修士学位論文
題名
単層カーボンナノチュ、一ブの
光学遷移の制御
指導教授 柳 和宏 准教授
平成 24年 2月 20目 提出
首都大学東京大学院
理工学研究科
学修番号 10879332
氏 名 守屋 理恵子
物理学 専攻
学位論文要旨(修士(理学))
論文著者名 守屋 理恵子
論文題名一単層カーボンナノチューブの光学遷移の制御
単層カーボンナノチューブ(sing1e−wanedcarb㎝nanotube(s),SWCNT(s))は、1層のグラ ファイトであるグラフェンを丸めた筒状の炭素材料であり、巻き方(カイラリティ)によ って金属型(meta1)と半導体型(semiconductor=semi)の2種に大きく分けられる。また、
SWCNTはそのカイラリティに由来する固有の光吸収スペクトルを持つ。特に、直径0.8
〜1.4n㎡の金属型SWCNTは可視光領域に一つ吸収スペクトルがあり、カイラリティに よって系統的に吸収スペクトルのピーク位置が異なる。そのため高純度の半導体・金属 分離やカイラリティ分離を行うことで、系統的に色の異なる試料が得られる。
これらの色は、一次元性に由来するファンホーベ特異点(vanHovesingu1ar吋)間の電子 遷移に由来する為、フェルミエネルギーの位置をドーピングにより制御することにより、
色を能動的に改変可能と予想された。これまでSWCNTに行われていたドーピングの 研究は、赤外領域の振動子強度の変化のみを議論している為、可視光領域の吸収も制御 可能か全く未知な状況であった。金属型SWCNTでの光電気化学による色制御が実現さ れた場合、我々は新たな特性を持つエレクトロクロミック(e1ectrochromic)材料を明示で きた事になる。従来のエレクトロクロミック材料では酸化インジウム錫(indiumtinoxide,
ITO)などの透明導電膜が必要であり、その殆とがレアメタル合んでいる。しかし、金属 型SWCNTを用いることでオールカーボン且つレアメタルフリーのエレクトロクロミ
ック素子が作製可能となる。
本研究では、SWCNTのドーピング特性を研究し、結果、以下の事項を明らかにした。
① 直径の異なる金属型SWCNTを用いて作製した薄膜の色を電気化学ドーピングに よりそれぞれ能動的に制御可能である。
② 色変化効率や応答速度、繰り返し耐久性などの点で実用可能性がある。
③ 導線部分と色制御部分両方を金属型SWCNTで作製し、動作させることが可能であ
る。
④ 高ドープ状態では、ドープされたキャリアが関与する新しい吸収帯が現れる。
さらにこの研究を、SWCNTに内包された分子の物性研究へと展開した。ドーピング により内包分子がどのような影響を受けるかその基礎物性の解明も行い、
⑤ 内包分子は溶液中とは異なる特異なドーピング特性を示す ことを明らかにした。
修士論文 目次
要旨
第0章序論..........................、.....、......................、......................................、.....、...........3
第1章 本研究の奉礎._....._.._........._一一...__.___一一____._一一一一._____..._._.一6
1.1. カーボンナノチューブについて..........................................................................6
1−1−1. 炭素構造........................................、.............................................................6
1−1・2. 電子状態..................................................................、...................................8
1−1−3. Zone一制ding近似.....、........................................、.....................______11
1−1−4. 状態密度......................................、.............................................................12
1−2. SWCNTの光学特性...........................................................................................14
1−2−1. 光吸収...............................、....................、..............................∴..................14
1−2−2. ラマン散乱........................................、.....、.................................................15
1−3. SWCNTの分子内包について.....、......。。.、............。...….......................................18
1−3−1. べ一夕ガロテンとその内包状態...............................、...............................19
1−4 SWCNTの分離.................。.................................................、...............、..............20
1−4−1. SWCNTの孤立分散....................................................... ...........................20
1−4−2. SWCNTの精製..........................................................................................21
1−5. 電気化学について...........................................................................、.....、23
1−5−1. サイクリックボルタンメトリー........................、...........、..................、.......24
1−5−2. SWCNTへの電気化学................、....................、...............、.........................26
1−6. エレクトロクロミックについて........................................................................27
