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乳児唾液腺の細胞学的研究

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(東京女医大柏第28巻第9号頁663−672昭和33年9月)

乳児唾液腺の細胞学的研究

1)緒

東京女子医科大学解剖学教室(主任 久保田くら教授) 言 小 島 ジマ 桂 ケイ 子 コ

(受付昭和33年7月28日)

唾液腺の意i義についてはその外分泌機能と共 に,内分泌機能として身体の発育,栄養,脂肪及 び糖の代謝,薪陳代謝に重大な関係を有する事は 古くより認められていたが本邦にわいて緒:方等 (1934)が動物実験により内分泌機能の存すること を明らかにした。人唾液腺は出生直後に分泌を開 始するが完全な働きを開始するのは生後4カ月以 後であって,多糖類の消化は生後2カ月以前では 不能であり,4ヵ月以前では不完全であるとされ ている。しかし上述の所見を明らかにした細胞学 的研究は見られない。秋吉(ユ929)は胎児,初生 児及び小児の耳下腺について組織学的に比較を試 み,耳下腺の基礎は胎生第7週乃至第8週に認め られ次第に発育して腺構造の完成は胎生第7カ月 の終りであり,初生児では組織学的構造は成人と ほぼ同一であるが,排泄管系の発達は不充分であ るという。恵美(1939)の唾液腺の発育に関する 研究の中に人唾液腺の腺体の発育は顎下腺及び舌 下腺においてはすでに胎生時に極めて旺盛で初生 児においてすでに成人組織像に類似の構造を呈す るのに反し,耳下腺腺体の発育は著しく遅延し出 生後に至って漸く著明となる。排泄管系の分化殊 に線条部の出現,完成及び腺体の発育も常に顎下 腺に遅れる。すなわち,特有な線条構造は出生後 に禺現して完成せられると記載されている。何れ も乳児唾液腺について特に詳細な所見は述べられ ていない。私は出生直後より10カ月に至る各月令 やの乳児唾液腺について細胞学的に検索したので報 告する。 ∬) 研究材料及び方法 1)赫 料 人の出生直後より11年9ヵ月に至る23例の耳下 腺,顎下腺および舌下腺を用いた。すなわち,乳児20 例,1年以上のもの3例である。何れも急死し死因不 明の乳児および幼児で殆んど死の直前まで健康な生活 をなし,長い疾病のための影響はないと思われる。 2)研究方法。 固定はツェンケル・フォルモーノレ,フォルモール・ アルコール,シャンピー氏液を用い,パラフィンに包 埋,4∼5μの連続切片とし,染色は鉄ヘマトキシリン, へ’マトキシリン・エオジン,フ1一イルゲン・バウエノレ 氏法,ベンダ語法およびクフレ氏法等を用いた。

皿) 自家所見

1)耳下腺の細胞学所見

Cl)生後1カ月及び2カ月の耳下腺

生後1カ月の耳下腺は全般に幼弱で結合組繊多 く血管の混入も多い。脂肪組織は少量認められる。 腺細胞はi漿液性細胞のみより成る。腺腔の形成 が明らかでないものが多く,各細胞の境界は明瞭 を欠く。細胞は充盈期を示すもの多く,補充期の 細胞は少数認められ,排出期の細胞は認められな い。充盈期の細胞では騒粒は細胞内に散在するが あまり粗大でなく全般的に穎粒形成のカが弱いと 思われ,細胞の大さも比較的小で細胞は全体に暗 調を呈する。ミトコンドリアは認められない。核 は比較的大きく円形,濃染して細胞基底部に近く 存する。核小体は円形で比較的大きく1乃至数個 見得る。補充期の細胞では核は細胞の中央に近く 位しN形で濃染する。核上部には球状,小桿状の ミトコンドリアとミトコンドリアの先端が膨大離 断したと考えられる南扇粒とを認める。 核側部及び核下部に

Keiko KOJIMA (Department of Anatomy, Tokyo Women’s Medical College) : A ,cytological study

on the salivary gland of infants.

