学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2017 年 2 月 22 日(水)
報告番号:乙 第 2119 号 氏名:佐野 秀史
論文審査
担当者 主査 教授 河地 茂行 印
副査 教授 伊藤 正裕 印
副査 教授 糸井 隆夫 印 審査論文の題目:
Resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta for uncontrollable nonvariceal upper gastrointestinal bleeding.
(コントロール不能な非静脈瘤性上部消化管出血に対する蘇生的大動脈内バルーン遮断術)
著 者:Hidefumi Sano, Junya Tsurukiri, Akira Hoshiai, Taishi Oomura, Yosuke Tanaka, Shoichi Ohta
掲載誌:World Journal of Emergency Surgery 11: 20 (2016) doi: 10.1186/s13017-016-0076-3 論文要旨:
蘇生的大動脈内バルーン遮断術(REBOA)は様々な状況で出血性ショックに対して中心血圧を上昇させる 事ができ、外傷患者においては致死的な状況下での最後のオプション(緊急左開胸大動脈遮断術)の代 わりになりつつある。非静脈瘤性上部消化管出血(UGIB)患者に REBOA を用いた報告は少ない。本論文 は UGIB に対する REBOA の使用経験を後方視的にまとめた報告である。140 人の UGIB 患者のうち、8 人の コントロールできない出血性ショックの患者に対して救急医が救急外来または集中治療室にて REBOA を 挿入した。バルーンカテーテルの留置はエコーガイド下で施行した。REBOA は収縮期血圧を有意に上昇 させ、REBOA による総遮断時間は 80±48 分であったが、REBOA による有害事象(カテーテル関連合併症 や阻血による臓器不全など)を認めなかった。REBOA 下に内視鏡的止血や動脈塞栓術が施行され、6 人は 完全止血され救命されたが、2 人の患者は再出血により 24 時間以内に死亡した。総遮断時間と乳酸値や clinical Rockall score (CRS)、年齢は強い相関を示した。UGIB 患者において REBOA の成功率は高く、
循環動態を改善するのに効果的であった。
審査過程:
1. 研究の背景・目的および UGIB に対する REBOA の適応について適切な回答が得られた。
2. REBOA の具体的手技や動脈遮断法、合併症に関して適切な回答が得られた。
3. 緊急左開胸大動脈遮断術の代替法としての REBOA の可能性について正しい考えを有していた。
4. REBOA 施行時の側副血行の状態や、REBOA を用いた諸家の報告について正しい見識を有していた。
5. 本研究の問題点(限られた症例数、後方視的検討など)について適切に認識していた。
価値判定:
本研究は致命的な非静脈瘤性上部消化管出血に対して蘇生的大動脈内バルーン遮断術(REBOA)が安全か つ有効に適応できることを報告したもので、緊急左開胸大動脈遮断術の代替法になり得る可能性を示唆 した点で今後の救命救急医療に貢献するものと考えられ、学位論文としての価値を認める。