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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 阿 戸    学

     学 位 論文 題 名

ヒ ト MCAF/MCP‑l ト ラン ス ジ ェニ ッ クマ ウ ス におけるマクロファージ機能の解析

学位論文内容の要旨

は じめ に

  炎 症 お よ び 免 疫 反 応 に お け る 自 血 球 遊 走を コ ン ト口 ー ル する サ イ トカ イ ン を ケモ カ イ ンと 総 称 す る 。 monocyte chemotactic and activating factor  (MCAF)、 ま た はmonocyte chemoattractant protein―1(MCP―1) は 、C―Cケ モ カ イ ン に 属 す る 代 表 的 な ケ モ カ イ ン で あ る 。MCAF/MCP―1( 以 下MCP―1) は 、in vitroに お い て は 単 球 だ け で な く 他 の 自 血 球 に も 走 化 性 の 亢 進 を も た ら し 、 単 球 上 の 接 着 分 子 の 発 現 を 増 強 さ せ る 。in vivoに お いて は 、 単 球 ・ マ ク 口 フ ァ ー ジ の 浸 潤 が 顕 著 な 病 変 に お い て 、MCP−1の 発 現 が 認 め ら れ 、 さ ま ざ ま な 疾 患 に お い て 、 MCP− 1が 病 態 形 成 に な ん ら か の 関 与 を 示 す こ と が 報 告 さ れ て い る 。   本 研 究 で は 、 生 体 内 に お け るMCP―1の 生 理 的 ・ 病 理 的 役 割 を 解 明 す る 目 的 で 、 生 下 時 よ り 構 成 的 に 高 濃 度 の ヒ トMCP―1を 発 現 す るTgmを 作 製 し 、 各 臓 器 に お け るMCP―1の 発 現 を 解 析 し た 。 ま た 、 in vitr〇 、 mWv・ 〇 に お け る マ ク 口 フ ァ ー ジ 機 能 を 検 索 し た 。

結 果

  多 臓 器 に ヒ トMCP―1を 発 現 す るTgmを 作 製 す る 目 的 で 、 ベ ー タ ア ク チ ン プ 口 モ ー タ ー 、 ヒ トMCPー1遺 伝 子 配 列 とSV40 polyA鎖 を 結 合 さ せ 、 受 精 卵 前 核 に マ イ ク ロ イ ン ジ ェ ク シ ョ ン し た 。 マ ウ ス は ヒ トMCP―1特 異 的 プ ラ イ マ ー を 用 い たPCRで ス ク リ ーニ ン グ を行 っ た 。 実 験 に は ト ラ ン ス ジ ー ン 陽 性 の(TgmXC57BL/6) Flマ ウ ス を 用 い た ( 以 下Tgmと 略 す ) 。 RT‑PCRの 結 果 、mRNAの 発 現 は 肝 臓 、 精 巣 、 脳 、 腎 臓 と 比 べ 、 胸 腺 、 脾 臓 な ど の り ン バ 組 織 で 強 い こ と が 確 認 さ れ た 。 次 に ′rgmの 血 中 ヒ トMCP−1量 をELISAで 測 定 し た 。 ヒ トMCPー1 の 血 中 濃 度 は 、 未 刺 激 時 の ´Fgmで7―13 ng/mlで あ っ た(non=I、gmで は 測 定 限 界 以 下 ) 。   m融 乢 ヘ レ ベ ル でMCP−1の 強 い 発 現 が 認 め ら れ 胸 腺 、 脾 臓 、 リ ン バ 節 の 組 織 学 的 検 索 を 行 っ た 。Tgmで は 胸 腺 髄 質 、 脾 臓 動 脈 周 囲 リ ン バ 球 鞘 、 リ ン パ 節 辺 縁 洞 に お け る 単 核 球 の 集 積 と 、 リ ン バ 節 傍 皮 質 領 域 に ヘ モ ジ デ リ ン の 沈着 が 認 めら れ た 。し か し 、単 核 球 集 積は り ン パ組 織 以 外 の 器 官 で は 認 め ら れ な か っ た 。 免 疫 組 織 化 学 染 色 の 結 果 、 リ ン バ節 のB細 胞領 域 と 脾臓 辺 縁 帯 に 集 積 し た 細 胞 は 、MOMA−1陽 性 マ ク 口 フ ァ ー ジ で あ る こ と が 判 明 し た 。 し か し 、B 細 胞 とT細 胞 の 免 疫 染 色 の 結 果 、 リ ン パ 組 織 の 構 築 そ の も の は 、 正 常 構造 を 示 す こと が 判 明し た 。

