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おわりに 選挙公営制度について

ドキュメント内 Microsoft Word 年度ゼミ論集完成版v2 forHP.doc (ページ 33-37)

以上のように問題はさまざまあるが、選挙運動において補強効果が最も強いとい うことが、部分的ではあるが実証された。補強効果は確かに選挙運動の効果である。

しかし結局、補強効果にあたる人は、選挙運動接触前と後で投票先が変わっていな い。このことを考えると、改変効果や結晶化効果の高い方が「役に立つ」と筆者は 考えてしまう。改変効果を上げるのは難しいであろうが、結晶化効果については選 挙運動の行い方により上がり得るのではないだろうか。そこで最後に、現在の選挙 運動を形作っている、選挙公営制度について述べ、本稿を終わらせる。

選挙公営制度とはその名のとおり選挙を公営で行う制度であり、「金のかからな い選挙の実現と候補者間の選挙運動の機会均等を図るための手段として」(白鳥

1997)各国で導入されている。「日本の選挙法の特色は、選挙運動ががんじがらめ

に規制されていることと、選挙公営が発達していることである。これらは表裏の関 係にあり、規制強化の代償として公営化が進むということになっている」(阪上

1930)。日本で行われている選挙の公営の種類としては、表3のとおりである。

最近の例としては、「政見放送のビデオ作成費が政令で定める範囲で公費負担さ れることになったこと、および1993年3月に東京都が『東京都議会議員及び東京 都知事の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例』を制定して以降、選挙用 自動車の使用とポスターの作成について条例で公費負担する自治体が増えている ことである。1995年の2月までに47都道府県が条例を制定した外、12の政令指 定都市のすべてが制定済みである」(白鳥 1997)。

以上白鳥(1997)・阪上(1990)から、日本は公営選挙において「最先進国」の 1つであることがわかる。また阪上は「選挙運動に最も大きな国の助成が行われて いる国」であることを指摘しており、以下のように述べている。

「もし選挙運動が公営によるものだけで行われ、金のかからぬ選挙が実施されて いるのであれば、私はこの方式に賛成であり、ある意味で理想的な選挙の行われて いる国と評価できる。しかし、実際には公営選挙以外に莫大な選挙資金が投入され、

金権選挙が各地で展開されている。すなわち、国民の貴重な血税が、無駄に使われ ているといっても過言ではない程、金のかからぬ選挙を名目とする選挙の公営化の 効果はあがっていない。(中略)選挙の公営化は、国民の血税を使って行われるの であり、拡張すればよいというのではなく、合理化できるものはすべきであり、再 検討が必要である」(阪上、1990、P292-293)。

筆者も阪上の意見に賛成であり、特に選挙運動の合理化により結晶化効果を強め ることが必要だと考える。

表3 選挙公営の種類 (白鳥、P250表5) 衆 議 院 議 員

(選挙区)

衆 議 院 議 員 (比例)

参 議 院 議 員 (比例)

参 議 院 議 員 (選挙区)

都 道 府 県 知事

都道府県 議会議員

市議会議 1選管がその全部を行うもの

投票記載所の氏 名等の掲示

◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

2内容は候補者等が提供するが、その実施は選管が行うもの ポスター掲示場

の設置

◎ ◎ ◎ □ □ □

選挙公報の発行 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ □ □ □

3選管は便宜を提供するが、その実施は候補者が行うもの 個人演説会の公

営施設使用

◎ △ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

4選管は実施には直接関与しないが、その経費の負担のみを行うもの 選挙運動用自動

車の使用料

○ △ ○ □ □ □ □

通常葉書の交付 (郵送代)

◎ △ △ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

葉書・ビラの作 成費

○ △ △ ○ △ △ △ △

立札・看板の作 成費

○ △ △ ○ △ △ △ △

ポスター作成費 演説会告知用 選挙運動用

○ △

新聞広告 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ △ △ △

政見放送 ビデオの作成費

◎ ◎ ◎ ◎

経歴放送 ◎ ◎ ◎

特殊乗車券の無 料交付

◎ ◎ ◎

◎ 公営で行われるもの

○ 供託物が国庫に帰属することとならない場合に行われるもの

△ 公営では行われないもの

□ 都道府県または市町村の条例により行うことができるもの 空欄は制度外のもの

(1) 日本人の選挙行動調査(JES I)」は、JES I 研究会 が実施された世論調査であ る。それをレヴァイアサン・データ・バンク(LDB, 木鐸社)より同志社大学が購 入したものを使用した。

(2) 「21世紀初頭の投票行動の全国的・時系列的調査研究 (JES III SSJDA版),

2001-2005」 は、JES III 研究会が実施された世論調査である。その個票 デー

タについて、東京大学社会科学研究所附属日本社会研究情報センター・データア ーカイブ(Social Science Japan Data Archive)より教材としての利用許可(申 請者:西澤由隆教授)を得たものを使用した。

参考文献

阪上順夫 1990『現代選挙制度論』 政治広報センター。

白鳥令(編) 1997『選挙と投票行動の理論』 東海大学出版会。

三宅一郎 1989『投票行動』 東京大学出版会。

綿貫譲治・三宅一郎・猪口孝・蒲島郁夫 1986『日本人の選挙行動』

東京大学出版会。

個人主義者の投票行動

〜なぜマスコミの報道で投票先が変わるのか〜

坂本 裕嗣

1. はじめに

近年、ある問題をニュース等で耳にする機会が増えたように思われる。それは、社 会全体の利益よりも個人の利益を優先する個人主義的行動をとる人が増えていると いう問題である。例えば、給食費を支払う余裕があるにもかかわらず、社会の利益の ことを考えずに個人の利益ばかりを考えて支払わない人がいる問題などである。

実際、日本の社会意識はどのようになっているのだろうか。図1を見てみると、国 民全体の利益よりも個人個人の利益を大切にすべきだと答えた人の割合は、平成6年 を境に現在まで3割前後を推移している。一方、個人の利益よりも国民全体の利益を 大切にすべきだと答えた人の割合は、平成3年以降、明らかに右肩下がりである。た だ、平成18年は例外的に国民全体の利益を考える人の割合が多い。つまり、国民全 体の利益を大切にする人の割合が減ってきているため、個人の利益を大切にする人の 割合が増えてきているように思われているのだ。

図1 社会意識に関する世論調査

出展 内閣府大臣官房政府広報室世論調査担当

しかし、国民全体の利益よりも個人の利益を大切にしている人の割合は、3割前 後もいるのだ。日本人の人口が大体1億3000万人なので、個人の利益を大切に

している人は約4000万人もいることになる。

その中には選挙権を持つ人も大勢ふくまれている。選挙権を持ち、かつ個人の利 益を大切にしている人の投票への影響は、無視できないほど大きなものと思われる。

なぜなら選挙において彼らは、例えば消費税の場合、国民全体の利益のため消費税 を上げようとしても個人の利益が損なわれるため反対票を投じるだろう。逆に消費 税を減らすなら個人の利益が増すため賛成票を投じるだろう。また、彼らの利益に 関係のない選挙の場合、無関心・棄権すると思われるからである。

今回は、選挙権を持つ個人主義の人がどのような投票行動を行うのか調べていき たい。それにはまず個人主義とは何かを考えねばならない。

ドキュメント内 Microsoft Word 年度ゼミ論集完成版v2 forHP.doc (ページ 33-37)

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