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心臓

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心臓と大血管 予習

引き出し線の構造物の名称を記入。矢印は血流の方向。 左図:心臓 右図:大血管

人体解剖学1 各論 2015

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1.心臓の概要

握り拳やや大。 男性 280g、女性 230g。 縦隔にある。 心臓の上限は第3肋骨、右は胸骨右縁、左(~左下)は左第5肋間の鎖骨中央線よりやや内側 (上下)大静脈 → 右心房 → 三尖弁 → 右心室 → 肺動脈弁 → 肺動脈(肺循環、小循環) → 肺 → 肺静脈 → 左心房 → 僧帽弁 → 左心室 → 大動脈弁 → 大動脈 (体循環、大循環) → 1-1.外形 : 円錐形。 ① base : 上端の広い部分。後上右を向く。 ② apex : 下方の尖った部分。前下左を向く。 心尖は左心室で形成される。 心尖拍動は左第5肋間の鎖骨中央線やや内側 ③冠状溝 coronary sulcus : 心房と心室の境界。

④前室間溝/後室間溝:anterior /posterior interventricular sulcus : 右心室と左心室の境界。 ⑤ auricle : 右心耳と左心耳。右心房と左心房が突出した部分。 1-2.壁の構造 ① endocardium : 最内層の薄い膜。 内皮により覆われる。(弁は心内膜のヒダ) ② myocardium : 心筋組織よりなる。 心筋は列を作って並び線維輪より起こり 線維輪に終わる。 *心房筋 : 右心房と左心房の両方を包む 外層(浅層)とそれぞれの心房を独立して 包む内層(深層)の2層からなる。 *心室筋 : 外層は左右の心室を共に包み、 心尖部で筋線維が走行を反転し、ここが渦 巻き状に見える (心渦)。 中層は心室を 独立に包む。 内層は肉柱、乳頭筋となる。 ③ epicardium : 漿膜性心膜の臓側板 1-3.内部構造 ① interatrial septum : 右心房と左心房の境界。 ② interventricular septum : 右心室と左心室の境界。 心房中隔も心室中隔も、筋性部 と 膜性部(筋層がない) からなる。 右心房の膜性部と左心室の膜性部は心 房と心室の境界で接し 房室中隔 と言う。 ③ pectinate muscle : 心房内面に見られる平行な盛り上がりの筋束。 静脈洞に由来する心房の部分 (大静脈洞)の内腔は平滑であるが、固有の心房の部分は 櫛状筋 がある。 両者の境界は分界稜。 ④ trabeculae carneae : 心室の内面にある網状の盛り上がりの筋束。

臓 と 大

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2.心臓の口と弁

2-1.心臓口 ①房室口 : 左房室口と右房室口 ②動脈口 : 大動脈口 (大動脈の左心室からの出口)と 肺動脈口 (肺動脈の右心室からの出口)。 2-2.心臓の弁 cardiac valves : 内膜のヒダで出来ている ①房室弁 atrioventricular valves : 心房と心室の間の房室口にある弁。 弁の基部は線維輪に付着。 弁尖(弁の自由端)には 紐状の が付き (心筋で出来る) の尖端に続く。

1) 左房室弁、 mitral valve、二尖弁 bicuspid valve : 左心房と左心室の間の左房室口にある2枚の 弁 (前尖と後尖)。 前尖は前乳頭筋(複数)と、後尖は後乳頭筋(複数)と結合する。 2) 右房室弁、 tricuspid valve : 右心房と右心室の間にある右房室口にある3枚の弁 (中隔尖、前尖、 後尖)。 それぞれ複数の中隔、前、後乳頭筋に着く。 ②動脈弁 : 大動脈口、肺動脈口にある弁。 凸面が心室側を向く3枚の 半月弁 からなる。 弁の先端中央は 半 月弁結節 として肥厚する。 1) 大動脈弁 aortic valves : 大動脈口の弁 (後、右、左半月弁)。 大動脈弁のある大動脈の部位は広がり 大 動脈球 aortic bulb (大動脈洞 aortic sinus)という。

2) 肺動脈弁 pulmonary valves : 肺動脈口の弁 (前、右、左半月弁)。 肺動脈洞 pulmonary sinus がある。

3.右心房 right atrium

心臓の右上部。 上大静脈、下大静脈、冠状静脈洞 が繋がる。 下大静脈弁と冠状静脈弁がある(ともに痕跡)。 right auricle : 右心房の前部。大動脈基部を抱く。 内部に櫛状筋。 oval fossa : 心房中隔にある卵円孔の遺残。 分界稜 terminal crest : 右心房内面で、下大静脈の開口部の右側にある櫛状筋の隆起。 分界稜に対応して外面 は 分界溝 terminal sulcus となる。 固有の右心房と大静脈洞の境界となる。

4.右心室 right ventricle

心臓の前下部。 右房室口と右房室弁、肺動脈口と肺動脈弁がある。 動脈円錐 : 右心室前壁の隆起。 右心室から肺動脈への移行部。

5.左心房 left atrium

心臓の後上部。 左右2本ずつ、合計4本の肺静脈を受ける。 left auricle : 左前端部。 肺動脈基部を抱く。 内部に櫛状筋。

6.左心室 left ventricle

心臓の左下部。 左心室は、右心室に比較し筋層が厚い(3倍)。右心室の断面は半月形、左心室の断面は円形。 左房室口と僧帽弁、大動脈口と大動脈弁がある。 大動脈前庭 : 左心室の大動脈への移行部

7.心臓の線維性骨格(心臓骨格)

① fibrous ring : 大動脈口、肺動脈口、左房室口、右房室口の周囲を囲む4つの結合組織性の帯。 房室弁や心筋の付着部となる。

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②線維性三角 fibrous trigone : 左右の房室口と大動脈口の線維輪を結合する線維性組織。 左線維三角は大動脈口と左房室口の間にあり心臓骨格の中心、右線維三角は大動脈口と右房室口の間。 心房筋と心室筋は、線維性骨格により完全に隔たれ、両者を繋ぐのは右線維性三角を貫く房室束のみ。

8.刺激伝導系

① 、キース・フラック結節 : 右心房の上大静脈開口部の近傍(分界稜)にある。長さ1㎝。 ② 、田原結節 : 右心房の内面で、冠状静脈洞の開口近くにある。長さ5㎜。 ③ 、ヒス束 : 房室結節より起こり、右線維三角を貫き、心室中隔膜性部を下行して、心室中隔筋性部で左 右に別れ (左脚と右脚)、左右の心室内面に至る。心房と心室を繋ぐ。 ④ : 右脚左脚から分かれて心内膜下を通り心室筋へ興奮を伝える。

9.心臓の神経支配

心臓神経叢を作り心臓を支配する自律神経ニューロン(細 胞と軸索)を書き込むこと (右図)。 (自律神経系参照) キーワード: 脊髄側角、交感神経幹、椎傍神経節、上頚 神経節、頚心臓神経、延髄、迷走神経、下神経節、心臓 枝、心臓神経節

10.心臓の動脈

心臓は上行大動脈の枝の により栄養される。 ① 右冠状動脈 right coronary artery RCA : 右半月弁

の直上の大動脈洞より出る。 右室・心室中隔の後半部、 右房に分布する。また洞房結節と房室結節は右冠状動 脈の枝が支配する。

冠状溝を前方より右を回って後方へ至り、後室間溝を 下る posterior interventricular branch (後 下行枝 posterior descending branch PD) となる。 ② 左冠状動脈 left coronary artery LCA : 左半月弁

の直上の大動脈洞より出る。 左心房、左心室、心室中 隔の大半に分布する。

前室間溝を下る anterior

interventricular branch (左前下行枝 left anterior descending branch LAD) と、冠状溝を前方より左を回り

後方に至る circumflex branch (left cicumflex branch LCX) に分かれる。 前室間枝(前下行枝)は左心室の前壁に、回旋枝は主に左心室の後壁に分布する。

11.心臓の静脈

coronary sinus : 心臓の後、冠状溝の中にあり、右心房に注ぐ。心臓の静脈が集まる。 ①大心臓静脈 : 心尖より前室間溝を上行し、冠状溝中を左後方に廻り冠状静脈洞に注ぐ 。 ②左心室後静脈 : 左心室後面を上行し、冠静脈洞あるいは大心臓静脈に注ぐ。

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③左心房斜静脈 (マーシャル静脈) oblique vein of left atrium : 胎生期の左の前主静脈の遺残。左心房の後面 を下行し冠静脈洞に注ぐ。 25%程で欠如する。 ④中心臓静脈 : 心尖より後室間溝を上行し冠状静脈洞に注ぐ 。 ⑤小心臓静脈 : 右心室の後面を上行し、冠静脈溝を右より左に走り、冠静脈洞(あるいは直接右心房)に注ぐ。 *直接心臓に注ぐ静脈 ①前心臓静脈 : 右心室の前面を上行して右心房に注ぐ3~4本の静脈。 ②細小心臓静脈 : 3~4本の細い静脈で、直接右心房に注ぐ。