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認められる。その形は糸状文は小桿状である。線 条管は未だ発達せず管壁は2乃至3層を.なし配列 もi雑然としているものが多い。細胞は比較的小き ぐ充盈期を示し,小馬粒が細胞内に少量認められ 全般に暗調を呈する。ミトコンドリアは認められ ず核は濃染し円形をなして細胞基底部に近く存す る。従って線条構造は認められない。排泄管系も 未熟で細胞の配列は不整である。以上の如く,生 後1ヵ月の耳下腺においては腺細胞の分泌機能は 静止の状態で全般に液化の進展しないままの状態 に留っており殆んど同時性に作業している。各主 管は:互に半同時性に作業している。 生後2ヵ月の耳下腺の所見は生後1カ月と殆ん ど同様である。 (2)生後3カ月の耳下腺

生後1∼2ヵ月のものよりも結合組織は減少

し,脂肪組織は増加する。血管の混入はなお多い。 生後3ヵ月の耳下腺について見るに,その前半(1 00盲以前)と後半(100日以後)とでは細胞の機能 状態に著しい差異のあることを認めた。すなわち 前半のものでは生後1∼2カ月のものと大差なく, 分泌機能は静止の状態を示す。これに反し後半の ものでは分泌機能の開始を思わせ,後述する生後 4カ月の所見に近い機能形態を示す。すなわち補 充期の細胞の増加が認められ同一主管を形成する 腺細胞群においてミトコンドPアを多量に含む補 充期の細胞の間に,空胞を含む排出期の細胞が1 ∼2コ混在する所見がしばしば認められる。また 充盈期の細胞よりなる細胞群も認められるが生後 1∼2カ月に比して分泌顯粒の発育が進み線腔側 には排出寸前の粗:虹鱒粒の集合が見られる。ま た,筆管の液化が進み明調景によって囲まれた融 解期の粗大夕蝉も見られる。排出期の細胞は,充 盈期の顯粒が液化融解して内容が排出せられて空 胞となったものを包含しており,細胞は大きくミ トコンドリアは少く核は明調円形をなして細胞の ほぼ中央に位置する。中には明調畳を有する単粒 を空胞間に残したものも認められる。 以上のごとく腺細胞においては同時性に作業す るものがあると同時に,半同時性に作業するもの も見られる。すなわち,分泌液化が起りっっある ことを思わしめる。 線条管は細胞配列が一層で整然としたものも認 められるがなお2∼3層のものも多く認められ る。2∼3層のものは各細胞は充盈期で静止の状 態にあるが一層のものは補充期多く排出期の細胞 1∼2コを混在する。線条構造は未だ認められな い。以上の所見は腺細胞と同時に線条管細胞にも 分泌機能が起り緩徐液化が始まったことを思わし める。 (3}生後4ヵ月の耳下腺 全般にはなお幼弱で結合組織多く線条管も2∼ 3層のものが多いが脂肪組織は増加する。 腺細胞は補充期の細胞が多くミトコンドリアは 著しく増加し小照状及び球状をなして核上部に存 在する。補充期細胞群の間に排出期の細胞が混在 し,分泌作業の行われることを思わせるがなお融 解期にある粗大顯粒が子羊側に充満するところの 充盈期細胞も認められる。排出期細胞のみの小団 も見られる。以上の所見は細胞の液化が進み排出 が行われることを思わしめる。種々なる時期の見 られることは緩徐な液化の行われつつある証左で ある。 線条管細胞において2∼3層よりなる細胞では 充盈期が多く静止の状態を呈するが一層のもので は核は細胞中央よりむしろ上方に偏して存在し, 開調で核十部は広く明らかに線条構造を認める。 すなわち,糸状小桿状のミトコンドリアが核下部 に縦に密に配列して線条を形成する。しかし未だ 完全ではない。以上の所見は腺細胞の分泌液化が 進むと同時に線条管細胞の分泌液化も進み漸く排 出の行われる状態と認められるQ (4)生後5ヵ月の耳下腺 生後4カ月のものと大差なく緩徐な液化と排出 の行われつつある形態を示す。すなわち,排出期 の細胞と補充期の細胞とが増加し充盈期の細胞は 減少する。腺細胞は半同時性に作業するものが多 く各主管は互に半同時性に作業する。 線条管の細胞も亦補充期が多く管腔は広く排出 された分泌穎粒を充しているもめが多い。 基底部においては線条構造を明らかに認める。 ㈲ 生後6カ月の耳下腺 結合組織は減少し脂肪組織は増加する。 排泄管系の発育が進み一層の線条管を多く認め る。腺細胞は排出期の細胞多く,補充期の細胞こ れにつぎ充盈期の細胞は少数認められる。 線条管の細胞もまた補充期多く,空胞形威によ って膨大した排出期の細胞を混ずる。管腔には排

