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Academic year: 2021

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(1)

課程博士論文要旨

論文題名

DE 9902 氏名一坐松厘_壇文____

、b口 Simian Immunodeficienc Virusの

主査」一教授

副査」左俣_哲郎_」拠受_

       

    口    、二    玉玉ム

 脳炎と痴呆症はHIV感染者にとって重要な症状である。しかし、 HIV感染 による中枢神経系疾患の発症機序は未だに不明な点が多い。国立感染症研究所 筑波医学実験用霊長類センターの向井らの研究で、免疫不全の症状を起こす simian immunodeficiency virus(SIV)Inac239を2頭のカニクイザルに接 腫し、感染実験を行った結果、2頭中1頭が183週目にエイズ脳炎を発症し た。次に、この2頭のカニクイザルから死亡1日前に採取した血液を2代目の カニクイザルにそれぞれ接種した。その結果、2代目のカニクイザルは2頭

(cy1−2, cy2−2)とも血液接腫後、20週目と63週目にそれぞれ脳炎を発症し

た。これらの脳炎を発症したカニクイザルの脳組織からSIV産生が認められる

細胞株(BM1とBM5細胞株)が樹立された。そこで本研究では、このカニク

(2)

イザルの脳組織の病理組織学的解析、上述したBM細胞株の性状及びBM1細胞 株とBM5細胞株が産生するSIV(SIV bm1とSIV bm5)の表現型と遺伝子型

の解析を行った。

 まず、脳炎を発症した群山クイザルでは脳組織の病理学的解析により脳髄膜 下にSIV陽性多核巨細胞が認められ、この多核巨細胞はマクロファージ抗体陽 性であった。そしてBM1とBM5細胞株は両方ともモノサイト系の細胞であ

り、無限増殖性を獲得していることが明らかになった。

 次に、中枢神経指向性SIVはマクロファージ指向性を獲得しているという他 の研究グループの報告があることや、上述した様に脳炎を発症したカニクイザ ルの骨組織ではSIV陽性のマクロファージ系細胞による感染病巣が検出された

ことから、SIV bmの肺胞マクロファージへの感染及びその増殖性を検討した。

対照として用いた宿主細胞CEMx174ではSIVmac239, SIV bm1及びSIV bm5共に感染及びその増殖が確認されたが、肺胞マクロファージ、モノサイト

そして骨髄細胞への感染実験ではSIV bm1とSIV bm5のみの感染及びその増 殖が確認された。またアストロサイト初代培養細胞への感染実験の結果では、

SIVmac239の感染のみが確認されたが、一方SIV bm1とSIV bm5では共に 感染及びその増殖が確認された。

 更に、SIV bm1及びSIV bm5のゲノムRNAの全長約10 K塩基に渡る全塩 基配列を決定し、野生型株であるSIVmac239と比較した。その結果、 SIV bm1では、野生型株であるSIV mac239と比較してLTRで18、8α8で15[ア

ミノ酸の変化は4個(Aa 4)】、po1で22(Aa 21)、επvで48(Aa 39)、

ηεアで27(Aa23)個の置換が確認され、 v玩vpx, vpr,∫α∫,7εvではそれぞれ

9(Aa 6),3(Aa 1),4(Aa 2),9(Aa 5),4(Aa 3)個の塩基置換が認め

られた。またこれらの置換以外にSIV bm1では、8α8で12個、 po1で12個と 3個の2ケ所で、θηvではεηv領域内の多様性領域であるV領域中のV1領域

に9個、V4領域に18個の連続したフレーム単位での写声がSIVInac239と比

(3)

較して認められた。またSIV bm5では、εηv領域において46(Aa 33)個の 置換とV4領域に21塩基に渡るフレーム単位での連続した欠失炉認めらた。な お、SIV bm5では、θηv領域以外で、ηθ∫、 v娯∫α∫、ア8vの各領域にそれぞれ 18(Aa 15)、7(Aa 5)、3(Aa 1)、5(Aa 2)個の塩基置換がSIVmac 239と比較して確認されたが、po1、 vpκ、 vp r、ηθノなどのアクセサリー遺伝子