1一τ 光吸収の原理とSWCNTにおける光学遷移の制御について............................28
1−7−1. 光吸収の原理............................................................................................28
1−7−2. 光吸収による遷移とその制御....................................、..............................32
第2章実験方法.....、..、................、...................................,................................、..................34
2−1. SWCNTの高純度半金分離・精製..........、....................、.........。...........................34
2−2. 薄膜作成.、............................................................................................、..............36
2−2−1. SWCNT試料の洗浄..........................................、.......................................36
2−2−2. SWCNT薄膜作製.................................................................................、....37
2−3. 電気化学測定..................................................................、...................................40
2−3−1. 電気化学測定での測定条件,....................................、................................40
2−3−2. 電気化学測定と光吸収......................、........................、..............................43
2−3−3. 電気化学測定とラマン分光............................................….......................45
第3章 実験結果と考察.........................................、.............................、............、.......、...46
34. 金属型SWCNTの光吸収...............................................、...................................46
3−1−1. 金属型SWCNTの光電気化学測定..........、...............................................47
3−1−2. 金属型SWCNT薄膜の色変化、.................................................................51
3−1−3. 金属型SWCNT薄膜への電子・ホール同時注入................、....................54 3−1−4. A11CarbonNano血be電極の色制御......,....................................................55
3↓5. 装置の二端子化一電池駆動一.........................、.......................................、56
3−2. カロテン内包半導体型SWCNTのラマン分光.................................、.............、.60
3−2−1. 溶媒のラマン分光.........、......、.....、.......、..、........、............。.................60
3−2−2. 溶液カロテン&半導体型SWCNTの光吸収・ラマン分光.......................60 3−2−3. カロテン内包半導体型SWCNTのラマン分光........................................63
3−2−4. ラマンピークの比較・解析.....、...............................................................二65
第4章緒論.............................、.........................................................................................68
参考文献......................、...........................................................................、.............................69
発表論文..........................................................、........................................一...........................70
学会等発表リスト....................。..,.....….....、......、...,....….…........、.............................、....71
謝辞......................,...........................、.、.............、...........、............................。..........................72
補足...............................................、................、...................................................................、.74
1.金属型SWCNT薄膜の純度..................、........................、..................,.....................74