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出された分泌穎粒を認め基底部には線条構造を著 明に認める。前細胞は半同時性に作業し,各主管 も互に半同時性に作業しており,線条管細胞もま た腺細胞に近い機能状態を示して緩徐な液化及び 排出が行はれる正常の機能状態にあるものと思わ れる。 ㈲ 生後7カ月の耳下腺 結合組織は少く脂肪組織が多い。 生後6カ月の耳下腺の所見とほぼ同様であるが 排出期の細胞が多く補充期の細胞これに次ぎ,充 盈期の細胞は少数認められる。補充期の細胞と排 出期の細胞とが混在する半同時性の腺細胞もなお 多いが,排出期または補充期の細胞のみで構成さ れる主管も認められる。すなわち同時性に作業す る癌細胞が見られる。 線条管の細胞は補充期が多く,排出期の細胞を 混じている。線条構造は明らかに見られる。 すなわち,線条管の分泌も旺盛なる形態を示 す。 (7)生後8カ月及び9カ月の耳下腺 結合組織少く脂肪組織が多い。 腺細胞は排出期の細胞が大多数を占め補充期の 細胞がこれに次ぎ,粗大穎粒を腺腔側に包含する ところの充盈期の細胞も少数認められる。 腺細胞は半同時性に作業するものよりも同時性 に作業するものが多く急速な液化分泌の様相を示 す。 線条細胞も排出期と補充期の細胞が多く,充盈 期の細胞は認められない。管腔には排出された分 泌穎粒を容れ,基底部には線条構造が明らかであ るσ 生後9カ月の耳下腺の所見は殆んど生後8カ月 のものと同様である。 ⑧ 生後10カ月の耳下腺 腺細胞は排出期の細胞が多く,補充期の細胞は 少い。充盈期の細胞も少数認められる。充盈期の 細胞は穎粒が粗大で数も多く顯粒形成の盛な状態 を現はしている。 腺細胞は多くは同時性に作業し,半同時性に作 i曝するものは少数である。 線条管の細胞は一層をなすものが多いがなお2 乃至3層のものも認められる。細胞は主として排 出期と補充期とより成り,多くは同時性に作業し 少数が半同時性に作業しているっ 線条構造は認められるが鮮明ではない。分泌活 動が旺盛な時期にはミトコンドリアの消費もたか まり,ミトコンドリアが配列して形成される線条 構造も叉不鮮明となると考えられる。しかし顎下 腺に見られる2極性を思わせる判然たる変化は認 められない。 2) 顎下腺の細胞学的所見 ω 生後1カ月の顎下腺 耳下腺に比較してすでに排泄管系の発達は進ん でいるが線条管の細胞はなお2∼3層をなすもの が多く,また結合組織も多く血管の混入も多い。 腺細胞は殆んど漿液性細胞より成り,粘液性細胞 は極めて少く,漿液性細胞群の中に点在しまたは 半月をなして1∼2コ混在する。粘液性細胞は明 調細雨し同大の網目を呈し,網目上に小躍染穎粒 が点:在しミトコンドリアは認められない。核は細 胞基底部に偏在し濃縮不整形をなす。漿液性細胞 は補充期多く充盈期細胞これに次ぎ,少数の排出 期の細胞も認められる。主管細胞は多くは同時性 に作業し少数のものは半同時性に作業する。半同 時性に作業するものは補充期の細胞の問に1∼2 コの排出期の細胞を混ずる。上述の所見は多くの 細胞は未だ静止の状態であるが少数の細胞は緩徐 なる液化の現象を示すものである。 線条管は円形または楕円形をなし,管腔は広い が管壁の細胞の配列は2∼3層ををなしかつ不整 である。一層のものは少数認められるがその細胞 は補充期を示し円柱形をなし核上部には球状又は 桿状のミトコンドリアと共に小頼粒を少量容れ 核下部は広く不明瞭乍らすでに線条構造を認め得 る。核は暗調で円形または楕円形をなす。上述の ような補充期の細胞の中に1∼2コの排禺期の細 胞を混在する。如上のごとく線条管においても緩 徐なる液化排出の行われる所見を呈している。 ② 生後2ヵ月の顎下腺 線条管の細胞は一層で1ヵ月のものに比し配列 が整然としている。腺細胞においてはなお漿液性 細胞が大多i数を占め粘液性細胞は点在するに留ま る。漿液性細胞においては補充期が多く排出期の 細胞を混じている。充盈期の細胞は少数認められ る。同一主管細胞に補充期と排出期の細胞とが混 在する揚合が多い。粘液性細胞は膨大し確認して 比較的明調で網目は小さく小調粒が点在する。核 は基底部に圧平されて不整形をなす。 一一 665 一 ’