12.心膜 pericardium と 心膜腔

①心膜とは、漿膜性心膜の臓側板 (心臓を直接包む) と壁側板 (心 臓を外から包む) に、壁側板の裏打ち(心臓の外側)である 線維性 心膜 を加えたもの。 ②漿膜性心膜が狭い意味での心膜であり、臓側板が心臓と大血管の基 部を直接包んだ後、反転して壁側板に移行する一連の構造であり、そ の中に心膜腔が形成される。 ③心臓を直接包むのは心膜臓側板であり、 とも呼ばれる。 ④線維性心膜は前方で胸骨と 胸骨心膜靭帯 により繋がり固定され、 下方では横隔膜に付着する。 ⑤ pericardial cavity : 臓側板と壁側板によりできる空間。 心膜腔の中の漿液を 心膜液 pericardial fluid という。 1) : 動脈(大動脈と肺動脈)と上大静脈の間の心膜腔。 2)心膜斜洞 : 左右の肺静脈根の間。 ⑥心膜の開口部 : 心臓につながる血管による。 上行大動脈、肺動脈幹、大静脈x2、肺静脈x4

13.縦隔 mediastinum

左右の胸膜の間、左右の肺と胸膜腔を隔てる空間 を という。 左右が胸膜、後が胸椎、前は胸骨、下は横隔膜で囲まれ、上は 胸郭上口 により頚部に続く。 縦隔の中にある臓器を 縦隔臓器 といい、心臓、心膜、食道、胸腺、神経(迷走神経、横隔神経)、気管と気管支、 肺動脈と肺静脈、大静脈、大動脈、奇静脈、胸管、リンパ節などが含まれる。 縦隔の区分: 胸骨角と第4胸椎下縁の高さを通る水平面に より縦隔を2分し、上縦隔 と 下縦隔 という。 ①上縦隔 superior mediastinum : 胸腺、気管、食道、大動脈弓、上大静脈、腕頭静脈、 胸管、迷走神経、横隔神経、反回神経。 ②下縦隔 inferior mediastinum 前から 前縦隔 (胸骨と心臓の間)、 中縦隔 (心臓の 有る部分)、 後縦隔 (心臓と脊柱の間)に分かれる。 胸腺、胸骨心膜靱帯、心臓、心膜、上行大動脈、肺動 静脈、上大静脈、気管支、食道、胸大動脈、奇静脈、 迷走神経、胸管。

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14.大血管

14-1.大動脈 aorta 大動脈は左心室より上行し (上行大動脈)、左後方に曲がって (大動脈弓) 脊柱椎体の左側に至る。 次に脊柱の前左 側に沿って下がり (下行大動脈)、横隔膜の大動脈裂孔を貫いて腹腔に入り、第4腰椎の高さで総腸骨動脈に分かれる。 下行大動脈は横隔膜をはさんで と に分けられる。 14-2. ascending aorta 左心室の大動脈口より始まり、腕頭動脈が分かれるところまで心膜に覆われる。 上行大動脈の起始部は3つに膨隆し (大動脈球)、一方、内腔は陥凹する (大動脈洞 ・ バルサルバ洞)。 大動脈洞より右冠状動脈と左冠状動脈が大動脈弁の右および左半月弁の直上から出る。 14-3. aortic arch 右第2胸肋関節の高さで上行大動脈に続き、第4胸椎の高さで下行大動脈に接続する。 以下の動脈が順に分枝する。 ①腕頭動脈 ②左総頚動脈 ③左鎖骨下動脈 動脈管索 : 大動脈弓と肺動脈分岐部とを結ぶ。胎児期の動脈管が生後変化した索状組織。

14-4. common carotid artery 右総頚動脈は腕頭動脈より(右胸鎖関節の高さ)、左総 頚動脈は大動脈弓より(第2胸椎の高さ)出る。

頚動脈三角 で(甲状軟骨上縁の高さ)ほぼ同じ太さ の外頚動脈と内頚動脈に分かれる。

14-5. external carotid artery 総頚動脈より分かれて、内頚動脈の前内側を上行し、 下顎頚の高さで顎動脈と浅側頭動脈に分かれる。

14-6. internal carotid artery 総頚動脈より分かれて上行し、頭蓋底の頚動脈管を通 って頭蓋腔内に入る。

14-7. subclavian artery 右は腕頭動脈、左は大動脈弓から分かれる。 腋窩で腋窩動脈、その後、上腕動脈となる。

14-8. superior vena cava

頭頚部、胸郭、上肢などからの血液を集める静脈の本幹。

左右の 腕頭静脈 (内頚静脈と鎖骨下静脈よりできる)が合流して出来、上行大動脈の右を下り右心房に注ぐ。

14-9. inferior vena cava

第4・5腰椎の高さで左右の総腸骨静脈(外腸骨静脈と内腸骨静脈が合したもの)が合してでき、脊柱の前方を腹大動脈の 右側に沿って上行し、横隔膜(大静脈孔)を貫いて右心房につながる。 途中、腹部内臓からの静脈血を集める。

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血管発生(脈管発生) (復習) 第 3 週はじめ 卵黄嚢壁の胚外臓側中胚葉、続いて胚子内の側板中胚葉、絨毛や付着茎の胚外壁側中胚葉に、中 胚葉細胞が 血島 と呼ばれる細胞集団を作る。血島は血管と血球の共通細胞である 血管芽細胞 を作り、細胞集団 の中心部では 造血幹細胞、血島周辺部では血管の前駆細胞(まもなく内皮細胞による毛細血管)ができる。これを 造血管細胞集団 といい、これらの血管 網が連絡する。 1.心臓の初期発生 臓側中胚葉中の造血管細胞集団が、 頭方に移動して、全体としてU字形にな る。この部位の細胞集団を 心臓発生域 といい、内皮細胞からなる 造血管索 を含む (発生第18日)。 心臓発生域の背側に将来の 心膜腔 pericardial cavity となる心膜体腔がで きる。心臓と心膜体腔の原基は胚の頭方にで きるが、頭屈により、心臓と心膜体腔は頚部、 ついで胸部に下行する。 心臓発生域とは別に、脊索の両側に造血管 細胞集団が出現する。この細胞集団から1対 の縦走血管 (背側大動脈) ができる。背側大 動脈は、心臓の原基と連絡する。 第3週中に造血管索は中腔性の筒となり、心 内膜性心筒 (心内膜筒) という。胚の折りたた み(側屈)により左右の心内膜筒は融合し単一 の 心筒 heart tube になる。心筒の外側には 原始心筋が形成され、心内膜との間には結合 組織である心臓ゼリーが存在する。心外膜は 中皮細胞により形成される。 2.原始心臓の発生 (心膜体腔の背側にある心筒は、心膜 体腔へ突出するようになる。はじめ心筒 は、心膜の折り返しの部分(これを 背側 心間膜 という)で、心膜体腔に吊り下げ られた状態であるが、この部分はやがて 失われ、心筒はその頭側端と尾側端の 血管により心膜体腔に宙づりとなる。背側心間膜が失われることにより、左右の心膜体腔は心臓背側で も交通し、心膜横洞が形成される。)

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心筒は、頭側より 動脈幹 truncus arteriosus、 心球 (心円錐) bulbus cordis (conus cordis)、 心室 ventricle、 心房 atrium、 静脈洞 sinus venosus の5つの膨隆部を作る。 心房と心室の境界部は 房室管 atrio-ventricular canal という。 心球と心室が急速に発達するため、心筒はU字形に折れ曲がり 球室ループ (心臓ループ) bulboventricular loop (cardiac loop) を作り、心球と心室が右前下方に、心房と静脈洞が左後上方に位置する。

3.心臓の各部の発達 心臓の各区分の形成発達はそれぞれ同時に行われ、発生第4週 中に始まり第5週中に終わる。 心拍動は4週より開始。 3-1.房室管 房室管の背側壁と腹側壁に 心内膜枕 (心内膜隆起) endocardial cushion という隆起ができる。やがて背側と腹側 が癒合し、房室管を左右に分ける。 癒合した心内膜枕により心房と心室が境され、心内膜枕は後に房室弁となる。 3-2.心房の分割 心房の頭背側より心内膜枕に向かって薄い三日月型の 一次中隔 が降りてくる。この一次中隔と心内膜枕の間の開 口部が 一次孔 である。 一次孔は小さくなり、最終的に一次中隔が心内膜枕に達して融合し消失する。 一次孔が完全に閉鎖する前に、一次中隔の中央上方に新たに孔 (二次孔) があく。

