博 士 (地 球 環 境 科 学) 松 村 伸 治
学位 論文題 名
Relative roles of SST − forced and internal variability in the mid ―high latitudes atmospheric circulation with an AGCM ensemble experlment
(大気モデルを用いた中高緯度大気循環場における 海 面 水 温 変 動 と 内 部 変 動 の 相 対 的 な 役 割 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
中高 緯度大気は、海面水温(SST)強制変動と大気内部変動による影響の両方が混在してい る。 そのた め、中高 緯度SST変動に 対する大 気場へ の寄与に関しては、大気大循環モデル (AGCM)を使って贐んに研究されているが、そのシグナルは大気内部変動に比べはるかに弱い。
そ こ で、SST変 動 と 大気 内 部変動を 相対的に 見積む ることが 必要と なる。本 研究で は、
CCSR/NIES AGCMによるアンサンブル実験でこれらを見積もり、冬季と夏季に関する両者の相 対的な関係を明らかにすることを目的としている。
アンサンブル実験は1959−1998年の観測されたSSTを与えて20例行い、分散解析によりSST 変動と内部変動による寄与と分散比を求めた。全般的には冬季の海洋上、夏季の大陸上でSST 変動による予測可能性の高い領域が存在した。しかし、冬季北太平洋上でSST変動による影響 が大きいのに対し、北大西洋上では内部変動が大きく寄与している。これらは、SST変動によ る北 極振動(AO)と、主に 北大西 洋域で強く卓越している内部変動によるAOとの振舞いの違 いを示唆している。
一方、夏季では北ユーラシア大陸上で内部変動が大きく、SST変動による予測可能性が低い 傾向を示している。そこで、シベリアの融雪期の積雪分布に着目して季節再現実験を行った。
春季シベリアの積雪偏差を与えた結果、特に北極海沿岸の西シベリアでアルベド効果や潜熱 効果 による 地表面気 温偏差が6月 まで強固に形成された。その一方で、東シベリアでは7月 から8月にかけて局地的な気温偏差が持続していた。これは潜熱が蒸発熱に使われ、積雲対 流が活発になることで土壌水分を持続させるフイードバックが働いたことによると考えられ る。
また、地表面気温偏差形成に伴って北極海とユーラシア大陸間の海陸気温偏差が強まり、
北極海沿岸上の極ジェットが強化・維持されることで、北欧から極東にかけてロスピー波が 伝播する初夏の気候バターンが比較的よく再現された。従って、夏季の北ユーラシア大陸上 で は 、融 雪 期 での 積 雪 変化 に 伴 っ た大 気 内 部変 動 が重要 である ことを示 唆してい る。
AGCMを用いた中高緯度大気のSST変動による影響、大気の内部変動による影響の定量的評価 を 行 う こ と で 、 予 測 可 能 性 の 低 い 内 部 変 動 が 及 ぼ す 影 響 が 明 ら か に な っ た 。
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 池 田 元 美 副 査 教 授 山 崎 孝 治 副 査 助 教 授 渡 部 雅 浩
副 査 教 授 見 延 庄 士 郎( 理 学研 究 科)
学 位 論 文 題 名
Relative roles of SST ー forced and internal variability in the mid − high latitudes atmospheric circulation with an AGCM ensemble experlment
(大気モデルを用いた中高緯度大気循環場における 海 面 水 温 変 動 と 内 部 変 動 の 相 対 的 な 役 割 )
中 高緯度大気は、海面水温(SST)強制変動と大気内部変動による影響の両方が混在してい る 。そのた め、中 高緯度SST変動に 対する 大気場へ の寄与に関しては、大気大循環モデル (AGCM)を使って贐んに研究されているが、そのシグナルは大気内部変動に比べはるかに弱い。
そ こで、SST変動と大気内部変動の相対的強度を見積もることが必要となる。本研究では、
CCSR/NIES AGCMによるアンサンブル実験でこれらを見積もり、冬季と夏季における両者の相 対的な関係を明らかにすることを目的としている。
アンサンブル実験は1959ー1998年の観測されたSSTを与えて20例行い、分散解析を用いてSST 変動と内部変動の寄与と分散比を求めた。全般的には冬季の海洋上、夏季の大陸上でSST変動 による予測可能性の高い領域が存在した。しかし、冬季北太平洋上でSST変動による影響が大 きいのに対し、北大西洋上では内部変動が大きく寄与している。これらは、SST変動による北 極 振動(AO)と、 主に北 大西洋域で強く卓越している内部変動によるAOとの振舞いの違いを 示唆している。
一方、夏季では北ユーラシア大陸上で内部変動が大きく、SST変動による予測可能性が低い 傾向を示している。そこで、シベリアの融雪期の積雪分布に着目して季節再現実験を行った。
春季シベリアの積雪偏差を初期条件として与えたところ、特に北極海沿岸の西シベリアでア ル ベド効果や潜熱効果による地表面気温偏差が6月まで強固に形成された。その一方で、東 シ べルアで は7月 から8月にか けて局地的な気温偏差が持続していた。これは潜熱が蒸発熱 に使われ、積雲対流とその結果の降水が活発になることで土壌水分を持続させるフイードバ ックが働いたことによると考えられる。
また、地表面気温偏差形成に伴って北極海とユーラシア大陸間の海陸気温偏差が強まり、
北極海沿岸上の極ジェットが強化・維持されることと同時に、北欧から極東にかけてロスピ ー波が伝播する初夏の気候バターンが比較的よく再現された。従って、夏季の北ユーラシア 大 陸 上 では 、 融 雪期 の 積 雪量 変 化 を伴 う 大 気変 動が 重要であ ること を示唆し ている。
AGCMを用いた中高緯度大気のSST変動による影響、および大気の内部変動による影響の定量 ―1654ー
的評 価を 行う こと で、 予測 可 能性 の低 さに 内部 変動 が及 ぼす 影響 が明らかになった。
審査委員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、大 学院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせ、申請者が博士(地球環境科学)の学位 を受けるのに充分な資格を有するものと判 定した。
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