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線条管の細胞は主として補充期より成りその中に 排出期の細胞1∼2コを混ずる。少数の充盈期の 細胞を認める。線条構造はなお不鮮明である。以 上のごとく主管細胞は半同時性に作業するものが 多い。各主管も:互に半同時性に作業している。線 条管の細胞もまた主管細胞とほぼ同様の機能状態 にあって緩徐なる液化と軽度の分泌物排出とが行 われている状態を示している。 {3)生後3ヵ月の顎下腺 腺細胞は大多数が漿液性の細胞で中に少数の粘 液性細胞が点在する。漿液性細胞においては補充 期が多く,その中に排出期の細胞が混在し,少数 の充盈期の細胞を認める。粘液性細胞は生後2カ 月のものと同様で明調淡染し細胞は比較的大であ る。線条管は著明に発達し多くは細胞配列二層の 整然たるものである。 細胞は補充期が多く,中に排出期の細胞を混ず る。少数の充盈期の細胞も認める。線条構造は明 瞭となる。従ってその活動漸く活譲となることを 思わしむる。 (4)生後4ヵ月の顎下線 腺細胞において漿液性細胞が大多数を占めるが 粘液性細胞も増加する。粘液性細胞は1∼2コの 主管を形成して漿液性細胞の間に散在し1また半 月を形成して混在する。粘液性細胞には明調で網 目の大小不同のものと,暗調で網目の大小不同且 つミトコンドリアを認め得るものとがある。漿液 性細胞は補充期が大多数を占め排出期の細胞1∼ 2コを混ずる。なお少数の粗大顯粒を腺腔側に残 す充盈期の細胞も見られる。 線条管は細胞配列が一層のものが多く内部構造 は補充期が大部分を占め,排出期の細胞の少数が 認められる。線条構造は鮮明に認められる。すな わち腺細胞では多くは半同時性に作業し各主管は :互に半同年性に作業している。線条管の細胞は腺 細胞より少しく遅れた分泌課程にあって緩徐なる 液化排出が常に行われていることを思わしめる。 〔5)生後5カ月の顎下腺 生後4カ月の所見とほぼ同様である。 〔6)生後6カ月の顎下腺 結合組織は全般的に減少し腺細胞の発育が著し い。腺細胞においては漿液性細胞が大多数をしめ 粘液陸細胞は小罪を形成して散在する。 粘液性細胞は暗調で比較的小さい細胞が増加 し,膨大しかつ明調淡染の細胞は減少する。漿液 性細胞では排出期の細胞が:大多数をしめ補充期の 細胞が混在する。粗大穎粒を腺前側に残し排出期 に移行せんとする充盈期の細胞も少数認められ る。線条管の細胞は一層をなすもの多く排出期の 細胞が多数をしめ少数の補充期の細胞と充盈期の 細胞とを認める。 排出期の細胞は細長く核はやや管腔側に寄り広 い核下部には小頼粒及び空胞がみられ線条構造は 混乱する。如上の所見は分泌物排出が管腔側と基 底側とに同時に起り外分泌と同時に内分泌が行わ れるのではないかと思われるものである。すなわ ち,2極性の機能ある証左と思われる。 (7)生後7ヵ月の顎下腺 分泌機能は益々増進し漿液性細胞の大多数は排 出期にあり,少数の充盈期と補充期の細胞とを認 めるが,同一主管細胞に異る時期の細胞が混在す るものは減少し,同時期の細胞のみより成るもの の増加が見られる。すなわち,腺細胞においては 同時性に作業するものが現われ半同時性に作業す るものが減少する。粘液性細胞の所見及び線条管 細胞の所見は生後1カ月のものと殆んど同様であ る。 (8)生後8カ月及び9ヵ月の顎下腺 腺細胞においては粘液性細胞の増加が著しく, 比較的大なる集団をなして散在する。粘液性細胞 は小形となり暗調を呈し,網目の大小は不同,小 掬粒が点在し少数のミトコンドリアを認める。す なわち,正常の機能を示す。漿液性細胞は排出期 の細胞が大部分をしめ補充期の細胞之に次ぎ,充 盈期の細胞は少い。腺腔は広く排出された穎粒を 含む。 線条管の細胞は一層をなして広い管腔を作り排 出された分泌顯粒を入れる。排出期の細胞が多く 補充期の細胞がこれに次ぎ少数の充盈期の細胞も 認められる。核は細胞の中央よりむしろ管腔側に 近く存在し核下部.は広く線条構造は乱れて不鮮明 となり空胞形成が見られる。 すなわち2極性を示している。腺細胞は大部分 が同時性に作業し各主管に半同時性に作業してい る。線条管も亦主管細胞と同様の機能状態にあり 分泌液化排出共に盛な状態と思われる。 生後9ヵ月の顎下腺もほぼ同様の所見を呈して いる。