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一次中隔の右側に二次中隔 が心房の頭腹側より伸びてきて、 二次孔を覆うようになる。 二次中隔による心房の仕切りは完全 ではなく、隙間(卵円孔 foramen ovale と呼ぶ) が残る。 一次中隔の頭方(上方)部分は消失するが、心内膜枕に融合 している尾方(下方)部分は失われず、卵円孔を覆い 卵円孔 弁 となる。この弁は、右房→左房方向の血流は通すが、左房 →右房方向の血流は通さない(胎児期は右房圧>左房圧)。 出生後は、左房圧>右房圧となるので、卵円孔は機能的に閉 塞し、後に一次中隔と二次中隔が融合して、完全に閉鎖した心 房中隔が出来、卵円孔は卵円窩となる。

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3-3.心室 の分割 心室の心尖に近い部から、内腔にむかって (原 始)心室中隔 が形成され伸び、やがて心室中隔 筋性部となる。心内膜枕と心室中隔の融合した間 には初め、室間孔 があり、左右の心室は交通し ている。室間孔は、左右の心球隆起と心内膜枕の 融合により、完全に閉じられる (心室中隔の形 成)。心内膜枕に由来する部分は心室中隔膜性 部になる。 心室内では心筋の筋束が海綿状で隙間が出来、 乳頭筋とそこに付く腱索へと変化する。 3-4.心球と動脈幹の分割 心球(心円錐)壁に左右の 心球隆起 (円錐隆 起) という1対の隆起が内腔に向かって形成さ れる。動脈幹の内腔にも心球隆起に続く1対の 動脈幹隆起 が形成される。 心球隆起と動脈 幹隆起は、らせん状に回転しながら左右一対 のものが一つに融合して、大動脈肺動脈中隔 となる。この中隔が心球と動脈幹の内部を完全 に2分して、肺動脈(動脈円錐→肺動脈幹)と 大動脈(左室→大動脈幹)ができる。 左右の心球隆起と心内膜枕が融合して、室 間孔を塞いで、右心室と左心室に分離すると 肺動脈路と大動脈路の2大流路が完成する。 大動脈肺動脈中隔はらせん状に捻れるため に、肺動脈路は大動脈路の前→左→後方に 位置するようになる。 心球は心室に組み込ま れ、それぞれ右心室の動脈円錐、左心室の大 動脈前庭となる。

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心球と動脈幹の間では左右の心球隆起の間に心内膜組織が隆 起 (弁隆起) を始め、心球隆起の癒合により大動脈と肺動脈が 分割されると、それぞれに3つの半月弁が形成される。 4.静脈洞の変化 静脈洞には、はじめ3対の静脈が還流する: ①左右の卵黄嚢静脈 ②左右の臍静脈 ③左右の総主静脈 これらの3対の静脈が静脈洞に流入する部位を左右の 静脈洞角 という。しだいに左側の血流が右の静脈洞角に流 入するようになるため、左静脈洞角は退行し、右静脈洞角が拡張する。 静脈洞は、はじめ心房とは独立で右心房背側に繋がり、境界に 洞房弁 がある。その後、右心房に取り込まれて、 左静脈洞角が 冠状静脈洞 になり、右静脈洞角は(右心房の壁である)大静脈洞 となる。元の心房は内面が凹凸で あり(右心耳)、一方大静脈洞は平滑であり、境界は 分界稜(内面) と 分界溝(外面) となる。右洞房弁は分界稜と 下大静脈弁、冠状静脈弁となり、左洞房弁は二次中隔と癒合し心房中隔となる。 左心房からは原始肺静脈(1本の共通肺静脈が 肺周囲の静脈とつながる)が伸び出しており、その 後、肺静脈を取り込みながら左心房が拡張し、4本 の肺静脈(共通肺静脈が分かれて4本になってい た)が左心房に繋がるようになる。原始左心房は 左心耳として内面が凹凸であり、肺静脈を取り込 んで出来た心房は平滑な内面を持つ。 5.刺激伝導系の発生 第5週、洞房結節が静脈洞の右に発生し、静脈洞 が右心房に組み込まれることに伴い,右心房壁に 位置するようになる。

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1.動脈系の発生 1-1.大動脈弓 aortic arches 胎生初期の大血管は体軸にそって走る 1対の 背側大動脈 dorsal aorta である。 背側大動脈は心内膜性心筒と連続し、 心臓下降により背側大動脈の頭方は弓 状に曲がる。この部を第1大動脈弓とい い、第1咽頭弓の中に位置する。 心臓原基と第1大動脈弓の結合部は 拡張する (大動脈嚢 aortic sac、後に 腕頭動脈と大動脈弓起始部を作る)。第 2-6咽頭弓の形成に伴い、大動脈嚢 はそれぞれの咽頭弓の中に第2-6大動 脈弓を新生する。 ①第1大動脈弓 : ほとんど消失する。 ②第2大動脈弓 : ほとんど消失する。 ③第3大動脈弓 : 総頚動脈、内頚動 脈の一部(近位)となる。 ④第4大動脈弓 : 右側では右鎖骨下 動脈の近位部となる。(右鎖骨下動脈 の遠位部は右背側大動脈と右第7節 間動脈から)。 左側では大動脈弓(左総頚動脈と左鎖骨下動脈の 間)となる。(左鎖骨下動脈は左第7節間動脈から)。 ⑤第5大動脈弓 : 消失する。半数では発生しない。 ⑥第6大動脈弓 : 左右の肺動脈の近位部を作る。右側では第6大動 脈弓遠位部が消失し近位部が右肺動脈となる。左側では遠位部が動 脈管となり近位部が左肺動脈となる。動脈管は生後に退化する。 1-2.背側大動脈の変化 左右にあった背側大動脈のうち、胸体節から腰体節の部分は癒合し正 中1本の大動脈(下行大動脈)となる。胸部では右背側動脈が鎖骨下動 脈を作り遠位は消失する。左背側大動脈は大動脈弓遠位から下行大動 脈になる。頚部では第3と第4大動脈弓間の背側大動脈が消失し、その 遠位が内頚動脈を作る。 *反回神経(迷走神経の枝、下から上へ走る)は第6咽頭弓に分布し、 喉頭へ向かうとき第6大動脈弓の下を回る。右側では第6大動脈弓遠位 部が消失のため反回神経は上方へ移動し右鎖骨下動脈の下を回る。 左では第6大動脈弓遠位部から変化する動脈管(動脈管索)の下(左) を回る。(右図の迷走神経に加えて反回神経を書き込むこと⇒)

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1-3.節間動脈 背側大動脈から30対程度の 背側節間動脈 が出て、体節間を通過して周囲に分布する。 頚部では合流し縦に走 る椎骨動脈が形成され、胸部では肋間動脈と変化し、腰部では腰動脈となる。腰部第5対の節間動脈は総腸骨動脈 を形成する。 1-4.卵黄嚢動脈と臍動脈 卵黄嚢動脈 は多数の左右対の腹側の小動脈として卵黄嚢に分布し、背側大動脈が1本になり卵黄嚢が胚子に組み 込まれる際に背側腸間膜内において無対となり、最終的には消化器に分布する3本(無対)の動脈 (将来の腹腔動 脈、上腸間膜動脈、下腸間膜動脈)となる。 一対の 臍動脈 は、総腸骨動脈と結合する。生後、 臍動脈の起始部は内腸骨動脈および上膀胱動脈とし て残るが、遠位部は 臍動脈索 となる。 2.静脈系の発生 発生第4週、卵黄嚢静脈、臍静脈、主静脈の3種の静 脈系があり、静脈洞へつながっている。 ①卵黄嚢静脈 : 卵黄嚢より静脈洞へつながる。 ②臍静脈 : 胎盤より静脈洞へつながる。 ③総主静脈 : 胎児の血液を静脈洞へ運ぶ。 主静 脈は胎児頭部の血液を運ぶ 前主静脈 と、頭部を除く 部位の血液を運ぶ 後主静脈 があり、両者は合して 総主静脈 common cardinal v. として静脈洞へ注ぐ。 2-1.卵黄嚢静脈 vitelline veins 左右の卵黄嚢静脈は十二指腸の周囲で2本の静脈間 吻合を形成し、ついで横中隔(後に肝臓)内に侵入しつ つ静脈洞に注ぐ。肝臓内に侵入した卵黄嚢静脈は著し く発達した静脈網 (肝類洞) を形成する。肝と静脈洞 間の卵黄嚢静脈を 肝心臓路 という。 十二指腸周囲の2本の 卵黄嚢静脈間吻合 は1本 の門脈となる。左卵黄嚢静脈は退化するが、右卵黄嚢 静脈の遠位部は上腸間膜静脈となる。 左静脈角の退化により左肝心臓路は退化し、肝臓の左 側からの血液は右肝心臓路に注ようになる。その結果、 右肝心臓路は強大となり、下大静脈の肝臓部となる。 2-2.臍静脈 umbilical veins 左右の臍静脈は肝臓の両側を通って静脈洞に注ぐ。 ついで臍静脈と肝類洞間に交通が生じる。この交通が発達するにつれ、右臍静脈の全てと左臍静脈の近位部(肝臓 と静脈洞の間)が消失する。こうして胎盤の動脈血は左臍静脈の遠位部(臍静脈)により肝臓へ注ぐようになる。 胎盤循環の増大とともに、左臍静脈の遠位部と右肝心臓路(下大静脈)間に短絡路が形成される (静脈管 ductus venosus、アランチウス管)。静脈管を介して胎盤からの血液は肝類洞を経ずに右肝心臓路を経て心臓に流入する。 出生後、左臍静脈は 肝円索 になり、静脈管は 静脈管索 になる。