2.(6,5)SWCNTの色制御.............................................................................................77
3.電気化学測定制御プログラム.....................、...........................................................79
3−1. 電圧制御関数の入力(初期veL)............................................................79
3−2. 電圧制御関数の入力(最新ver)...........................................................84
3−3. サブルーチン1: ℃yc1ic 1tammetry .....................................................88
3−4. サブルーチン2: Ho1dOn1y ............................................................….....92
3−5. サブルーチン3: S1ope&Hold ..............................................................97
3−6. 実際の測定制御・結果の表示....一.............................................................104
第0章 序論
カーボンナノチューブは1991年に胴Cの飯島澄男博士によって発見された、グラファ イト、ダイヤモンド、フラーレンに次ぐ炭素の同素体である。グラファイトやダイヤモン
ドが3次元、】層のグラファイトであるグラフェンが2次元、フラーレンがO次元の炭素の みからなる物質であるのに対し、カーボンナノチューブは炭素のみからなる1次元性を備 える物質である。これはカーボンナノチューブの円筒方向の長さ(数μm程度)が直径方向(数 mユ程度)に比べて非常に長いためである。中でも単層カーボンナノチューブ(Si撒gle−W棚ed carbo舳鋤。棚be(s),SWCW(s))は、グラフェンを丸めた1層の筒状炭素材料であり、巻き方(カ イラリティ)によって金属型(鵬剛と半導体型(semiconduct0Fs鋤i)の2種に大きく分けられ
る。また、SWCNTはそのカイラリティに由来する固有の電子構造を備える。その結果、カ イラリティに依存した固有の光吸収構造を備える。特に、直径O.8〜豆.4mユの金属型SWCNT は可視光領域に一一つの光吸収帯があることが計算で予想されている。その緕果、高純度の 半導体型官金属型分離やカイラリティ分離を行うことで、系統酌に色の異なる試料が得ら れることが予想されていた。
これまでは、①SWCNT生成においてせいぜい直径織御しか実現できておらず金属型・半 導体型が混在した試料しか得られなかった、②高純度に金属型・半導体型を分離精製する 技術が確立していなかった。そのため様々なカイラリティのものが混在した、黒ずんだ試 料しか得られていなかった。しかしながら、近年の超遠心分離やゲル分離に代表される分 離精製技術の進展により、個々のカイラシティ固有の色を示すSWCNT溶液が得られるよ
うになった。
本論文では、SWCNTのカイラリティ固有の色を更に能動的に制御することを研究対象と している。これらの色は、一次元佳に由来するファンホーベ特異点(v&n Hove si㎎棚arity)間 の電子遷移に由来する。よって、伝導帯へ電子を注入したりや荷電子帯ヘボールを注入し たりすることにより、即ち、フェルミエネルギーの位置をドーピングにより制御すること により、その電子遷移を制御可能と予想された。その結果、色も能動的に改変可能と予想
され一た。
SWCNTへのドーピングの方法として、電気化学法、酸化還元法などの方法が存在する。
これまでSWCNTに行われていたドーピングの研究では、赤外領域の振動子強度の変化の みを議論していた為、可視光領域の吸収も制御可能か全く未知な状況であった。例えば、
Kavanらの論文では、±1.2V以上では強い酸化または還元作用によりSWCNTが破壊する と議論されており、可視光領域の制御は困難と予想されていた。赤外領域の制御は可視光 領域に比べ必要エネルギー量が少ない。そのため、可視光領域の光吸収を制御するにはこ
れまでの実験条件を改良し、1.5V以上の電位を加えられるようにしなければならない状態
であった。
金属型SWCNTでの光電気化学による色制御が実現された場合、我々は新たな特性を持 つエレクトロクロミック(e1ectr㏄hrom1c)材料を明示できた事になる。従来のエレクトロクロ
ミック材料は金属酸化物・有機化合物・導電性高分子などに大別できる。しかしいずれに おいても、電子やホールの供給のために酸化インジウム錫(indiumt㎞oxide,狐O)などの透明 導電膜が必要であり、その殆とがレアメタル合んでいる。レアメタルとは、地球上の存在 量が稀である、または技術的・経済的な理由により抽出困難な金属の事を指す。近年、レ アメタルはハイテク製品等の製造に不可欠であり重要度が増している。しかし、①産出地 の偏在性、②産出国での自国資源の囲い込み、③リサイクルの費用対効果、などの社会的 背景により、レアメタル代替素材やレアメタルを必要としない素材の研究は極めて重要と
されている。
一方、金属型SWCNTはその名の通り金属的な性質を持ち、初期状態でもフェルミエネ ルギー付近に電子が存在するため透明導電膜を必要としない。その性質を利用し、基板上 の導線部分と色制御部分両方とも金属型SWCNTのみで作製できると考えられる。即ち、
導線部分と色制御部分両方を金属型SWCNTで作成した基板で色制御を実現することは、
レアメタルフリーなエレクトロクロミック素子を提示した事になると共に、レアメタルの 代替素材として金属型SWCNTが有効であることを示す事になる。
よって本研究では、可視光領域の光学遷移を電気化学ドーピングの手法を用いて制御可 能かどうか明らかにすることを目標に実験を行った。
より正確に表すと、①高純度に半金分離をした金属型SWCNT薄膜を用いて、②必要電 位の高い可視域での光電気化学によってSWCNT固有の色を制御可能かどうか、明らかに することを目標とした。そして色制御で用いる基板上の要素を全て金属型SWCNTで作製 し、③色制御部分・導線・対極全てSWCNTにしても色制御可能かどうか、を明らかにす ることにした。また、④電子またはホールドーピングによって吸収構造にどのような変化 が現れるのか、にも注目した。
さらにこの研究を、SWCNTに内包された分子の物性研究へと展開した。電子・ホ
㎞ルドービングによってSWCNTの光吸収を無くすことが出来れば、SWCNTに内包された 分子を強励起可能と予想される。これまでの内包分子の研究は、外側と内側の物性を区別 して測定する方法が少ないことにより、限られた方法からしか実験できなかったため為、
その詳細な物性を明らかにすることは困難であった。しかしながら、本研究により強励起 可能であれば、その評系肱物性を明らかにすることが可能となる。その結果、1次元的に配 列された内包分子の光物性を明らかにすることが期待される。そこで本研究では、⑤分子 内包SWCNTに電気化学によってドーピングを行い内包分子がどのような影響を受けるか、
