• 検索結果がありません。

博士論文審査報告書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "博士論文審査報告書"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博士論文審査報告書

申請者 Sarinthorn Sosukpaibul

論文名 The Relationship among Foreign Direct Investment Flows, Government Policy and Investment Strategy: The Case of Thailand

海外直接投資、政府の政策および投資戦略の関連性―タイの事例を中心に―

Ⅰ 論文概要

Sarinthorn Sosukpaibul論文(以下Sarinthorn論文)はタイを事例として直接投資、政 府の政策、投資戦略の変化の連関を分析したものである。この3者の連関は、グローバル 下で開発途上国が工業化を進める場合に決定的に重要な問題を内包している。すなわちス ムーズに無駄なく外国投資を国内産業と結合させて一国の工業化を進めていくためには、

いかなる政策的配慮と戦略が必要となるかという課題に取り組んだのがSarinthorn論文で ある。方法論的には年次データを基礎にして、これに政策変数を加味して統計的処理でこ れら3者の関係の有効性如何を分析したのである。政策変数の設定に適正さが保持され、

こうした研究が数量的裏づけをもって深められるならば、投資戦略の検討は一層の科学性 を帯びることになることは間違いない。Sarinthorn 論文は、こうした課題に進む一里塚的 内容を秘めたものである。以下Sarinthorn論文の構成と概要を見てみることとしたい。

Sarinthorn論文の構成は以下の通りである。

第1章 序論 1 問題設定 2 研究目的 3 研究範囲の限定 4 各章の概要 第2章 先行研究の検討 1 直接投資理論の検討

2 Dual Truck Policyの理論的背景

3 直接投資と政府の政策に関する実証研究の検討 4 地域競争と特設投資の決定要因

5 タイにおける直接投資の決定要因 6 直接投資からの利益と直接投資誘因費用 7 初発費用と事業化

(2)

8 投資推進と直接投資

9 多国籍企業のグローバル戦略と直接投資の地域化 10 政策競争の利益と費用

第3章 直接投資、政策、戦略の歴史的概観 1 タイにおける投資環境と投資政策 2 タイにおける直接投資の背景 ①タイにおける直接投資の動向と傾向 ②投資の国別分類

③投資の経済分野別分類 3 直接投資の経済的刺激 4 直接投資と輸出

5 タイにおける日本の直接投資 6 タイ経済の発展方向

7 直接投資への新たな挑戦的政策、戦略に向けた構造変化 ①輸入代替と輸出志向政策

②タイ経済回復に向けた投資奨励とその諸政策 ③投資奨励のための投資委員会と諸政策

8 新しい戦略的パラダイム ①Dual Truck 政策

②Diamond-5政策パラダイム 9 外国資本と国内資本の結合 ①外国株の限定

②外国株制御の効果

10 タイ経済におけるDual Truck政策の重要性 11 政府の投資奨励策と直接投資

12 FTAとタイの競争力

13 結論及びクラスター発展とDual Truckへの留意 第4章 理論的枠組と分析方法

1 方法論

2 データー収集方法と分析手順 3 決定要因と直接投資の動き 4 モデル設計

5 従属変数と独立変数間の期待値 6 評価手順

7 データー設計 8 分析手順

(3)

第5章 実証結果

1 想定される結果:直接投資合計の経済的基礎 2 想定される結果:直接投資合計の決定要素 3 想定される結果:主要投資供給企業の決定要因 4 タイでのビジネス推進の優位性分析

①タイでのビジネス推進の基本的背景 ②タイでのビジネス推進の優位性分析 第6章 結論と政策提言

1 要約と結論 2 政策提言

3 重要政策課題への言及

4 問題の限定とさらなる研究への示唆

以上が本論文の章別編成であるが、以下その内容を述べることとしたい。

第1章において著者は、本論文の問題意識、問題範囲、その限定に関して論じている。

まず、著者は、直接投資がタイの経済を活性化させる重要な条件であるとして、タイ政府 の投資政策と自由貿易協定をめぐる政策展開を分析することが本論文の重要課題だと述べ る。課題の設定と問題範囲の限定である。