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2-3.前主静脈 第8週、左右の前主静脈間に吻合 が形成される (前主静脈間吻合)。 左の前主静脈の近位部は退化す るので、左前主静脈は前主静脈間 吻合を通り右前主静脈に注ぐ。こ の吻合路は左腕頭静脈となり、ま た右前主静脈の近位部と右総主 静脈は上大静脈となる。左前主静 脈の近位部は退化するが、左総主 静脈との結合部は残り、総主静脈 や左静脈洞角と共に左心房斜静 脈(マーシャル静脈)と冠状静脈洞 になる。 2-4.後主静脈 胚子尾側の静脈潅流を司り、やが て消失する。 残った部分は奇静脈の起始部と 総腸骨静脈のみとなる。 2-5.主下静脈 後主静脈についで、主下静脈が 発生し、後主静脈に注ぐ。左右の 主下静脈は吻合する (主下静脈 吻合)。 遠位部は性腺静脈(卵巣・精巣 静脈)となる。左側の血液は主下 静脈吻合を介して右主下静脈に 注ぐため、右主下静脈が主要な静脈系となり下大静脈の前腎部になる。 2-6.主上静脈 後主静脈の退化に伴い、主上静脈が発生し、主下静脈と吻合をつくる。 右の遠位部が発達し、下大静脈の後腎部となる。主上静脈と主下静脈の吻合部は右側が下大静脈(腎部)を形成す る。近位部の主上静脈は奇静脈と半奇静脈となる。 2-8.下大静脈 肝臓部:右肝心臓路(右卵黄嚢静脈)に由来 前腎部:右主下静脈に由来 腎部:主下静脈と主上静脈の吻合部に由来 後腎部:右主上静脈に由来

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3.胎児循環 fetal circulation 胎盤 (物質交換を行う) ⇒ 臍静脈 (1本) ⇒ 静脈管を通り下大静脈 または 門脈~肝静脈を経て 下大静脈 ⇒ 右心房 ⇒ (大部分の血液は)卵円孔 ⇒ 左心房 ⇒ 左心室 ⇒ 大動脈 ⇒ 全身 (右心房に入った一部は → 右心室 → 肺動脈 → 動脈管 → 大動脈 →) ⇒ 内腸骨動脈 ⇒ 臍動脈 (2本) ⇒ 胎盤 3-1.特徴 ①臍静脈から来る動脈血は下大静脈を経て右心房 に入るが、その血流の大部分は卵円孔に向かい、 そのまま左心房・左心室に入る。 ②上大静脈を経る静脈血は右心房・右心室をへて肺 動脈へ入り、動脈管を経て大動脈に合流する。 **動脈管が大動脈につながる部位は上半身 への動脈(腕頭動脈・左総頚動脈・左鎖骨下動脈) が分岐した後であるため、上半身の動脈には左心 室経由の動脈血主体の血液が流れ、結果上半身 の発育が良くなる。(動脈管を経た血液は右心室 経由の静脈血が混合する。) 3-2.出生後の変化 ①胎盤の剥離と臍動静脈の結紮による胎盤循環の停止 (臍動脈と臍 静脈は閉塞し、生後3~5週でそれぞれ臍動脈索と肝円索になる) ②動脈管の収縮閉塞 (→肺動脈の血管抵抗が下がり肺に血液が流れ る)(初呼吸、産声があがる) (生後6~8週で、動脈管索になる) ③卵円孔の閉鎖 (肺を経た血液により左心房の血圧が上昇することに よる)(→更に肺に血液が流れるようになる)(生後6~8ヶ月で卵円窩) ④静脈管は閉塞し、数日から数週で静脈管索になる。 4.リンパ系の発生 胚子期終わりに次の原始リンパ嚢が出来る。 頚リンパ嚢 : 鎖骨下静脈と前主静脈の近くに2個 腸骨リンパ嚢 : 腸骨静脈と後主静脈の近くに2個 腹膜後リンパ嚢 : 腸間膜基部に1個 乳糜槽 やがてこれらリンパ嚢からリンパ管がつながり、頚リンパ嚢と乳糜槽の間 は左右の胸管が繋ぐ。やがて右胸管の遠位部と左胸管の近位部から なる1本の胸管となる。 リンパ嚢は乳糜槽を除いてリンパ節群に変化する。

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系 Respiratory System

鼻から気管支までを respiratory tract と言う。 上気道は鼻~喉頭、下気道は気管より末梢の部位。 機能としては、 ① ガス交換のための広い面積を作る、 ② 空気の出し入れを行う、 ③ 乾燥や温度変化から保護、 ④ 異物から保護、 ⑤ 発声、 ⑥ 血圧の調節を補助し体液のpHを保つ、などがある。 1.鼻腔 nasal cavity 2.副鼻腔 paranasal sinus 3.咽頭 pharynx 4.喉頭 larynx

5.気管 trachea と 気管支 bronchus

気管は食道の前に位置し、 の高さ (輪状軟骨下縁) で喉頭から続き、第4胸椎(胸骨角)の高さの気管分岐 部 で左右の気管支に分かれる。 長さ10~13㎝、 径1.5~2㎝。 多列線毛上皮の粘膜、混合線である気管(支) 腺を多数含む。

(1)気管軟骨・気管支軟骨 tracheal cartilages ・ bronchial cartilages

気管・気管支の壁にある馬蹄形の硝子軟骨。 気管には15~20個あり、輪状靭帯により上下が連なる。 気管(支)軟骨の後方が欠けているために、そこには平滑筋が張り、膜性壁と呼ぶ。 (2)気管支は左右差がある。 ①右の気管支は左より 。 ②右の気管支は左より垂直軸に 。 ③右の気管支は左より 。

6.肺 lung

半円錐形で左右の胸腔を満たす1対の器官。 右肺が1200ml・600g、 左肺が1000ml・500g。 横隔面、肋骨面、縦隔面 の3面からなる。 上方の尖っている部分を apex、下面を base という。 肺尖は鎖骨の上方にまで達し、前方に鎖骨下動脈静脈がある。 左肺には鋭い切れ込みがあり、心切痕 cardiac notch と言う。 内側(縦隔面)のほぼ中央に気管支、肺動脈静脈、気管支動静脈、リンパ管、神経が出入する部位があり、 hilum of lung と言い、第5~7胸椎の高さに位置する。 肺門を通る組織をまとめて root of lung という。 (1)肺葉 lobes

①右肺 : 水平裂 horizontal fissure と 斜裂 oblique fissure により 上葉 superior lobe、中葉 middle lobe、 下葉 inferior lobe の3葉に分けられる。

②左肺 : 斜裂 により 上葉と下葉 の2葉に分けられる。

(2)肺区域 bronchopulmonary segments : 肺葉はさらに約10の肺区域に分かれる。

肺区域は周囲と独立した気道系(区気管支)と血管系をもつ単位であり、肺切除の単位となる。

(3)気管支 bronchi → lobar bronchus (上葉支、中葉支、下葉支)→ segmental bronchus → bronchiole → 肺胞管alveolar duct → alveolus

(4)血管系

①機能血管系 : 肺動脈 と 肺静脈。 ガス交換を行うための血管。 肺循環または小循環を行う血管系。 肺動脈は上行大動脈の後、気管支の前を通り、肺内では気管支に沿う。

②栄養血管系 : 気管支動脈 (胸大動脈や肋間動脈より分枝、2~3本) と 気管支静脈。 肺門を通り、肺を栄養する。 肺組織自体に酸素を与え、栄養を与える血管系。

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7.胸膜 pleura と 胸膜腔

肺表面と胸壁の内面をおおう漿膜を 胸膜 という。 呼吸運動に際し、肺表面と胸郭内腔との摩擦を防ぐ。 左右の 胸膜腔 を作る。 (1) : 肺胸膜 visceral pleura : 肺の表面を覆う胸膜。 肺葉間にも入り込む。 (2) parietal pleura : 胸壁を裏打ちする胸膜。 肋骨胸膜、 横隔胸膜、 縦隔胸膜 に分かれる。 (3)肺間膜 pulmonary ligament : 臓側胸膜は肺門で折り返して胸郭を裏打ちする壁側胸膜に移行する。移行する 部は、上部では肺根を包むが、下部では2枚が合わさり 肺間膜 となる。