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⑨ 生後10カ月の顎下腺 骨細胞において粘液性細胞はなお漿液性細胞に 比し少数で暗調を呈し,網目の大小は不同で小穎 粒が点在するところの正常の機能状態を示す。漿 液性細胞は排出期が:最も多く少数の補充期と充盈 期の細胞とを認める。腺細胞は同時性に作業する ものが大多i数を占め,各主管は:互に半同時性に作 業して急速なる液化の様相を呈す。 線条管の細胞は排出期の細胞と補充期の細胞と を見,前者が大多数を占める。すなわち,腺細胞 と同時期を示しており,腺活動は旺盛なることを 示す。 ㈹ 生後1年4ヵ月の顎下腺 線条管の細胞は殆んどが一層をなし,整然と配 列する。排出期の細胞が多く核下部では線条構造 の混乱が認められる。 腺細胞においては粘液細胞が著しく増加し大小 の群をなして散在しまたは半月を呈する。細胞は 暗調で網目は小ざくミトコンドリアを点在せしめ 分泌活動の盛な時期を示す。漿液性細胞において は排出面と補充期の細胞が多く充盈期の細胞は少 数に認められる。主管細胞は同時性に,各主管は 互に半同時性に作業しており,線条管もまた同様 な時期にある。すなわち,液化排出の共に盛に行 われる様相を呈している。 ω 生後2年の顎下腺 1年4カ月のものと大差ない所見を呈す。 囮 生後11年9ヵ月の顎下腺 前2者と同様に液化排出の盛な様相を呈してい るが,粘液細胞が著明に増加し大なる群をなして 轍在する。 3) 舌下腺の細胞学的所見 (1}生後1カ月の舌下腺 少数の2∼3層の排泄管を認めるのみで排泄管 系の発達が遅れ,線条管は認め得ない。筋細胞は 粘液性細胞が大部分を占め少数の漿液性細胞を混 ずる。粘液性細胞は明調室染の膨大せるものが多 く比較的大なる顯粒を含み網構は明瞭で網目の大 小は不同である。核は基底部に圧平せられて濃染 し不整形をなす。他に少数の暗調を呈する小形の 細胞を認める。この細胞は,網構は明瞭であるが 網目は小さく可乙線穎粒と少数のミトコンドリア を含む。 核は濃染して基底部に存する。腺腔は明瞭でな いものが多い。漿液性細胞は補充期が多く少数の 排出期の細胞を混ずる。充盈期細胞も少数認め る。如上の所見は腺細胞は同時性に作業するもの が多く半同時性に作業するものは少いことを示 し,緩徐なる液化の開始されつつあることを示し ている。 (2)生後2ヵ月の舌下腺 線条管は生ec 1ヵ月のものと同様に認められず 少数の排泄管が見られるのみである。腺細胞にお いては少数の漿液性細胞は前者と同様の変化を.示 している。粘液細胞が大多数を占めており,明調 にして大なる細胞が稽減少し,暗調にして小なる 細胞が増加する。すなわち,分泌機能が梢昂進す る様相と思われる。 〔3)生後3カ月の舌下腺 線条管を認めうる。しかし一椎葉に1コ認め得 るものは少い。面壁の細胞は1層よりも2∼3層 のものが多い。線条構造は認められない。腺細胞 においては樹粘液性細胞には二種類が見られ,膨 大せる明調な細胞と小形の暗調の細胞とがほぼ同 量に認められる。漿液性細胞は少数で補充期細胞 が多く排出期の細胞これにつぐ。同一主管に混在 するものも見られる。 (4)生後4ヵ月の舌下腺 生後3カ月のものとほぼ同様の所見を呈して居 り線条管の線条構造はなお認め得ない。 ㈲ 生後5ヵ月の舌下腺 腺細胞において粘液性細胞では暗調小形の細胞 が益々増加の傾向を示す。腺腔は著明に認めう る。漿液性細胞も腺腔拡大し,補充期の細胞が多 く,排出期の細胞を混じ,少数の充盈期の細胞も 見られる。 線条管は少数認められる。線条構造は明らかで ない。管腔は広くその中に穎粒の排出されたもの を認める。細胞は充盈期と排出期の細胞とが混在 する。 (6)生後6ヵ月の舌下腺 腺細胞は粘液性細胞が大多i数を占めその中に少 i数の漿液性細胞を認める。粘液性細胞は暗調小形 のものが著しく増加し,膨大せる明調の細胞は減 少するが,なお前者の数よりも後者の方が多い。 漿液性細胞は鼻腔拡大し補充期の細胞多く,排出 期の細胞の少数を混じているものの他に充盈期の 細胞を少数認める。線条管は少数ながら一層のも 一 667 一