  常 住 性 お よ び チ オ グ リ コ レ ー ト で 誘 導 し た 滲 出 性 腹 腔 細 胞 数 は 、non rgmと 比 べてT、gmで

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増加の傾 向が認め られた。 腹腔細胞 による貪 食能を評価するために、過剰量のラテックスビー ズ投与後 、経時的 に腹腔細 胞を回収してフ口ーサイトヌトルーで解析した。投与後2時間では、

Tgmとnon一′丶gmの問で、 ビーズ貪 食分画に 差は認め られなかっ た。しか し、投与後4時間で は、T富mで は 腹 腔細胞 数の著し い増加が 認められ るにも拘 わらず、 ピーズ貪食 分画の減 少が 認 め ら れ た 。 ま た こ の 時 、T宮mの 血 中 に は 著 し いMCP―1の 増 加 が 観 察 さ れ た 。 一方 、m WむI〇 で常 住 性 腹腔細 胞による ピーズの 貪食能を 解析した 結果、T宮mにおいてビ ーズを貪 食 している分画の減少は見られなかった。

  Tgmとnon―1丶gmの間 で 、腹 腔 細 胞に お けるMac―1の発現に 差は認め られなか った。そこ で、 骨 髄 由来 細 胞以 外 に ヒトMCP―1遺伝 子 の 存在 しない環 境下での 、Tgm由来マク 口ファー ジに お け るMac−1発現の 解析を行 う目的で 、骨髄キ メラ[1、gm→AKR]を用 いて同様の 検索 を行った 。その結 果、[1、gm→AKR]は、non1、gmをドナーとしたキメラマウス[non−1、gm

→AKR] と 比べ て 、腹 腔 細 胞に お け るMac―1発 現の 著 明 な増 強 が認 め ら れた 。rrgm→AKR] の血中には、無処置′rgmと此べて高濃度のMCP―1が検出された。

  他 の マ ク □ フ ァ ー ジ 機 能 をmW的 で 解 析 す る た め に 、チ オ グ リコ レ ート で 誘 導し た 滲出 性マ ク 口 ファ ー ジに お い て、 イ ン ター フ ェ口 ン ァ(以 下IFN―ア) 添加24時間後 のNO産生能 を測定し た。′rgmとnon―Tgmを比較 すると、NO産生能に 有意差は認 められな かった。一方、

[1、gm→AKRユ由来の滲出性マク口ファージでは、[non―1、gm→AKR]と比べてIFN―アの存在 下でのN〇産生能の著しい増加が認められた。

  mWレ〇 に お ける マク口 ファージ 機能をさ らに調べ る目的で 、ザイモ サンの静脈 内投与後 の 肝内肉芽 腫形成を 解析した 。投与後9日では、T・gmとnon―1、gm問で、肉芽腫の数および大き さに お い て差 は 認め られなか った。ま た、肉芽 腫はM〇MA一1免疫化学 染色により 、主にマ ク 口ファー ジ様細胞 で形成さ れている ことが示 された。しかし、投与後12日では、non−1、gmで 肉芽 腫 反 応の 終 息が 認められ るのに対 し、Tgmでは9日目と同 程度の反 応が持続し ており、 肉 芽腫 反 応 の遷 延 化と 考 え られ た 。 投与 後15日 で は、Tgmにお いても肉 芽腫反応の 終息傾向 が 認められた。

  次 にTgmマ ク ロ ファージ における 、細胞内 シグナル 伝達系Srcフ ァミリー チ口シンキ ナーゼ のFgrとHCkの 活 性 を 、immunecomplexmnaSeaSSayで 解 析 し た と こ ろ 、non− ′rgmと 比 べ て Tgmの 腹 腔 細 胞 で は 、 Fgrと Hckの 自 己 リ ン 酸 化 能 の 増 強 が 認 め ら れ た 。