(4) pleural cavity : 臓側胸膜と壁側胸膜によりできる閉鎖空間で、中に 胸膜液 pleural liquor がある。 肺の前縁と下縁の胸膜腔は広がり 胸膜洞 と言い、肋骨縦隔洞 (前縦隔の左右)と 肋骨横隔洞 がある。 呼吸運動 : 吸気と呼気 胸式呼吸 : 胸郭の形の変化を伴う呼吸 腹式呼吸 : 横隔膜の形の変化を主体とする呼吸 安静呼吸(平静呼吸) : 吸気時に横隔膜と外肋間筋が、呼気時に腹壁筋(腹横筋が主)と内肋間筋が働く。 深呼吸 : 特に吸気時に更に斜角筋群と肋骨挙筋が加わり、強制呼吸となると吸気時に大胸筋、小胸筋、前 鋸筋、胸鎖乳突筋などが加わる。 吸気時に胸郭が広がると、胸膜腔は大気圧よりも圧力が低くなり(陰圧となり)、肺容積が広がることに伴い肺 中に空気が流れ込む。 呼気時には胸腔の容積が狭くなり胸膜腔の陰圧がなくなると肺は自らの弾性により 収縮し肺容積が狭くなり、肺から空気が押し出される。 胸郭の拡張 ①肋骨の挙上による胸郭横径の拡大 ②胸骨の前方への移動(肋骨の挙上に伴う)による胸郭前後径の拡大 ③横隔膜の収縮による胸郭下部の容積拡大

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呼 吸 器 系 の 発 生

第4週、前腸の腹側より 肺芽 lung bud (呼吸器憩室 respiratory diverticulum) が膨らみ、尾方に伸張する。 やがて左右 の壁から 気管食道稜 tracheoesophageal ridge が形成される。 次いで、これらが融合することで 気管食道中隔 tracheoesophageal septum が形成されると、背側の食道と腹側の気管・肺芽が分かれ、喉頭口においてのみ連絡を保つ。 肺芽先端は2個の 気管支芽 を作り、発達して主気管支(1次気管支)となり、更に2次気管支が形成される。 やがて肺芽は (心腹膜管という)体腔中へ伸び出す。 (心腹膜管が変化し)原始胸膜腔が形成されると、肺芽・肺の表面を覆う中胚葉は 臓側胸膜、体壁内面の中胚葉は壁側胸膜となり、その間は胸膜腔となる。 気管支の分岐は第6ヶ月までに17回におよび、生後更に6回の分岐が見られる(成熟して23分岐)。 第7ヶ月頃、呼吸細気管支の上皮細胞が扁平化し(Ⅰ型肺胞上皮細胞)毛細血管に囲まれた原始肺胞となる。この頃Ⅱ型 肺胞上皮細胞も発生し、出生直前に界面活性物質を多量に産生する。 出生前には呼吸運動が始まり、羊水を気管や肺の中に吸引する。 この羊水は生後呼吸を開始すると、肺胞周囲の毛細血 管やリンパ管から吸収され、空気で満たされるようになる。

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消 化 器 系 Digestive System

1.消化器系 : 食物を取り入れ消化吸収を行う一連の器官

摂食、機械的処理、消化、分泌、吸収、凝縮、排泄、防御 を司る。 1-1.中腔性器官 … digestive tube, alimentary canal

① mucosa : 粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下組織。 粘膜は粘液により常に濡れている。 ② muscular layer : 平滑筋の層。 主に内輪筋層と外縦筋層から出来る。 ③ serosa : 腹膜。 単層扁平上皮からなる。 1-2.実質性器官 … digestive gland ①実質 : 腺組織。 ②被膜 : 器官の表面を覆う結合組織性の膜。被膜は実質に侵入して小葉間結合組織となり、小葉に分ける。 2.口腔 oral cavity 3.口蓋 palate 4. 歯 teeth 5. 舌 tongue 6. 唾液腺 salivary glands 7.口峡 fauces 8.咽頭 pharynx

9.食道 esophagus

の高さで咽頭に続き、頚部 ( ) では頚椎の前・気管の後に位置し、胸腔 ( ) では やや左に位置し胸椎の前、気管と心臓の後を通り、第11胸椎の前左で横隔膜の食道裂孔を貫いて胸腔から腹腔に 入り ( )、胃に続く。 長さ約25㎝。 9-1. : 内腔が狭く広くなりにくいため、物が引っかかり易い。 癌発生が多い部位。 ①起始部 : 下咽頭収縮筋により狭くなっている。 ②気管分岐部 : 左気管支と大動脈弓により狭くなる。 ③横隔膜貫通部 9-2.構造 : 通路としての働き ①粘膜 : 角化した重層扁平上皮。 食道腺(粘液腺)が少数存在する。 粘膜下組織に静脈叢がある。 ②筋層 : 内輪層と外縦層からなる。 上部は横紋筋、下部は平滑筋、中間では両者からなる。 ③外膜 : 食道には漿膜がなく、結合組織性の膜(外膜)がある。 腹部食道のみ腹膜に覆われる。

10.胃 stomach

噴門で食道に続き、幽門で十二指腸に接続する袋状器官。 右上部で肝臓、左上部で横隔膜(間接的に心臓)や脾臓、後部は膵臓と左腎臓、下部は横行結腸に接する。 10-1.肉眼構造 ① cardia : 食道の移行部。第11胸椎の左前で食道から続く部分。第7肋骨の胸骨付着部より2㎝左。 ② body : 胃の中央の部分。噴門の高さより左上方にふくれだしている部分を fundus という。

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③幽門部 pyloric region : 幽門洞 (幽門前庭) pyloric antrum と 幽門管 pyloric canal からなる。 幽門洞は幽門管の近位で膨隆する部分。 幽門管は 幽門の手前3cmほどの管状部分である。

④ pylorus : 十二指腸への移行部であり、幽 門括約筋 pyloric sphincter muscle により内腔に隆起 している。幽門は第1腰椎の右側に位置する。 ⑤ lesser curvature と greater

curvature : 胃の上縁を小弯といい、下縁を大弯と いう。 小弯には 角切痕 angular notch がある。 (10-2.組織構造) ①粘膜 : 単層円柱上皮。 胃腺(噴門腺、胃底腺・固 有胃腺、幽門腺)を形成する。 ②筋層 : 3層の平滑筋でできる筋層。 最内層は斜線 維、内層は輪走線維、外層は縦走線維。 ③漿膜(腹膜) : 外表層は腹膜により覆われる。 大弯 には大網が、小弯には小網が付着する。 *腹腔神経叢を作る自律神経ニューロンを書き込ん でください。(右図) (自律神経系参照) キーワード: 脊髄側角、交感神経幹、大内臓神経、小内臓神経、椎前神経節、腹腔神経節、迷走神経、 筋層間神経節

11.小腸 small intestine

幽門で胃に続き、大腸に繋がる。 全長6~7mほど。十二指腸、空腸、回腸の3部からなる。 11-1.組織構造 : 粘膜、筋層および漿膜の3層 ①粘膜 : 単層円柱上皮からなる。 上半部では粘膜ヒダは不規則で少数であるが、下半部になると規則正しい輪状ヒダが見られる。 絨毛、腸腺 (腸陰窩)、 リンパ小節(多数の孤立リンパ小節がある。 集合リンパ小節: Peyer's patches も見られる)。 中心乳糜腔 : 絨毛の中にあるリンパ管。脂肪を吸収する。 ②筋層 : 内輪外縦。 11-2.十二指腸 duodenum 全体としてC字形で、膵頭が入り込む。 約25㎝。 腸間膜を欠く ( )。 ①上部 : 第1腰椎の右前方に位置。後右へ走り、上十二指腸曲で下行部となる。 ②下行部 : 第2腰椎の右側で下行している部分。下十二指腸曲で水平部となる。 ③水平部 : 第3腰椎の前方。 腹大動脈と下大静脈の前。 ④上行部 : 第2腰椎の左側。 空腸との境界を duodenojejunal flexure と呼ぶ。 下行部の内腔に 十二指腸縦ヒダ があり、その下端に (ファ-タ-乳頭) greater/major duodenal papilla, Vater’s papilla があり、ここに膵管と総胆管が開く。 小十二指腸乳頭もある。

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11-3. 空腸 jejunum と 回腸 ileum 全長で5-6 m ほど。 空腸が前2/5、回腸は後3/5を占める。 両者の間に明確な境界は無い。 内腔には粘膜のヒダである 輪状ヒダ が多数あり、特に空腸上半に多い。 腸間膜を持ち、後腹壁に繋がれる。