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のが認められ,管腔は拡大して分泌顯粒をいれ る。細胞は補充期のもの多く排出量のものを混じ 他に充盈期の細胞も少数見られる。すなわち,大 多数の細胞においては核は中央よりも梢上方に移 動し,核下部は広いが線条構造は明瞭ではない。 排泄管は2乃至3層をなし具なるものを認める。’ 以上の所見から単細胞において分泌及び液化が進 むと同時に排泄管系も同程度の機能状態を示し, 分泌及び排泄が盛であると考えられる。 (7>生後7ヵ月の舌下腺 前者ζほぼ同様の所見を呈し分泌機能はさらに 増進する所見が見られる。 (8)生後8カ月の舌下腺腺 腺細胞においては粘液性細胞の暗調小形のもの が増加し,明調にして大なるものを凌駕する。漿 液性細胞においては補充期と排出期の細胞が多く 線条構造は漸く鮮明になるものも見られるがなお 不鮮明のものが多い。 (9)生後9カ月の舌下腺 前者とほぼ同様の所見を呈しとくに変化を認め ない。 働 生後10カ月の舌下腺 腺細胞においては粘液性細胞が多く暗調小形で 網目は大小種々,ミトコンドリアを含む細胞が多 く認められる。これに反し明調膨大して小顯粒を 含む細胞は少い。漿液性細胞は少数存在し排出期 と補充期の細胞を多く認める。充盈期の細胞は少 数である。すなわち,腺細胞は半同時性に作業す るものが多く,同時性に作業するものは少い。 線条管の細胞にわいては補充期の細胞に排出期 の細胞を混じて半同時性に作業するものが多い。 線条構造はなお不鮮明のものが多い。以上は分泌 と排出が相当旺盛に行われている所見である。 IV)結 、論 乳児唾液腺においては顎下腺の発育が最も早 く,その機能も緩徐乍らすでに出生直後から現わ れてわり,舌下腺の発育もほぼ平行する。耳下腺 は顎下腺よりも稽遅れて発育し機能もまた梢遅れ て生後3カ月頃より開始さ静生後4ヵ月頃から次 第に活譲となる所見が認められる。とくに線条管 における線条構造が顎下腺においては生後1カ月 ですでに不鮮明ながら認められ,舌下腺において は生後6.ヵ月,耳下腺においてla生後4カ月に認 められる。内分泌機能のある証左と見られるとこ. ろの線条構造の2極性が見られるが,顎下腺に おいては生ff 6カ月においてすでに著明に認めら