その基礎物性の解明も行った。
本論文の構成は、第1章でカーボンナノチューブについての基本的事項や光吸収・ラマ ンといった主な実験手段について述べた。続く第2章で具体的な実験方法を、第3章でそ の結果について述べ考察を行った。以上の全てを踏まえて第4章では総括及び結論を示し
た。
第1章 本研究の基礎
1.1. カーボンナノチューブについて H−1. 炭素構造
カーボンナノチューブ(carb㎝nanotube(s),CNT(s))とは、199玉手に飯島澄男博士により発 見された直径が数nmと非常に細く中空状でまっすぐな、炭素だけからなる物質である川。
このとき明らかにされたCNTの構造は、炭素の6員環をハチの巣状に並べた平面状の物質 である1原子層グラファイト=グラフェンを円筒状に巻いたものが、入れ子状に何層も重 なった多層カーボンナノチューブ(mu1ti−wa11ed carb㎝namωbe(s),MWCNT(s))であった。そ
れに対して、MWCNTの2牛後に発見された1層のグラフェンを巻いたチューブを単層カ
ーボンナノチューブ(si㎎1e−wa11ed carb㎝namtube(s),SWCNT(s))という。その直径はおおむ
ね1〜3nmの範囲にあり、触媒金属や合成方法などにより生成されるSWCNTの直径が異な るため、直径制御されたSWCNT生成が可能である。
畿..熾al.人 ㌣ .」、人 、一繊・・一、一㌦、、,!・、.、人 一人 ノ・・織・ 人
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編 一篇 鍛! 轟 ふ 」鴻 轡
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Fig.1−1グラフェンシート。灰色の点が炭素原子、原子間を結ぶ直線がSp2混成軌道 による結合を示す。赤矢印はグラフェンの基本格子ベクトル、黒矢印がカイラル指数
(5,2)のカイラルベクトルqと並進ベクトルrを表す。また、θをカイラル角という。
カイラルベクトルが紫点線上にあればジグザグ型、緑点線上にあればアームチェア型 のカーボンナノチューブとなる。
θ
グラフェンはF1g.三一玉のように炭素の6員環が蜂の巣の様に敷き詰められた構造である。
交点の部分が炭素原子である。蜂の巣格子の基本は2s,2p、、2py軌道の線形結合で得られる sp2の混成軌道であり、各炭素原子から平面状に互いに玉2びの角度で腕を伸ばし、隣の原 子の構成軌道と強く結合している。
SWCNTはこのグラフェンを筒状に丸めて端を繋げた構造を持つ。Fig.〕のベクトルq はカイラルベクトルを表す。カイラルベクトル。免はナノチューブの軸に垂直に円筒面を1 周するときのベクトルであり、SWCNTはこの始点と終点を重ねた円筒状である。カイラル ベクトルの長さはCNTの円周の長さを表す。またカイラルベクトルはカーボンナノチュー ブの構一造を指定し、グラフェン格子の基本格子ベクトル的と物を使って一表される。
Cゐ二n{十n2劉2麦(ηi,η2)
ここで卿、種ユ2は整数である。一般にこの2つの整数の組を(n1,n2)と表し、カイラル指数(c鮒a1 1難d跳)と呼び、ナノチューブの構造を表すのに使われる。CNTの直径dおよびカイラル角θ は勤、物を用いて以下0)様に表される。
2
αn1+n工n2+n2 a二
π
1一 ラ2÷ぺ〕 /1卜ξ/
炭素原子間の距離は牝。工O.五42m棚であるため、1物1『棚21:a羅ブ3a、.、士0,246㎜1である。
特に炉n2(θ=π/6)およびn2=O(トO)のときの構造をそれぞれアームチェア(amch鋤 型、ジグザグ(zigzag)型と呼ぶ。残りの〜≠職≠Oはカイラル型と呼ばれるらせん構造を持つ 一般的なCNTである。
一方、Fig.五一三でOからqに垂直な方向に伸ばして最初の格子点までのベクトルrを並 一進ベクトルと呼ぶ。Tは、軸方向の並進対一称性の単位となり、&1,a2を用いて以下の様に表
される。
T二ご】aけらa。嚢(へ,ら)
ここでt至、ちは互いに素の整数である。0ハトOより、
2η。十巧 2n…十η。
8】= ,ら:一
4 み
と与えられる。ここでdRは(2η2+n…)と(2軌切2)の最大公約数である。ナノチューブの単位胞 は0屍とrからなる長方形である。単位胞の面積(ぼX0あ1,Xはベクトルの外積)を六角形の 面積(1的X的H「3a2/2)で審jると、単位胞の六角形の数N
。」…lL・い1.2・・1・・)
ト、・・、i a灰
を得る。グラファイトの単位胞でもある6角形には2個炭素原子があるので、チューブの 単位胞申の炭素原子数は2Nである。rの大きさTは
r三同一価〃灰,Z−lC冶1
で与えられる。
〕一2. 電子状態
カーボンナノチューブの電子状態は、グラフェンを円筒にしたことで生じる結合間の曲 率を無視すれば、グラフェンに円周方向の周期境界条件を課すことで計算が可能である。
電気化学・光吸収などの物性にはフェルミレベル近傍の電子が重要な役割を演じる。その ため、ここではグラフェンの荷電子として炭素原子の2p、軌道閲のπ結合によってできるπ バンドについて、一電子近似の下で計算した電子構造を説明する。グラフェンの場合は各 原子における電子の軌道の重なりが小さいので、電子は原子に強く束縛され、ある確率で 隣の原子に飛び移るというモデル(強結合近似またはタイトバインディング近似)がよく 成り立つということが知られている。このようなモデルの下で、一つの電子に対して定常 状態のシュレーディンガー方程式を解くことで電子のバンド構造が求まる。
実際には、紙とパソコンを使ったプログラム計算でバンド構造を計算できる。グラフェ ンにはユニットセルに炭素原子を2個含むため計算が非常に簡単で、バンド構造を解析的 な式で得ることができる。次に円周方向の周期境界条件を課すと、2次元逆格子空間で電子 のとりうる状態が制限される。制限されたときのバンド構造を簡単なプログラミングで計 算した結果、全てのSWCNTのバンド構造、状態密度、光学遷移エネルギーなどを得るこ
とができる。
ここではグラフェンのバンド構造の解析的な表示を計算する。まず、波動関数に対して 各原子での束縛状態の重ね合わせを基底にとる。ユニットセルにはFi&1−2に示すように2 つの炭素原子A,Bがあり、それぞれ周期的に配置しているので bl㏄hの定理を満たすように、
基底を
1 N舳
Φ/(剛下着・jあ1(卜Rj)
j:A,B N:ユニットセル数 R:原子位置
とフーリエ成分で表すのが便利である。定常状態のシュレーディンガー方程式 〃Ψ (k,r)=〃(k,r)
Ψ(k,・)一ΣCゾ(k)Φノ(k,・)
ノ:メ、3
を解くと、エネルギーの分散関係が 亙(、ヅ、1・ρ平・・柄
1千・。河
!(k)=3+2cosk・a1+2cosk・a2+2cosk・(a1−a2)
と求まる。
ここでは3つの最近接原子への飛び移りのみを考慮しており、
…/ψ一R・)1ρ・(卜・・一・i)/ 。1〃
γ。一/ψ月(・一R、)1巾、(卜R、一R、)/ 最近接原予。つ分 ε、、一/Z、(・一R、)1中メ(卜R、一R、)/
である。
・艦、、へ .腐・..、、一鍛。.