12.大腸 large intestine

盲腸、結腸、直腸からなる。 全長1.5-2m程。 12-1.組織構造 : 粘膜、筋層、漿膜の3層 ①粘膜 : 単層円柱上皮。 直腸下端は重層扁平上皮。 絨毛はない。 ②筋層 : 平滑筋(内輪外縦)。 外縦層は3か所で特に発達し 結腸ヒモ を形成する。 12-2. 盲腸 cecum 結腸の始部で、回腸開口部(回盲口)の下方に位置し、下端は盲端となり、虫垂が付く。 5㎝ほど。腸間膜を欠く。 ① (バウヒン弁) ileocecal valve (Bauhin's valve) : 回盲口の盲腸内への突出により形成される弁。 ②虫垂 vermiform appendix : 臍と右の上前腸骨棘を結ぶ直線の外側1/3 にある (マック・バーネー点 McBurney's point)。 多数の集合リンパ小節がある。長さ6~8㎝。 12-3. 結腸 colon ① ascending colon : 右後腹壁の腹膜下にある。 右腎臓の下で曲がる (右結腸曲)。 ② transverse colon : 胃大弯の下を左へ走る。 脾臓の下で曲がる (左結腸曲)。 ③ descending colon : 左後腹壁の腹膜下。 ④ sigmoid colon : 左腸骨窩から骨盤上口。 *結腸間膜 mesocolon : 横行結腸とS状結腸は腸間膜を持つが (横行結腸間膜、S状結腸間膜)、上行結腸と 下行結腸は発生過程で腸間膜を失い、半分ほどが腹膜で覆われ後壁に付着する ( )。 12-4. 大腸の肉眼的特徴 ① taeniae coli : 結腸の縦走筋が集まったもの。直腸に向かうと全体に広がる。 1) 大網ヒモ omental taenis : 結腸の前壁にあるヒモで、横行結腸ではここに大網が付着する。 2) 間膜ヒモ mesocolic taenia : 結腸の後壁にあるヒモで、ここに結腸間膜が付着する。 3) 自由ヒモ free taenia : 大網ヒモと間膜ヒモの間のヒモ。

② sacculation と semilunar folds : 結腸ヒモにより結腸は長軸方向に短縮する結果、 外方に膨隆し、内方に向かい突出する。 前者を 結腸膨起、後者を 結腸半月ヒダ という。 数㎝の構造。 ③ epiploic appendices : 大網ヒモと自由ヒモに付着する腹膜で覆われた脂肪組織の塊。

13. 直腸 rectum

第3仙椎の位置でS状結腸から続き、直腸膨大部と肛門管からなり、肛門 anus で終わる。 長さ20㎝。 仙骨前面を弯曲に沿って下行し、尾骨を過ぎた後、後方に屈曲し、肛門管となる。 直腸上部には直腸間膜があるが、下部は漿膜を欠く。

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①直腸膨大部 rectal ampulla : 糞便で膨隆する部分。 直腸横ヒダ transverse folds of rectum がある。 ②肛門管 anal canal : 骨盤隔膜を貫いてから、肛門まで。 3㎝ほど。 1)肛門柱 : 上部の縦のヒダ。 下端の横ヒダを 肛門弁 anal valves という。 2)肛門洞 : 肛門柱間の凹み。 3)痔帯 : 肛門弁より下の帯状の隆起。筋層の内輪層が厚い ( )。 重層扁平上皮に移行する。 粘膜下に静脈叢が発達する。 ③肛門 : 内肛門括約筋 と 外肛門括約筋 がある。 内肛門括約筋は、筋層の内輪層が発達したもので、平滑筋 で自律神経支配。 外肛門括約筋は骨格筋で体性神経支配 (陰部神経)。

14.肝臓 liver

腹腔の右上腹部(右季肋部)で横隔膜直下に位置する。 1200gくらい。 大きく右葉と左葉に別れ、横隔面と臓側面がある。 14-1. 肉眼構造 *右葉と左葉の境界 : 上面では肝鎌状間膜、下面では肝円索裂と静脈管索裂。 ①右葉 right lobe

1. 右葉 (狭義) 2. 方形葉 quadrate lobe 3. 尾状葉 caudate lobe ②左葉 left lobe 14-2.横隔面 : 上面、前面や右側面を含む。 横隔膜に接する凸面。 ① falciform ligament : 肝臓の左葉と右葉の表面を覆う腹膜が肝臓から離れて出来る間膜。 ② coronary ligament : 無漿膜野周辺の間膜。 ③ bare area : 肝臓上面の後部の腹膜に覆われていない部分。横隔膜に密接する。 14-3.臓側面 : 後下面。 H字形の切れ込みがあり、右葉、方形葉、尾状葉、左葉 に分かれる。 胃圧痕、食道圧痕、十二指腸圧痕、結腸圧痕、腎圧痕、副腎圧痕 がある。 ① porta hepatis : H字の切れ込みの中央。 門脈、肝動脈、リンパ管、迷走神経、肝管が通過。 ②左矢状裂 : H字の切れ込みの左。前部が肝円索裂、後部が静脈管索裂である。 ③右矢状裂 : H字の切れ込みの右。前部が胆嚢窩(胆嚢が収まる)、後部が大静脈溝(下大静脈が入る)である。 14-4.組織構造 ①小葉間結合組織 (グリソン鞘) : 被膜から肝臓内に入り込んだ組織は、肝臓を肝小葉に分ける。この組織を 小 葉間結合組織 と言い、中に 小葉間動脈、小葉間静脈、小葉間胆管 がある。 ②肝小葉 : 小葉間結合組織が分ける実質で、肝の機能単位。 肝細胞は 中心静脈 を中心に肝細胞索として 放射線状に配列する。 肝細胞索の間に洞様毛細血管が、肝細胞の間に毛細胆管がある。 14-5.肝臓の血管系 ①栄養血管系 : 動脈血が流れ込み肝細胞に酸素を与え栄養する。 総肝動脈 → 固有肝動脈 → 小葉間動脈 → 洞様毛細血管 → 中心静脈 → 肝静脈 → 下大静脈。 ②機能血管系 : 静脈血であるが、腸管で吸収された物質などを肝細胞に輸送し、肝としての働きを行う。 門脈 → 小葉間静脈 → 洞様毛細血管 → 中心静脈 → 肝静脈 → 下大静脈。 14-6.肝臓の導管系 : 毛細胆管 → 小葉間胆管 → 右葉内と左葉内の肝管 (詳細は次項、胆路で)

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15.胆嚢 gall bladder

肝臓に接して下面 (胆嚢窩)に位置する。 腹膜に覆われる。 底、体、頚の3部からなる。

(1)胆路 : 肝細胞の分泌する胆汁 → 毛細胆管 → 小葉間胆管 → 右と左の肝管 → 肝管 hepatic duct → (胆嚢からくる胆嚢管 cystic duct と合流) → common bile duct → (膵管と合流)胆管膵管膨大 部 hepatopancreatic ampulla → greater/major duodenal papilla, Vater’s papilla

(2)(胆膵管) 膨大部括約筋、オッデイの括約筋 Oddi's sphincter : 胆管膵管が大十二指腸乳頭に開く部分の 括約筋。

16.膵臓 pancreas

第1~第3腰椎の高さで、後腹壁に位置する。 長さ15㎝、重さ70g。 前方には胃・横行結腸などが、後方には総胆管・門脈・腹大動脈・下大静脈などがある。 腸間膜の中に発生するが、後腹壁に癒着して、腹膜後器官になる。 ① head : 膵頭はC字状の十二指腸にはまり込む。 第1~3腰椎の右。 ②膵体 body ③膵尾 tail ④鈎状突起 uncinate process : 膵頭が、下方に突出した部分。 ⑤膵切痕 pancreatic notch : 鈎状突起がカギ状に曲がる凹部。 上腸間膜動静脈が通過。 1)外分泌部 exocrine pancreas : 膵液を分泌する終末(腺房)からなる。 ① pancreatic duct は、膵尾に始まり膵臓後方を走り、膵頭で下方に曲がり、総胆管と共に大十二 指腸乳頭で十二指腸に注ぐ。

②副膵管 accessory pancreatic duct は細く(無いことも)、小十二指腸乳頭に開く。

2)内分泌部 endocrine pancreas : ランゲルハンス島 islets of Langerhans

17.腹膜 peritoneum と 腹膜腔

腹膜 は (visceral peritoneum 臓側板 : 臓器の表面を覆う) と (parietal peritoneum 壁側板 : 腹壁の内面を覆う)からなる。 両者の移行する部分を 腸間膜 mesentery といい、複雑な形態を示す。 腹膜腔 peritoneal cavity : 壁側腹膜と臓側腹膜により閉じられた空間。中に 腹膜液 peritoneal fluid を容れる。

** retroperitoneal organs : 腹膜腔の後にある臓器を腹膜後器官または後腹膜器官と呼ぶことが ある。 十二指腸、膵臓、上行結腸、下行結腸、腎臓、副腎、尿管、腹大動脈、下大静脈、交感神経幹など。

18.腸間膜

18-1. 腹側胃間膜 (前胃間膜) ventral mesogastrium

胃および十二指腸の上部と前腹壁の間にある。 腹側胃間膜の間に、肝臓および腹側膵原基が発生する。

①肝鎌状間膜 falciform ligament of liver : 腹側胃間膜のうち、前腹壁と肝臓の間の部分。臍から始まり、肝臓の 上面(横隔面)に至る。 肝鎌状間膜の下縁に 肝円索 round ligament of liver (臍静脈の遺残)がある。 ②肝冠状間膜 coronary ligament と 三角間膜 triangular ligament of liver : 肝鎌状間膜は、肝臓の上面で右