をコードしないLTR領域には変異が認められなかった。

 さらにsIv bm5,先に述べた63週目で脳炎を発症したカニクイ.ザルcy 2−2 の髄液中Slv及びCy 2−2の血漿中Slvのεπv領域の塩基配列を決定し、そ の比較検討を行ったところ、SIV bm5とCy 2−2髄液中SIVでは46ケ所中43 ケ所が同一の変異をしており、一方血漿中SIVでは46ケ所中6ケ所がSIV bm5と同一の置換を獲得しているのみで、 SIV bm5は血漿中SIVとは明らか

に異なることが確認された。

 中枢神経指向性SIVはマクロファージ指向性も獲得しているが、一方マクロ ファージ指向性特有のenv領域内にある4ヶ所[6802(Aa V今M),7130

(AaK→E),7750(:AaG→R),8323(AaK→T)番目の塩基]の特異的塩基 置換も報告されている。そこでSIV bm株でθηv領域内の解析を行ったとこ

ろ、SIV−bln5では6802番目の塩基がグアニンからアデニンに置換(Aa V一>

M)し、7750番目の塩基がグアニンからシトシンに置換(AaG一>R)して おり、これらの2ケ所ではマクロファージ指向性特有の置換と同じ置換が認め

られた。しかし、7130番目の塩基ではアデニンからグアニンへの置換ではなく シトシンへの置換で(Aa K→Q)、8323番目のヌクレオチドではSIV bm5 では置換は確認されなかった。これに対しSIV bm1のεπv領域内では、6802 番目の塩基がグアニンからチミン(V→M)に、マクロファージ指向性特有の置 換とは異なる置換を示しており、更に他の3ヶ所での置換は確認されなかっ

た。この様にSIV bm5のεηv領域内では4ヶ所中2ケ所でマクロファージ指

向性と同じ置換をしていたことから、この2ヶ所のみでマクロファージ指向性

(4)

を獲得した可能性も考えられるが、SIV bm1では4ヶ所全てで同一の置換が確i 認されなかったので、SIV bmは、これら4ヶ所での置換以外の部位での変異 によりマクロファージ指向性を獲得したものと示唆される。

 脳組織由来血管内皮細胞への加v∫∫roでの感染には8854番目の塩基がアデ ニンからグアニンに置換(AaR今G)することが重要であるとされており、今 回SIV bm1及びSIV bm5について同様の解析を行ったところ、 SIV bm1と SIV bm5共に同じ置換を保有することが認められた。

 また、中枢神経指向性の代表的SIV株であるSIV/17E−Frと比較して、 SIV bm1はenv領域の340番目(Aa K→R)と751番目(Aa R→G)の2ケ所で

アミノ酸が同一置換していることが確認された。またSIV bm5は309番目

(AaM→1)、340番目(AaK→R)そして751番目(AaR→G)の3カ所に 同一置換を持つことが確認された。この様に共通の置換が340番目と751番目 で認められたことから、これらの置換が中枢神経指向性を獲得する上で、重要 である可能性が示唆された。

 以上の様に本研究では、脳炎発症ザルの病理像、そして中枢神経指向性SIV

の遺伝子型と表現型が明らかとなった。今回得られた知見は、エイズウイルス

によるエイズ脳炎発症機構の解明に大きく貢献するものと確信する。

(5)

学位申請論文

中枢神経指向性Simian Immunode5ciency Virusの解析

DE9902小松原 博文

[論文審査の結果の要旨]

主査 松田 基夫 副査 佐俣 哲郎 副査 福山 正文 副査 向井鎮三郎

2002年3月6日

(6)