幣
磯\B㌣\ 磯
.灘
F略1−2 グラフェンのユニットセル(水色)
と基本格子ベクトル(赤)。ユニットセル内 に2つの炭素原子A,Bが存在する。
鑑 一購
Fig.1−3に示すようにグラフェンのブリルアンゾーンは逆格子ベクトルb1,b2が作るひし形
(緑色)でも表せるが、6員環で示す領域をブリルアンゾーンに取ったほうがより対称性が高 い。六角形の中心、頂点、辺の中心をF,K,M点と呼ぶ。円g.1−4に、グラフェンのバン ド構造を示す。特徴的なのは、K点において伝導体と荷電一子帯が接するという点である。こ れは、グラフェンがゼロキヤップの半導体となる理由であり、またSWCNTが金属か半導 体になる理由の一つである。
kじ
k X b−
M、!…
/ 1
F〆二、I.\.,1.
l K1
F晦1−3 グラフェンの逆格子ベクトル(赤)
とブリルアンゾーン(緑点線または黄色)。
r,K,M点を結ぶ3角形で分散関係を求
める。
Energy(ev)
F
101
51
、ク l K一
団g.1−4 グラフェンシートのバンド 構造。【21青色の領域が荷電子帯、
赤が伝導体を表す。
パラメータとして
ε・。=0,γ0=3・03,s0=仏13
を用いた。
k。
∠‡K
SWCNTの電子状態は円筒にしたときの戯率を無視すれば、円周方向に対しての周期境 界条件
Ψ(k,r+L)二Ψ(k,r)
をグラフェンの電子状態に対して適用すれば求まる。このとき、玉次元エネルギ]分散関係 は
K
榊二五4・・(先丙十μK1) π π
(プ=μ・μ斗II人鰍a^A<虎くテ)
と表される。ここで幾何学的な関係のみより、mod(叶搬2,3戸00)とき、.ブリルアンゾーン がフェルミ面(K点)をよぎるため、SWCNTも金属になる。mod(叶n2,3)=1王またはmod
(撮王吻円3戸2のときは偶電子帯と伝導帯が不連続となる。そグ)ときのエネルギ』一ギャップは、
直径1損m程度のSWCNTの場合は約1eVぐらい開き半導体となる。実際には董っ〔2以外の 金属SWCNTは、〜1O雌V程度のギャップを持つ半導体である。例として、(8,O)と(9,0)の SWCNTのグラフェンシートの逆格子宝閥に描かれブリルアンゾーンとバンド構造をFig.
エー5に示す。
直径王nmほどの半導体SWCNTのバンドギャップはl eV前後になり、直径に反比例する。
これは直感的にはブリルアンゾーンがどれだけK点に近づくかで決まる。直径が太いほど ブリルアンゾーンの線の刻み幅が狭くなり、.K点と線の間隔が縮まる。グラフェンシートの エネルギー分散はK点からの距離をkとすれば、近似的に
酬一呪〃α
と表せる。K点から距離が離れるほどエネルギーが線形に大きくなる。K点からブリルアン ゾーンヘの距離は直径に反比例するために、バンドギャップが直径に反比例することにな る。厳密にはエネルギー分散はK点からの距離に加え、逆格子空間の方向にも依存する。
そのため個々のカイラリティ依存性が大き<なり、単純に直径には依存しなくなる。この 効果はK点から離れるほど、つまり直径の細いSWCNTほど顕著になる。したがって直径 の細いSWCNTのバンドギャップはぱらつくため、光吸収エネルギーの不連続きが際立っ てくる。以後、バンド間遷移は半導体SWCNTの場合エネルギーの小さいものからS1,S2、
・、とし、金属SWCNTではM至、…とラベルを付ける。
さらにSWCNTの種類は、おおまかに直径に比例して少なくなっていく。このことは細 いSWCNTにおいて、光吸収スペクトルのSlバンドが直径分布の割にはブロードになり微
細構造が現れる理由である。また同じ試料でもS2,Ml,S3バンドとK点から離れるバン ドにつれ、吸収スペクトルが広がり、微細構造が見えてくる理由でもある。
(氏0)半導体\\/\一Y/へ一
11川1
下 了
1 i
(9,0)金属
ヒナ1
γ
8≡
4
4千
Energy(ev) Energy(eV)0
7/ n7、二、∴二
41∴1/一_、ニイニ
_1 _0,5 0 0,5 1
灯 π
一4
_1 _O.5 0 0.5 1
〃
π Fig.1−5(8,0)と(9,0)のSWCNTのブリルアンゾーンとバンド構造。岡
金属型SWCNTでは、フェルミエネルギーで交差した2本のほぼ線形なバンドがある。
電子の有効質量はd2E(k)/dk2に比例するため、線形バンドでは電子は質量がない粒子のよう に振舞う。このことから金属SWCNTの電子の移動度は、他の金属に比べはるかに大きい
と考えられている。
単層カーボンナノチューブの状態密度は、
・(1)一 B担1向(榊)一1)班
肋
で表され、波数に対してエネルギーの勾配が0になる点(ファンホーベ特異点(van Hove singu1arity))で発散する。この発散こそが一次元系の特徴であり、SWCNTの光学特性に大
きな影響を与える。例として、Fi&1−6に強結合近似で計算した(19,O)及び(12,12)SWCNT のフェルミ面近傍でのエネルギーの分散関係とそれに対応する状態密度を示す。
、1) 0一∵一一一)一一 ≡
1 1」
( ≡3
さ・1・・1。。・・1・・1書・1 …
缶 1山 . 一1
−1=一 r 1
、、∠】1 コ、1_一.」.r。...上、、、..、」
一03 0 0.3 u O・40608 1
kT/π 灯/π 状態書産 DOS
Fig.1−6左(19,0)、右(12,12)SWCNTのエネルギーの分散関係(左)とそれに対応する状態 密度(右)岡。図中の矢印は、価電子帯から伝導体への光学遷移が可能なバンドを示す。
以後、バンド間遷移は半導体SWCNTの場合エネルギーの小さいものからS1,S2…、