側の腹膜が右葉上面を包んだ後、右三角間膜 に、左の腹膜が左葉の上面を包んだ後、左三角間膜 になり、 その間は 肝冠状間膜 として、横隔膜下面の腹膜へと移行する。

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③ lesser omentum : 肝臓下面と胃の小弯および十二指腸上部との間の部分。胃の回転により右の腹腔 は胃の後ろに移動し、 omental bursa (肝臓・小網・胃の後、膵臓・横行結腸間膜・横行結腸の前)という。 1)肝十二指腸間膜 : 腹側胃間膜の遊離縁を作り、肝門と十二指腸上部を連結する。門脈、肝動脈、迷走 神経、総胆管、リンパ管が通過。小網の右端に網嚢孔 epiploic foramen (網嚢への入り口)を作る。 2)肝胃間膜 : 肝臓下面と胃小弯の間の部分。

18-2. 背側胃間膜 (後胃間膜) dorsal mesogastrium

胃と後腹壁の間。胃の回転に伴い大きく変形する。 後胃間膜内に脾臓が発生する。 ① greater omentum : 胃の回転に伴い背側胃間膜が胃の左下方(大弯)で前頭断面の位置となり、前下 方に垂れ下がった部位。横行結腸が胃の下に位置するため、背側胃間膜(大網)は、横行結腸の前面と横行結 腸間膜に癒合する。 ②胃結腸間膜 : 胃と横行結腸の間の大網の部分。 ③胃脾間膜 : 背側胃間膜のうち胃と脾臓の間の部分。 ④胃横隔間膜 : 背側胃間膜のうち胃と横隔膜の間の部分。

18-3. 小腸間膜 (狭義の腸間膜) mesentery

空腸から回腸に着く腸間膜。背側腸間膜に由来。腸間膜の付着部( root of mesentery) は長さ15 cm程 で、左上方から右下方に走り後腹壁にある。腸間膜根から小腸間膜は扇状に広がる。 (18-4)虫垂間膜

18-5.結腸間膜

mesocolon

横行結腸間膜とS状結 腸間膜がある。 上行結腸と 下行結腸の結腸間膜は失 われる。 (18-6)直腸間膜 mesorectum : 直腸上部 の後壁と仙骨の間を結合。

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18-4. 腹膜のくぼみやヒダ

1.腹腔前壁 ①正中臍ヒダ : 臍と膀胱を結ぶ腹膜のヒダ。 (尿膜管索、尿膜管の名残)による。 ②内側臍ヒダ : 臍と膀胱体の側壁を結合する腹膜のヒダ。 (臍動脈の名残)による。 ③外側臍ヒダ : 内側臍ヒダの外側のヒダ。 下腹壁動静脈による。 ④膀胱上窩 : ①と②の間のくぼみ。 ⑤内側鼠径窩 : ②と③の間のくぼみ。 ⑥外側鼠径窩 : ③の外側のくぼみ。 に相当する。 2.腹腔の底部 ①直腸膀胱窩 : 直腸と膀胱の間の陥凹。男。 ②直腸子宮窩 : 直腸と子宮の間の陥凹。 Douglas’ pouch ともいう。女。 ③膀胱子宮窩 : 膀胱と子宮の間の深い陥凹。女。 3.腹膜陥凹 ①上・下十二指腸空腸陥凹 : 十二指腸空腸曲の上下にある。上・下十二指腸ヒダが縁取る。 ②上・下回盲陥凹 : 回腸と盲腸の接続部の上下にある。 回盲ヒダがある。 ③盲腸後陥凹 : 盲腸の後方にある。 入り口に盲腸ヒダがある。 ④横隔膜下陥凹 : 肝臓横隔面と横隔膜との間。 肝鎌状間膜により左右に分けられる。 ⑤肝腎陥凹 : 肝右葉と右腎臓との間の陥凹。

消 化 器 系 の 発 生

第4週、原始腸管 primitive gut (原始腸)が形成され、その内 胚葉から消化管上皮と腺が発生する。内胚葉を取り巻く間葉(中 胚葉)からは消化管壁の筋・結合組織が発生する。 原始腸管 から次の構造が発生する。 ①咽頭腸(咽頭) pharyngeal gut … 口咽頭膜から肺芽分岐 部まで、 口腔、咽頭、舌、扁桃、唾液腺、呼吸器系 ②前腸 foregut … 肺芽分岐部から肝臓出芽部まで 食道、胃、総胆管開口部より近位の十二指腸、肝臓、 胆嚢と胆管系、膵臓 【食道の大部分を除き腹腔動脈の血流を受ける】 ③中腸 midgut … 肝臓出芽部から中腸後腸境界まで 十二指腸遠位と空腸回腸、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸の近位2/3 【上腸間膜動脈の血流を受ける】 ④後腸 hindgut … 中腸後腸境界から排泄腔膜まで 横行結腸遠位1/3,下行結腸、S状結腸、直腸、肛門管上部、膀胱と尿道の上皮 【ほとんどが下腸間膜動脈の血流を受ける】

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1.食道

発生第4週頃、咽頭腸と前腸の境界に肺芽が出来、次第に気管食道中隔により前後の二つの管に分離され、背側に食道、 腹側に気管・肺が出来る。 食道上部の筋層は横紋筋で構成され、第6咽頭弓(鰓弓)由来の間葉より出来る。下部は平滑筋により構成され,臓側中胚 葉由来の間葉よりなる。

2.胃

2-1.胃の回転 : 発生第4週頃、前腸の拡張部として出現した胃は数週間の間に位置と形を大きく変える。 まず長軸(頭尾軸)の周りに90度回転し、 左側が前方に移動する。 この頃、胃の後部 (回転して左側に位置する)が前部(回転して 右側に位置する)よりも著しく成長し、胃の後 部(回転して左側)が大弯となり、前部(回転 して右側)が小弯となる。 次に前後軸を中心にやや回転する。頭方 端の大弯部分は左上で胃底となり、尾方端 は右上方に大きく移動し幽門部を形成する。 2-2.胃間膜 mesogastrium : 胃は腹側(前)胃間膜と背側(後)胃間膜を持 ち、これらも胃の形成に合わせて複雑な形態 を作る。 胃の長軸方向での回転により背側胃間膜 は左側に伸び、胃の後ろに網嚢と言う空間を 形成する(胃の後ろにある腹膜腔が網嚢)。 背側胃間膜は伸長を続け(特に大弯に近 い部位)、胃の前後軸中心の回転により大弯 から下方に向くようになる(大網の形成)。 大 網は胃から続く前面と後腹壁に続く後面があ り、間は網嚢であるが、後にこれらは癒合し 一枚の大網となり(さらには覆っていた横行 結腸間膜とも癒着)網嚢は胃の後ろに限られ るようになる。 背側胃間膜中には脾臓が発生し、胃と脾 臓をつなぐものが胃脾間膜、脾臓と後腹壁を つなぐのが横隔脾ヒダと脾腎ヒダとなる。

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3.十二指腸

胃の前後軸中心の回転および接する膵臓の発育により右に移動しC字型のループを作る。更に後腹壁に付着する結果、 背側十二指腸間膜は消失し(ただし十二指腸上部には残る)、腹膜後位に位置するようになる (腹膜後器官)。

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4.肝臓 と 胆嚢

発生第4週頃、前腸末端の内胚葉性上皮の膨らみとして生じ (肝芽 liver bud、肝憩室 hepatic diverticulum)、横中隔の 中(後に横中隔から腹側胃間膜が生じるため、結果として腹側胃間膜中となる)へ伸び出し、肝細胞と毛細血管が形成される。 前腸と肝芽との連絡部は総胆管となり、胆管から腹方へ胆嚢と胆嚢管が伸び出す。 胆汁産生は発生第12週頃から開始。 肝臓は第10週で体重の10%を占める(出生時には5%)。 肝臓と腹膜 : 肝臓が腹側胃間膜中で成長し、肝臓と前腸の間は小網、肝臓と前腹壁の間は肝鎌状間膜となる。小網は、 肝臓から胃小弯にかけての肝胃間膜、肝臓から十二指腸上部にかけての肝十二指腸間膜の2つとして存在する。 肝鎌状 間膜は肝臓から前腹壁にかけてとなる。 小網が隔てる後ろの腹膜腔(胃の回転により右の腹膜腔が移動)は網嚢となる。 肝十二指腸間膜の自由縁は総胆管、門脈、固有肝動脈を含み、網嚢孔の上縁となる。 肝臓表面は腹膜に覆われるが、頭方の一部は横中隔と接したまま残り、(横中隔の領域が横隔膜となるため)将来は横隔膜 に接した無漿膜野となる。