第 2 章では、先行研究にメスをいれ、直接投資の定義を行うとともに、これと関連した 投資理論、Dual Track Policy理論、政府の政策の投資への影響、直接投資のコスト削減へ の影響と意義、直接投資の間接的影響等について論じている。

第3章では、タイにおける直接投資の歴史的・政治的背景について総括されている。内 容としては大きくはタイへの直接投資の動向と概要、タイ経済の発展と直接投資の意味、

投資委員会による投資促進策、タイ政府のとる開発政策とDual Truck 政策、Diamond-5 政策パラダイムの概要、主要産業クラスターと投資政策の関連などが論じられる。

第4章では本論文の理論的枠組、方法論および本論文で使用するデータが説明される。

内容としては、データー収集方法と分析手順、決定要因と直接投資の動き、モデル設計、

従属変数と独立変数間の期待値、評価手順、データー設計の順で分析視角が提示される。

第 5章では、第4章で提起された理論的枠組みと方法論を用いてデータの解析が行われ る。政府の政策と直接投資の関連性、各主要産業クラスターと直接投資の関連性の解析が なされ、またタイと他国との投資条件の比較が、タイとシンガポール、マレーシア、ベト ナムおよび中国との間で行われている。この結果タイの投資誘致条件は他国と比較して決 して悪いものではないが、しかし改善の余地がある点も示唆されている。

(4)

第6章ではこれまでの考察で得られた結論と同時にそれを踏まえた政策提言を行ってい る。さらには、今後の残された課題に関しても言及している。

以上が本論文の概要である。本論文は、これまでの直接投資理論を整理、概観し、また タイにおける経済発展とアジア通貨危機後のタイ経済の変化、とりわけ投資政策の変化に 着目し、その政策の変化を主にタキシン政権下のそれに焦点をあてて、その政策効果を数 量的に検証しようとした。その意味では、本論文の目的と作業は実践的であり、かつ今日 的課題でもある。上記の意味でSarinthorn論文は評価されなければならない。

しかし反面で、扱っているデータのカバーする範囲が統一されておらず、また直接投資 の産業への影響に関して、その分析する産業が繊維などに限定された分野で分析に深みが 見られず、論文の記述にもやや重複する部分が散見されたし、論文の章別構成にも重複が 見られた。

Ⅱ 論文評価

我々博士論文審査委員会は2007年5月12日Sarinthorn Sosukpaibulに対し面接試 験を実施した。その過程で、いくつかの技術的修正の要請を行った。1つは 2001 年から 05 年までのデータの不ぞろいを修正すること、2つには章別構成に修正を加え、論旨を明 確にすること、3つにはタイ政府の直接投資への影響に関して産業分野を拡大し、電機、繊 維、自動車、農産物、サービス部門に関してそのデータ結果を解析し、より掘り下げた内 容分析を行うことであった。

今回上記の技術的修正に関して、期限までにその修正がなされたと判断して、審査委員 会は、本論文を博士学位に値すると判断し、Sarinthorn Sosukpaibulに博士号を授与する ことを承認した。

主査 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授 文学博士(東京都立大学)

小林英夫 印

副査 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授 Ph.D(スタンフォード大学)

浦田秀次郎 印

(5)

副査 龍谷大学経済学部教授 経済学博士(東京大学) 北原淳 印 副査 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授 Ph.D(コーネル大学)

阿部義章 印

参照

関連したドキュメント

第 2

マウス末梢体内時計への食餌性同調の栄養学 的解明 Nutritional studies of food entrainment on mouse

また、学位授与機関が作成する博士論文概要、審査要 旨等の公表についても、インターネットを利用した公表

1 Introduction and overview 1.1 Introduction 1.2 Model of the public goods game 2 Expectation of non-strategic sanctioning 2.1 Introduction 2.2 The game and experimental design

[r]

査を実施し、その調査結果を分析した。キャンディ市の家庭ごみ発生量に関しては、所得に

話教育実践を分析、検証している。このような二つの会話教育実践では、学習者の支援の

クター(SMB)およびバリューファクター(HML)および投資ファクター(AGR)の動的特性を得るために、特