とし、金属SWCNTではM1…とラベルを付ける。
1−2. SWCNTの光学特性
ここではバンド計算で得られた結果を使い、単層カーボンナノチューブの光吸収とラマ ン散乱の特徴について説明する。これらの分光測定は、常温・常圧、短時間(ト30分)、高 感度な上、微少試料でも測定できるため試料の評価が手軽に行えるだけでなく、物性探索 にとっても強力な方法となる。具体的には、光吸収スペクトルからは、試料の純度・平均 直径・直径分布・金属型と半導体型の比率・孤立性・配向性の評価や、純の分子などによ るドーピングの影響などの情報が得られる。SWCNTのラマン散乱は、入射光が試料の光学 遷移エネルギーに一致したときのみ散乱強度が増大され(共鳴効果)観測できるため、光吸収
と密接にかかわってくる。そのためラマンスペクトルも光吸収と同様の情報が得られる。
また、振動モードから個々の詳細な直径、欠陥に関する情報が得られる。まずはSWCNT の光吸収について説明する。
光吸収とは試料に入射する光のエネルギー(波長)を変えながら、その吸光度の変化を 調べる分光法である。吸光度とは、入射光強度をIo、透過光強度をIとすれば、吸光度α 二16g(1パ。)で定義される。吸光度は、溶媒の場合は濃度や光路長に比例し(LambeかB鮒の法 則)、SWCNT薄膜では密度が一定なら膜厚に比例する。SWCNTの場合、個々のバンド間遷 移に由来する光吸収を主に損饗定することが出来る。
カーボンナノチューブは、円筒の直径に対して軸方向の長さが十分大きいため、ナノチ ューブ軸に平行な直線偏光を持った光が軸に垂直に進行した場合に強い吸収を起こす(ア ンテナ効果)。この場合の双極子相互作用による光学遷移の選択則では、Fig■一6のよう廉価 電子帯と伝導体で対称的なバンド間での遷移が観測される。よって、直径がほぼ等しい金 属と半導体SWCNTは異なるエネルギー領域で光吸収が起こるということである。
SWCNTの各カイラリティにおけるバンドギャップの計算から、SWCNTの直径を光学遷 移エネノレギーの関数としてプロットした図(片浦プロット)をFig.1−7に示す。S1,S2,
M1などの各バンドは直径によって系統的に光学遷移エネルギーが変わっていることがわ かる。特に可視光領域(おおよそ380〜800㎜n≒ユ.5〜3,2eV)に注目すると、SWCNTでよく 用いられるO.8〜L4nmではM1バンドが直径によって系統的に変化している。そのため直
径ごとに半金分離することで鮮やかな色を持っ試料が得られる[5]。(Fig.1−8)
【ε
ε
あ
ち
ε
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。
2S州S22
何 ○ Semiconduc観ng
◆ MetaI1ic
○
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08
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○◆●●
◆◆●傘○
㌻ ● ● ●
9
ち.●ぐ。・●さ二二 ○筆芝参㍍㌦州
匁㌣撚{
㌔冷茂果実
F姓1−7片浦プロット。赤丸が 半導体の吸収帯(左からS1,S2
…)、青菱形が金属の吸収帯(左 からM1,M2,…)を示す。可視 光領域を緑で示している。直径 が0.8〜1.4㎜mの間に分布してい る金属型SWCNT試料の場合、
M1バンドが可視光領域で系統
的に変化する。
1
● ○
、
・㍉ ・●●
○・ 、 ・
○○●
2 3 Energy【ev1
4
変数 Fig.1−8高純度に半金分離した金属型SWCNTの分散液。
左から平均直径0,83mm,1.0㎜m,1.4m㎜である。
1−2−2. ラマン散乱
物質に入射・吸収された光は、物質と相互作用を起こした後、その一部は再び散乱光と して物質から放出される。この入射光と散乱光のエネルギーが等しい場合(弾性散乱)、レ イリー散乱と呼ばれる。一方、入射光が物質における様々なエネルギー準位(格子振動、
分子の回転、電子準位など)に由来してエネルギーを変化させた場合(非弾性散乱)、これ をラマン散乱と呼ぶ。入射光からのエネルギーのシフトを波数で表したものをラマンシフ
ト(単位Cm一一)といい、散乱光強度をラマンシフトの関数として表したものが、ラマンス ペクトルである。ラマン散乱光のうち、入射光より小さいエネルギーのものをストークス・
ラマン散乱、大きいエネルギーのものをアンチストークス・ラマン散乱と呼ぶ。ラマンシ フトが入射光の波長にはよらず、物質のエネルギー準位に依存することを用いて、ラマン 散乱スペクトルから物質の同定・分析などが可能である。
ラマン散乱では振動基底状態から振動励起状態への遷移がストークス成分、振動励起状 態から振動基底状態への遷移が反ストークス成分となる 入射光のエネルギーをEi、散乱 光のエネルギーをE、、ラマンシフトの周波数をツRとすると、
Ei=Es±hツR
のようにエネルギー保存貝1」が成り立つ。符号は十がストークス散乱、一がアンチストーク ス散乱に対応し、hはプランク定数である。
中間状態一一一 一 一一一 中間状態一
振動励起状態 振動基底状態
ストークス レイリー散乱 アンチ
散乱 ストークス散乱
Fi&1−9 レイリー散乱、ストークス散乱、アンチストークス散乱の各光学過程のイメー ジ図。中間状態が、活性な振動状態と重なる場合を共鳴ラマン散乱という。
「[lI≡1』孔へ悶・・一 一 ■ . ■ ■ 一 一
態一一一 ■ ● ■ □ ● I ● 一 一 ■■・■一 @E. .