れ,耳下腺においては生後10カ月に初めて認

められる。舌下腺においては2極性は認められな い。すなわち,舌下腺では線条管の数も少くその 機能も細螺ではないものと思われる。 1)耳下腺における所見 生後1∼2カ月の所見は組織の発育は不十分で 幼弱であり腺細胞は未だ活動を開始せず静止の状 態にあり,線条管の細胞に線条構造は認められな い。3カ月の前半においては生後2カ月の所見と ほぼ同様でなお静止の状態に留るが後半(生後100 日以後)に至り俄かに異る所見を呈する。すなわ ち,腺細胞は半同時性に作業するものが多く,緩 徐なる液化のある事を示す。線条管の細胞は未だ 変化が認められない。かかる所見は漸く活動を開 始せんとする像と老えられる。 生後4カ月に至って線条構造を認め分泌液化と 共に排出の行われる様相を呈し,乳児においては 生後4カ月頃より唾液の分泌旺盛となる事実と一 致する。さらに月影の進むに従い分泌機能は増進 し,生後7カ月に到って腺細胞は半同時牲に作業 するものと同時に,南島牲に作業するものが増加 してさらに分泌液化の旺盛となる事を示す。生後 8ヵ月には腺細胞は殆んどが同時性に作業する様 になり線条管の細胞も腺細胞と同様の機能状態に あって,分泌は益々盛になることを示す。生後10 カ月に至って線条構造は再び不鮮明となり空胞を 形成して混乱を示し,所謂2極性の存在を思わせ る状態となる。すなわち,内分泌機態も起って来 たものと老えられる所見を呈する。 2)顎下腺における所見 生後1カ月においてすでに腺細胞は半同時性に 作業するものが多く緩徐なる液化の行われる様相 を認める。線条管においても不鮮明ながら線条構 造を認める。すなわち,少量の分泌物排出は此の 時期にすでに行われて居ることを示す。生後3カ 月に至れば線条構造は明瞭に認められいよいよ分 泌機能の増進を思、わしめる。生後6カ月において は線条構造の混乱が見られ2極性を示して内分泌 機能のあることを思わせる所見を呈する。生後7 カ月に至り半同時性に作業する細胞よりも同時性 に作業する細胞群が多数となり益々液化分泌が急 速に行われることを思わしめる。生後8力且に至

