制度について

以上のように問題はさまざまあるが、選挙運動において補強効果が最も強いとい うことが、部分的ではあるが実証された。補強効果は確かに選挙運動の効果である。 しかし結局、補強効果にあたる人は、選挙運動接触前と後で投票先が変わっていな い。このことを考えると、改変効果や結晶化効果の高い方が「役に立つ」と筆者は 考えてしまう。改変効果を上げるのは難しいであろうが、結晶化効果については選 挙運動の行い方により上がり得るのではないだろうか。そこで最後に、現在の選挙 運動を形作っている、選挙公営制度について述べ、本稿を終わらせる。 選挙公営制度とはその名のとおり選挙を公営で行う制度であり、「金のかからな い選挙の実現と候補者間の選挙運動の機会均等を図るための手段として」(白鳥 1997)各国で導入されている。「日本の選挙法の特色は、選挙運動ががんじがらめ に規制されていることと、選挙公営が発達していることである。これらは表裏の関 係にあり、規制強化の代償として公営化が進むということになっている」(阪上 1930)。日本で行われている選挙の公営の種類としては、表 3 のとおりである。 最近の例としては、「政見放送のビデオ作成費が政令で定める範囲で公費負担さ れることになったこと、および1993 年 3 月に東京都が『東京都議会議員及び東京 都知事の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例』を制定して以降、選挙用 自動車の使用とポスターの作成について条例で公費負担する自治体が増えている ことである。1995 年の 2 月までに 47 都道府県が条例を制定した外、12 の政令指 定都市のすべてが制定済みである」(白鳥 1997)。

(34)

以上白鳥(1997)・阪上(1990)から、日本は公営選挙において「最先進国」の 1 つであることがわかる。また阪上は「選挙運動に最も大きな国の助成が行われて いる国」であることを指摘しており、以下のように述べている。 「もし選挙運動が公営によるものだけで行われ、金のかからぬ選挙が実施されて いるのであれば、私はこの方式に賛成であり、ある意味で理想的な選挙の行われて いる国と評価できる。しかし、実際には公営選挙以外に莫大な選挙資金が投入され、 金権選挙が各地で展開されている。すなわち、国民の貴重な血税が、無駄に使われ ているといっても過言ではない程、金のかからぬ選挙を名目とする選挙の公営化の 効果はあがっていない。(中略)選挙の公営化は、国民の血税を使って行われるの であり、拡張すればよいというのではなく、合理化できるものはすべきであり、再 検討が必要である」(阪上、1990、P292-293)。 筆者も阪上の意見に賛成であり、特に選挙運動の合理化により結晶化効果を強め ることが必要だと考える。 表3 選挙公営の種類 (白鳥、P250 表 5) 衆 議 院 議 員 (選挙区) 衆 議 院 議 員 (比例) 参 議 院 議 員 (比例) 参 議 院 議 員 (選挙区) 都 道 府 県 知事 都道府県 議会議員 市 長 市議会議 員 1 選管がその全部を行うもの 投票記載所の氏 名等の掲示 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 2 内容は候補者等が提供するが、その実施は選管が行うもの ポスター掲示場 の設置 ◎ ◎ ◎ □ □ □ 選挙公報の発行 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ □ □ □ 3 選管は便宜を提供するが、その実施は候補者が行うもの 個人演説会の公 営施設使用 ◎ △ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 4 選管は実施には直接関与しないが、その経費の負担のみを行うもの 選挙運動用自動 車の使用料 ○ △ ○ □ □ □ □ 通常葉書の交付 (郵送代) ◎ △ △ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 葉書・ビラの作 成費 ○ △ △ ○ △ △ △ △

参照

関連したドキュメント

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

ロボットは「心」を持つことができるのか 、 という問いに対する柴 しば 田 た 先生の考え方を

わからない その他 がん検診を受けても見落としがあると思っているから がん検診そのものを知らないから

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

と言っても、事例ごとに意味がかなり異なるのは、子どもの性格が異なることと同じである。その

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

FSIS が実施する HACCP の検証には、基本的検証と HACCP 運用に関する検証から構 成されている。基本的検証では、危害分析などの

脱型時期などの違いが強度発現に大きな差を及ぼすと