E. I
E、=Ei+hγ。
ε、=Ei−hγ。 E:E S l
態
hγ。
能
ラマン散乱分光では、フォノンやプラズモンからの散乱光の強度スペクトル1(q,ω)を波 数ベクトル、振動数の関数として測定する。
SWCNTのラマン散乱では、共鳴効果により散乱強度が非常に強くなる共鳴ラマン散乱と いう現象の観測が支配的になっている。個々のSWCNTにおける特定の振動モードのラマ ン強度の入射光エネルギー依存性は次の式で表される。
2
∫(亙㎞)一∫ M ・(亙)班
(万伽,、、一万一ゴF、)(亙わ、、、±万功一五一π二)
ここで、E1、、、、は入射させるレーザー光のエネルギー、Ephはフォノンのエネルギー、F。
は共鳴散乱過程の寿命の逆数、g(E)は光学遷移に関係する占有状態と非占有状態の状態密度 のたたみこみである。Ephの前の符号は、電子がフォノンからエネルギーを受け取る(十:
アンチストークス散乱)、もしくはフォノンに与える(一:ストークス散乱)場合に相当する。
SWCNTの光吸収は金属・半導体、直径によって大きく変わるため、共鳴ラマン散乱は構 造選択的にスペクトルを得ることができる。また、電気化学などによってSWCNTの光吸 収を無くすことで、SWCNTが共鳴しなくなり著しくラマン散乱強度が小さくなる。
実際のSWCNTのストークス散乱によるラマンスペクトルをFig.1−10に示す。用いた励 起光は488mn(2.54eV)で、平均直径1.4nmの試料の場合Fig.1−7からS3吸収帯に相当する
ことがわかる。横軸はRaman shi貴(=1/λ1、、、、一1/λ散乱)、単位は。m−1)、縦軸は散乱光強度で
ある。SWCNTに特徴的な3つのモードについて説明する。まず100〜400c㎡1あたりの領域 にみられるラジアルブリージングモード(Radia1brea舳ngmode,RBM)はSWCNTの直径方向 の伸縮モードである。振動数が直径に反比例するため、ピークの振動数から直径を見積も ることができる。また1350c㎡一付近に見られるピークは、構造欠陥が入ることで対称性が くずれたために観測されるピークであり、Dバンドと呼ばれる。1550〜1600cm.一に見られ るピークは炭素原子の伸縮モードに起因する。グラファイトのラマン活性モードと同種で、
Graphite頭文字をとりGバンドと呼ばれる。ナノチューブでは円筒形の構造によりGバン ドが2つに分裂しており、それぞれG+バンドとG一バンドと呼ぶ。G一バンドは金属型と半導 体型でピーク位置が若干異なる。GバンドとDバンドの比を見積もることで試料申の欠陥 の濃度に関する情報がえられる。アモルファスカーボンやグラファイトのラマンスペクト ルもDバンドのピークをもつため、それらの不純物の混入度合いの目安ともなる。
Semi SWCNT
(dia.1.4nm)
G+band
=1
里 き
…≡…
2 G.band
一⊆ Radial Breathing Mode (RBM)
D−band
l00 200 300 1300 1400 1500 1600
−1 Raman Shif cm l
固g.1−10直径L4m㎜程度 の半導体型SWCNTのラマ
1700 1800
ンスペクトル。
1−3. SWCNTの分子内包について
カーボンナノチューブの内部空間は、極めて特異なナノ空間である。直径が1〜3nm程度 と分子サイズであるにもかかわらず、通常その長さは数μmもある。この特殊な空間に原 子や分子が内包できることは偶然に発見された。それはC60を1次元的に内包したSWCNT、
(C60)、@SWCNT(通称ピーポッド、peapod)であり、0次元的物質のフラーレンと1次元的 物質のカーボンナノチューブが融合したハイブリッドナノカーボン物質が見つかった瞬間 である。他にも水、気体分子(酸素、アルゴン、メタン、クリプトンなど)などを内包し た例もある。
カーボンナノチューブ内部空間は安定性・耐久性の面で外部空間よりも優れていると予 想される。このことを実証した成果の一つにべ一夕ガロテン(β一Carot㎝e)を内包した SWCNT(Car@SWCNT)がある日9]。β一カロテンをはじめとする直鎖状π共役系分子の多く は、大きな三次光学非線形性を備えており、次世代光デバイス材料の候補の一つと考えら れているが、大気中で光により劣化し易いという問題点があった。しかし、Car@SWCNTで はβ一カロテンの光による劣化が全く起こらなかった。
固g.1−n SWCNTに内包 されたβ一カロテンの模 型図(上)と、その丁瓦M