 本「博士学位論文」として提出された論文は、サルを実験動物として用い、

エイズ脳炎組織由来細胞株と、この細胞の産生及するSIV(Simia塾Immuno−

deficiency Virus)を中心に細胞生物学的、ウイルス学的、分子生物学的解析を 行い、エイズ脳炎発症機構の解明のために行われた研究に関するものである。

 まず、野生型SIVInac 239株を2頭のカニクイザルに接種し4年近く経て、

エイズ脳炎を発症したので2代目のサルに輸血継代したところ、初代サルより も短期に、2頭ともエイズ脳炎を発症した。この2頭の脳炎発症脳組織 から、脳炎組織の病理像の一部を代表するような別々の細胞株を樹立した。こ のBM1, BM5(Brain Monocyte−1ike)細胞株は両方とも、モノサイト系の細胞 であり、無限増殖性を獲得しており、CD4抗原陰性でそしてSIVを産生して

いた。

 サルエイズ脳炎組織にSIV陽性のマクロファージ系細胞による感染病巣があ ったことと、中枢神経指向性SIVはマクロファージ指向性を獲得していると いう他のグループの報告があったので、8M1とBM5細胞株がそれぞれ産生す るSIV(SIVbm1とSIVbm5)のサル肺胞マクロファージへの感染及びその増殖 性を検討した。対照として用いた宿主細胞CEMx174ではSIVmac239, SIV bm1 及びSIV bm5すべての株で感染及びその増殖が確認されたが、肺胞マクロフ

ァージ、モノサイトそして骨髄細胞への感染実験ではSIV bm1とSIV bm5の みの感染とその増殖が確認された。またサルアストロサイト初代培養細胞への 感染では、SIVmac239では感染のみが確認されたが、 SIV bm1とSIV bm5で は共に感染及びその増殖が確認された。

 ついで、SIV bm1及びSIV bm5プロウイルのゲノムDNAの全長約10 k塩 基に渡る全塩基配列を決定し、野生型株であるSIVmac239と比較した。その 結果、SIV bm1株とSIV bm5株ともにgag、 pol、env遺伝子のほかにv斌vpx,

vpr, tat, revなどのアクセサリー遺伝子にもアミノ酸置換を含む塩基置換が認め られた。またこれらの置換以外に欠失があり、SIV bm1株では、 gagで12 個、polで12個と3個の2ケ所で、 envでは『V領域中のVl領域に9個、

V4領域に18個の連続したフレーム単位での欠失が認められた。一方、 SIV bm5株では、 envのV4領域に21塩基に渡るフレーム単位での連続した欠失 が認められた。現在までに、エイズウイルスにはT細胞指向性、マクロファー

ジ指向性、T細胞とマクロファージ両方に指向性そして中枢神経指向性のもの

が知られており、これら指向性に共通にみられる点突然変異がHIV, SIV

(7)

について報告されている。これらのマクロファージ指向性共通点突然変異に注 目して、SIV bm1株とSIV bln5株の塩基配列を解析したところ、 SIVbm5には 認められた既知のMφ指向性特異的点突然変異がSIV bm1には全くみられない

ことが明らかになった。

 一方、中枢神経指向性の代表的SrV株であるSIV117E−Frと比較して、 SIV bm1はenv遺伝子の340番目(Aa K→R)と751番目(Aa R→G)の2ヶ 所でアミノ酸が同一置換していることが確認された。またSIV bm5は309番 目(AaM→1)、340番目(AaK→R)そして751番目(AaR→G)の3カ所 に同一置換を持つことが確認された。この様に共通の置換が340番目と751 番目で認められたことから、これらの置換が中枢神経指向性を獲得する上で、

重要である可能性が示唆された。

 以上のように、本研究論文は、細胞生物学、分子生物学、ウイルス学的手法 を駆使して展開され、中枢神経指向性SIVの遺伝子型、表現型が明らかとな り、エイズウイルスによる脳炎発症機構の一一部が解明できたと考えられるので、

博士(学術)の学位を授与するにふさわしいものと、本博士論文審査員一同判

断した。

参照

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