5.膵臓

十二指腸上皮に由来する 背側膵芽 dorsal pancreatic bud (背側十二指腸間膜の中、大きい、内部に背側膵管)と 腹側 膵芽 ventral p. b. (総胆管の入り口、肝十二指腸間膜の中、小さい、内部に腹側膵管)から出来る。十二指腸の形態変化 により腹側膵芽(および胆管)は背側に移動し、背側膵芽の後下方に位置するようになり、後に癒合する。腹側膵芽は膵臓 の鈎状突起と膵頭下部を作り、背側膵芽は他の部位を作る。 膵芽の癒合による膵臓形成に伴い、内部の膵管の変化が生じる。主膵管は腹側膵管と背側膵管遠位部により形成され、 総胆管と共に大十二指腸乳頭に開く。 背側膵管近位部は副膵管として小十二指腸乳頭に開口する。 膵臓の尾部は背側胃間膜の基部(後腹壁に付くところ)に伸び、やがて膵臓は後腹壁に癒着し、腹膜中ではなく腹膜後 に位置するようになる (腹膜後器官)。 膵島は膵組織から発生し、A細胞B細胞D細胞の順に発生し、インスリン分泌は第10週頃から始まる。

6.脾臓

(前腸から発生するわけではない) 第5週に背側胃間膜中の間葉から発生し、胃の回転に伴って左に移行し、左腎臓表面の腹膜と癒着する。

7.中腸

7-1.中腸ループと生理的臍帯ヘルニア : 第5週、中腸は卵黄腸管(卵黄嚢柄)により卵黄嚢と交通している。中腸の発 育により 中腸ループ intestinal loop と呼ばれる腸ループが上腸間膜動脈を中心に形成され、さらなる伸長の結果、第6週 に臍帯を通って胚外体腔へ脱出する (生理的臍帯ヘルニア physiological umbilical herniation)。 中腸ループは卵黄腸管 付着部を中心に頭側脚と尾側脚に分かれる。中腸ループは上腸間膜動脈を中心に回転し(前方から見て反時計方向に27 0度、頭側脚が右から下に回る)、更に頭側脚の空腸と回腸部分はヘアピン状のループを作る(尾側脚はヘアピン状ループ を作らない)。 7-2.ヘルニアの還元 : 第10週、腹腔の拡張などにより中腸ループが腹腔内に戻り始める。空腸近位部から戻り始め、 腹腔内で左から右へと位置するようになる。 盲腸芽 cecal bud (第6週に生じる、尾側脚の対腸間膜付着側)が最後に戻り、 はじめは腹腔右上部に位置するが、次第に下降し上行結腸と右結腸曲が出来る。虫垂が盲腸の下降中に発生する。

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7-3.腸間膜 : 中腸ル ープと共に背側腸間膜は 回転し、上行結腸は右で後 腹壁に付き腸間膜が消失 する結果、残りの部分は空 腸起始部(左上)から回盲 部(右下)にかけて付着線 (腸間膜根)を持つ腸間膜 (固有腸間膜)となる。

8.後腸

横行結腸は背側腸間膜を 持つが、大網と癒合する。 下行結腸は左後腹壁で腹 膜後部に位置する。 (上行結腸と下行結腸は胎 生4ヶ月頃、後腹壁に付着 する。) S状結腸の腸間膜(S状結 腸間膜)は短いながら存在 する。

9.排泄腔

後腸終末部である排泄腔は、排泄腔膜 (排 泄腔の内胚葉と体表の外胚葉からなる)により 体外と接する。 排泄腔は尿膜と後腸の境から発する 尿直腸 中隔 により腹方の尿生殖洞と背方の直腸・肛 門とを隔てるようになり、第7週までに尿直腸 中隔が排泄腔膜と癒合して(ここは後の会陰 腱中心)、腹側の 尿生殖洞 と尿生殖膜と背 側の 直腸・肛門管 と 肛門膜 とに分ける。 肛門膜の周囲の外胚葉隆起により肛門膜は 肛門窩 と呼ばれる陥凹の底になり、第8週に 破れる。

10.肛門管

肛門管上部2/3は後腸から発生し、下1/3 は肛門窩から発生し(血管支配は内陰部動脈 となる)、境界は肛門弁にみられる歯状線とな る。

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発生第3週、側板中胚葉の中に多数の体腔空隙ができ、 ついで癒合し胚内体腔ができる。すると中胚葉は 壁側中 胚葉層(→壁側板を形成) と 臓側中胚葉層(→臓側板を 形成)に分けられる。胚内体腔の内面を覆う細胞(上皮性 の細胞)は中皮で、胚内体腔内面を覆う漿膜となる。 発生第22日に心臓領域の頭方に中胚葉の肥厚として 横中隔 (将 来の横隔膜の一部)が現れる。頭屈によりこれらの構造は腹側尾方に 移動し、横中隔は心臓領域と卵黄嚢柄との間に位置するようになる。 横中隔の発達により胸腔と腹腔は不完全ながらも区別されるが、前腸 の両側に両腔をつなぐ 心腹膜管 が残る。 胸腔内では 胸心膜ヒダ が側方から成長を始め、肺も成長する。胸 心膜ヒダは胸腔内に伸び出し 胸心膜 となり(横隔神経が侵入する)、 ついには左右がつながり正中で肺根に融合し、最終的には胸腔は心膜 腔と左右の胸膜腔に分かれる。胸心膜は線維性心膜となり、中皮からな る心膜は漿膜性心膜となる。 腹腔内には消化器が発生発達し、壁側板と消化器表面を 覆う臓側板との間は狭い空間となり 腹膜腔 となる。 胸腔が分割された後も胸膜腔と腹膜腔は心腹膜管によりつ ながっている。横中隔の高さで、背側から 胸腹膜ヒダ が伸 び出し 胸腹膜 となり、やがて横中隔と癒合して第7週まで に心腹膜管は閉じる。胸腹膜の辺縁は体壁から筋芽細胞 が入り込み筋を形成する。 結果として横隔膜は ①横中隔 由来の腱中心を含む大部分、 ②左右の胸腹膜由来の部 分、 ③体壁に由来する辺縁部から構成される。 横中隔は、発生第4週頃、頚体節に当たる部位に位置して、 脊髄頚部第3~第5分節の神経線維が横隔神経として侵入 する。その後、頚部胸部の発達に伴い胸体節と腰体節の間 辺りに位置するようになる。 結果、横隔 神経は頚部から長い経路を通ることにな る。更に胸腔内で胸心膜中を通る結果、 横隔神経は心膜中を通過する。

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1.鼻腔 nasal cavity

鼻腔は、外鼻(鼻骨と鼻軟骨など)を外壁として、外鼻孔 nostrils に始まり、後鼻孔 choanae で咽頭(鼻部)に続く、 鼻粘膜 nasal mucosa でおおわれて出来た空間。 鼻根、鼻背、鼻尖、鼻翼がある。 内腔の正中にある壁 (鼻中 隔 nasal septum) により左右に分かれる。 (1)鼻腔の外側壁からは内方に伸びた3つの がある。 ①上鼻甲介 superior nasal concha : 篩骨の一部

②中鼻甲介 middle nasal choncha : 篩骨の一部

③下鼻甲介 inferior nasal choncha : 独立した骨で上顎骨に付着 (2)各鼻甲介の下方の空間を と言う。

①上鼻道 superior nasal meatus ②中鼻道 middle nasal meatus

③下鼻道 inferior nasal meatus : 鼻涙管が 開口。 *総鼻道 : 鼻中隔の両脇で上中下鼻道に 分かれていない部分。 *鼻咽道 : 鼻腔後方の各鼻道が合わさっ た部位。 (3)鼻腔 : 前後6㎝ほどの空間。 鼻中隔が無 くなった後鼻孔で咽頭に続く。 ①鼻前庭 : 鼻腔入り口。 皮膚が続き、鼻 毛 が生える。 ②呼吸部 : 大部分。分泌腺と静脈。 ③嗅部 : 上鼻甲介と周辺の鼻中隔を覆う 粘膜で、嗅上皮 からなる。 *蝶口蓋動脈(顎動脈の枝)と前後篩骨動脈(眼動脈の枝)が分 布する。

2.副鼻腔 paranasal sinus

鼻腔周囲の骨の中には腔所があり、副鼻腔という。 鼻腔に続く粘膜(多列線毛上皮)が覆う。 ① maxillary sinus : 上顎骨体の中。半月裂孔 を経て中鼻道に開口。 ② frontal sinus : 前頭骨の中。 前頭洞口から半月裂孔を経て、中鼻道に開口。 ③ sphenoidal sinus : 蝶形骨中。 上鼻道に開口。 ④ ethmoidal sinus : 篩骨迷路中。 骨学では篩骨蜂巣。前・中・後篩骨洞がある。 上・中鼻道へ。 3.咽頭 pharynx (後述)

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