像(左)。
Car@(17,1)
simula−ed image
1−3−1. べ一夕ガロテンとその内包状態
β一カロテンはニンジンを始めとする緑黄色 野菜などに含まれている、赤澄色色素の一つで ある(Fig.1−12)。両末端にβ環を持つ最も一般 的なカロテンであり、水には溶け
ないが脂溶性は大きい。β一カロ テンの色は主に直鎖状の炭素一炭 素二重結合(以下、C霊C結合と表 す)に由来する。
β一カロテンの電子バンド構造 計算の結果をFig.1−13に示す。フ ェルミエネルギーは一3.5eV付近の ため、②が電子の占有する最もエ ネルギーの高い分子軌道である。
この軌道を最高被占軌道(Highest
0㏄upied Mol㏄u五ar Orbital,HOM0)
と呼ぶ。
9 9
書5
丘 一3
一3.5
一4
一4.5
一5
一5.5
一6
一6.5
一7
1\
↑Fig.1−12
②HOMO
③..
\ \ \ \ \ 、、
β一カロテンの構造式
○徹㍗
^
牽 鉢
「 X
↑Fig.1−13 β一カロテンのバンド構造と、一部バ ンドでの電子状態。
また、β一カロテンを直径1.4nm 半導体型SWCNTに内包した場合 の電子バンド構造計算結果をFi&
1−14に示す。バンド構造計算では 単一SWCNTの必要があるため、
撚∴㌻喜
一カロテンのHOM0準位が半導体 型SWCNTのバンドギャップ内に
存在していることが分かった。
固g.1−14 β一カロテン内包
(17,o)SWCNTの計算モデル図 (左)とそのバンド構造(右)。
Carotene@SWCNT(17,0)
4
gap
ミ=:;:;嘉べ ㎜
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一3.5
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14 SWCNTの分離
1−4■. SWCNTの孤立分散
カーボンナノチューブは、突出した特性や機能(電気特性、機械特性、耐熱性など)を 持つ且次元構造の導電性ナノ分子である。しかし、強いファンデルワールスカ、π一π相 互作用により強固なバンドル(東)の集合体を形成し、基本的には水にも有機溶媒にも溶 けないため取り扱いが困難であった。また、カーボンナノチューブは様々なカイラリティ のものが同時に形成されるため、生成されたナノチューブは化学的に非常に純度が低い。
したがって、ナノチューブについてより深く研究し、複合ナノ材料、医学、薬学、エレク トロニクスなどへ応用するには、このバンドルをほどいてナノチューブを溶媒中に孤立分 散または溶解することが重要である。
θ
〈へ〜W8卵
孤立分散させる方法は大きく分けると以下の3つがあ SDS る:①低分子系可溶化剤を用いた物理修飾による可溶化、
④
②高分子系可溶化剤を用いた物理修飾による可溶化、③ Na 化学修飾による可溶化。このうち、実際にカーボンナノ
チューブを分離生成する際に用いた①低分子系可溶化
剤を用いた物理修飾による可溶化について詳しく説明 H SC
θする。
柵。票 ○ 低分子系可溶化剤には、種々の界面活性剤:ドデシル
SDBS 硫酸ナトソウム(sodiumdodecy1su脆te,SDS)、ドデシルベ
㊥ ンゼン硫酸ナトリウム(sodium dodecy1benzene sじ脆耐e, N.
0θ SDBS)などがある。また、膜タンパク質可溶化剤:コー
ル酸ナトリウム(sodium cho1ate,SC)、デオキシコ』ル酸
ナトリウム(sod1umdeoxycho正ate,DOC)などのステロイド D0c
系界面活性剤も用いられる。これら界面活性剤の化学構 F晦H5SWCNTを水に溶か 造をFig.1−15に示す。このような界面活性有難を溶かした す際によく用いられる界面活
ミセル水溶液中にSWCNTを入れ、超音波分散すること 性剤の化学構造 で1本1本分離した孤立分散SWCNTが調製できる。
孤立分散のメカニズムとしては、超音波照射申にほどけたカーボンナノチューブに界面 活性剤分子が物理吸着し、最終的に界面活性剤の形成するミセルの疎水性内部空間にカー ボンナノチューブが内包され再凝集が妨げられ、孤立溶解が達成されるというモデル(Fig.
〕6)が受け入れられている。また、メタノールなどの有機溶媒を加えることでミセルが維 持出来なくなり、界面活性剤が除去できるようになるためカーボンナノチューブが再凝集