考察

  in vitroでの マ ク 口フ ァ ー ジ機 能の解 析では、 構成的に ヒトMCP−1を 発現するTgmとnon‑

Tgm間 で 反 応 性 の 差 は ほ と ん ど 認 め ら れ なか っ たが 、in vivoにお い ては 、Tgmではnon− Tgmと 比 べ て 反 応 性 の 低 下 が 認 め ら れ た 。 そ の 理 由 と し て 、mWv0環 境 下 で はMCP−1 mRNAの 発 現量 の 差 が、 そ の まま 濃 度勾 配 を 表し 、 恒常 的 に 高濃 度のMCP−1が存在する りン

/ ヾ組織に マク口フ ァージ系細 胞の集積 が生じる一方、これらの細胞のMCP―1に対する感受性 は 逆に低下 している ことが考え られた。 この感受性の低下は、高濃度MCP−1の存在によって、

MCPー1レセプタ ーが持続的 に刺激さ れる結果 、MCP−1の下 流にある 伝達系が 一過性に抑 制さ れ る た め と 考 え ら れ た 。 し か し 、 高 濃 度MCPー1が 存在 し な い血W的 環 境下 で は 、Tgmか ら 得 たマク口 ファージ の反応性が りセット され、正常マウスのマク口ファージとほぽ同一のレベ ル になるた めではな いかと考え られた。

  骨 髄キメラ マウス[1、gm→AKRユにお けるMac−1の 発現増強 やNO産生能 の増加の メカニズ ム と し て、 高 濃度MCP―1以 外に 、 他の サ イ トカ イ ンや ア ロ ジェ ニック な環境に基 づく何ら

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かの因子の影響が考えられた。

  Tgm腹 腔マク口フ ァージにおけるSrcファミリーチ口シンキナーゼの活性上昇は、他の CCRの関与や、マク口ファージ機能の変化に伴う、二次的なものである可能性が考えられた。

  本研究で作製されたTgmは、高MCP−1血症における、単球/マクロファージ機能を解析す る良いモデルとなり、また、高ケモカイン血症におけるさまざまな感染に対する宿主の反応解 析に有用であると思われた。

(4)

学位論文審査の要旨 主査   教授    小野江和則 副 査    教授    上出利光 副 査    教授    柿沼光明

     学 位論文題 名

ヒト MCAF7IVICP‑1 トランスジェニックマウス      に お け る マ ク ロ フ ァ ー ジ 能 の 解 析

  monocyte chemoattractant protein―1(MCP―1)は 、C−Cケモ カイ ンに 属す る代表 的な ケモ カイ ンで ある 。in vivoにおいては、単球・マクロファージの浸潤が顕著な病変 にお いて 、MCP―1の発 現が認 めら れ、 さま ざま な疾 患に おいて病態形成になんらかの関 与を示すことが報告されている。

  本 研究 では 、生 体内 におけ るMCP−1の生 理的 ・病 理的 役割を解明する目的で、生下時 よ り 構 成 的 に 高 濃 度 の ヒ トMCP−1を 発現 す るTgmを 作 製 レ 、 各 臓 器に お け るMCP−1 の発 現を 解析 した 。ま た、in vitro、in vivoにおけるマク口ファージ機能を検索レた。

  べ ー タ ア クチ ン プ ロ モ ー タ ー、 ヒトMCP−1遺 伝子 配列 とSV40 polyA鎖を 結合 させ、

受 精 卵 前 核 にマ イ ク 口 イ ン ジ ェ ク シ ョ ン し た 。 実 験 に は トラ ンス ジー ン陽 性の(Tgmx C57BL/6) Flマ ウ ス を 用 い た ( 以 下Tgmと 略 す ) 。RTーPCRの 結 果 、mRNAの 発 現 は 肝 臓、精巣、脳、腎臓と比べ、胸腺、脾臓などのりンパ組織で強いことが確認された。ヒト MCP―1の血中濃度は、未刺激時のTgmで7―13 ng/mlであった。

  mRNAレ ベ ルでMCP‑‑1の 強 い 発現 が認 めら れた 胸腺 髄質 、脾 臓動 脈周 囲リ ンパ 球鞘、

リンパ節辺縁洞に単核球の集積、リンパ節傍皮質領域にへモジデリンの沈着が認められた。

しかし、単核球集積はりンノく組織以外の器官では認められなかった。リンパ組織に集積し た細 胞は 、I¥40MA−1陽 性マ クロファージであることが判明した。しかし、リンパ組織の 構築は、正常構造を示すことが判明した。