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りさらに腺細胞の機能は昂進し,大多数が同睡性 に作業する。線条管の細胞もまた排出期が多く分 泌旺盛なる像を呈する。生後エカ年以上のものに おける腺細胞は同時性に作業するものが大多数を 占め,各主管は互に半同時性に作業して旺盛なる 分泌及び排出が常に行われる像を呈する。 3)舌下腺における所見 生後1ヵ月では線条管は認められない。腺細胞 は大多数は粘液性細胞で少数の漿液性細胞を混ず るが明調の粘液性細胞は膨大し機能的に静止の状 態を呈するかあるいは低調な分泌の行われる像を 示す。生後2カ月においては暗調の粘液性細胞が 梢増加し軽度の分泌機能増進を示し,生後3カ月 に至りさらに暗調の細胞が増加すると同時に少数 の線条管を認める。しかし線条構造は見られな い。生後6カ月に至って暗調の粘液性細胞はきら に増加し,線条管は不鮮明ながら線条講造を示し 分泌機能の相当盛な像を呈する。生後8カ月に至 れば暗調の粘液性細胞が多数を占めるが線条構造 はなお不鮮明で腺細胞の分泌機能に比して線条管 の細胞の機能は低調なることを恩はしめる。生後 9カ月以後において腺細胞は分泌機能の増進を示 すが線条管の紐胞においては特別の変化は認めら れず,舌下腺においては線条管の機能は不活濃に ・留るものと』考えられる。 終に臨み御指導御校閲を賜った久保田くら教授に深 謝致します。 交 献 1)秋吉良交:長崎医会誌,7(1)106(1929) 2)高木耕三:大阪医事新誌,6(1、323(1935) 3)恵美哲夫:東東医学会雑誌,53(4)245 (1939) 4)恵美哲夫:日本病理学会会誌,26,616(1936) 27, 556 (1937) 28, 448 (1938) 5) 関根綱矢巨:実験医学朶佳誌, 21, 581, 664, 841, 1078 (1937) 6)藤江君夫:解剖学雑誌,24(3)95(1949) 7)伊藤正明: rl 20(3)217(1942) 8)生沼昭一:人耳下線の細肚葺的研究(1946) 9)緒方知三郎:日本病理学会誌,38,161く1949) 10)伊東俊夫:解剖学雑誌,24(3)95(1949) 11)大原秀敏:日組.録,1(1)21(1950) 12)正井秀夫: 3〔3)169(1951) 13)村田謙輔:千葉医学会雑誌,27(3∼4)162 (i952) 14)吉村不=夫,綜含臨床,4(特集号)52(1955)

15) M511endorff, W.V. : Handbu(h d. mikr. Anat. d. Men:一chen 5, 95 (1927)

16) Zimmermanm, K.W.:Arclx .mikr. Anat. 52 582 (1898)

17) Heidenhain, M.:Anat. Anz. 52, 305(1920)

18) Solger, B.: Anat Anz. 9, 415 (1894)

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」 1.耳下腺(出生直後) 固定シャンピー一驚液 染色鉄ヘマトキシリン 100× 幼弱な耳下腺 2.顎下腺(生後2ヵ月) 固定シャンee 一・氏液 染色鉄ヘマトキシリン 900× 充盈期の細胞に混在する排出期の細胞

轟噸監

LK

3.顎下腺(生後10ヵ月) 固定シャンピF一一氏液 染色鉄ヘマトキシリン 900× 補売期の細胞の綜条構造

kC

瀞響

4.顎下腺(生後6ヵ月) 固定シャンピF一・ ft液 染色鉄ヘマトキシリン 900× 同一主管紬胞群に種々の時期を示す細胞混在 5.顎下腺(生後6ヵ月) 固定シャンピe一一氏液 染色鉄ヘマトキシリン 900× 空胞形成せる排出期細胞

、ダ船

轟撫 鷲 1二3

1

蜜ひ

6.顎下腺(生後2年) 固定シャンピー氏液 染色鉄へreトキシリン 900× 補充期と充盈期の細胞

(9)

7. 顎下腺(生後8ヵ月) 固定フオルモー・一]レア・レコール 染色ベンダ氏法 900× 充盈期の細胞に含まれる粗大顎粒,融解しつつ あって明調最に囲まれたものも見える。 攣 越舳, 博 篤・1 8.耳下腺(生後5ヵ月) 固定シャンピー’氏液 染色鉄ヘマトキシリン 900× 充盈期細胞顎粒は小さい。 熱 wa噸, 蹄懸轟寓 ◎弍諸 ,1矯∫

蝋1論題

噸 9.顎下腺(生後6カ月) 固定シャンピ・一一氏液 染色鉄ヘマトキシリン 900× 線条構造不鮮明となり空胞の形成をみる。 2極性の所見。 10. 9に同じ、

華 一 672 一

参照

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