  常 住 性 お よび チ オ グ リ コ レ ー ト で 誘 導 し た 滲 出 性 腹 腔 細胞 数は 、non‑Tgmと 比べて Tgmで 増 加 の 傾 向 が 認 め ら れ た。 過剰 量の ラテ ック スビー ズ投 与2時間 後で は、T宮mと non rgmの間 で、 ビー ズ貪食 分画 に差 は認 めら れな かっ たが、投与後4時間では、T.gm でビ ーズ 貪食 分画 の減 少が認 めら れた 。ま たこ の時 、Tgmの血 中で はMCP−1が著 明に 増 加 し て い た 。加W舶 に お け る 常住 性腹 腔細 胞に よる ビーズ の貪 食能 では 、T宮mとnon― T・gmの差は見られなかった。

  Tgmとnon1、 .gmの間 で、 腹腔細胞におけるMac―1の発現に差は認められなかった。そ こ で 、 骨 髄 キメ ラ を 用 い て 同 様の 検索 を行 った 。そ の結 果、n、gm→AKRコ キメ ラは、

[non1、gm→心くR]キメラと比べて、腹腔細胞におけるMac―1発現の著明な増強が認めら れ、[11gm→心くR]の血中には高濃度のMCP―1が検出された。

(5)

  滲 出 性 マ ク 口 フ ァ ー ジ に お け るIFN‑7添 加24時 間 後のNO産生 能 は、Tgmとnon1、gm 間に有意差は認められなかった。一方、[1、gm→心くR]由来の滲出性マクロファージでは、

[ non11、 gm→ 心 く Rコ と 比 べ て NO産 生 能 の 著 し い 増 加 が 認 め ら れ た 。   次に ザイモサ ンの静脈 内投与後の 肝内肉芽 腫形成を 解析レた 。投与後9日では、T宮mと non rgm間 で 、 主と し てMOMA「1陽 性 マ クロ フ ァー ジ よ り構 成 され る 肉 芽腫 の 数、 サ イ ズ に差 は 認め ら れ なか っ た。 し か し、 投与 後12日では 、Tgmでは肉芽 腫反応の 遷延化 が見られた。

  Tgmマク ロファー ジにおけ る、細胞内 シグナル伝達系Srcファミリーチ口シンキナーゼ、

FgrとHckの 活 性 を解 析 した と こ ろ、non―Tgmと 比 べてTgmの 腹腔 細 胞で は 、 自己 リ ン 酸化能の増強が認められた。

  以上 、mVjH・Oのマ クロファ ージ機能の 解析では 、Tgmとnon―′ 、gm間で差は認められ な か った が 、ん】vjmに おいては 、Tgmで反応 性の低下 が認めら れた。その 理由とし て、

恒 常 的に 高 濃度のMCP−1が存在す るりンパ 組織にマ クロファ ージ系細胞 の集積が 生じる 一 方 、こ れ らの 細 胞 のMCPー1に 対す る 感 受性 は 逆に 低 下 して い る こと が考えら れた。

  公開 発 表後 に副査の 上出教授 より、解 析するマ クロファ ージ機能に よるMCP―1の 影響 の違 い、ケモ カインレ セプター、 他のケモ カインに対する反応性、肉芽腫反応の経時的解 析 に つい て 、柿沼教 授よルヒ トベ一夕 二アクチ ンプロモ ーターとヒ トMCP−1遺伝 子を用 いた 理由、ケ モタキシスのメカニズム、内因性M(:P一1の影響、M(:P11恒常産生による マ ク 口フ ァ ージ機能 低下のメ カニズム 、主査の 小野江よ りT宮mにおけ るりンパ 球機能、

ヘモ ジデリン 沈着に対 する解釈に ついて質 問があったが、申請者は文献的考察も含め大概 妥当な回答をなし得た。

  本研 究 で作 製されたT宮mは、高MCP―1血症に おける、 単球/マ ク口ファー ジ機能を 解 析す る良いモ デルとな り、また、 高ケモカ イン血症におけるさまざまな感染に対する宿主 の反応解析に有用であると考えられる。

  審査 員一同は 、これら の成果を高 く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに 充分な資格を有するものと判定レた。

参照

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